80年代から韓国映画を上映し続けるミニシアターの老舗シネマスコーレ
90年代から未公開の韓国映画を紹介してきたミニ映画祭シネマコリア
そして、2008年から新しく多様な作品の製作・配給を始めた韓国の映画会社キノアイ
韓国映画の“ソムリエ”とも言える三者が…
リアルな韓国の“今”を伝える、本物の韓国映画4本を共同配給。
フェスティバル形式で、2009年末より、シネマスコーレほか全国のミニシアター・映画祭にて巡回上映!
■上映作品
主催:「真!韓国映画祭2009」配給委員会(キノアイ、シネマスコーレ、シネマコリア)
協賛:プラザマルマン、マルマン会館、Timestory Film & Books
★12/26(土)より、シネマスコーレにて名古屋・先行公開
2010年春より、ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー
公式 HP >> http://cinemakorea.org/rkcf/
美術・舞台演出:串田和美
出演:中村勘三郎(聖天町法界坊)、中村橋之助(道具屋甚三郎)、中村勘太郎(永楽屋手代要介/吉田宿位之助松若)、中村七之助(花園息女野分姫)、中村歌女之丞(仲居おかん/淡路七郎女房早枝)、中村扇雀(永楽屋娘お組)、坂東彌十郎(永楽屋権左衛門)、片岡亀蔵(番頭正八)、笹野高史(山崎屋勘十郎)
法界坊は金と女に目がない乞食坊主。今は永楽屋娘お組に恋こがれているが、お組は大店の一人娘、手代の要助と恋仲だった。手代とは仮の姿、実は吉田宿位之助松若(よしだとのいのすけまつわか)はお家の宝“鯉魚の一軸(りぎょのいちじく)”を捜し求めているところ。そのお宝はお組を見初めた山崎屋勘十郎が入手し、縁組と引き換えに渡そうと永楽屋にもちかけていた。儲け話を耳にした法界坊は、横取りしようと企む。一方、松若の許婚の野分姫がしのぶ売りに身をやつし、松若を探してやってきた。
シネマ歌舞伎第13作目。今回は平成20年11月浅草寺境内での平成中村座公演です。舞台は生で観るのがそれはもう一番なのですが、公演に足を運べなかった方、チケット代が折り合わなかった方、ちょっと歌舞伎を観てみたいという方、映画館で熱演を楽しむことができます。勘三郎、勘太郎、七之助親子に加え、中村扇雀(お父様そっくりです)、中村橋之助(涼やか)、坂東彌十郎(渋い!)と共演陣も豪華。
目を見張ったのは片岡亀蔵さん、笹野高史さんの身の軽さ!こんな笹野さんを観たのは初めてです。勘三郎さんは欲深だけれど憎めない法界坊を楽しげに演じ、客席とのやりとりや身内ネタのアドリブなど、歌舞伎座公演とは少し違った雰囲気です。明かりや音響こそ違いますが、江戸の昔も、みなこうやって楽しんだのでしょう。試写では1度休憩が入りましたが、いっきに観てしまうほうがいいなぁと思いました。(白)
2009年/日本/カラー/2時間30分/
製作・配給:松竹 宣伝:スキップ
(C)松竹株式会社
監督:クレイ・ホール
製作総指揮:ジョン・ラセター
声の出演:メイ・ホイットマン/深町彩里(ティンカー・ベル)、ジェシー・マッカトニー/細谷佳正(テレンス)、アンジェリカ・ヒューストン/山像かおり(クラリオン女王)ほか
秋の祭典が近づいてきて、ピクシー・ホロウの妖精たちは準備におおわらわ。ものづくりの妖精ティンカー・ベルは、クラリオン女王から大役を仰せつかる。「妖精の粉」を作る月の石をおさめる「聖なる杖」を作ることになったのだ。親友のテレンスも大喜び、材料を届けたり口を出したり、なにかと手伝ってくれるのだけど気短かなティンカー・ベルはイライラが募るばかり。ある日ついにかんしゃくを起こし、そのはずみで完成間近の聖なる杖が壊れてしまった。すっかり怒った彼女は全てをテレンスのせいにして追い出してしまう。一人であたりちらしていると今度は貴重な月の石が壊れてしまう!妖精の粉を作り出すのに欠かせない月の石はもうネバーランドにはない。代わりの石を祭典までに見つけ出し、聖なる杖を完成させなければ。ティンカー・ベルは一人危険な旅に出ることにした。
昨年誕生するところから観せてくれた『ティンカー・ベル』に続く第2弾。今回はものづくりの才能を認められた彼女が一人旅に出発。元はといえば怒りっぽい性格が災いしての苦労なのですが、自分の欠点に気づき、友達を思う気持ちを取り戻していきます。ティンカー・ベルと同行する可愛い仲間も大活躍。さらにキュートになった衣装、広がった冒険の世界、誰でも共感できるティンカー・ベルのドラマを、この冬お子様と一緒にお楽しみください。(白)
2009年/アメリカ/カラー/1時間21分/ビスタ/ドルビーSRD
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
© Disney Enterprises,Inc. All Rights Reserved.
期間:12月19日(土)・20日(日)
主催:上智大学アジア文化研究所
日本ではなかなか見ることのできないアルジェリアのドキュメンタリー作品が多数上映されるほか、パリ在住のアルジェリア人監督、マレク・ベンスマイル氏を招き、最新作『中国はいまだ遠し』の上映の後、会場との交流会が予定されています。
※会場の四ツ谷キャンパスは、JRおよび東京メトロ「四ツ谷」駅下車、徒歩5分です。
※マレク・ベンスマイル監督はフランス在住のアルジェリア人。
京都・ヴィラ九条山2009年度招聘アーティスト。日本とイスラーム世界の交錯する近代に関する新作の製作に取り組んでいる。詳しい経歴はヴィラ九条山のホームページ(http://villa-kujoyama.com)を参照。
※カイナ・シネマは2003年にパリで結成された文化協会。アルジェリアと地中海諸国との映画を通じた交流促進を目的とする。2008年、アルジェリア・ビジャーヤにて若手ドキュメンタリー作家育成のための研修を行う。今回の上映作品はその優秀作。
公式 HP >> http://www.info.sophia.ac.jp/iac/news/docs/news20091130_207181205.html
監督:オーレ・クリスチャン・マセン
脚本:オーレ・クリスチャン・マセン、ラース・K・アナセン
出演:トゥーレ・リントハート(フラメン)、マッツ・ミケルセン(シトロン)、クリスチャン・ベルケル(ホフマン)、スティーネ・スティンゲーゼ(ケティ)ほか
ただ生きるためなら降伏を、だが、“存在する”ためには戦いを―
1944年ナチス占領下のデンマーク、コペンハーゲン。ナチス・ドイツによる弾圧が強まる中、地下抵抗組織「ホルガ・ダンスケ」の一員であるフラメンとシトロンは、上層部からの指令により暗殺を実行に移していた。自分の行動を愛国のためと疑わず、冷徹にことを運んでいく若いフラメン。愛する妻子とともに暮らすこともままならず、彼らと守るためと信じて殺しに手を染めるシトロン。しかし二人が暗殺していく人物がほんとうに「売国奴」なのか、疑う事態に直面する。
あまり紹介されることのないデンマーク映画ですが、これは1本で何本分もの衝撃を覚えた作品でした。実在した2人の男性を元にした実録ドラマということに慄然とします。いつも安全なところにいて指令を出すだけの上層部の人間と、身体を張って戦い続ける前線の人間とおかれた立場に違いはあっても、国や守るべき人を思う気持ちは同じ、と信じたいのですが…。ただの手駒にすぎないという事実がここに。ほんとに戦争はいやだ~!印象的な二人の俳優トゥーレ・リントハートは『天使と悪魔』に。マッツ・ミケルセンは『007/カジノ・ロワイヤル』に出演しています。(白)
2008年/デンマーク、チェコ、ドイツ/カラー/136分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:アルシネテラン
監督・脚本・編集:イ・チュンニョル
製作:スタジオ・ヌリンボ
プロデューサー:コー・ヨンジェ
出演:チェ・ウォンギュン、イ・サムスン
慶尚北道の古刹・清涼寺。老夫婦がまっこり酒を携えて階段を上り、長年飼っていた牛の供養に訪れる。「余命1年と言われたけれど、私たちが逝くまで待って欲しかった」と語る79歳になるチェおじいさん。牛の寿命は普通15年ほどなのに、この牛は40年も生きて、チェおじいさんを支えてきたのだ。
カメラは遡って、チェおじいさんが牛と過ごしてきた日々を四季折々の風景を背景に映し出していく。夜明けから牛のためにエサを作るおじいさん。農薬は牛に毒と決して撒かない。皆が耕作機械を使うようになっても、この牛のお蔭で9人の子供たちを育ててきたのだと、チェおじいさんは頑なに牛を手放さない。お盆に帰ってきた子供たちから、「牛を売って隠居して」と言われても黙っていたおじいさんが、足を怪我して、いよいよ観念して牛を売りに行く・・・
おじいさんが「人間より牛が大事」と優先するので、長年連れ添ってきたおばあさんはちょっぴり焼きもちをやいている様子。「私に食わせないで牛に食わせて」「私の人生は惨め。私の青春はどこへ行った?」日々口をついて出るおばあさんの不平に、観ている方は思わず笑ってしまいます。牛が売られて行く日、「あんたも苦労したね。あの人のせいで」と声をかけるおばあさんに、ほろっ!
本作は、チェおじいさん夫妻のところに足かけ3年、月2~3回のペースで通って撮影したドキュメンタリー。淡々と農村の老夫婦の暮らしを追った地味な作品なのに、韓国で累計約300万人動員の大ヒット。失われつつある懐かしい風景や人々の温かい気持ちが、じぃ~んと染み込むように迫ってくる作品でした。(咲)
2008年/韓国映画/78分/HD→35mm/1:1.85/カラー/ドルビーステレオ
配給:スターサンズ、シグロ
宣伝:ムヴィオラ
公式 HP >> http://www.cine.co.jp/ushinosuzuoto/
監督・脚本:松下俊文
音楽:ルスミラ・カルピオ
―父なる太陽、母なる大地。僕らはあなた達の子ども―
南米ボリビア・ウユニ塩湖の 空の色に息をのんだ。これほど穢れのない、突き抜けた青空は初めて。そして塩の白さ・・・よく見ると表面は純白だが、中は泥のようなものが層になって入っている。家畜のミネラル補給のための塩だ。それを切り出し、父と子で三ヶ月かけて各地をまわる。塩を待つ人々の交わりを、監督の温かい目線で見せてくれた。道中、緑の葉っぱを取り、束ねて持ち歩くが、後でそれが薬草だとわかって「薬草ならもっと取ればよかったのに」と思った。それも惜しげもなく、通りすがりの病気の幼子を抱く母親に分けてあげていた。
「パチャママの贈りもの(母なる大地の恵み)」を、みんなで分け合う暮らしに考えさせられた。松下監督が、南米ボリビアとそこに暮らす素朴な人々を深く愛していることが伝わって来る。
今年の東京国際映画祭で上映された『ボリビア南方の地区にて』は首都のラパスだったが、ゆったりとした時間の流れの中、本当の豊かさを感じさせてくれたボリビアが好きになった。(美)
2009/日本・アメリカ・ボリビア合作/カラー/アメリカンビスタ/102分/ケチュア語(一部アイマラ語、スペイン語)
配給:ゼアリズエンタープライズ 配給協力:マコトヤ
公式 HP >> http://www.pachamama-movie.com/
会場:東京 ポレポレ東中野
期間:12月12日(土)~12月29日(火)
昨年に引き続き、今年も「中国インディペンデント映画祭」が開催されます。
実行委員会からのメッセージ:
「今年は、皆様のご期待にお応えすべく、1年以上かけて日本初公開となる優秀作品を多数用意しました。多様化する現在の中国を反映するかのように、最近のインディペンデント映画にも様々なタイプのものが出てきています。今回はインディぺンデント映画でありながら検閲を通して政府から上映許可を得ている作品や、「80后」と呼ばれる80年代生まれの監督たちの短編集など、いろいろな種類の作品を集めてあります。
昨年以上に面白く、楽しく、エキサイティングな9プログラムを通じて、“主流”な中国映画や公的メディアからは知ることのできない中国の今を感じていただけるはずです。ご期待ください。」
上映作品:
『ジャライノール』(日本初上映)
『グッド・キャット』
『小蛾(シャオオー)の行方』
『武松の一撃』(日本初上映)
『牛乳先生』(日本初上映)
『新鋭監督短編集』(日本初上映)
『収穫』(日本初上映)
『俺たち中国人』(日本初上映)
『オルグヤ、オルグヤ…』(日本初上映)
スケジュールやシンポジウムなどのイベントに関しては公式サイトをご覧下さい。
公式 HP >> http://cifft.net/
プロデューサー: 堀江慶
●『茜さす部屋』
監督・脚本:星崎久美子 特別記事 星崎監督インタビュー
出演:吉本菜穂子、崔哲浩、大和屋敬、星ようこ、津田寛治、本多章一
長すぎた同棲生活にも、やる気の出ない仕事にもうんざりの29歳派遣OLが子作り大作戦を展開。
●『FROG』
監督・脚本:長久允
崔哲浩、桃生亜希子、倉方規安、児玉貴志、小林三四郎、カゴシマジロー
雨が降らず、世界の終末が近づく中で生きる人々。
●『ブーケガルニ』
監督・脚本:波多野純平
杉山文雄、諏訪太朗、並樹史朗、加藤裕月
3年前の事件に関する雑誌記事を巡り、3人の男女のからみあう運命。
2000年~2009年を「ゼロ年代」と呼ぶのだそうです。その世代に登場した3人の新鋭若手監督によるオムニバス・ストーリー。唯一の女性監督の『茜さす部屋』が、「ああ、こんなことありそう」と思わせるエピソードをつないでリアル、そこはかとなくおかしみもあって好きな作品でした。(白)
配給:アルゴピクチャーズ
公式 ブログ >>
http://zeronendaizenkei.blog83.fc2.com/
上映スケジュールなど >>
http://www.uplink.co.jp/x/log/003267.php
監督:浅香守生(あさかもりお)
脚本:鈴木智
出演:堺雅人(ナビゲーター/葉蔵)、高木渉(堀木)、朴璐美、久川綾(志津子)、能登麻美子(美子)、田中敦子(マダム)
東北の素封家の末っ子に生まれた葉蔵は、何不自由なく育ったが人間の生活というものがよくわからない。他人が恐ろしく、いつも顔色を伺い、自分が道化になることで人付き合いをしのいできた。政治家の父は東京の大学へ進ませるが、絵描きになりたかった葉蔵は授業にも出ず、左翼運動に参加していた。特高警察に追われて逃げ込んだバーで女給の恒子に匿われ、そのまま彼女の世話になる。
日本テレビで10月から放送されているアニメーション「青い文学」シリーズのうちから、「人間失格」4話分を再構成してディレクターズカット版として劇場公開するもの。生誕100年を迎え、再び注目されている太宰治の代表作の一つです。活字離れと言われて久しい気がしますが、実写版なりアニメーション版なりで名作が身近になれば、原作にも手が出やすいかもしれません。
文章を映像化するには、作り手の大きな想像力が必要です。読んでから観るか、観てから読むかお好み次第。私は先に原作を読んでいたので「ああ、ここを残したのね」とか「あれをこう描いたのか」とか自分の思いと付き合わせる形になりました。堺雅人さんのちょっと不思議な微笑みを含んだ声が、キャラとぴたりと合っていました。(白)
2009年/カラー/デジタル上映
配給:株式会社ハピネットピクチャーズ
©「青い文学」製作委員会
公式 HP >> http://www.ntv.co.jp/bungaku/
監督:タル・ベーラ
原作:ジョルジュ・シムノン「倫敦(ロンドン)から来た男」(河出書房新社)
共同監督・編集:フラニツキー・アーグネシュ
出演:ミロスラヴ・クロボット、ティルダ・スウィントン、ボーク・エリカ、デルジ・ヤーノシュ、レーナールト・イシュトヴァーン
夜霧に包まれた波止場。鉄道員マロワンはいつものように、ガラスの檻のような制御室から港と駅を見下ろしていた。マロワンは、漆黒の闇の中で男が殺され、トランクと共に海に投げ捨てられるのを目撃してしまう。トランクを拾いあげてみると、そこにはぎっしりと札束が入っていた。翌日、マロワンは、手漕ぎボートで海の中を探る男を見かける。男の視線を感じて、思わず心を乱すマロワン。やがて、倫敦から刑事がやって来る・・・
ハンガリーの巨匠タル・ベーラ監督が、「メグレ警視」シリーズの文豪ジョルジュ・シムノンの原作を、チェコやハンガリーの俳優を起用して製作。平凡な毎日を送っていたマロワンが、倫敦から来た男・ブラウンの犯した殺人現場を偶然見てしまったことから、大金を手にし、次第に犯罪に巻き込まれていく姿が、モノクロームで静かに描かれ、なんとも味わい深い作品でした。窓からじぃ~っと眺めている横顔、暗闇の中でキィ~っと響きわたる線路を切り替える音、雰囲気あるカフェでの刑事との会話・・・ 一つ一つのシーンにぞくぞくさせられました。(咲)
2007年/ハンガリー=ドイツ=フランス/138分/35mm/ヨーロピアンビスタ/ドルビーデジタル
第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
後援:駐日ハンガリー共和国大使館、ハンガリー政府観光局
配給:ビターズ・エンド
《豪華ゲストを迎え、スペシャルトークショー開催!》
※全てシアター・イメージフォーラムにて開催
◎<“映像美を語る”~光と影の芸術作品~>
12月17日(木)19:00の回 上映前
若木信吾さん(写真家)×立川直樹さん(プロデューサー/ディレクター)
◎<“監督タル・ベーラを語る”~世界の映画人を魅了する孤高の芸術家~>
12月19日(土)13:30の回 上映後
田中千世子さん(映画評論家・映画監督)×市山尚三さん(映画プロデューサー)
◎<“文豪ジョルジュ・シムノンを語る”~脅威のベストセラー作家、隠された素顔~>
12月25日(金)19:00の回 上映前
堀江敏幸さん(作家)×長島良三さん(原作翻訳者)
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/london/
監督:木崎文智
原作:岡崎能士
美術監督:池田繁美
音楽:TheRZA
製作:GONZO
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ルーシー・リュー、マーク・ハミル他
アーティスト岡崎能士が生み出したアフロヘアの孤高の刺客“アフロサムライ”待望の続編。
よりパワーアップしたアクション、ストーリーに加え、ルーシー・リューら豪華キャストが実現。
日本史上、初めてのエミー賞アニメーション作品賞にノミネートされたジャパニメーションです。 セリフが英語で音楽はヒップホップ、でも舞台は古く懐かしい日本なので、とまどいましたが(笑) エンタテイメントに富んだ時代劇アニメでした。(千)
2009年/日本/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/100分
配給:トルネード・フィルム宣伝:エイスワンダー(B.B.B.inc)
公式 HP >> http://www.afrosamurai2.jp/
監督・脚本:エミール・クストリッツァ
製作:ホセ・イバネス
製作総指揮:ベレン・アティエンサ、アルバロ・アウグスティン、オリビエ・デルボス、マルク・ミソニエ、ガエル・ヌエイーユ、バンサン・マラバル
撮影:ロドリーゴ・プルペイロ・ベガ
音楽:ストリボール・クストリッツァ
編集:スベトリク・ザイッチ
出演:マラドーナ・ファミリー、カストロ将軍、マヌ・チャオ他
20世紀スポーツ界もっともスキャンダラスなスーパースター ”神の子”マラドーナ48歳を名匠エミール・クストリッツァ監督がブエノスアイレスからナポリ、ベオグラードへと追ったドキュメンタリー。
右腕にチェ・ゲバラの、足にはカストロ将軍のタトゥーを入れてました。反米、反大英帝国、反資本主義! それでいて薬物中毒だったり家族愛に悩みまくるマラドーナの姿がとても魅力的でした。なにより作品の中に時折、当時のプレイが映るのですが、それが本当に“神の子”と呼ぶに相応しい震えるほどのゴール・シーン! マラドーナ教のロザリオはサッカー・ボールで出来てました(笑) マヌ・チャオも良かったです。 (千)
2008年/スペイン・フランス合作/カラー/95分 配給:キングレコード 宣伝:TEAM BEER
★12月12日(土)シアターN渋谷にてロードショー
公式 HP >> http://www.maradonafilm.com/
市川雷蔵が37歳の若さでこの世を去ってから早40年。15年間に159本もの映画作品を残し、今なお新しいファンを増やし続けている、日本の映画黄金期を駆け抜けた最高のスターです。
この秋、没後40年の特別企画として何と100作品が一挙上映されます! 眠狂四郎や陸軍中野学校、忍びの者などのシリーズものはもちろん、歌舞伎もの、現代もの、市川崑監督との作品『炎上』『ぼんち』『破戒』も! ニュープリントも多数あります。
ファンはこの秋、どっぷりと雷蔵に浸ること間違いなしですが、雷蔵を知らない若い方も、是非この機会に贅沢に作られた日本の娯楽映画と役者・市川雷蔵の魅力に触れてみて下さい。
今回の映画祭は史上最大の100作品一挙上映。この上映作品数は、映画祭としても俳優の出演作品数としても、世界最大級の規模となります。去る8月29日は市川雷蔵の誕生日。その前日にギネス世界記録に正式申請されました。
配給:角川映画
★12月12日(土)より、角川シネマ新宿他にて開催
公式 HP >> http://www.dairaizosai.jp/
監督・脚本:ピート・ドクター, ボブ・ピーターソン
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:マイケル・ジアッチーノ
声の出演:エド・アズナー(カール・フレドリクセン)、ジョーダン・ナガイ(ラッセル)、ボブ・ピーターソン(ダグ、アルファ)、クリストファー・ブラマー(チャールズ・マンツ)ほか
©WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
冒険ドキュメンタリーが大好きだけどシャイで無口なカール少年は、ある日同じように冒険に憧れる元気な少女エリーと出会った。二人は空き家を秘密基地にして、いつか伝説の場所「パラダイス・フォール」に行こうと誓う。大人になった2人は結婚して、空き家を買い取り新居にした・・・長い月日が流れて、カールはひとりぼっちになった。
いつも不機嫌な顔のカールじいさんは、周囲が開発の波に飲まれても愛するエリーと暮らした家を一人守り抜いていた。そこへまん丸顔の少年ラッセルがやってくる。「なにかお手伝いできることはありませんか?"お年寄りお手伝いバッジ"がもらえたら、シニア自然探検隊に昇格できるんです」カールじいさんは「ふん!」とドアを閉める。工事関係者とトラブルを起こしたカールじいさんは、家を立ち退いて施設に入ることになってしまった。迎えの来た朝、カールじいさんは家ごと空高く飛び上がった!無数の風船と・・・ラッセルも一緒に!?
ピクサー10作目の長編アニメーションの主人公は頑固なおじいさん。四角い顔に四角いめがね、3頭身の愛すべきキャラクターです。初めに披露される子ども時代からの回想シーンは、少ない台詞ながら表情豊かなアニメーションで2人の人生の全てが表現されています。幸せだった時間が思い出になり、カールじいさんはそれを大事にするあまりに頑固になりました。彼と反対に卵に目鼻をつけたようなラッセルは、お喋りし続けの少年です。最初は迷惑がり、追い出そうとしたじいさんですが、いつのまにかかけがえのない相棒に昇格していきます。 胸がいっぱいになる冒頭、色とりどりの風船が現れ、空飛ぶ場面にわくわく。噴き出してしまうカールじいさんのアクションシーンなど、一瞬も退屈させない名場面続きです。1日でも早く観たい方は東京国際映画祭のクロージングを狙いましょう。(白)
2009年/アメリカ/カラー/1時間43分/ビスタサイズ/ドルビーSRD・EX
配給:ウォルトディズニースタジオモーションピクチャーズジャパン
★12月5日(土)全国ロードショー(一部劇場にてディズニーデジタル3‐D同時公開)
監督:大塚祐吉
出演:桜井莉菜、加賀美早紀、石原あつ美、細貝圭、渡辺哲ほか
家族に見放され、彼氏にも裏切られ、ピンクのキャリーケースを引いて大阪から東京にやって来た一之瀬ハルカ(桜井莉菜)。お供は背中にジュエリーを背負った亀のジミー1匹。仕事を探そうと面接にこぎつけるが、ゴージャスに盛った金髪にド派手メイクのハルカは、場違いと追いかえされてしまう。ネットカフェ暮しをしていた彼女は、お金も底をつきそうになり、夜の世界に飛び込む。どうせやるなら、店のナンバーワンにと頑張るが・・・・
ふっと立ち止まった時、「本当は何がしたいんだろう?」と、つぶやくハルカ。そして、自分なりに頑張ってしまう姿が眩しい。見た目で判断して受け入れない大人たちがいる一方で、彼女に優しく声をかけるのが、ホームレスのおっちゃん。お互い大阪出身ということもあって、大阪弁でのやりとりが、なんとも暖かい。当初のハルカのセリフは、大阪弁ではなかったそうだが、桜井莉菜さんの出身が大阪だということもあって、彼女は全編大阪弁でしゃべっている。大阪弁の持つなんともいえない可笑しさが、作品全体を柔らかく包んでいる。(咲)
2009年/カラー/83分
配給:GPミュージアムソフト
監督:井坂聡
原作・脚本:伊藤秀裕
美術:大庭勇人
撮影監督:さのてつろう
編集:矢船陽介
音楽:遠藤浩二
出演:高島礼子、榎木孝明、加藤和樹、亀谷さやか、今木洋子、竹本聡子、蜂谷眞未、西村雅彦、島田陽子
島美輪子(高島礼子)は心臓移植を受けて間もない夫の信二(榎木孝明)を連れて高原の別荘を訪れる。信二はミステリー作家で、療養と執筆を兼ねてやって来たのだった。別荘に来て以来、何かに怯えている様子の信二。温和で紳士的だった彼が、次第に凶暴な態度を取るようになる。夫の人格が変わったことに驚き、美輪子はその原因を探ろうと別荘管理人の甥の武(加藤和樹)に付き添ってもらって東京へ戻る。信二の担当医である三田(島田陽子)や、とある連続殺人事件を追っている河野刑事(西村雅彦)と会い、信二に移植された心臓が殺人鬼のものだったことを知る。別荘に戻ると、信二はさらに戦慄の行動に出ていた...
きっと榎木さんは凶暴な人物に豹変するのを楽しんで演じたのだろうなと思いつつ、ファンとしては、ちょっと辛いものがありました。性格まで移植されるなどということはないと思うのですが、殺人犯の臓器を貰ったことは出来れば知りたくないですね。でも、殺人犯としては、人生最後の善行ですね。(咲)
2009年/日本/カラー/87分/R15+
公式 HP >> http://www.exf.info/dear-heart/
監督・脚本・製作:マイケル・ムーア
100年に1度の世界同時不況!? 失われたお金を取り戻すためにあの男が帰ってきた!! 史上最強の$マネーエンタテイメント
ムーア監督の突撃取材は今回も健在。世界中に吹く不況という風の起こりはここに。経済のしくみがうっすらわかるのと同時に、これはたいへんなことなのだと目からウロコがぽろぽろ…。かつて憧れたアメリカンドリームはどこへやら、格差は拡がるばかりの超大国アメリカ。
もともと多く持っている人たちが「もっとほしい」と欲張れば、しわ寄せは庶民にやってきます。銀行から融資をうけたばかりに、高い金利にがんじがらめになり持ち家や先祖代々の土地を手放すことになった人。真面目に働いてきたのになぜこんなことに、という嘆きはマネービルに狂奔する一部の人たちには届かないのでしょうか。長めのドキュメンタリーですが、目が釘付けの2時間あまり。勉強になりました。(白)
2009年/アメリカ/カラー/127分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
提供:ショウゲート、デイライト 配給:ショウゲート
©2009 Paramount Vantage, a division of Paramount Pictures Corporation and Overture Films, LLC
公式 HP >> http://www.capitalism.jp/
監督:アンジェイ・ワイダ
原作:アンジェイ・ムラルチク長編小説「死後」
脚本:アンジェイ・ワイダ、ヴワディスワフ・パシコフスキ、プシェムィスワフ・ノヴァコフスキ
撮影:パヴェウ・エデルマン
音楽:クシシュトフ・ペンデレッキ
出演:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジミイェフスキ、ヴィクトリャ・ゴンシェフスカ、マヤ・コモロフスカ、ヴワディスワフ・コヴァルスキ
ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督の積年の思いが込められた作品。
ドイツのヒットラーとソ連のスターリンの密約により、ポーランドは1939年に双方から侵略された。
ソ連の捕虜になった約15000人のポーランド将校が、1940年を境に行方不明になり謎となっていた。
1943年ドイツがソ連に侵略した時、カティンでポーランド将校の遺体を発見したことから「カティンの森」事件が明らかになった。
ワイダ監督の父も、アンナを演じるマヤ・オスタシェフスカの曾祖父もカティン事件の犠牲者だ。
今年観た中で、No.1の重い映画。
重い内容ではあるが、わかりにくい部分はなく、カティン事件を名前だけ聞いていた私にも理解できた。
この映画の見どころというか、ワイダ監督の巨匠と言われる所以がはっきり解るシーンは最初と最後のシーン。
始まりでポーランドの行き場のない国の状態を、最後は坦々とした作業のように殺戮が・・・。
スクリーン真っ暗になり、10~20秒そのまま無音の状態で、そしてエンドロール…。
無音の中、将校たちの叫びが聞こえてくるようだった。
この暗黒無音の何秒間にこそ、ワイダ監督の積年の思いが込められているように感じた。(美)
★12月5日(土)より、岩波ホールで上映
公式 HP >> http://katyn-movie.com/
2009年11月28日(土)~12月11日(金) ポレポレ東中野にて二週間限定開催!!
日本発展の原動力だった石炭産業。かつて多くの炭鉱があり、たくさんの人が働いていました。そして、炭鉱にまつわる映画も、記録映画から商業映画まで、たくさん製作されてきました。そんな作品を集めた映画がポレポレ東中野で上映されます。これを機会に、見逃した作品をぜひ観に行ってみてはいかがでしょう。
シネマジャーナル本誌でもいくつか作品を紹介しています。
『炭鉱(ヤマ)に生きる』 シネマジャーナル69号
『三池 終わらない炭鉱(やま)の物語』 シネマジャーナル69号
『荒木栄の歌が聞こえる』 シネマジャーナル76号
(宮)
詳細情報:
この特集上映は11月4日より開催中の「 '文化 '資源としての<炭鉱>展」の
Part-3 として、主催・ポレポレ東中野、共催・目黒区美術館により行われるものです。
Part-1は【<ヤマ>の美術・写真・グラフィック】と題して、炭鉱がモチーフとなっている美術作品を目黒区美術館で展示します。
Part-2は【川俣正コールマイン・プロジェクト】。世界的に活躍する美術家・川俣正の新作個展を目黒区美術館で開催します。
Part-3は、炭鉱にまつわる記録映画・劇映画14本が一同に会す【特集上映<映像の中の炭鉱>】をポレポレ東中野にて開催します。
本企画はPart-1、Part-2への出品作家である写真家・本橋成一氏が映画館・ポレポレ東中野のオーナーでもあることから実現いたしました。
かつて主エネルギー源として日本の発展を支えた石炭産業/炭鉱は、戦後制作された様々な映像作品に登場します。炭鉱会社のPR映画、炭鉱の実体を記録したドキュメンタリーから、青春映画、怪獣映画、文芸映画などさまざまな劇映画まで、映画だけでも、炭鉱町を舞台にしたもの、炭鉱を記録したものなど、優に数百を数えます。
女ひとり大地を行く(1953年/亀井文夫監督)
はじけ鳳仙花 ―わが筑豊わが朝鮮(1984年/土本典昭監督)
炭鉱 政策転換の戦い(1961年/徳永瑞夫監督)
にあんちゃん(1959年/今村昌平監督)
おとし穴(1962年/勅使河原宏監督)
日本女侠伝 血斗乱れ花(1971年/山下耕作監督)
爆裂都市.. BURST CITY(1982年/石井聰亙監督)
プ(1994年/山崎幹夫監督)
三池 終わらない炭鉱の物語(2005年/熊谷博子監督)
荒木栄の歌が聞こえる(2009年/港健二郎監督)
他全13作品上映
前売 1200円、当日1400円
you tubeに配信された予告編:
http://www.youtube.com/watch?v=fclqi8xKsrM
開催記念トークイベント開催!!
11月28日(土) 『はじけ鳳仙花』上映後
富山妙子(画家/『はじけ鳳仙花』原案・絵・詞)
11月28日(土) 『女ひとり大地を行く』上映後
吉岡宏高(NPO法人「炭鉱の記憶推進事業団」理事長)
12月3日(木) 『炭鉱に生きる』上映後
本橋成一(写真家/映画監督)
12月4日(金) 『三たびの海峡』上映後
神山征二郎(『三たびの海峡』監督)
12月5日(土)、10日(木) 『プ』上映後
山崎幹夫(『プ』監督)
12月5日(土) 『三池 終わらない炭鉱の物語』上映後
熊谷博子(『三池 終わらない炭鉱の物語』監督)
劇場 HP >> http://www.mmjp.or.jp/pole2/
監督・撮影:張麗玲
ナレーター:段田安則
プロデューサー:横山隆晴
2006年11月3日、ある3人家族の10年を追ったドキュメンタリーがフジテレビで全国ネット放送され高視聴率を記録。その後、多くの視聴者から再放送やDVD化希望の声があったが叶わず3年経った今、番組に感動した一人の大学生の熱い思いにより劇場上映が実現した。
1989年、一人の中国人男性が上海から日本へと渡ってきた。丁尚彪(ていしょうひょう)、35歳。
上海の街角で日本語学校のパンフレットを手にした彼は、親戚や知り合いに頼み込んで借金をし日本へとやってきたのだが・・・ 中国に住む妻、一人娘と離れ離れの生活が始まる。
私も当時、自宅でテレビを観ていて号泣しました。あの時の感動は今でも 忘れてません。画質などはやや落ちますがノンフィクションのテレビ番組が 映画ぽく綺麗に編集されていました。 (千)
この番組が放送された時、あいにく見ることができなかったので、映画として公開されると知りうれしかった。
大学に行きたいという思いを叶えるため、多額の借金をし、妻子を中国に残して日本にやってきた丁尚彪さん。文化大革命時、農村に下放された世代で、高等教育を受けることができなかったのである。しかし、生活のやりくり、借金の返済に追われ、結局、大学に行くことはできなかった。その思いを一人娘に託し「娘に一流の教育を受けさせたい」と、日本で働き続けていた。
早朝から夜遅くまで、いくつもの職をかけもちし、深夜にアパートに帰る毎日。帰ると夜ご飯を作り、ついでに次の日のお弁当も作る。丁さんのつましい生活。稼いだお金は妻子に送金。妻は夫から送金されたお金は使わず、娘の進学のために貯金。生活は自分が働く縫製工場の収入でやりくりをする。
そんな父母の思いを知り、娘は勉学に励み、1997年、見事ニューヨーク州立大学に合格。医者になるという夢に向かって歩み始めた。カメラは、上海、東京、ニューヨークと離ればなれで暮らす家族の姿を追い、家族の絆を描く。
時代に翻弄されながらも、前向きに生きる丁さんの姿、懸命に生きる一家の姿に、心動かされない人はいないだろう。不況下の現代だからこそ、励まされ、優しい気持ちになる。
10年に渡り、一家の姿を追い続けたのは、日本在住の張麗玲さん。今までフジTVで何度か彼女が撮ったドキュメンタリーが放映されてきたが、私が見たのは「小さな留学生」と、彼女自身が取材する姿を追ったドキュメンタリー「中国からの贈りもの」だった。どれも感動作で、涙なしに見ることができない作品だった。
その集大成がこの『泣きながら生きて』だと思う。日本と中国との関係を改善したいという高い志を持った彼女の生き方が反映された作品である。
現在、張麗玲さんは、中国映画や香港映画ファンにとってはおなじみのTV局、CCTV大富の社長である。中国や香港からのTV番組が放送されている。これを作るまでのいきさつや名前の由来も感動的。大富は、彼女が就職した大倉商事とフジTVが出資して始められた会社。始めた直後に大倉商事が倒産してしまい、新しい名前に変えるという話もあったけど「水を飲む時は井戸を掘った人の苦労を忘れてはいけない」と、大倉商事が自分に示してくれた支持と理解を決して忘れないよう、従来の社名を使用し続けている。
彼女が最初のドキュメンタリー作品を撮り始めたのは、大倉商事に勤めているときだったのである。理解を示してくれた会社への感謝の気持ちがこの名前に込められている。 (暁)
2006年/4:3/日本/カラー/108分
配給:ムーンビームス、ピクチャーズデプト 宣伝:る・ひまわり
★11月28日(土)新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
公式 HP >> http://nakinagara.net/
監督・脚本:カイル・ランキン
製作:ブルース・ディヴィ、ローズ・レイダー
撮影監督:トム・アッカーマン
デジタル効果SV:P・Jフォーリー
出演:クリス・マークエット、ブルック・ネヴィン、レイ・ワイズ
巨大昆虫VS人類。世界が突然、巨大な昆虫の大群に占拠されてしまう。
なぜ起きたのか、その記憶は繭に包まれた人々の心の中に・・・
犠牲者たちの運命は不運にも万年怠け者のクーパーに委ねられた。
ダメ男クーパーは世界を救えるのか!?
撮影はマイケル・ジャクソンのMVなどを手がけたトム・アッカーマン。デジタル効果に“スター・トレック”のP・Jフォリーで迫力のあるアクションとCGが絶妙でした。 巨大昆虫と戦いながらも、ちゃんと恋愛もしているクーパーはダメ男ではなかったです・・・ (千)
2009年/アメリカ/カラー/ドルビー・デジタル/ビスタサイズ/91分
提供・配給・宣伝:プレシディオ
★11月28日(土)銀座シネパトスほか全国ロードショー
監督:渡邊貴文
音楽:金子ノブアキ
製作:伊藤久美子
プロデューサー:高柳利恵子
出演:弓削智久 須賀貴匡
弓削智久と須賀貴正匡は短編映画『FREE』を撮影するためにクルーを連れてアメリカへ。サンフランシスコから出発し台本に沿ってシーンを撮影していくが何かが足りない。そんな矢先、途中で無くしたと思っていたカメラが発見され、それをヒントに二人は旅で出会った人々にインタビューを開始。ゴール予定のラスベガスまで後3日。二人はスタッフとはぐれ、しかも道に迷ってしまう。仕方なくヒッチハイクで進んだ先に“生きていることの意味”を探る出会いが待っていた。
6月に行われた「Short Shorts Movie Festival」で特別上映し絶賛された『FREE』の撮影に密着、二人の役者の短編映画を作る旅を追ったドキュメンタリー。弓削智久監督脚本の『FREE』も作品中に含まれているが分かりにくかった……。そして電波少年を思い出してしまいました。 (千)
2009年/HD/カラー/ビスタサイズ/75分
配給宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
★11月28日(土)渋谷ユーロスペースにてレイトロードショー
公式 HP >> http://www.baka2.jp/
監督:鈴井貴之
原作:浅田次郎著「銀色の雨」(文春文庫「月のしずく」所収)
脚本:宇山圭子、鈴井貴之
撮影:喜久村徳章
音楽:坂本昌之
主題歌:徳永英明 「透徹の空」
出演:賀来賢人(平井和也)、前田亜季(菊枝)、中村獅童(岩井章次)、濱田マリ(平井幸緒)、音尾琢真(草野)、大島優子(みのり)、冨澤たけし(小島)、伊達みきお(電気屋)、柳憂怜(森尾)、眞島秀和(柳沢)、品川徹(岩井耕造)、佐々木すみ江(岩井光子)ほか
和也は住み込みで新聞配達をしながら高校に通う17歳。3歳のときに父が亡くなり、東京から母親の故郷米子に移ってきた。陸上競技にも打ち込み、「模範少年」として新聞にも取り上げられた和也だったが、今は周囲の期待が息苦しい。ちょっとしたことで衝突した新聞販売店を飛び出し、母親とも喧嘩して家出を敢行。東京行きの電車がなくなり、途中の米子駅で降りることになった。
駅前で酔客にからまれていた若い女性を目にする。彼女は、幼い和也を弟のように可愛がってくれた母の同僚の菊枝だった。ちょうど米子に降り立った男性が菊枝を助け、名前も告げずに立ち去っていく。和也は菊枝のアパートの居候になった。菊枝は助けられた男性に再会し、しばらく同居させることになる。彼はプロボクサーの岩井章次だった。
浅田次郎原作の短編が映画化されました。監督は『銀のエンゼル』など北海道を舞台にした作品を撮り続けてきた鈴井貴之。昭和40年代の大阪が舞台の原作を、現在の米子を中心にした山陰地方に移し、「人生の雨宿り」(監督いわく)のような優しい映画にしあがっています。
父親の思い出を持たない和也と、両親からことさら離れて生きてきた章次が、まるで誰かに引き合わされたように出会います。大衆演劇によく似た話があり、そちらは股旅物や親子の人情劇ですが、底に流れるものは同じ。
初主演となる賀来賢人(かくけんと)は『Little DJ小さな恋の物語』(2007)に、光石研さんの息子役で出演していて、出番は多くないものの目を引きました。若く不安定な和也を中村獅童演じる岩井が受け止め、実際の撮影もこうだったのかもと想像。大泉洋らNACSのメンバーも、菊枝の勤めるスナックのお客として顔を出しています。ロケ地である鳥取県、島根県では10月31日(土)より先行ロードショー。(白)
2008年/日本/カラー/113分/ビスタサイズ/DTSステレオ
配給:エスピーオー、マジックアワー
© 2009「銀色の雨」製作委員会
公式 HP >> http://giniro-movie.com/
監督・脚本・声の出演:アリ・フォルマン
音楽:マックス・リヒター
美術監督・イラストレーター:デヴィッド・ポロンスキー
アニメーション監督:ヨニ・グッドマン
©2008 Bridgit Folman Film Gang, Les Films D'ici, Razor Film Produktion, Arte France and Noga Communications-Channel 8. All rights reserved
イスラエル人のアリ・フォルマン監督には80年代にレバノン戦争へ従軍しているが、その確かな記憶がない。最近悪夢にうなされるようになり、友人にうちあける。監督はかつての戦友たちを訪ね歩き、失われた自分の記憶を取り戻していく。
人はあまりに辛い目にあうと、自分の心を守るために記憶をなくしてしまうことがあるそうです。フォアマン監督は体験したはずの戦争の記憶をなくしていました。記憶を辿る旅は、閉じていた扉を開き見たくないものを見ることになります。映像は実写をイラストっぽくしたような、幻想的なアニメーションですが、ストーリーの真実味を薄めることなく胸にせまってきます。2008年東京FILMEXで『バシールとワルツを』の邦題で上映され、最優秀作品賞を獲得しました。(白)
ドキュメンタリーとアニメーションの合体という、これまであまりなかった形態です。アニメになると戦争や死のリアリティに薄皮一枚かぶせたような感じがするものですが、これは違います。ピカソの「ゲルニカ」のように、かえって恐怖や悲しみが増幅されているようです。今年、絶対観るべき映画の1本です。(梅)
★ゴールデングローブ賞 最優秀外国語映画賞はじめ多くの受賞あり
2006/カラー/イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ合作、イスラエル映画/90分/ドルビーデジタル/1:1.185/PG-12
配給:ツイン=博報堂DYメディアパートナーズ
公式 HP >> http://www.waltz-wo.jp/
監督・撮影・編集:伊藤弘二
音楽:大内勇太
出演:楳図かずお、祖父江慎、竹熊健太郎、金子デメリン
1955年にデビューして以来“まことちゃん”“漂流教室”など多くの名作傑作を生みだしギャグや恐怖で日本中を驚かしてきた天才漫画家・楳図かずおを追った初めてのドキュメンタリー映画。
小学3年の時、同級生の家で初めて読んだ”まことちゃん”に感激して以来、ずっと私も大好きな漫画家です。ニュースでも報道され社会問題となった赤白ストライプ御殿「楳図ハウス」の中が、あんなファンタジーあふれる空間だったなんて。嗚呼、私もいつか御邪魔してみたいです! (千)
2009年/日本/DV/91分
配給:トリウッド 宣伝:ブラウニー
★11月23日(月・祝日)下北沢トリウッドにてロードショー
公式 HP >> http://gwashi.com/
制作・監督:増田久雄
監修:矢沢永吉
―60歳になってもロックンロールやれる。ケツ振れる。
これを感謝と言わずに何が感謝だ。―
1949年9月14日生まれの矢沢永吉は今年60歳になった。
いや、親しみと憧憬を込めて「永ちゃん」と呼ばせてもらおう。彼は、私たち団塊世代の旗手の一人だ。それもとびきりの。
このドキュメンタリーは、永ちゃんの起きぬけから始まり、サイパンでのリラックスした表情の彼に会える。いつも走り続けてきた〝トップランナー〟の印象のある人が軽やかに走っている。
30年前の若い永ちゃんも画面に登場する。そりゃ還暦の今、外見は違ってきたけれど、パッションは変わっていない。熱い青年のままなのだ。昔も今も、白いTシャツ姿でバンドのメンバーを気遣い、雰囲気を盛り上げる。最高のステージを観客に楽しんでもらうため、入念なリハーサルが幾度も繰り返される。ライブでは選び抜かれた楽曲を精魂こめて歌う。サスペンダーつきの白いパンツで登場しマイクターンも健在! こんな人他にいる? 観客は総立ち「止まらないHa~Ha」ではタオルが乱舞する。
数々の矢沢語録は、一人歩きして伝説のようになった。けれど、それは一面でしかない。このドキュメンタリーでの永ちゃんは実に率直でチャーミングな人だった。そしてかっこいい!(白)
2009年/日本/カラー/90分/
配給:東映 宣伝:P2,グアパ・グアポ
© 映画「ROCK」製作委員会
公式 HP >> http://www.rock-yazawa.com/
「第10回東京フィルメックス」(2009年11月21日(土)〜11月29日(日) 有楽町朝日ホール、東劇 他にて)のラインナップ(全61作品 *予定*)が発表されました。
★追加情報★
東京フィルメックスでおなじみのアモス・ギタイ監督の『カルメル』(イスラエル)が特別招待作品として追加上映されることが決定しました。
また、上映スケジュールもアップされました。HPでご確認く
ださい。
★2009年11月21日(土)〜11月29日(日) 有楽町朝日ホール、東劇 他にて
公式 HP >> http://www.filmex.net/
11月21日(土)から30日(月)まで有楽町スバル座で10日間開催される「韓国映画ショーケース2009」では、韓国の観客から広く支持を受けたヒット作から国際映画祭で賞賛されたインディペンデント映画まで、様々な意味で2009年の韓国映画を代表する10本の素晴らしい作品が上映されます。
オープニング作品はチャン・ドンゴン主演の『グッドモーニング・プレジデント』です。
監督・脚本:チャン・ジン
出演:イ・スンジェ、チャン・ドンゴン、コ・ドゥシム、イム・ハリョン、ハン・チェヨン
史上最年少の独身大統領チャ・ジウクは前大統領の娘で幼なじみのイヨンを愛していた。ある日、ジウクはイヨンが対立する党のスポークスウーマンになったことを知る……。『ガン&トークス』のチャン・ジンが政界をユーモラスに描いた作品。チャン・ドンゴンが若き大統領を演じる。プサン映画祭オープニング上映。
詳細や、その他の作品については公式サイトをご覧下さい:公式 HP >> http://www.filmex.net/kfs
監督・脚本:片渕須直(かたぶち・すなお)
原作:髙樹のぶ子「マイマイ新子」マガジンハウス、新潮文庫刊
アニメーション制作:マッドハウス
主題歌:コトリンゴ「こどものせかい」(commmons)
音楽:Minako "mooki" Obata(みなこ・むーきー・おばた)
村井秀清(むらい・しゅうせい)
声の出演:福田麻由子(青木新子)、水沢奈子(島津貴伊子)、森迫永依(諾子)、本上まなみ(新子の母長子)ほか
昭和30年代の山口県防府(ほうふ)市。麦畑の広がる国衙(こくが)に住んでいる新子は小学3年生。おでこの生え際にマイマイ(つむじ)がある元気な女の子だ。大好きなおじいちゃんから「ここは昔周防(すおう)の国と言って、国衙は国の都という意味」と聞いた。千年も前のことだという。新子の目にはこの小道を1000年前の人たちが行き交うところが浮かんで見える。
新子のクラスに東京から転校生がやってきた。お父さんが紡績工場のお医者さんだという島津貴伊子は、初めての田舎の暮らしになかなか馴染めない。好奇心旺盛な新子は貴伊子に声をかけ、二人は互いの家を行き来するようになった。新子が生き生きと話す1000年前の女の子の話に貴伊子も夢中になる。
丁寧なリサーチをへて、原作の髙樹のぶ子氏が驚くほどに再現された国衙の風景。台詞もきちんと土地の言葉になっています。日本のどこかでなく、ここでなければならなかったという「リアル」は、1000年の昔にも及びます。想像力豊かな新子が紡ぎ出す平安時代の女の子「諾子(なぎこ)」のストーリーが、昭和30年代の風景の上に重ねられます。「つむじが二つある子は気が強い」と言われていた覚えがありますが、マイマイ新子も夢見るだけの女の子でなく、男の子顔負けの意地も度胸もあるのがすかっとします。
自分のことを思い返しても、ただただ無邪気に遊んでいるだけでは済まないこともありました。大人が懐かしむだけでなく、子どもたちには今と違った軽さ、風通しの良さを感じてもらえそう。テレビやゲームがなくても楽しむタネをいくらでも見つけられた、そんな力を取り戻してほしいものです。(白)
2009年/日本/カラー/93分/35mm/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:松竹
製作:「マイマイ新子」製作委員会
(c)2009 高樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
★11月21日(土)“心に残る”ロードショー
公式 HP >> http://www.mai-mai.jp/
11月21日(土)より東京・シネマート六本木
12月大阪・シネマート心斎橋
チケット発売日:9月26日
シネマート共通5回券 5000円 1回券 1500円 (大阪は1300円)
*特別上映3作品(『霜花店(サンファジョム)- 運命、その愛』『作戦 - The Scam』『悲しみよりもっと悲しい物語』)には〈5枚綴り回数券(5回券)〉及び〈1回券〉はご使用できません。また、その他イベント付き上映など、ご使用できない上映回もございます(詳細は劇場までお問い合わせ下さい)。
上映作品 | |
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『ロマンチック・アイランド』 | 2008年/監督:カン・チョルウ/イ・ソンギュン、イ・ミンギ、イ・スギョン |
『ビースティ・ボーイズ』 | 2008年/監督:ユン・ジョンビン/ユン・ゲサン、ハ・ジョンウ、ユン・ジンソ ©2008 DCG Plus. All Rights Reserved. |
『あなたは遠いところに』 | 2008年/監督:イ・ジュニク/スエ、チョン・ジニョン、チョン・ギョンホ |
『最後の贈り物』 | 2008年/監督:キム・ヨンジュン/シン・ヒョンジュン、ホ・ジュノ、ハ・ジウォン |
『赤ちゃんと僕』 | 2008年/監督:キム・ジニョン/チャン・グンソク、キム・ビョル、ムン・メイスン |
『少年は泣かない』 | 2008年/監督:ペ・ヒョンジュン/ソン・チャンウィ、イ・ワン、イ・ギヨン |
『マイ・ファーザー』 | 2007年/監督:ファン・ドンヒョク/ダニエル・ヘニー、キム・ヨンチョル |
『ガールスカウト』 | 2008年/監督:キム・サンマン/キム・ソナ、キム・ウンジュ、ナ・ムニ、イ・ギョンシル |
『Sダイアリー』 | 2004年/監督:クォン・ジョングァン/キム・ソナ、コン・ユ、イ・ヒョヌ、キム・スロ |
『ナンパの定石』 原題:作業の定石 |
2005年/監督:オ・ギファン/ソン・イェジン、ソン・イルグク、ヒョニョン |
『情熱のステップ』 英題:Dance Of The Dragon |
2008年/監督:ジョン・ラデル/チャン・ヒョク、ファン・ウォン、ジェイソン・スコット・リー |
『霜花店(サンファジョム)-運命、その愛』 | 2008年/監督:ユ・ハ/チョ・インソン、チュ・ジンモ、ソン・ジヒョ ©2008 Showbox/Mediaplex, Inc., United Pictures & OPUS Pictures. All Rights Reserved |
『作戦-The Scam』 | 2009年/監督:イ・ホジェ/パク・ヨンハ、キム・ミンジョン、パク・ヒスン |
『悲しみよりもっと悲しい物語』 | 2009年/監督:ウォン・テヨン/クォン・サンウ、イ・ボムス、イ・ボヨン ©2008 CORE CONTENTS MEDIA ALL RIGHTS RESERVED.< |
監督:佐藤祐市
脚本:いずみ吉紘
出演:小池徹平、マイコ、池田鉄洋、田中圭、品川祐、中村靖日、千葉雅子、森本レオ、田辺誠一
高校中退のニート・マ男は、母の死をきっかけに就職することを決心する。しかし学歴無し、キャリア無しの彼が就職できる会社など、どこにもなく、やっとの思いで採用してもらえたのは小さなIT会社。ところが、そこはとんでもない"ブラック会社"だった。
出社初日から「定時なんてもんは、都市伝説だ!」と言い放たれ、サービス残業、徹夜は当たり前。交通費などの経費は決して出ず、怒鳴り散らすだけのリーダーとその腰巾着のガンダムオタク、お局様に挙動不審者とろくな同僚もいない。唯一、藤田さんだけが優しい言葉をかけてくれ、仕事もできて尊敬できる先輩だった。納期に向けて日々つづくデスマーチ。それでも後のないマ男は、がむしゃらに働き続けるのだが・・・
長くつづく不況でますます労働環境は厳しくなり、ワーキングプアなる言葉もよく聞かれる昨今。何のために働くのか? お金のためだけと言ってしまっては、こんな過酷な状況をとてもじゃないけれど乗り切れない。人とのつながりをの中で尊敬できる人と出会い自分を成長させていく、そんな楽しみや目標があってこそ、多少辛くたってがんばれるはず。でも、やっぱり会社に使われるだけじゃだめ。マ男くんがいかにして最悪の状況を打破して厳戒を超えていくのかをご覧下さい。
それにしても、小池徹平くんは頭ぼさぼさ、目に隈げっそりメイクでも綺麗な顔をしているなぁ。(梅)
2009年/日本/カラー/104分/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD
配給・宣伝:アスミック・エース
9月14日(月)、完成披露試写会が開かれ、監督と出演者が舞台挨拶に立ちました。キャストの皆さんは、撮影現場はまるで漫画喫茶のようにマッタリとソファーで漫画を読んでいて居心地の良い現場だったと口を揃えて言います。「ブラック会社度チェック」のフリップが各人に渡され、それにまつわる質問が司会者からされましたが、数々の項目について品川祐さんは「ざっとみて、これ吉本興業ですよね」。監督に「週1回でこんな会社、辞めてやる!って思うの?」と聞かれ、「週2で思いますよ」(笑)。
★11月21日(土)、シネクイントほか全国ロードショー
公式 HP >> http://black-genkai.asmik-ace.co.jp/
監督:エリク・ヴァン・ローイ
製作:ヒルデ・デ・ラーレ
脚本:バルト・デ・パウ
撮影:ダニー・エルセン
音楽:ヴォルフラム・デ・マルコ
出演:ケーン・デ・ボーウ(クリス)、フィリップ・ペーテルス(ビンセント)、ブルーノ・ヴァンデン・ブロッケ(ルク)、マティアス・スーナールツ(フィリップ)、ケーン・デ・クラーレ(マルニクス)、ヴェルル・バーテンス(アン)、アン・ミレル(クリスの妻エレン)、ティン・レイマー(ビンセントの妻バルバラ)ほか
建築家ビンセントが設計したマンションが完成し、パーティが開かれた。ビンセントは4人の友人たち、精神科医のクリス、その義弟のフィリップ、ルク、マルニクスに「何に使ってもいい」と最上階のロフトの鍵をこっそり渡す。男たちは妻に知られずに、秘密の情事部屋としてかわるがわる使っていた。ある朝ルクがロフトに来てみると、ベッドには全裸で手錠をかけられた女性が血まみれで死んでいた。この女性は誰なのか?合鍵を持っているのはこの5人だけ。犯人は友人の一人だ。誰もが疑心暗鬼にかられ、互いの腹を探り合う。
ベルギーで公開されるや、国民の10人に一人は観たという大ヒットを記録したサスペンス。私には馴染みは少ない出演者たちですが、どの俳優も人気と実力を備えているようで、なかなか魅力的です。5人の男たちとそれぞれの連れ合いとの生活が描かれ、一見幸せそうなのに秘められていたことがらが次々と暴かれていきます。誰もが嘘をつき、犯人に見えるうまい筋立てです。推理しながら探偵気分になりましょう。公開に先立ち、10月31日~12月3日に開催される大阪ヨーロッパ映画祭オープニング作品に決定しました。(白)
第16回大阪ヨーロッパ映画祭 公式サイト http://www.oeff.jp/
2008/ベルギー/カラー/117分スコープサイズ/SRD/R-15
提供:角川映画 配給:フリーマン・オフィス
公式 HP >> http://loft-m.jp/
監督:ウェイン・ワン(『ジョイ・ラック・クラブ』『スモーク』)
原作・脚本:イーユン・リー
出演:ヘンリー・オー(『ラスト・エンペラー』『ヒマラヤ杉に降る雪』『シャンハイ・ヌーン』)、フェイ・ユー(『ジョイ・ラック・クラブ』『アンディ・ラウ/天興地』)、ヴィダ・ガレマニ、パシャ・リチニコフ、
アメリカに住む一人娘イーランが離婚したと知り、北京から訪ねてきたシー氏。妻に先立たれて以来、料理の腕を磨いてきたシー氏は、たくさんのご馳走を作って娘の帰りを待つが、娘はほんのちょっと義理で箸をつけるだけ。久しぶりに会った父に「幸せよ」と語るが、会話は続かない。「幸せな人間が、そんなに無口か?」と問いかけるシー氏に、「お父さんも昔、無口だったわ」と切り返す。シー氏は娘の幸せを願って再婚を勧めたいのだが、父娘の距離はなかなか縮まらない。一方、シー氏は、娘が仕事で不在の昼間、片言の英語で積極的に人々と交流する・・・
親子だからこそ、心のうちを明かせないこともあると思う。それが誤解を生んだり、心配の種になったりすることもあるかもしれない。親子とはいえ、どこまでお互いの人生に立ち入っていいものだろうか。そうはいっても、やっぱり親子。静かな語り口で親子の絆を考えさせてくれる一作だった。 シー氏が公園で知り合い、片言の英語とお互いの国の言葉と手振り身振りで親しくなるイラン人のマダム。文革にイスラーム革命と、互いに政変を経験している二人の出会いが興味深い。イラン人のマダムの息子はアメリカで医者として成功しているが、孫の世話をさせたくないと、母親を老人ホームに入れてしまう。親を大事にするイラン人らしからぬ行為と、イランの友人に聞いてみたら、普通、孫が生まれたら、おばあさんを1週間べったり張り付かせて面倒を見てもらうものだという。老人ホームに入れる行為も信じられないという。アメリカ育ちのイラン人は、そんなところまでアメリカ的になってしまうのだろうか・・・ マダムを演じたヴィダ・ガレマニさんは、イラン人として、この設定に疑問を持たなかったのだろうか・・・と、つい考えてしまった。ま、不満は残るけれど、この映画を通じて、普段イランに接する機会ない方にペルシア語の美しさを知っていただけるのは何より嬉しい。(咲)
2007年/米・日本合作/35mm/ビスタ/カラー/ドルビー・デジタル/83分
配給:東京テアトル
公式 HP >> http://sennen-inori.eiga.com/
監督:ホ・ジノ(『八月のクリスマス』『四月の雪』)
出演:チョン・ウソン、カオ・ユアンユアン、キム・サンホ
韓国の建設会社に勤めるパク・ドンハは、同僚の代理で中国・成都に出張することになる。成都は、アメリカ留学時代に思いを寄せながら告白できなかった中国人留学生メイの故郷だ。到着した日、現地支店長に連れられて行った杜甫草堂で、ドンハはメイと偶然再会を果たす。10年の空白を埋めるように語り合う二人。留学時代、メイはドンハがサトコと、ドンハはメイがベンと付き合っていたと、お互いに思い違いをしていたことに今さらながら気付いた二人に恋心が燃え上がる。ドンハは帰国を一日延ばして、メイとの時間を作る・・・
ドンハを演じるチョン・ウソンの、男性としての自然な行動にドキドキさせられました。それに素直に応じられないメイ・・・。離れていた10年の間に、二人それぞれに出会いがあったのは当然のことでしょう。その相手との別れが不可抗力の天災で起こったものだとしたら、なかなか心の傷は癒えないものでしょう。でも、それを乗り越えていかなければならないのが人生。戸惑いはあっても、前に進むしかない。出会いは大切にしたいもの。(あ、出会いがなかなかない私!)
私ごとで恐縮ですが、成都には1989年にチベットへの行き帰りに行ったことがあります。杜甫草堂の竹林や赤い塀の変わらぬ美しさを懐かしく拝見しましたが、びっくりしたのは、立派になった空港でした。掘っ立て小屋のようだった空港から、ラサに向けて飛び立ったことを昨日のように思い出すのですが、20年の歳月が流れ、中国の変貌ぶりはほんとに凄いと驚くばかりです。
ちなみに、原題の「好雨時節」は、杜甫の詩の一節で、よい雨は、降るべき時期を心得て降ってくるという意味。
また、ドンハとメイの二人の会話は全編英語。中国が舞台なのに、英語?と、不思議に思うかもしれませんが、二人がアメリカ留学時代に知り合ったという設定だから。成都駐在の支店長は、中国留学経験があって、中国語ができますが、ドンハとは当然韓国語で会話しています。(咲)
2009年/韓・中合作/カラー/35mm/ビスタサイズ/100分/ドルビーSRD
配給:ショウゲート
チョン・ウソンが、『きみに微笑む雨』について語った特別記事
「WOW FES! 記者会見 〜 チョン・ウソン 大いに愛を語る」は、こちら→
http://www.cinemajournal.net/special/2009/wowfes/index.html
公式 HP >> http://www.kimiame.com/
監督:ロバート・ゼメキス
製作:ロバート・ゼメキス、スティーヴ・スターキー、ジャック・ラプケ
原作:チャールズ・ディケンズ「クリスマス・キャロル」
出演:ジム・キャリー(エベニーザ・スクルージ、3人の亡霊ほか全7役)、ゲイリー・オールドマン(マーレイ)、コリン・ファース(フレッド)、ロビン・ライト・ペン(ベル/ファン)、ボブ・ホスキンス(フェジウィッグ/ジョー老人)
19世紀のロンドン。クリスマス・イヴにスクルージの同僚マーレイが死んだ。共同経営者として長いつきあいだったのに、スクルージは悲しみもせず死者の瞼に置かれた小銭まで取り上げる。それから7年後のクリスマス・イヴ。スクルージはたった一人の甥フレッドの招きにも応じず、寄付を募る人を「余計な人口が減る」とはねつける。冷え切った我が家に帰ったスクルージは次々と奇妙なできごとに見舞われ、ついに死んだマーレイの亡霊が思い鎖を引きずって現れる。マーレイは自分の生き方を悔やんで泣き叫び、恐怖に震えるスクルージに「これから過去、現在、未来の3人の亡霊がやってくる」と告げる。
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの有名な物語を、ディズニーが忠実にアニメ化しました。実写版ではなしえなかった、独特なキャラクターの造形、自由自在なカメラワーク、スピード感をたっぷり楽しめます。メイキング映像では、顔にモーション・キャプチャー用の点をつけたジム・キャリーの演技のようすが見られました。彼の表情ひとつひとつがアニメに再現されて、キャラクターに命が吹き込まれています。彼は主人公のスクルージを始め、3人の亡霊など7役をひとりでこなしています。
スクルージはお金があっても貯め込むだけ、冷酷なこの老人をすれ違う犬さえよけてゆきます。一方、スクルージに雇われている事務員クラチットは、安くこき使われながらクリスマス・イヴにはスクルージのために乾杯するような人間です。二人の対照的な表情、家の造形なども見どころです。3人の亡霊に連れ回されたスクルージがどう変化してゆくのか、めくるめく映像をお見逃しなく。背景になる19世紀半ばのロンドンが、たんねんなリサーチを重ねてすばらしく描き込まれています。一時停止してゆっくり眺めたいくらい。一部劇場では3Dでご覧になれますので、19世紀のロンドンの街と人生模様をお楽しみください。(白)
2009/アメリカ/カラー/96分/シネスコ/ドルビーSRD/翻訳者:松浦美奈
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
© Disney Enterprises,Inc. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/christmas-carol/
11月11日(水)、六本木ヒルズアリーナにて「クリスマス・キャロル」熱唱ジャパン・プレミアが開催されました。
最初にストーリー・メッセンジャー福田沙紀さんが登場し、アリーナに飾られた高さ10mの巨大なクリスマス・ツリーの点灯式で始まり、映画『DISNEY'S クリスマス・キャロル』イメージソングを歌うJUJUさんのライブ、そして楽しい亡霊キャラクターとして登場したハリセンボンが、再び点灯式に挑もうとすると・・・光ったのは自分たち!!なんと!電飾一杯の衣装を身にまとっていたのです! 最後は、一般公募による890人の「クリキャロ聖歌隊」の皆様とゲストとで、クリスマス・キャロルのなかで最も日本人に親しみの深い「もろびとこぞりて」を大合唱を行い、楽しい中にも厳かで美しい祭典は幕を下ろしました。
監督:ヤン・ヒンリック・ドレーフス、レネー・ハルダー
出演:ウラジミール・ピリペンコ、その家族、友人、村の人々
ちゃんと、いいかげんに生きる。
ウクライナで年金生活をしているウラジミール・ピリペンコさん62歳。小さな村で妻と動物達とのんびり暮らしているが、彼には30年来の夢があった。それは一人でこつこつ作り続けてきた「潜水艦」で海に潜ること。特別な技術があるわけでなく、愛読していた雑誌に出ていた潜水艦の記事を参考に、古いパーツを集め、年金をつぎ込んでようやくリハーサルまでこぎつけた。孫を助手に、近くの沼(?)に進水してみるが、思うように動かないわ、水は漏れるわで大変な思いをする。しかしめげずにトラックを借り、親友と2人でいよいよ400km先の黒海へ向けて出発~!
ウクライナでは不可能を意味するとき「草原にある潜水艦のよう」と言うのだそうです。この言葉を形にしたように、のどかな農村に出現した緑色の潜水艦。何十年も彼の趣味に付き合わされた奥さんは「もう知りません」、村の人たちもやれやれと呆れている風です。それでもリハーサルを成功したとして(私は不安でいっぱいでしたが)、総出でお祝いをする気のいい人たちに顔がほころびます。愛する潜水艦いるか号は車と宇宙船が合体したような、可愛い形。黒海までの道中、興味深々に寄ってくるのは男性ばかりなのが面白いです。
2007年山形国際ドキュメンタリー映画祭で市民賞を受賞しました。(白)
この作品、主人公のピリペンコさんの魅力が炸裂してます。奥さんに超文句言われながらも、へそくり引っ張り出してバッテリーを買ってきてご満悦。街から来たらしいお金持ちの男たちに大事な部品を言い値で買うから売って欲しいと言われ、本人思いっきり吹っかけたつもりなのにあっさりOKと言われたときの慌てよう。も〜、なんとも可愛いおっちゃんなんです。やっとこさ憧れの黒海を眺めたときのひと言には、ずっこけちゃいました。そしてピリペンコさん、歌が上手い! ドキュメンタリーと言ってもご本人たちによる再現ドラマのような作りなのですが、不思議と演技して作っているいるような感じがしないのです。どうやって撮ったのかしら。(梅)
2006年/ドイツ/カラー/90分/ロシア語、ウクライナ語
配給:パンドラ、宣伝:エスパース・サロウ
★11月14日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!!
★前売鑑賞券1,500円:イメージフォーラムの劇場窓口にてお買い求め頂くと、「ピリペンコさんをちょっと体験!潜水艦ペーパークラフト(1/30)」をプレゼント!
監督:宮平貴子
企画・原案・製作:ユリ・ヨシムラ・ガニオン
プロデューサー:サミュエル・ガニオン
製作総指揮:クロード・ガニオン ポール・カデュ
脚本:KIKYO GONPIN
出演:穂のか、ロザンナ、ダニエル・ピロン、紺野まひる、高部あい、ジョニー・サー、吉行和子
亡き祖母の思い出を胸に、少女・杏里は一人プリンス・エドワード島にやって来た。 遺された古いノートに綴られた、祖母の初恋のカナダ人兵士を探していたのだ。 そんな杏里を温かく迎えるB&Bの女主人マリ、マリに想いを寄せる隣人ジェフ。 島で暮らす人々にも、悲しい過去と、悩みがあり、様々な出会いの中で杏里の悲しみに 閉ざされた心もいつしか癒され成長してゆく。
記者会見で宮平監督はケベックからの助成金も得ました、と話してました。 とても細くて綺麗な女性監督! 100年前モンゴメリが書いた「赤毛のアン」は世界中で翻訳され、 日本でも多くの人に今もなお感動を与え続けている。 パンフレットに「主演の穂のかさんは“とんねるず”の石橋貴明さんの娘」 と書かれてありました。そう言われて見ると、似ている感じがしました(笑) 宮平監督も穂のかさんも、これからの活躍が楽しみです。(千)
2009年/日本・カナダ/カラー/105分
配給:シネカノン グランジュテ 配給協力:映画センター全国連絡会議
★10月31日(土)よりシネカノン有楽町1丁目ほかにて全国順次ロードショー
シネカノン有楽町1丁目にて12/22まで上映中!
監督・脚本:森田芳光
出演:小雪、黒谷友香、伊坂俊哉、山中崇、小澤征悦、小池栄子、仲村トオル ほか
東京から突然故郷の函館に戻ってきた摩耶は、高校時代の友人たちと再会する。市電の運転手で世界の路面電車を見て歩きたいという道上保。足の故障を抱えて苦しんでいるマラソンランナーの川上孝。箱庭作りが趣味の夫と2人暮らしの専業主婦・平場さくら。養魚試験場の研究員でその研究が世界から注目されている保利満。地元の有力企業の社長と結婚し、摩耶をライバルと思っている魚住サキ。摩耶はそれぞれの夢や希望を叶えるための資金を差し出し、彼らは戸惑いながらもそのお金を受け取ってしまうのだが・・・
『(ハル)』以来13年ぶりの森田監督完全オリジナル作品は、お金をめぐる、ちょっと不思議なテイストの物語。お金の話になると妙に生臭くなりそうでいて、摩耶というキャラクターのとらえどころのなさや、映像の雰囲気はどこか現実離れしていて、鑑賞後、いいとか悪いとかじゃなく、どこかひっかかる作品でした。
宝くじを買うと必ず言うのは「1等、3億円当たったらどうする?」。絶対当たらないと思っているので、いつも結論が出ないのですが・・・。映画を観て、摩耶のように人の夢(ただし具体性は必要)に投資するのも、面白いかもしれないと思う一方、相手の人生を変な風に狂わせる可能性もあって、ちょっと恐くもあります。って、どうせ当たらぬものを、考えてもしゃあないのですが。お金は全然無いと困るし、ありすぎても困る、というのは小市民の発想でしょうか。(梅)
2009年/日本/カラー/110分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
特別記事 『わたし出すわ』完成披露試写会レポート もご覧下さい。
公式 HP >> http://watashi-dasuwa.com/
監督:片岡英子
出演:こまどり姉妹 長内栄子・長内敏子/渥美二郎
昭和30年代に一世風靡した双子の演歌歌手「こまどり姉妹」。71歳を越えた今も、「厚化粧の顔は見ないで、着物を見てね」「泣いてツケまつ毛が落ちそう」と観客を笑わせながら、日本全国を飛び回って歌い続けている。しかし、彼女たちは「歌手になったのは、歌が好きだったからじゃない。食べるためでした」と語る。戦時中、樺太から北海道に引き揚げてきたのは姉妹が7歳の時のこと。炭鉱夫だった父が結核に罹り、母は担ぎ屋をするも捕まってばかり。母は1軒1軒の家の前で歌って日銭を稼ぐ“門付け”を始めるが、双子が歌ってくれれば銭をやると言われ、12歳だった姉妹は歌い始める。やがて“門付け”より、“流し”の方が稼げると誘われ、帯広での流し時代を経て、一家は上京して山谷に移り住み、浅草で“流し”を始める。苦労の時代が続いたが、芸能界入りのチャンスが訪れ、「浅草姉妹」でレコードデビューを果たす。「三味線姉妹」「ソーラン渡り鳥」などでヒットを飛ばし、NHK紅白歌合戦や映画にも出演。しかし、人気の絶頂期、妹がステージ上でファンに刺され、もう左手が動かないかもしれないと言われる程の重傷を負う。懸命なリハビリで回復するも、次には末期癌が発覚。さらに両親が相次いで亡くなる。姉は一人で舞台に立ち、妹の介護に奔走する中、理想の男性と出会い子供も授かる。妹が癌を奇跡的に克服し、また2人で舞台に立てることになった頃、姉は子供を引き取り恋人と別れる。1983年再出発した2人は、レコードデビュー50周年を迎え、昨年その栄誉が讃えられて「日本レコード大賞 功労賞」を受賞した。
昭和30年代、テレビがわが家にもやってきて、よく観ていた「シャボン玉ホリデー」に出演していたのが、やはり双子の姉妹歌手“ザ・ピーナッツ”でした。洋風の彼女たちに対抗するように、着物姿で活躍していたのが“こまどり姉妹”。歌をそれほど覚えてはいないのですが、NHK紅白歌合戦の常連だった彼女たちの印象は鮮明に残っています。華やかに見えた彼女たちですが、これほどまでに波乱万丈の人生だったとは・・・ それは、戦争を経てきた日本人の多くが味わってきた人生とも重なるのではないでしょうか。炭鉱の町、引揚げ船、青函連絡船、上野駅、闇市、賑やかだった浅草六区、山谷・・・戦前戦後のモノクロ映像から昭和の時代を垣間見ることができ、決して忘れてはならない時代であることを再認させられます。姉妹の原点、小樽・銭函の冬の海を背景に2人が辿ってきた道を語る姿に、人生、諦めずに立ち向かうことの大切さを感じました。(咲)
2009年/カラー/35mm/ビスタサイズ/DTSステレオ/71分
配給・宣伝:アルタミラピクチャーズ
公式 HP >> http://www.komadorishimai.com/
監督・原案:ポン・ジュノ(『ほえる犬は噛まない』『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』
脚本:パク・ウンギョ、ポン・ジュノ
出演:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン
天井にも薬草が溢れる漢方薬屋。ナタで薬草を切る女。通りの向こうで犬と戯れている息子トジュンとその友達ジンテ。猛スピードで走ってきた高級車が息子を吹き飛ばす。轢き逃げ。「ベンツの行き先、ゴルフ場以外にあるか?」とゴルフ場に向かい、車を見つけ、車体を蹴るジンテとトジュン。さらにプレイ中の車の主らを待ち伏せして殴る。警察に連行され、轢き逃げを暴行と引き換えで示談にしようとしている脇で、トジュンは拾ったゴルフボールに無心に自分の名前を書いている。
数日後、行きつけの飲み屋でジンテに待ちぼうけを食わされたトジュンは、帰り道、女子高生の後姿を見かけて声をかけるが無視される。翌日、その女子高生が家の屋上で殺されているのが発見される。トジュンの名前の書かれたゴルフボールが証拠となり、トジュンは殺人犯として捕まる。「息子は殺人犯なんかじゃない!」母の真犯人探しが始まる・・・
トジュンは28歳。ジンテに「女と寝たことがあるか?」と聞かれて、「ある」「誰と?」「オンマ(お母さん)」と答えるような、未だに子どもの心を持つ青年。兵役を終え、映画復帰第一作に本作を選んだウォンビン。“小鹿のような目をした”純粋なトジュンを、ほんとうにそんな青年がいると思わせる演技で見せてくれています。通りの向こうから犬を母親の方に向かせ、軍隊風の挨拶をさせるトジュンの姿は、ウォンビン自身が兵役から戻ってきた挨拶をしているように思えました。母親が「あのワルとは遊ぶな」と言う友人のジンテを演じているチン・グは、NHK衛生放送で放映された韓流ドラマ「スポットライト」で、ソン・イェジン演じる主人公の大学の同級生で、1年遅れて放送局に入社したイ・スンチョル役だった若手有望株。テレビでは声が吹き替えで、ちょっと甘ったれた印象だったのですが、本作では、いかにも不良っぽくて存在感があります。そして、何より圧巻は母を演じたキム・ヘジャ! 息子の立ちションの跡を消そうとする姿には、大人になりきれない息子を思う気持ちが滲み出ています。真犯人探しをする執念は、朝鮮民族の持つ「恨(ハン)」の感情に裏づけされたものでしょうか。また、冒頭と最後に、枯れ草の原っぱでラテン風の音楽に乗せて踊る姿には、アリランの精神を感じました。テレビドラマの母役として数多くの作品に出演しているキム・ヘジャですが、最近では「宮~Love in Palace」の皇太后パク氏役が日本では有名でしょう。ずっと前にどこかで観たことがあると思って、ご経歴をみたら、映画『マヨネーズ』(1999)を拝見していました。チェ・ジンシル演じる娘の母親役。マヨネーズを髪の毛に塗りたくる姿が迫力でした。それにしても、本作の凄さ! ポン・ジュノ監督、またまた怪作を作ってくれました。(咲)
2009年/韓国/カラー/35mm/シネマスコープ/ドルビーSRD/129分
本年度(第62回) カンヌ国際映画祭<ある視点>部門正式出品
提供:「母なる証明」フィルム・パートナーズ
協力:ハピネット、大韓航空
小説「母なる証明」(幻冬舎文庫)
宣伝:樂舎
配給:ビターズ・エンド
公式 HP >> http://www.hahanaru.jp/
監督:ジュリアン・ジェロルド
出演:アン・アサウェイ、ジェームズ・マカヴォイ、ジュリー・ウォルターズ、ジェームズ・クロムウェル、マギー・スミス
イギリスの女流作家、ジェイン・オースティン。
『プライドと偏見』、『エマ』、『いつか晴れた日に』など映画化されている作品の原作者。彼女の生涯、唯一の恋をドラマティックに描いたロマンティック・ラブストーリー。
1795年、イギリス、ハンプシャー。当時のイギリス社会で、愛のための結婚は愚か者のすることだった。ジェイン・オースティンの両親も、財産があり家柄も良い夫こそが娘たちに相応しいと考えていた。両親がジェインの相手に白羽の矢を立てたのが、ウィズリー氏。非常に裕福な地元の名士レディ・グレシャムの甥だった。両親の必死の努力にもかかわらず、ジェインはウィズリー氏との結婚に同意しない。20歳の彼女は、階級や財産を越えたところに人生の価値があると考え、愛のために結婚するつもりだった。そんな中ジェインは若いアイルランド人のトム・レフロイに出会う。ジェインの兄に伴ってロンドンからやってきたトムは、ハンサムで知的な法律を学ぶ学生だったが、貧しかった。トムは洗練されていない地方の人々を蔑視していたが、ジェインが優れた才能に恵まれ、強い独立心を持つ女性とわかり徐々に惹かれていく。狭いハンプシャーの村の中で2人は様々な場所で顔を合わせるようになり、次第に惹かれあうようになる・・・・。
高校生の時、ジェイン・オースティンの小説「高慢と偏見(Pride1813年)」や「分別と多感(Sense and Sensibility、1811年)」を夢中になって読んだのを思い出します。男女の恋の紆余曲折が描かれていたという以外、実は、どんな内容だったか、今となってはすっかり忘れているのですが、その作者自身の恋愛を描いた映画が出来たと聞いて、これは是非観たい! と飛びつきました。あれほどの恋物語を書くには、ジェイン・オースティン自身にも豊かな恋愛経験があるはずと思っていたのですが、彼女が一生独身だったことや、恋愛経験について、これまで知られていなかったことなど、この作品の資料を読むまで知りませんでした。本作で描かれたトム・レフロイとの駆け落ちまで考えるほどの真剣な恋をしたらしいことは、2003年に伝記作家のジョン・スペンスが独自の調査に基づき発表したもの。それまでトム・レフロイとは短い火遊びのような恋愛だったというのが定説だったそうです。当時のイギリス社会の結婚や恋愛事情の背景にあらためて興味を持ち、もう一度、彼女の小説をゆっくり読んでみたくなりました。(咲)
2007年/イギリス/シネマ・スコープサイズ/1時間53分
配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ
宣伝:ヘキサゴン・ピクチャーズ
★10月31日(土)より TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー
公式 HP >> http://www.jane-austen-movie.jp/
監督脚本:松村浩行
助監督:大城宏之、石住武史、本間幸子
製作:柴野淳、河合里佳
撮影:居原田眞美
装置:相馬豊
装飾:浦井崇
編集整音:黄永昌
スチール:宮本厚志
出演:藤田陽子、菅田俊、上野龍成、上野凌雅
国境の海岸線を見張り続ける戦争遺跡トーチカ。
同じひとつの場所へと引き寄せられるように出会った男女。
トーチカの内側に拡がる深い暗闇の一点で二人の記憶が交差する。
『YESMAN NOMAN MORE YESMAN』 で2003年京都国際学生映画祭の 準グランプリを受賞した松村浩行監督の最新作。現ロシア領国後島出身の母親を持つ監督にとって 映画のロケ地である北海道根室市は縁のある土地だそうです。実存するトーチカを舞台に 主要登場人物は2人、劇中音楽も無くセリフと環境音のみで表現された映画。 目と耳と心が、どんどん深みに入っていく作品です。 (千)
2008年/日本/カラー/93分/DV-CAM Stereo 4:3
配給宣伝:トーチカ・ユニオン
★10月24日(土)渋谷ユーロスペースにてレイトショーほか
公式 HP >> http://www.tochka-film.com/
監督:サーシャ・ガバシ
出演:スティーヴ“リップス”クドロー(ANVIL)、ロブ・ライナー(ANVIL)、ラーズ・ウルリッヒ(Metallica)、レミー(Motorhead)、スコット・イアン(Anthrax)、スラッシュ(Guns N' Roses/Velvet Revolver)、トム・アラヤ(Slayer)
夢を諦めきれない人に捧げる、男たちの夢と友情の物語
カナダのトロントで結成されたバンド「アンヴィル」は、1982年にアルバム「メタル・オン・メタル」をリリース。多くのバンドがアンヴィルに影響を受け、成功してビッグになっていったが、アンヴィル自身はスターダムにのし上がることもなく、今なお成功を夢見て活動を続けている・・・
監督のサーシャ・ガバシは、高校生の時、ロンドンのクラブでアンヴィルの演奏を聴き、惚れこんで楽屋を訪れたのがきっかけで、夏休みに彼らの北米ツアーの裏方として付いていくことになる。多くのことを彼らから学んだ素晴らしい2ヶ月だったが、その後の関心は他のことに移り連絡も絶っていた。20年以上の時を経てアンヴィルとの再会を果たした監督は、彼らが昔と変わらずロックスターになることを目指して頑張っていることに胸を打たれ、ドキュメンタリーを撮る決意をする。2年に渡って彼らを追って綴った本作には、自分を信じて夢を持ち続け、友情という絆で苦境を乗り越えていく姿が映し出されている。本人たちには悪いけれど、思わず笑ってしまうような場面も! ヘヴィメタは苦手な私も、彼らの日常の素の姿に引き込まれてしまった。何事も継続は力!と、勇気付けられた一作。(咲)
2009年/アメリカ/81分/1:1.85/ドルビーデジタル
配給:アップリンク
10月24日の公開に合わせて、映画の主人公であるバンド・ANVILの来日、日本史上最大のメタル・フェスティバルLOUD PARK 09に出演することが決定!
【LOUD PARK 09】
日時:2009年10月17日(土)、18(日) 開場 10:00 / 開演 11:00
会場:幕張メッセ 9・10・11ホール
★ANVILは10月18日(日)SANCTUARY STAGEに出演
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/anvil/
監督:船曳真珠
脚本:柴田一成
原作:kagen(魔法のiらんど)
出演:石黒英雄(高原直人)、川島海荷(上野美里)、朝倉あき(小野寺由香)、落合扶樹(金田正敏)、桑江咲菜(斉藤久美)ほか
里美と由香は「彼氏に殺される…」というメールをよこしたまま、学校を休んだ真由美の家に向かっていた。心配する2人の目の前に真由美が落ちてくる! 死んだ真由美の携帯には彼女がハマっていた "携帯彼氏"のリクが笑う姿が残っていた。"携帯彼氏"とは、人気モバイルゲームサイト「あい・すくりーむ」で配信されている恋愛シミュレーションゲームのことだ。好みの「彼氏」を作成し、手軽に擬似恋愛を楽しめる。由香も"携帯彼氏"を持っていてラブラブなのだという。
これまで関心がなかった里美だったが、真由美の自殺の真相を探るため"リク"を自分の携帯にダウンロードする。しかし、リクのメモリにはもう元彼女の真由美は残っていなかった。もっと調べようとした矢先、バイト仲間の絵里が無断でリクを自分の携帯に転送し、またも不審な死をとげてしまう。
「魔法のiらんど大賞2007ケータイ小説アワード」で"ジャンル賞(ホラー・オカルト部門)"と"Hana*chu→賞"をダブル受賞した作品。女子中高生たちに口コミで広がり、累計180万の読者がいたそうです。すごい。北野武、黒沢清監督に師事した船曳監督はこれが長編映画デビュー。新人の川島海荷がヒロインの美里を、『エリートヤンキー三郎』の石黒英雄が、美里が憧れる先輩川原直人役で登場。
ケータイ小説は読者を飽きさせず逃さず、毎日引っ張っていくものですから、女の子が飛びつくネタ満載です。定番の純愛にサスペンスを加えたストーリーが新鮮で、今どきの女の子ファッションもきっちりきめています。イケメン揃いの"携帯彼氏"たちはラブゲージがあがっているうちはニコニコと可愛いのですが、雰囲気が悪くなると豹変して怖いです。これがほんとになったらぞっとしますね。人気沸騰したため、続編のケータイ小説「携帯彼女」というのも登場したとか。(白)
2009/日本/カラー/102分/
共同配給:GONZO、シナジー
★10月24日(土)新宿ピカデリーほか全国順次公開
公式 HP >> http://k-kare.jp/
9月24日(木)、草月ホールにて、『携帯彼氏』の舞台挨拶つき完成披露試写会が開催され、主演の川島海荷さん、朝倉あきさん、石黒英雄さん、船曳真珠監督、主題歌を担当した 弓木英梨乃さんが登場。満員の女子高生たちの声援を浴びました。
企画・製作:ネピュラプロジェクト
脚本・演出:成井豊、真柴あずさ
上演:演劇集団キャラメルボックス
映像監督:佐藤克則
撮影監督:大嶋広樹
キャスト:黒川智花、西川裕幸、大森美紀子、岡田さつき、菅野良一、大内厚雄、前田綾、岡内美喜子ほか
テレビの脚本家、根室美彦は40歳過ぎていまだ独身。しっかり者のアシスタントにアプローチしたいが、気弱なうえいつも邪魔が入る。飲めないお酒を飲んでテレビ局のディレクターのご機嫌取りをした夜、やっと自宅で2人きりになるチャンスがやってきた。ところがこんな時間に訪問者。ドアを開けると根室を「お父さん!」と呼ぶ若い娘が立っていた。実は大学卒業後、結婚して娘をもうけたのだが6年で離婚。妻には娘と会うことを禁じられ、札幌に住む妻子とは14年も会っていなかった。別れたとき5歳だった娘のいぶきは19歳になっていた。
演劇集団キャラメルボックスの2008年クリスマスツアー公演が映画館で観られます。原作は脚本・演出担当の成井豊がこの公演のために書き下ろした小説。この作品が初舞台となる黒川智花がいきいきと主役を演じます。黒川の父親役はキャラメルボックスの看板俳優・西川裕幸。大きくなった娘といきなり再会して戸惑う父親をペーソスとユーモアを交えて熱演。全国ツアーで3万人を動員した舞台を、生の迫力と臨場感を損なわずに再現した映像で楽しめます。劇団入門にぴったりです。(白)
2009年/日本/カラー/127分/HD(16:9)/5.1ch
配給:ソニー株式会社
宣伝:株式会社H14
★秋、新宿ピカデリーほか全国順次公開
全国共通鑑賞券2000円上映劇場にて販売中(当日:一般2500円、学生・小人2000円)
公式 HP >> http://www.livespire.jp/kimikodou/
会期:2009年10月24日(土)~29日(木)
会場:NHKみんなの広場 ふれあいホール(東京都渋谷区神南2-2-1)
入場料:500円(前売り/当日共通:アンコール上映も同額)
国際共同制作1本、アジア各国・地域制作4本、過去の名作3本、計8作品が上映されます。監督などゲストが来日し、Q&Aが行われる作品もあります。詳細は、HPでご確認ください。
●国際共同制作作品
『ピノイ・サンデー』(台湾・NHK・フィリピン・フランス)
●アジア各国・地域制作作品
『タハーン ~ロバと少年~』(インド)
『トゥルー・ヌーン』(タジキスタン)
『シャングリラ』(中国)
『キャプテン アブ・ライード』 (ヨルダン)
●アンコール上映
*第10回を記念して、過去のNHK共同制作3作品をアンコール上映
『アフガン・零年:OSAMA』
『リトル・チュン』
『ペパーミント・キャンディー』
★『キャプテン アブ・ライード』は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008で上映された作品。シネマジャーナル74号に記事を掲載しています。丘の上から素晴らしい光景を見晴らすアンマンの町で繰り広げられる老人と子どもたちの心温まる交流が描かれています。一方で、ヨルダンで初めて家庭内暴力を描いた作品です。
公式 HP >> http://www.nhk.or.jp/sun-asia/
監督:清水崇
脚本:保坂大輔
音楽:配島邦明
主題歌:ストレイテナー「CLONE」(EMIミュージック・ジャパン)
出演:柳楽優弥(ケン)、蓮佛美沙子(ユキ)、勝地涼(モトキ)、前田愛(リン)、水野絵梨奈(ミユ)、松尾スズキ(刑事)ほか
ケンは子供のころ転校して以来、ひさしぶりに旧友と再会する。モトキの婚約者は盲目の少女だったリン。ユキと名乗る少女も、モトキとケンを待っていた。ユキは10年前、みんなと一緒に遊園地のお化け屋敷に入ったまま、消息を絶っていたのだ。ここにいるのは本当にあのユキなのか?3人は半信半疑のまま、ユキを家まで送り届ける。ユキの母は娘の失踪後精神が不安定になり、妹ミユは「ユキは死んだ」と聞かされていた。ユキは家に戻って突然倒れてしまい、意識の戻らない彼女を4人は真夜中の病院へと運ぶ。辿り着いた病院には誰一人おらず、捜し歩くうちに、まるで迷宮のような不気味な空間となった。この場所にはみな覚えがあった。そして封印していた10年前の事件が蘇っていく。
富士急ハイランドの人気お化け屋敷「戦慄迷宮」を舞台に作られた、日本初の長編実写デジタル3D映画。
今まで観た3D映画は全てアニメーションだったので、実写版はこれが初体験。手がこちらに伸びてくるところなど特に不気味~でした。『包帯クラブ』(2007年)後、丸2年ぶりに観た柳楽優弥くんは、髪型も体型もすっかり変わって最初誰かわかりませんでした。まだ10代なのに、もっと身体しぼったほうがいいんじゃないかなぁ。目力はそのままなのでなんだかもったいない。ベネチア国際映画祭から戻った清水崇監督と、プロデューサーが舞台挨拶に登壇し、フッテージ上映の感想と「3Dアワード」のプレゼンターを担当した思い出など語りました。(白)
2009年/日本/カラー/3D映画/95分/ビスタサイズ/DTS
配給:アスミック・エース
(C)ショック・ラビリンス・フィルム・コミッティ2009
公式 HP >> http://3d-shock.asmik-ace.co.jp/
監督・脚本・製作:イエジー・スコリモフスキ
脚本:エヴァ・ピャスコフスカ
出演:アルトゥル・ステランコ、キンガ・プレイス、イエジー・フェドロヴィチ、バルバラ・コウォジェイスカ
どんよりとした雲がフタをしているかのような、ポーランドの田舎町。病院の火葬場で働く寡黙な中年男レオンは、年老いた母と2人暮らし。彼の日課は夜、自宅の部屋から見える病院の女子寮にいるアンナの様子を双眼鏡で覗くこと。しかし、街中で彼女に会っても声をかけることはおろか、まともに彼女の姿を見ることすらできない。それにはある理由があった。
アンナへの思いは日ごとに募る。母が亡くなり、仕事もリストラされてしまったレオンは、大胆な行動に出る。
アンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキ、クシシュトフ・キェシロフスキと並びポーランドを代表するの映像作家でありながら、日本公開作品が少なく「幻の巨匠」と呼ばれるイエジー・スコリモフスキ監督。71歳となって17年ぶりの新作を撮り、今なお現役であることを知らしめました。
あまりに寡黙で、暗い眼をしたレオンの様子は、初めこの男は殺人鬼か何かかと思ったほど。ところが、次第に彼のそれまでの過酷な人生が次第に明らかになり、アンナへの愛のいじらしさに、深いため息をついてしまいました。それでも、女性としてアンナの選ぶ結論は、やはりそれしかないだろうと思うのです。人が人とつながりを持つことが、ますます難しくなってきている今の世の中、レオンのような男がたくさんいるような気がします。(梅)
第21回東京国際映画祭審査員特別賞受賞
2008年/カラー/フランス、ポーランド合作/ポーランド語/94分/35mm/ヴィスタ(1:1.85)/Dolby Digital, Dolby SR
配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
宣伝:VALERIA
★10月17日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー
公式 HP >> http://www.anna4.com/
監督:セス・グロスマン
脚本:ホリー・ブリクス
出演:クリス・カーマック、レイチェル・マイナー、ミア・セラフィノ、ケヴィン・ヨン
サムは時空を越える能力を使い、事件現場を観察して、これまで多くの難事件を解決してきた。警察のグレン刑事はその方法をいぶかりながらも、サムに一目置いている。ある日、かつての恋人レベッカの姉が尋ねてくる。10年前にレベッカを殺した真犯人を捜して欲しいという。レベッカの当時の日記が発見され、犯人として死刑が決まったロニーは冤罪の可能性が高いというのだ。サムは妹のジェナや相談相手のゴールドバーグ教授の静止も聞かず、過去へ戻り真相を確かめようとするのだが・・・
2009年/アメリカ/カラー/90分/シネマスコープ/SRD/R-15指定
提供:AMGエンタテインメント/プレシディオ
配給:リベロ/AMGエンタテインメント
★10月17日(土)より、銀座シネパトスにてロードショー
公式 HP >> http://butterflyeffect.heteml.jp/
主催:財団法人日本映像国際振興協会 (ユニジャパン/第22回東京国際映画祭実行委員会)
共催:経済産業省(マーケット部門)、東京都(コンペティション部門)、文化庁(映画人の視点)
期間:2009年10月17日(土)~10月25日(日) 9日間
会場:六本木ヒルズ (港区) をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://www.tiff-jp.net/ja/
新たな才能から成熟した監督までを対象に、世界中から厳選されたハイクオリティーなプレミア作品群より“東京 サクラグランプリ”を選出する[コンペティション]のほか、日本未公開のエンタテインメント作品が集う[特別招待作品]、TIFF最多の作品数と観客数を誇る [アジアの風]、バラエティーに富んだ日本映画を海外へ発信していく[日本映画・ある視点]、「自然と人間との共生」をテーマにした特集上映 [natural TIFF]など様々なジャンルの作品を9日間で一挙に上映。
>> 本年度受賞結果
●映画批評家プロジェクト
“東京国際映画祭では、人材育成の一環として、映画を愛し、映画をしっかり見る目を持った映画界の未来を支えていく批評家のプロが育つことを望んでいます。そのプロを目指す方を応援する意味も込めて、今年も「映画批評家プロジェクト」を実施致します。映画祭期間中にコンペティション作品をご覧になり、批評を書ける方ならどなたでも参加できます。”
>> 応募資格・応募要領など
●共催企画「映画人の視点 Director's Angle/Actor's Angle」
“日本を代表する「映画人」を招き、トークと上映をオールナイトで堪能できる、映画ファン必見のイベント。
「Director's Angle」として、国内外で最も高い評価を受ける日本の映画監督のひとり、是枝裕和監督が登場。
さらに「Actor's Angle」と題して、日本を代表する俳優にもスポットを当てます。”
>> 詳細
コンペティション作品 シネジャ・スタッフ感想集。これから観る参考にどうぞ!
●『ダークハウス』
ほんとに暗い映画なんですが、映画らしいというか、うまいなぁと思わせる作品。『アンナの過ごした4日間』と同じポーランド映画で、なんだか似ています。(白)
●『少年トロツキー』
イッセー尾形みたいな高校生役の俳優さんがなかなか面白いです。楽しくて好き。(白)
●『台北に舞う雪』
チェン・ボーリンとトン・ヤオの「ボーイ・ミーツ・ア・ガール」作品。舞台になる台北近郊のひなびた町の雰囲気がいい。(白)
●『テン・ウインターズ』
大学入学で出会った2人の10年間の愛の軌跡。ヴェネチアの風景の中、すれ違いに胸が痛む普遍的なラブストーリー。(白)
●『イースタン・プレイ』
ブルガリアの首都ソフィアで、右翼の若者たちが観光で来ていたトルコ人の家族連れを襲います。いやはや、オスマントルコ支配500年への恨みは凄い! その場に居合わせた芸術家崩れの青年イツォは右翼集団の中に丸刈りにした弟の姿を見つけ、久方ぶりに家に帰るのですが、母親との会話にトゲがあると思ったら、母親ではなく父親が連れ込んだ女性。複雑な家庭環境を背景にした父や弟との確執を描く一方で、襲われたトルコ人の娘とイツォとの間に恋が進行していきます。う~ん・・・ 未来は明るいのか?!(咲)
●『ボリビア南方の地区にて』
ボリビアの首都ラパスが舞台の作品を初めて観ました。ワンシーン・ワンショットのカメラワークが素晴らしい。(千)
ボリビアの先住民族の人たちは時間や人生を輪で考えるそうで、カメラワークも常にぐるっと廻っている感じ。高地にある首都ラパスでは、お金持ちほど気圧の低い南の方に住むので、南方の地区=高級住宅街。ボリビアの上流階級の生活を垣間見るという好奇心を満たされただけでない、不思議な余韻の残る作品でした。(咲)
2009・東京国際映画祭上映作品で、一番最初に観たのがこれ。観終わって、とっても幸せな気分…。ラパス南方の低地に住む、子ども三人と、自分の意志を押し通すエネルギーを持った美人の母親を軸に、先住民族の使用人を含む生活を、たおやかに描いている。登場人物には、一つずつ(こればっかりは変えられない)ことを抱えている。それに、ボリビアの現実がスパイスとして、うまくミックスされていた。ストーリーは、世界のどこの家庭でも有り得る展開だ。どうして私を幸せ気分にさせたのだろう…。
贅沢な家、自然と調和した庭、調度品、召し使いが丹精して作る郷土料理、どれをとっても素敵なものばかり。使い勝手も良さそう。化粧水の瓶一つ一つが美しく、まさに今、使っているとわかる。シーツも上質らしく、包まれて寝てみたくなる…。素敵なもので溢れかえっていたが、最後、今後は自分の思い通りには生活できないと悟った母親が、涙ながらに大きな決断をする。母親の涙を見た、可愛い末っ子坊やが、「どうして泣いているの?」とママに聞く。すると「家族が一緒だから、幸せ。だから泣いているのよ」と言う。ずいぶん前に、ちょっぴり似た経験をした私は、映画が終わり、会場が明るくなる前の何秒かの間に、頑張ってね、とそっと呟いた。(美)
●『エイト・タイムズ・アップ』
職も家も失ったバツイチ女性が主人公で、かなりリアルな作品でした。就活に失敗し続けても諦めない「七転び八起き」の精神を私も見習いたいです。(千)
●『NY スタテンアイランド物語』
ニューヨークのすぐそばにスタテン島と云う町があるなんて知らなかったです。ギャング、ギャンブル、エコ? を描くところがアメリカ的で少しグロテスクだけど面白いし泣けました。(千)
●『マニラ・スカイ』
実話に基づく作品。だとしたら本当に絶望的で重くて暗くて辛い・・・ 救いようが無いくらいの不幸な人生をおくるフィリピン青年でした。(千)
●『ロード、ムービー』
映写機を搭載したボロボロのトラックが、インド西部ラージャスターンの沙漠をひた走る。撮影会には、どこからともなく人々が集まりお祭り騒ぎ。まるで夢の世界。水の大切さ、人を思いやる心・・・ 素直に笑って感動できる映画でした。インド映画にしては短い97分!(咲)
●『永遠の天』
いきなり流れてきたイントロが、まぎれもなくレスリー・チャンの曲! それだけで、もうドキドキ。(最初と最後に流れる歌は、谷村新司のカバー曲「有誰共鳴」。途中に、もう1曲かかります。)両親を亡くした少女と幼馴染の少年との恋の行方を、少女の腹違いの弟を絡ませて、1990年代初頭から北京オリンピックまでの時代を背景に描いたもの。年代の目安にレスリーのことなどが語られます。ファンにとっては辛い2003年春のことも、SARS騒動と共に触れられます。レスリーの歌以外にも、懐かしい曲が出てきます。きゅんと切ない物語。それにしても、主役3人とも親との関係が不幸すぎる・・・(咲)
会期10月17日(土)~21日(水)
主催:東京国際女性映画祭実行委員会
<共催>東京都/ユニジャパン(財団法人日本映像国際振興協会)
会場:東京都写真美術館 *ホールお問合せ03-5777-8600 (8:00-22:00)
東京国際映画祭と共に22回目を迎えた東京国際女性映画祭。今年は、会場を東京都写真美術館に移して開催されます。上映作品は、7カ国 10作品。オープニングは、田中絹代生誕100年記念として、今回が初上映の貴重な映像が披露されます。
◆上映作品
女ばかりの夜 田中絹代監督
田中絹代の旅立ち占領下の日米親善芸術使節 梶山弘子監督
今、このままがいい プ・ジヨン監督
母の道、娘の選択 我謝京子監督
ビューティフル・アイランズ 海南友子監督
カティンの森 アンジェイ・ワイダ監督
アンを探して 宮平貴子監督
アニエスの浜辺 アニエス・ヴァルダ監督
赤い点 宮山麻里枝監督
東海道四谷怪談 羽田澄子監督
●シンポジウム <私たちの選択>
日時: 10月18日(日) 12時よりの『母の道、娘の選択』上映後
★入場無料 どなたでも参加できます。
登壇者:
『母の道、娘の選択』我謝京子監督
『ビューティフル・アイランズ』海南友子監督
『アンを探して』宮平貴子監督
『赤い点』宮山麻里枝監督
独自の経歴を携えて日本映画界に新しく登場した4人の監督が、それぞれの経験を踏まえた女性の生き方の広がりと可能性を話しあう。
東京国際女性映画祭で上映される2つの作品を紹介します。
公式 HP >> /http://www.iwff.jp/
監督:アン・フレッチャー
脚本:ピーター・チアレッリ
撮影:オリヴァー・ステイプルトン
音楽:アーロン・ジグマン
音楽監修:バック・デイモン
出演:サンドラ・ブロック(マーガレット・テイト)、ライアン・レイノルズ(アンドリュー・パクストン)、マリン・アッカーマン(ガートルード)、クレイグ・T・ネルソン(父ジョー)、メアリー・スティーンバージェン(母メアリー)、ベティ・ホワイト(祖母アニー)
©Touchstone Pictures, Inc. All Rights Reserved.
超やり手の女性編集長マーガレット40歳、「魔女」と部下から怖れられている。アシスタントのアンドリュー28歳は編集者になることを夢見て3年、今日も彼女のためにコーヒーを運んでいた。会長室に呼ばれたマーガレットは、カナダ国籍の自分のビザが切れ、国外退去になると聞かされる。慌てたマーガレットはそこへ来合わせたアンドリューを捕まえ「私たち結婚します」と宣言する。マーガレットはキャリアを守るため、アンドリューは編集者となるため、この偽装結婚でな難局をうまく乗り切ろうとする2人は、結婚の挨拶にアンドリューの実家を訪ねることになった。そこはアラスカ…!
鼻っ柱の強い女性がよく似合うサンドラ・ブロック、今回は恋よりも仕事に生きるキャリアウーマンのマーガレット。会社では怖いものなしですが、アンドリューの実家に行ってみると、ことごとく勝手が違いとまどいます。シャワーでかちあってしまった2人のヌードシーンもありますが、まるでスポーツ選手のタッグマッチのようで、ひとつも色っぽくないのはなぜでしょう??
アンドリューを愛する人々に嘘を重ねなければいけない2人、その嘘を見破ろうとやってくる調査官とのかけひきにも注目。先の見える展開ではありますが、ロケーションの美しさと芸達者な面々が揃って最後まで面白く見せます。(白)
2009年/アメリカ/カラー/108分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ディズニー
公式 HP >> http://www.movies.co.jp/ana-muko/
「アメリ」(2001)で主役のアメリを演じ大ブレイク、新作「ココ・アヴァン・シャネル」が9月18日に日本公開となるなど、ハリウッドでも大活躍のフランスの人気女優オドレイ・トトゥ。 日本では、「コーラス」(2004)でその存在感をアピールし、新作「幸せはシャンソニア劇場から」では主役もつとめる天才子役、マクサンス・ペラン。 フランス映画界の今を彩るこの2人が、ブレイクする前に出演していたショートフィルム2作品(「Triste a Mourir」「For interieur」)が、10月16日(金)~11月15日(日)まで、ブリリアショートショートシアター(横浜・みなとみらい)の「Short Shorts 4」プログラム内にて特別上映されます。
オドレイ・トトゥ主演「Triste a Mourir (哀しき旅路)」
(フランス/1999/Alexandre Billon監督)
オドレイ・トトゥ演じるキャロの、友人を捜し求め続ける寂しい旅を描く。オ
ドレイが、『アメリ』でブレイクする前の貴重な作品。
マクサンス・ペラン主演「For interieur (おじいちゃんの秘密の缶)」
(フランス/2005/Patrick Poubel監督)
ボクのおじいちゃんのコレクション、それはいろんな思い出の音が詰まった、たくさんの缶!
『コーラス』、『幸せはシャンソニア劇場から』の実力派人気子役、マクサンス・ぺラン主演。
★ブリリア ショートショート シアターにて 10月16日(金)~11月15日(日)の間上映
劇場 HP >> http://www.brillia-sst.jp/
主催:ドイツ映画輸出公団/GOETHE-INSTITUT JAPAN ドイツ文化センター
会期:10月15日(木)~10月18日(日)
会場:新宿バルト9(新宿区新宿3-1-26)
今年も待望のドイツ映画祭の季節がやってきました! 昨年に引き続き新宿のど真ん中で、本国ドイツでも話題の最新作を中心に、トーマス・マンの古典『ブッデンブローク家の人々』から、戦後の伝説の女優の人生を追った『ヒルデ - ある女優の光と影』、監督の故郷ハンブルクに捧げられた『SOUL KITCHEN』(ベネチア映画祭で審査員特別賞受賞)等など、多彩な作品が公開されますので、ドイツ・ファンもそうでない人も要チェック!!! (I)
公式 HP >> http://www.germanfilmfest.jp/
監督・脚本:市井昌秀
撮影:関将史
録音:茂木祐介
制作:遠矢東宏
衣装:市井早苗
メイク:佐藤絵里
音楽:朝真裕稀
出演: 森谷文子(律子) 今野早苗(千夏) 柿沼菜穂子(ルミ子)西本竜樹(礼二) 中村邦晃(野村)
緑の穂が揺らぐ田園風景の中、ポツンとある町工場。そこで働く主婦、律子30歳。 小さなプラスチック部品を目の高さまで近づけ、歪み、突起を検査する律子の目は、 人との関わりを拒絶する冷たさを浮き上がらせている。 過去の辛い体験から、夫とも冷え切った関係だ。 毎日、毎日、変化のない生活の中、ある日、新しいパート従業員・千夏が入って来た。 彼女は妊婦だった。律子は仕事を教える立場上、少しずつ親しくなる。
今年になり自腹でパンフレットを買ったのは、確か五冊目。 今、公開中の『無防備』を観て、迷わずパンフレットを買いました! シネマート新宿で上映中! 今週は確実、来週も多分やるとおもいますので、是非ご覧下さい。
哀しみ、嫉妬、怒り、不満、諦め、自暴自棄…。 あらゆるマイナス感情を体現できる女優さんに巡り会いました。 主演・森谷文子さんです。 この方の無表情の中のマイナス引力に痺れました。 服を脱ぎ捨てるシーンで見せた母性を感じさせる体、 農道を裸足で走るシーンで見せた諦め切れない人生の地団駄・・・。
観終わって、シネマート新宿を出て「彼女はこれからどう生きていくのか、私なら・・・」など、 律子に想いを馳せていたところ、(咲)さんに呼び止められ、現実に戻りました。 でも、今でも律子のそれからが気になっている私です。(美)
第13回 釜山国際映画祭コンペティション部門グランプリ受賞
第30回 ぴあフィルムフレスティバルグランプリ受賞
2008年/日本/88分/デジタル/カラー/R-18/シネマート新宿にて上映中
公式 HP >> http://www.muboubi.com/
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドゥミ、マチュー・ドゥミ
登場者:ジャン=リュック・ゴダール、ジェーン・バーキン、カトリーヌ・ドヌーヴ、ハリソン・フォード、ジム・モリソン 他
映画作家になってから今年で55周年、81歳になるアニエル・ヴァルダが自らの人生をたどる旅。それは彼女の個人的なものであるとともに、さながら現代社会史をたどる旅でもあるのです。
アニエス・ヴァルダを全く知らず、ジャック・ドゥミのパートナーであることすら初めて知りました。冒頭から、生まれ故郷のベルギーの浜辺に鏡をいっぱい設置していろんな角度から撮影する試みを楽しそうにしている姿や、パリの街中に砂を敷き詰めて自分のオフィスを出現させちゃったりする様子が、とってもお茶目で、人生の大先輩に失礼かもしれませんが、なーんか可愛い人だなぁと思ってしまいました。(梅)
第65回ヴェネチア国際映画祭 特別招待作品
第34回フランス・セザール賞 ドキュメンタリー賞受賞
2008年/フランス/113分/字幕:寺尾次郎
配給:ザジフィルムズ
★10月10日(土)より、岩波ホールにてロードショー
公式 HP >> http://www.zaziefilms.com/beaches/
この作品の上映を記念して特集上映「アニエス・ヴァルダの世界」が開催されます。
監督:堀部圭亮
原作:木下半太「悪夢のエレベーター」(幻冬舎文庫刊)
脚本:鈴木謙一、堀部圭亮
撮影:北信康
美術:磯田典宏
主題歌:タカチャ「AIO~愛をください」レインボーエンタテインメント
出演:内野聖陽(安川三郎)、佐津川愛美(愛敬カオル)、モト冬樹(牧原静夫)、斎藤工、大堀こういち(管理人)、芦名星(須藤陽子)、本上まなみ(小川麻奈美)ほか
©2009「悪夢のエレベーター」製作委員会
小川順が目醒めると見知らぬ男が覗き込んでいた。そこはエレベーターの中、閉じ込められて非常電話もつながらず、唯一の携帯は充電が切れている。順のほかには派手なシャツの安井三郎、緑色のジャージ姿のめがね男牧原、黒尽くめのゴスロリ少女カオル。痛む頭の中で順はそれまでのできごとを思い出す。そうだ、身重の妻からの電話で急いでいるところだったのだ。出産の立会いをしなければっ!! 大声で助けを呼び始めた彼を3人は冷ややかに見る。「もう全部試しました・・・」
木下半太原作の悪夢シリーズの第1弾にして1番のヒット作。閉じ込められたエレベーターの中での人間模様。これは何も情報を入れずに観るのが絶対に面白いです。そして観終わった後、情報を探したくなることうけあい。
メガホンをとったのはこれが初の長編作品となる堀部圭亮監督。共同脚本は『アヒルと鴨のコインロッカー』の鈴木謙一。個性豊かなキャラクターにぴったりの配役を迎えて、映画ならではの面白さで魅せます。中でも注目したのは佐津川愛美さん、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』と並ぶ代表作になるのではないでしょうか。(白)
話が二転三転する面白さもさることながら、それぞれのキャラクターが濃く、くっきりと描かれているのが魅力的。そして何となく世の中全体を覆っている閉塞感に対して、かっこわるくても打破してやりたいという思いが、重くなりすぎずにエエ塩梅で込められているのがいいです。それにしても、大堀こういちの顔は出てくるだけで悪夢だ。(梅)
2009/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/DTSステレオ
製作プロダクション:ダブ/製作:日活、スモーク
配給:日活
宣伝:トルネードフィルム
公式 HP >> http://www.akumu11.jp/
※ 10月5日(月)、セルリアンタワー東急ホテルにて、"エレベーター尽くし"のプレミア記者会見が開催されました。 エレベーターから登場し、記者会見場に向かった登壇者5名(内野聖陽さん、佐津川愛美さん、モト冬樹さん、斎藤工さん、堀部圭亮監督)。公開を目前として撮影秘話や公開への意気込みを披露しました。 フォトセッション時にはヒットを祈願して史上初となるオーダーメイドのエレベーター型ケーキ(高さ75cm、幅60cm)への入刀イベントも行われ、大盛り上がりを見せました。
監督:飯田基晴(『あしがらさん』)
企画:稲葉恵子
撮影:常田高志、土屋トカチ、飯田基晴
音楽:末森樹
製作:映像グループ ローポジション
―いのちをめぐる旅が始まる。―
飯田監督は一人の老婦人に「映画を作ってください」と依頼を受ける。彼女は長い間捨てられた猫たちの面倒を見てきた。あとからあとから捨てられる小さな命、救っても救ってもきりがない。「これ以上不幸な犬猫が増えないように、たくさんの人に知らせるには」と映画を作ることを思いついたのだという。それまで特に関心があるわけではなかった飯田監督は、町にいる犬猫を見つけることから始め、犬猫の保護・処分施設や助けようと奔走する人たちを訪ねる。現実を知るにつけ、真摯に犬と猫と人間とのかかわりを見つめていくことになります。
日本はペット大国と言われているらしいですが(これは売買されるペットの数からでしょうか)、そんな国で、殺処分される犬と猫が年間30万頭、1日に1000匹近くが殺されているというのをご存知でしょうか? 取材に応じて撮影を許可してくれた行政施設は1件。飼い主によって持ち込まれた「不要犬・猫」はすぐに処分。外で保護された犬たちは1日ごとに押しだされるように処分される箱へと近づいていきます。1週間以内に引き取り手が現れなければ、短い命を終えることになります。施設の職員、不妊手術をする獣医師の方々の率直な言葉が胸に響きます。4年間かけて作られた映画なので、初めと終わりころでは現状が少し変わっていますが、今も人間の都合で捨てられる犬と猫は後をたちません。民間の保護施設で訓練される「しろえもん」と名づけられた犬の姿に、思わずエールを送ってしまいました。「私が生きているうちに見せて下さい」という老婦人との約束は残念ながら守れませんでしたが、時間がかかった分中味のつまった作品になりました。(白)
2009年/日本/カラー/HD/16:9/118分
配給:東風
宣伝協力:スリーピン
★10月10日(土)ユーロスペースほかにてロードショー
公式 HP >> http://www.inunekoningen.com
監督:ジャスティン・リン
脚本:クリス・モーガン
出演:ヴィン・ディーゼル(ドミニク・トレット)、ポール・ウォーカー(ブライアン・オコナー)、ジョーダナ・ブリュースター(ミア)、ミシェル・ロドリゲス(レティ) ほか
©2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
トレイラー強奪事件の犯人として警察に追われL.A.から逃亡した後も、相変わらずドミニカで仲間とオイルタンクトレイラー強奪を続けている凄腕のドライバー、ドミニクだったが、派手にやり過ぎてそろそろまた逃げなくてはならない状態になった。恋人のレティを巻き込むことを恐れた彼は、黙って彼女の前から姿を消す。
パナマに1人潜伏していたドミニクの元に、妹のミアから衝撃的な知らせが届き、彼の怒りに火をつけた。危険を顧みずL.A.へと戻ってきたドミニクの情報は、FBI捜査官となったブライアンの耳にも届く。
『ワイルド・スピード』シリーズとしては4作目ですが、第1作目の出演陣が再結集して作られた真の続編となります。車、スピード、女、犯罪、友情と、徹底して男の子とカーマニアのための娯楽作品です。アメリカでは大ヒットしたようですが、最近は若者の車離れが深刻という日本ではどうでしょうか? 数々の車が出てきますが、日本からも日産 スカイラインR34 GT-Rとスバル インプレッサWRX STIが参戦しています。(梅)
2009年/アメリカ映画/スコープ・サイズ/カラー作品/107分/ドルビーSRD/字幕翻訳:岡田壮平
ユニバーサル映画
配給:東宝東和
★10月9日(金)、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://wild-speed-max.com/
公開決定!
監督・脚本:ホン・ジヨン
撮影:チェ・サンムク
出演:チュ・ジフン、シン・ミナ、キム・テウ
モレは幼いころからずっとそばにいてくれたお兄さんのような存在のサンインと結婚して1年。甘く、幸せな新婚生活を送っていた。サンインはファンドマネージャーの仕事を捨て、昔からの夢だったフレンチ・レストランを開こうとしている。モレはそんなサンインを笑顔で応援していた。
ある日、モレは開館時間以外にこっそり忍び込んだ美術館で、不思議な青年と出会う。美術館員に見つからないようにと一緒に隠れた窓際の狭い空間で、肌が触れあい、吐息が耳をかすめるほど接近し、夏のまぶしい日差しは2人の理性を奪いさる。
その夜、モレはサンインに隠しごとはできないと、名も知らない青年としてしまったことを打ち明ける。サンインは怒るが、正直であろうとするモレのために、このことは忘れようと言う。ところが、レストランを開業するためにサンインがフランスから呼び寄せたシェフこそが、あの日の青年・ドゥレだった。ドゥレは2人の家に居候することになり、3人の奇妙で危うい共同生活が始まる。
韓国映画で三角関係というと、なんだかひどくドロドロしそうですが、そうはなりません。一目で心惹かれた女性が、大切な先輩の妻だと知っても、愛する気持ちに素直であろうとするドゥレ。確かに夫を愛しているのに、全然違うタイプの男性にどんどん惹かれていく自分自身に戸惑うモレ。確かな絆を感じていたのに、ドゥレの登場によるモレの変化にうろたえ、芽生える嫉妬心をどうしようもないサンイン。三者三様の理性と感情のせめぎ合いが、どれも共感できて、どう決着をつけるのかとちょっとドキドキしながら観ていました。この作品でのチュ・ジフンは実にナチュラルなたたずまい。新しいファンを獲得するのは間違いないでしょう。(梅)
2009年/韓国/102分/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD/字幕翻訳:根本理恵
配給:ショウゲート
協力:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント
宣伝:アルシネテラン、ショウゲート
★10月3日(土)、シネカノン有楽町2丁目、渋谷ヒューマントラストシネマ文化村通り、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
公式 HP >> http://kitchen-movie.com/
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
原作:ギュスターフ・フローベール
脚本:ユーリィ・アラボフ
衣装:クリスチャン・ディオール
音楽:ユーリイ・ハーニン
出演:セシル・ゼルヴダキ(エマ・ボヴァリー)、R.ヴァーブ、アレクサンドル・チェレドニク、B.ロガヴォイ
修道院で厳格な教育を受けたエマは医師シャルル・ボヴァリーに嫁ぐ。田舎の町での単調な生活、凡庸な夫に失望したエマはふさぎがちになる。エマの健康を気遣って、夫が引越した新しい町でエマは娘を出産する。エマの心は満たされることがなかったが、慰めになるのは隣家の青年レオンだった。レオンは勉学のためにパリへ旅立ち、エマはドンファンのロドルフォとの情事に身を焦がす。夫は新しい治療法に失敗し、さらに失望したエマはロドルフォに一緒に逃げようという。そんなつもりのないロドルフォは手紙を残して出奔し、エマはショックのあまり床に伏してしまった。シャルルが誘った観劇でレオンに再会したエマは、ついに彼と結ばれる。
世界文学全集にあったけれど読んでいなかったフローベールの「ボヴァリー夫人」。実際にあった事件をもとに、5年の歳月をかけて執筆したものだそうです。今に置き換えても気持ちは充分通じる話。時代変われども、人のすることというのは変わらないのですねぇ。心の隙間を浪費で埋めていくというのは、現代では買い捲ったあげくのカード破産ですし、人妻の不倫も昼メロだけではありません。さすがに1857年に発行された当初、風俗紊乱(びんらん)の罪に問われ裁判となったそうですが結局は無罪。この作品についてフローベールは「ボヴァリー夫人は私だ」と記者に言ったとされています。
映画は鬼才ソクーロフが1989年の自作を再編集したものです。167分あったという前作のどこが削られたのでしょう? エマの夫のシャルルは妻を気遣う優しい夫なのに、エマは不満たらたら。めぐり合わせが悪かったようで実にお気の毒。ソクーロフ監督は中学2年生で原作を読んで衝撃を受けたとか。私も遅ればせながら読んで3つの柩の謎を知りたいものです。(白)
1989年=2009年/ソ連=ロシア/カラー128分/DVカム/ロシア語、フランス語/日本版字幕:児島宏子
配給:パンドラ
★10月3日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式 HP >> http://www.pan-dora.co.jp/bovary/
監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ
プロデューサー:ウォルター・パークス、ローリー・マクドナルド
音楽:ハンス・ジマー
撮影:ロバート・エルスウィット
キャスト:シャーリーズ・セロン(シルヴィア)、キム・ベイシンガー(ジーナ)、ジェニファー・ローレンス(マリアーナ)、ホセ・マリア・ヤスピク(カルロス)、ヨアキム・デ・アルメイダ(ニック)、J・Dバルド(サンティアゴ)ほか
©2008 2929 Productions LLC, All rights reserved.
海辺の繁盛しているレストランのマネージャー、シルヴィアは美貌と知性、そつのない接客によってスタッフや顧客からの信頼もあつい。しかし、ひとたび仕事を離れると全く違った一面を見せた。だれかれかまわず肉体関係を持ち、1人になると自傷行為に走っていた。関係を続けていたシェフはそんなシルヴィアをなじるが、聞く耳を持たない。ある日、シルヴィアを追ってきたカルロスという男性を部屋に招き入れるが、彼の話は意外なものだった。シルヴィアは封印してきた過去を思い出す。
マリアーナという名で呼ばれていた10代のころ、ニューメキシコの国境の町で家族と暮らしていた。一見仲睦まじい家族だったが、マリアーナは美しい母ジーナの微妙な変化に気づく。
ギジェルモ・アリアガは『バベル』『21グラム』脚本として知られていますが、この作品で初の長編監督としてデビュー。脚本を大いに気に入ったシャーリーズ・セロンは主演ばかりでなく、エグゼクティブ・プロデューサーとしても参加し、クリエイターをバックアップしています。
彼女の推薦で母親役のジーナを演じたのは『L.Aコンフィデンシャル』でオスカーを獲得したキム・ベイシンガー、不倫の愛に葛藤する主婦を熱演。2人のオスカー女優と共演することになったジェニファー・ローレンスは、母親への愛と憎しみで引き裂かれる思春期の娘を殆ど素のままかと思うほど自然に演じて、第65回ヴェネチア国際映画祭で「マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞)」を受賞しました。(白)
2008年/アメリカ/カラー/106分/シネスコ/SRD・DTS・SDDS/英語・スペイン語/
配給:東北新社
公式 HP >> http://yokubou-daichi.jp/
監督・脚本:イ・ファンギョン
原作:クィヨニ
撮影:イ・ガンミン
キャスト:ソン・スンホン(チ・ウンソン)、チョン・ダビン(ハン・イェウォン)、イ・ギウ(キム・ハンソン)、アン・ヘス(キム・ギョンウォン)、イ・ミニョク(キム・スンピョ)、キム・ジヘ(ヒョビン)
©2009 Com Entertatinment.&(株)BM
ネットの掲示板に自分の学校の悪口を見つけたイェウォンはさっそく、抗議の書き込みをして溜飲を下げた。ところが携帯にチ・ウンソンと名乗る男からの電話がかかってくる。悪口を書いた張本人の商業高校の男子生徒でなんと番長であるらしい。なぜ私の番号がわかるの?と不思議に思うイェウォンはとにかく逃げまくる作戦に出るがウンソンは学校までやってくる。担任の目をかすめ、塀を乗越えたイェウォンはウンソンの上に落っこち、はずみでキスしてしまう。「責任を取れ!」と彼氏きどりのウンソン。イケメンのウンソンは「自分こそ彼女」と公言する女子高生もいるモテ男、イェウォンにはみんなのやっかみも迷惑なだけ。ウンソンが絶対に来いよ、と念を押した誕生パーティに旧友との約束を優先してしまう。
当時28歳だったホン・スンホンの高校生姿は、少女漫画に出てくるイケメンそのままのルックスで、少しも違和感ありません。制服の着崩し方も長身に似合ってカッコよく、下着が見えるように学生ズボンを下げてはいている男子に見習ってほしいほどです。おまけに喧嘩も強いのなんの。不良と思われていたウンソンが自分のために怪我までしたことを知り、イェウォンの気持ちは次第に傾いていきます。2人のついたり離れたりが面白く、ネット小説で大評判だったというのも、平凡な女子高生イェウォンに親近感が湧いたからでしょう。病院の中でウンソンとイェウォンが一緒に見ている映画は、『バンジージャンプする』(2001年/キム・デスン監督)のようです。注意してみてください。(白)
2004年に韓国で公開されたものの、スンホンが兵役につくつかないで活動休止したために、日本での公開が実現していなかった作品が、やっと公開されることになり嬉しい限りです。 高校生役だから、もちろん若作りですが、なんといっても5年前。スンホン、若い! タイトル通り、カッコいいスンホンですが、それよりも何よりもチョン・ダビンちゃんのやることなすこと一つ一つの可愛いこと! ゲームセンターでボコボコ思い切りモグラ叩きをする姿や、カラオケで絶唱したり、シマウマ柄のスーツで校庭のスンホンを覗き込んだり... ドラマ「屋根部屋の猫」でも、決して顔は可愛いと言い難いのに、愛くるしい演技を見せてくれたダビンちゃん。なぜ自ら命を絶ってしまったの?と、観ていてずっと切ない思いでした。あともう一つ嬉しいのがイ・ギウの出演。もっとも『ラブストーリー』や『回し蹴り』で強烈な印象を与えてくれたイ・ギウが、本作では、優しくて控え目なお兄さんといった感じで、監督、もっと彼の面白さを引き出してくれるといいのになと思いました。(咲)
*特別鑑賞券1000円(当日1500円)を劇場窓口でお買い上げの方に限り「ソン・スンホンのオリジナル生写真」1枚プレゼント。なくなり次第終了します。
2004年/韓国/カラー/117分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:マジックアワー、ポニーキャニオン
公式 HP >> http://aitsu.ponycanyon.co.jp/
監督・脚本・編集:是枝裕和
原作:業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形」(小学館ビックコミックススペシャル刊)
撮影:李屏賓(リー・ビンビン)
美術監督:種田陽平
出演:ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、オダギリ ジョー、富司純子 ほか
ー 私は、「心」を持ってしまいました。
持ってはいけない「心」を持ってしまいました。 ー
型遅れで空っぽな空気人形は、持ち主である秀雄と暮らしている。秀雄はまるで人間のパートナーのように人形に接している。それでも所詮は誰かの代用品でしかない。
ある朝、空気人形は動き出す。軒をつたい落ちる水滴を見て「き れ い」とつぶやく。心を持った空気人形は、秀雄が買ってくれたメイド服を着て外の世界へと歩き出す。見るもの、聞くものすべてが新鮮な驚きに満ちた外の世界。そしてたまたま入ったレンタルビデオショップで、店員の純一と出会い一目で恋に落ちてしまう。
生まれ落ちたばかりの赤ちゃんが急激に大人の女性へと成長していくかのような空気人形を、ペ・ドゥナは完璧なスタイルと演技で、実に可愛らしく体現しています。CGは使わず、ビニールのラブドールが生身の人間へと変化する瞬間も違和感がなくて驚きました。
空気人形が世界の美しさに心奪われる一方で、取り残されたような街に住む隣人たちは、孤独で空虚感や死に取り憑かれているようです。大人になるということは、足らないものに気づくこと? 幸せとは足らないものを満たし、満たされる誰かと出会うこと?
そんな思索をめぐらすトリガーを引き、愛らしさに頬をゆるませる空気人形のたどる運命の切なさに衝撃を受けてしまいました。(梅)
メイド服で空を見上げるペ・ドゥナさんの画像に、どんな映画なのかと想像がかき立てられました。好きな人を見つけた空気人形、その後のストーリーが切なくて胸痛みます。これを救うのがオダギリジョーさん演じる人形師。短い出演シーンなのに、彼の持つ雰囲気がぴったりなのと優しさのこもった台詞がすごくいい!(白)
2009年/日本/カラー/116分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/R-15
配給:アスミック・エース
宣伝:アスミック・エース、る・ひまわり
特別記事 『空気人形』記者会見&舞台挨拶レポートもご覧下さい。
公式 HP >> http://kuuki-ningyo.com/index.html
【映画祭開催期間】 9月21日(月・祝)~25日(金)
【場所】 浅草公会堂
昨年の第1回では、プレイベントとして大盛況のうちに開催された人気企画、「声優口演ライブinしたコメ」が、今回はクロージングイベントとして開催されます。
無声映画に、台詞という新たな命を吹き込むこの企画。往年の名作が生まれ変わる歴史的瞬間です。
大好評だった昨年に引き続き、人気、実力ともにNo.1声優、山寺宏一氏が今年はチャップリンの巧みなドタバタ劇『チャップリンの冒険』に挑戦します。また、羽佐間道夫氏(ロッキー』などのシルヴェスター・スタローン)と、近石真介氏(『サザエさん』の初代マスオ役)、井上喜久子氏(キャメロン・ディアス、デミ・ムーアなど)らが、喜劇の神様、斎藤寅次郎監督による貴重な作品『子宝騒動』を熱演します。
さらに、大変貴重な「チャップリンNG集」を見ながらの声優達のトークショーもありますのでお楽しみに。
【声優口演inしたコメ開催日】9月25日(金)
【時間】(以下、予定)
18:00 開場
18:30 クロージングセレモニー開演
19:00 「声優口演ライブinしたコメ2009」開演
【出演者】山寺宏一氏、羽佐間道夫氏、近石真介氏、井上喜久子氏
- 『子宝騒動』声優口演
- チャップリンNG集トークショー
- 『チャップリンの冒険』声優口演
公式 HP >> http://www.shitacome.jp/
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
製作:ステイシー・スミス、グレッチェン・マッゴーワン
製作総指揮:ジョン・キリク、ジム・ジャームッシュ
撮影:クリストファー・ドイル
プロダクションデザイン:エウヘニオ・カバイェーロ
衣装デザイン:ビナ・デグレ
編集:ジェイ・ラビノウィッツ
音楽:ボリス
出演:イザック・ド・バンコレ(孤独な男)、アレックス・デスカス(クレオール人)、ジャン=フランソワ・ステヴナン(フランス人)、ルイス・トサル コードネーム(ヴァイオリン)、パス・デ・ラ・ウエルタ(ヌード)、ティルダ・スウィントン(ブロンド)、工藤夕貴 コードネーム(モレキュール/分子)、ジョン・ハート コード(ギター)、ガエル・ガルシア・ベルナル(メキシコ人)、ヒアム・アッバス(ドライバー)、ビル・マーレイ(アメリカ人)
©2008 PointBlank Films Inc. All Rights Reserved.
空港に男が1人、自分に接触してくる人間を待っている。コードネーム「孤独な男」と呼ばれる彼は、ある任務を遂行するために仲間たちからの指示を待っていた。彼らは皆コードネームで呼ばれ、合言葉で互いを確かめる。黙々と指示にしたがう男はストイックに規則正しく日を送っている。電車に乗り、宿を替え、彼はだんだんと目標に近づいていった。
『ブロークン・フラワーズ』のジム・ジャームッシュ監督4年ぶりの長編作品。「アクションのないアクション映画を撮りたかった」というこの作品には、あの人もこの人も!? という俳優が次々と登場します。しかし主人公と謎めいた会話をするだけでいなくなり、大きな動きはありません。思えばとっても贅沢な映画。
寡黙な主人公のイザック・ド・バンコレの「孤独な男」は太極拳を日課とし、着替えの入ったバッグ1つを持っているだけカーチェイスもガンアクションもなし。エスプレッソを必ず別々のカップで2杯飲み、合言葉のほかに語ることは稀です。緊張感漂う画面を見ているうちに終幕となる不思議な作品でした。わかりやすいクライム・ストーリーを期待してはいけません。ジャームッシュ作品ファンなら先刻ご承知ですね。(白)
2009年/アメリカ/カラー/115分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ピックス
宣伝:メゾン
公式 HP >> http://loc-movie.jp/index.html
舞台映画化第2弾『曲がれスプーン!』の公開をひかえ、映像+トークのスペシャルプログラムを、7日間日替わりで京都シネマにて敢行!
映画『サマータイムマシン・ブルース』(’05)ほか、色とりどりの映像たちが、紅葉なにするものぞとスクリーンを彩ります! さらに、各階から多彩なトークゲストが日替わりで登場! 秋の夜長を、鈴虫なにするものぞとクロストークで鳴きとおす!
そしてそして、11/21公開『曲がれ!スプーン』の予告編も・・・って、京都シネマ『曲がれ!スプーン』の上映館じゃないじゃん!(えっ、えぇ〜!? from シネジャの梅) 戦争だ!
日時:9/19~9/25 19:00~21:30 ※開場時間は18:45
開場:京都シネマ
チケット販売中 Pコード 555-526
一般 2000円(当日2300円)
学生・京都シネマ会員 1800円(当日2000円)
チケット取扱:京都シネマ窓口 075-353-4723
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード 555-526)
9/19(土) | 映画『サマータイムマシンブルース』上映 ゲスト 本広克行(映画監督 テレビ版、映画版『踊る大捜査線』シリーズ) |
9/20(日) | 舞台『あんなにやさしかったゴーレム上映』 |
9/21(月) | 映画『サマータイムマシンブルース』上映 ゲスト バッファロー吾郎 木村明浩(吉本興業所属お笑い芸人) |
9/22(火) | SSMF(ショートショートムービーフェスティバル)傑作選上映 ゲスト なるみ(吉本興業所属お笑い芸人) |
9/23(水) | 映画『サマータイムマシンブルース』上映 ゲスト 山下敦弘(映画監督 『天然コケッコー』『リンダリンダリンダ』『リアリズムの宿』) |
9/24(木) | 舞台『ボス・イン・ザ・スカイ』 ゲスト 松本雄吉(劇団維新派主催) |
9/25(金) | とりおろし上映『ヨーロッパ企画の町内会ディスコ』 ゲスト ヨーロッパ企画 |
ヨーロッパ企画 HP >> http://www.europe-kikaku.com/
京都シネマ HP >> http://www.kyotocinema.jp
『曲がれ!スプーン』公式 HP >> http://www.magare-spoon.com/
会期: 2009年9月18日(金)〜 9月27日(日)
場所: 西鉄ホール、エルガーラホール(福岡市天神)
今年で19回目を迎えたアジアフォーカス・福岡国際映画祭。オープニング上映は、韓国映画『GO GO 70s』。福岡—釜山友情年を記念して組まれた「特集 韓国映画最新コレクション」の中の1本です。また、今年の特徴として「欧米人監督が撮ったアジア映画」が挙げられます。かつての欧米人監督が撮ったアジア映画は、監督をはじめ主要なスタッフ・キャストは欧米人で、アジアは単に映画の舞台にすぎないものがほとんどでした。それが『スラムドック$ミリオネア』のように、監督を除いた主要キャスト・スタッフがアジア人という映画も製作されるようになりました。本映画祭では、イタリア人監督が撮ったスリランカ映画「マチャン/大脱走」、イギリス人監督が撮った日本映画「扉のむこう」が上映されます。また、去る7月25日に急逝されたマレーシアのヤスミン・アハマド監督の『タレンタイム』が上映されるのも注目です。その他、協賛企画も盛りだくさんです。是非ホームページでご確認を!
◆アジアの新作・話題作
黒犬、吠える(2009年/トルコ)監督:メフメット・バハドゥル・エルマリナ・ゴルバチ
難民キャンプ(2008年/トルコ)監督:レイス・チェリッキ
ザクロとミルラ(2009年/パレスチナ)監督:ナジュワ・ナッジャール
アバウト・エリ(原題)(2009年/イラン)監督:アスガー・ファルハディ
テヘランの孤独(2008年/イラン)監督:サマン・サルール
★特集 韓国映画最新コレクション (福岡—釜山友情年記念)
酒を呑むなら(2008年/韓国)監督:ノ・ヨンソク
GO GO 70s(2008年/韓国)監督:チェ・ホ
イリ(2008年/韓国)監督:チャン・リュル
★特別上映
スラムドッグ$ミリオネア(2008年/イギリス)監督:ダニー・ボイル
冬冬の夏休み(1984年/台湾)監督:ホウ・シャオシェン
公式 HP >> http://www.focus-on-asia.com
監督:中野裕之
脚本:市川森一、水島力也
プロデューサー:山本又一朗
撮影:古谷巧
美術:林田裕至
衣装:千代田圭介
編集:掛須秀一
音楽:大坪直樹
音楽プロデューサー: 古川ヒロシ
キャスト:小栗旬(畠山直光)、柴本幸(阿古姫)、田中圭(桜丸)、やべきょうすけ(盗賊道兼)、池内博之(畠山信綱)、 本田博太郎(所司代 栗山秀隆)、松方弘樹(多襄丸)、近藤正臣(景時)、萩原健一(将軍義政)他
何不自由ない家柄畠山家の次男に生まれた直光。彼には、阿古姫という幼馴染の許嫁がいた。家督を継ぐはずであった兄の信綱は、将軍善政の酔狂によりそれがあやうくなる。信綱も阿古に心を寄せており、家臣桜丸の諫言によって弟を窮地に立たすことになる。桜丸は子どもの頃直光によって助けられ、屋敷に引き取られた孤児であった。直光が弟のように思っていた桜丸の裏切りにより、直光と阿古は畠山家を追われることになってしまう。
山中に逃げ込んだ二人は藪の中で大盗賊の多襄丸に襲われ、不意をつかれた直光は意識を失う。直光は木に縛り付けられ、阿古はその間に多襄丸に汚されてしまう。しかも阿古は妻になれという多襄丸に「ついていくかわりに、直光を今ここで殺して」と答える。
多襄丸は芥川龍之介の「藪の中」に登場するキャラクターですが、この作品はオリジナルのストーリーで、裏切りにあいながらも自分の信念を曲げず自由に生きる男が主人公です。 武家の御曹司直光から盗賊多襄丸となる小栗旬は『クローズZERO』シリーズに続き、男気のあるいいやつを演じて、涙にくれる表情もまたすてき。彼がその愛の全てを注ぐ阿古役には、『真夏の夜の夢』の柴本幸。前作とはガラリと変わって、清楚な中に強い意思の見える阿古を演じます。多襄丸に仕えながら、密かに野心と憎しみをくすぶらせる家臣桜丸役には、田中圭。こういうキャラは珍しいですね。盗賊仲間のやべきょうすけは、完成披露の舞台挨拶で映画そのままに毎日が宴会だったと楽しい雰囲気を伝えました。萩原健一、松方弘樹、近藤正臣ら大物俳優が顔を揃え、画面をぐっと引き締めています。(白)
2008年/日本/カラー/118分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・脚本:大森美香
原作:桜沢エリカ
撮影:谷峰登
音楽:金子隆博
主題歌:「タイヨウ」佐野遊穂(ハンバートハンバート)
劇中歌:「君の好きな花」パクチーズ 作詞・作曲:小林聡美
出演:小林聡美(京子)、加瀬亮(市尾)、伽奈(さよ)、もたいまさこ(菊子)、シッティチャイ・コンピラ(ピー)
― 理由なんて、愛ひとつで十分 ―
さよは大学の卒業旅行に、母京子の住むタイのチェンマイを訪れた。空港に迎えにきたのは、京子と一緒にゲストハウスで働く青年市尾だった。自分と祖母を残して4年前に家を出た母は、見知らぬ人の中で楽しそうにみえた。さよはなんだかやりきれない思いで食事もせずに眠ってしまう。
ゲストハウスのオーナーの菊子は病を得ながらもゆったりと暮らし、たくさんの捨てられた動物ばかりか、母親を探すピーという少年をもゲストハウスで世話をしていた。ピーや市尾はさよをそれとなく気遣い、さよの京子へのわだかまりも少しずつほぐれていく。
ゲストハウスには青い空を映しているプールがあります。久しぶりに会う母娘は特にたくさん話すわけでもなく、淡々と6日間を過ごします。小林聡美演ずる母親、京子がプールサイドでギターを弾きながら歌う「君の好きな花」は小林本人が作詞作曲したもの。みんなが揃ってこの歌を口ずさむシーンで、なんだかほろほろと泣けてしまいました。
あれやこれやに縛られず、自由な京子は"一緒にいたかった"さよの思いを汲まなかったわけで、先にやったもん勝ちと言ったら言い過ぎでしょうか。好きな場所で好きなように暮らすというのはとてもシンプルに見えますが、なかなか叶えられないことです。気持ちよくうたた寝をして見た夢のような映画でした。優しい風の吹くタイに行ってみたくなります。それにしても小林聡美さんの外国語はどんな言葉でも流暢に聞こえます。不思議な方です。(白)
2009/日本/カラー/96分/アメリカンビスタ/DTSステレオ
配給・宣伝:スールキートス
公式 HP >> http://pool-movie.com/
監督:ラモーナ・ディアス
出演:イメルダ・マルコス ほか
ー 3000足の靴だけでは語れない、真実がある ー
20年もの間フィリピン共和国のファーストレディとして政治を操り、贅の限りを尽くしたイメルダ夫人が自らの人生を語ることを承諾した初めてのドキュメンタリー。
80歳を過ぎた今もなお元気なイメルダ夫人。その本人や彼女を知る周囲の人々、戒厳令下で囚われ拷問を受けたジャーナリストなど多方面にわたる人物へのインタビューにより、彼女を多面的にとらえています。幼い頃は内気な少女だったと言いますが、誰もが美しい少女だったと言い、きっと自分の美しさには相当自信があったはず。そんな女性がマルコスというパートナー(権力)を得て、人たらし的な才能を開花させたように思います。グロテスクなまでに誇大妄想化した自己正当化のための思考回路。人間てここまで突き抜けられるんだ、と感動すら覚えました。非常に貴重で面白い人間観察記録といえます。(梅)
第20回サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門最優秀撮影賞受賞
第19回国際ドキュメンタリー協会ABCニュースソースアワード受賞
2004年/フィリピン・アメリカ/カラー・モノクロ/103分/DVCAM/日本語字幕
配給:ユナイテッド エンタテインメント
★9月12日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー!
特別記事 『イメルダ』ラモーナ・ディアス監督インタビューもご覧下さい。
上映終了後にゲストによるトークイベントが開催されます。それぞれのゲストが異なる視点からイメルダ夫人について語ります。
公式 HP >> http://www.imelda.jp/
監督・脚本:クリストフ・バラティエ
製作:ジャック・ペラン、ニコラ・モルヴェネ
撮影:トム・スターン
音楽:ラインハルト・ワグナー 作詞:フランク・トマ
出演:ジェラール・ジュニョ(ピゴワル)、カド・メラッド(ジャッキー)、クロヴィス・コルニアック(ミルー)、ノラ・アルネゼデール(ドゥース)、ピエール・リシャール(ラジオ男)、ベルナール=ピエール・ドナデュー(ギャラピア)、マクサンス・ペラン(ジョジョ)ほか
1936年、パリ郊外。不況の為、閉館したミュージックホール・シャンソニア劇場。
裏方をしていたピゴワルは失業。生活の為、最愛の息子ジョジョは元妻の家へ、泣く泣く離れることになった。しかし、何とか仲間と力を合わせ劇場を占拠?! やくざの脅し、仲間の裏切り、別離、様々な困難に遭いながらも、息子と一緒に暮らしたい一心で、懸命に劇場再建に向かうピゴワルだった。
ジャック・ペラン…『WATARIDOR』監督、『コーラス』の名製作者。そして監督は、ペラン氏の甥クリストフ・バラティエ。最新作であるこの作品は、2008年に130万人を動員した大ヒット作品だ。『コーラス』のスタッフ・キャストを再結集させて作られた。ミュージカル、舞台、私生活の場面が非常にバランスよく描かれている。
それに舞台装置、見事に細工された衣装…うっとり、魅了された。
・うっとり1 ジェラール・ジョジュのなんとも言えない丸みのある表情。
・うっとり2 フランスの歌う新星ノラ・アルネゼデール!気品あるグレース・ケリーを彷彿させる。
・うっとり3 お芝居が始まる前にドゥースが、劇場付近の商店の宣伝を歌声にのせていた。例えば(♪お帰りには~○○屋さんのケーキをお買いくださ~い♪)本当にこの時代にやってたのかな。そうだったらスゴイ!
・うっとり4 ドゥースが舞台で歌いながら踊っている。周りの男性ダンサーが彼女のスカートのすそ紐を引っ張るとカーテンのように、だんだん上がっていく・・・観客は大興奮。
・うっとり5 最後の舞台ステージの美しさ。あの舞台の狭さであれだけの量感を出すなんて!
セピア色・ロマンチック・ミュージカル作品。ここに誕生!(美)
2008年/フランス・チェコ・ドイツ/カラー/120分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/35mm/字幕翻訳:丸山垂穂
配給:日活 宣伝:アルシネテラン
© Cos Aelenei
公式 HP >> http://www.chansonia.jp/
監督: デレク・チウ(趙崇基)
撮影: チェン・チーイン(陳志英)
美術: テレンス・フォック(霍達華)
出演:ウィンストン・チャオ(孫文)、アンジェリカ・リー(シュー・ダンロン)、ウー・ユエ(チェン・ツイフェン)、チャオ・チョン(ルゥオ・ジャオリン)、ワン・ジェンチョン(シュー・ボウホン)、ヴィッキー・リウ(シュー夫人)
©深圳電影製片廠
-苦しいときこそ、煌いていた。-
1910年、孫文は極秘にマレーシアを訪れていた。支援者たちに会い、革命資金を調達するためだったが、度重なる失敗になかなか資金は集まらなかった。チェン・ツイフェンがやってきて、失意の孫文を力づける。この地に根を下ろして成功した中国人の富豪シュー家の一人娘、ダンロンはのびのびと育ち、教師のルゥオ・ジャオリンとの恋愛も隠そうとはしない。援助を渋る父親に代わり、ダンロンは彼を応援するべく父の知り合いを紹介しようとする。一方孫文を狙う暗殺者は着々と近づきつつあった。
革命家として知られる孫文が、運動資金を得るために世界中を回っていたときのエピソードをもとに、彼を蔭から支えた女性チェン・ツイフェンとのラブ・ストーリーを芯に描きます。孫文の妻は宋慶齢ですから彼女とは添えないのだとわかっているのに、この恋の行く末を心配してみてしまいました。孫文は自分の生活よりも革命に夢中で、そんな彼を敬愛しているツイフェンは、平凡な夢を抱きながら自分はつりあわないと思っています。そんな彼らと対照的な若い男女、富豪シュー家の娘のダンロンとジャオリンの恋模様も合わせて描き、どちらも女性がしっかりしているのににんまりしました。ウィンストン・チャオは『宋家の三姉妹』(1997年、香港、監督:メイベル・チャン)でも孫文を演じています。(白)
2006年/中国/カラー/2時間7分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
提供:バンダイビジュアル/配給:角川映画
公式 HP >> http://www.sonbun.jp/
期日:2009年9月5日(土)〜13日(日)
会場:シネマート六本木
上映作品 | |
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シンガポール・ドリーム | 監督:コリン・ゴー&ウー・イェンイェン 2006年 105分 |
愛を探すこどもたち | 監督:ブライアン・ゴソン・タン 2008年 87分+短編=約100分 |
ゴーン・ショッピング | ウィー・リーリン 2008年 100分 |
4:30 | 監督:ロイストン・タン 2005年 93分 |
ブー・ジュンフェン短編集 | 監督:ブー・ジュンフェン 2004〜2009年 約80分 |
タン・ピンピン特選 | 監督:タン・ピンピン 2001年、2005年 55分+22分 |
エリック・クー特集 | |
ミーポック・マン | 1995年 98分 |
12階 | 1997年 105分 |
一緒にいて | 2005年 90分 |
◎来日ゲストと上映後にトークセッション、Q&Aがあります。
◎オンライン中継でのゲストの参加予定
★9月5日(土)『愛を探すこどもたち』上映に先立ち14:10からはゲストたちによるオープニング挨拶
公式 HP >> http://www.sintok.org/
アニエス・ヴァルダの最新作『アニエスの浜辺』日本公開にあわせ、彼女の処女作品『ポワント・クールト』から近作『落ち穂拾い』までが一挙に上映されます。また、アニエス・ヴァルダの人生のパートナージャック・ドゥミ作品も併せて上映されます。
2009年9月5日(土)〜9月19日(土)
会場:東京日仏学院2階エスパスイマージュ
チケット:東京日仏学院、横浜日仏学院の会員及び、エキプ会員は500円、一般は1000円
当日券のみ 初回の1時間前から、その日のすべての回のチケットを発売開始
開場は上映20分前
お問い合わせ:東京日仏学院(03-5206-2500)
詳しいスケジュールはこちらをご覧下さい。
2009年9月26日(土)〜10月9日(金)
会場:岩波ホール
チケット:当日券 一般 1800円 / シニア・学生 1500円 / エキプ会員・日仏会員 1400円
前売り券 一般 1500円 / エキプ会員・日仏会員 1200円
前売り券は全作品共通 / 岩波ホール窓口(9/25まで)他、ローソンチケット、チケットぴあにて販売
開場は上映20分前
お問い合わせ:岩波ホール(03-3262-5252)
詳しいスケジュールはこちらをご覧下さい。
アニエス・ヴァルダの最新作『アニエスの浜辺』についてはこちら
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:マギー・チャン、ニック・ノルティ、ジェームズ・デニス
製作:ヴ・フィッチマン
2004年製作
ロックスターのリーと、その妻のエミリー(マギー・チャン)。エミリーはリーのマネージャー的役割を務める傍ら、歌手として成功することを夢見ている。二人にはジェイ(ジェームズ・デニス)という息子がいるが、二人とは同居せずバンクーバーに住むリーの両親の元で育てられている。
かつての栄光にしがみつこうとするリーと現実的なエミリーは、所属するレコード会社をどうするかということで激しい口論をしてしまった。いたたまれなくなったエミリーは宿泊先のモーテルを抜け出し、一晩中街中を彷徨し、モーテルに戻ってみると夫は死んでいた。ドラッグの過剰摂取だった。エミリー自身もドラッグを持っていたため、夫の突然の死を受け入れる間もなく留置所ですごすことになった。
リーの母親と、一部の友人は、事故を防げなかったのはエミリーのせいだとエミリーを苦しめる。
出所後、エミリーは全てをやりなおそうと、かつて住んでいたことのあるパリへと向かった。そして、「息子と暮らしたい」と、リーの父親(ニック・ノルティ)と連絡を取る。しかし、しばらく息子とは距離を置くように言われてしまい、逆に「息子を取り戻すためにはなんでもする」そう決意することに。
生活の建て直し、捨てきれない歌手の夢、いろいろな思いが交錯し、望んだ仕事を得ることも、息子と一緒に暮らすことも出来ずにひとりぼっちになってしまったエミリーの孤独。でも、友人の紹介で職を得ることができた。
そんな暮らしの中、義父のアルブレヒトが、ジェイを連れてロンドンに滞在しているという情報を得たエミリーは、「息子に会いたい」と連絡を取り、2日間だけ息子との再会を楽しむ機会を得た。しかし、ちょうど、同じ日にアメリカでレコーディングするチャンスの話が来る。どちらかを選ばなくてはならなかったエミリーはジェイを選んだ。しかしせっかく会ったジェイは「パパを殺したのはママだ」と母に感情をぶつける。それでもアルブレヒトの取り成しで、なんとか二人はバイクにまたがり動物園へと向かう。
あきらめたレコーディングだったが、再度の連絡がありエミリーは決心する。
母と子の再生、人生のやり直し。そんな女性を演じたマギー・チャンは、この演技で第57回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した。オリヴィエ・アサイヤス監督が、『イルマ・ヴェップ』(96)以来、マギーと再度タッグを組んだ作品。
冒頭の、自分がいない間に夫がドラッグの過剰摂取で死んでしまい、自分も警察に逮捕されるシーンは、この作品の試写を観た直後に起こった最近芸能界の話題を集めている俳優兼歌手Oの事件との類似点を感じ、この事件に繋がる話題を先取りした作品だと思った。しかし、この映画の本質はそこにあるのではない。夫を亡くし、息子の養育権も奪われてしまった一人の女性が、絶望のふちから這い上がろうと奮闘する姿。マギーが息子をバイクに乗せ走り去ってゆく後姿は、不安を抱えながらも前進する彼女の決意を感じさせられる印象的なシーンだった。
英語、フランス語、中国語の3カ国語を操るマギー・チャンがかっこいい! さらに自分で歌まで歌っている! 歌っているマギーを見るのは初めてだった。香港芸能界では、俳優と歌手を兼ねている人が多い中、マギーが歌っている姿を見たことはなかった。こんなに歌がうまかったとは驚き。
『イルマ・ヴェップ』を見逃してしまっていた私は、オリヴィエ・アサイヤス監督の作品を観るのは、これが初めてだった。マギー・チャンが『イルマ・ヴェップ』後、アサイヤス監督と結婚したということは知っていたし、その後離婚したという話も聞いていたが、この作品が2004年製作と聞き、離婚する前の作品だと思ったのだが、離婚してから撮った作品だった。離婚しても映画への思いを共有する仲間として繋がっている、いい関係だなと思った。アサイヤス監督の『夏時間の庭』もいい作品です。こちらもぜひどうぞ。(暁)
公式 HP >> http://www.clean-movie.net/
監督:キム・ジウン
脚本:キム・ジウン、キム・ミンスク
撮影:イ・モゲ
美術:チョ・ファソン
武術:チ・ジュンヒョン
音楽:タル・パラン
出演:イ・ビョンホン(パク・チャンイ)、チョン・ウソン(パク・ドウォン)、ソン・ガンホ(ユン・テグ)、リュ・スンス(マンギル)、リュ・チャンスク(ハルメ)、イ・チョンア(ソンイ)、キム・グァンイル(サンカル)、マ・ドンソク(クマ)、ザリーガル(チャンチュイ)ほか
1930年代、混沌の満州。大陸横断列車が襲われた。目的のためには情け容赦のないギャング団のボスはパク・チャンイ。なによりも「一番!であること」が大事なプライドの高い男。彼が探しているのは1枚の宝の地図。ところがそれは横入りしてきたこそ泥のユン・テグの手に渡る。雑草のようにたくましく、転んでもタダでは起きず、いつのまにかいいところだけ持っていく変な男。もう1人かんできたのは賞金ハンターのパク・ドウォン。ライフル片手に疾走する汽車や馬上から正確に敵を狙い撃つ。流れるような華麗なアクションと冷静な判断力を持つ男。まだ見ぬお宝を巡って、いい奴(グッド)、悪い奴(バッド)、変な奴(ウィアード)の3人に、日本軍まで加わって繰り広げられるストーリー。ムチャクチャは楽しい! ムチャクチャでイイノダ!
韓国映画界の人気者3人がうちそろった、ど派手なコリアン・ウェスタン。主役をはれる3人が集まるなんて、贅沢な映画です。監督は『甘い人生』、『箪笥』、『反則王』のキム・ジウン。3人の特徴をよく生かして撮っています。いろんな顔を見せる俳優さんたちですが、それぞれの役をとても楽しんだようす。ファンは必見です。
中国の砂漠や草原でのロケは、10℃~45℃という気温差のある過酷なものであったようです。がっ、汽車、馬、銃、女性、乱闘・・・と、まあ男の子の好きなものばっかりの中で縦横無尽に動き回っているじゃないですか。これだけ好きなことができたら、環境は厳しくとも楽しいはずです。
武術指導のチ・ジュンヒョン氏はこの映画の撮影中交通事故で亡くなられました。アクション・コーディネイター、アクション監督、アクションスクールの講師として活躍中のことで早過ぎる死が惜しまれます。(白)
ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ウソンという、韓国映画界きっての俳優たちの共演、競演は、息もつかせぬ展開で観る人をあきさせない。それにしてもこの泥臭さは、『反則王』を作ったキム・ジウン監督ならではのもの。最後にわかる指切り魔というのが笑える。やはり『反則王』の路線を引き継いだ「変な奴」が主役の映画なのだ。なので、「ウィアード」なる日本人になじみのない言葉をタイトルに持ってゆくより、これはやはり『いい奴 悪い奴 変な奴』だと思う。変な奴役がぴったりのソン・ガンホとキム・ジウン監督の「おバカ路線」が大好きな私としては、日本での売りがイ・ビョンホンとチョン・ウソンなのはちょっと不満。もちろん2人とも好きなんだけど、やっぱりこの映画の主役は「変な奴」のソン・ガンホでしょう。(暁)
2008/韓国/カラー/2時間9分/スコープサイズ/
配給:CJ ENTERTAINMENT、ショウゲート
★8月29日(土)新宿バルト9、TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開
公式 HP >> http://www.gbw.jp/
特別記事
監督:ゴリ(ガレッジセール)
脚本:ゴリ、杉山嘉一
主題歌: 夏川りみ 「ウンジュの原点(ふるさと)」
出演:ゴリ(栄昇)、照屋政雄(マサル)、諸見里大介(ヒトシ)、ボビー・オロゴン(マックス)、AKINA(りみ)、平良とみ(空手の達人:金城先生)、川田広樹(レフリー)、レイラ(オレンジ)、吉田妙子(ポールバーのママ)、福田加奈子(マサルの妻)
-フツーじゃないのがフツーです。-
コザ市に1人で暮らす栄昇は、気ままな仲間マサルやヒトシと遊んでばかり。隣家のマサルの娘、幼なじみのりみは栄昇に思いを寄せていたが、あまりに近すぎて気持ちと裏腹にケンカばかりしていた。ポールバーに遊びに出かけた栄昇は、新人のダンサー、オレンジに一目惚れしてしまった。
マサルたちはあれこれ知恵をつけて応援、オレンジに告白しているところへアメリカ兵のマックスがやってくる。強引なマックスに激怒したマサルは、オレンジを賭けて1:1の決闘を提案する。猶予は1ヵ月、このままでは栄昇の勝ち目はない。マサルは空手の師匠に紹介するというのだが?!
ガレッジセールのゴリさんが、故郷沖縄で沖縄出身の仲間を集めて作った初監督作。「フリムン」とは沖縄の言葉で、「愛すべきおバカさん」という意味だそうです。のんびりまったりな沖縄の空気の中、ちょっとおバカで熱い青春の日々を切り取っています。自然豊かな背景に、テーブルに並んだ美味しそうな沖縄料理、濃い人々とのおつきあいが散りばめられています。16日間という短い撮影日数ながら、緩急つけた演出で生き生きみせています。ゴリ監督は日大映画学科卒業だそうですが、「観る人に楽しんでもらおう」という芸人魂を1番感じました。(白)
2009年/日本/カラー/97分/ビスタサイズ/DTSステレオ
製作:吉本興業株式会社
配給:角川映画
公式 HP >> http://www.furimun.jp/
監督:オリヴィエ・ヴァン・ホーフスタッド
脚本:ジャン=マルク・スヴィラ、ビビ・ナセリ、エマニュエル・プレヴォスト
撮影:ジャン=フランソワ・エンジェン
音楽:アレクサンドル・アザリア、アゴリア
出演:ロシュディ・ゼム(マレク/スリマン)、オリヴィエ・グルメ(ジャン・ドゥー)、ジャン=ミシェル・フェト(メコ)、ジル・ミラン(リュシアン)、カタリーナ・ドゥニ(グラディス)
2人組みの強盗が宝石店を襲う。その1人はBRI(パリ警視庁探索出動班)の警察官マレク。裏社会に潜入捜査官として入りこむための工作だった。BRIは麻薬密売のリュシアン一味を一網打尽にするべく、捜査を続けていた。最前線にいたマレクの同僚ジャン・ドーは、リュシアンの襲撃を受けほかの捜査員とともに殺されてしまう。リュシアンは逮捕されたが証拠不十分で釈放。マレクは麻薬取締局の猛訓練を受け、スペインの組織への潜入を図る。ヨーロッパ最大の麻薬密売組織の信用を勝ち得たマレクは、「ゴー・ファースト」として雇われ、マラガからパリへと麻薬を運ぶことになった。
リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープから、事実を元にした潜入捜査官ものが届きました。スタイリッシュなカーアクションの作品を次々と送り出していますが、これもその1本です。ポルシェ、BMW、アウディなど車も俳優のようにその役割りを果たしています。
この運び屋という仕事、潜入捜査官も実在であるため、フランス警察の協力を得て検証を重ね、俳優も訓練されました。おかげでドキュメンタリーを観ているかのようなリアルな作品となっています。主演俳優と監督はこのルートを実際に車で駆け抜けてみたそうで、この臨場感、迫力を出すのにおおいに役立ったことでしょう。車好き、クライムストーリー好きにはこたえられない作品。(白)
2008年/フランス/カラー/89分/スコープサイズ/ドルビーデジタルサラウンドEX
配給:アスミック・エース エンタテインメント
宣伝:アステア
公式 HP >> http://gofast.asmik-ace.co.jp/
監督・脚本:森岡利行
原作:西原理恵子「女の子ものがたり」(小学館刊)
出演:深津絵里、大後寿々花、福士誠治、波瑠、高山侑子、森迫永依、風吹ジュン、板尾創路、奥貫薫 ほか
漫画家の高原菜都美は現在スランプのドツボにはまっている。新しく担当になった新人編集者の財前は、10年前の菜都美の作品を好きだと言うが、最近の彼女の作品は評価していない様子。締め切りになっても全く焦らず、やる気も起こさず、ただ財前を振り回す菜都美に、「 先生、友だちいないでしょ」ときついひと言を投げかける。その時、菜都美の脳裏には、郷里の子どもの頃からの大切な、だけど心の奥底にしまい込んだ、友だち、きいちゃんとみさちゃんとの思い出が蘇ってきた。
なっちゃん、きいちゃん、みさちゃんの女の子3人の友情ものがたり。思えば、自分も小、中、高校とメンバーは違えどいつも仲良くつるんでいたのは3人だった。女ともだち3人というのは、微妙な力学で成り立っている。共通で気が合うベースの部分は確実にあるけれど、3人バラバラの個性があり、1対1だとぶつかり合う部分をもう1人が緩衝材になってバランスを保っている。お互いに良いところ、悪いところをわかり合っていて、尊敬も信頼もしているのに、ひどく冷静に相手の行動を観察していたり、ときどき嫉妬心も顔を出す。そんな微妙な関係を、映画は色彩やちょっとしたセリフで描けているのが良かった。また、就職先も限られる田舎で、どうやって自立して生きていくのか、ここではないどこかへ行けるのか、将来に対する漠然とした不安を抱える女の子たちの思いは、今も昔も共通でしょう。答えがあるわけではありませんが、映画に出てくる西原さんが描いた絵は、少しの勇気と励ましを与えてくれると思います。(梅)
2009年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーSR
配給・宣伝:IMJエンタテインメント/エイベックス・エンタテインメント
全国の上映劇場に"女の子3人"で観に行くと、お1人様1,000円で鑑賞できます。こちらのサイトをプリントアウトして持っていくか、モバイルで画像を提示することが必要です。
公式 HP >> http://onnanoko-story.jp/index.html
監督:トム・リン
脚本:ヘンリー・ツァイ、トム・リン
撮影:フィッシャー・ユイ
照明:ハーカー・チュウ
美術:リー・ティエンチュエ
衣装:スン・フイメイ
編集:チェン・シャオトン
音響:チョウ・チェン、フランク・チョン
音楽:ブレア・コー
プロデューサー:エリック・ツァン、イェ・ルーフェン
共同プロデューサー:チュオ・リー、ゲイリー・ツォン
出演:リディアン・ヴォーン(チョン・シーイェン)、チャン・チエ(タン・チーチン)、ジェニファー・チュウ(ホアン・ユンチン)、ワン・ポーチェ(リー・ヤオシン)、リン・チータイ(リン・チンチャオ)、シェン・ウェイニエン(リン・ポーチュー)、チウ・イーチェン(シエ・チーション)、チー・ペイホイ(シェン・ペイシン)、 リー・ユエチェン(ホアン・チョンハン)
特別出演: リャオ・ミンシュン(本人役)、エリック・ツァン(イェンの父)、ルー・イーチン(クン教官)、リゥ・ピンイェン(モンルン)、クー・ユールン(ビリヤード場でタンを殴る男)
1997年夏。竹東高校卒業式の朝。タンは一年前の夏の出来事を振り返っていた・・・。去年の9月。高校3年のタン、同級生のイェンとチンチャオ、落第生で最年長のヤオシン、二年生のポーチュー、入学したばかりの1年生チーションとチョンハリは、新竹野球場で台湾プロ野球の人気スター、リャオ・ミンシュンの活躍に声援を送っていた。いつも、この7人で騒動を起こしては、教官室に呼び出されるトラブルメーカーの常連だった。彼らはこの友情が永遠に続くものと、信じて疑わなかったが・・・。
台湾近郊にのんびりと暮らす、野球が大好きな7人の高校生と可憐な2人の女子学生。9人の若者1人1人とても個性があり、魅力的だ。悪さもする彼らだが、台湾野球界の賭博・八百長事件は非常にショックだったろう。ましてや、リャオ・ミンシュン選手が中心人物とみなされていたのだから、社会や大人の世界に対して失望したに決まっている。今まで集めていたプロマイドを、泣きながら破る彼らの姿が目に浮かぶ。
9人の仲間もいろいろな出来事の中で、気持ちがだんだんずれて行く。そして、もう修復できないと諦めかけた時、思いもしなかったとてつもない不幸のもとで、彼らはまた集うのだ。少し大人の雰囲気を身につけて・・・。
トム・リン監督は「この作品は80%僕の高校時代の物語です。当時の仲間たちを彷彿させるような俳優キャスティングをしました。僕の役どころは捉えどころのないタンに近いです」と語っている。最後のシーンの野球選手は、リャオ・ミンシュンご本人だ。私はこのシーンに「どんな事があっても生き抜くのだ! いつでも人生やり直しできるぞ!」というメッセ-ジが込められているように感じ、体があつくなった。(美)
昨年の東京国際映画祭で上映されたときに観ました。いまだに懐かしく思い出す高校生活。時代は違っても思うことはそう変わらず、誰にでも共感できる映画だと思います。日本と違い、台湾では9月に卒業、新学期が訪れるのだそうです。その時期に吹く季節風は、日本でいえば桜の花のように、特別な節目を思い起こすもののようです。ラストに流れるのは張雨生の歌う「我期待」。張雨生は映画背景の97年自動車事故で亡くなったシンガーソングライターで、台湾の番組で何度も見たことがありました。戻らない青春時代と、逝ってしまった人を思うと切ないですが、いつでも取り出せるように胸の中にしまっておくことにします。(白)
2008年/台湾=香港/35mm/カラー/DolbySDR/107分/北京語/PG-12
配給:グアパ・グアポ+アジア・リパブリック
★8月29日(土)より、ユーロスペース、シネマート新宿 他にて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.9wind.jp/
特別記事 『九月に降る風』初日舞台挨拶レポートもご覧下さい。
監督:スティーブン・セブリング
出演:パティ・スミス
ROCKER
POET
ARTIST
MOTHER
それは
パティ・スミスという生き方。
パティ・スミス。1970年代に頭角を現し、類まれな音楽性、怒りを表現した詩、独自のスタイルを貫くパフォーマンスで、ミュージックシーンを刺激し続けてきた伝説のロッカー。
パンクの女王であると同時に、詩、絵画、写真…多岐にわたる分野で活躍するアーティストであり、社会活動家であり、そして母であり、娘でもある、ひとりの女性…。(作品資料より)
本作は、写真家スティーブン・セブリングが、1995年「スピン・マガジン」の写真撮影でパティ・スミスと出会い、彼女の人間的魅力に惹かれ、彼女を記録したいと彼女に密着して11年間撮り続けたもの。モノクロとカラーの交錯する記録映像は、詩的な雰囲気に溢れ、画面に惹きつけられる。私自身、パティ・スミスのことは、本作で初めて知った。語る言葉の一つ一つが、彼女の声のトーンともあいまって、胸に響いてくる。「ブッシュを告発する! 自由の名を語り、国を冒涜した」イラクの黄金のドームを冠したモスクの爆撃前と後の写真が映し出される。「アメリカが爆撃した。なぜイラクへ? 正義の戦争はない!」と叫ぶパティの猛々しさ。エルサレムのスークを歩くパティの姿にも、平和への思いが溢れている。彼女のメッセージが本作を通じて世の権力者に伝わることを切に願いたい。(咲)
2008年/アメリカ/109分/カラー&モノクロ/アメリカン・ヴィスタ/ドルビーSRD
配給:トランスフォーマー
宣伝・配給協力:ザジフィルムズ
公式 HP >> http://pattismith-movie.com/
監督・脚本:マシュー・エバーハートandリーンダー・ワード
製作:ポール・ウェブスター、リーンダー・ワード、マシュー・エバーハード
日本語吹替版ナレーション:宮﨑あおい
©DISNEY ENTERPRISES, INC. ALL RIGHTS RESERVED
地球は、最高のエンターテイメント。そして、最大のミステリー。
故ウォルト・ディズニーは、1948年から1960年にかけて、『砂漠は生きている』(53)などの自然ドキュメンタリー映画を制作し、8つものアカデミー賞に輝きました。この偉大な先駆者のビジョンを継承した精鋭スタッフの才能と情熱、そして最新鋭の技術が生み出す壮大なる映像エンターテイメント≪ディズニーネイチャー≫。この第1弾がフラミンゴたちの繰り広げる命のドラマです。思わず手をさしのべたくなったり、胸が熱くなったりします。日本語版での上映ですので、夏休みにお子様とごらんになってはいかがでしょうか。(白)
2009/アメリカ/カラー/ビスタ/1時間19分/PG-12/翻訳:いずみつかさ
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
監督:デヴィッド・スレイド
製作:サム・ライミ、ロブ・タパート
原作:スティーヴ・ナイルズ『30デイズ・ナイト』(マイクロマガジン社刊)
ベン・テンプルスミス
脚本:スティーヴ・ナイルズ、スチュアート・ビーティー、ブライアン・ネルソン
撮影:ジョー・ウィレムズ
プロダクションデザイン: ポール・D・オースタベリー
音楽:ブライアン・レイツェル
出演:ジョシュ・ハートネット(エバン)、メリッサ・ジョージ(ステラ)、ダニー・ヒューストン(マーロー)、ベン・フォスター(謎の男)、マーク・ブーン・jr(ボウ)、マーク・レンドール(ジェイク)ほか
アラスカ州北端の小さな町バロウに極夜の季節がやってきた。夏の白夜と反対にこれから30日間太陽が昇らないのだ。保安官のエバンは、パトロール中に飼い犬数十頭が惨殺されたとの連絡を受け、現場に急ぐが誰の仕業なのか見当もつかない。離婚係争中の妻ステラは最終便に乗り遅れ、極夜が明けるまでこの街を出ることができなくなった。
さらに突然の停電で、エバンが発電所へ急行すると管理人は無残な姿になっていた。街にたどり着いた見知らぬ男は「彼らがやってくる」とつぶやく。不安に包まれた街を跳梁跋扈するいくつもの黒い影は何者なのか?
上は疑問で閉じましたが、突然の侵入者たちがヴァンパイアであるのは、すぐにわかってしまうのです。ただし『インタビュー・ウイズ・ヴァンパイヤ』や最近のヒット作『トワイライト』に出てくるような美しい吸血鬼ではありません。プロデューサーがサム・ライミ(『死霊のはらわた』は怖かった!)ですから。クリーチャーのメイクは俳優さんの原型を留めていませんが、リーダーのマーロー役のダニー・ヒューストンは、割合そのままなのに充分に怖いです。巨匠ジョン・ヒューストンの息子さん。
日光で灰になるという定石はあるものの、この街は30日間太陽が昇りません。体力、スピードに勝るヴァンパイアを相手に、その中で人間たちがどうサバイバルするのかが見どころです。(白)
2007年/アメリカ/カラー/1時間53分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
公式 HP >> http://www.30days-night.jp/
監督:平林克理
脚本:吉井真奈美、平林克理
出演:古川雄大(神崎浩紀)、細貝圭(沢田修)、永岡卓也(吉永直)、佐藤永典(鉄平)、矢柴俊博(菅原先生)ほか
神崎浩紀は明るく人気もあり、生徒会長もつとめる高校3年生。将来の夢は漫画家になることでずっと投稿を続けている。絵はうまいが、ストーリーがいまいちで毎回残念賞だ。そんなときにアメリカから転校生がやってきた。母親の病気治療のために一時的に日本に帰国した沢田修。浩紀はその名前に聞き覚えがあった。浩紀とは逆にストーリーはうまいが絵が弱いと講評を受けて、いつも残念賞を分け合っている彼だ。
卒業前の1年間を描くには、エピソードと展開が物足りなかったです。浩紀と修が入れ込んでいる漫画の魅力が全然出てこないのが残念。予算の関係もあるのでしょうが、時間と人数が限られていても、もっとリアルにできたのではないでしょうか? 古川雄大くんは『2STEPS!』でのダンサーを目指す青年役がずっと良かったし、高校生役じゃなくてもと思ってしまいました。若い人たちは切れ目なく出演し続けないといけないのでしょうか。今輝いているとはいえ、いつ充電するのでしょ? と、まさに老婆心。(白)
夢に一途な高校生の青春を描こうとするのは好感が持てますが、なんだか映画というより深夜ドラマのよう。主役3人の造型も高校生というよりホストのようだと思ってしまった。(梅)
2009年/日本/カラー/68分/ビスタサイズ/
製作・配給:日本出版販売
公式 HP >> http://www.bokusora.com/
古川「今日という日を迎えられてとても嬉しいです。自分は主人公の浩紀とは真逆の性格で、浩紀はまっ直ぐ過ぎる熱い性格なんですが、自分はその熱さを内に秘めるタイプなんです。ですが、今回の浩紀のテンションの高さは、自分が友達と遊んでいるときのテンションに似ていると思うので、そういったところは役に共感できました。 また本作のみどころは、キャストが少ない分、個々のキャラクターや関係性が深く描かれているところです。現役高校生の方、また高校を卒業された方は、自分のときと見比べて頂ければなと思います。何度も足を運んで、細かい部分に注目して下さい!」
細貝「皆さん作品はいかがでしたか。(劇場から歓声と拍手が沸く) 僕が演じた修は、アメリカから日本へ転校してくる高校生の役なのですが、なかなか自分を出せなくて打ち解けられないんです。僕も6歳の時にアメリカへ行ってなかなか打ち解けられなかったことがあったので、今回の役に共感できましたね。何度も観て出演している気持ちになり、自分の青春時代と照らし合わせたり、共感したりしてほしいです!」
監督「やっと初日を迎えることができました。有難うございました。高校時代の葛藤という、誰もが通る道を描いたので、共感してもらえる部分が多いと思います。何か心に引っかかる部分をみつけてください。」
提供:フリーマン・オフィス
監督:福田是久
脚本・原作:山下久仁明
撮影:青木 正
音楽:椎名邦仁
主題歌:高橋直純「まひるのほし」
出演:大塚ちひろ(門倉明日美)、伊藤祐貴(浅野淳一)。石井めぐみ(母)、秋野太作(吉田慎之助)、大森暁美(吉田の妻ハル子)、小林裕吉(弟 健二)、松崎初音(安西香織)、ピエール瀧ほか
©2009ぼくはうみがみたくなりました製作委員会
看護学生の明日美は、思い出のあるマンションの屋上で、同級生に良く似た青年と出会った。駐車中の明日美の車を覗き込む彼を誘って、海までドライブをすることになった。明日美は彼の障がいに気づかず変わった青年だなと思うだけ。しかし助手席で一言も発しない淳一に疑問がわいてくる。海辺で老夫婦に出会った明日美は、淳一との2人だけなのが気詰まりで「城ヶ島まで乗りませんか」と声をかける。
原作・脚本の山下久仁明さんは自閉症児大輝(ひろき)くんの父親です。この病気のことを多くの人に知ってもらいたいという願いから、小説を書き、映画化を企画しました。大輝くんは企画中に事故のため亡くなられてしまいましたが、山下さんが15年間一緒に暮らした日々がこの中にちりばめられています。19歳の淳一は、その後の大輝くんを想定して書かれたそうです。伊藤祐貴さんは関係者たちが驚くほど障がいのある青年役を好演。まっすぐな視線が印象に残りました。ヒロインの明日美は、自閉症という病気を知らない観客の代表で、脇のベテラン陣が劇中でわかりやすく解説をしてくれます。この映画は、自分のペースで生き生きと暮らしている淳一、見守る家族、周囲の目などいろんな側面を見せています。
病気や故障は、数え上げてみれば軽重の差こそあれ、誰もが抱えています。自分は全くの健康体だという方も関係ないとせずに、「知ること」でずっと互いが暮らしやすくなるのではと思いました。(白)
「自閉症」に関して知っていることと言えば、話しかけた言葉を、同じように聞き返してくることや、行動に順序やこだわりがあることしか知らなかった。この作品に登場する淳一くんは、リズムに非常に敏感で、自動車免許の問題も、メトロノームの弱拍途中の同じ箇所で答を出していた。微妙なリズムを難無くやってのけていたのには驚いた。
それにしても、この淳一役の伊藤祐貴青年! 観ている間ずっと、「えっ、彼は自閉症? 違うよね? 演技だよね?」と何回も?マークが点滅した。うまい!というより、よく観察し、研究し、体で感じて演じている。先月、スキップシティDシネマ映画祭2009で上映された邦画『Lost Paradaise in Tokyo』で、知的障害青年を演じた菟田高城も自然体で素晴らしかった。まだ無名に近い彼らの今後がとても楽しみだ。
印象深いシーンがあった。園長先生は純一が、以前、自分の幼稚園でお世話した生徒だと遅まきながら気付いた時、あの淳一くんがこんなに成長して、と感慨深くうなづいていたが、淳一は始めから、気付いたいたんだよね。初対面だと思っていた園長先生にお返事していたし…。
全編を通して、海と空の青さが目にしみる画面に、もし、今年幕張の海洋映画祭があったら、この作品なんて、ぴったりなのにと残念に思った。(美)
2008年/日本/カラー/113分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ぼくはうみがみたくなりました製作委員会
公式 HP >> http://bokuumi.com/
構成・演出:伊藤善亮
企画・撮影:若尾泰之
制作・取材:林昌幸
出演:飯田進
大正12年生まれの飯田進さんは、青年期のすべてを戦場と牢獄で過ごした。太平洋戦争ではニューギニア戦線に送られ地獄のような体験をし、戦後はBC級戦犯として裁かれ巣鴨プリズンに長く収容された。ようやく釈放され、家庭を持ち、社会生活を楽しむことができるようになったころ、飯田さん一家をサリドマイド薬害事件の悲劇が襲う。妻が妊娠期に飲んだサリドマイドが長男の腕を奪ったのだ。それ以来、飯田さんは薬害訴訟と障害児童福祉に打ち込んでいく。
戦争、戦犯、原爆、サリドマイド、薬害C型肝炎。飯田さんの人生は昭和という時代に翻弄され続けてきました。なぜこれほどの試練を1人の人間が受けなければならないのかと、ため息が出るほどです。それでも飯田さんはうちひしがれるばかりでなく、自ら体験した昭和の闇を後世に伝えようと、今なお考え、行動し続けています。その思いを真摯に受け止めたいと思いました。
映画は少々文字が多いのが気になったのですが、それでもテンポが崩れることなく、若い人が見てもわかりやすい作りになっています。
私事ですが、飯田さんと亡くなった父とは同い年で、同じ京都の出身で、なんとなく風貌も似ているため、人ごとと思って見られませんでした(父はもっとずっとヘタレでしたが)。戦前の家父長制度の中で育ち、軍隊に入って死線をかいくぐって生き残った昭和の男の匂いを感じたのです。社会的生活には猛烈に責任感と意欲を発揮するけれど、家庭のこととなると上手く対処できない。戦後生まれの子どもたちの価値観とかけ離れてしまって、家の中でちょっと浮いた存在になってしまうあの感じもまた、昭和だなと思いました。(梅)
2009年/日本/カラー/84分/DVCAM/16:9
★2009年8月22日(土)より、渋谷UPLINK公式 HP >> http://d.hatena.ne.jp/s84
監督・脚本:園子温(『愛のむきだし』)
出演:AKIRA(EXILE)、伊藤歩、奥田瑛二、高橋惠子、高岡蒼甫
地方都市のタウン誌編集部に勤める27歳の史郎。ある日、父が倒れ病院に運び込まれ、癌に蝕まれていると知らされる。1日1時間、仕事の合間に時間を作って父を見舞う史郎。高校サッカー部の鬼コーチとして知られる父は、家でも高校でも息子に厳しくて、これまできちんと父と対話したことなどなかったのだ。ぎこちない面会を続けるうち、父は史郎に「元気になったら湖で2人で釣をしよう」と誘う。父子が打ち解けてきた頃、お腹の痛みを感じて病院で検査を受けた史郎は、担当医から「あなたも癌です」と告げられる。しかも、父より余命は短いというのだ。父にそんなことは伝えられない。史郎は、恋人の陽子に「もし俺が、父さんみたいに癌で死ぬってわかっても一緒にいてくれるかな」と問いかける・・・・
何気なく日々を過ごしてきた人間が、余命わずかと宣告された時の衝撃・・・ 残された人生、思い残すことなく過ごしたい。家族や恋人や友達に、きちんと自分の思いを伝えたい。一方で、親には、自分が先に逝くかもしれないなどということは伝えられない。「オヤジ、先に逝ってくれ!」という史郎の悲痛な思い。親より先に逝くなどという親不孝はしたくない・・・ そんな息子の気持ちを、EXILEの一員として活躍するAKIRAが、髪も短めにし、スーツ姿で普通の青年に成りきってじわじわと観る者に伝えてくれる。『山形スクリーム』ではじけるような演技をしていたAKIRAとは、まるで別人でびっくりさせられた。
最近、同年代の知人友人があっけなく逝ってしまったり、癌を宣告されたりと、人生には限りがあることをひしひしと感じさせられている。悔いのないように、自分の思いをちゃんと伝えることの大切さを再認させてくれる作品だった。(咲)
2009年/108分/カラー
配給:ギャガ・コミュニケ—ションズ
公式 HP >> http://chantsuta.gyao.jp/
監督:リチャード・デイル
製作:デンジャラス・フィルムズ
字幕監修:毛利衛
日本語版ナレーション:宮迫博之
主題歌:ゴスペラーズ「宇宙(そら)へ 〜Reach for the sky〜」
1961年5月ジョン・F・ケネディ大統領は、「1960年代中に月への有人飛行を実現する」と宣言。そして1969年7月20日に実現した月面着陸。
この作品は、アメリカ航空宇宙局 (NASA)が設立以来16mmカラーフィルムで克明に記録してきた全プロジェクトの秘蔵映像に初めてアクセスを許されたBBCによるドキュメンタリー映画。数千時間にも及ぶ映像の中から厳選して、冷戦の中で米ソが競い合って宇宙開発を進めてきた歴史が綴られている。
7月20日、アポロ11号が人類初の月面着陸を果たしてから40周年の報に、当時の感慨を思い出しました。お月様にウサギはいないのねと、子供心に思ったものでした。本作では、チンパンジーの宇宙初飛行のときからリアルタイムで報道を見ていた宇宙飛行開発の歴史を一気に拝見することができ、なんとも懐かしい思いでした。スペースシャトル・チャレンジャーの打上げシーンでは、民間人の先生を乗せて打上げ失敗に終わったことを克明に覚えているだけにドキドキでした。海に着陸した宇宙飛行士は、ちゃんと見つけてもらえるのかしら・・・という子どもの頃に抱いた疑問も、解決しました!
そういえば、アメリカ在住のイラン人監督アミール・ナデリが、「次は月の映画を撮る!」と宣言していました。彼は小さい頃に月面着陸のニュースを見て以来、月に憧れ続けているのです。どんな映画を作ってくれるのでしょうか・・・
それにしても、人類の宇宙への飽くなき挑戦! 凄いですね。(咲)
NASAが開設されて50年。家庭にTVが入ってきたのもほぼこの時期です。米ソの宇宙をめぐる熾烈な一番乗り争い報道をず~っと観てきました。40年前の「月への第一歩の映像」にくぎづけになっていた記憶も鮮明です。このお蔵出し映像を観ると、これまでのことが浮かんできます。いまや日本からも多くの宇宙飛行士が誕生しています。若田さんが宇宙ステーションでの4ヵ月半の任務を終え、エンデバーで地球へ戻ったばかり。12月には6ヶ月間の任務のために野口さんが出かけます。
外に行けば行くほどに地球という星の美しさが再確認され、大きな視点でとらえれば国家間の争いさえ小さなことに思えてしまいます。地球の上に住んでいるもの同士もっと仲良く、ひとつきりの私たちの星を大事にしていかなくちゃ。人間は好き勝手していると、地球という大家さんに愛想をつかされるのではないかと思ってしまいます。(白)
2009年/イギリス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント / 博報堂DYメディアパートナーズ
*公開初日の21日と翌22日限り、どなたでも500円で観ることができます。タイアップしているIHIの協力によるもの。この機会に貴重な映像をご家族でどうぞ!
公式 HP >> http://we-love-space.jp/
監督:田口トモロヲ
原作:みうらじゅん
脚本:向井康介
音楽:大友良英
撮影:柴主高秀
照明:蒔苗友一郎
美術:丸尾知行
スタイリスト:北條訓子
出演:渡辺大知(乾純)、森岡龍(純の友人、池山)、森田直幸(純の友人、伊部)、峯田和伸(ヒゲゴジラ)、岸田繁(ヒッピー)、臼田あさ美(オリーブ)、石橋杏奈(足立恭子)、堀ちえみ(純のおかん)、 リリー・フランキー(純のおとん)、大杉漣(医師)、木村祐一(池山の父)、山本浩司(アキちゃん)監督・脚本:なまえ
© 2009色即ぜねれいしょんズ
僕の名前は乾純。あだ名はイヌ。京都の仏教系男子高校の1年生だ。ボブ・ディランに憧れてロックな生き方を目指している。学校では僕のような文化系は肩身狭いし、家は平穏で優しい両親。ロックな人生とはほど遠いのが悩み。それが、高校の友人池山と伊部から「夏休みに、フリーセックスの島に行かへん?」の一言で、僕の世界が少しずつ変わり始めた。ギターを抱え向かったのは、隠岐島。そこで僕達を待っていたのは…。
なんて気持ちのよい青春ストーリーでしょう! 携帯電話のない時代…約35年前。その頃、私は何していたかと、ふと考えた。ぐぁ~ん!新婚時代だった!(おもいっきり冷汗)どんな生活していたんだろう…。
いつ帰るともわからない夫の足音に耳をすまし、足音と同時に汁ものを温めて、テーブルに並べる手筈を整えてたり…緊張の連続だった。妻はこうしなくちゃいけない! と私も周りも信じていた。
そんな時に、この作品に出て来るヒゲゴジラさんみたいなおばさんがいてくれてたら、としみじみ思った。今はいろんな環境の方と交わり、友達になれるが、あの時代はお付き合いする範囲は狭かった。だからひと夏のユースホステルという設定に納得できた。そう、ここならいろんな人とお話でき、自分を新しい目で見つめ直せる!と。それに俳優さんすべて自然だった。
若い時代にどんな大人に巡り合い、影響されるかで随分人生違うなぁ~と感じた。青春時代に想いを馳せるのも良し! 今が青春の方ならもっともっと良し! の作品。(美)
2009/日本/カラー/114分/35mm/ビスタサイズ/DTSステレオ
配給:スタイルジャム
公式 HP >> http://shikisoku.jp/indexp.html/
監督:オリヴィエ・メガトン
製作:リュック・ベッソン、スティーブン・チャスマン
脚本:リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン
撮影:ジョヴァンニ・フィオール・コルテラッチ
武術指導:コーリー・ユン
音楽:アレクサンドル・アザリア
出演:ジェイソン・ステイサム(フランク・マーティン)、ロバート・ネッパー(ジョンソン)、ナターリア・ルダコワ(ヴァレンティーナ)、フランソワ・ベルレアン(タルコニ警部)セーム・シュルト(ザ・ジャイアント)ほか
-手首に罠、依頼品は赤い代物-
闇の運び屋稼業のフランク・マーティンの部屋に車が突っ込んできた。運転していたのは知人の同業者マルコム。フランクは依頼をひとつ断わってマルコムを紹介していた。瀕死のマルコムを救い出し、救急車に乗せる。彼は車から離れるのを拒んでいたのを不審に思うフランク。直後救急車は爆発炎上する。車には赤毛の女が残されていて、彼女によればマルコムにも彼女にも特殊なブレスレットがはめられていて、車から20m離れると爆発するのだという。背後に近づいてきた何者かに殴られて失神したフランク。目をさますと、手首にあのブレスレットがあった。依頼人のジョンソンが現れ、「これはミッションだ」とフランクにルールを説明する。助手席に謎の女を乗せ、指示されたマルセイユ、ミュンヘン、ブタペスト、オデッサへと爆走するフランク。ミッションは無事クリアできるのか?
シリーズ3作目にしてテンションはますます上がり、今回は愛車から20m離れると爆発するという縛りがあります。ブレスレットも発信機も外すことができず、ミッションを放棄すると待っているのは爆死。コーリー・ユン指導のアクションも冴え渡り、頭ひとつ違う巨漢相手のバトルも楽しめます。謎の女性を演じる新星ナターリア・ルダコーワはNYで美容師をしていたところ、リュック・ベッソンにスカウトされたのだとか。堂々のヒロインぶりです。フランクには珍しくラブシーンもあります。依頼人ジョンソン役のロバート・ネッパーの沈着冷静な悪役ぶりも光り、ヒーローと同じくらい敵役は大事、なのがよくわかります。超スピードで駆け抜ける街の風景もお見逃しなく。(白)
2008/フランス/カラー/1時間43分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://tp3.asmik-ace.co.jp/
監督:友松直之、西村喜廣
脚本:友松直之
原作:内田春菊「闇のまにまに~吸血少女対少女フランケン」青林工藝舎
編集・造形・キャラクターデザイン:西村喜廣
出演:川村ゆきえ(有角もなみ)、乙黒えり(富良野けい子)、斎藤工(水島樹権)、亀谷さやか(ミドリ先生)、ジジ・ぶぅ(イゴール)、津田寛二(富良野ケン児)、しいなえいひ(もなみの母)ほか
©2009 PONYCANYON/Concept Films
転校生もなみから、バレンタインデーの手づくりチョコを受取った水島樹権(じゅごん)は、食べたとたんに不思議な感覚に襲われる。もなみの正体は吸血鬼、チョコに自分の血を混ぜて樹権を仲間にするつもりだった。樹権を彼氏だと思っているけい子は、二人に嫉妬しもなみを屋上で襲うが自分が墜落してしまう。けい子の父でマッドサイエンティストである富良野教頭は、けい子を少女フランケンとして蘇らせる。樹権を張り合うもなみとけい子の血しぶきバトルが始まる。
冒頭でいきなり「うわ~~!」なスプラッターシーンが展開されます。ここを耐えるとストーリーは少し戻って、一見普通の高校での持ち物検査の場面に。よく見ると全然普通じゃない生徒と教師ばかりで、リスカ(リストカット)部、怖いです。笑っていいのかなぁと思いながら、どこか突き抜けているのでやっぱり笑ってしまいました。吸血少女は美人ですが、一瞬形相が変わるのでご注意ください。津田寛治さん振り切ってしまったサイエンティストを怪演。なんといってもすごいのは、改造された少女フランケンが飛立つシーン。出演作の続く斎藤工さん、女性パワーにたじたじなイケメン役。(白)
2009/日本/カラー/1時間25分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:エクセレントフィルムパートナーズ
配給協力:ゴー・シネマ
監督・脚本:西澤昭男
作画監督:柳野龍男
演出:島津裕行、清水聡
音楽監督:クリヤ・マコト
主題歌:川嶋あい「大丈夫だよ」
声の出演:福圓美里(アイ)、高橋惠子(アイの母)、高橋和也(秋葉社長)、山本學(老人)、高木渉(石田武士)、吉野裕行(瀬尾彰二)、水島大宙(中井文人)、安藤瞳(梅沢泉)
©『8月のシンフォニー』製作委員会
2002年渋谷の駅前やNHK前で自作の歌をうたう女子高校生がいた。川嶋アイ16歳。福岡にいる母との約束「歌手になる」夢を果たすため、高校入学と同時に東京に出てきて1年。芸能事務所との契約も切れ、1人でも多くの人に歌を聞いてもらうために1000回の路上ライブをすると決心していた。雨が降り出したため、地下街で歌い続けるアイ。その歌に足を止めた秋場社長と大学生たちは、アイのサポートをかって出る。
実在のシンガーソングライターの川嶋あいさんの自伝「最後の言葉」を原作に映画化した作品。実写に近い感覚のアニメーションです。俳優の演技を元に絵コンテをおこしたのだそうで、会話の多い地味な動きの劇をアニメーションにするのは難しかったでしょう。川嶋あいさんのことを私は全く知らなくて、この作品でなんとドラマチックな! と驚きました。この背景となる、2002年~2003年は試写や映画祭で渋谷にも通いましたが、駅前でライブに出会ったことはありませんでした。その場に出会いたかったです、残念。作中に紹介されるあいさんの歌はわりあい淡々として、心のうちがぽつりぽつりとこぼれるようです。高校生が夢を持って頑張る姿に、大人が心動かされて応援していくという物語。このせちがらいと言われる世の中も案外捨てたもんじゃないですね。実話ですって、実話。(白)
2008年/日本/カラー/118分/
配給:ムービーアイ
川嶋あいさんのドキュメンタリー映画『最後の言葉』については本誌66号に掲載されています。
公式 HP >> http://www.8gatsu-eiga.com/
監督:ジェームズ・マンゴールド(『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』)
脚本:ハルステッド・ウェルズ、マイケル・ブランド、デレク・ハース
原作(短編より):エルモア・レナード
出演:ラッセル・クロウ(ベン・ウェイド)、クリスチャン・ベイル(ダン・エヴァンス)、ピーター・フォンダ(バイロン・マッケルロイ)、ローガン・ラーマン(ウィリアム・エヴァンス) ほか
南北戦争では優秀なスナイパーだったが、足を負傷し今は貧しい牧場主として必死に家族を養おうとしているダン・エヴァンス。しかし借金はかさみ、鉄道建設予定地となった自分の土地を追われそうになっている。ある日、強盗団のボス、ベン・ウェイドが逮捕された。刑務所のあるユマ行きの列車に乗せるため、駅まで護送しなければならないが、ベンの手下たちがボスを奪還しようと襲ってくることが予想される。この危険な仕事をダンは金のために引き受ける。ベンの手下たちをかわしつつ、過酷な乾いた大地で様々なトラブルに巻き込まれながら進むうちに、ダンとベンには不思議な絆のようなものが芽生え始める。
これ以前に西部劇の公開作品を観たのはいつだったでしょう? 全く思い出せません。最近のハリウッドでは西部劇は当たらないと言われてぜんぜん作られていませんが、このマンゴールド監督は大の西部劇好き。メジャー各社に断られ続けた企画を自身のプロダクションで執念で完成させたそうです。1957年の『決断の3時10分』(デルマー・デイヴィス監督、グレン・フォード主演)のリメイクで、ストーリーラインはシンプルですが、善とも悪とも言い難い登場人物の複雑な感情が絡み合い、ぶつかり合う様が、非常に見応えがあります。ラッセル・クロウとクリスチャン・ベイルの2人が互いに一歩も譲らぬ演技対決を見せてくれます。ダン・エヴァンスの息子・ウィリアム・エヴァンスを演じるのは『幸せのセラピー』にも出演していたローガン・ラーマン。いい目をしています。
その場の損得勘定ではなく、人としての誇りを守り抜く美しさが、昨今の世に最も足らないものではないかと、問いかけられているようです。(梅)
2007年/アメリカ/カラー/122分/スコープサイズ/DTS
提供:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
配給:シナジー
宣伝:フリーマン・オフィス
公式 HP >> http://www.310-k.jp/
監督: ラッセ・ハルストレム
製作:リチャード・ギア、ビル・ジョンソン
脚本:スティーヴン・P・リンゼイ
撮影:ロン・フォーチュナト
編集:クリスティーナ・ボーデン
音楽:ジャン・A・P・カズマレック
出演:リチャード・ギア(パーカー・ウィルソン)、ジョーン・アレン(ケイト)、ケイリー=ヒロユキ・タガワ(ケン)、サラ・ローラー(アンディ)、ジェイソン・アレクサンダー(駅員)、エリック・アヴァリ(ホットドッグ屋)ほか
ベッドリッジ駅、午後5時。駅にはいつも君が待っていた。
日本からアメリカに送られた秋田犬の子、宛名札がなくなって迷子になってしまった。偶然出会ったパーカー・ウィルソン教授は見過ごすことができず、こっそりと連れ帰る。案の上妻の反対にあうが、子犬は家族の一員となった。首輪についていたのは漢字の「八」。日本人の友人に説明をうけたパーカーはそのまま、子犬の名前とする。ハチはパーカーの愛情を受けて成長し、毎日駅までパーカーの送り迎えをするようになった。毎日5時になると駅に到着する電車、パーカーが降りてくるのを待つハチの姿は近隣の人々を和ませていた。そんな日々が永遠に続くと思われたが・・・。
渋谷駅前のハチ公の銅像と、その背景にあるエピソードは知らない人がないくらい有名でしょう。1987年に神山征二郎監督・進藤兼人脚本で映画化され大ヒット。今度はアメリカに舞台を移し、やはり大学教授と愛犬の物語として蘇りました。前の作品も観ているので、1人と1匹の行く末もわかっているのですが、別れが近づくのにハラハラし、毎日毎日駅に主人を迎えにくるハチにやっぱり泣けました。子犬の時代から老いていくまでを何頭もの犬が演じていますが、人間に劣らない名優ばかりです。
我が家でも犬や猫といっしょに暮らした日々があり、懐かしく思い出しました。どんなにダメな飼い主でも信じていてくれた気がしています。こんな絆を人間同士が持つのが難しいのは、余計なものがありすぎるからでしょうか。こういう映画を観るとむしょうに動物と暮らしたくなりますね。(白)
2008年/アメリカ/カラー/98分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
提供:フジテレビジョン、松竹
配給:松竹
公式 HP >> http://www.hachi-movie.jp/
監督:小沼雄一
原作:小谷野敦「童貞放浪記」(幻冬舎文庫刊)
脚本:石垣直哉、安立紳
脚色:前田司郎(五反田団)
出演:山本浩司(金井淳)、神楽坂恵(北島萌)、堀部圭亮(山口)、古舘寛治(黒瀬)、松井周(本村)、内田慈(朝原)、木野花(淳の母)、志賀廣太郎(犀藤)
© SEIWA FILMS
東大大学院出身の金井淳はある大学の専任講師となった。講義で男女の機微を語りながら、30歳の今も童貞である。女性に興味がないわけでなく、まっとうな意欲はあるもののチャンスに恵まれなかったのだ。酒癖の悪い先輩にからまれ、ストレス解消に風俗店に行ってみたものの不完全燃焼。出張先で院の後輩北島萌に出あった淳は、以後たびたび連絡をとるようになり、今までにない心のトキメキを覚える。初めて感じるこれが「恋」というものなのか?
誰にでもまあ初めてのときはあるわけで、それが遅いか早いかの差だけ。女子と男子は違う感覚ではと想像するのですが、この作品の金井淳くんはまじめでいじらしいほどです。初めて恋心を覚えた後輩北島萌は、すでに経験者で妻子ある男性を追って、外国へ留学しようとしている行動派。先輩の金井をむげにもできず、なんとなくいい感じまでいくのです。この北島萌役はグラビアアイドルから女優に転身した神楽坂恵さん。名前のように恵まれた肢体を見せて堂々の脱ぎっぷりです。山本浩司さんは『ばかのハコ船』以来注目している俳優さん。なんだか母親になった気分で見守ってしまいました。脇も濃い面々がかためて、おかしい中にこんな人いそうだと現実味あります。(白)
2009年/日本/カラー/98分/HD
配給:アルゴ・ピクチャーズ
★イベントのお知らせは公式ブログでチェックを
http://blog.livedoor.jp/dotei_horoki/
公式 HP >> http://www.doteihoroki.com/
監督:ジャン=ポール・ジョー
音楽:ガブリエル・ヤレド(『アズールとアスマール』、『イングリッシュ・ペイシェント』)
出演:エドゥアール・ショーレ、ぺリコ・ルガッス他
老人が2人、木陰でたたずんでいる。4人の子どもたちが手作りのブリオッシュを売りに来る。老人が問う。「オーガニックって?」 一瞬ためらって男の子が答える。「自然のまま!」
フランス南部アルルにも近いバルジャック村。村長エドゥアール・ショーレは全ての学校給食と高齢者の宅配給食をオーガニックにするという試みに挑戦する。農薬や化学肥料、食品添加物による食物汚染から、子どもたちの未来を取戻そうとする村ぐるみの運動を1年にわたり追ったドキュメンタリー。
のどかで風情のある家並み、一面のひまわり畑や、赤い花の絨毯・・・ 絵のように美しい映像とはうらはらに、語られるのは農薬や添加物の恐ろしさ。村の近くにある世界遺産ポン・デュ・ガールは、ローマ時代に作られた水道橋。ここで子どもたちは先生から水の大切さを教えてもらう。畑では皆で有機農法による野菜作り。うらやましい教育の現場にため息がでました。原題Nos enfants nous accuserontは、「子どもたちは私たちを告発するでしょう」という意味。この村のような教育を受ければ。食の安全を考えない社会に子どもたちはきっと疑問を持つでしょう。
さて、映画を観終わって、食べるものに関してあまりに無頓着な我を反省。毎日、毒をずいぶん摂取しています。できることから変えていかなければ・・・と真剣に思う日々です。(咲)
2008年/フランス/35mm/カラー/ドルビー/112分
配給・宣伝:アップリンク
特別記事 『未来の食卓』ジャン=ポール・ジョー監督 来日記者会見もご覧下さい
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/shokutaku/
監督・撮影・編集:松林要樹
編集:辻井潔
プロデューサー:安岡卓治
©2009 Yojyu Matsubayashi
-あなたには いま 伝えておきたい-
太平洋戦争中、日本はビルマ侵攻作戦に着手した。連合国から中国国民政府へと送られる物資の輸送路を断つためであった。緒戦は圧勝したものの、ミッドウェー海戦で大敗を喫してから戦況は大きく変わった。泰緬鉄道の建設でおびただしい数の犠牲者を出し、さらにインパール作戦での悲惨な逃避行により33万人の将兵のうち、19万人が亡くなってしまった。
タイ・ビルマ国境付近で終戦を迎えたのち、祖国日本に帰らずその土地に残った「未帰還兵」がいた。このドキュメンタリーは、2005年から3年間の取材で、彼らのもうひとつの戦後史をとらえたものである。
日本映画学校の創設者である今井昌平監督は「未帰還兵を追って」(1971年)、「無法松故郷に帰る」(1973年)という2本のドキュメンタリーを撮っています。松林監督は映画学校在学中にこの作品を観、その中に登場した未帰還兵を訪ね、その3人が『花と兵隊』にも登場しています。
なぜ残られたのかという問いに、それぞれの心のうちを搾り出すように、当時の記憶を話す人がいます。戦争を知らない若者に向かい、辛い話ができるまでに長い時間がかかっただろうと想像します。知る人が語らなければ、私たちは知るすべがなく、戦後60何年もたてば次第に語る人もいなくなってしまいます。この映画の6人のうち2人が鬼籍に入られました。
土地に根付いた方々が現地の女性と結婚し、今も仲睦まじいようすであること、笑顔の良いことに気持ちがやわらぎました。(白)
2008年/日本/カラー/106分/DVCAM/日本語・ビルマ語・タイ語
配給:安岡フィルムズ
配給協力:東風、KAWASAKIアーツ
公式 HP >> http://www.hanatoheitai.jp/
監督・脚本:マーク・ハーマン
撮影監督:ブノワ・ドゥローム
音楽:ジェームズ・ホーナー
原作:ジョン・ボイン「縞模様のパジャマの少年」岩波書店刊
出演:エイサ・バターフィールド(ブルーノ)、ジャック・スキャンロン(シュムエル)、デヴィッド・シューリス(父)、ヴェラ・ファーミガ(母)、アンバー・ビーティ(グレーテル)、リチャード・ジョンソン(祖父)、シーラ・ハンコック(祖母)、ルパート・フレンド(コトラー中尉)、デヴィッド・ヘイマン(パヴェル)ほか
© 2009 WALT DISNEY STUDIOS MOTION PICTURES, JAPAN. ALL RIGHTS RESERVED
第2次世界大戦下のベルリン。8歳の少年ブルーノは、ナチスの将校である父の昇進で大好きな市内の家から、遠くの田舎に引越すことになった。父の仕事がどんなものなのか少しも知らなかったが、家での父は優しくて威厳があり、ブルーノは心から尊敬していた。街から離れたくはなかったが、父の言うことは絶対で、早く元に戻れるように願うばかりだ。
仲良しの友達と別れて着いた新しい家。近所には店どころか家1軒さえなく、殺風景でなんだかいやな感じのするところだった。母は家の囲いから外へ出ることを許さず、姉のグレーテルとブルーノのために毎週家庭教師がくることになった。遊び相手のいないブルーノは、窓から見えた農場らしきところを探検してみることにした。友達になれそうな子どもがいるかもしれない。森を抜けてフェンスまでたどりつくと、そこには縞のパジャマを着た少年シュムエルがいた。ブルーノは同い年の友達を見つけて嬉しくてたまらない。誰にも知られないように、フェンス越しにシュムエルと話すのが日課になった。
何ヶ国語にも訳され、ベストセラーとなった同名の小説が原作です。ホロコーストの渦中にいながら理解できない子どもの視線から書かれています。父が国家のために誰もできない仕事をしていると信じ、収容所の縞の制服をパジャマだと思います。ユダヤ人のシュムエルも家族ばらばらにされ、辛い目にあっているのですが具体的に何が起こっているのか理解できません。歴史を知っている私たちは、ブルーノとシュムエルをはらはらしながら見守ることになります。モデルであろうアウシュビッツ収容所の監視は厳しく、こんな交流はとてもできなかったと思います。しかし、無垢な子どもを中心にしたこの設定は、体験していないことを書く上で必要だったと原作のジョン・ボイン。知らないうちに渦に飲み込まれ、声も上げられなかった人々が、シュムエルやブルーノとして登場するのです。
子役はそれぞれオーディションで選ばれ、ベテラン俳優陣が回りの大人たちを演じます。父親役のデヴィッド・シューリスは「ハリー・ポッター」のルーピン先生でした。収容所の所長が自分の子供たちに送った愛情あふれる手紙を読んで、役作りの参考にしたそうです。メガホンをとったのは『ブラス!』のマーク・ハーマン監督。胸に刻まれる1本です。(白)
2008/アメリカ、イギリス、/1時間35分/ビスタ/字幕翻訳:菊地浩司
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www.movies.co.jp/pyjamas/
監督:沖田修一
原作:西村淳「面白南極料理人」「面白南極料理人 笑う食卓」(新潮文庫刊)
脚本:沖田修一
撮影:芦澤明子
美術:安宅紀史
フードスタイリスト:飯島奈美、樽谷孝子
音楽:阿部義晴 主題歌:ユニコーン
VFX:小田一生
照明:豊見山明長
出演:堺雅人(西村淳/調理担当)、生瀬勝久(本さん/雪氷学者)、きたろう(タイチョー/気象学者)、高良健吾(兄やん/雪氷サポート)、豊原功補(ドクター/医療担当)、西田尚美(西村の妻・みゆき)、古舘寛治 小浜正寛(主任/車両担当)、黒田大輔(盆/通信担当)、小浜正寛(平さん/大気学者)、小野花梨(西村の娘・友花)、小出早織(KDD清水さん)、嶋田久作(船長)ほか
1997年南極。ここは昭和基地から約1000キロ離れた南極ドームふじ基地。氷点下54度の超極寒地。ペンギン、アザラシはおろか、ウィルスさえ生存できないこの地で、8人の南極観測隊員たちが、約1年半の間、共同生活を送る。この映画の主人公・西村は海上保安庁から派遣された調理担当。隊員の為、毎日料理を作るのが仕事。南極観測の悪戦苦闘の中で、手間ひまかけて作った彼の料理を、8人全員がそろって食べる。その瞬間に、みんなの顔がほころぶ・・・それが西村には何にもかえがたく嬉しいことだった。
こうやってパソコンを打ちながらも、私の口元はにんまりと笑っている、いろんな場面を思い出しながら。ちょっと固くなった心を、マッサージされたような気持ちよさがこの極地映画には流れている。一応、私も主婦だから料理は避けて通れないが、1年半も毎日3度3度・・・いやだぁ~、絶対! 原作者の西村さん、辛かっただろうな。たまには外食・店屋物にしたかっただろうな、無理だけど。
ところでこの作品を観て2002年山崎努主演、崔洋一監督『刑務所の中』を思い出した。さぁ、そこで、究極の選択だ。1年半南極に行き、限られた食材で暮らすか、刑務所で1年半、カロリー計算しつくされた料理で暮らすか・・・どっちにする? どっちも、国の税金料理には変わりないけど、私は年中ダイエット宣言してるから、刑務所かな。
話しが変な方向にそれてしまった、ごめんなさい。はっきり言って、自腹で1800円出しても惜しくないし、太っ腹なあなたなら、パンフレットも買うに違いない作品。それに小学生高学年のお子様なら十分楽しめる。
目にも美味しそうな料理で、むっさい男たちを手なずけた? 堺雅人。今度は秋公開の『クヒオ大佐』で女たちをどう騙すのか、今から楽しみ・・・。
追加:面白いはず!『このすばらしきせかい』の監督さんだった。1977年愛知県生まれ・・・いま32歳? スゴイの一言。(美)
2008年/日本/カラー/125分/アメリカンビスタ/DTSステレオ
配給:テアトル
公式 HP >> http://nankyoku-ryori.com/
監督・脚本:ジョー・マー
原作:篠原とおる
撮影監督:ジョー・チャン
アクション監督:ウォン・ワイファイ
主題歌:中村中「怨み節」
出演:水野美紀(松島ナミ)、ディラン・クォ(ケンイチ)、ブルース・リャン(赤城)、サム・リー(チョンロン)、エメ・ウォン(セイコ)、ラム・シュ(所長)、夏目ナナ(エリカ)、サイモン・ヤム(老人)、石橋凌(ジョンオー)、ペギー・ツァン(サヨ)ほか
©2009篠原とおる/アートポート
― 恨みも、愛 ―
恋人の警察官ケンイチとの結婚を間近にひかえたナミは、幸せの真っ只中にあった。ケンイチの父ナカイ教授と妹の訪問を待ちかねていたときに、赤城をボスとした暗殺集団に襲われる。彼らの目的はナカイ教授だったが、ナミを脅して教授と妹を殺させる。凶悪殺人犯として女子刑務所に収監されたナミは、所長のセクハラと女囚たちの激しいリンチに遭う。面会に訪れたケンイチに罵倒され、絶望するナミは自分を陥れた赤城たちへ復讐を誓い、なんとしても生き抜く決意をする。
梶芽衣子主演のオリジナルは今も強烈な印象を残していますが、水野美紀主演でのリメイク。香港のスタッフ、キャストを加えてアクションの見せ場の多い作品となりました。水野美紀は、『ハードリベンジ・ミリー』で愛する家族を惨殺され、鍛錬の末復讐を遂げる女性を熱演していました。今回も痛そうなシーンが多く、満身創痍だったのではないでしょうか?そんな彼女の頑張りが花開いたかというと、なんだかばらけた印象のストーリーで、もったいないです。ジョー・マー監督といえばラブ・ストーリーが浮かぶのですが、陰惨な話は向いてなかったのかな。ブルース・リャンを敵に回してどうするのだ??とどきどきしたら、そ、それですかい・・・監督ぅ~~。劇場でご確認を。中村中さんの主題歌すごすぎ。(白)
主人公と対立する女囚エリカ役の夏目ナナさんの闘志むきだしの顔が印象に残った。猟奇的な印象ばかり強くて、情の深さや哀しさが伝わってこない。そういうものの表現は目指していないのか? でも最後の中村中さんの「恨み節」はどっぷりねっとり情の世界。(梅)
2008年/香港・日本/カラー/113分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:アートポート
監督:スティーヴン・ソマーズ
脚本:スチュアート・ビーティー、デヴィッド・エリオット、ポール・ラヴェット
撮影:ミッチェル・アムンドセン
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演: チャニング・テイタム(デューク)、レイチェル・ニコルズ(スカーレット)、マーロン・ウェイアンズ(リップコード)、シエナ・ミラー(バロネス/アナ)、レイ・パーク(スネーク・アイズ)、イ・ビョンホン(ストームシャドー)、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(コブラコマンダー)、アドウェール・アキノエ=アグバエ(ヘビー・デューティ)、クリストファー・エクルストン(マッカラン)、サイード・タグマウイ(ブレイカー)、デニス・クエイド(ホーク将軍)、ジョナサン・プライス(大統領)ほか
©2009 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
軍隊でナノマイトの輸送にあたっていたデュークとリップコードは最新兵器を手にした闇の組織に襲われる。黒髪をなびかせた女性をみてデュークは胸をつかれる。かつて婚約していたアナは、いまやバロネスと名乗り、世界征服を企む悪の組織"コブラ"の一員となっていたからだ。ナノマイトを奪還するためアメリカ政府は "G.I.ジョー"を送り込むことにした。それは各国の精鋭を集めて組織した史上最強の国際機密部隊、デュークとリップコードも参加する。G.I.ジョーはコブラへの切り札と成り得るのか。エジプト、パリ、東京など世界の都市で壮絶なバトルを繰り広げる。
アメリカの男の子たちが夢中になって遊んだ戦闘フィギュアが「G.I.ジョー」。この映画では1人をさすのでなく、訓練を受け特殊な戦闘スーツに身を包んだエキスパートチームをいう。世界中から集められた戦闘員なのでキャラは豊富。お気に入りができるでしょう。黒尽くめのスネークアイズのライバルとして登場する敵側コブラのストームシャドーは、ハリウッド大作に初出演となったイ・ビョンホン。アジア人ということからか、武器は刀・手裏剣。こちらは全身白装束なので、なんだか正義側に見えてしまいます。27日に行われた「東京アーバンドックららぽーと豊洲」でのジャパン・プレミアには監督を始め、主要な出演者が登場しましたが、誰よりも大きな歓声を浴びていたのがこのイ・ビョンホン。詳しくは公式ブログへ。
既出の『ターミネーター4』『スター・トレック』『トランスフォーマー』などとCGの戦闘シーンがかぶりますが、出だしからクライマックスのような派手さで、2本分観た感じがしたほど濃い映画でした。(白)
2009/アメリカ/カラー/113分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
公式 HP >> http://www.gi-j.jp/
監督・脚本・美術:イジー・バルタ
屋根裏の古いトランクの中には、忘れられた人形たちが暮らしている。ポムネンカは帽子の好きな青い目の女の子。ぬいぐるみのクマのムハ、粘土とガラクタでできている妖精シュブルト、操り人形のクラソンは正義の騎士だ。
朝ごはんを食べてみんなが仕事に出かけたあと、お掃除を始めたポムネンカをじっと見ている怪しい目玉。屋根裏の果てに住む悪の帝王フラヴァは、可愛いポムネンカをさらっていってしまった。仲間たちは彼女を助けるために知恵と勇気をふりしぼる。
チェコの長編人形アニメ。イジー・バルタ監督は1948年生まれ。1978年からイジー・トルンカ・スタジオで製作に従事。1993年から自身も卒業したプラハ工芸美術大学、映画テレビグラフィック学科の学科長に就任しています。チェコアニメの巨匠。23年ぶりのこの新作は、「観る人の想像力と思考力」を刺激するアニメーション。気が遠くなるような手間ひまをかけてできあがった作品です。ほこりと思い出のつもる屋根裏の世界で、人形達が自在に動く様子をお楽しみください。「ポムネンカ」とはチェコ語で「思い出」という意味だそうです。日本語吹替え版ではポムネンカを貫地谷しほり、フラヴァを佐野史郎。(白)
2009/日本、チェコ、スロヴァキア/カラー/75分/ビスタサイズ/
配給:アットアームズ
宣伝:東風
公式 HP >> http://a-a-agallery.org/intheattic/
監督:クリス・ウィリアムズ/バイロン・ハワード
製作:クラーク・スペンサー
製作総指揮:ジョン・ラセター
脚本:ダン・フォゲルマン/クリス・ウィリアムズ
音楽:ジョン・パウエル
声の出演:ジョン・トラヴォルタ(ボルト)、マイリー・サイラス(ペニー)、スージー・エスマン(ミトン)、マーク・ウォルトン(ライノ)マルコム・マクダウェル(ドクター・キャリコ)、ジャームス・リプトン(ディレクター)、グレッグ・ジャーマン(マネージャー)
― ずっと家族だって、信じてる ―
ペニーは動物保護施設で白い子犬と出会い、ボルトと刻まれた首輪をかける。5年後、たくましくなったボルトと、ペニーはドクター・キャリコ率いる悪の組織と戦っている。ペニーの父親が改良したスーパー・パワー犬ボルトの使命は、ペニーを命がけで守ることなのだ!…とはテレビドラマの中のお話。ボルトはスタジオのセットの中だけで育てられ、それが全部本物だと思いこんでいる。ボルトの本気が迫真の演技となり視聴率を上げているので、スタッフはボルトに気づかれないように必死だ。しかし、手違いでボルトの入った箱がハリウッドからニューヨークへ発送されてしまった。箱から出たボルトは、一刻も早くペニーの元へ帰ろうとするが、いつものスーパー・パワーが少しも発揮できない。ニューヨークの野良ネコ、ミトンを道案内に捕まえ、ドラマ大好きのハムスターのライノも加わって、3匹の珍道中が始まる。
ドラマの中がほんとの世界と信じていたボルトが、現実世界に放り出されておきる珍事件。いちずなボルトが自分の勘違いに少しずつ納得していくのが、なんとも切ないです。ひねくれネコのミトン、妄想系ハムスターのライノ、ときどき顔を出すハトたちのキャラクターがくっきりしておかしさ満点。ボルトは真実を知ったあとでも、ペニーの愛情だけは疑いません。
このところ犬が主人公の映画が多いのですが、この「主人に忠実、純情」というところが今の世に渇望されているのでしょうか?? ともあれ、ピクサーから数々の作品を送り出したジョン・ラセターがディズニーで作った最初の作品です。3匹と一緒に大陸横断の旅へ出かけましょう。お子様と一緒に大人も楽しめる夏休みにぴ~ったりの映画。(白)
2008年/日本/カラー/1時間36分/ビスタサイズ/ドルビーSRD-EX
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
宣伝:リベロ、アンリミテド
公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/bolt/
監督・製作:ベニー・チャン
脚本:ベニー・チャン、アラン・ユエン
原作:ニューライン・シネマ映画『セルラー』
原案:ラリー・コーエン
撮影:アンソニー・プン(HKSC)
出演:ルイス・クー(アバン)、バービー・スー(グレイス)、ニック・チョン(ファイ刑事)、リウ・イエ(誘拐犯)、エディ・チョン、ルイス・ファン
©2008 Emperor Motion Picture(International)Limited, Warner China Film HG Corporation & BNJ Armor Entertainment Limited. All Rights Reserved.
ロボット設計士のグレイスは夫に先立たれ、娘ティンティンと2人暮し。ティンティンを学校へ送った帰りに黒尽くめの一団に突然拉致されてしまう。理由もわからずパニックになるグレイスは娘を守るために、閉じ込められた小屋の壊れた電話を修復して、外への連絡を試みる。
一方アボンは妻に逃げられ、息子ギットを心のよりどころにしている。もうすぐ離れ離れになるので見送りのために、空港へ急いでいた。アボンの携帯にグレイスからの必死の電話が偶然につながる。涙ながらの訴えはいたずらとは思えなかった。切ったら2度とつながらないかもしれない、と訴えるグレイス。交通警官のファイを見つけて、後を託したいアボンだったがうまくいかない。一味の目をかすめてのグレイスの連絡はしばしば止まり、アボンは携帯が切れないように奔走しつつ、彼女を救う算段とギットとの約束を果たす方法を考えねばならなかった。
ノンストップアクション、ノンストップ携帯のこの作品。あれよあれよというまに、主演の2人と一緒に事件にまきこまれて行きます。ベニー・チャン監督作品ですから筋はしっかり、アクションもカーチェイスもてんこ盛り、親子の情愛も描いて1分たりと目が離せない展開です。アイドルだったバービー・スーもまだ若い印象でしたが、この作品のように子どもがいてもおかしくない年齢。ルイス・クーはデビュー当時のTVドラマも見ているので、すっかり精悍になった外見ばかりでなく、幅広い役柄ができるようになっていること、人気俳優の地位も確立していることに感慨しきりです。ベニー・チャン監督とはコミカルな作品『プロジェクトBB』についで2本目。かなり情けないシングルファーザーのアボンが、グレイスを救おうと奮闘、息子の信頼を取り戻そうと必死になる姿を熱演しています。『一個好爸爸(監督:張艾嘉)』では、香港電影金像奨主演男優賞に初ノミネートされました。受賞したのはこの作品で熱血警官を演じているでニック・チョン(『証人』ダンテ・ラム監督/日本未公開)。彼もとてもいい俳優さんになりました。リウ・イエの切れっぷり、ルイス・ファンのアクションもみどころです。(白)
香港映画初のハリウッドリメイク作品(『セルラー』)ということで、香港でも公開当時話題になりました。『セルラー』の舞台は海辺で、どこか開放感が感じられる作品でしたが、『コネクテッド』はオール香港ロケで、香港の市街地でのカーチェイスシーンがより緊迫感を演出しています。1本の電話を取ってしまったがために、様々な災難に巻き込まれる主人公アボン。子供に「パパはいつも約束を守らない」といわれている彼が、この災難を乗り越えた時に得るものは何か? …感動しました。アボン演じるルイス・クーは男性的な役を演じることが多かったのですが、この作品ではハンサムな顔をメガネで隠し、気弱なシングルファーザーを熱演しています。グレイス役のバービー・スーも初めての母親役ということで、この主役2人が今までのイメージとは違う役を好演した上、脇役陣の存在感などによって、携帯電話という現代ではポピュラーとなった電子機器を題材としながらも、人情味のあるアナログ的な人間ドラマにもなっていると思います。そしてスリリングなシーン連続の中で、笑いを担当した携帯電話店の店員を演じた王祖藍は、香港ではチャウ・シンチーの跡を継ぐといわれている俳優だそうです。(裕)
2008年/香港・中国/カラー/110分/シネマスコープ/字幕翻訳:税田春介
配給:ブロードメディア・スタジオ
宣伝:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.connected-movie.jp/
監督・脚本:エルマンノ・オルミ
製作: ロベルト・チクット、ルイジ・ムジーニ
撮影:ファビオ・オルミ
音楽:ファビオ・ヴァッキ
出演:ラズ・デガン、ルーナ・ベンダンディ、アミナ・シエド、ミケーレ・ザッタラ
Copyright© 2009 Crest International Inc. All rights reserved. (C) 2006 cinema11unidici-Rai Cinema
夏期休暇に入ったばかりのボローニャの大学で、貴重な神学書の手稿写本が太い釘で打ち抜かれる。発見した守衛は卒倒しそうになりながら、警察へ連絡する。容疑者として浮かび上がったのは将来を嘱望されていた若い哲学教授。彼は近く国際舞台で論文を発表することになっていたが、前日の授業を最後に姿を消していた。
彼は車であてもなく走り、わずかな品を残してジャケットも財布もポー川へ投げ捨てる。車も乗り捨てて、川べりの朽ちた小屋を住みかに定める。近くに住む村人たちは彼に興味を持ち、その風貌から親しみを込めて「キリストさん」と呼ぶようになる。
原題は「百本の釘」。冒頭でおびただしい古文書が磔のように釘で打ち抜かれています。イエス・キリストが十字架に止められたような太い釘です。この図書館のシーンで『天使と悪魔』を思い出しました。この象徴的な行為の後、哲学教授としての日々を捨てた彼は名もない1人の男となります。自然に集まってきた村の人々に請われるまま、聖書の一節を語るシーンがとても良くて、人々の声を聞き、癒し、福音を説いて歩いたキリストはこんなだったかもと思わせます。村に溶け込んで新しい人生を始めてまもなく、意外なところからまた世俗に関わることになってしまいます。牧歌的な風景と、彼を待ちながら村の人々がともす蝋燭の光が美しいです。主演のラズ・デガンは、CMから人気が出た人だそうでなかなか素敵。エルマンノ・オルミ監督はこれが最後の長編作品と公言しているそうで、撮影を息子が、製作総指揮を娘がそれぞれつとめています。(白)
2006年/イタリア/94分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クレストインターナショナル
公式 HP >> http://po-gawa.net/
監督:ジェレミー・ゴッシュ
出演:ウェイン・ラビット・バーソロミュー、マーク・リチャーズ、ショーン・トムソン、ピーター・タウネンド、トム・カレン、ケリー・スレーター、ドリュー・カンピオン、エディ・ロスマン、フレッド・ヘミングス、ロブ・マチャド
ナレーション:エドワード・ノートン
— 1975年、たった6人の若者が、世界の波を変えた −
1970年代前半、ハワイ・オアフ島ノースショアはすでにサーフィンのメッカとして世界中のサーファーの憧れの地として名を馳せていた。当時、ノースショアを率いていたのは地元ハワイのサーファーたち。彼らにとってスポーツとしてのサーフィン以上に、波を神聖視した一種宗教にも通じるものだった。1974年、南アフリカとオーストラリアから夢を求めてやってきた6人の若者たちが、サーフィン界に革命を起こす。果敢にラディカルな波に挑む姿がサーフィン雑誌の表紙を飾り、もてはやされるようになる。よそ者たちがプロのサーファーを目指すのを疎んじた地元ハワイのサーファーたちは、自警集団「ブラックショーツ」を結成する。長い間表沙汰にされなかった抗争事件が、当事者の口から明らかにされる・・・
ちなみに、「BUSTIN' DOWN THE DOOR」とは、ウェイン・ラビット・バーソロミューがオーストラリアの雑誌に書いたコラムの題名で、「ドアをブチ破れ!」さらに、「逮捕してやる!」というニュアンスも含むものである。温厚なハワイアンたちが怒るのも無理はない?
今や一大スポーツとして華やかな世界を築いているサーフィン。本作は、初めてプロのサーファーを目指した男たちが自らの青春時代を語るドキュメンタリー。当時の彼らの姿を、サーフ映画のバイブル『FREE RIDE』など70年代サーフムービーの数々の映像で見せてくれる。それから30数年を経て過去を語る彼らは皆、とても魅力的だ。私にとってサーフィンは、茅ヶ崎に住んでいた高校時代の親友から、「人気のない早朝にこっそり楽しんでるの」と聞かされていただけで自分には無縁のものだけれど、このドキュメンタリーには、ぐいぐい惹かれた。男たちの語り口は物静かで、大きな事を成し遂げた気負いは感じられない。苦難を越え、信念を貫いて道を切り開くことの素晴らしさをじわじわと感じさせてもらった。(咲)
2008年/アメリカ/96分/カラー/ビスタサイズ
提供・配給:キングレコード/ビーチカルチャー
宣伝:アップリンク
公式 HP >> http://www.bustindownthedoor.jp/
演出:伊勢真一
撮影:石倉隆二、世良隆浩
出演:小児がんと闘う仲間たち
1999年から10年来、伊勢監督は、小児がんの子どもたちと医師たちの病気との闘いと、彼らが毎年行ってきたサマーキャンプの様子を撮り続けてきました。小児がんはもう不治の病ではありません。8割は完治できるといいます。それでもその治療は難しく、患者にとってつらくて苦しいものであることに変わりはありません。社会的偏見・差別もあるし、本人も大きな病気をしたことで他の人たちと同じように暮らしていけるのか不安を抱えています。何より幼くして死と直面するつらい体験は経験したものでなければわからない部分が沢山あります。
サマーキャンプは、聖路加国際病院小児科の細谷先生たちが中心となって始められました。現在病気と闘う子どもたちや、かつて闘って克服した子どもたち、そして医師や看護師たちが全国から集まって海や山でキャンプをします。そこでは学校の友達や家族にさえも伝えにくい悩みや不安を、何の前置きもなく話すことができます。みんな心底楽しそうな顔をしているのが印象的です。友となって別れのときにかわされる「来年もまた会いましょう」という言葉の重さは、普段使われるよりもずっとずっと重いのです。
自分の受けた痛みや苦しみを力に変えて、人の痛みを深く思いやり、人を助ける仕事がしたいと語る子どもたちがいます。病気を克服し、大人になって、「看護師になりたい」「お母さんになりたい」という夢を実現した子どもたちがいます。10年という長い歳月を地道に撮り続けたことによってカメラがとらえられた「希望」。ささやかに、光り輝き、観るものを照らします。(梅)
2009年/日本/カラー/105分
企画:スマートムンストン
製作:いせFILM、スマートムンストン関連映画製作委員会
いせFILM HP >> http://www2.odn.ne.jp/ise-film/
監督:竹中直人
企画:中沢敏明
出演:成海璃子、AKIRA、マイコ、竹中直人、沢村一樹
竹中直人の無謀ならぬ野望がついに実現!
笑撃度200%超えの山形発絶叫エンタメムービーで世界を震撼させる!
夏休み、都立紅女子高校の歴史研究会の美香代(成海璃子)たち一行は、顧問の勝海子先生(マイコ)の発案で平家の落ち武者の里として知られる山形県・御釈ヶ部村に研究旅行へ。折しも町興しイベントで落ち武者の霊が眠る祠が掘り起こされ、落ち武者たちが復活してしまい、次々に村人たちを襲い始める。しかも、美香代は侍頭・忠経(沢村一樹)が生前愛していた官女・光笛にそっくりだった為に、惚れられて連れ去られてしまう。美香代を奪回しようとする女子高生や村の床屋・三太郎(AKIRA)と落ち武者ゾンビとの壮絶なバトルが始まる・・・
まさにドタバタのホラーコメディ。ゾンビになってしまった村人たちの中腰で歩く姿や、由紀さおり演じる銀髪の老美女の歌う「やめてけ〜れ ゲバゲバ♪」などが脳裏から離れません・・・ 昭和30年生まれには、ほんと、突飛な才能を持っている方が多いですね。(咲)
2008年/日本/116分/カラー
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
製作「山形スクリーム」製作委員会
特別記事 『山形スクリーム』記者会見レポート もご覧下さい
公式 HP >> http://yamagatascream.gyao.jp/
監督・脚本・プロデューサー:関口祐加(せきぐちゆか)
撮影:キム・バターファム
登場人物:関口祐加、ジョージ・ブレア=ウェスト博士(精神科医)、ゲイリー・エガー博士(肥満研究家)、ショーン・ニックリン博士(美容整形外科医)、イヴォンヌ・アレン(パートナー紹介所所長)、フィオル・ガルデリシ(スタイリスト)
―私の好物が私の敵になった―
1957年生まれ、オーストラリア在住28年の関口監督は161cm、95kgのシングルマザーである。超高齢出産で授かった一人息子と走ることがままならなくなってきた。ついに医者から「このままだと長生きできない」と宣告を受ける。一大決心をして自らをカメラの前にさらけ出し、本気でダイエットに挑戦することにした。
昨年の国際女性映画祭のクロージング作品。「とても面白かった!」と聞いていたので、観られなかった私は今回一般公開されることになって楽しみにしていました。関口監督は食べることが大好きで、屈託なく明るいチャーミングな人。自分の体型に悩んでではなく、健康のためにこのままではいかん、というのが第一。コメディタッチにしよう、との狙いどおり、自分をまな板に乗せた監督の挑戦は楽しくて思わず笑ってしまいます。その一方、セラピーの先生の質問に真摯に答え、自分の両親とのかかわり、人生の目標など心の深いところにあるものを掘り下げていく真剣な場面もちゃんとあります。息子にとっての母であり、日本にいる母親と亡くなった父の娘であり、そして一人の女性でもあることを大切にしている監督。母娘がキッチンタオルで涙を拭く場面にこちらもグッと来ました。ダイエットに関心のある方、そうでない方もぜひご覧下さい。(白)
2007年/オーストラリア/カラー/52分/DVカム
配給:パンドラ
宣伝:太秦
関口監督の初監督作『戦場の女たち』のインタビュー記事が本誌12号に掲載されています
監督:中江裕司
脚本:中江素子
撮影:高間賢治(JSC)
出演:柴本幸(ゆり子)、蔵下穂波(マジルー)、平良とみ(タンメー)、平良進(アンマーハーメー)、和田聰宏(敦)、中村優子(梨花)ほか
ゆり子が故郷の世嘉冨(ゆがふ)島に帰ってきた。島の守り神・キジムン(精霊)のマジルーは、子供のころゆり子と交わした約束を忘れずちゃんと見守っていた。ゆり子は東京での不倫の恋に疲れて、カマドおばぁと暮らした懐かしい家に戻ったのだ。若い娘が増えて青年会は大喜び、村長の息子の結婚祝いの芝居に誘う。あれよあれよというまに話が進み、当惑するゆり子の前に不倫の恋人敦が現れる。敦を追ってその妻の梨花までが島にやってきた。
沖縄の小さな島での人間と精霊の交流というファンタジックなお話と、リゾート開発にからんだ政略結婚や不倫など、人間界の騒動を描いた作品です。東京生まれの柴本幸は、島を出ていたという設定なので違和感はなく、中江監督作品に欠かせない沖縄のスターたちも総出演。キジムンの王タンメー役には平良とみ。『ホテル・ハイビスカス』の元気な女の子蔵下穂波が、三千人ものオーディションから選ばれ、マジルーを魅力たっぷりに演じています。すっかり大きくなって見違えました。
手づかみで魚を捕るシーン、さんかく山の上でゆり子とマジルーが語るシーンなど、自然を生かした見どころもたくさん。劇中劇「大琉球王国由来記」も平良夫妻の協力を得て本格的な沖縄芝居になりました。今回も沖縄方言は字幕つきです。(白)
2008年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/DTSステレオ
配給:オフィス・シロウズ
宣伝:グアパ・グアポ
©2009「真夏の夜の夢」パートナーズ
特別記事『真夏の夜の夢』琉球ナイトレポート もご覧下さい。
★7月25日(土)よりシネカノン有楽町二丁目・シネマート新宿ほかにて万々歳ロードショー!公式 HP >> http://www.natsu-yume.com/
監督:レオン・イチャソ
出演:マーク・アンソニー(エクトル・ラボー)、ジェニファー・ロペス(プチ)、ジョン・オルティス(ウイリー・コロン)、イスマエル・ミランダ(父)ほか
2002年、古びたスタジオでインタビューを受ける女性。ブロンクスなまりのある彼女はエクトル・ラボーの妻でありプロデューサーでもあったプチ。「エクトルはスターになるために生まれてきた…」と語り始める。
1963年、プエルトリコからニューヨークへ歌手を夢見てやってきた青年エクトルはまだ17歳だった。ラティーナの集まるナイトクラブのステージに立つようになった彼は、ジョニー・ラチェコの目に止まり、ついにファーストアルバムを出す。
エクトル・ラボーのことを全く知らずに見ました。プエルトリカンの中では知らない人がないというほど、有名なスターで、その歌声は彼の辿った波乱の人生とともにいつまでも記憶にある人なのだそうです。「エル・カンタンテ」は「歌手の中の歌手」というような意味で、エクトル自身のことを歌った彼の代表曲です。
マーク・アンソニーとジェニファー・ロペスも歌手ばかりでなく俳優としても活躍していて、夫婦でもあります。ジェニファー・ロペスが映画化を熱望して製作にあたっていますが、子犬系のマークと並ぶとなかなかの迫力です。実際の彼女もこうかも、と思ってしまいそう。(白)
2006年/アメリカ/カラー/114分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/R-15
配給:アートポート
監督・撮影:川本昭人
編集:川本昭人、小野瀬幸喜
ナレーター:岩崎 徹、谷信子、川本昭人
©2009『妻の貌』上映委員会. All Rights Reserved.
- 家族を撮ること、それが私の愛情表現です -
広島在住の川本昭人監督は長男誕生を機に手にした8ミリフィルムカメラがきっかけで、半世紀にわたって家族を撮り続けてきた。学徒動員で知り合ったキヨ子夫人は原爆症を宣告され、甲状腺がんの手術をしている。監督はキヨ子さんの日常を中心に、家族の歩みをフィルムに焼きつけてきた。キヨ子さんは自分の病気と向き合いながら、子育てをし、川本監督の母の介護を10数年続けてきた。
初めは個人の記録として撮られたものですが、戦後の一家族の歴史を観ました。今も日常に影を落としている戦争への怒りや悲しみも内に包みこみます。半世紀分のフィルム、かつて短編作品として発表したものも含めて編集したものですが、子どもたちが成長していき、奥様のキヨ子さん、寝たきりのお母様がだんだんと年を重ねていくようすが目の前にあります。膨大な記録のうちの一部分しかここには出ていないのでしょうが、親しい友人から今までの話を聞いているようで、見終わった後キヨ子さんが身近に感じられました。孫の姿に目を細めるキヨ子さんと同じく、小さい人たちの未来へ希望をつなぎたいと思いました。作中朗読される「慟哭」(大平数子)の詩も心に刺さりました。(白)
原爆で亡くなった当時新婚だった弟さんのお嫁さんからの手紙を読むキヨ子さん。そのお嫁さんもどんな人生を歩まれたのでしょう。被爆した大勢の方が、キヨ子さんと同様、家族を亡くしたり、病気に苦しみながらも静かに人生を歩んできたことを思い、戦争責任は誰も取ってくれないことをあらためて感じました。非難の声もあげずに、前向きに生きるキヨ子さんの姿を、戦争を起こす世の権力者にしっかりと見て欲しいと切に思いました。核廃絶や戦争反対を声高に語った映画ではないのに、ずっしりと反戦の思いを感じさせてくれる作品です。(咲)
2009年/日本/カラー/114分/
配給:『妻の貌』上映委員会
配給協力:KAWASAKIアーツ、東風.
川崎市アートセンターでは、川本監督の旧作上映予定あり
公式 HP >> http://www.tumanokao.com/
特別記事 『妻の貌(かお)』川本昭人監督インタビュー もご覧下さい。
監督・脚本:ヘルマ・サンダース=ブラームス
撮影:ユルゲン・ユルゲス(BVK)
アートディレクター:イシュトヴァーン・ガランボス
衣装:リッカルダ・メルテン=アイヒャー
編集:イザベル・デヴィング
音声:ヤーノシュ・ロージャ
プロジューサー:アルフレート・ヒュルマー
演奏:ダヌビア交響楽団
指揮:イシュトヴァーン・デネシュ
出演:マルティナ・ゲデック(クララ・シューマン)、パスカル・グレゴリー(ロベルト・シューマン)、マリック・ジディ(ヨハネス・ブラームス)、クララ・アイヒンガー(娘マリー)、アリーネ・アネシー(娘エリーゼ)、マリーネ・アネシー(娘オイゲニー)、サーシャ・カパロス(息子ルードヴィヒ)
ドイツ・ロマン派の音楽界に咲いた名花クララ・シューマン。
彼女は夫シューマンとブラームスの二人から愛された才気あふれる美貌の音楽家だった。この作品は、クララとシューマン夫婦の家庭に、若きブラームスが登場し、奇妙な三人の同居生活を軸に、枯渇する才能の不安、苛立ち、経済的悩み、薬物依存の恐怖、若き才能への嫉妬等を、赤裸々に描いた愛の協奏曲・・・。
映画はどうしても題名から受ける印象が強い。
この作品も、私は勝手にイメージをふくらませていた。
ひと口に言えば音楽に対して激しく、過剰さが目に付いた。
観るものに音楽の感動を、いち早く味わってもらいたい! それが全面に出て、味わう音楽が上すべりしていると感じた。
しかし、この作品の中で強烈、かつ重大な歴史(それも女性史にとって)が描かれていた。これは見逃せない。
映画監督世界は男性優位の見本のように言われているが、作曲・指揮の世界も、まだまだ女性の活躍する場が少ない職業だ。
40数年前、私の友人が東京の音大作曲・指揮科を目指し、受験前の作曲科教授のレッスンで、玄関に入ったとたん、教授から出た言葉が「なんだ、女だったのか、紹介の先生には悪いが、女はダメだ」と門前払いをくった。
クララも、シューマンの代理でオーケストラの前に立つが、シューマン大先生の奥様であろうとも、遠慮なしのブーイングの嵐だった。女に指揮される…指図されるが我慢できないのだろう。
2006年公開の『敬愛なるベートーヴェン』もそうだ。ベートーヴェンの写譜師アンナは元々作曲志望の女性だった。第九の初演の成功は、アンナが影の指揮者になり、耳の聞こえないベートーヴェンを助けていたシーンを思い出す。
クララには、シューマンに負けず劣らずの才能と持ち前の明るさがあった。彼女の立派なところは、シューマン亡き後も、クララ・シューマンとして尊厳ある(女の愛と生涯)を全うしたことだろう(美)
2008年/ドイツ・フランス・ハンガリー合作/ドルビーSRD/ビスタサイズ/109分
配給:アルバトロス・フィルム
公式 HP >> http://clara-movie.com/
監督:ウーリー・エデル
製作:ベルント・アイヒンガー
原作:シュテファン・アウスト
脚本:ベルント・アイヒンガー
撮影:ライナー・クラウスマン
出演:マルティナ・ゲデック(ウルリケ・マインホフ)、モーリッツ・ブライブトロイ(アンドレアス・バーダー)、ヨハンナ・ヴォカレク(グドルン・エンスリン)、アレクサンドラ・マリア・ララ(ペトラ・シェルム)、ブルーノ・ガンツ(ホルスト・ヘロルド)ほか
1967年6月の西ベルリン。イランのパーレビ国王訪問反対を叫ぶデモ隊と警官隊が衝突し、1人の学生が警官に射殺された。ウルリケ・マインホフは左翼系雑誌に記事を寄せるジャーナリストだったが、その事件以来反権力、反資本主義を掲げる学生運動に傾倒していく。世界中で社会運動、学生運動が急進していく中1968年、アンドレアス・バーダーとグドルン・エンスリンがベトナム戦争に抗議してデパートへ放火する。エンスリンに出会ったマインホフは、取材目的で会ったバーダーを脱走させ、共に活動家として指名手配される。メディアは彼らを「バーダー・マインホフ」グループと称したが、70年5月に正式にドイツ赤軍(RAF)を立ち上げ、武装闘争へと傾斜していく。
この作品を観てすぐ思い出すのは、若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』だろう。日本も西ドイツもほぼ同じ時代に、若者が社会に対して同じ憤りを持ち、次々と重大なテロに突き進んで行く様が目まぐるしく展開していく。ドイツ赤軍と言われる前は「バーダー・マインホフ」グループと言われていたことは、この作品を観るまで知らなかった。映画に出てくるテロでも、1972年6月にミュンヘン・オリンピック選手村で、イスラエルの選手11人がパレスチナ武装組織"黒い9月"により射殺されたこと、1977年のルフトハンザ機をハイジャックし、何日か後にパイロットが射殺されたことの記憶があるがおぼろだ。ただ、当時の西ドイツ首相がテロの要求を一切拒否したことだけが印象に残っている。
観ていて楽しい作品ではないが、いま私達の国や世界の現状を考えれば、あの時代に彼らはどうしたかったのかと振り返るには、一番良い時期だと思う。(美)
学生運動盛んなときに早々と主婦におさまっていた私は、すっかり顔つきが違って体制批判をするかつての同級生をただ見ていた。日本、ドイツの赤軍とも始まりは「世界をよりよく変えよう」だったろうに、人心が離れるほど次第に変わっていってしまう。抗議デモで射殺された学生のために立ち上がった人が、ほかの人を傷つけてしまう。理想の名の下に、線引きが変わっていく。
人が人そのものでなく、敵か味方かどうか、ただの数としてしか見なくなったら・・・? 戦う前に兵士達は徹底的にそう教え込まれる。相手の心情や家族や背景や自分と同じ人間であると思ったら、戦えない。ではなんのために戦うのか? 自分のために? 国家のために? ずっと身近にある小さないざこざや諍いはなぜ起こるのか? 考えるうちに、いや考えなくとも1日がすぎ、1年がすぎてしまう。それでも映画人がこうして蒔いてくれる種を、自分の心の中で育てたいと思う。(白)
2008/ドイツ、チェコ、フランス合作/カラー/2時間30分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:ムービーアイ
公式 HP >> http://baader-meinhof.jp/
監督:アンドレア・モライヨーリ
原作:カリン・フォッスム
原案・脚本:サンドロ・ペトラーリア、アンドレア・モライヨーリ
撮影:ラミロ・チビタ
音楽:テオ・テアルド
出演:トニー・セルヴィッロ(サンツィオ刑事)、ヴァレリア・ゴリーノ(キアラ・カナーリ)、オメロ・アントヌッティ(マリオの父)、ファブリツィオ・ジフーニ(コッラード・カナーリ)、ネッロ・マーシャ(アルフレード)ほか
©2007 INDIGO FILMS
— 真実は深く、そして美しく眠っている —
北イタリアの小さな村の湖のほとりで美しい少女・アンナの遺体が発見される。アンナは争った形跡もないことから顔見知りの犯行と推測された。この村に越してきたばかりの刑事、ジョバンニ・サンツィオはアンナの周辺の人々に聞き込みを開始する。
アンナを偏愛していた父親、アンナの姉、ボーイフレンド、アンナがベビーシッターをしていた障害児の両親… 捜査をするうちにどの家庭にも悩みがあり、ひとりひとりが誰にも打ち明けられない痛みを抱えていることがわかっていく。サンツィオにも若年性認知症のため、家族の記憶を失っていく妻があり、それを娘に伝えられずにいた。
始まりは「ツイン・ピークス」のように少女の遺体が見つかって、その犯人探しに刑事が活躍するのかと思いました。音楽の静かさ、画面の美しさなどに「あれ、ちょっと違う」と気づきます。少女の事件を追いながら、実は出会う人々のドラマを見せ、刑事自身が抱える問題も明るみに出します。サンツィオ刑事を演じるトニー・セルヴィッロはイタリアで一番忙しい俳優だとか。昨年の東京国際映画祭で上映された『ゴモラ』(カンヌ映画祭グランプリ)に主演していました。この作品で2度目のダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞主演男優賞を獲得しています。助演にも主演級の俳優たちが参加、イタリア映画好きは見逃せません。(白)
2007/イタリア/カラー/95分/シネマスコープ/イタリア語
配給・宣伝:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/lake/
監督:武正晴
脚本:金杉弘子
製作:伊藤明博 久松猛朗 佐伯寛之 久保和明 朴泰奎
プロデューサー:村田亮 谷口広樹 ホン・ミンギ
撮影監督:キム・ビョンジョン
照明:ユ・ギョンス
美術監督:チャン・スンチョプ
衣装:浜井貴子 ハ・ジン
音楽:Tatsuya
主題歌:the ARROWS「FREE AND SHIP」
出演:John Hoon(サンヒョク)、斎藤工(井坂順)、チェ・ソンミン(サンウ)、チョン・スギョン(おばさん)、キム・ウンス(ボス)、京野ことみ(編集長)、キム・ドンウク(サンジン)、チャン・ソウォン、ク・ボヌンほか
©2009「カフェ・ソウル」製作委員会
フードルポライターの井坂順は、ソウルでの取材先を探していた。たまたま街角で男性にぶつかった拍子に、相手は持っていた袋の中身をこぼしてしまう。弁償したいと後を追うと、伝統的な菓子店「牡丹堂」に入っていく。祖父の代から続くこの店を、一人で切り盛りしているサンウとわかる。寡黙でまじめなサンウの人柄と、手づくりの菓子の味に魅了され、順は取材を願い出る。代々大切に守ってきたこの店は、開発のため街のヤクザに目をつけられていた。立ち退きをせまって日参するヤクザとのいざこざから、サンウは大事な右腕を骨折してしまう。そこへ疎遠だった弟のサンヒョクが現れ、順と反発しあいながら、ともに店の再建をはかろうとするのだが。
『ボーイ・ミーツ・プサン』、『花婿は18歳』の武正晴監督がソウルロケで作り上げた作品。主人公の順が出会った牡丹堂という古い菓子店とその周りの人々とのエピソードを描いています。斎藤工が自然体。韓国語の本を見ながら単語を連発する順、その強い味方が店の裏に住んでいるというおばさん。日本人の夫と死に別れたという設定で、ややこしいところは彼女が通訳をしてくれています。
もう一人の主人公サンヒョクを演じるJohn Hoon(ジョンフン)は、歌手でもありドラマ「宮-Love in Palace-」で人気、華があって目をひきます。この出演を最後に兵役についたそうで、国民の義務とはいえこの時期とはちょっと惜しいですね。
3世代にわたる店と人々をつないだものはなんだったのか、じーんとするしめくくりでした。どの登場人物もいい味出していました。和菓子とよく似た、蒸したりこねたりの伝統的なお菓子もおいしそうです。ソウルに行ったときは食べてみたいもの。(白)
2008年/日本/カラー/94分/ビスタサイズ/ステレオ/HD/一部日本語字幕
配給:アールグレイフィルム コミュニティ・アド
公式 HP >> http://www.cafe-seoul.com/
監督:ロブ・レターマン、コンラッド・ヴァーノン
プロデューサー:リサ・スチュワート
声の出演:リース・ウィザースプーン、ヒュー・ローリー、ウィル・アーネット、セス・ローゲン、レイン・ウィルソン、スティーヴン・コルバート、キーファー・サザーランド、ポール・ラッド
声の出演(日本語吹替版): ベッキー、日村勇紀
人生で一番ハッピーなはずの結婚式当日、落下してきた隕石と接触したスーザンは、式の最中なんと15mに強大化してしまった。大混乱の中、スーザンは新種のモンスターとして政府の秘密機関に捕らえられ「ジャイノミカ」という名前までつけられる。しかもその秘密基地には長い間捕われたままのモンスターがいた。ゼラチン質で全身胃袋の"ボブ"、ゴキブリと合体したイカレタ科学者の"コックローチ博士"、 氷河から発見された半猿半魚の"ミッシング・リンク"、放射線を浴びて100mに巨大化した"ムシザウルス"。そのころアメリカに降り立ったエイリアン・ロボットと大統領の友好的な会見は決裂。軍隊も歯が立たず、モンガー将軍はモンスターたちにエイリアンと闘うことを命じる。元の生活に戻れるという条件でスーザンたちはサンフランシスコへ向かうが、ロボットはあまりにも大きく強敵だった。
『シュレック』や『マダガスカル』を製作したドリームワークスが、ヒロインが活躍するアニメーションを送り出しました。デフォルメされているのに、髪の毛や肌、髭の剃り跡までがとてもリアル。キャラクターのぷよぷよ、ぬめぬめした感じもよく出ています。技術の進歩はすごいですね。
スーザンの身長15mと言えば、奈良の大仏様の座高くらい、ビルなら4,5階の高さでしょうか。普通の女の子がそんなに大きくなったらパニックもいいところ。大きいからというだけで、エイリアンと闘うはめになってしまうスーザンは世界一不幸なヒロインかもしれませんが、ふっ切れてからの強さが半端ではありません。ボイスキャストはリース・ウィザースプーン、キーファー・サザーランドほか。なんだか容姿が似ています。(白)
2009年/ドリームワークス作品/カラー/94分/シネマスコープ/DTS SRD SDDS SR
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www.mon-eri.jp/
原作:三遊亭円朝
脚本:大西信行
演出:戌井市郎
美術:古賀宏一、中島正留
出演:片岡仁左衛門(伴蔵)、坂東玉三郎(お峰)、坂東三津五郎(円朝、船頭、馬子久蔵)、片岡愛之助(萩原新三郎)、中村七之助(お露)、中村壱太郎(お竹、お梅)、中村吉之丞(お米)、上村吉弥(お国)、坂東竹三郎(飯島平左衛門)、中村錦之助(宮野辺源次郎)
©松竹株式会社
飯島家の一人娘お露は、萩原新三郎に恋焦がれていたがこちらは旗本、あちらは一介の浪人、身分違いの恋は叶わない。ある晩お露と乳母のお米が、牡丹燈籠を持ち下駄の音を響かせながら新三郎のもとを訪れる。喜ぶ新三郎は部屋に迎え入れ、若い2人はようやく思いを遂げる。しかしお露は恋わずらいで亡くなり、お米は後を追って自害して果てていた。2人はすでにこの世のものではなかったのだ。
一方、娘お露を亡くした飯島平左衛門は、下女のお国を後添いにしていたが、お国は隣家の次男坊宮野辺源次郎と不義密通。あげく源次郎を養子にして家督を狙おうとしていた。気づいた平左衛門は成敗するつもりが2人がかりで返り討ちに遭う。「相続人も決まらぬうちに自分が死ねば、家は改易」と、浅慮な2人を笑って絶命する。平左衛門の死体を見た女中のお竹まで手にかけた今、お国と源次郎は有り金持って家を出るほかなかった。
お露との逢瀬のたびに衰えていく新三郎は、占い師の見立てにより亡霊退散の札を貼り、お守りを懐に入れるようになった。新三郎の家に入れなくなってしまったお露は悲しみ、乳母のお米が新三郎の手伝いをしている伴蔵のもとに「お札を剥がしてほしい」と頼みにくる。しっかりものの女房お峰は「百両持ってきたなら、と言ってみたら」と震える伴蔵に知恵をつける。
お馴染みの三遊亭円朝作「怪談 牡丹燈籠」、一昨年10月歌舞伎座公演の舞台映像です。脚本は1974年に文学座のために書き下ろしたもので、原作者の三遊亭円朝が高座にかける体裁をとっています。台詞もわかりやすくなって、それぞれの人間を深く描いており、げに幽霊よりも恐ろしいのは人間の業。
お露と新三郎の恋物語が始まりですが、話の中心は伴蔵とお峰夫婦。お露の父の後添いであるお国と隣家の源次郎との不義密通が加わり、欲深い人間たちの顛末まで描かれます。
仁左衛門、玉三郎が欲に目がくらんだ夫婦を演じ、軽妙なやりとりは息もぴったり。仁左衛門の伴蔵は小悪党ですが色気があり、お峰の玉三郎は亭主を支え、夜なべもいとわない女房の健気さ可愛さがあります。美しくはかない玉三郎ばかり見てきましたが、こんなにコメディセンスもある人だとは目から鱗でした。三津五郎が円朝として聞かせる「枕」にも思わず笑いました。ほかに2つの役で登場と活躍しています。特等席で観た気分になるシネマ歌舞伎の12作目。長尺ですがあっというまに時間がすぎます。(白)
2007年/日本/カラー/155分(途中休憩あり)/
製作・配給:松竹株式会社
期間:7月11日(土)〜8月7日(金)
会場:シネマート六本木
去る7月5日(日)には盛大な23回忌法要が行われ話題となった石原裕次郎。52歳の若さで亡くなったこと、あれからもう23年もたつことにあらためて驚きを感じます。今も尚、多くのファンの心をとらえて放さない、昭和のヒーロー石原裕次郎主演映画の特集上映です。
7/11(土)~17(金)
『陽のあたる坂道』(1958年/監督:田坂具隆)■『世界を賭ける恋』(1959年/監督:滝沢英輔)
7/18(土)~24(金)
『あじさいの歌』(1960年/監督:滝沢英輔)■『男と男の生きる街』(1962年/監督:舛田利雄)
7/25(土)~31(金)
『銀座の恋の物語』(1962年/監督:蔵原惟繕)■『太陽への脱出』(1963年/監督:舛田利雄)
8/1(土)~7(金)
『赤いハンカチ』(1964年/監督:舛田利雄)■『栄光への挑戦』(1966年/監督:舛田利雄)
料金:一般・大高1,200円 シニア1,000円(2本立て)
オールナイトも開催! 8/7(金) 2000円均一 「男と男の生きる街」「太陽への脱出」「赤いハンカチ」「栄光への挑戦」
公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/lineup/20090526_3716.html
期間:7月10日(金)〜20日(祝・月)
場所:埼玉県川口市「SKIPシティ」彩の国ビジュアルプラザ 映像ホール・多目的ホール他
アクセス:会期中、JR川口駅東口キャスティ前臨時バス停より、SKIPシティまで直行の無料シャトルバスが20分間隔で運行されます。(所要:約12分)
2004年に始まったSKIPシティ国際Dシネマ映画祭も今年で6回目。フィルムを使用せず、デジタルで撮影・制作された作品のみにフォーカスし、全作品を、4Kデジタルシネマプロジェクターという最高クラスの上映環境で味わうことができます。メインは、国内外のデジタルで撮影・制作されたデジタルシネマ作品の長編・短編コンペティション。作品上映後の各国から訪れた作品ゲストとの交流の場も魅力です。
また、オープニングでは、黒澤明監督不朽の名作『羅生門』のデジタル復元版が上映され、Dシネマの潮流を感じることができます。そのほか、「カメラクレヨン」、「彩の国地域発信映画プロジェクト」、「D-MAP2009キックオフイベント」、「D-コンテンツマーケット」、「くりっく!「アニメど埼玉」スペシャル」など、盛りだくさんのプログラムが開催され、家族連れでも一日楽しめる映画祭です。
*ノミネート(海外)作品(12作品)
『それぞれの場所で』 2009年/セルビア、ドイツ、アメリカ
『バレンティーナの母』 2008年/イスラエル
『アダムの壁』 2008年/カナダ
『めざめ』 2008年/スペイン、ポーランド
『愛を求めて』 2008年/デンマーク
『神の耳』 2008年/アメリカ
『エル・システマ 〜音楽の喜び〜』 2009年/ドイツ
『あなたなしでは生きていけない』 2009年/台湾
『鷹匠の息子』 2009年/スウェーデン、ドイツ
『ジョニー・マッド・ドッグ』 2008年/フランス、ベルギー
『少女マサンヘレス』 2008年/ベルギー、チリ、キューバ、スイス、ウルグアイ
『ノラの遺言』 2008年/メキシコ
*ノミネート(国内)作品(3作品)
『Lost Paradise in Tokyo』 2009年/日本
『求愛』 2008年/日本
『カケラ』 2008年/日本
監督:アンディ・フィックマン
脚本:マット・ロペス、 マーク・ボンバック
撮影:グレッグ・ガーディナー
音楽:トレヴァー・ラヴィン
キャスト:ドウェイン・ジョンソン(ジャック・ブルーノ)、アナソフィア・ロブ(サラ)、アレクサンダー・ルドウィク(セス)、カーラ・グギーノ(アレックス・フリードマン博士)、キアラン・ハインズ(ヘンリー・パーク)
©2008 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.
タクシー運転手のジャックは、不思議な兄妹セスとサラを乗せた後、得体の知れない車に付け狙われる。セスとサラは重大な任務を帯びて、ほかの惑星からやってきたのだ。合衆国政府の特殊機関が総力をあげて「捕獲」しようと追いかけてきた。半信半疑のジャックだったが、彼らの特殊な能力を目の当たりに見て、ようやくことの重大さを知る。もとレーサーだったジャックは卓越したテクニックで追跡をかわしながら、目的地まで送り届けようとする。
ミステリーサークルや、未確認飛行物体など宇宙にまつわる謎は、政府による情報操作が行われ、一般人には知ることのできない地域に巧妙に隠されています。…という設定の物語。実際あるかもしれませんね。これは難しく考えずに楽しめるファンタジー・アドベンチャー。異星人の2人とまきこまれた運転手とのやりとりや、フリードマン博士に披露するシーンなどが面白く、2人の特殊能力を使ってのアクションがもっとあっても良かったです。
原作は1975年に映画化され、『星の国から来た仲間』という邦題で公開されています(1978年の続編は未公開)。当時主人公だった子役が、この作品では2人を助ける役回りで登場しています。(白)
2009年/アメリカ/カラー/98分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
アメリカのワシントン州で世界で初めてUFOが発見された日を記念して制定された<UFOの日>(6/24)にちなみ、「こりん星」のプリンセス“ゆうこりん”こと小倉優子さんをゲストに迎えた舞台挨拶つき特別試写会が行われました。
これまで謎に包まれていた“こりん星のミステリー”を解明するため<こりん星ミステリークイズ>を実施し、観客400人から勝ち残った5名には、本日限定プレミアもの“こりん星の住民票”が、ゆうこりんから直々に贈呈されました。住民票には「こりん星」の住所(こりん星港区ウィッチマウンテン町-エリア51)が記され、ゆうこりん直筆で登録者の名前が明記されています。ゆうこりん曰く「これでいつでもこりん星に行くことができます。大事に取っていてくださいね」 う〜ん、宇宙船で迎えに来てくれるのかしら?
[提供:フラッグ]
公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/w-mt/
演出:鈴木裕美
脚本:大石静
作曲:三木たかし
映像監督:長嶋永知・青山賢治
キャスト:紫吹淳/湖月わたる(リュータン)、彩輝なお/貴城けい(タッチー)、星奈優里/大鳥れい(トモ)、紫城るい/映美くらら(ベニ)、石井一孝(影山航)、本間憲一(速水悠介)、佐藤アツヒロ(オサム)ほか
*本作品はWキャストのため2パターンでの上映を予定しています。
昭和14年、宝塚歌劇で人気を集めていたのは雪組トップスター、リュータンこと嶺野白雪だった。彼女率いる雪組に、トップスターを目指すトモ、リュータンに憧れるベニ、衣食住の足りた生活に惹かれて入団したタッチーが入ってくる。舞台人として研鑽する傍ら、それぞれに将来や恋愛についての悩みを抱え、支え励まし合って日々を送るタカラジェンヌ(=宝塚歌劇団員)たち。しかし、やがて"乙女の園"にも戦争の影が迫り、宝塚大劇場は封鎖、舞台を失った団員たちは戦地の慰問に回る日々を過ごすことになる。
2008年冬、新宿コマ劇場のラストを飾ったミュージカルを完全収録。2幕仕立ての舞台映像は劇場でナマの舞台を見ているかのような迫力ですが、固定された客席では見られないアングルやキャストの細かい表情など、映像ならではの魅力にも溢れたミュージカル映画となっています。
戦時中の宝塚歌劇という一般には馴染みの薄いテーマを、実際に宝塚歌劇団に所属していた元"タカラジェンヌ"たちが演じるということで、宝塚ファン以外には敷居の高い作品かと思いきやさにあらず。時代の波に翻弄されながら懸命に生きていこうとする女性たちの等身大の姿には、時代や立場を超えて誰もが心を動かされるのではないでしょうか。そもそもはフジテレビで2002年に放送されたスペシャルドラマを舞台化したこの作品ですが、舞台こそ命というタカラジェンヌたちの熱い思いがいっそうリアルに息づくのは、やはりテレビよりも舞台。ミュージカル作品としても専門誌で高い評価を得たステージだけに、耳馴染みの良い三木たかしの楽曲、華やかなタカラジェンヌたちを支える実力派の男優陣など、見所も多くあります。
特筆すべきは、物語に込められたメッセージをストレートな情熱で表現しきった、元トップスターを含む元・タカラジェンヌのキャストたち。作中のタカラジェンヌたちがどんな境遇にあっても夢に見続ける、宝塚の舞台――そこに実際に立っていた彼女たちだからこそ、特殊な場所での特殊な物語となってしまいそうなこの作品を、広く共感を呼ぶものに仕上げることができたのだと思います。Wキャストの醍醐味は宝塚ファンにしか意味をなさないものかもしれませんが、劇場に入るよりはずっと気楽に見られる映像作品として、宝塚歌劇というジャンルに距離を感じている宝塚ファン以外の方々にこそオススメしたい作品です。(慶)
2009年/日本/カラー/≪紫吹・彩輝版≫169分(第一幕:82分/第二幕:87分) ≪湖月・貴城版≫166分(第一幕:81分/第二幕:85分)/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ソニー株式会社
公式 HP >> http://livespire.jp/ai-takarazuka
監督:坪田義史
脚本:福田真作、坪田義史
撮影監督:山崎大輔
照明:高橋拓
美術:田中浩二、尾崎雅朗
音楽:SPARTA LOCALS、垣松正敏、他
出演:水橋研二(阿部慎一)、町田マリー(阿部美代子/慎一の妻)、本田章一(川本賢治/阿部の同郷の友人)、松浦裕也(池田搦/阿部の同郷の友人)、あんじ(真知子/美代子の友人)、佐野史郎(松田/編集者)
70年代初め。漫画家・阿部慎一は、恋人美代子と阿佐ヶ谷で、同棲生活を送っていた。自らの生活体験を元に創作する慎一は、美代子の気持ちの変化を探るかのように、美代子の友人・真知子と関係を持つ。そして目撃させる。 慎一は自らの行為の意味を成立させる為に、自分の目前で、無理矢理美代子を、ひそかに美代子に想いを寄せていた同郷の友人川本に抱かせる…。 次第に私生活と作品世界の境界を見失い、創作に行き詰まる慎一は、故郷の福岡・田川に戻り、美代子と結婚する。
つげ義春、永島慎二が開いた私漫画を引き継いだ作家、阿部慎一。彼は「私がひそかに私の漫画について自負する点は、この、美代子に対する愛の従属性である。私は彼女を書きたいためにストーリーを作った」と語っている。
この作品のすべてが真実なら、ひどく辛い。目を背けたくなる。しかし、その反面、2人の仲には、他の者が入り込めない濃密な絆があり、ストイックな純愛を感じた。阿部の描く美代子と演者・町田マリーが、見事に画面の中でぴったりと重なり合う。この町田マリー、いや、美代子が醸し出す雰囲気こそ、阿佐ヶ谷気分なのだ。
その気分が一番濃厚な場面がとても気に入った。美代子が「彼のいない時、みんな面倒…」と、けだるそうにトーストを焼き、バターをつけ、林檎を皮も剥かず、薄く切ってトーストに無造作にのせて食べるシーン…。食べるシーンで、生唾ゴックンは初めて! 早速、帰ってからやりましたよ! 林檎の美味しい季節ではない今でも、美味しかった! 本当に! 是非、"阿佐ヶ谷気分トースト"を男に熱愛されてる気分で召し上がって!(美)
2008年/日本/カラー/86分/ビスタサイズ/R-15
配給:ワイズ出版
配給協力・宣伝:アルゴピクチャーズ
公式 HP >> http://www.miyoko-asagaya.com/
監督:岩本仁志
原作:手塚治虫
出演:玉木 宏、山田孝之、石田ゆり子、石橋 凌、山本裕典、山下リオ、風間トオル、鶴見辰吾、中村育二、半海一晃、品川 徹、林泰文
16年前、沖之真船島で一夜にして島民全員が死亡する事件が起こった。この惨事は政府によって闇に葬りさられるが、この悪夢を奇跡的に生き延びた2人の少年がいた。成長しエリート銀行員となった結城美智雄(玉木宏)は、惨劇の復讐に燃えている。一方、もう1人の生き残りの賀来裕太郎(山田孝之)は神父となり、殺人鬼と化した結城を救おうと憂いていた。度重なる殺人事件の被害者が沖之真船島出身者であることを突き止めた新聞記者の牧野京子(石田ゆり子)は、事件の鍵となる「MW」の存在を知る・・・
「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」を始め、数々の作品を遺した日本を代表する漫画界の巨匠、手塚治虫。生誕80周年を機に、これまで実写化不可能と言われていた「MW」を映画化。これはありえない!という場面続出ですが、「都合の悪いことは民に知らせない」というのは、いつの時代も、どこの政府も同じだということは、ずっしり伝わってきました。玉木宏の怪演ぶりもそれなりに楽しめました。(咲)
2009年/日本/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル/129分
製作:「MW」製作委員会
制作プロダクション:STUDIO SWAN IMJ-E
VFXプロダクション:白組
企画:アミューズソフトエンタテインメント
配給:ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ
公式 HP >> http://mw.gyao.jp/
監督・脚本・原作:西川美和
原案小説:「きのうの神さま」西川美和(ポプラ社刊)
撮影:柳島克己
美術:三ツ松けいこ
編集:宮島竜治
音楽:モアリズム
出演:笑福亭鶴瓶(伊野治)、瑛太(相馬啓介)、余貴美子(大竹朱美)、香川照之(斎門正芳)、松重豊(波多野巡査部長)、岩松了(岡安警部補)、井川遥(鳥飼りつ子)、八千草薫(鳥飼かづ子)、笹野高史(曽根)ほか
©2009『Dear Doctor』製作委員会
山間の小さな村。診療所の医師伊野治(笑福亭鶴瓶)がバイクを駆って出たまま戻らない。無医村だったこの地で3年半勤めてきた伊野を、村人たちは神仏よりも頼りにしていた。みなに慕われ、献身的に仕事をしてきた彼はなぜ失踪してしまったのか。研修医の相馬は伊野の姿に感動して、研修終了後も僻地医療に携わろうと思っていたところだった。脱ぎ捨ててあった白衣を見つけて落胆する。捜査に来た波多野巡査部長(松重豊)は、伊野の以前の勤め先を調べるが、不審な点ばかりが浮かび上がってくる。
『ゆれる』で国内の各映画賞を総なめにした西川監督の三年ぶりの長編作品。人をぐるりと剥いて内側を見せたような前作は、すごい!と思うと同時に、自分が赤裸になったようにひりひりと痛かったものです。この作品はツボをついて、後からじんわりきいてくる感覚がします。
山と棚田に囲まれ、半分以上が老人という過疎の村の医療を丹念にリサーチして、納得のいくストーリー運び。思わず感情移入してしまうキャラクターと、そのキャスティングにも感心しきり。主演の笑福亭鶴瓶師匠の持ち味で作品全体が暖かくなり、どこか哀しさも漂います。西川監督、存在感ある出演者のみなさまに拍手。第33回モントリオール世界映画祭(8月27日〜9月7日)のコンペティション部門に出品決定。(白)
2008/日本/カラー/127分/1:1,85/ドルビーSRD
配給:エンジンフィルム+アスミック・エース
公式 HP >> http://deardoctor.jp/
監督:トム・マッカーシー
出演:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス、ハーズ・スレイマン、ダナイ・グリラ
大学教授のウォルター・ヴェイルはピアニストだった愛妻を亡くして5年、無気力な毎日を過ごしている。ニューヨークでの学会に出席するように命じられるが、名前を貸しただけの共同研究の発表は憂鬱の種でしかない。久しぶりにニューヨークの別宅に行くと、そこには、シリア人の青年タリクと、その恋人でセネガル人のゼイナブの二人が友人から又貸しされたとして住み着いていた。一度は二人を追い出したウォルターだが、行き場が見つかるまでと二人を住まわせる。次第にウォルターは、タリクの敲くジャンベ(アフリカンドラム)に興味を持ち、公園で一緒に敲く楽しみも覚えるようになる。そんなある日、二人で地下鉄に乗ろうとしたところをタリクが不法移民として捕まってしまう。弁護士を雇い、入国管理局に掛け合うウォルター。一方、タリクの母モーナが、毎日電話をよこしていた息子から5日も電話がないと、シカゴから訪ねてくる。モーナは、新聞記者だった夫が政治犯として投獄されたあげくに亡くなり、国に絶望して息子のタレクを連れてアメリカに渡ってきたのだった。タレクを助けるために奔走するうちに、ウォルターとモーナは次第に心を寄せ合うようになる・・・
9.11以降、イスラーム系移民への対応が一変したアメリカ社会で、登場人物が心を通じ合わせる物語というだけではない、人生をどう過ごすかを考えさせてくれる作品でした。『シリアの花嫁』で花嫁の姉を演じたヒアム・アッバスが、息子を思う気丈な母モーナを静かな存在感で演じていて好感が持てました。女としての一面をさりげなく出したり、アラビア語で話しかける失礼なエジプト人の男に毅然とした態度を示したり、とにかく素敵なのです。こういっては申し訳ないけれど、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたリチャード・ジェンキンスより、ずっと印象に残りました。(咲)
半年ほど前、シドニー在住の娘から「お母さん、訪問者っていう映画知ってる?すっごくよかったから是非観てね。アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされてるから、日本でもきっと公開するよ」と、日頃、私が薦める映画に冷淡な娘が、興奮ぎみにメールしてきたのが、 この『扉をたたく人』だった。
主演のリチャード・ジェンキンスは、どの映画に出てた? とすぐにはわからなかったが、確かによく観てる顔だ。名脇役として40年間で、初めてこの作品で主演したのだそうだが、やることすべて面倒くさく、つまらない顔つき、何にも反応しない無気力な表情・・・。これほど退屈顔が板に付いた俳優さんって他に知らない。
始めは、あ〜陰気臭い顔、と先が思いやられたし、設定も、ニューヨークのマンハッタンにアパートメントがあるのに、ほったらかしにしているという余裕のかまし方も気に入らん…と、なかなか手厳しい私。
しかし、この男が、妙な縁で知り合った若者に、優しさを小出しにするに従い、表情に微かながら動きが出て来る。主人公のウォルターはこの作品中、破顔して笑う場面はなかったが、彼は、彼と向かい合う俳優から、しなやかさや柔らかさを引き出し,際立たせる力があると感じた。これってすごいことじゃない?
ウォルターの退屈な人生の扉をノックした登場人物の魅力、親子・恋人の結びつき、ジャンベの響き、政治の矛盾、それら全部ミックスされた上品な香り高い作品だ。(美)
2007年/アメリカ映画/1時間44分/35mm/1:1.85/カラー/ドルビーデジタル
提供:東宝、ロングライド
配給:ロングライド
宣伝:ムヴィオラ
公式 HP >> http://www.tobira-movie.jp/
監督・脚本:三宅隆太
原案・監修:清水崇
出演:南明奈、鈴木裕樹、みひろ、中村愛美、宮川一朗太、ムロツヨシほか
©2009東映ビデオ・CELL
司法試験に落ちた息子が家族5人を次々と殺害し、首吊り自殺をした。その足元には彼が死ぬ直前の「行きます…すぐに行きます」という彼の声と少女の声が録音されたテープが残されていた。当時小学生だったあかねは、その被害者となった未来と親友だった。高校生となった今、その未来が赤い帽子にランドセル姿で、あかねの前に姿を現す。
監督・脚本:安里麻里
原案・監修:清水崇
出演:加護亜依、瀬戸康史、中村ゆり、高樹マリア、勝村政信ほか
看護士の裕子は、芙紀絵という少女の担当になってから、奇妙なできごとに遭うようになり、裕子の隣人の学生は壁越しの声や音に悩まされる。芙紀絵の母は霊力の強い妹に助けを請い、病院を訪れた彼女は芙紀絵の除霊を試みるが…。
ホラーは苦手な上、日本の作品は身近な分だけぞわぞわっとくるほど怖いので今まで観にいきませんでした。10年前のオリジナル版はビデオジャケットを観るだけでも怖かったですね。今回は年もとったことだし(?)と、観るつもりになりました。あぶなくなると目を細くし、かなり覚悟してのぞんだおかげか、3度鳥肌が立っただけですみました。ホラー好きな方はしっかり目を開けてご覧下さい。同名の書籍は6月25日、Wiiのゲーム「恐怖体感 呪怨」は7月30日発売です。(白)
2008/日本/カラー/各60分、2本で120分/R-15/
配給:東映
公式 HP >> http://www.juon2009.jp/
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:スカーレット・ヨハンソン、ペネロペ・クルス、バビエル・バルデム、レベッカ・ホール ほか
©2008 Gravier Productions, Inc. and MediaProduccion, S.L.
ヴィッキーとクリスティーナは親友同士だが性格は正反対。ヴィッキーは慎重で、堅実な人生を夢見てサラリーマンの恋人と婚約中。一方のクリスティーナはユニークな生き方に憧れ、いつも刺激的な恋を求めている。バカンスを過ごしにきたバルセロナで、2人はフアン・アントニオという画家の男と出会い、不躾なまでにストレートな誘いをうける。クリスティーナは瞬時に恋に落ち、ヴィッキーは初めは失礼な男と怒りながらも次第に惹かれていってしまう。ヴィッキーの戸惑いに気づかずクリスティーナは彼と付き合い始めるが、そんな2人の前にアントニオの元妻マリア・エレーナが現れる。
女性の観客はカタログ的に個性豊かな3人の女性の内、自分はどのタイプだろうと考えながら観るのではないでしょうか。(わたしは絶対ヴィッキーだ。)1人の男を巡って個性豊かな3人の女が入り乱れるのですが、全く泥仕合にならない展開に驚きました。バビエル・バルデム演ずるアントニオは、それぞれの女性たちの個性を愛する気持ちになんの躊躇も持たない男。まさに花を愛でて飛び回る蝶のよう。ここまで自然体でやられたら、自分もヴィッキーのように価値観崩壊しかねないなと思わせられました。このアントニオをしても手を焼く元妻マリア・エレーナを演じるのがペネロペ・クルス。その貫禄、吸引力、凄まじいものがあります。この女性の前ではスカーレット・ヨハンソンもレベッカ・ホールもネンネにしか見えません。
ウディ・アレン監督は最近作品の若々しさが増しているように思います。(梅)
第81回アカデミー賞助演女優賞受賞(ペネロペ・クルス)
第66回ゴールデン・グローブ賞作品賞受賞
2008年/アメリカ、スペイン/カラー/96分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://sore-koi.asmik-ace.co.jp/
監督:ジョン・ギャラガー
脚本:パトリック・メルトン&マーカス・ダンスタン
出演:ジョニー・ウェイド、クルー・ギャラガー、ダイアン・ゴールドナーほか
砂漠のバーでの死闘から一夜明けた。生き残ったのはわずか数人。動ける者は車で安全な場所を探しに出発したが、謎のモンスターたちもまた新たな餌食を求めて町へ移動していた。バーにやって来たバイカー・クイーンは、人間の手首を犬がくわえているのを見つけ、愕然とする。揃いの刺青を彫った血だらけの手首は、姉ハーレー・ママのものに間違いない。生き残っていたバーテンは昨夜の凄惨な事件を説明するが、バイカー・クイーンは怪物の存在など信じない。復讐を誓って仲間と町へ向かう。町はさらに増殖した怪物によってゴーストタウンと化していた。
前作『フィースト』の続編&完結編。ホラーやスプラッターは苦手なのですが、このフィーストシリーズは人が死んでいくというのに不謹慎にも笑ってしまいます。今回も掟破りのシーン連発で、意味なく裸や汚物が登場し、動物も赤ん坊もお年寄りも容赦なし。え!こんなことをしていいの? とレーティングを確かめましたが、何も書かれていません。これはきっとお化け屋敷のようにわいわい騒いで観る映画なのでしょう。
バーテン役のクルー・ギャラガーは多くの映画に出演しているベテラン俳優で、ジョン・ギャラガー監督の実父。10年近く俳優業から離れていたのですが、息子の初監督作だった『フィースト』から復帰したのだとか。ハーレー・ママを演じていたダイアン・ゴールドナーは、1で人間爆弾となって死亡。2、3で双子の妹として復活、復讐に燃えるバイカー・クイーンを熱演しています。(白)
2008/アメリカ/カラー/II97分、III 80分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/
提供:AMGエンタテインメント
配給:トルネード・フィルム
宣伝:エイスワンダー
公式 HP >> http://www.feast2-3.com
監督・編集:四ノ宮浩
製作プロデューサー:森崎偏陸、長島洋
配給プロデューサー:金子学
— ぼくは、ここで生きている。—
マニラ近郊の巨大なゴミ捨て場“スモーキーマウンテン”には、40年以上に渡り、ゴミを拾って生活費を稼ぐ2万人以上の人々がいた。しかし海外にこの事実が紹介され、貧困の象徴として見られたことから、政府は1995年10月に突如閉鎖してしまった。徒歩10分の場所に新しくアロマ仮設住宅が建てられたが、生活の糧を失った住民の大半は、また新たなゴミ捨て場でゴミを拾う生活を続けている。
バスーラとはタガログ語で「ゴミ」の意味。四ノ宮監督は、スモーキーマウンテンで暮らしゴミ拾いをして働いている子供たちを6年の歳月をかけて撮影し、1995年に第1作『忘れられた子供たち スカベンジャー』として発表しました。その後第2作『神の子たち』を送り出し、この最新作はスタートに立ち戻って、20年前に撮影で出会った人々のその後を追っています。若くして結婚したクリスティーナとジェイアール夫婦には5人めの子供が生まれましたが、血液の伝染病にかかっています。母親を助けてゴミ拾いをしていたエモンは、留置所で死亡。ゴミ捨て場では今日も子供たちが学校に行かずに働いています。たくさんの問題を抱えながらも力強く生きている彼らに、私たちができることはなにか考えてみませんか。(白)
2009/日本/カラー/106分/HDCam
製作・配給:オフィスフォープロダクション
共同製作:映画5000人製作委員会
共同配給:浦安ドキュメンタリーオフィス
宣伝:スリーピン
★6月27日(土)より、東京都写真美術館ホールにてロードショー
公開記念プレミアイベント@東京都写真美術館ホール
第1作『忘れられた子供たち』、第2作『神の子たち』の無料上映会
四ノ宮浩×ゲストトークつき『BASURA バスーラ』特別先行上映会開催!
5月26日〜5月31日(29日は休み)
スケジュールはHPでご確認ください。
公式 HP >> http://www.office4-pro.com
監督:中川陽介
プロデューサー:山田英久、山下暉人、橋本直樹
原作:宮木あや子「群青」小学館
脚本:中川陽介、板倉真琴、渋谷悠
撮影:柳田裕男
美術:花谷秀文
音楽:沢田穣治
主題歌:畠山美由紀「星が咲いたよ」
出演:長澤まさみ(仲村涼子)、佐々木蔵之介(仲村龍二)、福士誠治(比嘉大介)、良知真次(上原一也)、田中美里(仲村由紀子)、洞口依子(上原和恵)ほか
©2009「群青」製作委員会
沖縄の小さな島。東京から療養にやってきたピアニストの由紀子はウミンチュ(漁師)の龍二と恋に落ちる。やがて娘・涼子が授かるが、まもなく再発した病気のため、心を残しながら亡くなってしまう。涼子は幼馴染の一也、大介と兄妹のように育ち、それぞれの道を歩み出すときが来た。ウミンチュになって島に残る一也、島の外で勉強を続ける大介と涼子。最後の夜に一也は涼子に思いを伝える歌を歌う。同じように涼子を思いながら口に出すことができなかった大介は、一人離れていくほかなかった。一也は涼子との結婚の許しを得ようとするが、龍二は、まだ若すぎると言う。一人前であることを証明しようと、一也は沖へと船を走らせる。
沖縄を舞台にした作品を作り続けている中川監督の最新作。オール沖縄ロケで、作品の中にもゆったりした時間が流れています。20年前の龍二と由紀子の短かった恋。大きくなった涼子と幼馴染との恋とその後。映画初出演の一也役の良知真次さんは、ミュージカルで活躍中とか。劇中で島歌を披露しますが、これがうちなーぐち(方言)なので、さっぱりわかりません。ここだけは字幕で歌の意味をつけてほしかったです。
父親役の佐々木蔵之介さん、こんなに大きな娘のいる役は初めてなのでは。生真面目な龍二が、妻や娘への思いをにじませてとつとつと語る場面にほろり。(白)
2009/日本/カラー/1時間59分/シネマスコープ/DTS
配給:20世紀フォックス映画
公式 HP >> http://movies.foxjapan.com/gunjou/
監督:酒井充子
撮影:松根広隆
音楽:廣木光一
1895年から1945年までの51年間、台湾は日本の統治下にあった。その間に青春を送った台湾人は、今や80歳代の高齢となったが、学校教育のほとんどすべてを日本語でうけたため、今でも流暢に日本語が話せる人が多い。戦時中の日本帝国主義教育を受け、日本人として国のために兵隊として戦争に行った21万人もの人々。しかし、日本の敗戦で台湾には中国大陸から蒋介石率いる国民党軍がやってきて、台湾人弾圧が行われ、長きにわたって戒厳令下に置かれ、台湾語、日本語は使用を禁止された。
台湾の歴史で最も波乱に満ちた厳しい時代を生き抜いた世代の5人の台湾人へのインタビューを通して、忘れてはならない台湾と日本の歴史を浮き彫りにする。
「3つ子の魂百まで」というのは人の性格は幼いころから変わらないことをいいます。幼き頃から青春時代までを日本人として生き、今なおかつての繋がりを大切にする彼らの姿を見ていると、性格ではないけれどこの言葉が当てはまる気がします。「日本政府は我々を捨てたんだ」「戦後、我々はそれまでの敵国の国民にされた」といった言葉に、人生を翻弄された彼らの痛みを感じます。満州の開拓民といい、台湾の日本語世代といい、かの戦争で日本政府はたくさんの”国民”を捨ててきたということを、忘れてはなりません。(梅)
あいち国際女性映画祭2009招待上映決定!
2008年/ビデオ/カラー/81分
配給・宣伝:太秦株式会社
特別記事 『台湾人生』酒井充子監督インタビュー もご覧下さい。
公式 HP >> http://www.taiwan-jinsei.com/
監督: ガーボル・ロホニ
脚本:バラージュ・ロヴァンシュ
出演:エミル・ケレシュ(エミル)、テリ・フェルディ(へディ)、ユーディト・シェル(アギ)、ゾルターン・シュミエド(アンドル)ほか
©M&M Films Ltd.
ふたりならきっと明日を変えられる
滞納している家賃の催促に居留守を使うエミル。年金暮らしは厳しくて、払いたくても払えないのだ。帰宅した妻のへディは他人のフリをして我が家の前を通り過ぎる。つつましく暮らす老夫婦はついに電気も止められる。差し押さえにやってきた係員に、へディは大事にしてきたダイヤのイヤリングを渡す。これは50年も前に出会った二人の思い出の品だった。それを見ていたエミルはついにある決心をする。共産党員だったころエミルは諜報機関で運転手をしていた。退職のときに長く運転した車チャイカを払い下げてもらい、いつも磨いては大切にしていたのだ。その愛車でエミルは「強盗」に出かけて行く。
東欧の映画はあまり観る機会がなく、どんな暮らしなのかもあまり知りませんでした。ここに描かれているのは資本主義が導入されて、年金だけでは暮らしが立ち行かなくなった高齢者の姿です。80過ぎの夫は、大事な愛車と本を売ることを拒みます。もと貴族階級の妻が唯1つ持っていたイヤリングを手放すのを見て行動を起こします。妻も最初は仰天しますが、かつては階級を越えて愛し合って結婚した2人。一緒に逃避行へと。この老カップルと、2人を追う警察の若いカップルをかわるがわる見せて面白いです。老人たちが主人公の映画もなかなかない上、すかっとする働きをしてくれるので、やんやの喝采で迎えられたとか。ハンガリー語では、単なる泥棒・強盗を「ラブロー」、少しでも同情の余地のあるのは「ベチャール」と別の呼び方をするのだそうで、この二人はもちろん「ベチャール」。(白)
2007/ハンガリー/カラー/107分/ビスタサイズ/ドルビーSRD/
配給・宣伝:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/kanpai/
脚本・監督:大岡俊彦
原作:西原理恵子
出演:深澤嵐(ヨシオ)、蒼井優(いけちゃんの声)、ともさかりえ(お母さん)、萩原聖人(お父さん)、モト冬樹木(清じい)、蓮佛美沙子(みさこ/ミサエ)、柄本時生(哲)、池松壮亮、岡村隆史(あずき洗い)
©西原理恵子、角川書店、2009「いけちゃんとぼく」製作委員会
—わすれないでね。好きだと必ず帰ってこられるの。—
ヨシオのそばにはいつも“いけちゃん”がいる。ヨシオにだけ見えて話せるいけちゃんは色も形もいろいろ、かわいくて不思議ないきものだ。意地悪なヤスとたけしにいじめられたときもそばにいて見守ってくれた。
お父さんが死んで、お母さんは昼も夜も働きにでかけるようになった。ひとりぼっちの夜もいけちゃんがいれば怖くない。でも、いけちゃんは「いつまでもそばにいてあげられないから。ともだちを見つけて、早くゆっくりおとなになってね」と言うのだった。
子どものころは怖いものがたくさんありました。見えないおともだちのいた子は意外に多いのかもしれません。おとなになってしまうと、そんなことがあったのも忘れてしまうのでしょう。高知の山と海を背景にヨシオがくりひろげる日常は、どこかに沈んでしまった子ども時代を浮かび上がらせます。
フルCGで製作されたいけちゃんは、手足のないオバケみたいなシンプルな形で、丸い真っ黒な目が意外に表情豊かです。変幻自在のいけちゃんを、『鉄コン筋クリート』でシロの声を熱演した蒼井優が、いろいろなトーンで演じています。西原理恵子原作の同名絵本は“絶対泣ける本”の第1位(フジテレビ系「ザベストハウス123」)、西原さんも親戚のおばさん役で1シーンに出演、ちょっぴり毒吐いています。(白)
2009/カラー/1時間47分/ビスタサイズ/ドルビーSR/
配給:角川映画、宣伝:メゾン
公式 HP >> http://www.ikeboku.jp/
監督・脚本:佐藤祐市
原作:上村佑「守護天使」宝島社刊
脚本:橋本裕志
音楽:佐藤直紀
出演:カンニング竹山(須賀啓一)、佐々木蔵之介(村岡)、興真司郎(大和)、寺島しのぶ(須賀の鬼嫁)、忽那汐里(涼子)、波瑠(麻美)、大杉蓮(豊川)、柄本祐(ハーベスト)、日村勇紀(ブッチャー)ほか
©2009「守護天使」製作委員会
さえない中年サラリーマンの須賀は、今日も鬼嫁にお小遣い500円をもらって満員電車にゆられていた。お年寄りに席を譲った優しそうな女子高生に思わず目が釘付けになる。ふらふらと降りた駅でつまづき、本日の全財産を落としてしまったドジな須賀。500円玉を拾って差し出したのは、さっきの女子高生、涼子だった。こんなせちがらい世の中にこんなにいい子がいたなんて!須賀は、汚れた世間の魔の手から彼女を守りたい!と、勝手に固く決心するのであった。
中学時代からの腐れ縁の友人村岡は雀荘暮らしのチンピラ。「今どきの女子高生は裏で何やってんだか」と、須賀の純情を相手にしない。仕事先のひきこもりイケメン高校生、ヤマトが見つけたネットの裏サイトには涼子と思われる写真があった。
『キサラギ』の佐藤祐市監督最新作。ヒロインの涼子は美少女コンテストで審査員特別賞獲得の忽那汐里(くつなしほり)。彼女を勝手に見守る須賀は、初主演のカンニング竹山、須賀にひきずられて参加する引きこもり高校生は映画初出演の興真司郎(あたえしんじろう)、すれてるように見えながらいつのまにやら協力している村岡に佐々木蔵之介。「もう、早く警察に報せなさい〜!」と言いたくなるほどのダメダメ3人組なのですが、スーパーヒーローでない分親近感があり、思わず肩入れしてしまいます。すぐに誰だかわからなかったほど、鬼嫁を快演した寺島しのぶを始め、あちこちに配された濃いキャラが楽しい作品。 (白)
2009/日本/カラー/109分/ビスタサイズ/DTS
配給:エイベックスエンタテインメント
公式 HP >> http://www.syugotenshi.jp
『トリコロール』3部作、『デカローグ』『ふたりのベロニカ』などの傑作を遺し、その芸術活動の絶頂期に54歳という若さで急逝したポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督。ポーランドで没後10年を記念してつくられたキェシロフスキの真の姿に迫るドキュメンタリー映画『スティル・アライヴ』と、現在劇場で観ることのできるキェシロフスキ監督作品28本が一挙特集上映されます。中でも今回初公開となる初期の頃の作品5本は、ドキュメンタリーからドラマへと移行していく時期のもので、権利関係上DVD発売が出来ないこともあり、上映自体貴重なものとなっています。人間の「感情」と様々な「愛」のかたちを見つめ続けたキェシロフスキ監督の真髄を味わえる1ヶ月です。
監督: マリア・ズマシュ=コチャノヴィチ
ポーランド映画界の至宝クシシュトフ・キェシロフスキ監督。学生時代に始まるドキュメンタリー製作から、ドキュメンタリーとドラマの混在、ドラマへの移行に至るまで、20数本におよぶ作品について、キェシロフスキ自身が語る貴重な映像や、彼とゆかりのあった映画監督や女優たちの証言を交えて検証されています。皆の志向が外に向いている時に、「この国を撮るべきだ」とポーランドをテーマにし、68年の政治的に最悪な時期には、政府への書簡となりえる映画を撮ったキェシロフスキ。その後、主演にイレーヌ・ジャコブを迎えた『ふたりのベロニカ』で初めて外国資本による製作を果たし、巨匠としての世界的名声を確固たるものにする。インタビューには、イレーヌ・ジャコブやジュリエット・ビノシュも登場し、人間を見つめ真実を追究したキェシロフスキの姿が明かされています。
一方で、知人たちの語る言葉からキェシロフスキの人となりが垣間見れて興味深かった部分を一部ご紹介。
私がこの作品で一番印象に残ったのは、美男子で、一見遊び人に見えるキェシロフスキが、奥様一人を一生愛し続けたこと。人間としての魅力に溢れるキェシロフスキの作品をこの機会に是非観たいと感じさせてくれるドキュメンタリーでした。(咲)
2005年/ポーランド/82分/ベーカム
提供・配給:ワコー /グアパ・グアポ
協力:ビターズ・エンド、洋画★シネフィル・イマジカ、アテネ・フランセ文化センター
後援:駐日ポーランド共和国大使館、ポーランド政府観光局
公式 HP >> http://www.kieslowski-prism.com/
監督・脚本:古波津陽
脚本:浜頭仁史
撮影監督:辻健司
美術:磯見俊裕
出演:片岡愛之助、海老瀬はな、江守徹、阿藤快、藤田朋子、津村鷹志、ふせえり、木津誠之 ほか
過疎に悩む地方の小さな町、猿投(さなげ)は、城址公園の城を復元して観光客を呼ぼうとする人たちと、そこに工場を誘致して雇用を拡大しようと強引に計画を進める町長一派とが対立して揺れている。そんな折、役場のダメ職員・石崎祐一と宮大工の頭領・井原勘助、ホームレスのゴンの3人がひょんな事から城跡の井戸に落ちてしまう。町の人々たちは慌てて探すが井戸に3人の姿はなかった。翌朝、皆の前に現れたのは、出土した鎧甲を身にまとったあの3人。ところが石崎の顔をした武者は「恩大寺隼人将、猿投3万石の主である」と名乗り、唖然とする人々に「築城せよ!」と命を発した。井原勘助の一人娘で大学で建築学を学んでいるナツキは、勘鉄斎と名乗って恩大寺に仕えている父を複雑な気持ちで見ながら、いつしか恩大寺の情熱にほだされ築城騒ぎの中心に立っていた。
3人に取り憑いた400年前の武者たちが、生前の無念をはらすべく城を完成させようとするのですが、そんな簡単に城が建つはずもなく、思い悩んだ末に思いつくのが「段ボールで城を造る」!。「なんでそんなことしなきゃならない? そもそも段ボールで城なんて建つのか?」とやる気のなかった町の人々が、次第に皆で協力して城を作ることの楽しさに目覚め、活気をていしてくる様子に観ているこちらもワクワクしてきます。きっと撮影現場の熱気が映像を通して伝わってきたのでしょう。最近は名古屋城をはじめとする全国のお城が築城400周年を迎えることもあって、城ブームなのだとか。さらには若い女性たちの間では戦国武将ブームというのも起きているとか。段ボールでできた高さ25mの城は、本当に驚くべき迫力と美しさ。一見の価値ありです。
上方歌舞伎界のホープとして注目を集める片岡愛之助はさすがの風格で恩大寺隼人将を演じます。敵対する町長と広報部長を演じるのは江守徹とふせえり。このコンビは最高です。その他のキャストも芸達者な方々ばかり。(梅)
2009年/日本/カラー/120分/アメリカンビスタ/ドルビーSR
配給:東京テアトル
宣伝:ライスタウンカンパニー
特別記事 『築城せよ!』古波津陽監督、益田祐美子プロデューサー インタビューもご覧下さい
★6月20日(土)より、新宿ピカデリー、ミッドランドスクエアシネマほか 全国随時公開!公式 HP >> http://aitech.ac.jp/~tikujo/
監督:スティーブン・ダルドリー
原作:ベルンハルト・シュリンク「朗読者」(新潮文庫刊)
脚本:デビッド・ヘア
出演:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、アレクサンドラ・マリア・ララ、ブルーノ・ガンツ、デビッド・クロス
1995年にドイツで刊行された、法学者であり作家のベルンハルト・シュリンクのベストセラー『朗読者』が、スティーヴン・ダルドリー監督(『めぐりあう時間たち』『リトル・ダンサー』)によって映画化され、今年3月はじめに、一足早くベルリンで観ることができた。主演のケイト・ウィンスレットが、第81回アカデミー賞で主演女優賞を受賞し話題となったのは記憶に新しいが、邦題『愛を読むひと』として、6月19日から日本でも公開される。日本では「魂を揺さぶるヒューマン・ラブストーリー」と宣伝されている本作品だが、果たしてそんな通り一遍の説明で済ませて良いのだろうか。これはそんな単純な「ラブストーリー」ではなく、少年から年上の女性への、多分に一方通行の「愛」である。
物語の舞台は戦後ドイツ。15歳のミヒャエル(デヴィッド・クロス)は、学校帰りに突如気分が悪くなり、我慢できずに道端で吐いている。そこにどこからともなく現れた美しい女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)。能面のように無表情で、動きも機械のように正確である。そんな彼女に手際良く、荒々しく介抱されるミヒャエルは、どことなく恍惚とした表情を浮かべている。もうしょっぱなから、マゾな感じ全開である。
黄疸だったためしばらく自宅で療養していたミヒャエルだが、回復するとハンナの家を探し出して、花を持って御礼に行く。「ガキに用事はねぇ」というオーラを漂わせる事務的なハンナ。しかし20歳近く若い、初々しく、穢れを知らぬ少年を前にして、狩人の本能を密かにざわめかせている様子。このあたりの演技、ケイト・ウィンスレットは上手い。ストッキングを履く様子をわざと見せつけ、少年の反応を確認。うぶな少年は一目散に家へと逃げ帰る。しかし、この一件で悶々とした状態を募らせてしまった少年は、懲りずにまたハンナの家を訪れる。そこで、身体が汚れていたため、少年は風呂に入ることをすすめられるが、裸になった少年の背後で、やはりいつのまにか真っ裸になっているハンナが「このために来たんでしょ!」 と少年を抱きしめる。それでも無表情なのが、怖いハンナである。それから雪崩をうつように、ハンナから少年への度重なる「プライベート・レッスン」が始まるが、そこでハンナが少年に朗読を頼むところは、ありきたりの「青い体験」モノとは違う。
原作に、「ぼくたちは共通の世界に生きているのはなくて、彼女が自分の世界の中で与えたいと思う場所をぼくに分けてくれているだけだった」と書かれているが、ハンナにとってミヒャエルは、数多い獲物のひとつに過ぎなかったふしがある。おとなしい「草食系男子」を食う「肉食系女子」が増えてきたといわれる現代日本で、案外受ける映画かも。(香)
2008年/アメリカ・ドイツ/カラー/124分/アメリカンビスタ/SRD・SDDS・DTS/英語
配給:ショウゲート
公式 HP >> http://www.aiyomu.com/
監督:ジェームズ・マーシュ
製作:サイモン・チン
撮影:イゴール・マルティノビッチ
音楽:マイケル・ナイマン、ジョシュア・ラルフ
出演:フィリップ・プティ、ジャン=ルイ・ブロンデュー、アニー・アリックス、ジム・ムーア、マーク・ルイス、ジャン=フランソワ・ヘッケル
1974年8月7日、フィリップ・プティというフランス人の青年が当時世界一高いビルだったツインタワー/ワールドトレードセンターにワイヤーを張り、1時間ほどその上で曲芸を披露した。彼とその友人は6年半もの間この夢を実現しようとし、この厳重なビルに入り込むために8ヶ月前からニューヨークで準備していた。逮捕されたフィリップは精神鑑定を受け、刑務所に入ったが釈放され、このワールドトレードセンター展望室へのVIP許可証を贈られた。そこには「永久に有効」と書かれている。
高いところが苦手な私は、とんでもない綱渡りの写真を見ただけで絶句。このドキュメンタリーは、当時の写真や映像に、現在のフィリップ・プティ本人と計画を手伝った友人達の証言を合わせています。セキュリティの厳重なビルに入る計画を立てるところや、その実行場面は、ほとんど銀行強盗でもするかのようにスリルに満ちたものです。一歩踏み外せば死は免れないこんな危険な挑戦をなぜしたのか、誰しもそう思いますが「山があるから登る」と答えた登山家がいたように、綱渡りを愛するフィリップにはごく自然なことだったのかもしれません。それにしても無事でよかった。アメリカではこの翌日、ニクソン大統領が辞任しています。(白)
2008/イギリス/カラー/95分/35mm/
配給:エスパース・サロウ
宣伝:エレクトロ89
監督:マーク・モンロー
製作:ロイ・E・ディズニー、レスリー・デミューズ
出演:15名の若者達。オーナー、コーチそして応援の方々。
©Disney Enterprises,Inc.All rights reserved.
製作者のロイ・ディズニーはウォルト・ディズニーの甥で、ヨット愛好家。以前のトランスパックに16回出場し、2つのスピード記録を樹立した人でもあるそうです。次代のセーラーのため、自身の愛艇に乗る若者を募集しました。多くの応募者の中から15名を選抜。実際の外洋レース「トランスパック(トランス・パシフィック・ヨット・レース)2007」に出場するための過酷な訓練とレースの模様をドキュメンタリーとして残しました。レースはロサンゼルスからハワイ、オアフ島のダイヤモンドヘッドをめざす4120kmの長旅。
若者たちは18歳から23歳、男性13名、女性2名。ほとんどは大学のヨット部に所属していますが、一家をあげてのヨットマンで経験豊かなものもいます。選ばれた若者たちは大喜びしますが、互いにチームメイトでありライバルともなります。外洋レースは初めての彼らを、ハワイでベテランのコーチが厳しく指導し、実践を積み重ねていきます。ヨットに乗船できる11名を決めるのは若者達自身。苦楽をともにしてきた中から4名を補欠にするわけで、これがまた実習より辛かったりします。
外洋でのセーリングは遠目に見る優雅なヨットの姿とは違って、適切な状況判断とチームワークが必須。荒れる海に落ちる危険もある命がけのもの。全くヨットの知識のない私でも、彼らの6ヶ月間の努力と悲喜こもごものドラマに魅了されました。(白)
2008/アメリカ/カラー/97分/
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ロバート・シーゲル
主題歌:ブルース・スプリングスティーン
出演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド ほか
ランディは“ザ・ラム”と呼ばれかつて全米で大人気のプロレスラーだった。あれから20年が経ち、今はドサ周り巡業に出て何とか日々の糧をえている。長いレスラー生活で、身体はボロボロ。それでもトレーニングをし、プロテインや薬で何とか現役を続けている。リングに上がれば、人々が歓声を上げて迎えてくれる。その歓声に応えようと、いつも精一杯のパフォーマンスで魅せてきた。
その日も激しい試合を繰り広げた後、ロッカールームでランディは胸を押さえて昏倒した。心臓発作で死にかけたが、奇跡的に助かる。しかし医師には今度リングに上がったら命の保証はないと言われる。自宅のトレイラーハウスに1人戻り、これからどうやって生きていこうかと考えたとき、思い出すのは娘のステファニーのことだった。しかし、家族を全く顧みなかった彼は娘とも絶縁状態。頼る人のいない彼は、なじみのストリッパーのキャシディに相談する。彼女は娘に会いに行くことを勧めるのだった。
プロレスは嫌いだった。台本のある戦いであるというのも、流血騒ぎで観客をあおるのも、気に入らなかった。そんなわたしがこの映画を観て、感動のあまり涙が滂沱として頬を流れ、人々を楽しませるためのショウを真剣に創り上げるプロレスラーに敬意を払う気になった。ランディは愚かな男だが、観る者はみな自分の中に同じ愚かさを見いだすだろう。それゆえ、彼が悲壮な覚悟を持って負けない人生を貫こうとするとき、胸の深いところを貫かれるような感動を覚えるのではないだろうか。プロレスはちょっと・・・と思っている女性には、一層オススメしたい。
昔のミッキー・ロークしか知らなかったため、初めあまりの変貌ぶりに「これがミッキー・ローク!?」と息をのんだ。しかし息をのんだのはそれだけではない。話が進むにつれ、彼の演ずるランディの感情のひだの細かさや、哀しく神々しいプロレスシーンに圧倒された。彼のこれまでの波瀾万丈な人生を思うと、人生のすべてが無駄ではないとあらためて思わせられる。(梅)
2008年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞
ゴールデン・グローブ賞 主演男優賞、主題歌賞
英国アカデミー賞(BAFTA賞) 主演男優賞 ほか多数受賞
2008年/アメリカ・フランス/カラー/35mm/シネマスコープ/ドルビーデジタル/109分/R-15
提供・配給:日活
宣伝:P2、日活
公式 HP >> http://www.wrestler.jp/
監督:高橋巖
脚本:松本恭佳
原作:実相寺昭雄
撮影:八巻恒存
出演:さとう珠緒(猫田弘子)、宮川一朗太(猫田千吉)、伊藤克信(近藤房雄)、イジリー岡田、桐島優介、古谷暢一(池山浩太)、小川はるみ(近藤美那子)、伊藤聖子、川村亜紀、紫とも(池山葉子)、桜金造、範田紗々
©2009希望ヶ丘夫婦戦争製作委員会
— 夫婦の危機か、それとも愛か? —
平凡な新興住宅地。猫田夫妻は35年ローンでこの新築住宅を買ったばかり。一見幸せそうに見える夫婦だったが、夫の千吉は前の会社を辞め、現在の職場に移ったがやりがいを見出せない。おまけにED(勃起不全)で妻の弘子は子どもがほしいのに思うようにならない。隣家の近藤に誘われ、千吉は近所の夫達の集まる会合に出席する。弘子は近藤夫人の紹介でテニス仲間に風水を観てもらい、夫との関係改善のため、グッズを買い集める。
実相寺昭雄監督が70年代に発表した小説が原作。同名で79年ににっかつロマンポルノとして映画化されているそうです。エロチックなところは多少ありますが、現在の世相に合わせて脚色され,猫田夫妻だけでなく周りの夫婦たちの問題にも焦点を合わせています。コミカルな場面も多く、試写室でときどき笑い声があがりました。「天然」アイドルだったさとう珠緒が、あの手この手で夫にせまるシーンを演じていますが、相変わらず年齢不詳の可愛らしさで色気よりも健気さが目立ちます。(白)
2009/日本/カラー/88分/ビスタサイズ/HD/
配給:バイオタイド
公式 HP >> http://www.kibougaoka-war.com/
監督:羽田澄子(ナレーター兼)
製作:工藤充
撮影:相馬健司
中国東北地区の方正(ほうまさ)県にある「方正地区日本人公墓」。ソ連の満州進駐、日本の敗戦で満州の奥地から方正に避難してきたあげく命を落とした数千人の日本人開拓民たち。「この人たちの遺骨をお墓に」と願ったある残留婦人の思いが周恩来総理に届いて建立された公墓の存在を羽田監督が知ったのは、2002年に始まった中国「残留孤児」国家賠償請求訴訟の裁判の行方を見守っている間のことだったとのこと。旧満州・大連に生まれ、戦後3年後に日本に引き揚げてきた羽田監督だが、満州の奥地で起きていたことや、引き揚げの実態を知ったのは、戦後何年も経ってからのことだという。
この作品では、1931年の満州事変以後、当時の日本政府の国策によって、中国大陸の旧満州(現在の中国東北部)、内蒙古に入植させられた日本移民“満蒙開拓団”の辿った運命が、多くの方へのインタビューをもとに明らかにされている。
開拓地に日本から送った荷物が届いた日に敗戦を迎え、荷解きもしないままに避難した方の証言もありました。敗戦間際まで国策で開拓民が送り込まれていた理不尽。しかも、避難は軍人家族最優先。車にも乗せてもらえず、軍について歩いて避難するには、子どもを置き去りにするしかなかったと、無念の思いを語る方・・・
昨年、東京国際女性映画祭での上映後、会場でシネマジャーナルの売り子をしていたのですが、「私も満州から引き揚げてきました」と、涙ながらにご経験を語ってくださる方たちが何人もいらっしゃいました。壮絶な思いをされた方々も、同じ満州で起こった出来事を、この映画を通じて今さらながら知ることになったと言われました。
羽田監督も、この映画を完成させて肩の荷がおりた思いだと語っておられましたが、経験者が存命のうちに記録を残すことの大切さをひしひしと感じました。それにしても、「国が守ってくれないのは、薬害も沖縄も同じ」という言葉には、国家とは何の為にあるのだろうとがっかりさせられます。日本人のために公墓を作った周恩来の英断に学びたいものです。(咲)
2008年キネマ旬報文化映画ベストテン第1位
2008年日本映画ペンクラブ文化映画ベスト1
2008年東京国際女性映画祭オープニング作品
2008年/120分/カラー/スタンダード/ドキュメンタリー
製作・配給:自由工房
公式 HP >> 岩波ホールHP http://www.iwanami-hall.com/contents/next/next.html
監督・撮影・編集・製作:想田和弘
出演:「こらーる岡山」のみなさん、他
『選挙』に次ぐ想田和弘監督の観察映画第二弾は、心の病に苦しむ人々と、その人たちをサポートする人々に焦点を当てた『精神』。
岡山市にある外来の精神科診療所「こらーる岡山」。働きすぎて追い詰められたサラリーマン、「足が太い」と言われて以来、拒食症の女性、老いのことばかり考えるとしんどいと語る人・・・ 診療所を訪れる人の症状は様々だ。自殺未遂を繰り返す人もいれば、病気と向き合い、趣味の世界を極めている人もいる。ひょうひょうとした表情で患者の言葉に耳を傾ける山本昌知医師。ちょっとトホホな感じもする老医師が、この診療所に込めた思いをカメラは様々な角度から捉えていく。
「こらーる(合唱)」というネーミングには、「病める人の声に、それを支援する人が声を合わせることによって、合唱が生まれる」という意味が込められているのだそうです。精神病院というと、“精神異常者を閉じ込めておく場所”というイメージをつい抱いてしまいますが、「こらーる岡山」は実にオープン。精神障害者が、地域社会で暮らしていくことを支援するために、牛乳配達や食事サービスの作業所も併設しているのです。待合室や作業所で語り合う人たちを見ていると、患者とスタッフの区別がつきません。思えば心の病に冒されている人と健常者との境目は紙一重。垣根を作らず、正気の世界に引き戻す環境を作ることこそが、心の病には必要なのだとつくづく思いました。
実は、シネジャのHPを管理しているYさんは岡山在住。「こらーる岡山」のこともよくご存知なのですが、岡山で試写を観たYさんから、「映画の最後に出演されたうちの3名の方が亡くなられたことを知らされて頭が真っ白になった」と報告いただいていました。観ている間、どの方が・・・と、理想的とも思える診療所でも救えなかったことに胸がしめつけられるようでした。自殺者が増え続けている日本。そも、社会全体が狂気に包まれているのではないかとも思います。「全身健常者は一人もいない。欠陥のない人間などいない」という言葉が心に残りました。人と人とが思いやりながら暮らしていくことの大切さを、今さらながら感じます。(咲)
始まりから私ごとですみません。
日頃、在来線で長く電車に乗ります。するとたまに、いやたまよりもっと頻繁に、不思議な人に巡り会います。爪を噛んでいるサラリーマン、袋の中の菓子を吸い込むほどの速さで食べる痩せた女性、少しでも他人と体が触れ合うと身を強張らせて恐い顔する若者、手や腕の毛を一生懸命抜いている人、ずーっと鼻をほじくっている男・・・。
この頃は驚きも薄くなり、いつもの電車風景になりつつあります。その方たちは会社に行ったり、外に出て用事をしているのだから、普通に近い?人だと思うのです。普通と普通じゃない(普通と簡単に言えないのは、わかっていますが)の距離は随分長いものだとこの頃強く感じています。
さて、この『精神』をみて、カメラが捕らえる一人一人が、健気にカメラと闘っていると感じました。カメラの前でしゃべるまで、どんなに自分自身葛藤があったかと思うと切なくもありましたが、彼らは「こらーる岡山」の山本医師を慕い、全幅の信頼を寄せて、常に医師の前で全てをさらけ出しているのです。山本医師の「患者の話を聞く」という診療が、どんな薬よりも効き目があるのですが、これが一番、今の精神医療に欠けている部分でもあるようです。
想田監督の前作『選挙』も、そしてこの『精神』も(人間を見つめ、言葉を聴く)がベースになっているように思いました。(美)
2008年/アメリカ・日本/カラー/135分/デジタル上映(16:9 ステレオ)/ドキュメンタリー
配給・宣伝:アステア
公式 HP >> http://www.laboratoryx.us/mentaljp
監督:バーニー・ゴールドマン、メリッサ・ウォーラック
脚本:メリッサ・ウォーラック
出演:アーロン・エッカート(ビル)、ジェシカ・アルバ(ルーシー)、エリザベス・バンクス(ジェス)、ローガン・ラーマン(生徒)、ホームズ・オズボーン(ジョン・ジャコビー)ほか
逆タマ結婚のビルは人も羨む境遇のはずだったが、会社の上司である義父には頭があがらず、義弟にまで軽んじられている。おまけに妻のジェスは浮気をしているらしい。借りたビデオでこっそり盗み撮りをすると動かぬ証拠が映っていた。すっかり落ち込むビルを励ましたのは、母校の男子高校生。美人のガールフレンド、ルーシーを紹介し、ジェスに嫉妬させる作戦をもちかける。ルーシーはまず外側から、とビルのダサイ服装や髪型を変える。「最後に奥さんにプレゼントしたのは?」とルーシーに聞かれてビルは答えられない。やりがいのない仕事で忙殺され、そんな余裕も失っていたのだ。
アーロン・エッカートがジム・キャリーばりのコメディ演技を披露します。あのメタボなおなかも自前? 誰よりもビルの役に立ったのは、母校のトイレで会った男子高校生。けれど、この子はビルに「boy」と呼ばれるだけ。キャスト表にも生徒としかありません。下着売り場の店員だったルーシーとビルを引き合わせ、その後いろいろと活躍するのにこの待遇はなぜ?
ビルの妻ジェスは『ブッシュ』で大統領夫人を演じたエリザベス・バンクス。一方的に悪妻にはしていません。夫婦の会話や心のすれ違い描写が細かいのは、監督が実際のご夫婦でシナリオは夫人が担当しているせいでしょうか?(白)
役作りで10kg太ったアーロン・エッカート。そのお腹はファンとしてはビルと一緒に“Oh, my god!”と叫びたくなります。徹底してダサダサで情けない男が、ドツボから抜け出していくきっかけを作るのは、ジェシカ・アルバ扮するルーシーかと思いきや、そうではなくて高校生の“the boy”というのが意外な展開。世間体など考えず、率直で奔放な少年と出会って、少しずつかつての自分を取り戻していくビル。役名が無いのは、すっかり“大人”になってしまった世の男たちの、若き日の姿を投影した抽象的な存在だからかも。しかし40にして自分探しを始めるのは、ちと心配だ。(梅)
主人公ビルは何をやってもダメダメ男で、本当は妻の一族の銀行を継ぐのではなく、自分で事業を興したいと思っています。そんな彼に手を貸すのが、男子高校生とルーシーで、ビルが自分を見つめなおしだんだんと変わっていく様を感じ、彼ら自身をも成長させていくんですよね。「自分の居場所=幸せ」を見つけることは、ちょっとした勇気、自分に自信を持つことが必要なのかも? と私までビルにセラピーのおすそわけをもらったような気がします。思わず観客が応援したくなるようなビルを演じるアーロン・エッカートは、『ダーク・ナイト』のシリアス演技から一転、見事なコメディアンぶりを発揮しています。そしてチョコレートバーやビルのお腹ショットなど、繰り返し出てくるギャグの伏線もおもしろかったです。観終わった後ドーナツが食べたくなるかもしれませんが、ビルのお腹にならないようお気をつけくださいネ。(裕)
2007/アメリカ/カラー/97分/35mm/PG-12/
配給・宣伝:アートポート
監督・脚本:アロン・ウルフォーク
エグゼクティブ・プロデューサー:ダニー・グローヴァー
撮影:中堀正夫
出演:ベン・ギロリ(ダニエル・ホルダー)、高岡早紀(紀子)、清水美沙(原先生)、ダニー・グローヴァー(兄)、ヴィクター・グラント(ミッキー)、misono、穂のか、アーダ・ウルフォーク、白石美帆、山崎一、柏木由紀子ほか
サンフランシスコに住む写真家ダニエルには、かげがえのない一人息子ミッキーがいた。しばらく前に諍いをして別れたままだった。ミッキーはアメリカを飛び出し、高知のある村で英語教師をしていたが交通事故で亡くなってしまう。ダニエルは第2次大戦で父親を日本兵に殺され、今度は最愛の息子まで亡くし、日本への憎しみが募っていた。ミッキーが描いた絵が日本に残っていることを知った彼は、絵だけでも取り戻したいと日本へ旅立つことにした。頑なな心を抱いたまま高知に着いたダニエルは、ミッキーを知る教育委員会の原先生たちに暖かく迎えられる。
これが初の長編作品のアロン・ウルフォーク監督は、実際に高知で1年間英語教師をした経験があります。そこにしばらく住んだものの目から見ているので、外国の映画に散見する「妙な日本」はありません。紀子や原先生をはじめ、ミッキーに好意を寄せる人たちの真摯な思いが伝わります。頑なだったダニエルの心を溶かすのはミッキーにつながるこの人たちの暖かさで、見終わった後すなおによかったねと、こちらもほっこりします。ベン・ギロリと親友というダニー・グローヴァーがプロデューサーに名を連ね、兄役で出演もしています。橋はあちらとこちらをつなぐもの、そして人と人が出会うところ。作品の中にも「はりまや橋」の歌をモチーフにした絵画が登場します。(白)
2009/日本・アメリカ・韓国/カラー/120分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:ティ・ジョイ、宣伝:ブースタープロジェクト
公式 HP >> http://www.harimaya-bridge.jp
ソビエト連邦時代の、政治宣伝を目的にしたキッチュでアヴァンギャルドなアニメーション16本の一挙公開!
1917年に始まったロシア革命。共産主義を推し進める過程で、人民を洗脳する手段としてアニメーション作品が作られるようになり、80年代の体制崩壊まで特異な発展を遂げる。資本主義やファシズムそしてアメリカを徹底的に否定し、革命の成果を誇示するアニメーションは、子供向けのものから、大人向けのものまで多種多様。皮肉な笑いに満ちたものも多い。どれもが今振り返って観ると、革命の黎明期である1920年代、第二次世界大戦に向って行く1930〜40年代、そして戦後の東西冷戦と、時代の変遷を伝えてくれて興味深い。張り詰めたような独特の空気は、まさに共産主義革命のイメージ。時代の真っ只中にいた人たちは、どのような思いでこれらの作品を観たのだろうか? 機会があれば、是非聞いてみたい。(咲)
配給:竹書房
宣伝:スリーピン
監督:黄健中(ホアン・ジェンチョン)、延芸(ヤン・イー
出演:ホウ・ヨン(孝公)、ワン・ジーフェイ(商鞅)、カオ・ユアンユアン(白雪)、ソン・フェイフー(甘龍)、リュイ・チョン(太后)、ほか
partI: 紀元前361年。秦の君主が魏との戦いに倒れ、次男の贏渠梁(えいきょりょう=孝公)が次の君主となった。捕虜としていた魏の丞相・公叔座を開放し和平の使者となし領土を割譲する。孝公は長い戦乱のため疲弊し弱体化した国を建て直すため、広く「奇計の士」を求めた。公叔座の弟子、衛鞅(後の商鞅)は師の亡き後魏を出奔し、孝公のもとへと向かう。
partII: 紀元前359年。孝公は衛鞅を重用し、国家の大改革に手をつける。商鞅は第一次変法と呼ばれる国法を定めた。民衆を五戸で一組とし(什五)、互いに監視しあい、罪を犯したものがあれば訴え出ること。男子は農業、女子は家庭内手工業に励むこと。男子が二人いたら分家すること…などが主なもので、しっかりと法を根付かせるため、守らない者を厳しく処罰した。社会制度が整った秦は次第に国力を回復させる。
司馬遷の著した史記から、戦国時代の一国、秦の興亡を描いています。後に故事成語として有名になった語句が出てきて、思わず昔の漢文の授業を思い出しました。この物語のころの日本といえば弥生時代あたり。国を獲ったり獲られたりの戦国時代は15世紀のことです。歴史に詳しくないので単純に比較していいのか疑問ですが、この差はなんでしょう?
ともかく、そんな時代に英雄や名君と呼ばれる人が現れ、戦いに勝っては領土を広げ、国を治めて豊かにしてゆきます。変法を見るとそんなに昔のことと思えません。厳しい改革をした商鞅は深い恨みも買いますが、歴代君主は商鞅の法を残し、秦は戦国時代の統一を果たします。今の世に商鞅がいたならどんな改革をせよと言うでしょう。(白)
秦という一国の国家改革を成すには、どれだけの苦労があったのか、どれだけの犠牲が払われたのか。そして上に立つものの苦しみ…でもそれだけではなく孝公、商鞅はその苦しみがあってこその何物にも変えがたい喜び、達成感があったのだと思います。520分という長丁場で描かれる歴史大作ですが、次から次へと難題が起こるため飽きることはありません。そしてその難題に信念を曲げることなく立ち向かう孝公、商鞅には本当に感服しました。国や時代は違いますが、人を動かすのはやはり人の力なのでしょう。(裕)
2008/中国/カラー/partI,II各260分/
配給:エスピーオー
宣伝:ブラウニー
公式 HP >> http://www.daishinteikoku.jp/
監督:クリス・ジョンソン
1998年11月、ロシアの宇宙ステーション、アルマズ号がレーダーから消え、その4日後大気圏に突入して爆発。乗組員は全員死亡した。アルマズ号はソビエト連邦が軍事目的で打ち上げた宇宙ステーションだった。ロシア政府はこの件を闇に葬ろうとしたが、この宇宙船のブラックボックスを、ウクライナの過激派グループ“RIOT”がロシア政府を出し抜いて回収した。RIOTはそこに残されていた映像と音声によって、乗組員たちを襲った恐ろしい悲劇を知り、編集し映画として世界へ公開しようとする。
『ブレアウィッチ・プロジェクト』と似た雰囲気のモキュメンタリー。事前情報全く無しで見ていると、果たしてこれはリアルなのかフィクションなのかと混乱するかも知れません。もちろんそれは制作者の意図するところなのでしょうが、なんだか観客を試しているようで、あんまり気持ちの良いものではないなと感じました。しかし、謎と神秘に満ちた宇宙空間と、すべてが情報開示されているとは思えない宇宙開発事業、そして潜水艦と同じく完全なる密室環境。宇宙が舞台となると遠い未来の冒険ものが多いですが、現代の現実に近い設定でもサスペンスの舞台としては申し分なく、これからもっと色々な面白い作品が出てきそうな予感がします。(梅)
2007年/89分/ビスタサイズ/
提供・配給・宣伝:プレシディオ
公式 HP >> http://www.almaz.jp/
シネマジャーナル64号、68号で紹介した『30年のシスターフッド』監督の瀬山紀子さんとお仲間が主催する連連影展が今年も開催されます。シネマジャーナル76号に掲載された「第4回女たちの映像祭・大阪」で紹介された、『ファンボさんに春が来た』『おんなの言葉』も上映されます。この機会にいかがですか。(暁)
2009年6月6日(土)
会場:浅草聖ヨハネ教会(都営浅草線/大江戸線・蔵前駅)
http://nippon.anglican.org/tokyo/church/map_html/asakusa_m.htm
タイムスケジュール:
Aプログラム 13:00-15:00
Bプログラム 15:15-17:15
Cプログラム 17:30-19:00
チケット
1プログラム:1000円
3プログラム通し券:2500円
*介助者無料
会場でのトークなどの際にサポートが必要な方は、事前にメール(fav@renren-fav.org)等でご連絡いただくか、当日、会場でスタッフに声をかけてください。また、会場は段差などがあり、バリアフリーではありませんが、会場に車いす等でお越しの方で、サポートが必要な方は、スタッフまで声をかけてください。
なお、最寄り駅の都営大江戸線蔵前は、上下線ともエレベーター完備、車いす対応トイレが設置されています(都営浅草線にはエレベーター等がありません)。
Aプログラム: DIY自分で作る 13:00-15:00 | ||
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「セックスと障害とビデオテープ」 制作:ビヨンドメディア・エデュケーション&エンパワード・フェフェス/米国/2007年/35分 |
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16~24才の障害女性たちが、セックスと障害を大胆かつユーモラスに探求。自分たちは、同じ年頃の健康な身体をもつ人とロマンチックなディナーを楽しむことができるのか。セックスは? 共同生活は? 子どもは? | ||
「アクティビズムのレシピ」 監督:サラ・ホイルズ&ソニア・ポーラー/カナダ/2006年/12分 (監督トークあり) |
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カナダ・ハリファックスのバス運転手ショーンが考えるアクティビズムとは・・・。あなたにとって「アクティビズム」とは何ですか? | ||
「Five girls in Hainan Island」 編集:米田麻衣・木室志穂/日本/2009年/20分(予定)(監督トークあり) |
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あぽたちに会うため、女のこ5人で海南島に行っちゃいました☆ | ||
DIY作品 ホシノリナさんによるワークショップで制作。詳しくは→http://www.storycenter.org/ |
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「末広荘にっき」監督:新井ちひろ/日本/2008年/3分 「私ごとの原爆」監督:松尾瞳美/日本/2008年/3分 「twinkle☆」監督:りんるんみ/日本/2008年/3分半 「女って・・・」監督:松本真紀子/日本/2008年/4分半 |
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Bプログラム:「おんな」たちの言葉 15:15-17:15 | ||
「100%ウーマン」 監督:カレン・デューティ&ダイアナ・ウィルソン/カナダ/2004年/59分 2006年関西クィア映画祭上映作品 |
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マウンテンバイク選手のミシェルはトランスの女性。カナダ選手権に女性選手として参加し他の女性選手と争うものの、ほかの選手から「女性としての参加を認めるべきではない」との抗議が続く。本当の女、100%の女とは誰なのかを問いかける。 | ||
「ファンボさんに春が来た」 監督:チミン/韓国/2007年/27分 第4回女たちの映像祭・大阪上映作品 |
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韓国のハングル学校に通い字を習うファンボさん(74歳)。はじめて自分の言葉を獲得し、演劇にも挑戦するハルモニのいきいきとした姿を追った短編。 | ||
「おんなの言葉」 監督:ソレダー・ベラ/スペイン/2007年/25分 第4回女たちの映像祭・大阪上映作品 |
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ニカラグアでサンディニスタ民族解放戦線が政権をとった後、人工妊娠中絶が禁止された。これに対し、女たちはラジオ局を立ち上げ、女の自立と権利を求めて声を上げはじめた。 | ||
Cプログラム:1000人のピースウーマン 17:30-19:00 | ||
「1000人のピースウーマン」 監督:ガブリエラ・ノイハウス&アンジェロ・スクデレッティ/スイス/2005年/55分(トークあり) |
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「もうひとつのノーベル平和賞-平和を紡ぐ1000人の女性たち」出版記念! ノーベル平和賞の受賞者はなんで男ばかり? 草の根で活動する世界中の女性たちを讃えるために、2003年、ノーベル平和賞に1000人の女性たちをノミネートしようというプロジェクトが始まった。壮大なプロジェクトと5人のピースウーマンを紹介する。 |
お問い合わせ email: fav@renren-fav.org
主催:FAV http://www.renren-fav.org/
協力:Women Make Sister Waves(女たちの映像祭大阪)、関西クィア映画祭、ホシノリナ、Offroad Reports、『1000PeaceWomen』を1000人で翻訳しよう!プロジェクト、PeaceWomen Across the Grobe、反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)、Video Out Distribution、Beyondmedia Education、Empowered Fe Fes、ハイナンNET、ビデオ塾、清水工房(順不同)
監督:ジョー・ライト
脚本:スザンナ・グラント
製作総指揮:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ジェフ・スコール、パトリシア・ウィッチャー
製作:ゲイリー・フォスター、ラス・クラスノフ
撮影監督:シーマス・マクガービーB.S.C.
美術監督:サラ・グリーンウッド
編集:ポール・トシルA.C.E.
衣装デザイン:ジャクリーヌ・デュラン
音楽:ダリオ・マリアネッリ
原作:スティーヴ・ロペス (4月下旬 祥伝社刊)
出演:ジェイミー・フォックス(ナサニエル・エアーズ)、ロバート・ダウニーJr.(スティーヴ・ロペス)、キャサリン・キーナー(メアリー・ウエストン)、トム・ホランダー(グラハム・クレイドン)、リサ・ゲイ・ハミルトン(ジェニファー・エアーズ)
ロサンゼルスの路上で暮らす男ナサニエルの持ち物は、ショッピング・カートに山と積んだガラクタだ。その彼が弦が2本しかないバイオリンを奏でると、辺りは一瞬にして輝き始める。記事のネタを探していたロサンゼルス・タイムズのロペスは、偶然出会った彼に興味を抱き調べ始めた。すると、意外な事実が次々と浮かび上がって来た。名門音楽大学ジュリアードに2年在学したが、総合失調症を発病、大学からも家族からも姿を消してしまったのだ。彼の天才音楽家としての人生を取り戻してほしいと願うロペスは、彼と深く関わるようになるが…。
主役ジェイミー・フォックス。彼は前回『Ray/レイ』で、伝説のミュージシャン、レイ・チャールズを演じ、2005年のアカデミー賞主演男優賞を獲得した。そして今回はバイオリンとチェロの天才音楽家に挑戦した。彼の身体から溢れ出る音楽の渇望を、演技という作為を越えて、ナサニエル自身となって伝わって来た。路上で生活する自由、響きのいい高速道路の下での演奏・・・。演奏する場所がどこであれ、その演奏の中で、自由を満喫しているのだ。その魅力を知る彼には、華やかな場所など必要がないのだろう。
ジェイミー・フォックスは青春時代にクラシックの音楽家になる為の教育を受けていた。専攻はピアノだった為、この作品の為、一流のインストラクターにバイオリンとチェロを習い、ナサニエルの並外れた才能を見事に体現した。
チェロをまるで神様のように、大切に大切に扱っていた手の震えが目に焼きついた。(美)
2009年/アメリカ/35mm/カラー/スコープサイズ/ドルビー・デジタル/117分/字幕翻訳:関美冬
配給:東宝東和
公式 HP >> http://rojyo-soloist.jp/
監督:P.J.ホーガン
製作:ジェリー・ブラッカイマー
脚本:トレイシー・ジャクソン、ティム・ファース、カイラ・アルバート
原作:ソフィー・キンセラ著「レベッカのお買いもの日記1・2」ヴィレッジブックス刊
衣装デザイン:パトリシア・フィールド
出演:アイラ・フィッシャー(レベッカ・ブルームウッド)、ヒュー・ダンシー(ルーク・ブランドン)、ジョーン・キューザック(レベッカ母)、ジョン・グッドマン(レベッカ父)、クリスティン・リッター(スーズ)、レスリー・ビフ(アリシア)、クリスティン・スコット・トーマス(アレット)、ジョン・リスゴー(エドガー・ウェスト)ほか
©TOCHSTONE PICTURES
レベッカ・ブルームウッド25歳。マンハッタンのファッション誌の記者になるのが夢だけど、今は地味〜な園芸雑誌社勤め。ストレス解消は、お買いもの!大好きなのはセール!!部屋はその戦利品と請求書の山。親友のスーズに忠告され、憧れの「アレット」社へ就職活動に行くと、なぜか手違いで同じビルのおカタイ経済雑誌の編集部に採用されてしまった。ちょっとハンサムな編集長に、さっそく記事を1本書くよう命じられる。買いもの中毒の女の子目線で書いた記事は好評だったが、借金とりが現れてレベッカは大苦戦。
たいていの女の子はお洒落とお買いもの好き。ニューヨークの有名ショップが登場して、そのどちらもおおいに楽しめる映画です。レベッカのカラフルな衣装や小物は『プラダを着た悪魔』でも衣装デザインを担当したパトリシア・フィールドが調達したもの。名だたるブランド揃いですが、パトリシアは渋谷や原宿を訪れて、たくさん買い物したそうです。レベッカ役のアイラは小柄なので、日本のサイズがぴったりなのだとか。劇中レベッカを追いかける取立て屋はすっかり悪人扱いをされていますが、もとはといえば買い物のツケなのですから、払うのは当然。レベッカが中毒を克服できるのか、劇場でご覧下さい。(白)
2008/アメリカ/カラー/105分/シネスコサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www. movies.co.jp/okachu/
製作・監督:田中千世子
脚本:牧野圭祐、金允洙、田中千世子
出演:伊勢谷能宣、佐野史郎、石川真希、梅若靖記 ほか
劇団で役者をしている伊勢谷は急に日本的なものに興味がわき、能を習い始めた。初めての稽古の日、先生が舞って見せたのは仕舞の「三輪」。美しい女のところに夜ごと通う男がいたが、女はその男のことを何も知らない。ある夜、女は男の着物に針と糸をつけ、その糸をたどって追うと、そこには蛇の姿をした三輪の神様がいたという物語だった。伊勢谷は物語の舞台となった奈良県桜井へと行ってみる。そこで「日本浪漫派」の保田與重郎を研究しているという女性と出会う。記念にと手渡された雑誌「日本浪漫派」は難解だったが、伊勢谷は興味をそそられ、その興味の矛先は小林秀雄、三島由紀夫、ゲーテ、茶の湯と広がっていく。
日本の文化・芸術を探求しながら、自らの立ち位置を模索する若者の青春映画。しかし文化史を説明するような部分が多くてドキュメンタリーの色合いが強い。劇映画としてストーリーや主人公のキャラクターが印象深く残るような作りになり得てないのを残念に思う。三輪山周辺の大和の風景が美しく、自分も主人公のように歩いて巡りたいと思わせられる。(梅)
2009/日本/カラー/75分/35mm/ビスタサイズ/ドルビー
配給:『浪漫者たち』製作委員会
配給協力:ダゲレオ出版
宣伝:ライスタウンカンパニー
公式 HP >> http://www.romanshatachi.com/
29歳の若さで夭折した天才・山中貞雄。現存する監督作品は『丹下左膳餘話 百萬両の壺』『河内山宗俊』『人情紙風船』の3本のみですが、若干22歳で映画監督となり、1950年代の日本映画黄金期を築き上げた巨匠の1人でした。今回の特集上映では脚本を担当した『戦国群盗傳』も含めた4本をスクリーンで観ることができます。
また、西山洋市監督による講演が各作品の上映初日(5月30日、6月6日、6月13日、6月20日)にありますので、是非足をお運び下さい。
開催期間:2009年5月30日(土)〜6月26日(金)レイトショー 連日21:00より
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷
上映作品:
5月30日(土)〜6月5日(金)「丹下左膳餘話 百萬両の壺」(1935年)
6月6日(土)〜12日(金)「河内山宗俊」(1936年)
6月13日(土)〜19日(金)「人情紙風船」(1937年)
6月20日(土)〜26日(金)「戦国群盗傳」(1959年)
入場料金:一般…1,200円、シニア・学生…1,000円、会員…800円
※水曜サービスデー…1,000円均一
ラピュタ阿佐ヶ谷公式 HP >> http://www.laputa-jp.com/
「女はこうあるべき!」という世間の枠から飛び出した「非女子」たち。「ぶっ飛んだ女」「女を棄てた女」・・・と言われてしまうかもしれないけれど、彼女たちは、自分に正直に生きているだけ。図鑑をめくるように、そんな女たちのストーリーが綴られる。
監督・脚本:清水崇
ベッドの中で語り合う西洋人の母娘。「私はどうして生まれたの?」と娘に尋ねられ、「パパとママが愛し合ったから」と答える母。「なぜ愛し合うの?」と娘に突っ込まれ、母は語り出す。「昔々、エデンの園にアダムという男の子(大友陸)と、イブ(鳥居みゆき)という"非女子"がいたの」「"非女子"って?」と娘。そうして始まる非女子の誕生秘話と、現代の非女子の物語。
監督・脚本:豊島圭介
いつも突拍子もない行動をする高校生のタマエ(足立梨花)。そんな彼女に興味を持った留学生のキャサリン(アナンダ・ジェイコブズ)は、タマエが毎朝登校前に神社でガチャガチャ占いをして、そこに書かれた通りのことをしていることを知る。タマエは占いを作っている神社の神主(スネオヘアー)に恋をしていたのだ。ある日、「好きな人に告白しよう」という占いを引くが・・・
監督:山口雄大
石丸光子、通称みっちゃん(山崎真実)は日々自分の体を鍛えている。ある日、焼きそば「スパルタン号」の無料試食を知ったみっちゃん。皆が1回だけ受け取って帰る中、みっちゃんは何度も並びなおして焼きそばを受け取る。それに気付いたスパルタン号のオーナーであるタナカ(ジジ・ぶぅ)は従業員のタク(坂口拓)を叱りつけるが、懲りずに試食に挑戦するみっちゃん。タクとみっちゃんの闘いが始まる。
監督:深川栄洋
真夏の遺跡発掘現場。現場責任者で男勝りに働くキャリアウーマン、菅山美帆(月船さらら)の秘密はノーブラ。ある日、若い調査員の大和圭吾(田中幸太朗)の背中にブラのホックを見つけた美帆は、男子更衣室に侵入して、圭吾のブラを探り出す・・・
監督:川野浩司
映画『昭和残侠伝男の証明』の主役オーディション会場。イメージに合う人材がいないとなかなか納得しない監督。会場に次の4人の俳優が入って来た。全員の目が最後の一人(片桐はいり)に釘付けになった。「あいつ、女じゃないのか?」「なぜ女が?」とざわめく一同。監督は男より男らしい彼女を気に入るが、女に役を取られてたまるかと、男優が殴りかかる・・・
監督:オースミユーカ
海を見晴らす温泉旅館。部屋に案内された一人旅の千晶(江口のりこ)の大きなバックに七輪が潜んでいるのを目にした仲居は、自殺志願者!と勘違い。千晶は浴衣に着替え、涼しい顔で七輪を手に混浴露天風呂へ・・・
監督:塚本連平
中谷涼子(仲里依紗)は東京で独り暮らしをする25歳のOL。失恋し自殺しようとするが、現場検証に来る刑事たちが散らかり放題の部屋に呆れる姿を想像し、あわてて大掃除を始める。綺麗になった部屋で、今度はノートに書いた詩を刑事たちがコケにする姿を想像し・・・
「非女子」という言葉自体に、男から見た女性という意識を強く感じて、抵抗を覚えながら、さてはて、どんな映画?と観にいった次第ですが、いやはや、笑ったり、呆れたり、身につまされたり・・・。「女はこうあるべき!」という世間の枠も、すでにこの数十年大きく変わっているし、ここに登場するような女性たちは、普通に存在するのではないでしょうか? 逆に、非男子も増えている?! そもそも、男だ、女だっていう世の常識の基準って、どこにあるのでしょう? ま、カタいことは言わずに、さら〜っと笑ってみましょう。(咲)
2008年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/DTSステレオ
配給:ニューシネマワークショップ、グアパ・グアポ
宣伝:グアパ・グアポ
公式 HP >> http://hijoshi.com/index.html
ロードショーに先行する特別上映とトーク
トークゲスト 松本侑壬子さん(映画評論家)
日時:2009年5月30日(土)19:00~20:30
場所 渋谷女性センター アイリス 7F学習室
参加費 1000円
先着50名 事前予約の必要はありません。
主催 映像女性学の会
協力 パンドラ/女性と表現の会(PERFE)
お問い合わせは、映像女性学の会・小野まで(mail:ycinef@yahoo.co.jp fax:03-3306-2762)
監督:関口祐加
出演:関口祐加、ジョージ・ブレア=ウェスト博士、ゲイリー・エガー博士、ショーン・ニックリン博士、イヴォンヌ・アレン、フィオル・ガルデリシ
自分のデブ歴50年を題材に自らの手で映像化!ダイエットに隠れた心理を解き明かす痛快作品。ドキュメンタリーでありながらコメディ。
2007年/オーストラリア/52分
配給:パンドラ
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/thediet/
監督:十河壮吉
作:湯顕祖「還魂記」
芸術監督:坂東玉三郎
芸術指導:張継青
美術:前田剛
照明:池田智
出演:坂東玉三郎(杜麗娘)、兪玖林(柳夢梅)、沈国芳(春香)、呂福海(睡夢神、石道姑(尼))、朱恵英(杜麗娘の母)ほか
©2009松竹株式会社
第1部:ドキュメンタリー篇『玉三郎16Days in 蘇州』45分
第2部:舞台篇『牡丹亭』1時間40分
南安太守の美しい娘、杜麗娘(とれいじょう)は、春の庭園を愛でた後うたた寝をして柳夢梅(りゅうむばい)という若者と出会う。たちまち恋に落ちた二人は、13人の花神たちの祝福を受けて結ばれるが、気づけばそれはみな夢の中のできごとだった。杜麗娘は柳夢梅を忘れられず、恋しさがつのってついに病気になり、はかなくこの世を去ってしまう。
2009年3月13日〜15日、蘇州科学技術文化センターで坂東玉三郎主演で上演された昆劇の名作「牡丹亭」の映像と、上演まで昆劇学院で稽古に励むようすをおさめたドキュメンタリーの2本立て。昆劇は600年の歴史のある雅やかな伝統劇。玉三郎氏は1986年東京国立劇場でこの「牡丹亭」公演を観て深く感動し、敬愛する梅蘭芳が昆劇の勉強をしていたと聞いて、自らも勉強のため昆劇学院を訪れました。初めは日本語で上演したいと考えたそうですが、勉強するほどに原語でなければと思い、一幕だけのつもりが次々と増えてこの形になったそうです。
昆劇は蘇州語で、台詞を歌に乗せ、踊りながら歌うこともあります。20年前に東京公演で杜麗娘を演じた張継青を指導に迎え、玉三郎氏は蘇州語をマスターするため、ビデオで口の開け方を見、耳で台詞と歌を覚え、と徹底的に準備をしました。その合間に大学で講演を行い、若い学生達との質疑にも答えています。中で『覇王別姫』で蝶衣を演じたレスリー・チャンとの交流について語る場面は短いながら深い余韻を残します。
ドキュメンタリーの後に観るご当地での公演は、長年の研鑽が花開いたすばらしいもので、特に離魂の場は哀切で滂沱の涙でした。(白)
2008/日本/カラー/2時間25分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:松竹
宣伝:スキップ
公式 HP >> http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/botantei/index.html
監督:J.J.エイブラムス
脚本:アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー
出演:クリス・パイン(ジェームズ・T・カーター)、ザッカリー・クイント((スポック)、カール・アーバン(マッコイ)、ゾーイ・サルタナ(ウフーラ)、アントン・イェルチン(チェコフ)、ジョン・チョウ(スールー)、サイモン・ペッグ(スコット)、エリック・バナ(ネロ)ほか
宇宙、そこは最後のフロンティア。
これは、新世界を探索し、新しい生命と文明を求めるUSSエンタープライズとそのクルーたちの運命のストーリーである。
USSケルヴィンの脱出用の小型機の中で男の子が生まれた。ジェームズ・タイベリアス・カーク。彼の父は今正体不明の大型艦をめがけて突っ込んでゆくところだ。敵に捕らえれたキャプテンの代わりに、妻子と800人のクルーを救うために。
22年後、アイオワの地でカークは青年となっていた。スターフリート(惑星連邦艦隊)のパイクは、カークの父の最期を知る人物で、USSエンタープライズの初代キャプテンに任命されていた。進むべき道に迷うカークにスターフリートへの志願を勧める。「父親を超える男になってみろ」
3年後、カークは昇任試験を迎えた。課題を出したのはバルカン人と地球人の間に生まれたスポック。混血であることがマイナスとなる母星に残ることを拒み、USSンタープライズの優秀なサブ・リーダーとなっていた。
オリジナルのテレビのシリーズは1966年に発表されました。これをヒントにJ.J.エイブラムス監督が「リ・イマジネーション作品」として再構築。シリーズでは描かれなかった、オリジナルのキャラクターたちの若き日、いかにしてUSSエンタープライズのクルーとなったかが描かれます。特に主人公であるカークと盟友となるスポックのそれぞれの背景と、正反対の個性を持つ二人が出会い互いを認めるまでが詳しく、ストーリーの核となっています。
40年余り前とは全く違う状況(宇宙や地球や映画の技術等等)の中、彼らが作り出した始まりのその前のストーリーは、シリーズを知る人も知らない人も楽しめるものになっています。クリス・パインやザッカリー・クイントら個性豊かなキャストたちの活躍に期待してください。個人的には軽妙な演技のアントン・イェルチンが『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』同様、ここでもチェコフ役で和ませてくれて嬉しいです。こうやって様々な人種が地球人として一つになれることを願いつつ。(白)
2009/アメリカ/カラー/127分/スコープサイズ/ドルビーSRD/
配給:パラマウントジャパン
©2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.startrek2009.jp/
監督:クリス・ナオン
脚本:クリス・チョウ
原作:『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(プロダクションI.G)
プロデューサー:ビル・コン、エイベル・ナーミアス
アクション監督:コリー・ユン
出演:チョン・ジヒョン、小雪、アリソン・ミラー、リーアム・カニンガム、JJフェイルド、倉田保昭
400年前の戦乱の世で人々が殺し合い、その流れた血によって勢力を増した種族”オニ“。その頂点にいるのが”オニゲン”だった。その後もオニは世が不安を増すとその数を増やしていった。そのオニたちに日本刀1本で立ち向かう少女サヤ。父を殺したオニゲンを討つため、オニを始末する組織の一員となって戦い続けている。彼女には忌まわしいオニの血が流れており、それが故に常人とは違う力を持っていたが、孤独と苦悩も深かった。米軍基地内にオニがいるらしいとの情報から、サヤは基地内のアメリカン・スクールに1人送り込まれる。
2000年に公開された『BLOOD THE LAST VAMPIRE』は48分のショートムービーでした。斬新な設定とフルデジタル・アニメーションの映像も独創的で48分があっという間に感じ「もうちょっと観たい!」と思いました。どうやらプロデューサーのビル・コンさんも同じ思いだったようです。
冒頭の地下鉄銀座線のシーンや、米軍基地の飛行場でのシーンは原作とほとんど同じで驚きました。こちらの作品では原作では触れられなかった、サヤの生い立ちについてが大きく加わっています。チョン・ジヒョンが三つ編みセーラー服で、スカートをひらめかせながら日本刀でオニをぶった切っていく姿に、萌える男性も多いのでは。わたしは出番は少ないですが小雪のオニゲン姿に、この世のものならぬ美しさと禍々しさを感じて印象深かったです。ただ彼女の日本語がなぜか吹き替えだったのが気になってしまった。(梅)
2009年/香港・フランス映画/英語・日本語/91分/カラー/スコープ・サイズ/ドルビーデジタル/R-15
イースト・ウィング・ホールディングス・コーポレーション、SAJ提供
ベイジン・ハッピー・ピクチャーズ・カルチュラル・コミュニケーションズ・カンパニー・リミテッド共同提供
配給・宣伝:アスミック・エース
公式 HP >> http://lastblood.asmik-ace.co.jp/
東京近郊の学生たちによって運営される関東では最大規模の学生映画。大学に所属する映像制作団体から作品を募集し、予選を通過した作品を本選で上映、グランプリ作品を決定するコンペティションもあり、これまでに中村義洋、青山真治といった多くの監督や映像クリエイターたちを輩出してきました。
21回目を迎える今年は小泉徳宏監督(『ガチ☆ボーイ』『タイヨウのうた』)をゲストに迎え開催されることが決定。1日目の「誰も知らない映画史」では、第1回からの歴史を振り返り、過去のグランプリ作品の上映やパンフレットなどの展示が行われます。
2・3日目は厳しい審査をくぐり抜けたコンペティション作品の上映があります。未来の巨匠を見つけに、是非足をお運び下さい。
【場所】
北沢タウンホール(下北沢駅南口から徒歩4分)
【日時】
5月29日(金) 19:00~「誰も知らない映画史」
ゲスト:小泉徳宏監督、井土紀州監督
5月30日(土) 13:00~「本選1日目」ゲスト:山下敦弘監督
5月31日(日) 13:00~「本選2日目・最終日」ゲスト:山下敦弘監督
※各日とも1時間前開場(予定)
公式 HP >> http://www.tougakusai.com/
監督:森淳一
脚本:相沢友子
原作:伊坂幸太郎 『重力ピエロ』(新潮社刊)
撮影:林淳一郎
出演:加瀬亮(奥野泉水)、岡田将生(奥野春)、小日向文世(奥野正志)、鈴木京香(奥野梨江子)、吉高由里子(夏子)岡田義徳(山内)、渡部篤郎(葛城)ほか
重力を背負った家族の、“愛と謎”
長男の泉水(いずみ)は大学院で遺伝子研究をしている。弟の春はアルバイト生活中。優しくて美しかった母の命日に久々に実家に戻って父の手料理を食べている。父が「癌だって」とあっけらかんと報告したころ、仙台市内では放火事件が続いて起こっていた。落書き消しの仕事をしていた春が「すっごいことに気がついた!」と泉水に落書きのポラロイド写真を見せる。壁に書かれた文字をつなげると放火犯のメッセージになる、火事は落書きの近くで必ずおきている、と春は言う。半信半疑の泉水だったが、春に誘われて夜の街へ見張りに出かける。
明るく愛情いっぱいに息子たちを育てた母、「最強の家族だ」と胸を張る父。仲の良い兄弟。これは、他とは少し違った家族の物語です。「それでも僕らは家族なんだ」という言葉は、“それでも家族なの?”と言いたくなる事件が頻発するこのごろ、なんとストレートに胸に届くことでしょう。映画化が続く伊坂幸太郎氏の大ベストセラーを、「この作品が大好きなスタッフが集まって(プレス資料より)」映像化しました。重い荷物を抱えながら軽やかに生きる家族を、それぞれ他に思い浮かばないキャストが演じます。冒頭の桜のシーンを始め、原作の仙台で撮影した四季おりおりのシーンが美しいです。(白)
2009/日本/カラー/1時間59分/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD/
配給:アスミックエースエンタテイメント
公式 HP >> http://jyuryoku-p.com/
特別記事 『重力ピエロ』完成披露試写舞台挨拶レポートもご覧下さい。
監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ
アクション監督:パンナー・リットグライ
出演:“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン、阿部寛、ポンパット・ワチラバンジョン、“ソム”アマラー・シリボン ほか
ジンは地元マフィアのボス・ナンバー8の女でありながら、対抗組織である日本人ヤクザの大物マサシと恋に落ちる。2人は深く愛し合うがナンバー8の報復からマサシを守るため、ジンは彼を帰国させる。
彼の帰国後、ジンは密かに娘を産んだ。ゼン(禅)と名付けられた少女は自閉症で通常より知能の発達が遅れたが、母は愛情の限りをそそぎ、母娘2人つつましく暮らす。
成長したゼンは並外れた身体能力を持っていた。特に格闘技に興味を示し、幼なじみのムンと密かに修練を積んでいた。その頃、母のジンは癌を患い、治療には多額の費用が必要だった。ジンの古い手帳を見つけたムンは、昔ジンがいろいろな人にお金を貸していたことを知り、何とかお金を返してもらおうとゼンと一緒に出向くが、素直に返すような相手は誰もいない。屈強な男たちが襲いかかってきたとき、ゼンの蹴りが炸裂する。
『マッハ!』の監督が今回しかけたのは、美少女によるリアル・ファイト・ムービー。4年もの訓練を経てデビューを果たしたジージャーは、この映画の大ヒットで一躍アクション・スターの仲間入りをしました。もともとテコンドーの選手だったこともあってか蹴り技が主ですが、監督が重視したというスピードとしなやかさは見事です。これまでの監督の映画にはなかった、親子の愛情や男女の愛情も描かれます。阿部寛さんが演じるマサシはヤクザという身分ですが、愛のために生きることを選らぶ、なかなかかっこいい男です。でも”お金を返して!“と闘うゼンの姿は、『仏像を返せ!』『象を返せ!』のトニー・ジャーと基本的には変わりませんね。(梅)
2008年/タイ映画/タイ語・英語・日本語/カラー/ヴィスタ/ドルビーSRD/99分
配給・宣伝:東北新社
公式 HP >> http://www.chocolatefighter.com/
特別記事 『チョコレート・ファイター』最強ガールズ・ファイター ジージャー登場
2009年5月17日(日)〜7月11日(土) 連日10:30より
ラピュタ阿佐ヶ谷
昭和映画史の中で、国民的人気女優と言って真っ先に思い出されるのは吉永小百合ではないでしょうか。1960年代に日活青春映画の黄金期を牽引し、「サユリスト」と呼ばれるファンを生むほど、男性に絶大な人気を誇りました。その清楚な美しさは今なお健在です。60年代の瑞々しい作品8本が特集上映されます。
上映作品:
監督:オリバー・ストーン
脚本:スタンリー・ワイザー
撮影:フェドン・パパマイケル
出演:ジョシュ・ブローリン(ジョージ・W・ブッシュ)、ジェームズ・クロムウェル(ジョージ・H・W・ブッシュ)、エレン・バースティン(バーバラ・ブッシュ)、エリザベス・バンクス(ローラ・ブッシュ)、リチャード・ドレイファス(ディック・チェイニー)、スコット・グレン(ドナルド・ラムズフェルド)、ジェフリー・ライト(コリン・パウエル)、タンディ・ニュートン(コンドリーザ・ライス)、トビー・ジョーンズ(カール・ローブ)ほか
―世界でいちばん有名な大統領は、世界でいちばん寂しい人でした。―
1946年ジョージ・W・ブッシュは、アメリカを代表する名門ブッシュ家の長男に生まれた。できの良い弟に比べられ、重い家名を背負うW(テキサス訛りでダブヤ)は、エール大に入学。卒業して父のコネで就職しても根気も我慢も足りず、何一つ長続きしない。野球の仕事がしたい、と言ってみるが相手にされず、そのうち酒に溺れ始める。
おそまきながら政治に興味を持ったWは、77年テキサスの下院議員選に参戦する。付き合い始めたローラの応援も得て共和党候補を目指すが結果は惨敗。86年の誕生日、大統領選に出馬を決めたパパから電話が入る。「選挙を手伝ってくれないか」。88年、パパは大統領選に勝利したが92年クリントンに負け任期は1期で終わった。Wはフロリダ州知事に立候補した弟と競うようにテキサス州知事に立候補する。
アメリカの大統領選は世界中が注目するイベントのひとつでしょう。なんだかわからんうちに次々と首相が変わってしまうわが国とは違い(あまりに任期が短くて、そんな人いたっけ?な印象の人も)、長い時間をかけて大統領と呼ぶに足る人を国民が選ぶのです。そうやって大統領になったブッシュ氏を、オリバー・ストーン監督は、重い家名と偉大な父に押しつぶされそうになりながら戦い続けた男として意外に暖かく描いていました。父と息子って母と娘よりずっと面倒なのですねぇ。
どこまで真実に肉薄しているのか、家庭やホワイトハウスの会議のようすなどなかなか面白いです。ときに「げっ、こんなこと言ってるの?」とむかつくこともありますのでご注意を。(白)
2008/アメリカ/カラー/130分/スコープサイズ/ドルビーSRD/
配給・宣伝:角川映画
★5月16日(土)角川シネマ新宿ほか全国ロードショー!
公式 HP >> http://www.bush-movie.jp/
監督:細野ひで晃
脚本:宮藤官九郎
主題歌:ゆずxキマグレンの限定ユニット“ゆずグレン”による「two友」
出演:浅野忠信、北村一輝、ユースケ・サンタマリア、真木よう子、南野陽子、佐津川愛美、ジェロ
週刊大亜に連載されていた小説「鈍獣」が、明多川賞にノミネートされた。なのに、著者の凸川(でこがわ)隆二は行方不明。編集担当者の静は、凸やんこと凸川の故郷の町に赴く。そこは、なぜだかすべてが相撲中心の田舎町。静は、ホストクラブ“スーパーヘビー”で、凸やんの同級生でホストの江田や、いい加減な警察官・岡本に会い、凸やんの行方を探り始める。そこで知った25年前の秘密。そして、それをネタに小説を書いたことを恨んで同級生たちは凸やんを殺したはずなのに、殺しても殺しても、生きて現れると聞かされる。
原作は、宮藤官九郎が2004年にPARCO劇場での上演のために書き下ろした戯曲「鈍獣」。CM界で数々の実績をあげてきた細野ひで晃が、夢だった映画初監督作品に本作を選び、宮藤官九郎に映画用の脚本執筆を依頼。映画化にこぎつけました。死なない鈍な男凸やんを、浅野忠信がダサ〜く演じていて、不思議な存在感。映画初出演のジェロも自然体で好感が持てました。(咲)
2009年/日本/106分/ヴィスタ/カラー/ドルビーSR/©2009『鈍獣』製作委員会
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
企画:DAYTORA ENTERTAINMENT/パルコ
制作プロダクション:スプーン
公式 HP >> http://donju.gyao.jp/
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:ジュリエット・ビノシュ(アドリエンヌ)、シャルル・ベルリング(フレデリック)、ジェレミー・レニエ(ジェレミー)、エディット・スコブ(母エレーヌ)、ドミニク・レイモン(リーザ)、ヴァレリー・ボヌトン(アンジェラ)ほか
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パリ郊外の家に一人住む母の元に久しぶりに子供たちが集まる。それぞれに家庭や仕事を持ち、めったに顔が揃わないこのごろ、母は嬉しそうだ。画家だった大叔父が残したこの屋敷には多くの美術品があるが、母は長男フレデリックに、「私が死んだら売って兄弟姉妹みんなで分けるのよ」という。思わず反発するフレデリックだったが、後に母が亡くなってみると、誰もこの家を管理できず売ると多額の税金がかかることがわかった。相談の結果、美術館に寄贈することになった。
以前ご紹介した『ホウ・シャオシェンのレッドバルーン』と同じく、この作品もオルセー美術館が開館20周年を記念して撮影に協力したものです。広い庭と画家の住まいらしい洒落た調度品、数々の美術品など、目の保養になること請け合いです。子供たち3人がそれぞれ思い出のある家を愛しながら、現実は思うようにならず、遺されたものの中から自分の好きなものを選び出す場面など、身近な人を送って形見分けをしたことを思い出します。印象派の画家たちが愛してやまなかったというイル・ド・フランス地方のヴァルモンドの風景が素晴らしいです。(白)
2008/フランス/カラー/102分/ビスタ/ドルビーデジタル/
配給:クレストインターナショナル
公式 HP >> http://natsujikan.net/
監督:小林茂
撮影:吉田泰三、小林茂
音楽:サカキマンゴー
特別協力:佐藤真
後援:「小林茂の仕事」Oタスケ隊
助成:芸術文化振興基金、財団法人新潟県国際交流協会
撮影協力:モヨ・チルドレン・センター
製作:カサマフィルム
裸足の男の子が川辺で服を脱ぎ、ちょっとためらいながら水に入るがすぐに出てくる。水浴びを楽しもうとしたわけではないらしい。東アフリカ、ケニアの首都ナイロビから車で1時間、人口10万の地方都市ティカ。鉄くずや空き缶を拾って暮らしているストリートチルドレンたちは、チョコラ(スワヒリ語で「拾う」の意)と呼ばれてさげすまれている。貧困、エイズ、シングルマザー、暴力・・・ いろんな問題を背負って生きている子どもたち。それでも、彼らはお互い助け合いながら生きている・・・
ケニアでの約5ヶ月にわたる取材。子どもたちは、小林監督のことをコバ、撮影の吉田泰三氏のことをゾウと親しみをこめて呼んでいる。全編に鳴り響くのは、アフリカ各地で見られる手作りの楽器「親指ピアノ」の素朴な音色。この映画は、何かを訴えようとか、解決策を探ろうとかしたものではない。貧困の中でくったくのない笑顔を見せる子どもたち・・・ さて、どうしたらいいのだろう。世界には、同様の生活を強いられている人たちが想像できないくらい大勢いることを思い、呆然とするしかない。(咲)
2008年/94分/HD/スタンダード/カラー/日本
配給:バイオタイド
宣伝協力:スリーピン
公式 HP >> http://www.chokora.jp/
監督・脚本:林海象
脚本:徳永富彦、久万真路
撮影:柴主高秀
音楽:めいなCo.
出演:尾上菊之助(探偵507)、稲森いずみ(美蘭)、宍戸錠(会長)、松方弘樹(椎名)、松岡俊介(情報屋)、斎藤洋介(探偵523)、佐野史郎(探偵501)、貫地谷しほり(瞳)ほか
川崎市で連続爆破事件が起こった。犯人グループは政治犯の釈放を要求。市内各地に仕掛けられた時限爆弾のコード解読のため、探偵事務所5に市長より協力依頼がある。探偵507は暗号解読の天才。会長の孫娘、瞳に数学を教えながらでも爆弾コードを解いてしまう。犯人も逮捕され、507は新しい暗号解読の任務のため上海事務所に向かう。初めて見る配列の暗号に心躍らせている507を、会長と探偵523が待っていた。
昨年秋の東京国際映画祭でいち早くお披露目された本作。歌舞伎界のプリンスの一人、尾上菊之助さんが探偵術は心もとないが、暗号解読にかけては天才という探偵に扮しています。『怪談』に続いての主演ですが、今度はアクションもある現代もの。しかし帽子をかぶったスーツ姿でも、一昔前の雰囲気が漂う人です。そんな507をバックアップする会長役は往年の日活アクションスター、「エースの錠」こと宍戸錠。そして椎名役に東映のスター松方弘樹、二人のガンバトルは映画ファンには嬉しいプレゼントでした。(白)
2008/日本/カラー/124分/ヴィスタ/ドルビーデジタル/
配給:日活
公式 HP >> http://www.tantei5.com/thecode/
監督:ヴェラ・ベルモン
原作:ミーシャ・デフォンスカ「少女ミーシャの旅」(早川書房刊)
脚本:ヴェラ・ベルモン、ジェラール・モルディラ
撮影:ピエール・コットロー
音楽:エミリー・シモン
出演:マチルド・ゴファール(ミーシャ)、ヤエル・アベカシス(母ゲルーシャ)、ベンノ・フユルマン(父ロイヴン)、ギイ・ブドス(エルネスト)、ミシェル・ベルニエ(マルト)ほか
1942年、ナチス・ドイツの占領下のブリュッセル。ユダヤ人のミーシャと両親はユダヤ人狩りを恐れ、屋根裏部屋に隠れ住んでいた。しかしミーシャが学校に行っている間に両親は強制連行されてしまう。支援者が学校に迎えに来て、ミーシャはその日からベルギー人の子供として郊外に住むことになった。養母にモニカと新しい名前をつけられ、召使のような生活の中両親が恋しくてならない。たびたびお使いで行かされる農場のエルネストとマルト夫婦は親切で、2匹の犬もお気に入りとなった。ミーシャはエルネストに連行されたユダヤ人はどこに行くのか尋ねる。
8歳の少女が生き別れになってしまった両親を追って、ベルギーからウクライナまで一人旅をします。それもナチスの目を逃れながら、お金も食べ物もない中、小さなコンパスだけを頼りに東へ東へと。子供がここまで辛い旅をする映画を他に知りません。けっしてめげないミーシャを演じたマチルドは、わがままゼロのすばらしい子役だったそうですが、一つだけ泣き叫んだのが○○○を捕まえて食べるシーンだったそうです。調教がことに難しいという狼たちの名演(トレーナーさんの手腕)、マチルドとの奇跡のような共演にも注目。(白)
*フランス映画祭のために来日していたヴェラ・ベルモン監督と、ミーシャ役のマチルド・ゴファールに偶然会うことができました。思わずミーシャ!と呼びかけて撮影させてもらった1枚です。
原作の「少女ミーシャの旅」は、著者の回想録として出版され、世界17カ国で翻訳された大ベストセラーです。去年、著者が実はフィクションであったことを告白し、謝罪して話題となりました。少女のたどる道は苛烈を極め、わたしはこれがフィクションであってくれて良かったと思うほどでした。生き抜くために盗み、狼と共に生肉をあさり、ドイツ、ポーランド、ウクライナそして再びベルギーへと3000マイルもの徒歩の旅の末にミーシャがつかむのは、彼女の払った犠牲や努力を十分に報いるものではありません。そこにあの戦争の悲惨さを感じることができます。(梅)
2007年/フランス・ベルギー・ドイツ/シネスコ/カラー/SRD/119分
提供:エースデュース
協力:コムストック・グループ
配給:トルネード/フィルム
宣伝:エイスワンダー
公式 HP >> http://www.misha-wolf.com/
監督: オキサイド・パン、ダニー・パン
脚本: ジェイソン・リッチマン
オリジナル脚本: オキサイド・パン、ダニー・パン
撮影: デーチャー・スリマントラ
音楽: ブライアン・タイラー
出演: ニコラス・ケイジ(ジョー)、シャクリット・ヤムナーム(コン)、チャーリー・ヤン(フォン)、ペンワード・ハーマニー(オーム)ほか
成功率100%の殺し屋ジョーは引き際をさとり、最後の仕事のためバンコックにやってきた。4件の依頼を受け、いつものように現地での使い走りを探す。英語を話せること、金で動くこと、仕事が終わった後消してしまえることが条件だ。街を歩き、チンピラのコンに目をつけた。観光客を相手にケチな商売をしながらスリを働いている若い男だ。さっそく暗黒街の大物スラットの連絡係オームと接触し、スーツケースを受取ってきた。ジョーは予定外の傷を受け、立ち寄った薬局で耳の不自由な店員フォンに出会う。身振り手振りで説明するフォンに、思わずジョーも笑顔になる。
パン兄弟監督の2000年の作品『レイン』(日本公開は2002年)のセルフリメイク。ニコラス・ケイジが脚本にほれ込み、主演ばかりかプロデュースも買って出ました。オリジナルの『レイン』では耳の聞こえないコンが主役。彼の素質を見込んで、ジョーが殺し屋に育てあげていました。フォンは優しい美少女で、コンが彼女に初めて淡い恋心を抱く…と言うストーリー。全体に暗い色調でとてもクールな映画だった印象があります。
今度のリメイク作品は、ハリウッド映画&スター出演なので演出が派手になっていました。見所は広場と水上市場での追いつ追われつ。40代半ばとなったニコラス・ケイジは20代の頃から見ているので、ついおでこの広さ加減など余計なところに目がいってしまいます(これでもずっとファンなんです)。画面の美しさもスピード感もパワーアップしていますので、みなさまはそちらに釘付けになってください。(白)
2008/アメリカ/カラー/100分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/R-15
配給:プレシディオ
公式 HP >> http://www. bangkok-dangerous.jp/
監督・原作:喜多一郎
脚本:喜多一郎、川野浩司
撮影:ふじもと光明
出演:谷村美月(成瀬汀)、桜田通(小早川陸)、麻宮美果(杉田晴子)、山本ひかる(奈津子)、甘利はるな(小林みなみ)、星ようこ(成瀬孝子)、白井義将(成瀬孝治)、津田寛治(おまわりさん)、永山たかし、山本太郎、伊藤裕子、大杉漣
©「海の上の君は、いつも笑顔。」製作委員会
茅ヶ崎高校2年の成瀬汀はバスケットボール部の次期キャプテンを期待されているのが重荷だ。汀の兄の孝治はプロサーファーを目指しながら、事故で亡くなっていた。ひそかに思いを寄せていた同級生の陸に思わず嘘をついてしまったことから、兄の形見のサーフボードを手に一人練習に出かける。意気込みは十分だったがあっというまに海にのまれてしまい、気がついたときにはボードはなくなっていた。翌日から汀は部活をさぼり、ボードを探して湘南中を自転車で駆け巡る。
湘南の海への愛は伝わってくるし、良い役者さんたちが出演しているのですが、シンプルな話をダラダラと引き延ばして撮影してしまっていては台無しです。唯一、ワンシーンだけ出演していた山本太郎さんがうまくて感心。(梅)
2009/日本/カラー/100分/ビスタサイズ/
配給:オフィスキタ
公式 HP >> http://www.itsumo-egao.jp/
監督:廣木隆一
脚本:斎藤ひろし
プロジューサー:平野隆
音楽:大橋好規
撮影:斎藤幸一
照明:豊見山明長
美術:丸尾知行
編集:菊地純一
出演:榮倉奈々(長島千恵)、瑛太(赤須太郎)、柄本明(長島貞士)、手塚理美(加代子)、安田美沙子(花子)、津田寛治(岡田)、大杉漣(赤須敏郎)
イベントコンパニオンの千恵は、仕事先の展示場で知り合った太郎から交際を申し込まれる。乳癌と診断されていた千恵だが、悩みながらも交際を承諾する。
数ヶ月後、病状が進んでいることを知った千恵は、病気のことを告白し、太郎の前から姿を消してしまう。太郎は諦め切れず、以前から必ず行こうと約束していた屋久島で再会する。彼に「一緒に頑張ろう」と励まされ、千恵は再び二人で生きて行くことを決意するのだが、まもなく千恵の癌は再発してしまう。治ると信じて病魔と闘う千恵、見守る太郎…。
太郎は千恵の父貞士と叔母の加代子から、千恵の命は後1ヶ月と告げられる。
2008年のベストテン・トークで日本映画は暗く、泣きの映画が多いという話しになった。この作品も題名からして、そのものズバリ! 病気だし、先はわかってるし、それに本当にあった話だから泣けるし…。でも廣木隆一監督と知って観逃すことは出来ない!
映画の始まりに短い詩が映し出された。
シーンは切り替わり、二人の出会いへと続くが、あぁ、こんないい出会いだったのか、いいなぁ〜。千恵も色白で可愛い。太郎は気持ちの真っすぐな青年だ。目がキラキラ輝いている。瑛太ってこんないい俳優さんだった? 真剣に見つめる目にドキドキする。もう始まり3分で、監督の手腕にはまり、最後まで親世代の気持ちで見入ってしまった。
千恵さんは短い人生で、人の何倍かの幸せを感じて旅立っていったことがわかり、映画が終わってからも、不思議と穏やかな気持ちのままだった。是非、ペアで観てほしい。
冒頭の詩は、長島千恵さんの作。(美)
2009年/日本/カラー/129分
配給:東宝
監督・絵コンテ:石黒昇
製作:飛田秀一、伊藤叡
企画:緒方秀樹
脚本:田部俊行
音楽:小六禮次郎
キャラクターデザイン/総作画監督:飯村一夫
撮影監督山口利明
主題歌「受け入れて」一青窈
声の出演:井上和彦(八田與一)、皆川純子(徐英哲)、瀧本富士子(辻ススム)、儀武ゆう子(新垣美代)、後藤敦(辻謙吉)、一青妙(八田外代樹)
台湾の日本領時代。
南西部、嘉南平原は不毛の土地であった。総督府から技師として派遣された八田與一は、潅漑用水路を造る為、土地の一部を提供してほしいと、地元農家を根気よく説得した。日本人に対して、口答えできない様子を見ていた農民の少年英哲は、八田に敵意を持った。しかし、八田の土木にかける情熱と分け隔てない人柄に、英哲は自ら、土木技師になりたいと希望を抱く。英哲は、八田の計画に感銘を受けた元営林省辻謙吉の息子ススムと仲良くなり、お互いの夢を語り合うのだった。
日本統治下の台湾で東洋一の灌漑ダム「鳥山頭ダム」を建設した金沢出身の土木技師、八田與一。台湾では知らない人がいないほど有名である。終戦直後の台湾で、日本人の銅像が次々と壊された時代、ダムのほとりにたたずむ八田技師の像を、地元民が決死の思いで運び出し、守ったという話は有名である。毎年、今でも八田技師の命日には人々が集まり祈りをささげている。この長編アニメーションは二人の夢多き少年の友情と成長を通して、八田技師その人と業績がわかりやすく感動的に描かれている。
いかに夢をもって、努力を惜しまず、人に尽くす人生が素晴らしいか…観終わったあと、あたたかい心で映画館を出てくるに違いありません。(泉)
久しぶりに、素朴で直球勝負のアニメを観た。当時の時代状況も、解りやすく作られている。日本人に対する敵対心は、(パッテンライ! 八田が来たぞ!)で警戒するのだが、後になり、(八田さんがお出でになった!)と農民の気持ちが変化する様子が、私には嬉しかった。今も、鳥山頭(うざんとう)ダムは台湾の人々に大切にされている。そして、英哲を始めとして、工事に携り、土木技術が人の生活を向上させることの素晴らしさを、目の当たりにした人々が、子孫の代まで伝え、それが種となって、精神と技術の両方が、台湾の地に育っていったに違いないと思った。(美)
2008年/日本/90分/
配給:「パッテンライ!!」製作委員会
監督:ピーター・チャン(陳可辛)
脚本:スー・ラン、チュン・ティンナム、オーブリー・ラム(林愛華)ほか
撮影:アーサー・ウォン(黄岳泰)
アクション監督:チン・シウトン(程小東)
出演:ジェット・リー(李連杰/パン・チンユン役)、アンディ・ラウ(劉徳華/ツァオ・アルフ役)、金城武(チャン・ウーヤン役)、シュー・ジンレイ(徐静蕾/リィエン役)
清朝末期、太平天国の乱で味方をすべて失い、死体の山に身を隠して生き延びた朝廷軍の将軍パン(李連杰)。茫然自失のまま、行き倒れになったところを1人の女(徐静蕾)に助けられる。彼女によって再び命を吹き込まれたパンだが、夜が明けると彼女の姿は消えていた。
その後パンは、アルフ(劉徳華)とウーヤン(金城武)率いる盗賊団と出会う。ウーヤンはパンの腕を見込んで仲間に引き入れ、共に朝廷軍の物資を奪うことに成功し意気揚々と村へ帰る。そこでパンはあの女に再会するが、彼女・リィエンはジャンの妻だった。その夜、朝廷軍の急襲にあい、村は大損害を被る。パンは、朝廷に従軍すれば皆を堂々と養えると説得し、アルフとウーヤンもこれに同意する。3人は生死を共にする義兄弟の契り(投明状)を交わし、混迷を極める戦場へと向かう。
1973年の名作『ブラッド・ブラザーズ/刺馬』(張徹監督)のリメイクで、話の骨子は同じなのですが、全く違った作品になりました。張徹監督は個々のカンフーアクションをメインとしていて、とことんかっこよくてセクスィ〜な男たちの、愛と友情と野望の果ての悲劇を描いていました。三義兄弟を演じたのは、ティ・ロン(狄龍)、チェン・カンタイ(陳觀泰)、デビッド・チャン(姜大衛)。中でもティ・ロンの麗しきお姿に鼻血ブーブーです。
ピーター・チャン監督は、歴史的背景を重視し、よりリアルな戦闘とリアルな人間像を描きました。みないい男だけど、埃と血にまみれてお世辞にも麗しいとは言えません。ティ・ロンが演じた役をジェット・リーが演じるところからして、かなり趣が変わるのが察せられます。1度死んだも同然の男が、運命の女と出会って、再び生きようとするのですが、さらなる艱難辛苦の連続。政局を見渡せる知恵のある男だけに、一層泥沼へはまりこむさまが切ないです。ジェット・リーがこれほど素晴らしい演技を見せてくれるとは! ピーター・チャンの演出力のたまものか、まん丸顔が愛しく見えます。
ウーヤン役は、物語の語り部でもあります。デビッド・チャンはクールな観察者の目をしていました。一方、金城武には弟分の闊達さと愛嬌があり、後半は大切な兄たちの絆が壊れゆくのを感じている不安な瞳が印象深いです。彼の一途さがさらなる悲劇を呼ぶ展開は、旧作にはなかったもので、物語を一層ドラマティックにしています。
チェン・カンタイが演じたのは、粗野で愚かな寝取られ男でしたが、アンディ・ラウが演じたのは、学はないけれどまっすぐで義理人情に厚い好漢。戦場では有能でも、政治の世界には生きられない男へと変わっていました。
三人の男の運命を変える女を演じるのはシュー・ジンレイ。この映画の惜しい点は、彼女の存在感が少々薄いこと。旧作のチン・リー(井莉)は、夫より格段にいい男を自ら求める積極性がありましたが、彼女は迷いに迷います。幼い頃に金持ちの妾となるべく育てられ、ある程度の教養を身につけた女性なので、田舎の貧しい暮らしに不満があることは想像できますが、絵ににじみ出てこない。何しろ夫は粗野だけどいい男だし、パンは教養も将来性もあるけどまん丸。う〜ん、究極の選択か?
兄弟仁義だけでなく、戦いのむなしさや、陰湿で狡猾な政治の世界など、現代社会に通じる奥行きの深さを見せてくれる作品です。(梅)
第27回香港電影金像奬8部門受賞
(最優秀作品賞、最優秀監督賞:ピーター・チャン、最優秀主演男優賞:ジェット・リー、 最優秀撮影賞:アーサー・ウォン、最優秀美術賞、最優秀衣装デザイン賞、最優秀音響効果賞、最優秀視覚効果賞)
第45回台湾金馬賞3部門受賞
(最優秀作品賞、最優秀監督賞:ピーター・チャン、 最優秀視覚効果賞)
2007年/香港・中国/カラー/113分/シネマスコープサイズ/SRD
配給:ブロードメディア・スタジオ
宣伝:ドラゴン・キッカー
公式 HP >> http://www.warlords.jp/
監督・脚本:ギデオン・ラフ
出演:ゾーラ・バーチ(アレックス)、ギデオン・エメリー(ウィリー)、デレク・マグヤー(トッド)、ケイヴァン・リース(シェルドン)、グロリア・ヴォトシス(クレア)、コイナ・ルセヴァ(医師)ほか
インディアナ大学レスリング・チームは東欧諸国遠征でリトアニアに来ていた。試合を終えた女子選手のアレックスはチームメイトと無断でホテルを抜け出し夜遊びをする。集合時間に遅れてしまい、ウクライナ・オデッサ行きの列車は出た後だった。英語の通じない窓口でコーチが苦労しているとき、通りかかった女性に助けられ別の列車に乗り込むことができた。同じ列車で帰るという彼女に誘惑され、コーチは部屋に引き入られる。選手たちはゲームを始め、アレックスの恋人のトッドは罰ゲームで列車の最後尾まで走っていく。いつまでも帰ってこないトッドに不安が募るアレックスはクレアとともに探しに行くのだが。
東欧諸国を結ぶ列車の中で起きる惨劇!というので、おそるおそる試写に行きました。いきなり冒頭から解体作業シーンがありました。うわ~。あらかじめ先を見せておいて、今か今かとじらしながら恐怖を加速していきます。ホラー大好きな(美)さんに、「なぜ、どうして?と理由を考える」と教わったので、さっそく実践をば。できるだけ目を瞑らずに観ました(?)。なぜそうするのかがわかると今度はやり方が荒すぎるとか、レスリング・チームならもっと反撃してとか、いつもより冷静。とはいえ、この列車サバイバル、R-15指定ですから痛い×グロいシーンがてんこ盛りです。ご注意ください。実際にブルガリアの線路の上で本物の列車を走らせて撮影していますので、鉄男さん鉄子さんはそちらにもご注目を。(白)
2009/アメリカ/カラー/94分/ビスタサイズ/SRD/R-15
配給:ムービーアイ
公式 HP >> http://www.terror-train.jp/
監督:兼重淳
脚本:葛木英
原作:ぺんたぶ「腐女子彼女。」エンターブレイン刊
撮影:伊東伸久
主題歌:バニラビーンズ「恋のセオリー」徳間ジャパンコミュニケーションズ
出演:大東俊介(諏訪ヒナタ)、松本若菜(白崎ヨリコ)、古川雄大(瀬野コージ)、EMI(カスミ)、秦みずほ(ミルク)、落合恭子(リナ)、福山潤、日野聡ほか
©2009「腐女子彼女。」フィルムパートナーズ
大学生のヒナタはバイト先のできる先輩ヨリコに「つきあってください」と申し込む。「私、ふ、腐女子なんだけど」とオタクであることを告白するヨリコ。「フジョシだろうと、なんだろうと僕はヨリコさんが好きです!」。純朴なヒナタは「婦女子」と勘違いしていた。
やがてヒナタは「腐女子」のなんたるかを知ることになる。それはアニメやボーイズラブ(BLと略す)の世界を全力で愛するオタクな女の子! ヨリコは前の彼氏に腐女子が気持ち悪いと言われ、失恋した経験がある。同じ轍を踏むまいと、ヒナタとのデートは執事喫茶にアニメイト、コスプレショップ…とスパルタ教育に励むヨリコであった。
出演作が相次いでいる大東俊介くんが2歳年上の腐女子を彼女に持って、その世界に引きずり込まれていくお話。初めは親友にも彼女を紹介できず、かといって大事な彼女の好みは理解したい。連れまわされて目を白黒させているヒナタこと大東くんが可愛いです。メガネやスーツ、エプロン姿まで披露する大東くんに「萌え〜」必至、腐女子の夢を叶えた作品といえそうです。ヨリコ役の松本若菜さんも腐女子になりきり、コスプレショップでミニスカートの初音ミク姿に!妄想内の古川雄大くんのシャアのコスプレも必見!!(白)
2009/日本/カラー/97分/ビスタサイズ/DTSステレオ/
配給:エスピーオー
公式 HP >> http://www.fujoshi.gyao.jp/
監督・脚本:ピエール・ショレール
撮影:ジュリアン・イルシュ
音楽:フィリップ・ショレール
出演:ギョーム・ドパルデュー(ダミアン)、マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ(エンゾ)、ジュディット・シュムラ(ニーナ)、オーレ・アッティカ(ナディーヌ)、パトリック・デカン(ジャン=ジャック)ほか
©Les Films Pelleas 2008
若い母親ニーナとその息子のエンゾは仕事を探しにパリへ向かう途中、ベルサイユの森で道に迷ってしまう。はぐれたエンゾは、ダミアンという男に保護されていた。ダミアンは社会からドロップアウトして、ここで暮らしているという。一晩そこで寝たニーナはエンゾを置いて姿を消していた。幼い子供を押し付けられたダミアンは怒りのあまりエンゾに詰め寄るが、何も答えられず怯えるばかりだった。ニーナは介護施設に職を見つけ、懸命に働いていた。早く自立してエンゾを迎えに行かなければ。
ベルサイユ宮殿を囲む森の中に多くのホームレスが住んでいると初めて知りました。ニーナは子供を抱え、仕事と普通の生活を渇望していながら、寝る場所も食べるものにも欠いています。自ら選んでホームレスになったダミアンでしたが、エンゾに頼られるようになり、このままではいけないと思い始めます。互いに影響しあって3人が変わっていき、悲惨な始まりながら、ひたひたと心が満たされていく作品でした。エンゾの丸い目がずっと印象に残ります。父との確執のあるダミアンを演じたギョーム・ドパルデューは昨年10月、肺炎のため37歳という若さで急逝。これからも活躍してほしい俳優だったのに惜しくてなりません。(白)
2008/フランス/113分/ヴィスタ/ドルビーSRD/
配給:ザジフィルムズ
監督・撮影・編集:土井敏邦
製作:山上徹二郎
編集:秦 岳志
整音:小川 武
製作協力:「土井敏邦 パレスチナ記録の会」支援者の皆さん
2002年4月、イスラエル軍に包囲され砲弾の嵐が吹くヨルダン川西岸バラータ難民キャンプ。2週間にわたる侵攻作戦下のパレスチナの人々の暮らしが映し出される。7歳の男の子が、「シャロン首相の家に自爆テロをするんだ」と、あどけなく言う。10代で投獄された者も数多い。憎しみは募るが、占領の圧力をはねのけようと、読書をしたりして希望を持つことも忘れない人たち・・・。
2004年4月 テルアビブで写真展「沈黙を破る」が元イスラエル兵士たちの主催で開かれる。加害の実態を告白するものだ。占領地の入植者を守る名目で駐留した兵士たち。当初は「占領」を疑問に思うが、その気持ちを隅に押しやり、住民を追い出していく。パレスチナ人を人間と思わず、行為のすべてを正当化するのだ。ゲーム感覚にすら陥ってしまう。本当の犠牲者はパレスチナ人。けれど、兵士もまた犠牲者と言いたい。兵役中は別人だと思いたいが、自分自身何をしたかを考えてしまう。イスラエル軍は世界で最も道徳的な軍隊だと子供の頃から教え込まれてきたのは何だったのか? 学校で正義や人権を教えながら兵役に就かせる政府への疑問がわいてくる。
「沈黙を破る」のメンバーたちが国会議員の前で家宅捜査の実態を証言する。すぐさま女性議員から「それはテロリストを支援する家ですよ!」と罵声が飛ぶ。イスラエル社会は病んでいると感じるメンバーたち。復讐は暴力の連鎖、自爆テロの原因を探ることが解決の糸口だと語る。
ここで描かれている背景はパレスチナ・イスラエル問題ですが、元兵士たちの悲痛な心の叫びは、権力者の思惑で戦地に赴かざるをえなかった人たちに共通するものでしょう。 終戦から60年以上経った日本でもしかり。 『冬の兵士』(田保寿一監督/2008年)でも、アメリカのイラク帰還兵たちの生々しい思いが記録されています。加害者という犠牲者をも作る戦争の根絶を願うばかりです。(咲)
長編ドキュメンタリー/カラー・DV/130分/2009年
製作・配給:シグロ
本作は、1993年以降、土井監督が17年間に渡って撮影した数百時間に及ぶ映像をもとに、パレスチナ・イスラエル問題の根源である“占領という構造的な暴力”を描き出したシリーズ「届かぬ声—パレスチナ・占領と生きる人びと—」の4作目。
下記の前3作もポレポレ東中野にて5月23日(土)より特別上映されます。
第1部『ガザ—「和平合意」はなぜ崩壊したのか—』
第2部『侵蝕—イスラエル化されるパレスチナ—』
第3部『2つの“平和”—自爆と対話—』
公式 HP >> http://www.cine.co.jp/chinmoku/
監督・脚本:イー・トンシン
脚本:チュン・ティンナム
製作総指揮:ジャッキー・チェン、アルバート・ヤン
撮影:北信康
美術:オリバー・ウォン
アクション監督:チン・ガーロウ
音楽:ピーター・カム
出演:ジャッキー・チェン(鉄頭)、竹中直人(北野)、ダニエル・ウー(阿傑)、シュー・ジンレイ(シュシュ/結子)、加藤雅也(江口)、ファン・ビンビン(リリー)、峰岸徹(村西)、拳也(中島)、ジャック・カオ(コウ)、ポール・チョン(ドゥー)、ラム・シュ(クェイ)、チン・ガーロウ(ホンコン)、長門裕之、倉田保昭 ほか
若狭湾の海辺に上陸してきた密航者の中に鉄頭がいた。中国東北部の寒村から日本に留学したまま音信不通になった恋人のシュシュを探すためにやって来たのだ。警察の目を逃れながら新宿・大久保にある不法滞在者のアジトに辿り着き、ようやく同郷の阿傑に再会する。きつい仕事に追われて、気にかかりながらも人探しをする余裕はなかった。地下での作業中、不法滞在者の手入れがあり、皆ちりぢりに逃げ出す。追いかけた北野刑事が足を滑らせ水中に落ち、溺れそうになっているのを鉄頭は手を引いて助け出す。歌舞伎町で厨房の仕事についた鉄頭は、ある日シュシュによく似た和服姿の女性を見かける。
ジャッキー・チェンが送り出す新作はドラマ作りの名手、イー・トンシン監督・脚本による本作。構想10年、脚本に3年かけたという力作です。スーパーヒーローではなく、生きていくために罪を犯し、歌舞伎町のヤクザ社会で力を手に入れていく今までにないジャッキーがいました。これまでのジャッキー映画になかった女性とからむシーンはあるわ、R-15になった暴力シーンは“痛い”わで目を見張ります。「アクションもできる俳優でありたい」という並々ならぬ彼の決意のほども知ることができました。55歳を前に記念碑的な作品となったのではないでしょうか。
密入国して生きる場として選んだ日本が、書割のようではなく生活感を伴って描かれていたと思いました。多くの日本人共演者・スタッフと良い連携ができたのかと想像しています。不法滞在者役も香港映画ファンには嬉しい面子揃いです。(白)
2008/香港/カラー/119分/シネマスコープ/ドルビーSRD/R-15
配給:ショウゲート
宣伝:アニープラネット
公式 HP >> http://www.s-incident.com/
監督:ラジャ・ゴスネル
脚本:アナリサ・ラビアンコ&ジェフ・ブシェル
プロダクション・デザイナー:ビル・ボーズ
視覚効果スーパーバイザー:マイケル・J・マカリスター
出演:パイパー・ぺラーポ(レイチェル)、マノロ・カルドナ(サム)、ジェイミー・リー・カーティス(ヴィヴ)ほか
声の出演:ドリュー・バリモア(クロエ)、アンディ・ガルシア(デルガド)、ジョージ・ロペス(パピ)、プラント・ドミンゴ(モンテ)
ビバリーヒルズの豪邸に住むチワワのクロエは化粧品会社のオーナー、ヴィヴに溺愛されている。このお嬢様犬は庭師の愛犬パピの求愛など無視。ダイヤの首輪でお洒落してセレブ犬同士の会話を楽しんでいる毎日。ところがヴィヴが仕事で海外へ行くことになり、留守番に来たのは姪のレイチェル。ヴィヴとの約束を破り、友達と一緒にクロエも連れてメキシコ旅行へと出かけた。遊び回るレイチェルに放っておかれたクロエはホテルを抜け出したが、すぐに迷子になってしまう。おまけに窃盗団に拉致されて着いたのは闘犬場。ドーベルマンのディアブロに襲われる寸前、クロエを助け出したのはシェパードのデルガドだった。生まれて初めての逃走、空腹、野宿とクロエの波乱の生活は続く。ビバリーヒルズへ帰れるのはいつ??
世間知らずのお嬢様犬がせちがらい世間に放り出され、初めて出会う困難の数々。人間以上にものをいう(CGで口が動きますがわざとらしくありません)名犬たちが可愛いです。ラジャ・ゴスネル監督は『25年目のキス』で知られています。ドリュー・バルモアがクロエの声で出演しているのは、そのご縁でしょうか。犬好きだという監督が組んだのは『南極物語』のアニマル・トレーナー&コーディネイターのマイク・アレキサンダー。200頭を越える犬たちのアクションと表情を作品に定着させました。元気なパピ役のチワワ雑種犬は、動物保護施設にいたところを大抜擢されたというのがなんともドラマチック。愛犬家の方はぜひ、メキシコでのクロエのサバイバルを応援してください。(白)
2008/アメリカ/カラー/1時間32分/シネマスコープ/ドルビーSRD/
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www.disney.co.jp/movies/bhch/
監督・原案:紀里谷和明
プロデューサー:一瀬隆重、紀里谷和明
脚本:紀里谷和明、瀧田哲郎
撮影監督:紀里谷和明
撮影:田邉顕司
美術監督:林田裕至
音楽:松本晃彦
ビジュアルコンセプト:林田裕至
照明:牛場賢二
出演:江口洋介(石川五右衛門)、大沢たかお(霧隠才蔵)、広末涼子(浅井茶々)、ゴリ<ガレッジセール>(猿飛佐助)、要潤(石田三成)、玉山鉄二(又八)、チェ・ホンマン(我王)、中村橋之助(織田信長)、寺島進(服部半蔵)、平幹二郎(千利休)、伊武雅刀(徳川家康)、奥田瑛二(豊臣秀吉)
織田信長が明智光秀の反逆によって討たれ、その明智を討って天下を手にした豊臣秀吉の治世の下、世はようやく泰平となって大阪城下はかつてない繁栄を誇るも、貧富の差はひらき貧民層も格段に増えていた。そんな世で金持ちから金品を盗み、貧しい者たちに分け与える大泥棒・石川五右衛門は庶民のヒーローだった。豪商・紀伊国屋文左衛門の蔵に忍び込んだ夜、なぜか秀吉の右腕と言われる石田三成が紀伊国屋の屋敷へやってくる。何かを探しているらしい。ところが三成が目当てのものを、一足先に五右衛門はそれとは知らずに盗み出していた。三成は配下の霧隠才蔵を使い、何が何でも取り戻そうをする。何のへんてつもない箱に見えたが、それは秀吉による重大な陰謀の証拠をしめすものであった。
映像といい、美術・衣装といい、今までにあった時代劇とは全く違っています。良く知られた歴史上の人物を脚色し、縦横に活躍させていてゲームの世界に入ったかのような気分でした。誰かを自分のキャラクターに選んで生きるRPGにでもできそう。野性的な五右衛門の江口洋介さん、堅実に生きたい才蔵の大沢たかおさんもよかったですが、中村橋之助さんの舞の場面は空気が違いました。出演者も書ききれないほど多く、どれだけの人が関わった作品なのでしょう。もう少しじっくり観たい気もしますが、このスピード感を楽しめる若い方にはちょうど良いのかもしれません。(白)
初めはあまりにゲームCGのような映像で、かなりひきました。しかし、歴史上の人物と史実を元にしているとはいえ、細部に至るまで徹底的にイマジネーションの世界として再構築しているのがだんだん面白くなってきて、見終わると「おぉ〜、楽しいじゃない!」とかなり満足していました。アクション・シーンはカメラがぐりんぐりんまわるし、人間が「ルパン三世か!」ってくらい飛びまくるしで、リアリティなさそうなのに、人と人がぶち当たる重さや痛さがちゃんと伝わってくるのがよかったです。(梅)
2008/日本/113分/シネスコサイズ/ドルビーデジタルサラウンドEX/
配給:松竹、ワーナーブラザーズ
公式 HP >> http://www.goemonmovie.com/
1984〜91年に起こった、視覚的なバッドテイスト(悪趣味)を以て社会への不満やハリウッドの商業主義に対する嫌悪がストレートに表現された、いわば映画におけるパンク・ムーブメント「Cinema of Transgression」(破戒映画)を中心にフォーカス。
暴力・ドラッグ・性的倒錯・ブラックユーモアがスクリーンいっぱいに溢れ返るこのムーブメントの輪郭と内実を、フランスの若き女性監督アンジェリーク・ボジオが、当事者たちへのインタビューを通して明らかにしていく。
4/27(月)、28(火)、30(木)、5/1(金)
連日19:00開場/19:30開演(上映終了後にトークイベント)
【ゲスト】 | |
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4月27日(月) | 対談:地引雄一(「ストリート・キングダム」著者)×ECD(ラッパー) |
4月28日(火) | 対談:中原昌也(ミュージシャン)×ジム・オルーク(ミュージシャン) |
4月30日(木) | 解説:鈴木章浩(映画作家) |
5月1日(金) | 対談:今野裕一(「夜想 yaso」主宰)×浅井隆(UPLINK主宰) |
5/9(土)より5/22(金)まで
監督:フォン・イェン(馮艶)
音響設計:菊池信之(『サッドヴァケイション』)
中国最大規模の国家プロジェクトである三峡ダム建設。これによって長江沿岸の住民140万人が移住を余儀なくされる。ビンアイもその一人。夫と息子と娘の4人家族で、身体の弱い夫に変わり一家の大黒柱となって田畑を耕し暮らしていたが、自宅が移住計画地域だったために生活が一変する。国の保証金はわずかなもの。役人たちの言うとおりに街へと引っ越しても、田畑はなく、農業以外の技能も無い農民は暮らしていけない。周囲の人々が次々とお金をもらって移住していく中、ビンアイは早くからここを離れないと決意して、脅し、なだめ、すかしてくる役人たちに必死に抵抗する。「わたしは強情なのよ」と笑いながら。
役人たち相手に抗議し続けるビンアイのパワーに圧倒されっぱなし。きっと自分だったら早々に疲れ切って降参しているだろう。家族のため、どんなに追い詰められても諦めない強さに感嘆する。しかし、夫や子どもを気遣うさまや、娘のころの恋の話をはにかみながら話す彼女は、いたって普通の女性の表情だ。ジャ・ジャンクー(賈樟柯)監督の『長江哀歌』や、リ・イーファン(李一凡)、イェン・ユィ(鄢雨)監督の『水没の前に』など、三峡ダム建設に関連した社会変化をとらえた作品がこれまで上映されてきましたが、これはまずビンアイという人物の魅力に惹きつけられ、人間の尊厳について感じられる作品です。(梅)
山形国際ドキュメンタリー映画祭2007 アジア千波万波 小川紳介賞(グランプリ)/コミュニティシネマ賞2007
2008/中国/カラー/117分/DVカム
配給協力:コミュニティシネマ支援センター
配給:ドキュメンタリー・ドリームセンター
★アンコール上映(>> 公式サイトの劇場情報)
特別記事『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』フォン・イェン(馮艶)監督インタビューもご覧下さい。
公式 HP >> http://www.bingai.net/
監督:スティーヴ・アスキス
脚本:シャロン・ミラー
声の出演:ジョン・カビラ、比嘉久美子
ソドー島の記念日が近づいたある日、トーマスは古くて見知らぬ線路を走っていて偶然忘れられた町を発見する。そこはソドー島の歴史の原点となる町だった。トップハム・ハット卿はトーマスたちに記念日までにその街を復旧させることを命じる。発見者のトーマスはそのリーダーに任ぜられ、意気揚々としていた。トーマスの手が回らなくなる作業を助けるために新しい機関車スタンリーがやって来る。スタンリーは瞬く間にみんなの人気者になるが、トーマスは自分の仕事を取られたような気がして面白くない。そんなちょっとしたヤキモチからしたスタンリーへのイタズラが、大変な事故を引き起こしてしまう。
1990年からフジテレビの「ひらけ!ポンキッキ!」で放映され、子どもたちの大きな人気を集めた「きかんしゃトーマス」。日本のテッちゃん人口の増加に貢献したかどうかは定かではありませんが…。現在はテレビ東京系列「のりスタ1・2・3!」の中で放映されています。そんな「きかんしゃトーマス」の映画版が登場です。テレビよりもずっとスピード感があり、ソドー島の世界もぐっと広がります。機関車や車たちを通して、それぞれの個性を生かして社会に貢献すること、仲間と助け合うことの大切さをしっかりと伝えてくれる、良質の子ども向け映画です。横で大人がグーグー寝るようなこともないと思います。是非、お子さんの映画館デビューにどうぞ。(梅)
2007/イギリス/カラー/16:9/60分/ステレオ
制作:シェパートン・スタジオ
提供:ソニー・クリエイティブプロダクツ
配給:アップリンク
製作・脚本・監督:ダリオ・アルジェント
脚本:ジェイス・アンダーソン、アダム・ギーラッシュ
出演:アーシア・アルジェント、クリスティアン・ソリメーノ、ヴァレリア・カヴァッリ、ダリア・ニコロディ、市川純、ウド・キアー ほか
イタリア中部の古い教会で、工事中に墓地脇の地中深くから古い棺と遺品入れが発見される。神父は言いしれぬ不安を感じ、その遺品入れをローマの古代美術博物館館長マイケルの元へと送る。
遺品入れはマイケルの不在時に届く。研究者のサラは副館長のジゼルに誘われ、許可無く開けてしまう。そこにはかつて闇の彼方に葬られた邪悪な魔女”涙の母"を復活させる不気味な3体の彫像と、古代文字を記した赤い法衣が納められていた。封印を解かれた魔女は、僕たちにジゼルを惨殺させる。サラは辛うじて逃れるが、警察からは容疑者として疑われる。
復活した魔女“涙の母”はローマに呪いを放ち、街には犯罪が溢れる。サラは魔の手から逃れながら、自分を守る不思議な力に気づく。その正体を探るうちに、彼女は亡くなった母の秘密、そして自分と“涙の母”との因縁を知るのだった。
『サスペリア』(77)から30年。『インフェルノ』(80)を経て魔女3部作が完結します。『サスペリア』というと「決して一人では観ないで下さい」の惹き句が強烈で、子どもだったわたしでも覚えています(当然ながら観ませんでしたが)。そのまま観ることなく今にいたって、いきなり最終章を観てしまったのですが、それで感じたことは、この監督はとことんインモラルで、グロテスクな美しさが好きだってこと。その恐怖と美の世界を映像化できるなら、何だってしちゃうんじゃなかろうか。思わず「あんたも好きよねぇ〜」と言いたくなる。物語は思いっきりB級なんだけど、その映像にみなぎるおどろおどろしい空気はA級なのです。(梅)
2007/イタリア、アメリカ/カラー/98分/シネマスコープ/スーパー35mm/ドルビーデジタル5.1ch/英語
提供・配給:キングレコード
公式 HP >> http://www.suspiria3.com/
監督:チョン・ユンス(『僕の、世界の中心は、君だ。』)
原作:ホ・ヨンマン
出演:キム・ガンウ(ソン・チャン)、イム・ウォニ(オ・ポンジュ)、イ・ハナ(キム・ジンス)、チョン・ウンピョ(ク・ホソン)、キム・サンホ(ウ・ジュンゴ) ほか
韓国最高の老舗料亭「雲岩亭(ウナムジョン)」の後継者を決めるため、青年ソン・チャンと店主の孫オ・ボンジュの対決が行われていた。課題はメフグの刺身で両者とも見事なでき。美食家たちの絶賛を浴びる。ところがソン・チャンの方にあろうことか肝の毒が含まれていた。この一件でソン・チャンは料理界を去った。
5年後、ソン・チャンは故郷に戻り、祖父の世話をしながら食材販売業を営んでいる。商売は順調、平穏な日々に満足していた。そこへ知り合いのテレビ局の局長と女性プロデューサーのキム・ジンスがやってくる。彼らは今度行われる料理コンテストにソン・チャンを参加させようと説得に来たのだが、彼はまるで興味がない。ところが今や「雲岩亭」店主として料理界に君臨するオ・ボンジュが、ソン・チャンへコンテストに出場しないよう圧力をかけてくる。このことがかえってソン・チャンの闘志に火をつけ、コンテストへの参加を決意するのだった。
日本では漫画、ドラマ、映画などにグルメ・エンタテインメントと呼ばれる分野がすでに確立されておなじみですが、意外にも韓国映画ではこれが初めてなのだそうです。原作は現在も東亜日報に連載中の漫画。出てくる料理は韓国宮廷料理が主で、鮮やかな色彩が美しいです。しかし中華料理と違って強い火力で鍋を振ったりすることがないし、香港映画ではお約束のカンフーアクションとの合体といった、見た目の派手さや外連味はほとんどありません。そのかわりに牛一頭解体という大技が出てきます。韓国料理の特徴がよく現れています。
料理コンテストは予選から決勝までいくつもの段階があって、きっちりエンタメ作品のセオリーにのっとっているのですが、その中で描かれるエピソードは楽しいばかりでなく、結構ずっしりと重いテーマをも含んでいます。このあたりは韓国映画の特徴と言えるでしょう。主演のキム・ガンウは『京義線(きょんいせん)』で主役のまじめな、心の傷を抱えた地下鉄運転手を演じて印象深かったのですが、今回もとってもまじめで明るい好青年。ちょと地味だけど、地に足の着いた存在感がいい俳優です。彼以外の人物はいかにも漫画的なので、いいバランスになっています。(梅)
2007年/韓国/35mm/カラー/ビスタサイズ/115分
配給・宣伝:彩プロ
公式 HP >> http://www.shokkyaku.com/
監督:イップ・ウィンキン
武術監督:ユェン・チュンヤン
出演:サモ・ハン・キンポー(洪金寶)、ヴァネス・ウー(呉建豪)、加護亜依、チェリー・イン(應采兒)、ラム・ジーチョン(林子聡)、ティミー・ハン(洪天明)、ブルース・リャン(梁小龍)、ルイス・ファン(樊少皇)
©2008 My Way Film Co.,Ltd/Nihon Sky Way INC.
料理とカンフーの達人ホアン・ピンイー(サモ・ハン)は、ジョー(ルイス・ファン)の策略によって村を追い出され、一族の象徴である「龍頭刀」も奪われてしまう。ジョーはピンイーの兄、ピンチー(ブルース・リャン)の息子だが、父が村を去ったのはピンイーのためだと思い込み、目の敵にしていたのだ。
村を出たピンイーはチン(チェリー・イン)とイン(加護亜依)の姉妹が経営するレストランを訪ねる。彼女たちの父シェンはピンチーの師であった。そこに料理学校を卒業したばかりのケン(ヴァネス・ウー)がやってくる。学校長からシェンの教えを受けることを勧められ、やって来たのだった。しかしシェンはすでに亡くなっていた。ピンイーが今の料理長の料理を酷評したため、料理長は怒りピンイーへ対決を挑む。ピンイーはケンを助手にして、その挑戦を受けて立つ。ケンはそこでピンイーのすごさを目の当たりにし、弟子入りしようと心に決めた。負けを認めた料理長は自ら去り、ピンイーは姉妹を助けるために料理長となる。しかし、それを知ったジョーは店の経営を妨害し始める。
なんだか懐かしい気持ちにさせられました。90年代前半イケイケどんどんのころの香港娯楽映画のノリそのもの。料理にカンフーに恋に宿命にと、なんでもかんでもてんこ盛り。話しをふるだけ振ってオチは無しってのもアリアリ。突っ込みどころ満載だけど、カンフーシーンのキレはばっちりだし、アイドルたちの魅力炸裂シーンもがっちり押さえていて、楽しくなっちゃうのです。世のメタボ父さんはサモ・ハンを見て、"Yes, we can!"と叫びましょう。加護亜依さんの復活作品でもあります。北京語吹き替えのあまりのアニメ声にカクッとくるかもしれませんが、アクションシーンでは激しくぶっ飛ばされてがんばっています。それにとってもキュートに撮られていて、ファンじゃないけど「あら可愛いじゃない」と思いました。ティミー・ハンが親父サモ・ハンにぶっ飛ばされているのにも、ニヤニヤ。香港映画ファンは是非ご覧あれ。(梅)
2008/香港/カラー/90分/35mm/ビスタサイズ/SRD
配給:日本スカイウェイ
宣伝:グアパ・グアポ
公式 HP >> http://kungfuchefs.com/
監督・脚本:エミール・クストリッツァ
撮影:ミロラド・グルシーカ
音楽:エミール・クストリッツァ
出演:ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ(ツァーネ)、マリヤ・ペトロニイェヴィッチ(ヤスナ)、アレクサンダル・ベルチェック(祖父ジヴォイン)、リリャナ・ブラゴイェヴィッチ(ボサ)、ミキ・マノイロヴィッチ(マフィアのボス)、ストリボル・クストリッツァ(トプズ)ほか
セルビアの小さな山村でおじいちゃんとのんびり暮らしていた少年ツァーネ。隣人といえば教師のボサだけ。その学校も廃校が決まった。水浴び中のボサを覗いているのが見つかったある日、おじいちゃんから街へお使いを頼まれる。3つの約束があった。
その1:牛のツヴェトカを売り、聖ニコラスのイコンを買うこと。
その2:好きなお土産を買うこと。
その3:花嫁を見つけて連れてくること。
街の喧騒に目を丸くしていたツァーネは、すれ違った女子高校生ヤスナに一目ぼれ、思わず後を追いかける。
『パパは出張中』『アンダーグラウンド』などのクストリッツァ監督がドタバタコメディ風味の恋のお話を作りあげました。主人公のツァーネを演じるウロシュは、オムニバス映画『それでも生きる子どもたち』の1篇『ブルー・ジプシー』で泥棒稼業をいやいや続けている少年でした。主役に大抜擢。なんだか濃い面々がたくさん出演していますが、マフィアのボス、ミキ・マノイロヴィッチは『パパは、出張中!』からの監督とのおつきあい?で『やわらかい手』の風俗店オーナー。お爺ちゃんは『ライフ・イズ・ミラクル』の郵便配達員。そのロケ地をすっかり気に入った監督が土地を買い上げ、自身の村として映画学校や宿泊施設、レストランまで作ったとのいうのが驚きです。実の息子であるストリボル・クストリッツァ(トプズ役)も音楽、脚本も手がけますから血は争えません。なんとも賑やかなこの作品の音楽も親子で担当しています。(白)
2007/セルビア、フランス/カラー/127分/ビスタサイズ/ドルビーSRD/セルビア語
配給:デスペラード/日活
公式 HP >> http://www.weddingbell.jp/
監督:諸江亮
脚本:田中イデア、諸江亮、田中明子
原作:田中イデア(産経新聞社主催 第9回約束(プロミス)エッセー大賞 大賞受賞作品)
出演:八神蓮(黒須讃汰)、滝口幸広(久保亮)、峰えりか(天野恵)、柳家喬之助 ほか
これから楽しい大学生活が始まるとウキウキしていた久保亮は、サークルの勧誘でよりによってたった1人の落語研究会部員、黒須讃汰に見初められる。落語なんかにまったく興味のない亮を、讃汰とマネージャーの天野恵はあの手この手で強引に勧誘する。仕舞いに亮は怒り出すのだが、讃汰が落語で一瞬にして人々を笑顔にする姿を見て、次第に落語にはまり始める。
ある日、大学対抗の落語コンクールの存在を知った3人は、自分たちも出場しようとするのだが・・・
3人の若者が落語を通して絆を深め、成長していく姿を爽やかに描いています。八神蓮さんは誰もがおっと思うほどの落語の腕をもつ役なのですが、さすがにちょっとそこはハードルが高かった。相手役の滝口幸広さん、峰えりかさんとのアンサンブルがいいです。特に滝口幸広さんの声と滑舌の良さが印象的。(梅)
2009/日本/ヴィスタ/HDV/80分
配給・宣伝:モブキャスト
公式 HP >> http://aniboku.com/
監督・製作:アーロン・ウルフ
出演/共同製作:イアン・チーニー、カート・エリス
あなたは毎日、何を食べていますか?
これは、あなたの体を作っている食べ物のお話。
イアンとカートは日々食べているものに関心のある大学生だった。大学を卒業し、社会人になる前に、二人はアイオワに1エーカー(4047㎡)の農地を借り、コーンを育ててみることにした。近所の農家の人々に指導されて無事収穫の時期を迎える。彼らは自分たちの育てたコーンがどんな風にして食卓に関わっていくのか、流通過程を次々と追って行く。アメリカの食料の要であるコーンは、政府から手厚く保護された結果、過剰生産に陥っていた。二人は当時の農業政策を推し進めた元官僚へのインタビューも試みる。
アーロン・ウルフ監督とカート・エリスはいとこ同士。大型の農業機械を駆使したアメリかの大規模農業は、多くの収量を目指して遺伝子組み換えをした種子、幾種類もの農薬を使用してきました。環境破壊を憂い、解決方法を探る作品を揃えた地球環境映像祭を見たばかりだったので、この若者たちがとても気軽な感じで農業を始め、問題点を明らかにしていくのに注目しました。日本は農業を担う人たちが高齢化するばかり、食料自給率が下がるばかりです。若い人たちが安全で美味しい食べ物を生産し、労働に見合った適正な価格で流通するにはどうしたら良いのか、考えさせられました。(白)
2007/アメリカ/カラー/90分/ビスタサイズ/ステレオ/スペイン語
提供・配給:インターフィルム
配給協力:エスパース・サロウ
企画・脚本・監督:島田洋七
原作:島田洋七「佐賀のがばいばあちゃん」(徳間文庫)
出演:香山美子、高島礼子、瀬上裕輝、原田祥、森田温斗、小林綾子、島田紳助(友情出演)、東国原英夫(特別出演) ほか
昭和33年、昭広は広島で母子2人で暮らしていたが、母1人では世話しきれず、小学校1年の時に佐賀のおばあちゃんちにあずけられる。しかし、そのおばあちゃんちは超がつくほど貧乏で、食うや食わずの生活だった。それでも苦労を苦労と思わず、生きる知恵に溢れた明るく逞しいばあちゃんのもと、昭広はのびのびと成長していく。
「佐賀のがばいばあちゃん」はすでに一度映画化されていますが、島田洋七さんはどうしても自分の手で映像化したかったようです。
おばあちゃんのがばいさもさることながら、この頃の学校の先生や近所の人や、子どもたちのおおらかな優しさが心に残ります。特に大工のおじさんが、昭広がお母さんのいる広島へ行きたがっているのを知り、なけなしの金をはたいて福岡まで連れて行ってくれるエピソードにはグッと来ました。昨年来からの大不況で、先の見えない不安を抱え、経済的困窮の中にいる人が増えています。どんなに貧しくても、人への思いやりや明るさを忘れないおばあちゃんの生き方は、そんな多くの人々を励ましてくれるのではないでしょうか。
♪苦労は幸せになるための準備運動たい♪(梅)
2009年/日本/カラー/112分/16:9/DTSステレオ
制作・配給・宣伝:アジア シネマ ギルド
配給協力:九州シネマ・エンタープライズ、ジョリー・ロジャー
宣伝協力:ビーウイング
監督・脚本・製作:ジョエル・コーエン 、 イーサン・コーエン
出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルー二ー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン
政治の中枢ワシントンDCのフィットネスセンターで働くチャド。ある日、更衣室で1枚のCD−ROMを拾う。どうやらCIAの機密情報らしい。同僚のリンダを巻き込み、一攫千金を狙おうとたくらむ。CD−ROMの中味は、実は、アルコール依存症が原因でCIAを解雇された男オズボーン・コックスが腹いせに綴った回顧録。オズボーンの妻ケイティが離婚訴訟に利用しようと、こっそりコピーして弁護士に渡したものだった。ケイティの不倫相手の財務省連邦保安官ハリー・ファラーも巻き込み大騒動が始まる・・・
コーエン兄弟が、“危機にさらされている情報が、実は価値のないもの”というスパイ物を、5人の豪華キャストで描こうと思いついて作ってしまった超お馬鹿映画。出会い系サイトにはまる連邦保安官役のジョージ・クルー二ーも、美容整形に命をかけるリンダ役のフランシス・マクドーマンドも実に楽しそうに演じてます。中でも、iPod 依存症の筋肉ムキムキ男は、これってほんとにブラピ?という位、アホな野郎。今までのブラピは何だったの? と、ファンはショックを受けるかもしれないけれど、本人は演技に開眼したこと間違いないです。(咲)
2008年/アメリカ/カラー/ビスタ/DTS、ドルビーデジタル、SDDS/96分
提供:日活、ハピネット
共同配給:ギャガ・コミュニケーションズ x 日活
公式 HP >> http://burn.gyao.jp/
監督・脚本・プロデューサー:ジャ・ジャンクー
撮影:ユー・リクウァイ、ワン・ユー
音楽:半野喜弘、リン・チャン
出演:ジョアン・チェン、リュイ・リーピン 、チャオ・タオ、チェン・ジェンビン
2007年、中国四川省・成都。1956年に最先端技術を誇る軍事工場として設立された巨大国営工場「420工場」が、50年にわたる歴史に幕を閉じる。工場内のホールで、工場の跡地を土地開発企業に引き渡す式典が開かれる。跡地には、「二十四城」という古典詩に由来する名のついた高級マンションが建つことになっている。この工場で働いてきた大勢の労働者たちの胸には様々な思いがよぎる。 “大躍進政策”“文化大革命”“60年の大飢饉”“ベトナム戦争”“90年代の大量解雇”――計画経済から自由経済への過渡期を経てきた彼らが、それぞれの人生を語り始める。
冒頭、工場の金属音が響いてくる。力強いながら、どこか哀愁を感じさせる音である。実際に働いていた人々のインタビューによる“ドキュメンタリー”と、俳優たちが架空の労働者を演じて語る“フィクション”の部分が絶妙に融合して、巨大工場で働いてきた数多くの人たちの思いが集約されて伝わってくる。工場自体は郊外の工業区に移転し、彼らが職を失うわけではないが、長年働いてきた工場が姿を消すことは、思い出の場がなくなること。私自身、20年前にチベットへの旅の途中で成都を訪れたことがある。まだ高層ビルも少なく、味わい深い町並や市場が大通りの裏には広がっていたが、今やそれも姿を消したと聞いている。近代化の中で、人間的なものが失われていくような気がしてならない。そんな思いも、この作品を観ながらよぎった。(咲)
2008年カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式上映
製作:エクストリーム・ピクチャーズ、上海電影集団上海撮影所、華潤置地有限公司、バンダイビジュアル、テレビ朝日、ビターズ・エンド/オフィス北野
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
2008/中国、日本/HD→35㎜/カラー/1:1.85/ドルビーSRD/112分
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/shisen/
特別記事 『四川のうた』ジャ・ジャンクー監督来日記者もご覧下さい
『四川のうた』公開を記念して ジャ・ジャンクー監督の長編5作品に加え、劇場初登場となる短編が一挙上映されます。
【上映スケジュール】 | |
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5月23日(土) | 15:55『プラットホーム』 18:40『長江哀歌』 |
5月24日(日) | 15:55『一瞬の夢』+『河の上の愛情』 18:25『世界』 |
5月25日(月) 26日(火) |
15:55『プラットホーム』 18:40『一瞬の夢』+『河の上の愛情』 |
5月27日(水) 28日(木) |
15:55『青の稲妻』+『私たちの十年』 18:10『プラットホーム』 |
5月29日(金) | 15:55『世界』/18:25『青の稲妻』+『私たちの十年』 |
5月30日(土) | 15:55『一瞬の夢』+『河の上の愛情』 18:15『プラットホーム』 |
5月31日(日) | 15:55『青の稲妻』+『私たちの十年』 18:25『長江哀歌』 |
6月1日(月) | 15:55『世界』 18:25『青の稲妻』+『私たちの十年』 |
6月2日(火) 3日(水) |
15:55『長江哀歌』 18:25『世界』 |
6月4日(木) 5日(金) |
15:55『一瞬の夢』+『河の上の愛情』 18:25『長江哀歌』 |
監督:ミン・ギュドン
脚本:ミン・ギュドン、イ・キョンウイ、キム・ダヨン
原作:よしながふみ「西洋骨董洋菓子店」(新書館)
撮影:キム・ジュンヨン
出演:チェ・ジフン(ジニョク)、キム・ジェウク(ミン・ソヌ)、アンディー・ジレ(ジャン)、ユ・アイン(ギボム)、チェ・ジホ(スヨン)、キム・チャンワン(白髭)、オ・ミヒ(ジニョクの母)ほか
人は幸せな時に、ケーキを食べる。
ほろ苦い人生を少しでも甘くするために—。
甘いものが苦手なジニョクが洋菓子店を開くという。驚く家族に「女性客がたくさん来るから」と笑顔で説明するが…。募集に応じてやってきたパティシエ、ミン・ソヌを見てジニョクは驚く。高校生のときソヌに告白されてこっぴどく振った覚えがあったからだ。ソヌはパリで修行して天才的なパティシエとなっていた。その腕前にも関わらず、一緒に働く男性との恋愛トラブルで、一つところに長続きできなかった魔性のゲイ。しかし、ジニョクが自分を振った唯一の人間だったのを思い出し、安心して働き始めた。
骨董品店を改装し、「アンティーク」と名づけた店には、ソヌのスイーツに感激し、弟子入りしたギボム、ジニョクの幼馴染のスヨンも加わって賑やかな日々が始まった。
この原作のよしながふみの人気コミックは、すでに日本でもアニメ化、ドラマ化されています。原作の大ファンで映画化を熱望したミン・ギュドン監督が作り上げた本作は、韓国でも大ヒット、日本に逆輸入されました。
美しく個性豊かな4人の男たちには、新進の若手スターたちがキャスティングされています。辛い過去を持ちながらいつも笑顔でいるジニョクにチェ・ジフン。「魔性のゲイ」ソヌ役のキム・ジェウク、実はとてもシャイな青年なのだそうですがとても色っぽいです。彼の恋人として『アストレとセラドン』の美少年役だったアンディー・ジレが登場したのにはびっくり。スイーツをめぐるポップなミュージカルのようなシーンもありますが、ただ甘いだけではなく、少年誘拐事件がからんミステリー味も加わっています。(白)
2008/韓国/カラー/111分/スコープサイズ/ドルビーサラウンド
配給:ショウゲート 協力:エイベックス・エンタテイメント
宣伝:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.antique-movie.com/
監督:ハナ・マフマルバフ
脚本:マルズィエ・メシュキニ
出演:ニクバクト・ノルーズ(バクタイ)、アッバス・アリジョメ(アッバス)
子供たちは、大人がつくった世界で生きているー
アフガニスタンのバーミヤン。かつて歴史的遺産である巨大仏像が爆破された地。そこに母と住む少女バクタイは、隣の家のアッバスが学校の教科書を読むのを見て、自分も学校へ行きたいと思う。学校へ行くにはノートと鉛筆を用意しなくてはならないという。雑貨屋のお兄さんは全部で20ルピーだと教えてくれた。なかなか戻らないお母さんを待ちきれず、家の卵を売って20ルピーを稼ごうとするが、結局10ルピーにしかならない。やっとの思いで手に入れたノートを持ち、アッバスにくっついて学校へ行ってみると、そこは男子校で女の子のための学校は川の向こうだという。しかたなく一人で学校を探しに行くのだが、途中で悪ガキたちに通せんぼされ・・・
2007年の第8回東京フィルメックスで、原題の直訳『ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた』のタイトルで上映された作品。原題は、父モフセン・マフマルバフの著書と同名。残虐な行為を見て、石仏ですらあまりの屈辱に崩れ落ちるという象徴的なもの。映画の中でノートが侮辱を受けるのも、父の「爆弾の代わりにノートを落とせばアフガンは豊かになる」という言葉を反映させたもの。ハナにとってタイトルには大事な意味があり、日本での公開タイトルが変わったことについて、この3月に来日したハナは残念そうでした。
この映画で何より驚いたのは、タリバンごっこをしている男の子達の顔つきの怖さでした。これが演出ならハナの力は凄いし、元々このような表情で戦争ごっこに興じているとしたら、それまたアフガニスタンの現状を象徴していて怖いことだと思いました。2007年、東京フィルメックスの折に来日したハナに尋ねてみたところ、「特に指示はしてなくて、カメラの前で何々ごっごしましょ!と言うとやってくれた」のだそうです。彼らが完成した映画を観て、自分の怖い表情にどんな感想を持ったのかも知りたかったのですが、ハナは上映時に同席していなかったのでわからないとのこと。木で作った銃を向ける男の子達から逃げようとするバクタイに「死ねば自由になれる!」とアッバスが叫びます。刃向かわなければ無事に過ごせることも生活の中で大人から学んでいることとハナは語ります。
車の通らない道路で交通整理する警官や、卵を売り歩く時の大人たちとの会話などにユーモアを交えながら、アフガニスタンの厳しい現実を描いていて、映画一家マフマルバフの家風を感じます。脚本は母マルズィエ・メシュキニ、製作は兄メイサムですが、主導したのは撮影当時19歳のハナであることは紛れもありません。来日記者会見では、新聞記者たちの、ちょっと小難しい質問にも絶妙な答えを返すハナの姿にあっぱれでした。ハナ、凄いです。(咲)
モフセン・マフマルバフ監督(『カンダハール』)の次女ハナ・マフマルバフが若干19歳にして撮りあげた作品。「学校へ行って、お話を教わりたい」というシンプルにして切実な願いを叶えるために、少女バクタイはたくましく動き回ります。そのバクタイの目を通して見えてくるのは、少女の学びたい気持ちに無関心な大人たちや、タリバンごっこをして女の子をいじめたり、戦争ごっこに興じる男の子たち。それが子どもの遊びでも、彼らの真剣さを見ると、背筋が寒くなります。寓話的な語り口と、詩的で美しい映像の中に、底知れぬ痛みと切なる祈りが込められています。(梅)
2007年 第8回東京フィルメックス出品
2008年 第21回東京国際女性映画祭出品
2007年/イラン・フランス合作/ダリ語/HD->35mm/カラー/1:1.85/81分
提供:ムヴィオラ、カフェグルーヴ、クレストインターナショナル
配給:ムヴィオラ、カフェグルーヴ
宣伝:ムヴィオラ
『子供の情景』ハナ・マフマルバフ監督来日レポート もご覧下さい。
・記者会見
・ハナ・マフマルバフ、日本の同世代女性と語る
“もしもこの地に降り注いだのが爆弾でなく、書物だったなら、きっと世界は変わっていたでしょう。”
ー モフセン・マフマルバフ著
「アフガニスタンの仏像は破戒されたのではない。恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」より
映画の公開にあたり、映画の撮影地バーミヤンの子供たちに本を送るキャンペーンが実施されています。以下のバーナーを1クリックするだけで、本1冊分(2米ドル)とカウントし、映画配給元及びキャンペーン協賛各社より、子供たちのための国際NGO団体「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」へ寄付を行います。(※お一人様1クリックのみ有効です。)
詳しい情報が知りたい方はこちらのサイトをご覧下さい。
キャンペーン期間:3月18日(水)〜映画公開終了まで
公式 HP >> http://kodomo.cinemacafe.net/
監督:ダニー・ボイル
製作:クリスチャン・コルソン
原作:ヴィカス・スワラップ 『ぼくと1ルピーの神様』(ランダムハウス講談社刊)
脚本:サイモン・ボーフォイ
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
音楽:A・R・ラーマン
出演:デヴ・パテル(ジャマール・マリク)、マドゥール・ミタル(サリーム・マリク)、フリーダ・ピン(ラティカ)、アニル・カプール(プレーム・クマール)、イルファン・カーン(警部)ほか
©2008 Celador Films and Channel4 Television Corporations
運じゃなく、運命だった。
インドの人気番組「クイズ$ミリオネア」に18歳のジャマールが挑戦した。次々と難問をクリアし、誰も到達したことのない最高額賞金に近づく。番組のホストのプレーム・クマールは、このスラム育ちの少年が不正を働いたに違いない、と疑い警察に逮捕させる。たしかにジャマールは学校で勉強したこともなければ、特別な才能も持っていなかった。ジャマールはどんな手を使ったのかと拷問を受け、1つ1つの質問に関わるそれまでの生い立ちを話し始める。
『トレイン・スポッティング』『28週後…』『ミリオンズ』のダニー・ボイル監督がゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞など多数の受賞を果たした超話題作。アカデミー賞授賞式の前に日本に立ち寄り、記者会見に登場したボイル監督は、日本の「クイズミリオネア」司会者のみのもんた氏と、受賞を祈念した「カツカレー」をおいしそうに召し上がっていました。アカデミー賞最多8部門受賞はこのおかげ??
監督:一番苦労したのが、主役のジャマールのキャスティング。初めはインド各地で俳優のオーディションをして探したのですが、どの男優も筋肉をつけていて、「負け犬」っぽいこのイメージに合いませんでした。私の娘がイギリスのテレビに出ていたデヴ・パテルはどうか、といい何度か会って彼に決まりました。インドであんなに探したのに、なんとロンドンにいたんです。
ロンドンで生まれ育ったパテルをムンバイのロケハンに連れていき、早めに空気に馴染ませたという監督。エネルギーに満ちたこの街が映画に力を与えてくれたと言います。2000万ルピー(約4000万円)の最高賞金をかけた“ファイナルアンサー”を確かめに劇場へ足をお運びください。
ちなみに、イギリス発のこのクイズ番組は世界80カ国で放映されています。日本の最高賞金は1000万円ですが、イギリスでは100万ポンド(約1億3000万円)だそうです。(白)
2008/イギリス/カラー/120分/シネスコサイズ/ドルビーーデジタル
配給:GAGAコミュニケーションズ 宣伝:ギャガGシネマ
公式 HP >> http://slumdog.gyao.jp/
監督:本木克英
脚本:経塚丸雄
原作:万城目学(まきめまなぶ)「鴨川ホルモー」産業編集センター刊
撮影:江原祥二
美術:西村貴志
編集:川瀬功
振付:パパイヤ鈴木
音楽:周防義和
主題歌:Base Ball Bear 『神々LOOKS YOU』
出演:山田孝之(安倍明)、栗山千明(楠木ふみ)、濱田岳(高村幸一)、石田卓也(芦屋満、芦名星(早良京子)、斉藤祥太(三好/兄)、斉藤慶太(三好/弟)、荒川良々(菅原真)、石橋蓮司(居酒屋「べろべろばあ」店長)ほか
笑う阿呆に~ オニ来たる~!
2浪して京都大学に合格した阿部明は、目標がなくなって気の抜けた毎日を送っていた。葵祭のバイトの帰り道、三回生の菅原に「青龍会」新歓コンパに誘われる。菅原は「ふつーのサークルですよ」というばかり、何をするのかさっぱり要領を得ない。高村と二人でタダ飯にありつこうと出向いた阿部は、鼻筋の美しい早良京子に一目ぼれ、彼女と付き合いたい一心で入部を決める。阿部と高村のほかには、早良、芦屋、斉藤兄弟、それに大木凡人似のメガネ女子楠木が入部した。幾度か飲み食いの集まりを経て、祇園祭の宵山の夜、新入部員に集合がかかった。四条烏丸の大通りに集まったのは、揃いの青い着物にいつもと違う雰囲気で登場した青龍会の先輩たち。白、赤、黒の着物姿の立命館、龍谷、京都産業大の学生たちもやってきた。彼らが行う「ホルモー」の正体とは?
京都を舞台にしたこの奇妙奇天烈なストーリーは、万城目学(まきめまなぶ)の同名小説が原作。「本の雑誌」のエンターテイメント部門1位だったと聞くと、雰囲気が想像できるでしょうか?青龍会新入部員たちは半信半疑のまま、先輩たちにオニ語と指令ポーズなるものの特訓を受けます。10人の部員を確保し、代々受け継がなければならないものだそうで、これを美人やイケメンのみなさんが、原型を留めない様相でやってくれます(爆)。若手俳優たちはロケ中、ウイークリーマンションを借りての合宿状態だったとか。メンバーの仲の良さで楽しさが倍増したのかもしれません。そしてある時点から現れる式神の「オニ」たちがなんとも可愛い~、いや“きもかわ”でしょうか。京都大のキャンパスはもとより市内各地でロケ、葵祭や祇園祭の実景も組み込まれて、京都好きは必見です。なんだかよくわからなくても納得してしまう「ホルモー」の面白さを体感してください。(白)
2009/日本/カラー/113分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/
制作・配給:松竹
公式 HP >> http://www.horumo.jp/index.html
監督:ガス・ヴァン・サント
脚本/製作総指揮:ダスティン・ランス・ブラック
撮影監督:ハリス・サヴィデス、A.S.C
美術:ビル・グルーム
編集:エリオット・グレアム
衣装デザイン:ダニー・グリッカー
音楽:ダニー・エルフマン
キャスティング:フランシーン・マイスラー、C.S.A .
出演:ショーン・ペン(ハーヴィー・ミルク)、エミール・ハーシュ(クリーブ・ジョーンズ)、ジョジュ・ブローリン(ダン・ホワイト) ディエゴ・ルナ(ジャック・リラ)、アリソン・ピル(アン・クローネンバーグ)、ヴィクター・ガーバー(モスコーニ市長)、ジェームズ・フランコ(スコット・スミス)
1972年のニューヨーク。
保険業界で働くミルクは、20歳年下のスコットと出会い、恋に落ちる。2人は自由な地、サンフランシスコのカストロ地区にカメラ屋を開店。社交的なミルクの元に、同性愛者、ヒッピー、周辺の商店主や住民が集まり、たちまち情報交換の場所となった。その後、恋人のスコットの協力を得て、近隣住民の抱える問題に、政治的に深く関り「カストロ通りの市長」と呼ばれるようになる。
1973年、ミルクはサンフランシスコ市政執行委員(市会議員にちかい役職)に立候補。落選するが、4度目の挑戦でアメリカ史上初の公職につく、同性愛者となる。しかし、1978年11月27日。モスコーニ市長と共に、同僚のダン・ホワイトに射殺された。その死はゲイ・コミュニティだけではなく、社会の弱者である老人、障害を持つ人、貧しい労働者に真摯に向き合った英雄の死だった。
ハーヴィー・ミルク?どこかで聞いたことある・・・。
そうだ、2年前、キャサリン・リントン監督のドキュメンタリー『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ 』だ。あの時のLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア)の高校がハーヴィー・ミルク高校だった。彼が凶弾に死して約30年。彼の名を冠した高校ですら、今も中傷や偏見にさらされていると聞く。1970年代のアメリカで、彼が成し得たことは奇跡としか言いようがない。
この作品は要所、要所に、死を予感したミルクが遺言をテープに吹き込むシーンを入れている。そのシーンだけが<静>だが、他のほとんどの場面の<動>を圧している。ガス・ヴァン・サント監督の前作『パラノイドパーク』の線路に横たわる、真っ二つに轢き千切られた男の死体の死への直視と、ミルクの遺言吹き込みシーンの死の影の漂いが、私には二重映しになった。
もう一つ。差別の中の差別を描いている。ゲイ・コミュニティの中での差別は、メキシコ?移民のジャックと、レズビアンのアン・クローネンバーグに対するものだ。差別の言葉は短いものだが、ここの場所に来てまで、差別や蔑視された者の1人は死、もう1人はより強くなり今に至る・・・。ミルクだけでなく、登場するすべての人物が赤裸々に描かれている。(美)
2008年/アメリカ/128分/カラー/アメリカン・ビスタ/ドルビーSR/字幕翻訳:松浦美奈/PG-12
配給:ピックス
公式 HP >> http://milk-movie.jp/
監督:茂木綾子
撮影:ヴェルナー・ペンツェル
出演:石垣昭子、石垣金星 、祖納集落の皆様 他
プロデューサー:芦沢高志、相澤久子他
沖縄、八重山の西表島に住む染織家の石垣昭子さんは、夫の金星さんと共に、島の植物を活用した伝統的な染織の復興に取り組んでいる。そんな自然を生かした二人の生活が描かれる。
芭蕉の葉から繊維を採り、糸を紡ぎ、島に自生する植物で染め、その糸を織り上げる。その布には、草木染独特の風合いがある。
石垣昭子さんは、沖縄・竹富島に生まれ、女子美術大学卒業後、京都で染織家の志村ふくみさん(1990年、紬織で人間国宝に認定)に師事した後、地元に戻り、1980年に夫の金星さんと西表島に紅露(くうる)工房を開設し、染織家として活動を続けている。
石垣金星さんは、西表島に生まれ、順天堂大学を卒業後、沖縄で中学校の先生になり、その後、西表島の学校に転勤。75年まで先生をしていた。退職後、若い人が島で仕事を続けられるよう、島の自然と伝統的な技術を生かせる仕事を模索してきた。
そんな、ふたりの元に集まる人々との語らい、酒を飲み交わし、三線(さんしん)の名手でもある金星さんの音色に合わせて歌う「安里屋ユンタ」など、沖縄民謡の数々。
一方で、西表島の聖地である宇奈利崎の自然破壊の現状は、自然が怒りの声を上げていると語る石垣昭子さん。当初、題名は「島の色」だけの予定だったが、彼女は声高に言う人ではないので、「静かな声」とタイトルに足したという。
茂木綾子監督は、現在スイス在住。パートナーのヴェルナー・ペンツェルが撮影を担当している。
この作品のプロデューサーである建築家の相澤久美さんが石垣さんと出会い、物作りの真髄を聞いたことがきっかけで、茂木監督に製作を依頼し、この映像詩ができたという。
自然と共に生きる知恵と工夫、自然を大切にし、それを生かす。いかに自然を守りながら作品を作っていくかという二人の生活は、私にとって理想的な生き方をしている。草木染のシーンでは、草木がどんな色になってゆくか楽しみだった。
この映画を見て、1978年に沖縄に行き、西表島や竹富島に行った時のことを思い出した。
緑深い西表島の姿。でもその頃は、ちょうどリゾート開発が進んでいたのだろう。あちこち道路工事をしていて、工事中の所が多かった。この映画の中にも、リゾート開発されたものの、立ち行かなくなり、廃墟になったホテルの跡が出てくる。ゴミ捨て場のようになった廃墟で、「ここを元のように戻したい」と、昭子さんが言うシーンが印象的だった。きっと、このゴミ捨て場のようになった所は、ここだけではないだろう。自然を守って生きるというのは言うほど簡単ではない。それでも、ふたりの存在は希望である。お酒を飲み、金星さんの三線に合わせてみんなで歌を歌うシーンでは、私も竹富島の民宿で、同宿者たちと泡盛を飲んで、宿のおじさんの三線に合わせて沖縄民謡を歌ったことを思い出した。(暁)
2008年/日本・独・仏/75分/35mm/
配給: サイレントヴォイスLLP
公式 HP >> http://www.silentvoice.jp/movie/
シネマジャーナル75号、東京国際映画祭特集の中で紹介しています
茂木綾子監督の前作やパートナーであるヴェルナー・ペンツェルの作品も上映される。
ヴェルナー・ペンツェルは、ニコラ・ハンベルトと共に「シネ・ノマド」という映像製作ユニットを結成している。
4作品同時上映。映画館では、初日に両監督による舞台挨拶があります。
2009年4月16日(木)〜4月30日(木)
『島の色 静かな声』公開に合わせて、茂木綾子写真展『Silent Colors』も開催されます。
アダン・オハナ・ギャラリー
東京都渋谷区神山町7-8
Tel: 03-5465-7577
【通常営業時間】
月〜土:18:00−翌2:00
開場はギャラリーバーです。 美味しい食事をお楽しみ下さい。
日曜日:11:00−17:00 ギャラリーのみオープン
ジャッキー・チェン主演作『新宿インシデント』の公開を記念して、イー・トンシン(爾冬陞)監督の特集上映が行われます。日本初公開作品、劇場未公開作品を含む、計9本の上映。特に『プロテージ/偽りの絆(原題:門徒)』はファン待望の日本初上映です。
期間:4/18(土)~5/8(金)
劇場:シネマート六本木
港区六本木3-8-15 TEL:03-5413-7711
当日料金:一般・学生1300円 シニア1000円 サービスデーあり
※『プロテージ/偽りの絆』のみ 一般・学生1500円
※特集上映の半券提示で『プロテージ/偽りの絆』は1500円を1300円に割引
前売券:1回券 1100円 3回券 3000円(税込)
※『プロテージ/偽りの絆』にはお使いいただけません。
チケットぴあ 4/4(土)より販売開始(Pコード:460-781)
劇場窓口 4/6(月)より販売開始
Line up | ||
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プロテージ/偽りの絆 ※日本未公開・特別上映監督・脚本:イー・トンシン 出演:アンディ・ラウ ダニエル・ウー アニタ・ユン ルイス・クー |
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つきせぬ想い ※特別上映監督・脚本:イー・トンシン 出演:アニタ・ユン ラウ・チンワン カリーナ・ラウ |
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フル・スロットル-烈火戦車- ※まもなく権利切れ監督・脚本:イー・トンシン 出演:アンディ・ラウ ジジ・リョン チン・ガーロッ デイビッド・ウー
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夢翔る人/色情男女監督・脚本:イー・トンシン ロー・チーリョン 出演:レスリー・チャン スー・チー カレン・モク |
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真心話 ※特別上映監督・脚本:イー・トンシン 出演:ピーター・ホー ファン・フォン チン・ガーロッ 1999年金像奨 『真心話』でノミネート 左:爾冬陞監督 中:方中信 右:何潤東 |
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忘れえぬ想い監督・脚本:イー・トンシン 出演:セシリア・チャン ラウ・チンワン ルイス・クー 原島大地 |
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ワンナイト イン モンコック 旺角黒夜監督・脚本:イー・トンシン 出演:セシリア・チャン ダニエル・ウー アレックス・フォン チン・ガーロッ |
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早熟監督・脚本:イー・トンシン 出演:ジェイシー・チャン フィオナ・シッ アンソニー・ウォン |
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ぼくの最後の恋人 ※劇場未公開作品監督・脚本:イー・トンシン 出演:ミリアム・ヨン ダニエル・ウー アレックス・フォン テレンス・イン |
※特別上映作品は、本映画祭に際し権利を取得したもので、本映画祭に限定した上映となります。
※『プロテージ/偽りの絆』はDVD発売予定(時期未定)。劇場公開はございません。
シネマート塾 4/29(祝)講師:水田菜穂(香港カルチャーライター・字幕翻訳家)
『真心話』ピーター・ホーサイン入り香港版ポスター
『真心話』+もう1本ご鑑賞の方が対象 ※詳細は劇場まで
公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/theater/roppongi/hong_kong02/
監督・脚本・編集:ポール・ワーグナー
出演:ダドゥン、ジャンバ・ケルサン、リチャード・チャン、テイジェ・シルバーマン
1979年、兄妹のドルジェとドルカ、そして従妹のペマがのどかに遊んでいたチベットの村を警官たちが襲い、祖父たちが殺される。それから18年経った1998年の首都ラサ。兄ドルジェが酒に溺れる日々を過ごす傍ら、妹ドルカは中国人青年の恋人の助けを得て歌手デビューを控えていた。一方、僧院で出家生活を送っていた従妹のペマは、当局によってダライ・ラマを慕うすべての行為が禁止されたことへの怒りを表明したことで投獄されてしまう。拷問を受け瀕死の状態で解放されたペマが、ドルジェとドルカの家に運び込まれる。兄妹は、アメリカ人旅行者のエミーのビデオカメラに、息絶え絶えのペマの言葉と姿を収めてもらって、チベットの現実を世界に知らせようと思い立つが・・・
タイトルになっている「風の馬」とは、仏宝を乗せた馬のことで、「ルンタ」と呼ばれています。ルンタは、峠などに祭られている「タルチョ」という五色の旗や、紙などに印刷されているもの。自由への祈りや希望を託すものだそうです。十数年前、インド北部のロータン峠を訪れた時のこと、小雪の舞う中、一人のチベット族の男性がピンク色の10センチ四方程のたくさんの紙片を故郷チベットの方に向けて高らかに撒いていました。いつか故郷に帰りたい・・・そんな思いが背中から伝わってくる切ない光景でした。彼が撒いた紙片の一枚を拾って帰ってきたのですが、それに馬の絵が描いてあったのかどうかは思い出せません。近くのマナーリの町の質素なチベット寺には、故郷から持ってきた経典が大事に保管されていました。長さ1m程もある大きな経典で、山間の道を命からがら逃げる時に持ってくるのは大変だったことと涙の出る思いでした。20年前に、ラサを訪れたことがあります。徐々に漢民族が入ってきているのを感じましたが、まだまだ表向きはチベットの趣の漂う町でした。チベット騒乱のニュースで見る町並からは、漢民族化が進んでいることを感じさせられます。政治的なことはわかりませんが、故郷を捨てざるを得なかった人たちが大勢いる事実は変えられません。この映画は、そんなチベットの人たちのたどった物語の一つ。中国の一般庶民にこそ観て欲しい映画です。(咲)
1998年/アメリカ/97分/video/カラー/1:1.85/チベット語・中国語・英語
配給:アップリンク
チベット僧パルデン・ギャツォの苦悩の人生を描いた『雪の下の炎』と同時公開
監督:楽 真琴
出演:パルデン・ギャツォ、ダライ・ラマ14世、他
チベットに人権など存在しません。私がその生き証人です。
チベット僧パルデン・ギャツォ。彼が28歳だった1959年、中国軍の侵攻に対してチベット民族が蜂起して行った平和的なデモに参加した罪で投獄される。刑務所で23年、労働改造収容所と拘置所で10年間を過ごし、1992年に釈放された時には、61歳になっていた。その後、20日間かけてヒマラヤを越えてインドに亡命し、ダライ・ラマ法王のいるダラムサラに辿り着く。1996年、サンフランシスコで開催された第一回チベタン・フリーダム・コンサートでは、ビョーク、オノ・ヨーコ等と並んで平和を訴える。2006年トリノ冬季オリンピックでは、2008年のオリンピック開催地が中国に決まったことに対し、ハンストを行う。チベット亡命政府からは慎むように言われるが、非業の死を遂げたチベットの人たちのことを思うと自分を押さえられないという。
ニューヨーク在住の日本人女性ドキュメンタリー作家、楽真琴(ささまこと)。孤独で厳しいNY生活で落ち込んでいた彼女は、パルデンの自叙伝に出会い救われたという。人生の半分の自由を奪われ、過酷な拷問を受けた過去を持ちながら、優しく微笑むことのできるパルデンのことを、もっと知りたい・・・ 監督が描きたかったのは、チベット問題というよりも、苦悩に満ちた中で放つ人間の持つ可能性だと感じた。パルデンの胸に宿る祖母の「希望だけは捨ててはいけない」という言葉は、そのまま私の心にも刻みたいと思った。(咲)
2008年/アメリカ・日本/75分/video/カラー・白黒/4:3/チベット語・英語・イタリア語
配給:アップリンク
『風の馬』と同時公開
特別記事 『雪の下の炎』楽真琴(ささ まこと)監督インタビューもご覧下さい。
監督・脚本:ソウル・ディブ
製作:マイケル・クーン
撮影:ギュラ・パドス
編集:マサヒロ・ヒラクボ
音楽:レイチェル・ポートマン
プロダクションデザイン:マイケル・カーリン
衣装デザイン:マイケル・オコナー
出演:キーラ・ナイトレイ(ジョージアナ)、レイフ・ファインズ(デヴォンジャー公爵)、シャーロット・ランプリング(レディ・スペンサー)、ドミニク・クーパー(チャールズ・グレイ)、ヘイリー・アトウェル(レディ・エリザベス・フォスター)、サイモン・マクバーニー(チャールズ・ジェームズ・フォックス)エイダン・マクアードル(リチャード・シェリダン)ほか
18世紀にも、スキャンダル。
18世紀後半のイギリス。スペンサー家の娘ジョージアナはデヴォンシャー公爵へ嫁ぐことが決まった。17歳の彼女は結婚に大きな期待を寄せるが、年の離れた夫が彼女に望むことは、公爵家の跡継ぎを生むこと。男児だけを待ち、愛人の産んだ娘にもジョージアナの産んだ娘たちにも関心を示さない。最も裕福な貴族夫人として、美しく聡明なジョージアナはロンドン中の注目の的となるが、夫との結婚生活は淋しいものだった。エリザベス・フォスターに出会ったジョージアナは意気投合し、夫と別居中の彼女に同情し屋敷に住まわせる。やがてその友情にひびを入れたのはデヴォンシャー公爵だった。
華やかな暮らしの奥にはこんな生活があった……と、世界中に祝福されて結婚した故ダイアナ妃を思い起こさせる作品です。スペンサー家の女性として二人の不思議な因縁を感じます。すばらしいロケーションと美術、マリー・アントワネットとも知己であったというジョージアナの衣装やヘアスタイルは一見の価値あり。こういう境遇に万が一にもおちることはありませんが、幸せということが何かを考えてしまう作品です。(白)
2008/イギリス=イタリア=フランス/カラー/110分/スコープサイズ/DTS,SRD,SDDS/
配給:パラマウント
公式 HP >> http://koushakufujin-movie.jp/
監督:ハラルド・ズワルト
脚本:スコット・ノイスタッター、マイケル・H・ウェバー
撮影:デニス・クロッサン
音楽:クリストフ・ベック
出演:スティーヴ・マーティン(クルーゾー警部)、ジャン・レノ(ポントン)、エミリー・モーティマー(ニコル)、アルフレッド・モリナ(ランダル・ペパレッジ)、アンディ・ガルシア(ブランカレオーネ)、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン(ソニア)、ユキ・マツザキ(ケンジ)、リリー・トムリン(ベレンジャー)、ジョン・クリーズ(ドレフュス)ほか
世界各地の美術館で貴重な所蔵品が次々と盗まれ、「トルネード参上」というカードが残されていた。トルネードは10年に渡って数億円もの美術品を盗んだ後ぷっつりと活動を停止していたのだ。次は何が狙われるのか? 各国精鋭の捜査官がドリームチームを結成、トルネード逮捕にあたることになった。フランス代表は前回の功績により、クルーゾー警部! しかもドリームチームの責任者に抜擢される。そんなおりフランスの至宝「ピンクパンサー」も盗まれてしまう。イギリスからペパリッジ、イタリアのブランカレオーネ、日本からケンジ・マツド、そしてトルネードを研究する美女ソニアが結集。ポントンの心配をよそにクルーゾーは意気盛ん。ひそかに思いを寄せる美人秘書のニコルを連れて、ドリームチームメンバーと捜査を開始するのであった。
ピーター・セラーズの当たり役だったクルーゾー警部をスティーヴ・マーティンが引き継いでの2作目。クルーゾーの行く先々でモノは壊れ、珍騒動が勃発。セクハラ、差別発言も頻発と迷惑このうえない男です。今回は名コメディエンヌのリリー・トムリンがクルーゾーの教育係として登場。軽妙なやりとりに笑わされること必至。
いまどきの高層ビルも携帯電話も登場せず、どこか懐かしい雰囲気の背景にも注目してください。クルーゾーの衣装は普通と違うバランスで作られているそうで、それが彼のとんちんかんなおかしさをかもし出すのに一役かっているようです。表情筋でも笑わせるMr.ビーンと違ってクルーゾーはかなりスマートですが、やっぱりどこかずれていてお騒がせな彼をスティーヴ・マーティンが演じて親近感を持たせます。長いシリーズとなるでしょうか?(白)
2009/アメリカ/カラー/1時間31分/ビスタサイズ/SDDS,ドルビーデジタル、ドルビーSR
配給:ソニー・ピクチャーズエンターテイメント
企画・脚本・監督:すずきじゅんいち
音楽:喜多郎エンドミュージック:マイクシノダ(リンキンパーク)
出演:アーチー ミヤタケ、ダニエル イノウエ、ジョージ タケイ、渡部昇一、細江英公、ジミー サコダ、スティーブン オカザキ他
1941年12月8日、真珠湾攻撃。その日、ロサンゼルスのリトル東京で開かれていたトヤマ夫妻の結婚披露宴で東洋宮武は写真を撮っていた。披露宴半ばで、FBIに数人が逮捕される。その後、アメリカ政府は在米の日本人と日系人を強制的に収容所に押し込める。カメラの持参は禁じられたが、隠し持っていったレンズで手製のカメラを作り、東洋は収容所での生活を撮り続けた。本作は、東洋の残した500枚の写真を軸に、東洋と親交のあった20世紀を代表する写真家アンセル・アダムスとエドワード・ウェストンの作品と共に綴った、日系人の味わった戦争の時代の証言である。
資産を二束三文で処分し、収容所に行くしかなかった人たち。対日感情が悪くなったため、暴徒から守るという言い分もあったと言いますが、同じ敵国ドイツ系やイタリア系の在米の人たちは強制収容されておらず、明らかな人種差別。やがて実施されるアメリカ政府への忠誠登録。率先して忠誠を誓い米軍に志願する者がいる一方で、反米感情をつのらせ忠誠を拒否する者もいて、日系社会は分断されます。それでも、監視塔と有刺鉄線のフェンスに囲まれた生活の断片には笑顔を忘れない日本人の姿が写っています。その時その時の人々の思いが甦るような写真の数々に、日本人と日系人の強制収容の歴史を忘れさせてはならないという東洋の意志を感じさせられました。(咲)
2008年/日米合作/カラー&BW/98分
Toyo's Camera フィルムパートナーズ作品
[UTB、フイルムヴォイス、東北新社、米国日本ハム]
配給・宣伝:フイルムヴォイス
後援:産經新聞社
公式 HP >> http://www.toyoscamera.com/
監督・脚本:けんもち聰
撮影:猪本雅三
音楽:渡辺善太郎
美術:野口隆二
主題歌:「虹の向こう側」ユンナ(SISTUS RECORDS)
出演:市川染五郎(松元)、ユンナ(チェ・ソラ)、ヤン・ジヌ(イ・ヒョンジュン先輩)、チョン・ミソン(ソラの母)、大和田美帆(伊坂美奈子)、中村俊太(大村)、竹中直人(神藤光司)ほか
大丈夫。幸せはすぐそばにある−
ソウルの女子高校生、チェ・ソラの憧れていたヒョンジュン先輩が日本に留学することになった。「ビデオレターを交換しよう」と先輩はお古のビデオカメラをプレゼントしてくれた。再婚する母親との暮らしに居心地の悪い想いのソラは、先輩を追って日本に行くことを夢見ている。翌年、同じ長野の大学に留学が決まり、到着して一番に先輩のアパートを訪ねるが、入れ違いに帰国してしまっていた。片思いが実らず気落ちしたソラは、せっかく入った映像科の勉強にもあまり身が入らない。しかし、居眠りばかりしている用務員の松元が、ピザや新聞の配達もしているのを知り、課題の「興味の行方」の被写体にしようと決める。
日本映画エンジェル大賞受賞作品。けんもち聡監督の長編3作目。主演の留学生ソラを演じるユンナは韓国ポップス界の若手。松元を演じる市川染五郎は、歌舞伎のみならず、演劇、映画にと広く活躍しています。この作品では借金に追われ、一日中働く生活の中で拾い集めたガラスびんを心のよりどころにしている「おじさん」役。どこかとぼけていて不器用なバツイチ男を品よく暖かく見せています。ダンボール箱の色とりどりのガラスびんが、宝物のように光るシーンがとても綺麗でした。(白)
2009/日本/カラー/105分/ヨーロッパビスタ/ドルビーSR
制作・配給:ディーライツ
宣伝協力:リリオ
公式 HP >> http://www.nichiyoubini.com/
特別記事 『今度の日曜日に』けんもち聡(さとき)監督インタビューもご覧下さい。
監督・脚本:ゴンサロ・アリホン
撮影:セザール・シャローン
編集:クラウディオ・ヒューズ
美術:ダニエル・フェルナンデス
音楽:フォロレンシア・ディ・コンチリオ
生還者:ナンド・バラード、ロベルト・カネッサ、エドゥアルド・ストラウチ、アドルフォ・ストラウチ、ダニエル・フェルナンデス、グスタボ・セルビーノ、カルトリス・パエス、アントニオ・ビシンテン、パンチョ・デルガード、ホセ‐ルイ・インシアルテ、ハビエル・メトール、ペドロ・アルゴルタ、ロイ・アルレー、モンチョ・サベージャ、ボビー・フランソワ、アルバーロ・マンヒーノ
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1972年10月12日、ウルグアイ空軍の軍用飛行機が45名の人々を乗せて、モンテビデオからサンチアゴに向けて飛び立った。ラグビーチームが親善試合出場のためチャーターし、若者たちの家族や友人も週末を過ごそうと同乗していた。しかしアンデス山脈上空の悪天候によりメンドーサで1泊、天気の回復を待って再び飛び立った。15:30サンチアゴの管制塔に位置と高度を連絡したのち、管制官からの通信にこたえはなく行方を絶ってしまった。大規模な捜索が続けられたが、大雪の山で白い機体を探すのは困難をきわめた。乗員乗客生存の見込みはないものと、10日後捜索は打ち切られる。
実際に起こった悲惨な飛行機事故のドキュメンタリーです。監督はモンテビデオ出身で、事故に遭った生還者たちの友人です。事故の前後のようすを俳優によるモノクロの映像で再現し、当事者たちのインタビューをカラーで多く取り入れて構成しています。事故から72日後に救出された16人の「奇跡の生還者」のニュースをよく覚えています。35年後、生還者と遺族たちが事故現場を訪れて肩を組み、鎮魂の祈りを捧げている姿に心がしんとしました。(白)
30年以上経ったとはいえ、最も大きな決断をしたときのことを話す表情から、今なお彼らの心がずっしりとその重みを感じていることが伝わってきます。そして生き残った人々が自分の子どもや遺族たちと語らう姿を見ると、どんなことがあっても生き抜くことこそが大切なのだと、それこそが亡くなった人たちの供養になるのだと思います。彼らが奇跡の生還を果たしたのは、1972年の12月23日で、”クリスマスの奇跡”と呼ばれたそうです。(梅)
*2008年 東京国際映画祭 特別招待作品
2007/フランス/カラー、モノクロ/113分/ビスタサイズ/ステレオ/スペイン語
配給:熱帯美術館、グアパ・グアポ
★2009年4月11日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式 HP >> http://www.seikansha.jp/
監督・共同脚本:木村祐一
脚本:向井康介 井土紀州
原案:小笠原和彦 山上徹二郎
出演:倍賞美津子(佐田かげ子)、青木崇高(哲也)、板倉俊之(大津シンゴ)、木村祐一、西方凌(新人)、三浦誠己、宇梶剛士、村上淳、段田安則(戸浦)、泉谷しげる(和尚)、中田ボタン、ハイヒールリンゴ、板尾創路、キムラ緑子、安藤玉恵、橋本拓弥、加藤虎ノ介、遠藤憲一
作るのはニセ札やない、本物や。
昭和20年代、新千円札が発行されたころの小さな山村が舞台。誰にも慕われる小学校教頭のかげ子のもとに教え子だったシンゴが訪れる。紙すきが盛んなこの村の技術を使ってニセ札を作ろうというのだ。清廉潔白なかげ子はとんでもない、と追い返すが、村の名士で元陸軍大佐の戸浦もやってくる。戦争中に日本軍がニセ札を作っていたことを引き合いに出し「誰が死にます? 誰が損します?」という。戦後の教育の混乱や物資の不足、村の貧しさに胸を痛めていたかげ子もついに腹をくくった。ニセ札作りのメンバーが揃い、シンゴとかげ子は資金調達に走り回る。
戦後実際にあったニセ札事件をヒントにオリジナルのストーリーを加え、金に翻弄される人間の哀しさ、おかしさを描いた作品。多彩・多才な仕事ぶりで知られるキム兄こと木村祐一監督が送り出す初の長編です。この物語の柱となるかげ子役の倍賞美津子さんは、木村監督が熱烈ラブコールで実現したキャスト。母性あふれる女性と法廷部分のきりりとした教育者としての顔を演じてさすがです。監督自身もキャストが決まらなかったので、と写真屋さん役で出演。指示が的確で撮るのが早い、と俳優諸氏にも歓迎されたようです。(白)
矛盾だらけの世の中で、自分なりの筋を一本通すかげ子の姿が強く印象に残りました。倍賞美津子さんは、すっと立ってまっすぐ見つめるだけで、腹をくくった女の強さを感じさせてくれます。(梅)
2009/日本/カラー/94分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/
配給・宣伝:ビターズ・エンド
宣伝:中目黒製作所
公式 HP >> http://www.cinemacafe.net/official/nisesatsu/
特別記事 『ニセ札』木村祐一監督インタビューもご覧下さい。
監督:ヘクトール・バベンコ(『蜘蛛女のキス』『黄昏に燃えて』)
原作:アラン・パウルス(『ブエノスアイレスの夜』共同脚本)
脚本:ヘクトール・バベンコ、マルタ・ゴエス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、アナリア・コウセイロ、モロ・アンギレリ、アナ・セレンターノ、マルタ・ルボス
リミニとソフィアは幼いころからの恋人同士で、そのまま結婚して12年目を迎えたが、とうとう別れを決めた。リミニは次々に女性たちと恋に落ち、ソフィアと距離を置こうとするが、ソフィアはリミニを忘れられず、次第に精神のバランスを崩して、一層彼に固執していく。そんなソフィアを疎ましく思いながらも、長すぎる過去を引きずり、繋がりを断ち切れずにいるリミニ。そんな2人のたどり着く先は・・・
あまりに長く一緒にいたために、お互いに精神的に自立できない男女を描いているのですが、男の方がこれでもかってくらいヘタレです。天下のラテン系色男ガエル・ガルシア・ベルナルが演じているのですが、ちょっと飛び蹴り入れたくなります。そのため女の方がみせる病的な執着心に「なんだってこんな男に」と思ってしまうのです。それが愛の不思議ではあるのですが…。それにしてもむかつく男女だ(笑)。(梅)
2007トロント映画祭巨匠部門出品作品
2007年/アルゼンチン・ブラジル/カラー/114分/35mm/ドルビーSRD/スペイン語
配給・宣伝:アット エンタテインメント
©2007 K&S Films S.A./ HB Films Ltda.
公式 HP >> http://www.gael.jp/
監督:呉宇森(ジョン・ウー)
アクション監督:元奎(コリー・ユン)
音楽:岩代太郎
出演:梁朝偉(トニー・レオン)、金城武、林志玲(リン・チーリン)、張豐毅(チャン・フォンイー)、胡軍(フー・ジュン)、張震(チャン・チェン)、趙薇(ヴィッキー・チャオ)、中村獅童、佟大為(トン・ダーウェイ) ほか
赤壁の戦いが今、始まる
力vs知恵と勇気の戦い 女性たちの活躍
2000隻の戦艦と80万の兵士で攻撃を仕掛ける曹操軍。
対する劉備と孫権の連合軍は200隻の戦艦と5万の兵士。圧倒的な数の差。
こんな中、知恵と勇気で起死回生の策を練る連合軍。鍵を握るのは女性たち。
巨大な軍隊を率いた曹操(チャン・フォンイー)は、赤壁の戦いに備えて兵の士気を高めるため、蹴鞠の大会を催した。最も活躍した孫叔材(トン・ダーウェイ)は、曹操から昇進を命じられたが、彼の活躍に力を貸したのは一人の兵士だった。試合中に孫叔材を手助けしたその兵士は、なんと男装して潜入していた孫権の妹・尚香(ヴィッキー・チャオ)だった。尚香は敵陣の動向を探っていたのだが、何度かバレそうになる。そのたびに危ういところを救ってくれたのは孫叔材だった。尚香は、曹操軍に疫病が蔓延していると、伝書鳩を飛ばし孔明(金城武)に伝えるが、その後、曹操は戦慄の奇策を思いつく。疫病で死んだ兵士たちの死体を船に積み、対岸の連合軍へと流したのだった。連合軍にも疫病が蔓延し、劉備は兵と民のために、撤退してしまう。しかし、孔明は約束を守って、孫権軍とともに戦うためただひとり残った。
劉備軍が去った後、充分な数の矢がなく、責を問われた孔明は、三日で10万本の矢を調達すると宣言した。一方、周瑜(トニー・レオン)も、水上戦に長けた曹操軍の武将、蔡瑁と張允を排除してみせると宣言する。周瑜のもとに幼馴染の蒋幹がやってきた。今は、曹操に仕える蒋幹は、旧交をあたためるふりをしながら周瑜の動向を探っていた。そんな中、蔡瑁と張允が、周瑜と繋がっていることを示す手紙を見付け、曹操のもとへ急ぎ持ち帰るが、それは周瑜が用意した偽の手紙だった。
孔明は濃霧の中、わらで覆った船で敵陣へと侵入し、視界不良の中、弓矢の一斉攻撃を受け、まんまと敵の矢を手に入れた。敵が大挙して押し寄せてきたと勘違いした曹操軍の蔡瑁と張允は、大量の矢を奪われてしまったとは露知らず、意気揚々と陣営に引き上げるが、蒋幹が持ち帰った手紙によって濡れ衣を着せられ、処刑されてしまった。
尚香が無事に帰還した。尚香が作った曹操軍2000隻もの戦艦配置図を見て、孫権は勝利は絶望的と思ったが、周瑜は戦艦と戦艦の間に行き来ができる板があることを知り、ある秘策を思いつく。しかし、それを実行するには風向きや、天候条件が都合良く重ならなくてはならなかった。そこで孔明は、自軍に有利な「東南の風」が吹く日を探る。
一方、自分が戦争の一因であることを知った小喬は、和平に向けて大胆な行動を起こす。
戦争を止めるため、船に乗って曹操のもとへと向かった。
圧倒的な戦力差の前に、勝ち目無しの連合軍。戦意を喪失し、撤退してしまった劉備軍は戻ってくるのか? 信頼は取り戻せるのか? その決戦のとき、どんな作戦を仕掛けるのか。
結果は見てのお楽しみ。
実は、私は三国志が嫌い。それは、日本社会の中では、人を出し抜いて成功するためのお手本みたいにされてきたから。企業が生き残るための論理とか、会社の中で人を蹴落として出世する方法みたいなものに利用されてきた経緯があるからでした。だから、三国志を読んでみようとか、見てみようと思ったことはありませんでした。
今回、ジョン・ウーが監督するということと、魅力的な配役につられて観た『レッドクリフ1,2』で、本来の「三国志」の中で生きていた人たちの姿に興味を持ちました。なので、登場人物の名前は全然知らなかったのですが、この作品を観て知りました。
『レッドクリフ1』では、胡軍(フー・ジュン)演じる趙雲がお気に入り。劉備の子供を助け出すシーンは、それこそ、いろいろな分野で描かれてきたそうです。日本でいうと忠臣蔵みたいなものかな? 胡軍が、こんなにもアクションを演じられる俳優とは知りませんでした。
それで趙雲を描いた『三国志』も楽しみにしていました。こちらは、劉徳華(アンディ・ラウ)が趙雲を演じていましたが、胡軍とはまた違う趙雲像に興味を持ちました。
そして、今回の『レッドクリフ2』では、何と言っても女性陣です。特に趙薇(ヴィッキー・チャオ)演じる男勝りの尚香の行動は、どうなることかとひやひやしつつ興味深かったです。趙薇は、元気で明るい天真爛漫な人物を演じたら、右に出る人はいないなと思いました。今後は、男装の麗人もはまりキャラになるかもしれませんね。
そして、『レッドクリフ1,2』を通じて、気になったのは曹操。曹操は悪役として描かれていることが多いけど、実際はどうだったのかな?と思った私でした。演じた張豊穀(チャン・フォンイー)は、デビュー作の『駱駝の祥子』(1982年)の時から好きですが、その頃から較べると、すごく貫禄が出てきました。ちなみに『レッドクリフ1』の試写のとき、観に行ってみようと思ったのは、張豊穀が出演している!と思ったからでした。(暁)
2008年/アメリカ・中国・日本・台湾・韓国/35mm/144分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル/翻訳:鈴木真理子/字幕:戸田奈津子/監修:渡邉義浩(大東文化大学)
配給:東宝東和、エイベックス・エンタテインメント
宣伝:KICCORIT、P2
公式 HP >> http://www.redcliff.jp/
★4月10日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国超拡大ロードショー本誌74号に『レッドクリフ PartI』の監督、出演者らの記者会見記事が掲載されています。
監督:三宅流
出演:新井達矢(面打)、中所宜夫(観世流能楽師)、津村禮次郎(観世流能楽師)
能楽に欠かせない能面。新井達矢は6歳から面を彫り始め、史上最年少22歳で文部科学大臣奨励賞を受賞した天才能面師。三宅監督は、知り合いの能楽師の楽屋で、まだ中学生のような青年と、その彼の作った能面に出会って驚く。折しも「鞍馬天狗」公演の為に、新井が面を彫ると知った監督は、その工程をカメラに収めることを決意する。
四角い木の塊から黙々と面を掘り出していく姿が静かに映し出される。睨み付けるような面が出来上がり、舞台で能楽師によって命が吹き込まれる。
日本の伝統芸能である能楽を支える青年の姿には、そんな気負いなど感じられません。好きなことを無心にやり続けているだけ。語りも音楽も説明も拝して、ひたすら彫る姿を追った映像に圧倒されました。(咲)
2006年/DV/60分
4月3日DVD発売
◆上映後、関係者、豪華ゲストによるトークイベント開催
4/4(土)新井達矢(面打)×中所宜夫(能楽師)
4/5(日)石田尚志(映像作家) ※石田作品も上映予定
4/6(月)金子雅和(映像作家)特別併映ドキュメンタリー『石川九楊 源氏物語五十五帖展』
4/9(木)新井達矢(面打)×津村禮次郎(能楽師)
4/10(金)種子田郷(音楽家)
4/14(火)猿山修(デザイナー)
4/16(木)新井達矢(面打)×林望(作家・書誌学者)
4/17(金)高橋世織(東工大教授・文芸評論家)
各回、三宅監督も参加
公式 HP >> http://www.nagaru-miyake.com/
監督・脚本:ブライアン・ベルチノ
撮影:ピーター・ソーヴァ ASC
美術:ジョン・D・クレッチマー
出演:リヴ・タイラー(クリスティン・マッケイ)、スコット・スピードマン(ジェームズ・ホイト)、ジェマ・ウォード(ドール・フェエイス)、グレン・ハワートン(マイク)、キップ・ウィークス(マスクの男)ほか
(C)2008 A Rogue Pictures
友人の結婚式に揃って出席したクリスティンとジェームズ、帰り際にプロポーズしたものの、クリスティンの返事は予想外のものだった。気まずい雰囲気のまま深夜ジェームズの別荘に帰ると、ジェームズと親友のマイクが用意した祝いのテーブルがあった。4時というのにドアをノックする音。暗がりには髪の長い少女がいて「タマラはいますか?」と尋ね、「いない」と答えると去って行く。煙草を買いにジェームズが外出し、クリスティンが一人残されたところへもう一度少女がやってくる。ドア越しに返事をするが、叩く音は止まず次第に激しくなるのだった。マスクをかぶった人影を家の中に見て、恐怖に押しつぶされるクリスティンはジェームズに必死に電話をかける。
2005年アメリカで実際に起こり、今も完全に解明されていない事件を元にしているそうです。家の中に正体のわからない人間が入り込み、追いかけられるというのはフィクションといえない怖さがあります。しかも相手は人形のお面や目出し帽のようなマスク姿で、最後まで本当の顔がわかりません。凶悪な事件が頻発しているアメリカでは、映画の中でも銃で身を守る人がよく見かけられます。自分はこういう目に合う想像もつきませんが、どうしたらいいのか考えてしまいました。不気味な3人のストレンジャーたちのうち、最初に出てくるジェマ・ワードはスーパーモデルだそうですが、暗がりの中と仮面姿のみ。『ロード・オブ・ザ・リング』でのエルフの美しい姫の印象がまだ強いリヴ・タイラーが裸足で走り回っています。(白)
2008/アメリカ/カラー/85分/ドルビーデジタル/シネマスコープ/PG-12
提供・配給・宣伝:プレシディオ
公式 HP >> http://www.strangers.jp./
監督・武術指導:チン・シウトン
脚本:ジェームス・ユンほか
音楽:マーク・ロイ
主題歌:「随夢而飛」レオン・ライ、ケリー・チャン
出演:ドニー・イェン(雪虎)、ケリー・チャン(飛燕児)、レオン・ライ(段蘭泉)、グオ・シャオドン(胡覇将軍)ほか
戦国の世。燕国と趙国は長い間争い続け、兵も民も疲弊していた。燕国の王が討たれ、後継者に雪虎将軍をと告げる。王の甥である胡覇将軍はこれを不服とし、密かに王を絶命させた。雪虎は王女飛燕児に継承者の印の宝刀を渡し、いかなるときも守ることを誓う。猛烈な訓練に耐える飛燕だったが、胡覇が放った刺客に追われ深手を負って倒れてしまった。気づくと見知らぬ男の手当てを受けている。段蘭泉は元軍人であったが剣を捨て、森の奥深く隠遁生活をしていた。傷を癒すうちに飛燕児は蘭泉の優しさに惹かれていく。
美しいワイヤーアクションで知られるチン・シウトン監督作品。俳優・歌手として活躍するケリー・チャンが国を背負って立つ王女を演じ、甲冑姿がりりしいです。彼女への想いを心に秘めて守り抜く将軍をドニー・イェン。戦闘シーンの総髪がなびく様とスローでなければ追いつかないアクションに見とれました。レオン・ライは2005年の『セブン・ソード』以来、『花の生涯 ー 梅蘭芳』に続く日本公開作品。アクションシーンは少ないですが、王女と知らずに心通わせていくシーンがなかなかロマンチックです。お約束のデュエット曲も流れて、久し振りに香港映画を観た気分になります。(白)
『レッドクリフ』や『三国志』などに並ぶ古装の戦争ものかと思いきや、どちらかというとロマンチックなラブストーリーです。段蘭泉の隠れ家は森の中の秘密基地のよう。美術さんがワクワクしながら作ったのが感じられます。終盤は久々のドニー・イェン劇場。鬼の形相で敵陣に1人突っ込んでいく姿が壮絶ながらも「少しは頭使え」とつい突っ込んでしまいます。(梅)
原題の『江山美人』とは、中国で古くから伝えられる身分違いの男女の悲恋物語だそうです。王女(ケリー)と元兵士(レオン)の恋は果たして悲恋なのか? そして王位を継ぐのは誰が? 等々、めまぐるしく舞台が変っていきます。でもやはり監督が武術指導としても有名なチン・シウトン、主演がドニー・イェンですから、アクションシーンの迫力は半端ではありません。森の中を馬で疾走するシーンやドニーの剣さばきにはもう惚れ惚れです。とはいってもドニーはなぜあんなに不死身なのでしょう? そして「気球」に若干の不自然さを感じました。(金)
2008/中国=香港/カラー/95分/スコープサイズ/ドルビーSRD/中国語
配給:ツイン
監督・脚本:大鶴義丹
撮影監督:桐島ローランド
出演:岡田理江、高杉瑞穂、長谷川初範、赤座美代子 ほか
ミハルはニューヨークで勤めていた会社が突然倒産し日本へ戻ってきた。かつて恋人と2人で買ったバイクが彼女を待っていた。その恋人とは将来を共にする期待を残したまま、曖昧な別れをしていた。彼からの手紙と淡い記憶をたどり、ミハルはバイクで彼の故郷がある北へと向かう。
峠道で運転を誤り草むらに投げ出されてしまった彼女に、1人の男が手をさしのべてくる。彼女は男の乗っているバイクが、あのひとと同じものだと気がつく。しかも、彼は8ミリカメラを取り出して撮り始めた。あのひとも8ミリカメラが好きだったのだ。この男はいったい・・・
一人の女性の再生を見つめる爽やかで、ファンタジックなロードムービーです。大鶴義丹さんは『となりのボブ・マーリー』以来14年ぶりの映画脚本&監督となります。撮影監督に桐島ローランドさんを迎えたことで、映像的にも非常に美しい作品となりました。お二人とも筋金入りのバイカーで、セリフにも映像にもツーリングする人の心情やその気持ちよさが詰まっています。(梅)
2009/日本/HDV/65分/ヴィスタ
配給:モブキャスト
宣伝:ビー・ウイング
公式 HP >> http://my-8mm.com/
特別記事 『私のなかの8ミリ』大鶴義丹監督インタビューもご覧下さい。
監督:ジョン・ポール
脚本:ガスティン・ナッシュ
撮影:ポール・サロッシー CSC,BSC
プロダクションデザイン:タマラ・デヴェレル
衣装:ルイス・セケイラ
音楽:クリストフ・ベック
出演:アントン・イェルチャン(チャーリー・バートレット)、ホープ・デイヴィス(マリリン・バートレット)、カット・デニングス(スーザン)、ロバート・ダウニー・Jr.(校長)、タイラー・ヒルトン(マーフィ)、マーク・レンドール(キップ)ほか
彼はいつも君を待ってる――あの場所でね。
チャーリー・バートレットは美人のママと2人豪邸に住むセレブな高校生。頭脳明晰、将来も嘱望されているが、運転免許証を偽造して売りさばき、有名私立高校をまたもや退学になった。チャーリーはただみんなの喜ぶビジネスを展開し、自分の居場所と人気を獲得していただけなのだが。すでに受け入れてくれる私立高校はなく、残るは公立高校のみ。いつもの運転手つきリムジンを断わって、スクールバスに乗るチャーリー。つい今までの習慣でブレザー姿で登校、周りから浮きまくる。美人のスーザンに声をかけられたのはいいが、不良のマーフィにもさっそく目をつけられてしまった。あざを作って帰ったチャーリーに驚き、ママはおかかえの精神科医を呼ぶ。処方されたリタリンを飲んですっかりハイになった彼は、パンツ1枚で真夜中に外へ飛び出し、警察のお世話になった。これで懲りるどころか、チャーリーは新しいビジネスのアイディアが浮かぶ。マーフィをパートナーにし、手に入れた薬を生徒たちに分けることにしたのだ。
この一風変わった学園コメディの監督はジョン・ポール。80年代から多くの作品の編集、プロデュースを続け、これが長編初監督作品です。一見ひよわそうなのに、父不在の家庭で母を支え、率直で何事にも前向きなチャーリー役は、アントン・イェルチャン。両親はロシアのフィギュア・スケート選手だとか。ひょうきんなイーサン・ホークって感じで、演技の幅もありそうです。カット・デニングスは『40歳の童貞男』に出演していましたし、タイラー・ヒルトンは『ウォーク・ザ・ライン』で若きプレスリーを演じていました。高校生役の俳優たちにはかなり自由に演技させたそうで、開放感があります。若い俳優さんたちは次の作品でどんなに成長しているか、ことに観るのが楽しみです。
専門書と精神科医の講釈をもとにチャーリーが始めたカウンセリングは評判になり、それぞれが抱える悩みが吐露されます。時代が変わっても悩みの種って変わらないですねぇ。親はみんな自分自身のことを思い出すべき。チャーリーにも抱えているものがあるわけで、コメディの形はこの辺がとってもリアルです。現役学生が観ても、かつての少年少女が観ても共感できるところ多々。ロバート・ダウニー・Jr.が、アル中の校長を演じて哀愁あり、いろいろあって復帰した本人とちょっとかぶりました。(白)
2008/アメリカ/カラー/97分/ビスタサイズ/DTS SDDSドルビーデジタル
配給:ゴールドラッシュ・ピクチャーズ 配給・宣伝:ワイズポリシー
監督:伊勢真一
出演:渡辺哲也、そのご家族、友人
伊勢監督の旧友、映像作家の渡辺哲也氏が2007年11月亡くなられました。この映像は2008年の一周忌に、近しい方々に観てもらうつもりで編集したのだそうです。植物学者牧野富太郎を敬愛し、花と山を愛した渡辺氏が残した映像、記録や、山を歩き友人と談笑する様子、ご家族との海外旅行、思い出を語るご家族etcのシーンを丁寧に紡いでいます。かけがえのない親友を悼む思いにあふれていました。誰もが死から逃れられず生きていることを思うと、こういう関わりを持てたお二人は幸せだと思います。(白)
2008/日本/カラー/84分/
配給:いせフィルム
監督・製作:ガエル・ガルシア・ベルナル
製作:パブロ・クルス、ディエゴ・ルナ
脚本:キッザ・テラサス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、カミラ・ソディ、ルス・シプリオタ、テノッチ・ウエルタ・メヒア、フェルミン・マルティネス、アナ・セラディラ
クリストバル(ガエル・ガルシア・ベルナル)は親しい友人たちを実家に呼んでパーティーを計画する。家は豪勢だが両親は国外逃亡のような状態で、使用人たちも給料が支払われるのか不安を感じている。妹はあまり良くない友人たちを引き入れて騒いでいる。クリストバルは親の希望通りハーバード大学に願書を出しているが、果たして受かるかどうか。不安といらだちを抱えながらも、友人たちとのバカ騒ぎを楽しもうとしていた。友人が連れてきたアルゼンチン出身の女の子、ドロレスに一目惚れし、恋人の存在を隠して猛然とアタックを開始するクリストバル。しかし、なかなか上手くいかず、庭師で幼なじみでもあるアダンと親しげに話す姿を見て、一層イライラを募らせるのだった。そしてパーティーは予期せぬ出来事で最悪の結末を迎える。
パーティーの一日の中で、人種差別、階級問題、汚職、そんな現状への若者の焦燥感など、メキシコの抱える多くの問題を浮き上がらせようとした意欲作。俳優としてすでに高い評価をえているガエル・ガルシア・ベルナルが初めて監督・主演を勤めました。スタッフのほとんどが30歳以下だったといいます。そんな若さと勢いを感じる一方で、ちょっと手を広げすぎて、どれも深く踏み込めていないのが少々残念でもあります。(梅)
2007カンヌ国際映画祭ある視点部門出品作品
2008ラテンビート・フィルム・フェスティバル オープニング作品
2007年/メキシコ/カラー/80分/ヴィスタサイズ/ドルビーSRD/スペイン語/35mm
配給・宣伝:アット エンタテインメント
©CANANA FILMS S.A. DE C.V. - 2007
公式 HP >> http://www.gael.jp/
演出:伊勢真一
撮影:内藤雅行
出演:田川律、大塚まさじ、吉村安見子、高橋悠治、斎藤晴彦、ハンバートハンバート 他
知る人ぞ知る歌の水先案内人、田川律さん。ボブ・ディランや日本のフォークやロックを世に紹介してきた。その他にも色んなことをやって来ていて、どんな人かをいわゆる肩書きでは説明できない。でも一言で言うなら、大阪のおっちゃんかも。そのおっちゃんが、70歳を越えて自分で歌い始めた。歌がうまいわけではないけれど、ニコニコしながら一所懸命「くたばってもいい 死んでもいい 僕の血が そくりそのまま 声となり 言葉となって 今を時代を唄うなら」と繰り返し歌う姿を見ていると、こちらも幸せな気分になってくる。ゆらゆらと人生を歩いているようで、どこかに堅い芯を感じるおっちゃんのドキュメンタリー。(梅)
伊勢監督に言わせると、こ画は「出来ちゃった映画」。田川律さんと「素敵な音楽映画を作りたいね〜」と会う度に話していたら、いつのまにか、田川さんにカメラを向けるようになっていたのだとか。そのうち、田川さん本人も、撮られているという気持ちになってくれて、映画が出来ちゃったという次第。
大阪のおっちゃん 田川さんの発する言葉がなんとも楽しい。
「どないや、考えてみぃ。あっちの方かて地獄も天国もあらへん」
「国があらへんかったら、殺しあわへん」
大阪の市内にあった生家のお寺は空襲で焼け、疎開先で亡くなったお父さんのお墓は無縁仏。多くを語らないおっちゃんの辛い過去が見え隠れするけれど、おっちゃんはいたって元気で、3人目の若い嫁さんと楽しく過ごしている。いい人生だなぁ〜(咲)
2008年/86分
製作:いせFILM
◆完成上映会◆
7月16日(水) 14:00、19:00 北沢タウンホール(下北沢)
7月25日(金) 19:00 武蔵野公会堂(吉祥寺)
7月27日(日) 13:00、16:00 小岩コミュニティーホール(小岩)
8月 5日(火) 19:00 大泉学園ゆめりあホール(練馬)
いずれも田川律さんが登壇します! 大阪のおっちゃんが歌ったり、しゃべったりする生の姿を見れるチャンスです!
★3月28日(土)〜4月3日(金)まで、横浜シネマ・ジャック&ベティにて上映(10:30より)
監督:ベン・スタッセン
脚本・原作:ドミニク・パリス
撮影:ダン・ムスカレラ
音楽:フィリップ・ヴァン・リア
日本語吹替えキャスト:堀北真希(ナット)、三瓶由布子(IQ)、斉藤貴美子(スクーター)、坂口芳貞(マクフライ)
© nWave Pictures
1969年、フロリダのケープカナベラルの宇宙センターでは、アポロ11号が明日の発射を待っていた。ほど近い廃品置場にはハエの家族たちが住んでいる。ハエの子どものナットはおじいちゃんの冒険旅行の話を聞くのが大好き。僕もおじいちゃんんみたいに冒険がしたい!あのロケットに乗って月に行きたい!ナットと親友のIQ、スクーターは、翌朝センターに勤める男性のランチボックスに入り込み、ロケットの中にもぐりこむことに成功する。
初めて3D映画を観ました。これは2D映画を加工したのではなく、初めから3Dとして制作されたものです。キャラクターの立体感ときたら、そこにナットが浮かんでいて手を伸ばせば触れそうな気がするほど。場面の奥行きはもちろんのこと、こちらに向かってくるトンボやロケットは、思わずよけてしまいそうです。主人公と同じに草むらに入り、自由に飛び回る気分を味わえます。
試写ではしっかりした作りの3Dメガネをお借りしました。よくある赤と緑のでなく、サングラスのように黒いレンズです。上映中何度か外して画面を見ましたが、大小のブレが見えるだけなんですよね。なぜあんなに立体的になるのでしょう? 制作のnWave Picturesは、世界中で最も多くの3D映画を作っています。ジェットコースターに乗ったような映像体験も楽しいので、春休みお子様連れてぜひどうぞ。(白)
2008/ベルギー/カラー/85分/吹替
配給:ティ・ジョイ/さらい
協力:JAXA(宇宙航空研究開発機構)
公式 HP >> http://www.nat3d.jp/
監督:フィリップ・コーリー
編集:アネット・デュテトル
語り:フィリップ・フォール
登場人物:マリア・カラス、アリストテレス・オナシス、ルキーノ・ヴィスコンティ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、グレース・ケリー、ジャクリーヌ・ケネディ
アーカイブ映像や本人の言葉などでその足跡をたどり、20世紀最高のディーバ、マリア・カラスの実像に迫るドキュメンタリー。テレビの時代が到来する前の、芸術家が芸術のためなら何でもできた時代に生きた最後の歌姫。映画の中で全盛期のころの歌声をいくつも聞くことができ、録音技術が今ほどよくないのですが、それでもその歌声に心を掴まれました。これを生で聞いたらどれほど凄かったことかと思います。
貧しく幸薄い少女時代から歌にのめり込み、プロになって名声を掴むまで、ほとんど歌オタクと言えるような生活をしていたマリア。スターとなっていきなり上流社会の仲間入りでは、良くない取り巻きに囲まれても、不実なオナシスにも、冷静になれなかったのは仕方なかったのかもしれません。豊富な練習量に支えられた声が、徐々に輝きを失っていくのを、誰よりもわかっていたのは本人だったでしょうに。かつて鉄の意志で40kg減のダイエットをやり遂げて自分を変えた彼女も、恋の孤独には耐えられなかったことに、哀れを感じます。それにしても、オナシスは女の敵だ・・・(梅)
ヴェネツィア映画祭 オリゾンティ部門出品
トロント映画祭 Real to Reel部門出品
2007/フランス/98分/デジタル/ビスタ
提供:マグザム
配給:セテラ、マグザム
宣伝:セテラ
公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/callas/
監督:ザック・スナイダー
脚本:デイヴィッド・ヘイター、アレックス・ツェー
原作:デイブ・ギボンズ(作画)、アラン・ムーア
撮影:ラリー・フォン
プロダクション・デザイナー:アレックス・マックドゥエル
衣装デザイン: マイケル・ウィルキンソン
視覚効果スーパーバイザー:ジョン・デイスジャーディン
編集: ウィリアム・ホイ
音楽: タイラー・ベイツ
出演:ジャッキー・アール・ヘイリー(ウォルター・コバックス/ロールシャッハ)、パトリック・ウィルソン(ダン・ドライバーグ/ナイトオウル)、ビリー・クラダップ(ジョン・オスターマン/DR.マンハッタン)、マリン・アッカーマン(ローリー・ジュスペクツィク/シルク・スペクター)、マシュー・グード(エイドリアン・ヴェイト/オジマンディアス)、ジェフリー・ディーン・モーガン(エドワード・ブレイク/コメディアン)ほか
知ってはならない、真実がある——。
かつて、世界を陰で見張り続けていたヒーローたちが存在していた。彼らは“ウォッチメン”と呼ばれ、歴史的事件の裏で行動していたとも言われている。
1985年のニューヨーク、ニクソン大統領がいまだ政権を握り、ソ連とは一触即発の緊張関係が続いている。ウォッチメンたちは政府によって活動を禁じられ姿を隠していた。ある夜、高層マンションの1室で乱闘が始まる。ガラス窓を破って転落死したのはウォッチメンの一人、コメディアンという男だった。やがて事件現場に現れたトレンチコートと帽子の男は、コメディアンのトレードマークだったスマイルバッジを拾う。男の顔は黒い模様が浮かび上がる白いマスクで覆われている。ロールシャッハと呼ばれるこのウォッチメンは、コメディアン暗殺を不審に思い、以前の仲間たちの周辺を調べ始めたが…。
映画化不可能といわれた超有名なグラフィック・ノベルを『300-スリーハンドレッド‐』のザック・スナイダー監督が手がけました。アメリカでは3月6日に全国公開されて、初登場ぶっちぎりの1位です。この映画の舞台のアメリカではスーパーヒーローが活躍し、ベトナム戦争に勝ち、ニクソンは失脚せず権勢をふるっています。ひねったアメリカ現代史を背景にしたこの作品が今をあぶりだすような気がします。
ウォッチメンの活動は禁止されても、自らの信じる善のために一人活動を続けていたロールシャッハ。演じるジャッキー・アール・ヘイリーのマスクの白黒模様が感情を表すかのように変化します。仲間からも疎まれている男ですが、怒りと悲しみが漲る人間臭いキャラです。複雑で深いといえばいいのか(?)DR.マンハッタンも他では見ないヒーローでした。映像を楽しみながら、ストーリーの進行にしっかりついていってください。原作はSF文学としてヒューゴー賞も受賞しています。映画化にあわせて日本語訳のコミックスが2月末に改訂版で再出版されました。(白)
2009/アメリカ/カラー/2時間43分/スコープサイズ/DTS・SRD・SDDS・SR/R-15/
配給:パラマウントピクチャーズ ジャパン
監督・撮影・編集:田保寿一
製作:冬の兵士製作委員会、田保寿一
出演:イラク帰還兵たち
©2008 Winter Soldier冬の兵士製作委員会
“Winter Soldier”とは、ベトナム戦争の帰還兵たちがベトナムで非道な殺戮が行われていると証言、軍の撤退を要求した公聴会の名だ。それにならい、2008年3月13日から16日にわたりワシントンDC近郊の全米労働大学で反戦イラク帰還兵の会が公聴会を開催し、約50人の帰還兵がイラク戦争の実態を証言した。
田保寿一氏はこの公聴会を取材した唯一の日本人ジャーナリストです。2003年からイラク各地を取材した後、2006年にはアメリカの帰還兵たちと連絡を取り始めます。現地へ飛び、イラクからもアメリカからも見たジャーナリストとして、どんな思いが湧き上がり胸につもってきたのか、この映像に一部が見えています。帰還した若者たちがある者は苦渋の表情で、またある者は淡々と戦場の様子を語っています。聞くだけで寒気さえ覚えるほどですから、体験した本人たちの苦痛はいかばかりでしょう。(白)
2008/日本/カラー/80分/ドキュメンタリー
★シネマジャック&ベティ(カフェシアター)にて3月28日(土)〜4月3日(金)連日15:00より上映 1ドリンクつき。公式 HP >> http://www.jackandbetty.net/
港 健二郎 監督 2007年製作 日本
●作品紹介
「がんばろう」という歌をご存知ですか?
♪がんばろう 突き上げる空に
くろがねの男のこぶしがある
燃え上がる女のこぶしがある
闘いはここから 闘いは今から♪
作詞 森田ヤエ子 作曲 荒木栄
この歌を作曲した人が荒木栄です。1959年に始まった三井三池闘争の中で生まれたこの歌は、60年安保反対闘争、沖縄返還闘争、国鉄民営化反対闘争、教育基本法改悪反対闘争と歌い継がれ、メーデーの中でも歌われ続けてきました。きっと、労働運動に参加していないみなさんも、ニュースや、三池闘争を描いた作品のなかで聞いたことがあると思います。
荒木栄は大牟田に生まれ、三池炭鉱で働いていました。音楽が好きで、音楽大学にも行きたかったのですがかなわず、職場で大牟田センター合唱団を結成しました。しかし、三池争議終結2年後の1962年、38歳の若さで亡くなくなりました。短い生涯の間に「地底のうた」「心はいつも夜明けだ」「花をおくろう」「沖縄を返せ」「わが母のうた」など、70曲あまりの歌を作り、多くの労働者が、彼の作った歌を歌いました。中でも一番知られているのが「がんばろう」です。その中でも圧巻は、60年安保闘争の時、国会を取り巻いたデモ隊が、この「がんばろう」を大合唱したことです。きっと多くの人がこの映像で、この曲を聞いていることでしょう。
彼の歌は労働運動やうたごえ運動を通じ伝わりましたが、今では一部の歌が歌い継がれているくらい。それに、働く人たちがスクラムを組み、歌う光景を見かけることも少なくなってしまいました。
港監督は大牟田の出身で、荒木栄の果たした役割を見直し、彼が作った歌の魅力を伝えたいと、没後45年の昨年、この作品を作りました。また、共に闘争を続けていた人々の話から、三池闘争がどのような闘いだったのかが映し出されます。
荒木栄が中心的メンバーだった大牟田センター合唱団や、うたごえの仲間たちの歌だけでなく、歌は保存しておいては古くなると、新たな歌い手による荒木栄の歌も採録し、大工哲弘、嘉門達夫、ミネハハ、かりゆしバンドなど、いろいろなジャンルの歌手が彼の歌をカバーし、現在にも通じる荒木栄の歌の魅力、歌を引き継いでいくことの大切さも伝えています。
●私の感想、思い出
私が「がんばろう」を初めて聞いたのは、1970年、初めて参加したメーデーの会場でした。1回で、詞もメロディも覚えました。それほど、印象の強い歌でした。そしてこれを作ったのが荒木栄という人だということも知りました。そのまま、ずっと荒木栄という人のことは気になっていました。
でも、私が中学2年の1965年頃知った、「沖縄を返せ」という歌も、荒木栄の作曲だということをこの映画で知り、びっくりしました。それがすごい感動でした。48年も前に知った「沖縄を返せ」を作った人が荒木栄だったとは。そしてもうひとつ、この映画を観るまで、「がんばろう」は荒木栄の作詞作曲だとばかり思っていたのですが、森田ヤエ子さんという女性の作詞だということを知りました。そして、荒木栄さんとのコンビで、たくさんの作詞をしていることを知りました。
港監督は子供のころ、父親の仕事の関係で、三池炭鉱の住宅に一時住んでいたことがあったそうです。当時は組合が分裂し、壮絶な争いが起こっていて、それに嫌気がさして、組合に対して否定的な見方をしていたそうです。でも、その後仕事をするようになってから、労働者の団結が重要だと知り、労働組合の必要性、三池の争議を見直したそうです。それで、三池にこだわって映画を撮り続けているとのことでした。
この荒木栄の歌を訪ねる水先案内人は、神戸や沖縄で活躍する歌手のHizuki(妃月洋子)さん。彼女の歌う荒木栄の歌「星よおまえは」も、とても心に響く歌でした。また、高石友也さんへのインタビューの中で、「荒木栄の歌に接したことで、音楽の専門家でなくても歌手になっていいんだということを知り歌手デビューした」という言葉と、音楽評論家の湯川れい子さんへのインタビューの中で、「権力のない人々による、血の流れない武器が歌である」という言葉が印象的でした。(暁)
3月21日(土)~4月10日(金)まで 21:00~
ポレポレ東中野にてレイトショー公開
03‐3371‐0088
企画・製作 『荒木栄の歌が聞こえる』製作委員会
問い合わせ先 東京ビジネスサーチ 03-3369-2535
『荒木栄の歌が聞こえる』 公式 HP >> http://www.arakisakae.com/
港監督の前作『ひだるか』を、下記シネマジャーナルHPで紹介しています。
こちらもごらんになってください。
http://www.cinemajournal.net/special/2005/hidaruka/index.html
監督:ダーレン・リン・バウズマン
脚本:ダーレン・スミス
撮影:ジョセフ・ホワイト
プロダクションデザイン:デヴィッド・ハックル
音楽プロデューサー:YOSHIKI
出演:アレクサ・ヴェガ(シャイロ・ウォレス)、アンソニー・スチュワート・ヘッド(レポマン/ネイサン・ウォレス)、サラ・ブライトマン(ラインド・マグ)、パリス・ヒルトン(アンバー・スウィート)、テランス・ズダニッチ(案内人)、ビル・モーズリイ(ルイジ・ラルゴ)、ポール・ソルヴィノ(ロッティ・ラルゴ)
2056年、世界中に奇病が流行しパニック状態の中、医療会社のジーン社高額な手術代を肩代わりする手軽なローンを設定。藁をも摑みたい患者が殺到し、巨大化したジーン社は政治的権力も手に入れる。ローンを払えない者から「臓器を回収する」ことを合法化したのだ。情け容赦なく回収するのは“レポマン”と呼ばれる男だった。
17歳のシャイロは亡き母譲りの病気のため、そんな世間から隔離されて育っていた。医者である父ネイサンは、シャイロが生まれてから外出を禁じてきたが、シャイロの興味は押さえられない。ある日、ジーン社の社長ラルゴから電話がかかってくる。
ダーレン・リン・バウズマン監督が『ソウ』シリーズに出会う前に演出したオペラが元。XジャパンのYOSHIKIが音楽プロデューサーとして参加している。出演者みなが歌うのですが、シャイロも憧れる劇場の歌姫がサラ・ブライトマン。私は全く知らずに観ていてその歌声に「この人は誰?!」と驚いてしまいました。ヒロインのシャイロは『スパイ・キッズ』の子役だったエレクサ・ヴェガ。
美術や衣装が独特で、若い子たちにうけそう。おっ、すでに渋谷でゴスロリ系衣装の子たちが集まったドレスアップ試写もあったようです。全編音楽で彩られているので、コンサートを観ているような感じもしました。(白)
2008/アメリカ/カラー/98分/ビスタ/R-
配給:ザナドゥー
公式 HP >> http://www.repo-movie.jp/pc/
監督:中田秀夫
撮影・録音・ライン・プロデューサー:ジェニファー・フカサワ
『リング』『仄暗い水の底から』で世界に名を轟かせた中田秀夫監督。ハリウッド・リメイク版『ザ・リング2』を自ら撮ることになり、丸1年ハリウッドに滞在している間に、『THE EYE(邦題:アイズ)』のオファーを受ける。しかし、準備は整うも、なかなか撮影のゴーサインが出ない。待ち続けるしかなく、フラストレーションは溜まるばかり。なぜ、ハリウッドでは、日本の映画作りのように物事が進まないのか? 本作は、その焦燥感をバネに、ハリウッドで映画を撮るというのはどういうことなのかを描いたドキュメンタリー。
ハリウッドでは、映画は「商品」。徹底的な商業主義に立つハリウッド流に驚く中田監督自らの姿が映し出されます。
ハリウッドと他の国の映画作りの差のキーワードは、
1.グリーンライト(撮影開始を示す青信号)
2.カヴァレッジ(COVERAGE いろいろな角度、サイズで撮影しておく方法)
3.テスト・スクリーニング(何度も繰り返す試写)
中でも、監督の指示に基づくアングルで撮るのではないカヴァレッジには、さすがお金をかけることのできるハリウッドだからこそと唖然とします。そして、関係者の試写で変更される編集。ハリウッドでは映画が監督のものでないことを思い知ります。徹底した商業主義を体験した中田監督。イギリスで取る予定の次回作は、監督の独りよがりになる危険性も孕む作家主義とのバランスをどう取るのかが楽しみとのことです。(咲)
2008年/日本/デジタルビデオ/73分/カラー
製作:秀作工房
配給:ビターズ・エンド
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/hollywood/
監督:白石晃士
脚本:秋元健樹
特殊造型監修:西村喜廣
出演:大島優子、山崎真実、西田麻衣、一慶、阿部進之介、螢雪次朗 ほか
身体を腰で切断された女性の遺体が見つかった。高校生の関口綾花のまわりではテケテケの仕業ではないかと噂していた。テケテケは日が暮れてから鉄道の歩道橋に現れ、“テケテケ”という足音に振り向くと下半身のない女性に襲われて、身体を真っ二つにして殺されるという。
綾花は親友の大橋可奈と些細なことから喧嘩をして、その夜は別々に帰った。ところが翌日、可奈もまた腰で切断された遺体で発見される。発見現場となった鉄道の歩道橋へ花を手向けに行った綾花は背後に“テケテケ”という足音を聞く。辛うじて逃げた綾花だったが、テケテケに遭遇した者は3日以内に死ぬと知り、テケテケについて調べようと図書館へ。そこで従姉の平山理恵と偶然であう。大学で文化人類学を専攻する彼女は都市伝説“テケテケ”について調べていたのだった。理恵によるとテケテケのルーツは兵庫県の加古川にあるらしい。2人は伝説の謎を解こうと奔走する。
監督:白石晃士
脚本:秋元健樹
特殊造型監修:西村喜廣
出演:岩田さゆり、仲村みう、松嶋初音、阿部進之介、螢雪次朗 ほか
女子高生の水谷菜月と中島玲子は通学途中にある鉄道の歩道橋で起きた惨殺事件の現場を見て、ひとしきりテケテケの噂で盛り上がる。
玲子はクラスメイトの刀根エリカを注意したことで恨まれ、エリカたちのグループから執拗にいじめを受けるようになる。ある日、玲子の財布がなくなり、誰の仕業かおおかたの察しをつけた玲子は、グループの1人葉山さやかを例の歩道橋へと呼び出す。するとテケテケは葉山さやかを真っ二つに切り裂き、その様子をじっと玲子は見ていた。
“口裂け女”、”花子さん”、“こっくりさん”など子どものころに友だちと大いに盛り上がった都市伝説の数々。しかしこの“テケテケ”は、わたしは初耳でした。監督はこれまでにも『口裂け女』(06)、『ノロイ』(06)といった都市伝説恐怖映画を撮ってきた白石晃士監督。地方によって様々に変化する都市伝説のつかみどころのなさを生かした話の展開で、なかなか面白いです。何よりも“テケテケ”の造型の禍々しさとそのスピードが凄い!
主演にはAKB48の大島優子、グラビアアイドルの山崎真実、仲村みう、モデル出身の岩田さゆりなど、若手の可愛いどころを集めています。可愛いだけでなく、演技も悪くないです。そんな彼女たちを“テケテケ”がバッサバッサとぶった切っていきます。まだまだ謎をいっぱい残して終わりますが、“テケテケ”が美女ばかりを殺すのにも、ちゃんとした理由があるんでしょうか?(梅)
2009/日本/カラー/DLP/72分
制作協力:円谷エンターテインメント
制作:本田エンターテインメント
製作:アートポート
配給・宣伝:アートポート
監督:滝田洋二郎
脚本:古沢良太
原作:矢口高雄
撮影:葛西誉仁
音楽:海田庄吾
VFX:白組
出演:須賀健太(三平三平)、塚本高史(鮎川魚紳)、香椎由宇(三平愛子)、渡瀬恒彦(三平一平)、土屋太鳳(高山ゆり) ほか
三平三平(みひらさんぺい)は両親をなくして釣りと和竿作り名人の一平爺ちゃんと2人暮らし。釣りが大好きな明るい少年だ。東京に住む姉の愛子は三平の将来を案じて、就職が決まったのを機会に三平と東京で暮らそうと手紙をよこす。三平はそんな姉の心配もどこ吹く風、幼な馴染みのゆりっぺを誘って釣り三昧の夏休みだ。鮎釣り大会の後出会ったバス釣りプロの鮎川魚紳は、三平の家に泊まり釣り談義に花を咲かせる。魚紳が噂を聞いたという「夜泣谷(よなきだに)の巨大魚」の話に三平の目が輝く。
少年マガジンに1973年から10年間連載された「釣りキチ三平」。子供ばかりでなく、釣り好きな大人も愛読した人気漫画でした。コミックも60巻を越え、我が家にもかなり揃っておりました。リアルタイムで読んでいたという滝田監督の手で実写版として戻ってきました。『ALWAYS 3丁目の夕日』の須賀健太君が元気な三平役。原作にはいなかった姉が登場し、家族の話と、釣りに興味のない女性の目線を加えています。
鮎釣りやフライフィッシングの場面、三平や一平爺ちゃんの釣りのうんちくも釣り好きには嬉しいでしょう。何より三平が釣りを楽しむ川や里山の風景がすっばらしいです。山歩きは苦手だけれど、行ってみたくなりました。(白)
2009/日本/カラー/
配給:東映
公式 HP >> http://www.san-pei.com/
監督・脚本:シェーン・メドウズ
出演:トーマス・ターグーズ、スティーヴン・グラハム、ジョー・ハートリー、アンドリュー・シム、ヴィッキー・マクルーア、ジョセフ・ギルガン
1983年7月、イギリス中北部の田舎町。低所得者住宅に住む11歳の少年ショーンはいじめられっ子。今日も、ユダヤ人らしい同級生に、流行遅れになってしまったベルボトムのズボンをからかわれる。ショーンにとって、これはフォークランド紛争で戦死した父が買ってくれた思い出の品。父と一緒に撮った写真を眺めながら、あの頃に戻りたいとつぶやくショーンを、母も涙ぐみながら見守るしかない。学校の帰り道、ショーンはスキンヘッドの若者グループに声をかけられ、自分も頭を丸め、一緒に行動するようになる。刑務所から出てきた彼らのボス的存在のコンボは人種差別意識の強い人物で、ショーンは国粋主義の政党National Front(国民戦線)の集会に連れて行かれたり、いつも立ち読みを咎められていたパキスタン移民の男の店の壁に、「パキ野郎は国に帰れ」などと一緒になって落書きをしたりするようになる・・・
1982年のフォークランド紛争で父を亡くした少年の成長を通じて、1980年代のイギリスの社会やサブカルチャーを垣間見ることのできる興味深い作品。映画の冒頭に80年代初頭の映像が流れる。鉄の女と呼ばれたマーガレット・サッチャー首相の時代である。金融ビッグバンを初めとする金融緩和政策で経済が回復する一方、本作の舞台となった英国中北部は規制緩和政策の不利益を被った地域だったという。失業率も10%を超え350万人に達した。当時、労働者階級の人たちに広まったスキンヘッド。彼らが集団で存在するだけで威圧感があるが、社会でやり場をなくした若者たちの連帯感を象徴するものだったのだろう。(ちなみに、主人公ショーンは丸刈りにしても凄みはなくて、可愛い小坊主!) スキンヘッドの若者たちの怒れる姿を目の当たりにした経験を持つ監督は、自分自身労働者階級で、本作では彼らの行動の背景をも描こうと試みている。
フォークランドで紛争が勃発した時、遠く離れたアルゼンチン沖の領土に固執する大英帝国気質に呆れた覚えがあるが、監督自身も、当時、フォークランドへの派兵には憤りを持ったという。本作の中で、戦死した兵士を運ぶ映像が流されて、「戦争とは人が死ぬことだ」ということを生々しく見せ付けられる。なぜ、戦争はなくならないのだろう・・・ 悲しい。(咲)
今年42本目で、初めての評価Aの外国映画。
イギリス1980年代の若者のエネルギーあふれたこの作品の見どころは、頭(スキンヘッド)から爪先(ブーツ)までのファッション。そしてパンク・ロックな元気印音楽。時代背景も、わかりやすく時折のラジオニュースなどを字幕で教えてくれる。いつもつるんでいるスキンヘッド野郎も、見た目よりずっと純情。考えや思想、人種の違いで、殴り合いの喧嘩もするが、最後はちゃんと考えを尊重して訣別している。やはりイギリスは歴史ある民主主義の国だと改めて感じた。
主人公の男の子ショーンも、二人の強烈な男に関わり合うことによって、どんどん顔つきも、行動半径も変わっていく。しかし、彼の一番幸せは、自分のたずなをしっかり繋いでいてくれている母親の存在だ。仲間の溜まり場に、母親がスキンヘッドで様変わりしたショーンを連れて怒鳴り込む。(と思った)でも私の予想に反し、「これからは私の許可なく、この子をスキンヘッドにしないでね。それだけ言いに来たのよ。これからもこの子をよろしくね」と帰って行った・・・お見事! この映画の中で一番印象に残った場面だった。(美)
2008年英国アカデミー賞 最優秀イギリス映画賞受賞
2006年イギリスインディペンデント映画賞最優秀作品・最優秀新人賞受賞
配給:キングレコード、日本出版販売
後援:駐日英国大使館 貿易・対英投資部
宣伝:TEAM BEER
2006年/イギリス/カラー/98分/ビスタサイズ/DLP上映
公式 HP >> http://www.thisisengland.jp/
監督:ユー・リクウァイ(余力為)(『天上の恋歌』)
脚本:ユー・リクウァイ、フェルナンド・ボナシ
撮影監督:ライ・イウファイ(黎耀輝)(『恋する惑星』『ブエノスアイレス』『花様年華』)
音楽:フェルナンド・ロコナ、半野喜弘
出演:オダギリ ジョー(日本)、アンソニー・ウォン(香港)、ホァン・イー(中国)、タイナ・ミュレール、チェン・チャオロン(台湾)、タイナ・ミュレール(ブラジル)
日系ブラジル人のキリン(オダギリジョー)は、幼い頃、アマゾンのジャングルで両親を殺され孤児になったところを、アジア系ブラジル人ユダ(アンソニー・ウォン)に拾われ、息子として育てられる。日系人やアジア系の多民族が暮らすサンパウロのリベルダーデ地区で裏社会のボスとして君臨するユダだったが、失脚を狙う者たちにはめられ、コピー商品を売りさばく闇家業の黒幕として警察に拘束されてしまう。キリンはユダを陥れた勢力との抗争に奔走する・・・
多国籍の俳優を起用した本作は、まさに移民社会ブラジルの縮図のよう。『一瞬の夢』以来『長江哀歌』『四川のうた』などジャ・ジャンクー監督作品の撮影監督として活躍しているユー・リクウァイの描く世界は、映像がシュールで実に芸術的。幻想の中に引き込まれます。アンソニー・ウォンの存在感は文句なし! オダギリジョーもポルトガル語を駆使して頑張ってます。なんだか訳のわからない夢の中で、生き抜くことの厳しさをずっしり感じた95分でした。(咲)
中国=香港=ブラジル=日本合作
95分/35ミリ/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/2008年
宣伝:メゾン
配給:ビターズ・エンド
特別記事『PLASTIC CITY プラスティック・シティ』来日記者会見 もご覧下さい。
公式 HP >> http://www.plasticcity.jp/
監督・脚本:チャン・フン
原案・制作:キム・ギドク
出演:ソ・ジソプ(ガンペ)、 カン・ジファン(スタ)、ホン・スヒョン(カン・ミナ)、コ・チャンソク(ボ監督)、ソン・ヨンテ(ペク会長)、チャン・ヒジン(ウンソン)ほか
© 2008 SPONGE and KIM KI-DUK FILM.All Rights Reserved
映画俳優のスタはプライドが高く短気で、撮影中カッとなった挙句相手役を殴り怪我を負わせてしまった。スタの相手役を引き受ける俳優はなく、撮影が中断していた。ガンペは会長の信任も得ている非情なヤクザだが、かつて映画俳優になる夢を持っていた。二人はたまたま同じ高級クラブで出会い、互いにいい印象を持たなかったが、スタはアクションシーンの相手役にガンペを誘う。ガンペは一つの条件を出す。それはファイトシーンで手を抜かず、本気で戦うというものだった。腕に自信のあるスタは条件をのみ、撮影は再開された。
映画の中で映画撮影のシーンがふんだんに登場し、俳優たちは2重に演技をしているわけでなかなか面白いです。暴力シーンが痛いなぁと思っていたら、キム・ギドク原案・制作でした。納得。
ソ・ジソプは、ドラマ「ごめん、愛してる」「バリでの出来事」などで日本でも人気でしたが、2005年から2007年まで兵役についていてこれが韓国での復帰第1作となります。長身によく似合う黒尽くめのスタイルで、さすがにモデル出身だけあるかっこ良さ!ヤクザがこんなに良く見えていいのでしょうか? 邦画『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』にも夜叉役で出演していて迫力ありましたね。映画スター役のカン・ジファンは、ドラマでは甘いハンサムくん役が多かったようですが、この作品では身体を鍛えあげ高慢で暴力的な男を演じています。「映画は映画だ」という題名は、ガンペが冷ややかに吐き捨てることばにも、スタがため息と共に吐く自嘲にも取れますし、観客に提示された断り書きにも思えます。(白)
ソ・ジゾブが兵役後初の本格復帰作品に選んだのは、2人の男の対照的な生き方を描いたこの作品でした。非情なヤクザではあるけれど、もしかしたら本当はやさしい人かも? と思わせるガンベ役のジソブは、はまり役というか彼の十八番。 久々のジソブは、以前よりも佇まいが美しくなったような・・・。でもヤクザ役ですからね、美しすぎるのは罪です(笑)。イメージ的には昔の日活の俳優のようなスタ(ジファン)が、撮影が進むにつれ、自らがキャスティングしたガンベに嫉妬を燃やしていく姿には、鬼気迫るものがありました。
映画の中の「映画」は、どういうストーリーなのかという細かい説明はありませんが、いろんなエピソードで「映画」を説明していきます。だからこそ、ラストシーンはどうなるの?という興味が最後まで尽きません。そして「映画」が完成するのかは、観てのお楽しみ。『映画は映画だ』のタイトルの奥深さを感じます。クライマックスのジゾブとジファンのファイテングシーンは、実戦さながらだったそうで必見ですよ!(裕)
公式 HP >> http://www.eiga-eiga.jp/
監督・脚本:エリック・ダーネル&トム・マクグラス
脚本:イータン・コーエン
共同作曲家/共同ソングライター:ハンス・ジマー
声優:ベン・ステイラー/玉木宏(アレックス)、クリス・ロック/柳沢慎吾(マーティ)、デヴィッド・シュワイマー/岡田義徳(メルマン)、ジェイダ・ピンケット=スミス/高島礼子(グロリア)ほか
©2008 DreamWorks Animation L.L.C. All Rights Reserved.
前回マダガスカルに漂着した4頭のニューヨーカーたちが、ついに島を出る日が来た。寄せ集めのおんぼろ飛行機を操縦するペンギンズはチームワークもばっちり。キング・ジュリアン、モーリスも乗っていざ出発!しかしすぐに燃料切れになってしまい、機体は壊れていく。メルマンはこれが最後とグロリアに告白するも、彼女は熟睡中で聞いちゃいない。ペンギンズの奮闘で不時着した先は、ニューヨークではなく、彼らの故郷アフリカだった。
アレックスはボスのズーバの一人息子で、アラケイという名だった。強い後継者になってほしいと願う父親の期待に反し、ダンスの好きな赤ちゃんライオンだった。ボスの座を狙うマクンガの挑戦を受け、ズーバが息子に見せようと戦っているときにアラケイは密猟者にさらわれてしまい、そのまま生き別れになったのだった。ニューヨークでの記憶しかないアレックスの前に、なぜか懐かしい風景が拡がっていた。
「踊るのすきすき!」の歌がいつまでも耳に残った2005年の第1作に続き、NYセントラルパーク動物園から逃げ出した4頭、ライオンのアレックス、シマウマのマーティ、キリンのメルマン、カバのグロリアが活躍します。今回はアレックスの生まれが明らかになり、彼の両親が登場します。
都会育ちの彼らは、前作のマダガスカルで野生の厳しさにちょっぴりは慣れたはずですが、アフリカの大きさ、厳しさは桁違い。4頭はそれぞれに初めての試練に直面します。私もお気に入りのクールなペンギンズは、彼らの短編やシリーズができるほどの人気。強力なおばあちゃん(人間)も登場して、ますますパワーアップした本作。まだまだ続きそうです。(白)
2008/ドリームワークスSKG提供/PDIドリームワークス作品/カラー/1時間29分/ビスタ/DTS/SRD/SDDS・SR
配給:パラマウントピクチャーズジャパン
宣伝:サンダンス・カンパニー、アンリミテッド
公式 HP >> http://madagascar.jp/
1982年の映画祭「南アジアの名作を求めて」を皮切りに、アジア映画を新鮮な切り口で日本に紹介し続けている国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)。今回の上映では、アジアの「いま」をうつし出す、インドネシア、マレーシア、インド、フィリピン、タイより、内外の国際映画祭で高い評価を受けた6作品(本邦初公開2作品を含む)が一挙上映されます。
日程:2009年3月14日(土)15日(日)
会場:赤坂・OAGホール(東京都港区赤坂7-5-56ドイツ文化会館内)
http://www.oag.jp/jp/kontakt/
主催:国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)
運営協力:財団法人国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
公式 HP >> http://www.jpf.go.jp/j/culture/media/domestic/movie/asia2009.html
監督:東條政利
製作:安西崇、川城和実
製作・プロデューサー:三木和史
脚本:金杉弘子
撮影:高間賢治
出演:相葉弘樹(ヒビキ)、大河元気(サーディン)、桐山漣(コトッチ)、馬場徹(ガク、キョウカの二役)、桜田通(コトッチの弟)ほか
©2009カフェ代官山ⅢPartners
ガクがいない“カフェ・レーヴ・コンティニュエ”の1年後、ヒビキ、サーディン、コトッチは恒例のクリスマスパーティを開いていた。そこへ、突如ガクのいとこだというキョウカが現れる。「この店で一緒にパティシエを目指さないか?」というガクの手紙に誘われ、ふらっと訪れたのだった。サーディンが不在で手の足りないこともありヒビキは受け入れる。ガクと顔がそっくりでも性格は正反対、マイペースなキョウにコトッチは不満顔。だが女性客のうけも、パティシエとしての腕も良かった。キョウカの独創的なケーキはヒビキも唸らせる。
パティシエを目指す4人の若者の青春ストーリー「カフェ代官山」シリーズの三作め。「テニスの王子様」出身の子たちがあちらこちらで活躍していますが、この主演の4人も同窓生です。撮影期間が短いのかなという感じがしますが、今回はそれぞれが将来を模索するという最終章らしい展開です。お琴を奏でる桐山漣くん、弟役の桜田通くんの和服姿がなかなか可愛いです。(白)
2009/日本/カラー/ヴィスタサイズ/76分
配給:日本出版販売、ビデオプランニング
宣伝:フリーマン
公開初日はホワイトデーの特別な夜。出演俳優陣がそろって舞台挨拶を行いました
右から
東條政利監督「3作目ができたのはI、IIを支えてきてくれた観客の皆さんのおかげ」
桜田通 撮影中に台詞の難しさから何度も取り直したエピソードにふれ「芸能界に入って1番泣きそうになった」
相葉弘樹 客席を埋める女性たちに向かい「愛を!愛の塊を返していきたい!」
大河元気 「I、IIのDVDを観て、もう一度劇場に足を運んでほしい」
桐山漣 「この作品を観て、自分の仲間とか居場所を改めて大事に思ったりしてほしい」
公式 HP >> http://www.cafe-daikanyama.com/
ラピュタ阿佐ケ谷、一年ぶりのレイトショーは、映画のために一肌脱いだピンク女優の特集です。
開催期間:2009年3月14日[土]〜5月15日[金] 連日21:00より
開催場所:ラピュタ阿佐ヶ谷
上映作品:
料金:一般…1,200円 シニア・学生 …1,000円 会員…800円 水曜サービスデー…1,000円均一
監督:ヴァディム・パールマン(『砂と霧の家』)
原作:「春に葬られた光」 ローラ・カジシュキー著(ヴィレッジブックス刊)
出演:ユマ・サーマン(『キル・ビル』)、エヴァン・レイチェル・ウッド(『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』『アクロス・ザ・ユニバース』)、エヴァ・アムーリ、ブレッド・カレン、ガブリエル・ブレナン
コネチカット州の小さな町。金髪で美人のダイアナは、退屈な町をいつか出たいと夢見ながら、麻薬の売人と付き合う奔放な17歳の高校生。内気で品行方正な同級生のモーリーンとなぜだか気が合い親友になる。ある日、トイレでおしゃべりしていた二人に、銃を持った同級生のマイケルが「どちらか一人を殺す」と迫る。「殺さないで!」と叫ぶダイアナの隣で、「私を殺して」と答えるモーリーン。それから15年。大学教授と結婚し、小学生の娘を育てながら美術教師をするダイアナだが、あの日のことが忘れられない・・・。
思いがけないラスト! 見終わって、原題の意味をしみじみと噛みしめました。人生の選択を迫られることは、人それぞれにあるけれど、大事な人の生死にも関わる選択を迫られた時、私ならどうするだろう・・・ (咲)
2008年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ 90分/ドルビーデジタル
提供:デスペラード
配給:デスペラード/日活
宣伝:アニープラネット
公式 HP >> http://www.diana-sentaku.com/
会期:3月13日(金)~22日(日)
会場 :ABCホール(朝日放送 新社屋内)
チケット:チケットぴあにて発売中(各作品上映の前日まで)
共通Pコード 555-063
前売り1000円 当日1200円
上映作品:劇場未公開のアジア映画11本 ★は来日ゲスト、質疑応答あり |
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3月13日(金) オープニングイベント |
『チョコレート・ファイター』タイ/プラッチャヤー・ピンゲーオ監督★ 出演:“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン、阿部寛 |
3月14日(土) |
『停車』台湾/チョン・モンホン監督★ 出演:チャン・チェン、グイ・ルンメイ、チャップマン・トー |
『手あつく、ハグして』タイ/コンデート・チャトゥランラッサミー監督★ 出演:ギアットガモン・ラーター、スバサゴーン・チャイヤモンコン |
『秘岸』香港・中国/チャン・イーバイ監督 出演:カレン・モク、エリック・ツァン、イーソン・チャン、ジャン・ウェンリー |
『ゴーン・ショッピング』シンガポール/ウィー・リーリン監督 出演:ジン・ファン、アイルン・ガオ、スオニーヤ・ナァア、アイダーリアン・パン |
3月15日(日) |
『サイアム・スクエア』タイ/チューキアット・サックウィーラクン監督 出演:マリオー・マウロー、ウィチャウィシット・ヒランウォンクン |
『空を飛びたい盲目のブタ』インドネシア/エドウィン監督★ 出演:ラディア・シェリル、ジョコ・アンワール、カルロ・ゲンタ、ポン・ハルジャトモ、アンドーラ・アーリー |
『彼方からの手紙』日本/監督:瀬田なつき★ 出演:スズキジュンペイ、朝倉あき、三村恭代 |
『100』フィリピン/監督・脚本:クリス・マルティネス★ 出演:マイリーン・ディソン、ユージン・ドミンゴ、テシー・トマス |
3月16日(月)クロージングイベント |
シンポジウム「アジア新世代映画人が語る」司会:上野昂志氏 |
『ムアラフ 改心』マレーシア/ヤスミン・アハマド監督 出演:ブライアン・ヤップ、トニー・サバリムトゥ、シャリファ・アマニ、サイド・ザイナル・ラシッド |
『誠実なおつき合いができる方のみ(非誠勿擾)』中国/フォン・シャオガン監督 出演:グー・ヨー、スー・チー、ファン・ウェイ、アレックス・フォン、ビビアン・スー |
*やむをえない理由により、プログラム変更などの可能性もあります。あらかじめご了承ください。
協賛企画:3月7日~4月10日(金)
詳細は公式サイトまで >> http://www.oaff.jp/index.html
★来日代表団団長:ジュリエット・ビノシュ 来日決定!
上映作品 | ||
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『夏時間の庭』 ~映画祭オープニング作品~ | ||
原題:L'Heure d'été 2008年 102分 監督:オリヴィエ・アサイヤス 出演:ジュリエット・ビノシュ、シャルル・ベルリング、ジェレミー・レニエ、エディット・スコブ 5月、銀座テアトルシネマにて公開 配給:クレストインターナショナル <ドラマ> |
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『美しい人』 原題:La Belle Personne 2008年 88分 | ||
監督:クリストフ・オノレ 出演:ルイ・ガレル、レア・セイドゥ、グレゴワール・ルプランス=ランゲ 日本配給未定作品 <ドラマ> |
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『顧客』 原題:Cliente 2008年 105分 | ||
監督:ジョジアーヌ・バラスコ 出演:ナタリー・バイ、エリック・カラヴァカ、イザベル・カレ、ジョジアーヌ・バラスコ 日本配給未定作品 <ドラマ> |
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『コード』 原題:Le Code a changé 2008年 100分 | ||
監督:ダニエル・トンプソン 出演:ダニー・ブーン、パトリック・ブリュエル、エマニュエル・セニエ、クリストファー・トンプソン 日本配給未定作品 <コメディー> |
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『伯爵夫人』 原題:La Comtesse 2009年 | ||
監督:ジュリー・デルピー 出演:ジュリー・デルピー、ダニエル・ブリュール、イーサン・ホーク 日本配給未定作品 <ホラー> |
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『西のエデン』 原題:Eden à l'Ouest 2008年 110分 | ||
監督:コスタ・ガヴラス 出演:リッカルド・スカマルチョ、ジュリアナ・コーラー、ファティ・アキン 日本配給未定作品 <ドラマ> |
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『華麗なるアリバイ』(仮) 原題:Le Grand Alibi 2007年 93分 | ||
監督:パスカル・ボニゼール 出演:ミュウ=ミュウ、ランベール・ウィルソン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ピエール・アルディティ、アンヌ・コンシニ、マチュー・ドゥミ 2010年上半期 Bunkamuraル・シネマほかにて公開 配給:ムービーアイ <サスペンス> |
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『ジョニー・マッド・ドッグ』 原題:Johnny Mad Dog 2008年 93分 | ||
監督:ジャン=ステファン・ソヴェール 日本配給未定作品 <ドラマ> |
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『殉教者』 原題:Martyrs 2008年 100分 | ||
監督:パスカル・ロジエ 出演:ミレーヌ・ジャンパノイ、マルジャーナ・アラウィ 日本配給未定作品 <ホラー> |
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『ミュータント』 原題:Mutants 2007年 85分 | ||
監督:ダヴィッド・モルレ 出演:エレーヌ・ド・フージュロル、フランシス・ルノー、ディダ・ディアファ 日本配給未定作品 <ホラー> |
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『未来の食卓』 原題:Nos enfants nous accuseront 2008年 112分 | ||
監督:ジャン=ポール・ジョー 初夏、UPLINK Xほかにて全国公開 配給:アップリンク <ドキュメンタリー> |
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『サガン ―悲しみよ こんにちは―』 原題:Sagan 2008年 122分 | ||
監督:ディアーヌ・キュリス 出演:シルヴィ・テステュー、ピエール・パルマード、ジャンヌ・バリバール 初夏Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座ほかにて公開 配給:ショウゲート <自伝> |
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『シークレット・ディフェンス』 原題:Secret Défense 2008年 100分 | ||
監督:フィリップ・ハイム 出演:ジェラール・ランバン、ヴァヒナ・ジョカンテ、ニコラ・デュヴォシェル 日本配給未定作品 <スパイ映画> |
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『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』 原題:Survivre avec les loups 2007年 119分 | ||
監督:ヴェラ・ベルモン 出演:マチルド・ゴファール、ヤエル・アベカシス、ギイ・ブドス、ミシェル・ベルニエ 初夏、シャンテ シネほかにて全国公開 配給:トルネード・フィルム <ドラマ> |
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『ベルサイユの子』 原題:Versailles 2008年 113分 | ||
監督:ピエール・ショレール 出演:ギョーム・ドパルデュー、マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ 春、シネスイッチ銀座にて公開 配給:ザジフィルムズ <ドラマ> |
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短編プログラム6作品 |
公式 HP >> http://unifrance.jp/festival/
監督:フォン・イェン(馮艶)
音響設計:菊池信之(『サッドヴァケイション』)
中国最大規模の国家プロジェクトである三峡ダム建設。これによって長江沿岸の住民140万人が移住を余儀なくされる。ビンアイもその一人。夫と息子と娘の4人家族で、身体の弱い夫に変わり一家の大黒柱となって田畑を耕し暮らしていたが、自宅が移住計画地域だったために生活が一変する。国の保証金はわずかなもの。役人たちの言うとおりに街へと引っ越しても、田畑はなく、農業以外の技能も無い農民は暮らしていけない。周囲の人々が次々とお金をもらって移住していく中、ビンアイは早くからここを離れないと決意して、脅し、なだめ、すかしてくる役人たちに必死に抵抗する。「わたしは強情なのよ」と笑いながら。
役人たち相手に抗議し続けるビンアイのパワーに圧倒されっぱなし。きっと自分だったら早々に疲れ切って降参しているだろう。家族のため、どんなに追い詰められても諦めない強さに感嘆する。しかし、夫や子どもを気遣うさまや、娘のころの恋の話をはにかみながら話す彼女は、いたって普通の女性の表情だ。ジャ・ジャンクー(賈樟柯)監督の『長江哀歌』や、リ・イーファン(李一凡)、イェン・ユィ(鄢雨)監督の『水没の前に』など、三峡ダム建設に関連した社会変化をとらえた作品がこれまで上映されてきましたが、これはまずビンアイという人物の魅力に惹きつけられ、人間の尊厳について感じられる作品です。(梅)
山形国際ドキュメンタリー映画祭2007 アジア千波万波 小川紳介賞(グランプリ)/コミュニティシネマ賞2007
2008/中国/カラー/117分/DVカム
配給協力:コミュニティシネマ支援センター
配給:ドキュメンタリー・ドリームセンター
★2009年3月7日(土)より、ユーロスペースにてロードショー
★アンコール上映(>> 公式サイトの劇場情報)
特別記事『長江にいきる 秉愛(ビンアイ)の物語』フォン・イェン(馮艶)監督インタビューもご覧下さい。
公式 HP >> http://www.bingai.net/
監督・脚本:ジョン・パトリック・シャンリィ
原作戯曲: ジョン・パトリック・シャンリィ 『ダウト 疑いをめぐる寓話』
製作: スコット・ルーディン、マーク・ロイバル
製作総指揮: セリア・コスタス
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:ハワード・ショア
出演:メリル・ストリープ(シスター・アイロシス)、フィリップ・シーモア・ホフマン(フリン神父)、エイミー・アダムス(シスター・ジェイムス)、ヴィオラ・デイヴィス
©2008 MIRAMAX FILMS CORP.ALL RIGHITS RESAERVED.
1964年、ケネディ大統領暗殺のニュースに全米が揺れたころ、ニューヨーク・ブロンクスにあるカトリック系教会学校の校長シスター・アイロシスはある疑惑を抱いていた。新米教師のシスター・ジェイムスの報告によると、フリン神父が一人の生徒を礼拝堂に呼び出し、その後の生徒の様子がおかしいという。フリン神父は生徒にも人気の進歩的な教師でもあり、呼び出されたのは学校で唯一の黒人生徒だった。厳格で鉄の意志を持つアイロシス校長は、彼らが「不適切な関係」を持ったのではないかと疑い、それはしみのように拡がっていく。純真なシスター・ジェイムスはアイロシス校長の頑迷さに違和感を持ち、フリン神父の釈明を信じようとする。全ては校長の誤解なのか?真実はどこにあるのか?
映画賞(主演男優・女優、助演女優)にノミネートされている話題作。監督は『生きてこそ』『月の輝く夜に』などの脚本家でもあります。メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンの対決シーンが白眉。その緊張感ったら、ガラスがびりびり言うんじゃないか?ってくらいでした。全編の緊張感を和らげるのが、純真な若き尼僧役のエイミー・アダムスです。『魔法にかけられて』でも年齢不詳の愛らしさ全開でした。
1964年という時代設定も面白く、会話の妙が舞台劇にぴったりだなぁ、と思いながら見ていたら、元々そうでした。戯曲もジョン・パトリック・シャンレー。2005年にトニー賞とピューリッツア賞をW受賞していました。日本でも文学座で公演されています。時間が止まっているかのような修道女たちの生活と神父たちの夕餉の違いなど、細かい描写もお見逃しなく。(白)
2008/アメリカ/カラー/1時間45分/ビスタサイズ/
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
宣伝・問い合わせ:ドラゴン・キッカー
公式 HP >> http://www.movies.co.jp/doubt/
監督:ロドリゴ・ガルシア
脚本:ロニー・クリステンセン
撮影:イゴール・ジャデュー=リロ
プロダクションデザイン: デヴィッド・ブリスビン
出演:アン・ハサウェイ(クレア・サマーズ)、パトリック・ウィルソン(エリック・クラーク)、デヴィッド・モース(アーキン)、アンドレ・ブラウアー(ペリー)、クレア・デュヴァル(シャノン)、ダイアン・ウィースト(トニ)
(c)2008PASSENGERS PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
深夜の電話で呼び出されたセラピストのクレアは、飛行機の墜落事故の生存者に引き合わされる。恩師のペリーは彼女をその5人の担当セラピストに任命。普通はショック状態に陥る患者と違って、エリック・クラークだけは明る過ぎる、特に注意するようにという。エリックはグループセラピーの誘いを断わり、個別訪問のカウンセリングなら受け入れると答える。プロのカウンセラーとして患者と一定の距離をおこうとするクレアに、毎回大胆に言い寄ってくるようになるエリック。なぜかコーヒーの好みや家族のことを知っている彼にクレアは困惑する。
初監督作品『彼女を見ればわかること』でいきなりカンヌ映画ある視点部門グランプリを獲得したロドリゴ・ガルシア監督の新作。飛行機事故の生存者にカウンセリングを行うことになったセラピストとその患者。現れる不審な男性。問いに答えようとしない航空会社の職員。この事故には秘密があるのでは、と真実を追究していくクレアをアン・ハサウェイ。大きな瞳は何も逃すまいとしているように見えます。初めて見たのは『プリティ・プリンセス』(2001)でしたがいつのまにかベッドシーンも似合う大人になっていました。ミステリーとロマンスがほどよく詰め込まれています。(白)
2008/アメリカ/カラー/93分/スコープサイズ/SRD/
配給:ショウゲート
(c)2008PASSENGERS PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://www.passengers.jp/
監督:三池崇史
脚本:十川誠志
原作:竜の子プロダクション
撮影:山本英夫
美術:林田裕至
メカ&キャラクターデザインリファイン:寺田克也
スタイリスト:伊賀大介
CGIディレクター:太田垣香織
音楽:山本正之、神保正明、藤原いくろう
主題歌:「Believe」嵐(ジェイ・ストーム)
出演:櫻井翔(ヤッターマン1号 高田ガン)、福田沙紀(ヤッターマン2号 上成愛)、生瀬勝久(ボヤッキー)、ケンドーコバヤシ(トンズラー)、岡本杏理(海江田翔子)、阿部サダヲ(海江田博士)、深田恭子(ドロンジョ)ほか
声の出演:滝口順平、山寺宏一、たかはし智秋
© タツノコプロ/ヤッターマン製作委員会
‐ヤッターマンがいる限り、この世に悪は栄えない‐
高田玩具店を継いだガンちゃんは、ガールフレンドの愛ちゃんと正義の味方ヤッターマン1号、2号に変身して、ロボットのヤッターワン、オモッチャマと共に地球の平和を守っている。性懲りもなく現れるドロンボー一味のドロンジョ、ボヤッキー、トンズラーは、泥棒の神様ドクロベエの命令で全て揃うと奇跡が起きるという「ドクロストーン」を探していた。4つに分かれたドクロストーンのうち2つを見つけた海江田博士は行方不明になり、一人残された娘の翔子はドロンジョたちに追われていた。翔子を助けたヤッターマンは、海江田博士とドクロストーンを探しに出発する。
1975年から放映されたTVアニメ「タイムボカン」シリーズ第2弾。数々の名文句とともに一世を風靡したアニメがまさかの実写版で帰ってきました!ヤッターマン1号に嵐の桜井翔、2号は『櫻の園』で映画初主演を果たしたばかりの福田沙紀。主役を食う人気だったドロンボー一味の配役がまた、アニメのキャラそっくり。ドロンジョ役の深田恭子はアニメよりも乙女チックで健康的なお色気を振りまきます。この3人には敢闘賞を差し上げたいです。
桜井翔の身長から割り出して、実物大に作ったというヤッターワン、懐かしい主題歌や決め台詞など見所はたくさん。ロボットや小さなビックリドッキリメカはもちろん、背景やさまざまな美術小物までスタッフたちが(きっと)大いに楽しみつつ苦心して作ったようすが伺えます。阿部サダヲの期待に背かない快・怪演に、びっくりゲストとドクロベエの姿も楽しみにご覧下さい。(白)
冒頭の“ハッチ公前”での戦いのシーンから、おぉ〜と感心。渋谷ハチ公前っぽいけれど、もっとカラフルでおもちゃ箱をひっくり返したような街が、ヤッターマンとドロンボー一味の戦いでいきなり瓦礫と化しているのですが、CGとはいえ実に手の込んだ作り込みで、思わず引き込まれます。ヤッターマンの基地や、ドロンボー一味のインチキ商売店、衣装や小物など、どれもポップなアニメの世界が絶妙なさじ加減で実写化されています。お笑いも超お約束でくだらないんだけど、つい笑ってしまうネタや、アニメの実写化ということで、実際やってみるとこんなに大変ですといった突っ込みなど、満席の完成披露試写会場は笑いに包まれていました。また、三池崇史監督ですから、お色気も決して手を抜きません。アメリカあたりに配給しようと思ったら子ども向けにはちょっとやばいんじゃなかろうかと、勝手に心配してしまうくらい、ヤッターワンが大変なことに! 是非劇場に笑いに行って下さい。(梅)
2008/日本/カラー/111分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタルサラウンドEX/
配給:松竹、日活
公式 HP >> http://www.yatterman-movie.com/
監督:中井庸友
脚本:大島里美
原作:原田マハ「カフーを待ちわびて」宝島社刊 日本ラブストーリー大賞
音楽:出演:玉山鉄二(明青)、マイコ(幸)、勝地涼(渡)、尚玄(俊一)、瀬名波孝子(おばあ)、宮川大輔(辰夫)、ほんこん(村長)、伊藤ゆみ(梨香)、白石美帆(成子)、高岡早紀(母)、沢村一樹(高木)
沖縄の小さな島の雑貨店で一人気ままに暮らす明青(あきお)。母は子供のころに出て行き、父は亡くなった。近所に住むおばあがなにくれとなく心配してくれる。神様のことばをきくユタであるおばあは、明青に「カフーが届くよ」という。カフーとは沖縄の言葉で、「果報」、「幸せ」という意味がある。どこからか迷い込んできた明青の愛犬も同じ「カフー」という名だ。その日、郵便受けに思いがけない手紙が届く。「絵馬の言葉が本当なら、私をお嫁さんにしてください」とあった。差出人は幸(さち)。明青は縁結びの神社の絵馬にちょっぴりの本心といたずら心で「嫁に来ないか?幸せにします」と書き、島と自分の名も入れていたのを思い出す。誰かの悪戯と思う気持ちと期待が半分でいるうち、本当に幸はやってきた。「今日からお世話になります」と、まぶしい笑顔を見せて。
沖縄の青い空と海のもと、繰り広げられる小さなお話。その空気が力を与えたのか、主演の玉山鉄二くんもマイコさんもよくなじんでいました。不思議な始まりのラブストーリーですが、島に住む人たちが暮らしていくために、開発か否かで話し合う場面も挿入。一人身で気楽に見える明青の心の痛みや、明るい幸の影の部分も想像させるストーリー運びはさすが大賞受賞作品です。原作にない新たなラストを加えて、さらに優しい映画になっています。スチール写真をたくさん使ったエンドロールの後、もう少しだけおまけがあるので、最後まで席を立たないで下さい。(白)
2009年/日本/カラー/121分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR
配給:エイベックス・エンタテインメント
公式 HP >> http://kafu-movie.jp/index.html
立案・主演:ブノワ・マジメル
監督 フローラン=エミリオ・シリ
出演 ブノワ・マジメル、アルベール・デュポンテル、ムハメッド・フラッグ
1959年、アルジェリア民族解放戦線(FLN)の動きが激化したカビリア地方タイダに、自由平等の民主主義を信奉するフランス志願兵テリアン中尉が赴任してくる。タイダは仏軍とFLNの双方から協力を強制される板挟みの村。テリアン中尉は女性達を撃とうとする部下を制止するが、武器を運ぶ女装のゲリラだった。「殺し合いでは戦争は終わらない、彼らにも権利を」と語っていた中尉だが、やがて犯罪は罰しなくてはならないと、ゲリラ掃討目的で民間人の家に火をつけることもいとわなくなる。
仏軍に所属するアルジェリア人兵士がフランス政府から貰った勲章を見せて処刑を免れる場面があります。一方、仏軍が敵としている解放戦線を率いる人物も大戦中には仏軍兵士として功績を残しているという設定。2008年のアラブ映画祭で上映された『デイズ・オブ・グローリー』(原題の直訳:原住民)は、第二次世界大戦で、アルジェリアや西アフリカ等、フランス統治下の人々が、“祖国”フランスを守る為にナチス・ドイツと戦った史実に基づく話。経済的理由で志願した者が多く、歩兵として前線に立たされ、昇進や食事面で白人と差別された様子が描かれていたのを思い出します。
フランスの保護領(間接統治)だったモロッコとチュニジアが1956年に独立する一方で、直轄統治のアルジェリアは独立を認められず、民族自立のための戦争も、十年前までフランスでは「国内事件」として扱われていたのだそうです。かつてのタブーの映画化を立案し自ら主演したブノワ・マジメルは、戦争を知らない世代。戦争に関わった祖父や、その世代の人々が口を閉ざしてきたアルジェリア独立戦争の現実を、世に知らしめる必要を感じて映画化を企画と語っています。
原題 L'Ennemi intimeは、「内なる敵」という意味。アルジェリアがフランスの一部であったこと、アルジェリアの人々が、フランス側、解放勢力側の二手に分かれて戦ったことを象徴しているタイトルでもありますが、何よりも、戦争という極限状態の中で人間を非道な行いに導くのは自分自身であるという意味を込めているとのことです。
今もイラクやパレスチナで、兵士が民間人の家に押し入る姿をニュースで目にすることが絶えません。そんな非道な行動をいとわなくなる彼らも、自分の意思というより権力者の思惑で戦地にいる戦争の犠牲者なのだと心が痛みます。(咲)
2007年/フランス/112分/スコープサイズ/カラー/ドルビーデジタル
配給:ツイン
公式 HP >> http://www.1959.jp/
作:長谷川伸
演出:寺崎裕則
配役:中村勘三郎(手取りの半太郎)、坂東玉三郎(酌婦お仲)、片岡亀蔵(荒木田の熊介)、市川高麗蔵(半太郎従兄弟太郎吉)、片岡仁左衛門(鮫の政五郎)
行徳の船着場。女衒から逃げ出した酌婦お仲が身を隠している。生来の博打好きがたたり江戸を追われた半太郎は、水音を聞きつけ身投げしたお仲を救う。これまで不幸続きだったお仲は、下心なく自分を助けた半太郎に、初めて男らしい男を見た思いがする。半太郎とお仲は仲睦まじい夫婦となり、半太郎は職も得るが博打止めることができない。
2003年の『野田版 鼠小僧』から始まったシネマ歌舞伎の10作目。戦前戦後にわたり多くの名作を残した長谷川伸の代表作です。「一本刀土俵入り」や「瞼の母」、「雪の渡り鳥」、「関の弥太っぺ」など一度は見たり聞いたりしたことがあるはず。
この「刺青奇偶」は昭和7年に六代目菊五郎が初演、先代の勘三郎から当代の勘三郎へと受け継がれてきたそうです。1999年に今回と同じ顔ぶれで上演されて以来、9年ぶりとか。円熟の配役陣での舞台が、劇場で楽しめます。歌舞伎座の席からはなかなか見ることができない、細かな表情や汗や涙までもくっきりと写し出します。遠くの観客にも届くように芝居をしている舞台の役者さんは、アップになるのは辛いかもしれません。生の舞台を観るのとは距離や温度差もあるでしょう。しかし気軽に見られて臨場感のあるこのシネマ版は、歌舞伎入門にぴったりです。(白)
2008年4月歌舞伎座にて撮影 カラー/88分
配給:松竹
(C)2009 松竹株式会社
監督:山口雄大
脚本:木田紀生
原作:阿部秀司(講談社ヤングマガジン連載)
撮影:小松高志
アクション監督:下村勇二
特殊メイク・特殊造型:西村喜廣
美術:福田宣
編集:佐藤連
音楽:松石ゲル
主題歌:misono 『球魂〜やる気・元気・その木の根っこ〜』
出演:石黒英雄(大河内三郎 )、板倉俊之(河井星矢)、橋本じゅん (石井武)、なだぎ武(如月聖之)、山本ひかる(如月春菜)、竹内力(久能徳次郎)、小沢仁志(大河内一郎)、小沢和義(大河内二郎)、佐伯日菜子、仲間由紀恵ほか
©2009「激情版 エリートヤンキー三郎」製作委員会真
本年度バカNO.1!史上最笑ヤンキーギャグムービー誕生!夜露死苦!!
非道の限りを尽くす極悪ヤンキーの兄二人を持つ大河内三郎。兄たちとは違って小心者、ゲーム好きな平凡な高校生だったが、兄の存在が大きな後ろ盾、いや大迷惑となりいつのまにやら徳丸学園総長にまつりあげられていた。副総長として軍資金集めをする河井は着々と三郎失墜を狙っている。全国のヤンキー一掃を画策する警視庁のエリート如月、はみ出し刑事の久能も加わり、まさに一触即発。そんな折、三郎は春菜ちゃんという可愛い女子高校生に出会い、初めてのふつーの青春に突入するはずだった・・・がっ!
『地獄甲子園』『魁!クロマティ高校THE MOVIE』などのギャグ漫画を実写化してきた山口雄大監督、これも負けず劣らず振り切った作品。ヤンキー高校生を演じるのは幾人かを除いて殆ど10歳以上、もしかしたら倍以上の年齢の大人が思い切りバカをやっていて、ここまでやるか!と思わず感心してしまうのでした。アクション監督に下村勇二さん。坂口拓さんもそんなのあり? な髪型で登場しています。掃き溜めに鶴&泥沼に蓮の仲間由紀恵さんが美しいです。そういえば「ごくせん」で先生でしたね。(白)
2008/日本/カラー/ビスタサイズ/
配給:東映
公式 HP >> http://eliyan.jp/
☆ゲストが参加するパーティチケットは、ツアー参加者でパーティチケットを希望された方、チケットぴあの前売り券のみになります。
上映作品 | 招待作品部門 |
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02/26 | クローズZEROII【オープニング】[ World premium ] |
02/27 | CHANDNI CHOWK TO CHINA (原題) |
02/27 | ピンクパンサー2 |
02/28 | 釣りキチ三平 |
02/28 | マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと |
02/28 | フロスト×ニクソン |
02/28 | スラムドッグ$ミリオネア |
03/01 | チェイサー |
03/01 | ベッドタイム・ストーリー |
03/01 | マダガスカル2【クロージング】 |
公式 HP >> http://yubarifanta.com/
期間:2009年02月24日 - 2009年03月15日
場所:東京国立近代美術館フィルムセンター 大ホール
主催者 : 東京国立近代美術館フィルムセンター・キネマ旬報社
2008年の日蘭修好通商条約締結150周年と2009年の日蘭貿易400周年を記念する「日本オランダ年2008-2009」にちなんで開催される映画祭。過去4回に渡って行われたオランダ映画祭(ぴあ主催で1989年、オランダ映画祭実行委員会主催で1998年、1999年、2000年)で上映された12本の作品と、あいち国際女性映画祭や山形国際ドキュメンタリー映画祭などで紹介された3本に加え、日本初公開作品3本、1980年以降のオランダ短篇アニメーション18本が上映されます。
特設ページ >>
http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2009-2special/index.html
公式 HP >>
http://www.nihonoranda.jp/
監督・共同脚本・プロデューサー:エラン・リクリス
共同脚本:スハ・アラフ(パレスチナ系イスラエル人女性)
出演:ヒアム・アッバス、マクラム・J・フーリ、クララ・フーリ
イスラエル占領下のゴラン高原マジュダルシャムス村。今日は3時に軍事境界線で結婚式が行われることになっている。村の娘モナが、シリアに住む親戚の人気俳優タレルに嫁ぐのだ。警察では、親シリア派で投獄されたこともある花嫁の父親を結婚式に行かせるなとやっきになっている。モナは姉のアマルと美容院に向うが、晴れやかな日のはずなのに二人とも悲しげなのは、軍事境界線を越えて嫁ぐとシリア国籍が確定し、イスラエル領の家族のところに戻れなくなるからなのだ。
約束の時間になりモナ一家が境界線に到着し、中立地帯を挟んだ柵の向うのシリア側にも花婿一行が遅れて現れる。モナの通行証にイスラエルの出国印が押され、国際赤十字のスタッフの女性がモナの通行証を持ってシリア側に手続きに行く。ところが、シリアの担当官は、イスラエルの出国印が押されていることを理由に許可できないという。ゴラン高原はシリア領なのだから、花嫁はシリア国内を移動するだけという次第だ。5ヶ月も待った許可の日に式を挙げられないなんてと嘆くモナ・・・
1967年の第三次中東戦争でシリア領のゴラン高原はイスラエルに占領され、さらに1981年、一方的にイスラエルに併合された。住民は望めばイスラエル国籍・市民権を取得できるが、シリアへの帰属意識が強く、ほとんどが無国籍者となっている。本作で描かれているモナの一家は、ドゥルーズ派というイスラームの少数派。ドゥルーズ派はシリア南部、レバノン山脈、ゴラン高原北部、イスラエル北部に多く住む人たちで、彼らの居住区を分断する形で国境線が存在している。レバノン映画『ラミアの白い凧』(ランダ・シャハール・サッバーグ監督)では、イスラエルとレバノンの国境地帯で暮らすドゥルーズ派の国境を越えての結婚が描かれている。ちなみに、「シリアの花嫁」で検索したら、軍事境界線を越えて嫁ぐ本物の花嫁の写真が出てきた。家族と涙ながらに別れを惜しむ姿も映画とそっくり同じ。境界線をはさんで拡声器を使って肉親どうしが会話している姿も、映画やニュースでよく見る日常で繰り返されている光景だ。
映画の中で、ちょっと救われた気持ちになったのは、境界線を警備するイスラエル兵が、「申し訳ない」「おめでとう」など、精一杯のアラビア語を使った場面。字幕ではそれがアラビア語だとわからないのが残念。
また、本作では父権の強い社会の中で女性が自立しようとする姿も描いている。姉のアマルは屋根の修理に来た男と成り行きで結婚したのだが、最近は些細なことで喧嘩が絶えない。人生をやりなおそうとアマルは大学進学を決意したが、それも反対されている。アマルは、父親が結婚式に出られるよう警察に談判しにいくなど勇敢な女性。大学に行く夢はきっと叶うと信じたい。なんといってもアマルは「希望」という意味なのだから。そして、分断されたドゥルーズ派の人たちが自由に行き来できる日のくることも切に願いたい。(咲)
モントリオール世界映画祭グランプリ、観客賞、国際批評家連盟賞、エキュメニカル賞の4冠受賞!
2004年/イスラエル=フランス=ドイツ/アラビア語・ヘブライ語・英語・ロシア語・フランス語/35mm/カラー/Dolby SRD/シネマスコープ/97分
後援:イスラエル大使館
文部科学省特別選定(成人向)文部科学省選定(青年向、家庭向)
配給:シグロ、ビターズ・エンド
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/hanayome/
監督:康 宇政(カン・ウジョン)
プロデューサー:安西志麻、米山靖
撮影:杉浦誠
構成協力:伊勢真一
語り:梅沢昌代
出演:柳家小三治、入船亭扇橋、柳家三三、立川志の輔、桂米朝
"記録を残すのが嫌いな人"を"記憶するドキュメンタリー映画"
テレビ取材なども極力さけて来た噺家・柳家小三治師匠が、上野・鈴本演芸場の「歌ま・く・ら」公演ならと、撮影を許可したそうです。高座はもちろんのこと、一般客が目にすることはできない楽屋裏、地方興行への移動のようすまで師匠によりそった映像が満載です。弟子を育て、自分を磨きつづけ、「遊びはまじめにやらなきゃ」という師匠のひととなりが現れて、試写室は笑顔がいっぱいでした。(白)
2009/日本/カラー/35mm/ビデオ/104分/
© 2009ドキュメンタリー映画『小三治』上映委員会
公式 HP >> http://www.cinema-kosanji.com/
監督・脚本:北川悦吏子
プロデュース:岩井俊二、小林武史
出演:北乃きい、岡田将生、溝端淳平、仲里依紗、成宮寛貴、白石美帆、大沢たかお
ヒロ(北乃きい)は大学受験を控えた高校3年生。親友のメメに、憧れのシュウ(岡田将生)に告白できないでいる辛さを相談する日々だったが、ふとした偶然から、シュウに「付き合ってください」と言われてしまう。有頂天で付き合い始めるヒロ。それなのに、シュウから早稲田大学に行きたいと聞かされて、地元北海道の大学志望のヒロは「東京行くのに私に告ってどうするつもり?」と口もきかなくなる。本気で早稲田はやめようとするシュウ・・・。はたして、二人の出した結論は?
「ロングバケーション」をはじめとする恋愛ドラマのヒット作を生み出した脚本家・北川悦吏子の初監督作品。
遠い昔の高校生の頃の、熱かったけど、思えば恋に恋したような青春の日々を懐かしく思い出しました。若いっていいなぁ〜 きいちゃん演じるヒロが、密かに思っている時には控え目な女の子だったのが、付き合い始めたとたん、めちゃくちゃ我がままになってしまって、えっ〜?と驚かされるのですが、思えば、女の子って相手が思ってくれている確信を持てれば言いたい放題になるもの。精一杯気を使うシュウも健気で素敵です。大沢たかお演じる書道の先生が「後先考えて行動する男なんて、男じゃない」とヒロに語りますが、女も同じ。もう一度、あの頃に戻って、もっともっとやりたいように人生やり直したい! どうぞ若い方は、悔いのないように存分に好きなことをしてくださいね。(咲)
2009/日本/85分/カラー/ヴィスタ/DSR
配給:シネカノン
★2009年 2月21日(土)公開
ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷アミューズCQN改め)、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://halfway-movie.jp/
監督:ピエール・イヴ・ボルジョー
出演:ユッスー・ンドゥール、モンセフ・ジュヌ
音楽:ハーモニー・ハーモニアーズ、ユッスー・ンドゥール、モンセフ・ジュヌ
ユッスー・ンドゥールは、故国セネガルの伝統音楽に欧米ポップスの要素等も取り入れて独自の音楽世界を確立している世界的ミュージシャン。スイスに住む盲目のジャズ・ピアニスト、モンセフ・ジュヌを音楽ガイドとして、アメリカの黒人音楽のルーツを辿る旅に出る。かつて奴隷売買の拠点だった母国ゴレ島から出発し、アメリカ、ヨーロッパを巡り、再びゴレ島に戻る旅は、奴隷貿易の苦汁に満ちた過去と向き合うものだった。
セネガルの首都ダカール沖合いに浮かぶゴレ島。アフリカの西端に位置するこの島は16世紀半ばから19世紀半ばまで300年続いた奴隷貿易の積み出し港だった。「帰らずの扉」からアメリカなどに送り出された黒人奴隷は、1500万~2000万人。各地で名前を変えさせられ、子孫は今もアフリカの名を語っていない・・・ 死ぬまで歴史を語り続けるという「奴隷の館」の創始者の老人。歌を通じて同胞の思いに近づきたいと語るユッスー。子供たちに、黒人に何があったかを歌で伝え、さらに、「可能性は無限大、魂は必ず空に届く。歴史を胸に刻み前に進もう」と歌を捧げる。悲しい過去は忘れ去ってはならないけれど、それを許すことが平和共存への道だろう。スイス出身のボルジョー監督もユッスー・ンドゥールも、本作撮影中にオバマ大統領の誕生を想像しただろうか。(咲)
スイス /2006 年 /112 分 / カラー / 仏語・英語 /35 mm
配給:アルシネテラン
協力:エスピーオー
後援:スイス大使館、社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
★2月14日(土)より、シアターN渋谷にてロードショー
解説 HP >> http://www.alcine-terran.com/list/schedule/return-to-goree/
監督:横山一洋
脚本:友松直之
原作:立原あゆみ「極道の食卓」(秋田書店「プレイコミック」連載)
主題歌:Ryu「遅刻」(ZAIN RECORDS)
出演:松平健(久慈雷蔵)、中村譲(若頭 吉田)、岩佐真悠子(咲子)、久保翔(良平)、斎藤工(マルハ)、大門正明(牛田)、ダイアモンド★ユカイ(ゼブラ)、秋本奈緒美(妻)ほか
© 立原あゆみ(プレイコミック)/「極道の食卓」製作委員会
濁組の組長・久慈雷蔵は今までできなかったことをしようと、55歳にして熟年離婚。組員たちには内緒で夜間高校に通い、一食一食を心をこめて食卓へ向かうことを決意する。昼はヤクザ、夜は高校生の雷蔵は、クラスメートの咲子から「クジラ」というあだ名をもらい、夜間部の番長だという良平から目をつけられる。
ライバルの牛田組の組長は、邪魔な雷蔵のシマを横取りしようと画策していた。そんなとき雷蔵の前に子分志願の若者、マルハこと羽丸飛が現れる。
原作は立原あゆみのコミック(未見)。わざわざ離婚しなくても「学・食」はめざせると思うのですが、自由になってイチからと決心したのでしょうか。一人だけ学生服というのもまず「形」から入りたい主人公のこだわりが見えます。松平健氏は料理好きだそうで、この久慈雷蔵が子分たちにうんちくをかたむけながら、手料理を作る場面がはまっています。完熟トマト入りつゆで食べる流しそうめん、掘りたて筍の味噌汁が美味しそうでした。複雑な立場のマルハ(魚肉ソーセージが出てきたので笑った)を演じた斎藤工くんが目力あって良かったです。(白)
2008/日本/カラー/
宣伝・配給:エクセレントフィルムパートナーズ
公式 HP >> http://www.exf.info/kujira/
監督:ダニエル・リー(李仁港)
アクション監督:サモ・ハン(洪金寶)
出演:アンディ・ラウ(劉徳華)、マギー・Q(李美琪)、サモ・ハン(洪金寶)、アンディ・オン(安志杰)、プー・ツンシン(濮存[日斤])、ヴァネス・ウー(呉建豪)、ティ・ロン(狄龍)、ダミアン・ラウ(劉松仁)
戦乱の世が続く中、貧しい家に生まれた趙雲(アンディ・ラウ)は祖国の統一を願って、劉備の軍に志願した。そこで出会ったのは、同郷の先輩である平安(サモ・ハン)。二人は厳しい戦いの中で絆を深めていく。劉備の軍師となった諸葛亮(プー・ツンシン)の助言により曹操(ダミアン・ラウ)の陣に奇襲をかけたとき、趙雲は平安の命を救い、敵の大将を討ち取る手柄を挙げるが、すべてを平安に譲った。その結果、平安は劉備の家族を警護する大役を任されることになる。ところが、曹操率いる大軍に攻め込まれ、劉備軍が逃亡する中で、平安は劉備の夫人たちと一人息子の阿斗を見失うという失態を演じる。趙雲は激怒する関羽(ティ・ロン)や張飛(チェン・ツィホイ)を押さえ、劉備に救出を誓い、一人敵軍の地へと飛び出していく。奇跡的に無事だった阿斗を見つけた趙雲は、萬余の敵をなぎ倒し、曹操の剣まで奪って帰還するという超人ぶりを発揮する。その鬼神のごとき戦いぶりは、曹操の孫・曹嬰(マギー・Q)の記憶に焼き付いた。それ以来、趙雲は劉備の厚い信頼を得て出世していく。平安をそんな趙雲を見守るだけだった。
三国志に登場する武将の中でもひときわ人気の高い趙雲子龍。その生涯を架空の人物である平安の目を通して描いた『三国志ー趙雲伝』といった内容です。このサモ・ハン演じる平安の人間くささが、完全無欠のヒーロー趙雲といい対比になっています。もう1人の架空の人物がマギー・Q演じる曹嬰。女性ながら曹操の才能と気質をよく受け継いでいる将軍という、ちょっと突飛な設定ですが、これがなかなかはまっていて、かっこいいんです。晩年の趙雲の配下で勇猛果敢に戦う武将・[登卩]芝役のアンディ・オン(ドレッド・ヘア!)がまたかっこいいですよぉ。とはいえ、これはまぎれもなくアンディ・ラウの映画。久々にアンディによる男の滅びの美学を観たって気がします。『レッドクリフ PartII』の公開前に、また違った角度から描かれた三国志を観るのも面白いと思いますよ(梅)
2008/中国/カラー/102分/シネマスコープ/Dolby Digital
提供・配給・宣伝:プレシディオ
公式 HP >> http://www.sangokushi-movie.jp/
監督・脚本・編集:竹馬靖具
撮影・編集:宗田英立大
出演:竹馬靖具、藤澤よしはる、弁、志賀正人
悟は母と二人暮らしで、20歳。母の言うことには「うるさい」としか答えない。ゲームと漫画とジャンクフードと寝ること以外の一切を拒否して暮らしている。
ある朝、母の友人の藤澤という男が現れて、半ば強引に外に連れ出された。連れて行かれたのはワイナリー。今日から悟もそこで一緒に働くことになっているという。戸惑いながらも拒むこともできず、言われるがまま作業を始める。藤澤は何とか悟に社会生活を送れるようにしてやりたいと思って働きかけるのだが、悟の反応は鈍い。
主人公はニートであることに引け目を感じながらも、生活を変えられないでいる。何か親との確執があるようだけれど、それも今や現状の不満をただ誰かのせいにしたいだけで、そのことは本人もうすうす感じている。親を邪魔者扱いする割には、親がいなければ生活していけない。強引に外に連れ出されても、著しく社会性が欠如している自分を再認識して自己嫌悪に陥る。ニートと呼ばれる若者の完全に出口を見失っている絶望感が、非常に端的に描けています。独学で、初監督作品を撮ったそうですが、堂々と腰の据わった撮りっぷり。
どうしようもないところまで追い詰められて、はじめて他者に曝した激しい感情が、その先への扉を開く鍵となり、ようやく一条の光が差し込みます。やはり家族以外の誰かの助けが必要だということでしょうか。あんなジャンクフードしか食べてなかったら、脳すら上手いこと働かなくなるだろうし。助ける方は結構しんどいんですけどね。(梅)
2008年レインダンス映画祭正式招待作品
2008/日本/カラー/87分/DV
製作・配給:chiyuw
公式 HP >> http://ima-bokuwa.com/
監督・脚本:宮藤官九郎
撮影:田中一成(J.S.C)
音楽:向井秀徳
メインテーマ:銀杏BOYS
衣装:伊賀大介
出演:宮崎あおい(栗田かんな)、ユースケ・サンタマリア(時田)、勝地涼(マサル)、ピエール瀧(金子)、佐藤浩市(アキオ)、木村祐一(ハルオ)、田口トモロヲ(ジミー)、三宅弘城(ヤング)ほか
©2009「少年メリケンサック」製作委員会
レコード会社の派遣OLかんな25歳、至上命令は新人発掘!動画サイトで見つけたパンクバンド「少年メリケンサック」を時田社長に推薦。イケメンボーカルのアキオを探し出し、契約しようと向かった先には、酒びたりの中年男がいた。かんなが見たのは25年前の映像で、バンドはすでに解散していた。しかし会社のプロジェクトは動き出し、サイトはパンク寸前、全国ツアーも次々と決まっていく。どうする?かんな!
クドカンこと宮藤官九郎監督4年ぶりのオリジナル脚本&監督作品。監督自身『爆裂都市』を観て以来のパンクファンで、パンクバンド「グループ魂」のギタリストでもあります。
「篤姫」主演中にも関わらず出演を快諾したという宮崎あおいさんはもちろん、佐藤浩市さんはじめおっさんバンドのメンバーたちがみな楽しそう。豆絞りの手ぬぐいが似合いすぎる木村祐一さんは別にして、出る人出る人テンション高く、そのはじけっぷりが見ものです。パンク好きには驚きの方々がちょっとずつ顔を出しているのでお見逃しなく。(白)
2008/日本/カラー/113分/ビスタサイズ/ステレオ/
配給:東映
2009©「少年メリケンサック」製作委員会
公式 HP >> http://www.meriken-movie.jp/
監督:ジェフ・F・キング
脚本・総指揮:スティーヴン・セガール
撮影:トム・ハーティング
音楽:ジョン・セレダ
出演:スティーヴン・セガール(ジェイコブ)、ホリー・エリッサ・ディグナード(フランキー)、クリス・トーマス・キング(ストーム)、マイケル・フィリポウィック(ラザラス)、カリン・ミッシェル・バルツァー(セエリーヌ)、マーク・コリー(ビリー・ジョー・ヒル)アイザック・ヘイズ(コロナー)
メンフィス市警のジェイコブ・キングは“ライトニング(雷神)”との異名がある辣腕刑事。彼は子供のころ双子の弟を目の前で殺され、今でもその悪夢に襲われていた。相棒ストームとともに凶悪な犯人を追い、胸に爆弾を埋め込まれ手足を固定された女性を救出する。また一方では連続殺人犯の残した奇妙な記号を解読中だ。この事件の監視役として、FBIから女性捜査官フランキーが送り込まれてきた。
芸能生活20周年記念作品『弾突‐DANTOTSU-』が公開されたばかりのような気がしますが、久々にスティーブン・セガール脚本・主演です。ほとんど無表情に犯人と戦う刑事役。大魔神のような体型や貫禄なので、わめく小者相手とはすでに勝負がついています。そこまで痛めつけなくても、と相手が気の毒になるのは私だけではないでしょう。今回はバイオレンス度が上がっているようです。(白)
2008/アメリカ/カラー/96分/ビスタサイズ/SRD/R-15
配給:ムービーアイ
(C)2008 LEARNED PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://www.raijin-seagal.jp
監督・脚本・撮影:サンドリーヌ・ボネール
出演:サビーヌ・ボネール
11人兄弟の八女であるサビーヌは、陽気で愛らしく、芸術的才能が豊かな少女だったが、幼い頃から同級生に「馬鹿サビーヌ」と、よくからかわれていた。彼女は特別のケアを要する病気(自閉症)を抱えていたのだ。大人になって、姉妹兄弟がそれぞれの人生を歩み出す中、一人、母親と暮らすサビーヌ。兄の死をきっかけに彼女の孤立感は増し、かんしゃくを起こして家族や自分自身に暴力的な行動を取るようになる。自閉症としての適切な診断を受けることなく28歳で精神病院へ。5年後に退院した時、美しかったサビーヌの姿は変わり果てていた。
『仕立て屋の恋』などの主演女優サンドリーヌ・ボネールが、1歳違いの妹サビーヌに焦点を当てた初監督長編ドキュメンタリー映画。サンドリーヌがホームビデオで撮った十代の頃のサビーヌは、さすが美人女優の姉に似た愛くるしい少女。精神病院退院後のサビーヌは、美しかった面影も感じられないほど、だらしなく太ってしまっていて、観ているこちらも唖然としてしまいます。なぜ、こんなことになってしまったのか? サンドリーヌは、愛する妹の姿をさらけだすことによって、自閉症に対して適切な対応が出来ない医療体制に疑問を投げかけているかのようです。同時に、家族の愛情がいかに治療に大切かも自問自答しているのだと、切々と感じました。日本での医療体制はどうなっているのでしょう? そんなことに無関心な私に気づきました。(咲)
第60回カンヌ国際映画祭 監督週間国際批評家連盟賞受賞
2007年/フランス/85分/video/カラー/1:1.66
日本語字幕:山浦裕子
字幕監修:市川宏伸(都立梅ヶ丘病院 院長)、島内智子(都立梅ヶ丘病院 医員)
協力:ユニフランス東京、フランス大使館、東京日仏学院、エールフランス航空
配給:アップリンク
★2009年2月14日(土)アップリンクほか全国にて順次公開
◆2/5(木)19:00〜 プレミア上映会開催!
本編上映後、サンドリーヌ・ボネール監督来日時の貴重なインタビュー映像を、今回に限り特別上映!
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/sabine/
本映画祭の上映作品は、どれも検閲を通していない作品であり、したがって中国では劇場公開できない作品である。しかし、始めから検閲を通さない意図でつくられたこれらの作品には、中国に暮らすさまざまな庶民の生活や想い・願いが投影されており、全ての作品・全ての監督が海外からの注目を浴びている。(主催者より)
昨年、ポレポレ東中野で開催された「中国インディペンデント映画祭」が横浜シネマ・ジャック&ベティでも開催されます。見逃した方は是非、足を運んでみて下さい。
A:「あひるを背負った少年」(監督:イン・リャン)
B:「アザーハーフ」(監督:イン・リャン)
C:「塵より出る」(監督:ガン・シャオアル)
D:「山清水秀ー息子」(監督:ガン・シャオアル)
E:「馬烏甲」(監督:ヂャオ・イエ)
F:「草芥」(監督:ワン・リーレン)
G:「高三」(監督:ジョウ・ハオ)
H:「最後の木こりたち」(監督:ユー・グアンイー)
2/14(土)11:00 G/ 13:20 A/ 15:40 B 2/15(日)11:00 H/ 13:20 C/ 15:40 D/ 18:00 E 2/16(月)11:00 A/ 13:20 B/ 15:40 G/ 18:00 H/ 19:50 F 2/17(火)11:00 D/ 13:20 C/ 15:40 F/ 18:00 E/ 19:50 A 2/18(水)11:00 G/ 13:20 D/ 15:40 C/ 18:00 A/ 19:50 B 2/19(木)11:00 B/ 13:20 F/ 15:40 E/ 18:00 H/ 19:50 D 2/20(金)11:00 H/ 13:20 C/ 15:40 D/ 18:00 F/ 19:50 G 2/21(土) 11:00 C/ 13:20 H 2/22(日) 11:00 E/ 13:20 B/ 15:40 A/ 18:00 G
3回券:3600円、一般:1500円、学生:1300円、中・高・シニア:1000円
※チケット1枚につき、1ドリンク付き ※その他、特別割引あり。詳細は公式サイトへ
監督:マイケル・アリアス
脚本:大森美香
原案:映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』
撮影:小松高志
照明:蒔苗友一郎
美術:岩城奈美子
音楽:Plaid
主題歌:アンジェラ・アキ「KNOCKIN’ON HEAVEN’S DOOR」
出演:長瀬智也(青山勝人)、福田麻由子(白石春海)、長塚圭史(小久保)、田中さんずい+民(辺見)、大倉孝二(安達)、黄川田将也(岸谷)、和田聰宏(御子柴)、三浦友和(長谷川)ほか
夢見ていたミュージシャンにもなれず、バイトでしのいでいた28歳の勝人。検査に行った病院で「大きな脳腫瘍がある、いつ死んでもおかしくない状態」と告げられ呆然とする。入院してもどうせ後は死ぬだけ、と病室で煙草を吸う始末。勝人から煙草を取り上げたのは先天性の病気で入院中の少女、14歳の春海だった。
余命1ヶ月の晴海は、子どもの頃から病院暮らしで海を見たことがない、という。「余命が短い」のだけが接点の二人は真夜中に厨房へしのびこみ、酒を飲んで盛り上がる。勝人は酔った勢いで車を盗み、エンディングくらい最高に、と春海と一緒に海へ向かって疾走する。その車はある企業の社長のもので、トランクにはとんでもないものが入っていた。
99年のドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』を元に、アニメ『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアス監督が手がけた初の実写長編作品。コメディ色の濃かった男性二人の物語を、28歳の男性と14歳の少女に翻案。前作のシロとクロのコンビを彷彿とさせる純なバディ&ロードムービーに作り上げました。ちぐはぐなコンビが車を盗み、行きがかりで強盗を働いてしまい、追われるうちに愛でも恋でもない繋がりができていくのが切ないです。アニメは細部まで作り手の思いのままになりますが、実写で生身の俳優さん相手ではそうはいきません。アリアス監督はそれも楽しまれたようです。
主演の長瀬智也さんは「20代の締めくくりに、今までの集大成となる作品となりました」と舞台挨拶で語っていました。死を達観しているクールな面と、外の世界を知らずに育った無邪気な面の2つを演じ分けた福田麻由子さん、すっかり女優さんの顔になりました。脇を固めるキャストも豪華、アンジェラ・アキさんの歌うテーマソングがいつまでも耳に残ります。余命3日なら何をするか、ちょっと考えてしまいました。(白)
2009/日本/カラー/1時間46分/スコープサイズ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://h-door.jp/
監督:ケニー・オルテガ
脚本:ピーター・バルソチーニ
撮影:ダニエル・アラニョ
振付:ケニー・オルテガ
音楽:デヴィッド・ローレンス
出演:ザック・エフロン(トロイ・ボルトン)、ヴァネッサ・ハジェンス(ガブリエラ・モンテス)、アシュレイ・ティスデイル(シャーペイ・エヴァンス)、コービン・ブルー(チャド・ダンフォース)、ルーカス・グラビール(ライアン・エヴァンス)、モニーク・コールマン(テイラー・マッカーシー)、オリシア・ルーリン(ケルシー・ニールセン)ほか
イースト高校バスケットボールチーム「ワイルドキャッツ」の最上級生は最後の試合に勝った。キャプテンのトロイは、チャドと一緒にアルバカーキ大学への推薦入学が内定しているが、ガールフレンドのガブリエラはスタンフォード大学へ進学。二人は1600kmも離れることになり、将来へ期待が膨らむと同時に不安と寂しさがつのっていた。
恒例のミュージカルのオーディションにクラス全員が参加と決定。その舞台に登場する4人、シャーペイとライアンの双子、ケルシー、トロイはジュリアード音楽院奨学生選考対象だった。やる気十分のシャーペイには転校生キアラがアシスタントにつく。トロイとガブリエラは二人でいる時間をできるだけ楽しく過ごそうとするが、期末試験、卒業パーティが刻々とせまってくる。
アメリカのディズニーチャンネルで大人気だった青春ミュージカルです。進路や恋愛の悩みはありますが、深刻にしすぎずとにかく楽しい歌とダンスがいっぱいの作品です。そんな青春はうそ臭い? いえいえそんな夢のような映画があってもいいじゃないですか。世界中に広まった人気が、こんな明るい作品が見たかったという証拠です。多くのコンサートの制作、振り付けをしてきたオルテガ監督はこの作品に、今まで舞台や映画に登場したミュージカルのあらゆる要素を取り込みました。若い観客たちに古き良きハリウッドやブロードウェイを観せたかったのですって。
東京では12/6にスペシャル前売り券が発売されましたが、2500人が早朝から新宿ピカデリーに列をなし、1000枚が即完売。このうち500枚にはポスター、ポストカードのほか「応募カード」がついていて、応募した中から50人が出演者の登場するイベントに招待されます。主演のザック・エフロンとヴァネッサ・ハジェンス来日が決定しているそうですから、あの素敵なカップルの笑顔が見られるのは楽しみですね。以前のリメイクではなくストーリーが続いているので、ぜひ1,2のDVDを観てから劇場版を映画館でどうぞ!(白)
2008/アメリカ/カラー/112分
配給:ウォルトディズニースタジオ モーションピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www.hsm-movie.com
監督・脚本:キム・ギドク
撮影:キム・ギテ
美術:イ・ヒョンジェ
音楽:ジバク
出演:オダギリ ジョー(ジン)、イ・ナヨン(ラン)、パク・チア(ヨン)、キム・テヒョン(ランの昔の恋人)、チャン・ミヒ(精神科医)ほか
ある夜、ジンは恋人を追って車を走らせているが、突然路地から飛び出してきた車にぶつかってしまう。それでもなお恋人の車を追おうとすると、飛び出してきた男を引きそうになり急停止した。
そこでようやく夢であることに気がつくが、そのあまりの生々しさに不安を抱いて、現場に行ってみると、本当に事故が起きている。警察は監視カメラの映像から、ランを検挙するが、ジンはこの事故は自分の夢のせいだと訴えるのだった。
キム・ギドク監督とオダギリ ジョーのコラボレーションで話題の作品は、胡蝶の夢をモチーフにした愛の物語。別れた恋人を忘れられない男と、分かれた恋人を憎み続ける女が、夢によってつながったために始まる悲劇的な愛。奇妙な設定ながら、様々な愛の側面を端的にリアルに映し出す手腕は、さすがキム・ギドクと言えます。しかし、物語の終盤はちょっと無理があるように感じました。オダギリ ジョー一人だけ、すべてのセリフを日本語で通しているのは、昨今の中国映画で北京語と広東語で普通にやりとりしているのを見慣れているためか、さほど気にならなかったのですが、そのセリフがすべてですます調なのがどうにも不自然で気になります。
キム・ギドク監督の映画は美しい映像に定評がありますが、今回も主人公たちが住む古い韓屋や寺院などの美しさに目を奪われました。(梅)
第28回韓国映画評論家協会 監督賞受賞
2008/韓国/カラー/93分/35mm/アメリカンヴィスタ/ドルビーSRD
配給:スタイルジャム 宣伝:ミラクルヴォイス
(C)2008 KIM KI DUK FILM All Rights Reserved
公式 HP >> http://www.hi-mu.jp/
監督:アレクシ・タン(陳奕利)
製作総指揮:ジョン・ウー、テレンス・チャン
脚本:アレクシ・タン、ジアン・タン、トニー・チャン
撮影:ミッシェル・タビリオ
出演:ダニエル・ウー(フォン)、スー・チー(ルル)、チャン・チェン(マーク)、リウ・イエ(ターカン)、トニー・ヤン(シャオフー)、リー・シャオルー(スーチュン)、スン・ホンレイ(ホン)
病気の母と妹を抱えるフォンは漁師として働いていたが薬代も出すことができない。幼馴染の親友シャオフーの兄ターカンが、上海のキャバレーでボーイをするという。フォンも家の助けになればと、3人で上海へ行くことにする。人力車を引くフォンとシャオフーはターカンの働くキャバレー「天堂(天国)」を訪れる。目も眩むようなステージで歌うルルにフォンは釘付けになる。ルルはキャバレーのオーナーで裏社会のボス、ホンの愛人だった。純朴なフォンにルルはホンに近づかないよう忠告するが、出世欲に取り付かれたターカンに引きずられ、シャオフーもフォンも危ない道に足を踏み入れつつあった。
久しぶりに香港映画を観ました。ストーリーは田舎から成功しようと出てきた青年たちが、魔都上海に飲み込まれていくという、わりあい先の読めるものです。幼いときから兄弟のように育ってきた3人が道を違えるところをもっと書き込んだら、悲劇が深くなったかなと後で思いました。中国、香港、台湾の若手イケメンくんが出ているし、スー・チーは綺麗だし眼福。これだけのキャストを活躍させるのに、もう少し長くても良かったんじゃないかしら。殺し屋のチャン・チェンの名前がマークで、銃を手にスローモーションで進むのに一人ウケておりました。(白)
2007/台湾・香港/カラー/95分/シネマスコープ/北京語
配給:エスピーオー
監督:レニー・ハーリン
脚本:マシュー・アルドリッチ
撮影:スコット・キーヴァン
音楽:リチャード・ギブス
出演:サミュエル・L・ジャクソン(トム・カトラー)、エド・ハリス(エディ・ロレンゾ)、エヴァ・メンデス(アン・ノーカット)、キキ・パーマー(ローズ・カトラー)ほか
元警官のトムは、14歳になる一人娘のローズと穏やかに暮らしていた。彼の仕事はクリーナー。それも事故や事件、孤独死などの現場を清掃するというタフでなければ勤まらない特殊な職業だ。ある日担当刑事の名で殺人現場の清掃の依頼があり、その邸宅へ向かい、しみ一つ残さず痕跡を除去した。翌日合鍵を返そうと戻ると、女主人は清掃を頼んだ覚えはないという。とっさに取り繕ったトムは戻って書類を確認したが、その依頼人はどこにも存在していなかった。そして実業家のジョン・ノーカットが行方不明とニュースが流れる。TV画面にはトムが清掃したあの邸宅が写っていた。
CTS Decon(Crime and Trauma Scene Decontaminaition:犯罪および精神的外傷となる現場の除去、浄化)、アメリカに実在するこの特殊な職業のことを初めてラジオで聞いたのは脚本家のマシュー・アルドリッチ。プロデューサーに企画を話し、それが監督をしたがっていたサミュエル・L・ジャクソンへ。彼は大いに気に入って主演することを熱望、脚本を友人のレニー・ハーリンに送り、監督が決定したのだそうです。
今まで表立って取り上げられたことはなかったけれど、犯罪も事故も自然死も日常的にあるのですから、誰かが担ってきた仕事です。綿密なリサーチを元に薬剤や手順の細部まで再現した清掃シーンは、その静かさといい、無駄のない動きといい『おくりびと』を連想させました。この職業を選ぶにいたったトムの過去や警察内部の汚職事件も絡めて、真実を追究するミステリーになっています。(白)
2007/アメリカ/カラー/90分/シネマスコープ/PG-12/
配給:リベロ、AMGエンタテイメント共同配給
監督:マキノ雅彦
脚本:輿水康弘
原案:小菅正夫「〈旭山動物園〉革命-夢を実現した復活プロジェクト」(角川書店刊)
撮影監督:加藤雄大(J.S.C)
動物撮影:今津秀邦
美術:小澤秀高
音楽:宇崎竜童
出演:西田敏行(滝沢/園長)、中村靖日(吉田強/獣医・飼育係)、前田愛(小川真琴/獣医・飼育係)、堀内敬子(池内早苗)、長門裕之(韮崎飼育係)、六平直政(三谷飼育係)、塩見三省(砥部飼育係)、岸部一徳(柳原飼育係)、柄本明(臼井飼育係・絵本作家)、笹野高史(磯貝商工部長)、梶原善(三田村市議会議員)、平泉成(上杉市長)、萬田久子(平賀市長)
北海道旭川市の旭山動物園に新しい飼育係がやってきた。子供のころから昆虫の好きだった吉田強。人付き合いが苦手な吉田をベテラン飼育係たちが迎え入れた。入園者数が下降線を辿り、修繕費用もなかなか捻出できないこの動物園を存続させようと、滝沢園長は今日も奔走している。客集めのために市が導入したジェットコースターは、そこだけの集客にとどまった。園長たちは動物園の魅力を伝えようと、飼育係による「ワンポイントガイド」や「夜の動物園」など、新しい試みを次々と実行していく。しかし、侵入したキタキツネによるエキノコックス症に動物が感染し、閉園の危機に見舞われる。
マキノ監督は旭山動物園のドキュメンタリーを観て、映画化を思いついたところ2006年のTVドラマで園長を演じることになりました。以来、足しげく旭山に通い、小菅園長を始め飼育係の方々と交流を深めていったそうです。たくさん聞き貯めた昔話がこの作品となって花開きました。外からは見ることができない、内側でのご苦労や喜びなどが詰まっています。危機にあたって奮闘した経緯などもっと詳しく知りたい方は、原作ほか書籍が多く出版されていますので、そちらも。できれば実際に旭川まで足を運んで、旭山動物園の「行動展示」をゆっくり見たいものです。(白)
2009/日本/カラー/112分/ビスタサイズ/SRD/
製作:角川映画 日本映画ファンド NTTドコモ
配給:角川映画
宣伝協力:マジックアワー
配給・宣伝:エスピーオー
©「旭山動物園物語」製作委員会
公式 HP >> http://www.asahiyama-movie.jp
監督・脚本・作詞:ジャック・ドゥミ
音楽/作曲:ミシェル・ルグラン
撮影:ジャン・ラビエ
美術:ベルナール・エヴァン
衣裳:ジャクリーヌ・モロー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ(ジュヌヴィエーヴ)、ニーノ・カステル・ヌオーヴォ(ギイ)、マルク・ミシェル(カサール)、アンヌ・ヴェルノン(母)、エレン・ファルナー(マドレーヌ)、ミレイユ・ペリー(ギイの伯母)
ジュヌヴィエーヴは16歳。父は亡くなり、母が細腕で切り盛りしてきた傘屋を手伝っている。車の修理工をしている恋人のギイは20歳、病弱な伯母を友人のマドレーヌへ託し、兵役へ行かねばならない。ジュヌヴィエーヴの母は、まだ若すぎるとギイとの結婚に反対するが、戦線に出る前夜二人は結ばれる。妊娠したジュヌヴィエーヴは、離れていることが不安でたまらない。それまで母娘を援助してきた宝石商のカサールは、事情を知った上、ジュヌヴィエーヴに求婚する。やがてギイが怪我をして帰国するが、すでに店は閉められていた。
デジタルリマスター版での上映です。 ずいぶん前に観たので、ドヌーブの役が「傘屋さんの娘で未婚の母になる」というところだけ記憶にありました。全部の台詞が歌だったことや、詳しいストーリーをすっかり忘れていたので新鮮。昔はジュヌヴィエーヴの気持ちに重ねて観たのですが、今は若い二人よりも、母親の気持ちのほうに親近感を覚えます。同じ映画でも観る時期で変わるものです。歌はそれぞれ歌手による吹き替えで、母役の歌はミシェル・ルグランの実姉のクリスチャンヌ・ルグランがあてています。オープニングは俯瞰で道行く人々が撮られ、色傘やレインコートの鮮やかな色が動く雨のシーンがおしゃれです。この作品で大ブレイクした若く美しいドヌーヴと、スタンダードナンバーとなった音楽をお楽しみください。(白)
1964/フランス、ドイツ合作/1時間31分/イーストマンカラー/1:1.66/
配給:ハピネット 宣伝:マジックアワー
公式 HP >> http://demy.jp/
監督・脚本・作詞:ジャック・ドゥミ
音楽・作曲:ミシェル・ルグラン
撮影:ジャン・ラビエ
美術:ベルナール・エヴァン
衣裳:ジャクリーヌ・モロー、マリー・クロード・フーケ
振付:ノーマン・ミーン
出演:フランソワーズ・ドルレアック(ソランジュ)、カトリーヌ・ドヌーヴ(デルフィーヌ)、ジーン・ケリー(アンディ・ミラー)、ジョージ・チャキリス(エチエンヌ)、ジャック・ペラン(マクサンス)、ダニエル・ダリュー(母イヴォンヌ)、ミシェル・ピコリ(シモン・ダム)、グローヴァー・デイル(ビル)
南フランスの港町ロシュフォールに祭りが近づき、旅芸人のエチエンヌとビルが到着。広場でショウの準備を始めた。カフェの女主人イヴォンヌには美しい双子の娘たち、ソランジュとデルフィーヌ、年の離れた息子のブブがいた。水兵のマクサンヌは理想の女性を描いた絵を画廊に預けるが、その女性はデルフィーヌにそっくり。作曲家の卵のソランジュは、楽器店の親切な店主ダム氏に、音楽家の友人へ紹介してもらえることになった。
カトリーヌ・ドヌーヴと実の姉のフランソワーズ・ドルレアックが、双子役で共演しています。金髪のドヌーヴと赤毛にソバカスのフランソワーズは、やはり似ていますが姉の方が親しみやすい雰囲気です(翌年交通事故のため25歳で亡くなっています)。二人の歌とダンス、そのファッションも楽しいですが、クレーンを使って広場全体を撮ったダイナミックな撮影など見所も多いです。前作『シェルブールの雨傘』のヒットを受けて巨額の予算がついたのでしょうね。ジーン・ケリーや当時人気沸騰中だったジョージ・チャキリスらの豪華な出演者にも驚きます。後に監督となり『WATARIDORI』のヒットも記憶に新しいジャック・ペランがハンサムな水兵役で出演。陽光まぶしいロシュフォールは軍港でもあるそうで、街には軍服の若者もたくさん。ちょうどアルジェリア戦争のころで戦争が身近にあることや、バラバラ殺人事件のエピソードが入るなど、明るいだけではないミュージカル映画でした。(白)
1967/フランス・アメリカ合作/イーストマンカラー/2時間7分/1:2.35/
配給:ハピネット 宣伝:マジックアワー
公式 HP >> http://demy.jp/
監督:武正晴
脚本:小林弘利
出演:大河元気(雅也)、純名りさ(愛子)、加地千尋、小野健斗、長澤奈央、日向丈、白木みのるほか
時代を越えていつもめぐりあい、愛し合ってきた男女。原始のころから二人はいつも赤い糸で結ばれていた。そして現代でも…。早朝、日課のジョギングをしていた愛子と、雅也は出会うべくして出会った。運命に導かれるままに結婚した二人。しかし雅也はまだ高校生、卒業するまでは形ばかりの夫婦でいる約束をする。年上の愛子が叔父である理事の世話でやってきた新しい職場は、な、なんと雅也の通う高校だった。愛子は謹厳実直な校長として勤め始めたが、雅也は嘘がつけない特異体質。ほかの生徒のいる前で愛子に会った雅也は呼吸困難に陥り、必死で歌ってごまかすはめになってしまう。
『ボーイ・ミーツ・プサン』、『カフェ代官山』の武監督の最新作。もうずっと前に(1970年)石立鉄男&岡崎友紀「おくさまは18歳」という傑作TVドラマがありました。実際に高校生だった岡崎友紀が、高校教師と結婚して周囲には秘密にしているヒロイン。同じ学校のためいろいろ騒動がおきる学園ラブコメでした。それ以後似たような設定のドラマがいくつも生まれたようですが、この作品は男女逆バージョン。赤い糸で結ばれた二人が繰り返し出会うことになっているという始まりが新しいかな。
新聞部員が雅也を「特異体質のため嘘はつけない、それで生徒会長をやっている」と紹介するのがおかしいです。そういう人ばかりが政治家だといいけど…みんな呼吸困難になりそう。愛子校長のほかの教師たちはクセモノぞろいで、ストーカーも平気。まるでコントのようなベタなシーンが笑わせます。「テニスの王子様」には若いイケメンくんたちが大挙登場して、今あちこちで活躍中。大河元気(おおかわげんき)、小野健斗もその一人。初々しさを生かした可愛い映画です。(白)
2009/日本/カラー/70分/ヴィスタサイズ/
★1月31日(土)より新宿シネマートにてレイトショー公開公式 HP >> http://hanamuko18.com/
監督:ヤウ・ナイホイ(游乃海)
出演:レオン・カーファイ(梁家輝)、サイモン・ヤム(任達華)、ケイト・ツィ(徐子珊)
香港警察の中には凶悪犯罪の容疑者を監視、追跡する専門部隊、通称”パパラッチ"と呼ばれる刑事情報科・監視班がある。エリート中のエリートが集まるこの部隊に、新人女性警官のホーが配属されることになる。リーダーのウォンによる指導の下、現場で鍛えられていくが、なかなか冷静になりきれない。そのころ街では宝石強盗が多発。強盗団のリーダー・チャンは切れ者で、警察はなかなかしっぽをつかめずにいた。
2007年の東京フィルメックスで上映され、審査員特別賞を受賞した『アイ・イン・ザ・スカイ』がいよいよ公開されます。脚本・監督のヤウ・ナイホイはジョニー・トー作品で脚本を書いてきた方で、これが初監督作品。しかし、第1作目だなんてとうてい思えない、素晴らしい演出のキレです。何の前情報も無く観たわたしは、冒頭シーンからドキドキして一気に映画の世界に引きずり込まれ、片時も目を離せずあっという間に90分が経ってしまいました。たくさん映画を観ていても、こういう経験はなかなかないです。
主演のケイト・ツィはこれが映画デビューで、2007年香港電影金像奬新人賞を受賞。監督も新人監督賞を受賞しています。若い二人を支えるのは、レオン・カーファイやサイモン・ヤム、またジョニー・トー組のスタッフといったベテランたち。特にレオン・カーファイはこれまでにない役柄を演じています。
ところで、ケイト・ツィの顔しか映っていない赤いチラシにこの邦題で、はじめ『アイ・イン・ザ・スカイ』とは全く気がつかず、チラシ置き場を素通りしてしまいました(爆)。結構、そういう香港映画ファンはいるのではないかと思うのですが、どうでしょう。(梅)
2007/香港/カラー/90分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/広東語
提供:ツイン、博報堂DYメディアパートナーズ
宣伝・配給:トルネード・フィルム
シネマライズ HP >> http://www.cinemarise.com/
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・タルデンヌ
撮影監督:アラン・マルコァン
出演:アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ、アルバン・ウカイ ほか
ロルナはアルバニア系移民。よりよい生活を求めてベルギーのブリュッセルにやってきた。将来は同じ故郷の恋人とこの街に店を開きたいと願っている。国籍を獲るためにブローカーを通して偽装結婚をしたのは、クローディという麻薬中毒の青年だった。偽りの関係ではあるが、クローディはロルナに希望の光を見いだして、必死に麻薬を止めようともがいている。ロルナは何かと頼ってくる彼を疎ましく感じているが、必死な姿を目の前にして手を貸さずにもいられない。心が少しずつ通じ合っていく。しかし、ロルナには彼に決して言えない秘密がある。
1999年の『ロゼッタ』から4作連続カンヌ国際映画祭の主要部門を受賞し、名実共に現代の巨匠であるタルデンヌ兄弟監督。『ロルナの祈り』は脚本賞の受賞です。彼らの作品は、人の愚かさや厳しい現実を冷徹に描きながらも、決して突き放してはいません。人間性の価値を深く信じていて、慈愛に満ちたまなざしを感じます。この作品では主演のアルタ・ドブロシが実に魅力的。思い詰めたような、いらだちを押し殺したような表情がほとんどなのですが、あるシーンで心から幸せそうな笑顔を見せます。その笑顔のかわいいこと。その次のシーンとの落差とあいまって、非常に印象深いです。麻薬中毒者のクローディを演じたジェレミー・レニエは、タルデンヌ監督の前作『ある子供』にも主演していましたが、今回は役作りのために2か月で15キロも減量し、あまりにげっそりしていて一瞬彼だとわからないほどでした。ちょっとうっとうしいけれど、ロルナが見捨てられなくなる善良さ、純粋さを実によく体現しています。(梅)
2008/ベルギー・フランス・イタリア/1:1.85/カラー/ドルビーSRD/105分/
配給:ビターズ・エンド
宣伝:ムヴィオラ
特別記事『ロルナの祈り』タルデンヌ兄弟監督&アルタ・ドブロシ来日会見もご覧下さい。
公式 HP >> http://lorna.jp/
原案・脚本・監督:園子温
主題歌・挿入歌:ゆらゆら帝国(ソニー・ミュージック アソシエイテッド レコーズ)
出演:西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、渡辺真起子、渡部篤郎 ほか
幼いころの母を亡くしたユウは父と二人暮らし。母の死後、父は神父になり、ユウはいつか自分のマリア様と出会う日を夢見て穏やかな生活を送っていた。サオリという女が来るまでは。奔放なサオリの押しの一手に、聖職者でありながら陥落する父。教会の外に家を借り、密かに3人で暮らし始める。しかしそれも長続きせず、サオリは彼らの元を去り、それ以来父は人が変わってしまい、ユウに毎日神父として懺悔を強要し始める。ユウは懺悔するための罪作りを始める。何をやっても神父として”許す”の一言で終わる懺悔の時間。しかし、そんな父を激怒させたのが”盗撮”だった。変態呼ばわりされて殴られたユウは、これこそ父の愛だと感じ、ますます盗撮にのめり込んでいく。そんな日々の中、ユウは仲間に課せられた罰ゲームで女装をして街で女の子をナンパする羽目になった。その時、チンピラに絡まれていたヨーコに出会う。一目見て、彼女こそ探し求めていた自分のマリア様だと確信。恋に落ちた。ところが、女装していたためヨーコはユウを女だと思いこみ、しかも女であるユウに恋してしまう。そんなユウたちの様子を謎の女・コイケがじっと観察していた・・・
掟破りとも言える上映時間4時間の作品。しかし、始まってしまうとあれよあれよと話が転がり、まさしく怒濤の237分。世間からは変態呼ばわりされている男の子と、男はみんな変態だと思いこんでいる女の子の純愛物語なのですが、そこに怪しげな新興宗教団体が絡んできて、過激で壮絶な戦いに発展していきます。まるで韓流ドラマのようであり、しかし決して韓流ドラマにはありえない展開。監督が友人から聞いた実話がベースというのも驚きです。主演の西島隆弘さんはAAA(トリブル・エー)のメンバー。くしゃっと笑う顔が可愛らしい男の子で、女装がとってもお似合いです。数々のあり得ない盗撮技もかっこよく決めてくれます。コイケ役の安藤サクラさんは、『俺たちに明日はないッス』のとき以上に、エキセントリック。父親役の渡部篤郎さんは、もしかして本当にこんな人?と思わせられるほど、やばさ全開の演技で強烈な印象を残します。(梅)
2008/日本/カラー/237分/ヴィスタ/DTSステレオ/R-15指定
配給:ファントム・フィルム
宣伝:パンドラ
公式 HP >> http://www.ai-muki.com/
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:ピーター・バックマン
出演:ベニチオ・デル・トロ、カルロス・バルデム、デミアン・ビチル、ヨアキム・デ・アルメイダ、エルビラ・ミンゲス、フランカ・ポテンテ、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ、ルー・ダイアモンド・フィリップス、マット・デイモン
革命を成功させ、カストロの右腕として革命政権で活躍したチェ・ゲバラ。1964年12月に国連総会で歴史に残る演説をした翌年の3月、「サトウキビ農場の視察に行く」と言い残して姿を消す。ゲバラの失踪に対して様々な憶測が飛び交う中、カストロは共産党中央委員会の場で、ゲバラからの“別れの手紙”を公表する。「世界の国々が僕の助けを求めている。君はキューバを離れられないが、僕にはできる。別れの時が来たのだ・・・」 変装をして、子どもたちにも見分けられない別人になりすましたゲバラは、1966年11月、ボリビアに入国する。独裁政権に苦しむ農民やインディオを救う目的で赴いたものの、ボリビア共産党の協力が絶たれ、ゲリラ軍は孤立していく・・・
ボリビアで捕えられ、39歳の若さで銃殺されたチェ・ゲバラ。なぜ、彼はボリビアに向ったのか? なぜ、ボリビアでの活動は失敗に終わったのか? 様々な、なぜ?の謎は解けないが、彼の革命への思いは息苦しいほどに伝わってくる。あのままキューバに留まっていれば、革命政権の要人として、家族とも幸せな日々を送れたであろう。自ら困難な道を選んだのは、まさに革命家としての闘志がなせる業だったのだろう。『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』の二部作を通じて知るチェ・ゲバラの人生はあまりにも壮絶だ。(咲)
2008年/スペイン・フランス・アメリカ/カラー/ビスタ/ドルビーSR・ドルビーデジタル・SDDS/133分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ×日活
公式 HP >> http://che.gyao.jp/
監督・主演・脚本:ナディーン・ラバキー
出演:ナディーン・ラバキー、ヤスミーン・アル=マスリー、ジョアンナ・ムカルゼム
ベイルートの街角の小さな美容院。オーナーの女性ラヤールは30歳。恋人から連絡があると、客を放り出していそいそと出かけていく。車のフロントには、いつものように駐車違反を知らせる貼紙。ラヤールに気のある警官ユーセフが彼女に近寄る口実を作りたいのだ。そんなこととは思いもよらず、ユーセフを振り切って恋人の元に急ぐが、家庭のある彼との逢瀬はあわただしい。恋人の誕生日を祝う為にホテルを予約しようとしても、既婚を証明できず、結局場末のホテルしか取れない。綺麗に掃除して、風船をたくさん膨らませ、手作りのケーキを用意して彼を待つが、「妻とは別れられない」のメールが来るのみ。ラヤールはホテルの部屋に、美容院の従業員のニスリンとリマ、そして常連客のジャマルを呼んでおしゃべりをして憂さ晴らしをする。結婚を間近に控えているニスリンが、実は処女でないことを彼に言えないでいると皆に打ち明ける。イスラーム教徒のニスリンは、伝統的に結婚式の翌朝、血の付いたシーツを皆に見せなくてはいけないのだ。「鳩の血がいいらしいわよ」と、一番年長のジャマル。彼女は夫と別居中で、自分の存在価値を試そうと何度もオーディションに挑戦している。一番若いリマもまた、同性にしか心を惹かれない自分に気づいている。それぞれに悩みを抱える4人。
一方、美容院の向かいで仕立て屋を営む65歳のローズは、気の強い義姉リリーに振り廻されている。ある日、スーツの仕立て直しを頼みにやってきたフランス人の老紳士との間にほのかな恋心が芽生える・・・
アラビア語の原題は、『スッカル・バナート』(女の子たちの砂糖)。スッカル・ナバート(氷砂糖)をもじったそうだ。中東では砂糖と水とレモン汁を煮詰めてキャラメル状にしたもので無駄毛を処理する伝統があって、ラヤールの恋人の妻を「脱毛無料サービス」の偽チラシでニスリンたちが美容院に呼び寄せた時、ラヤールは熱いキャラメルで思い切り激しく恋人の妻に脱毛を施します。
不倫、嫉妬、同性愛、介護、老いらくの恋、片思い、あらたな人生への挑戦等々、どこの社会にも普遍的に存在する様々な人間模様をユーモアたっぷりに描いていて、観る人の誰もが、きっとこの中に自分の姿を発見することと思います。
一方で、中東の国レバノンの実情も見え隠れして異国情緒も楽しめます。ニュースでは、宗教対立が強調されがちですが、去る7月のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008で上映されたレバノン映画『戦禍の下で』に出演し助監督も務めたビシャーラ・アッタラ氏にインタビューした折、「レバノンは人口が四千万人しかいないのに、宗教はキリスト教、イスラーム教織り交ぜ17宗派。撮影クルーは10人程でしたが、それぞれ違う宗派で、まさにレバノンの縮図。お互いバリアーもないし、普段宗教を意識することはありません。イスラーム教徒といっても様々。外見ではわかりません」と語っていたのが思い出されます。本作でも、主人公のラヤールはキリスト教徒、ニスリンはイスラーム教徒とわかりますが、あとの人物の宗教的背景は特に描かれていません。聖母祭やイスラーム式の結婚の模様などから、宗教が生活の中に自然に溶け込んでいることが伺えます。
東京国際映画祭に来日予定だったナディーン・ラバキー監督は、ご懐妊のため大事をとって来日中止。いろいろお話を伺ってみたかったのに残念でした。是非いつか子連れで来日を!(咲)
2007年/レバノン、フランス/96分/35mm/ドルビーSRD/アラビア語
配給:セテラ・インターナショナル
公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/caramel/
監督・脚本:木村文洋
プロデューサー:桑原広考
撮影:高橋和博
音楽:北村早樹子
出演:西山真来(紀美)、吉岡睦雄(治)、長谷川等、工藤佳子、木村絹代、ほか
青森県六ヶ所村に父と二人暮しの紀美は、治との結婚を間近に控えていた。プルトニウム再処理工場で働く治はある日内部被爆に襲われる。紀美の父は、二人の間に生まれる子供に影響が出ることを心配する。紀美はそれでも治と一緒にいたいと願うが、治は突然姿を消してしまった。
びゅうびゅうと吹く強い風の音と雪の風景から始まります。4:3の画面には恋人たちが映り、彼らがもうすぐ結婚することが少ない台詞からわかっていきます。贅沢を望んだわけではないのに、彼らの小さな幸せはあっけなく壊れてしまいます。再処理施設を声高に非難している映画ではなく、働き続けて亡くなる父と紀美の暮らしを静かに映しています。しかし、カーステレオから大音量で「恋の予感」が流れてくるのと、セックスシーンにはちとびっくり。風の吹きすさぶこの地の厳しさがひたひたとせまってくる映画ではありました。(白)
2008/日本/カラー/4:3/DVCAM/81分/ステレオ/
製作・配給:team JUDAS
公式 HP >> http://teamjudas.lomo.jp/
独特の色気をたたえた美しさで多くの巨匠たちに起用された女優、木暮実千代の特集上映です。
開催期間:2009年1月25日(日)〜3月21日(土)モーニングショー 連日10:30より
開催場所:ラピュタ阿佐ケ谷
上映作品:
監督:川野浩司
脚本:池田眞美子
原作:片岡薫夏「花ゲリラ」
撮影:今泉尚亮
美術:野尻郁子
音楽:佐橋俊彦
主題歌:「アカルイミライ」歌:小西遼生
出演:小西遼生(ユウスケ)、伴杏里(大平映子)、永山たかし(粕谷浩二)、馬場徹(山口遼)、宮野真守(田畑)、大河内浩(川辺)、アンナ・リー(ワン)
社会人2年目の映子は一日中モニターとにらめっこで校正作業をしている。判で押したような毎日にあきあきしていたころ、夜中の線路にしゃがむ人影を見つけた。見回りの保線員に追いかけられた若い男性は、軽々と身をかわしていなくなってしまった。しばらくたってまた彼に出会った映子は、思い切って声をかける。夜中に一人で花の種を蒔いているというユウスケ、人付き合いが苦手で一人ひっそりと暮らしていた。映子は「花ゲリラだね。私も手伝う」と宣言してついて歩く。ユウスケは戸惑いつつもポツリポツリと話すようになった。
ミュージカル「テニスの王子様」のキャスト&スタッフから生まれた“キラキラMOVIES”第2弾。まず主演ありきで企画された3作品のうちの1本です。人知れず花の種をまく引きこもりの青年と平凡なOLの出会いが、毎日を少しだけ変えました。追いかけてきた保線員のおじさんとの出会いも世界を広げます。いつも立ち寄るコンビニのバイトくんや派遣の中国人の女の子も、元カレのサラリーマンくんにも、人知れない悩みやストレスがあります。ちょっとだけ踏み出すことが、何かを変えるきっかけになるよ、とメッセージをくれた気がします。静かなたたずまいの小西遼生さんの横顔が少しずつ現れてくるオープニングと、反対に動きのあるラストが印象的でした。(白)
2008/日本/カラー/1時間38分/
配給:ゴー・シネマ
公式 HP >> http://wwww.kirakiraweb.jp/
特別記事『花ゲリラ』脚本家 池田眞美子さんインタビューもご覧下さい。
特別記事『花ゲリラ』川野浩司監督インタビューもご覧下さい。
監督:サム・メンデス
脚本:ジャスティン・ヘイス
原作:リチャード・イェーツ 「家族の終わりに」(ヴィレッジブックス刊)
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:トーマス・ニューマン
出演:レオナルド・ディカプリオ(フランク・ウィーラー)、ケイト・ウィンスレット(エイプリル・ウィーラー)、マイケル・シャノン(ジョン)、キャスリン・ハーン(ミリー)、デヴィッド・ハーバー(シェップ)、キャシー・ベイツ(ヘレン)
1950年代、高度成長期のアメリカ。郊外に家を持ち、子供二人に恵まれ傍目には理想的な夫婦に見える若いウィーラー夫妻。フランクは毎朝電車に揺られてニューヨークの会社に通い、退屈な仕事も妻子のためと割り切っている。エイプリルは元女優志望、地元のアマチュア劇団の芝居に出演するができは散々だった。慰める夫に怒りをぶつけ、互いに不満を吐き出して激しく言い争う。翌日帰宅したフランクを、エイプリルはドレスアップして出迎える。子供たちと誕生祝いのテーブルを整えて待っていたのだ。そして思いがけない提案をする。「パリで暮らしましょう!」と。フランクは兵隊時代パリに駐留したことがあり、その街で成功する夢を妻に語っていた。今の生活に行き詰っていた彼女は、新しくやり直すならパリと夢見ていたのだ。途方もないことと一蹴したものの、熱心なエイプリルの言葉についに秋には移住しようと決心する。
あの『タイタニック』の二人が11年ぶりに共演。30代半ばとなってすっかりスターの貫禄がついたディカプリオが少年ぽさを残した直情的な夫フランクを、ケイト・ウィンスレットは女優志望だったが平凡な主婦になっているエイプリルを熱演しています。
色あせた結婚生活に新しい夢ができて高揚する二人と、さめた目で見る隣人や同僚たちの対比。夫婦の家を斡旋したヘレンの息子ジョンが、引きあわされた二人に向ける痛烈な言葉。精神を病んで電気ショックを受けたというジョンは、夫婦の心の中に気づきほかの誰よりもまともな言葉を口にする皮肉。『アメリカン・ビューティ』で絶賛されたサム・メンデス監督の面目躍如の作品。すでに足並みがそろわないことに気づいていく過程がなんとも辛いです。女性の地位が低かったこの時代、傷つき揺れ動きながら再生したいと願うエイプリルが痛ましく、ケイト・ウィンスレットの演技に打たれました。なお、メンデス監督とウィンスレットは2003年に結婚し、男の子が生まれているそうです。(白)
2007/アメリカ・イギリス/カラー/113分/ビスタサイズ/ステレオ/
配給:パラマウントピクチャーズ
公式 HP >> http://www.r-road.jp/
avexの期待の新星たちを主役にすえ、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマなどそれぞれ異なるタイプの映画作品5本連続公開上映となります。次世代のスターがここにいるかもしれません。
監督:三城真一
脚本:阿部裕樹
出演:近野成美、相葉弘樹、高山都、武下公美
監督・脚本:加納周典
出演:伊藤ゆみ、緒形幹太、松田賢二、渋谷亜希
監督・脚本:川上春奈
出演:大石参月、下宮里穂子、谷口紗耶香
監督・脚本:菱沼康介
出演:金澤美穂、斉藤リナ、米村美咲
監督:安達正軌
原案・脚本:田中貴大
出演:江野沢愛美、円城寺あや、指出瑞貴、田中柚里佳、風間トオル
『年々歳々』だけ拝見しました。不幸な事故でお父さんを失った母娘が7年経ってもその痛手から立ち直れずにいます。母はやりきれない思いを抑えきれず、娘はそんな母を気遣うあまりにすべては自分のせいだと思いこむ。そんな二人に訪れる奇跡を描いていました。それぞれの心情が丁寧に描けていたと思います。風間トオルさんもお父さん役をやるようになったのですね。(梅)
★2009年1月24日(土)より、渋谷シアターTSUTAYAにて5作品連続レイトショー公式 HP >> http://www.avex-newstar.com/
監督:パンジャマン・マルケ
製作:ダニエル・マルケ
撮影:ロラン・シャレ、セバスティアン・ビッシュマン、パンジャマン・マルケ
出演:ル・ムーラン・ナ・ヴォンの子供たち、コーチ、厩務員、先輩のジョッキー
フランス、シャンティには競馬場と、唯一の国立の騎手・厩務員養成学校がある。新学期の始まる9月、14歳の子供たち30人が入学した。親元を離れて寄宿舎生活を送る彼らは、これからの3年間厳しい研修を受けていく。ごく少数の優秀な者は騎手になり、それ以外は厩務員として教育される。まだ暗いうちから、馬の世話のために起き、厩舎と教室、馬場を往復する日々が続く。自分の何倍もある大きな馬を制御するのは容易ではない。どんどんスピードが出る馬に泣きながらしがみついて、降り落とされないようにするのがいっぱいだ。年度末には見習い騎手になるための試験が待っている。
このドキュメンタリーは一緒に入学した子供たちのうちから3人に焦点をあて、彼らのクラスに10ヶ月間密着して撮影したものです。思春期入り口の子供たちが選択した厳しい道をただレポートしたのでなく、彼らの心情に寄り添う優しさが感じられる作品。監督自身も1ヶ月間見習いとなり、皆と同じリズムの生活と落馬まで経験したのが、よく反映されているのでしょう。軍隊で乗馬経験のある父がしきりに「馬は賢くて可愛い」と言っていたのを思い出しました。(白)
2008/フランス/カラー/35mm/99分/ドルビーSRD/
配給:CKエンタテインメント
公式 HP >> http://jockey-movie.jp/
監督:イサベル・コイシェ
脚本:ニコラス・メイヤー
原作:フィリップ・ロス著「ダイング・アニマル」(集英社刊)
撮影:ジャン=クロード・ラリュー
美術:クロード・パレ
出演:ペネロペ・クルス(コンスエラ・カスティリーニョ)、ベン・キングスレー(デヴィッド・ケペシュ)、デニス・ホッパー(ジョ−ジ・オハーン)、パトリシア・クラークソン(キャロライン)、ピーター・サースガード(ケニー・ケペシュ)
大学教授のデヴィッドは、若いころの結婚を過ちと公言し、反逆者気取りで肉欲のみを求め自由に暮していた。テレビに毎週出演、本を出版しちょっとした有名人の彼には何の不足もなかったが、美貌の学生コンスエラに出会って初めて激しい欲望と嫉妬を知る。親友の詩人ジョージに揶揄されながらも彼女を手放すことは考えられなかった。コンスエラは厳格な両親のもとで育ち、しっかりとした生活や価値観を身につけていた。30も年の差のあるデヴィッドを愛し、家族に会ってほしいと告げるのだが。
下心ありありの初老の大学教授と、親友の詩人の会話はまるで釣果を自慢する男の子のようです。男ってばいくつになっても変わらないのね。不実な教授デヴィッドを見事にふったコンスエラは、病を得て「会いたい」と電話をしてきます。男の願望でしょ、これは、と意地悪な見方もしたくなりますが、ペネロペ・クルスがなにしろ美しい。あの濃くて長いまつげに縁取られた目で見つめられたら、たいていの男性はくらくらとなるに違いありません。自分と母親を捨てた父親に反感を持ちながら、自身も愛人と妻の間で揺れる息子を演じたピーター・サースガード、先に逝く親友役のデニス・ホッパーも強い印象を残します。(白)
2008/アメリカ/カラー/112分/ビスタサイズ/SR,SRD,SDDS/
配給:ムービーアイ
公式 HP >> http://elegy-movie.jp/
監督・脚本・編集・製作:高橋玄
原案協力:寺澤有
撮影:石倉隆二、飯岡聖美
照明:小川満
録音:西川正巳
美術:石毛朗
音楽:高井ウララ、村上純、小倉直人
出演:菅田俊(竹田八生)、野村宏伸(山崎)、川本淳市(草間力也)、井上晴美(竹田千代子)、井田邦彦(北村)、出光元(三枝)
所轄警察署の巡査である竹田八生は、上司の三枝に実直さを見込まれて刑事に昇任した。言われるままに職員住宅にも移り、三枝との関わりはますます深くなっていく。タケハチと呼ばれ、三枝に重用されるにつれ、後輩の山崎刑事とともに三枝の不透明な命令にも従い、警察犯罪に手を染めるようになっていく。警察嫌いの飲食店経営者の草間と、新聞記者の北村は警察内部の犯罪を追って、証拠を掴んで明るみに出そうとしていた。
街のおまわりさんだったタケハチが警察内部で昇進していくにつれ、悪徳に染まって変貌していくようすを菅田俊が熱演しています。この中に出てくる警察官の大小の犯罪は、みな実際にあった事件を元に書かれています。新聞に何でも発表されているわけではないのは周知の事実。近年陳謝の会見をずいぶんニュースで見た気がします。都合の悪いことをできるだけ隠しておきたいのは、お役所・警察も例外ではありません。まともな警察官が一人も登場しないのは作品としてのインパクトを考えてでしょうが、現職の人はなんと見るのでしょう? 三枝役は、正義の警察官役を得意としてきたベテランの出光元。絶対上司にいてほしくない悪徳警官ぶりです。劇中の外国特派員協会と通訳氏は本物。オランダ人新聞記者役は同協会の前理事の国際ジャーナリストだそうです。3時間余りの長編ですが、長いと感じませんでした。(白)
2005/日本/カラー/3時間15分/ヴィスタサイズ/ドルビー/
株式会社グランピクチャーズ作品
公式 HP >> http://www.pochi-movie.com/
監督・編集:井上晃一
脚本:松田裕子
原作:鈴木由美子「カンナさん大成功です!」
撮影:百東尚浩
美術:木村文洋
音楽:田中茂昭
衣装:青木貴子(監修)、川崎瑤子
出演:山田優(神無月カンナ)、山川静代(カバコ)、中別府葵(隅田川奈々子)、永田彬(蓮台寺浩介)、佐藤仁美、柏原崇、浅野ゆう子 他
神無月カンナはあまりにもブスな自分を捨て、誰もが振り向く超美人に生まれ変わった。もとい、全身整形美人になったのだ!貯金を全部はたいたけれど、怖かったけれど、鏡の中の私は惚れ惚れしちゃうほどの美人。あこがれのあの王子様にアタック~! やってきたのはアパレル業界のナンバーワン「亀戸商会」。ここの蓮台寺浩介くんの彼女になるのよっ!鼻息荒いカンナはまんまと就職に成功し花の受付嬢となった。天然美女×有能な隅田川奈々子をお手本に美女修行に励むが、ブス時代の同僚だったカバコに再会。カバコには意外な才能があった。
一足先に韓国で映画化された同名作品は、芸能界が舞台でブス作りは特殊メイクでした。こちらはより原作に忠実だそうです(未見)。過去の回想部分はCGの人形劇風、カンナが目を細める視界はホームビデオの画面のような作りになっています。主演は“CanCam”の人気モデル山田優。全身整形美人になっても、ブス時代のクセが抜けきらないカンナをコミカルに演じています。『ハンサム・スーツ』の谷原章介さんといい、この山田優さんといい、今の美男美女俳優さんたちはほんとにお笑いもいけるんですね。カンナの原色の衣装を着こなし、作中新ブランド(実際に商品展開される予定)のショーのモデルもつとめる山田優さん、華やかな衣装を次々に披露します。やり手の社員役の田宮五郎さんがあまりにも田宮二郎さんに似ているので驚きました。親子ですねぇ。(白)
2008/日本/カラー/110分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR
配給:ゴー・シネマ
宣伝:デジタル・ハリウウッド・エンタテインメント
公式 HP >> http://www.kannasan.com
監督:フォン・シャオガン
脚本:リウ・ホン
撮影:リュイ・ユエ
編集:リュー・ミャオミャオ
音楽:ワン・リグァン
エフェクト監修:フィル・ジョーンズ
出演:チャン・ハンユー(グー・ズーティ)、ドン・チャオ(チャオ・アルドゥ)、ユエン・ウェンカン(ワン・ジンソン)、タン・ヤン(スン・グイチン)、リアオ・ファン(ジアオ・ダーポン)、ワン・パオチアン(ジアン・マオツァイ)、レン・チュアン(指導員)、フー・ジュン(リウ・ゾーシュイ)
一人生き残り、全てを背負う―。
かつてないスケールで描く中国“内戦”の姿。これは真実の物語である。
1948年、毛沢東率いる中国共産党の人民解放軍と、蒋介石率いる国民党軍は主導権を巡って激しい内戦を繰り広げていた。人民解放軍中原野戦軍第2師139団3営第9連隊のグー・ズーティは部下とともに、最前線の淮河(わいが)へ送られることになった。リュー・ゾーシュイ団長は「旧炭鉱を正午まで守りきれ。集合ラッパの合図で撤収」と命令を下す。最後の一人まで戦い続ける覚悟で果敢に攻撃したが、圧倒的な物量でくる国民党軍に押され、連隊の兵士は次々と倒れて行った。グーは戦闘中に耳を負傷し、部下が聞いたという集合ラッパの音が確認できなかった。このままでは全滅だというジアオの今際の言葉を聞きながら、最後の突撃を図る。47人の部下全員が戦死し、野戦病院に収容されたグーは自責の念にかられていた。第2師団の消息は不明、身元の確認もできない彼はチャオ・アルドゥの連隊に加わる。
原作はわずか3pの短編小説(「Guan Si(訴訟)」ヤン・ジンジュアン著)。戦死した部下の名誉回復のため、死に物狂いで遺体を捜す姿にフォン監督が感動。脚本のリウ・ホンとともに歴史書を調べ、関係者を探し兵士の手紙を参考にしてストーリーをふくらませていきました。
国共内戦は1949年に中華人民共和国が建国されるまで、世界大戦をはさんで2次に渡り、延べ14年間に及びました。同じ民族が政治の利害によって分断され、戦わねばならないというのは昔も今も変わらず、人は学習せず欲から逃れられないのでしょうか。大きな犠牲となるのはいつも庶民、将棋の駒のように歩兵は奥に鎮座している大将を守るため、突撃して時間稼ぎの盾になります。悲憤慷慨するグーは奔走して部下の名誉を回復しました。脚本を読んで号泣し、グー役を切望したというチャン・ハンユーは渾身の演技で、グー連隊長を生身の人間としてくっきりと蘇らせました。韓国映画『ブラザーフッド』を手がけたスタッフが参加した迫力満点の戦争シーンを観ながら、フォン監督や俳優さんたちの熱意を感じました。多くの賞を受け、空前のヒットを記録したそうですが、こういう悲劇を胸に刻んで決して繰り返さないでと祈ります。(白)
いわゆる娯楽作品を撮ってきたフォン監督ですが、この作品はうって変わって、冒頭から始まる戦闘シーンなど観ていて恐くなるほどのリアリティです。『イノセント・ワールド〜天下無賊〜』(2004)で世間知らずの朴訥な青年を演じていたワン・パオチアンも出ているのですが、みんな顔がすすけて真っ黒で、誰が誰だかわからないほど。国共内戦を一兵士の個人の視点で描いたことも、中国映画としては画期的です。どんなに立派な大義名分を掲げたとしても、戦争は殺し合いにすぎないと痛感させられます。さらに戦争が終わってもグーさんの本当の戦いはそこから始まります。死んだ部下たちの名誉の回復。そんなことをしても本質的にはむなしいのですが、1人生き残った者として彼らの死を何もなかったかのごとく葬られるのは何としても阻止せねばと思う気持ちが、切々と伝わってきました。(梅)
2007/中国/カラー/124分/シネマスコープ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:税田春介
配給:ブロードメディアスタジオ
特別記事『戦場のレクイエム』フォン・シャオガン(馮小剛)監督記者会見 もご覧下さい。
公式 HP >> http://requiem-movie.jp/
監督・脚本・製作:ラリー・ビショップ
製作総指揮:クエンテエィン・タランティーノほか
撮影:スコット・ケヴァン
美術:ティム・グライムス
音楽:ダニエレ・ルッビ
出演:ラリー・ビショップ(ピストレロ)、マイケル・マドセン(ジェント)、エリック・バルフォー(コマンチ/ビックス)、レオノラ・ヴァレラ(ナダ)、ジュリア・ジョーンズ(チェロキー・キズム)、ローラ・カユーテ(ダニー)、デイヴィッド・キャラディン(デュース)、ヴィニー・ジョーンズ(ビリー・ウィングス)、デニス・ホッパー(エディ・セロ)
ピストレロ、ジェントは、バイカー・チーム「ヴィクターズ」のメンバー。対抗するグループ「シックス・シックス・シックス」に仲間のセント・ルーイを殺され復讐を誓う。チームに若いコマンチを加え、まずトレーラーハウスにいた「シックス〜」のメンバーを襲う。
クエンティン・タランティーノは60年代末、グラインドハウス(B級映画館)に通い詰めてバイカー・ギャング映画を観ていたという。その伝説のカルト・アクターでありディレクターだったのがラリー・ビショップ。彼にかつての作品を越えるものをと依、監督・主演をつとめている。共演にはタランティーノ作品常連のマイケル・マドセン、デイヴィッド・キャラディン、なんとデニス・ホッパーも出演を快諾した。15歳以上でも真似をしてはいけません。(白)
2008/アメリカ/カラー/1時間24分/スコープサイズ/SRD/R15
ディメンション・フィルムズ&クエンティン・タランティーノ提供
配給:ムービー・アイ
宣伝協力:フリーマン・オフィス
公式 HP >> http://www.hellride.jp/
監督:光石富士朗(『おぎゃあ』)
原作:森下裕美「大阪ハムレット」(扶桑社刊/「漫画アクション」連載作品)
主題歌:倉木麻衣「会いたくて・・・」(NORTHERN MUSIC)
出演:松坂慶子、岸部一徳、森田直幸、久野雅弘、大塚智哉、加藤夏希、白川和子、本上まなみ、間寛平
お父ちゃんが突然死んだ。葬式に集まった人たちは誰も悲しんでない。お母ちゃんまで一緒になって「子供用の棺桶にしといたら安上がったのに」と笑ている。そこに突然、おっちゃんがやって来て、場違いな大泣きを始めた。だ、誰? おっちゃんはお父ちゃんの弟らしい。それ以来、うちに住み着いてしもて、5人での生活が始まる。
長男の政司は側溝に落ちそうになった女子大生・由加を助けて自分が恋に落ちた。「どこの大学?」と聞かれてつい「同志社」と嘘をついてしまう。本当は中3やのに・・・
ヤンキー中学生の次男・行雄は、担任のりゅうのすけに「久保君はハムレットやなぁ」と言われる。その理由が気になって辞書を片手に読んだところが「ハムレットのお父ちゃんの弟が、兄ちゃん殺してお母ちゃんたらしこんで王様になった」と知って大激怒。でも、ふと自分が死んだお父ちゃんに似ていないことが気になり始める。「俺、誰の子や?」
小学生の三男・宏基はクラスの将来の夢を発表する場で「女の子になりたい思てます。本気やから変にからこうたりせんとってください」と宣言。先生もクラスメイトも一瞬どん引きするが・・・
大阪の岸和田を舞台に、何があっても揺るぎない愛情をもって家族を支えるおかあちゃんと、悩み多き3人の息子たち、それになんやようわからんけど一緒に住み始めたおっちゃんの5人家族が織りなす、笑いと涙の人生賛歌。不思議なことに笑いながら泣いてました。原作の漫画はいくつもの短編に、別々の家族の話として描かれていましたが、それを一つ屋根の下に暮らす家族をめぐる話に仕立て上げた映画は、より濃密な家族の関係を実写ならではのリアリティをもって描けています。ハムレットの有名なセリフ「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」に、大阪らしく「なんでやねん!生きとったらええやん!」とおもいっきりつっこみを入れる。この不景気の折、落ち込んでいる人も多いかと思いますが、この映画は元気をくれますよ。(梅)
2008/日本/35mm/カラー/107分/アメリカンビスタ/DTS STEREO
配給:アートポート
宣伝:グアパ・グアポ
公式 HP >> http://www.osaka-hamlet.jp/
『ブラッド・ブラザーズ〜天堂口〜』公開記念スペシャル企画
シネマート六本木公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/
監督・脚本:エリック・ロメール
出演:アンディー・ジレ、ステファニー・クレイヤンクール、セシル・カッセル
羊飼いの少女アストレと美青年セラドン。愛し合う二人だが、お互いの両親が不仲なために、アストレはセラドンにお祭の日には他の女性と両親の前で踊ってほしいと頼む。祭の当日、物陰から様子を見ていたアストレは、セラドンが相手の女性に本気になったと思い込み、セラドンに「二度と私の前に現れないで」と言い渡す。絶望したセラドンは、アストレに会えないのなら、いっそ死んでしまおうと川に身投げする。ニンフ(精霊)たちに助けられ、森の中にある彼女たちの城に連れていかれたセラドンは、城主のマダムに気に入られ村に帰してもらえない。一方、アストレはセラドンが死んでしまったと悲しみに暮れている。ある日、アストレは森の中でセラドンの形見を見つける・・・
舞台は5世紀ローマ時代のフランス。原作は、17世紀にオノレ・デュフレにより書かれた小説「アストレ」。当時のフランス文学サロンや知識のある貴婦人たちの間で大人気となった作品で、大河ロマン小説の原点とも言われる。伝説の純愛物語を映画化したエリック・ロメール監督は、撮影当事87歳。17世紀の人々が、5世紀のフランス、ガリア地方を想像したスタイルで本作を描くことを目指したそうだ。実は映画を観たときに、これが5世紀?と違和感を持ったのは、そのためだったのだと納得。(咲)
公開記念トークショー
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/wagaai/
監督:マドンナ
脚本:マドンナ&ダン・ケイダン
製作総指揮:マドンナ
出演:ユージン・ハッツ、ホリー・ウェストン、ヴィッキー・マクルア、リチャード・E・グラント
「僕は天国に行ける。なぜ自信がある?ウソを言わないからさ」と語る男。ウクライナ移民のAKは、ロンドンの片隅でミュージッシャンを志しながらSM調教師をして生計を立てている。同じ部屋に住む二人の女性、ホリーはロイヤル・バレエ団で踊る日を、ジュリエットはアフリカに渡って恵まれない子供たちを助けることを夢見ている。現実は理想から程遠いけれど、コインの裏表のように、堕落(FILTH)と賢明(WISDOM)は一体。地獄まで堕ちれば、いつかは救われる希望がある・・・
あのマドンナが映画を作った! 元夫になってしまったガイ・リッチー監督の協力を得たのかと思ったら、そうでもないらしい。型にはまらない作風は、さすがマドンナと唸らされる。世界各地からの移民たちが渦巻くロンドンの片隅を舞台に、厳しい現実の中で、夢にむかって葛藤する人たちを描いた本作は、多民族の共生、貧困問題なども考えさせてくれる。AKが何かあると持ち出すウクライナの格言に、ルームメイトのホリーもジュリエットもうんざりだが、この格言がなんとも意味深で楽しい。映画は、クレジットの最後の最後まで是非席を立たずに観てください! 最後にまた、あ〜マドンナ!と唸ります。(咲)
配給 : ヘキサゴン・ピクチャーズ
配給協力:ミラクルヴォイス 宣伝:メゾン
2008年/イギリス/84分/1:1.85/ドルビーデジタル
公式 HP >> http://wonder-lust.jp/
監督:金子修介(『デスノート』)
主題歌:ステファニー「プライド〜A Part of Me〜feat.SRM」(SMEレコード)
出演:ステファニー、満島ひかり、渡辺大、及川光博、長門裕之、高島礼子、由紀さおり、五大路子、ジョン・カビラ
名門音大に通う麻見史緒(ステファニー)の住む豪邸に、ハウスクリーニングのアルバイトで訪れた三流音大生の緑川萌(満島ひかり)。風に舞ったオペラのチケットを見て羨ましがる萌を誘って、史緒はオペラを観に行く。史緒の亡き母は有名オペラ歌手。オペラの会場でも、萌は史緒との格差を見せつけられる。激しい嫉妬心をむき出しにする萌の姿を見たクイーンレコード副社長の神野隆(及川光博)は、「成功の秘訣は、与えられたチャンスに食いつくこと」と声をかける。
お嬢様暮しをしていた史緒だが、父の会社が倒産し生活が一変する。金賞のイタリア留学を狙ってオペラ・コンクールに出場するが、汚い手を使った萌に金賞をさらわれる。おまけに、当面の生活費として父から貰った200万円も盗まれてしまう。途方に暮れる史緒を助けたのは、同じ音大のピアノ科の池之端蘭丸(渡辺大)。史緒は、蘭丸の母が経営する銀座のクラブのラウンジシンガーとして働き始めるが、萌もまた、同じクラブでホステスとして働き始める・・・
原作は、少女漫画界で活躍する一条ゆかりのデビュー40周年記念作品「プライド」。(集英社刊「コーラス」で連載中) オペラ部分は吹き替えとはいえ、きちんと歌えるステファニーと満島ひかりの二人をヒロインに抜擢。境遇は違っても同じオペラ歌手を目指す二人のバトルに、恋や人生の駆け引きを織り交ぜて描いた本作。縦ロールの似合うステファニーも、いつもながら気障っぽい及川光博も、まさに漫画から飛び出てきたよう。渡辺大演じる蘭丸が女装でピアノを弾く姿もなんとも色っぽい。(咲)
2008年/カラー/35mm/ビスタサイズ/ドルビーSR/125分
制作:エクセレントフィルム
配給:ヘキサゴン・ピクチャーズ+シナジー
宣伝:アステア
製作:プライド製作委員会
公式 HP >>
http://www.pride-movie.jp/
監督:デイヴィッド・シントン
撮影:クライヴ・ノース
作曲:フィリップ・シェパード
出演:パズ・オルドリン(11号)、マイク・コリンズ(11号)、デイヴ・スコット(9号/15号)、ジーン・サーナン(10号/17号)、ジム・ラヴェル(8号/13号)、ジョン・ヤング(10号/16号)ほか
人類が初めて月に第一歩を標してから40年。我々人類にとって月へ行くこと、そして地球に生きることの奇跡を謳う感動の宇宙体験が始まる。
1969〜1972年のアポロ計画により、12人の宇宙飛行士が月に降り立った。このドキュメンタリーは当時の宇宙飛行士たちのインタビュー、NASAに保存されている貴重な蔵出し映像から構成されている。
最初に月に降り立ったニュース映像はよく覚えています。月そのものより宇宙から見た地球の美しさのほうに感動しました。月に降り立ちたかったのは競争していた米ソだけではなく、宇宙を目指すものの悲願であったはずです。このニュースを知った人々はみな空を見上げたのではないでしょうか。最初の一歩を標したのはアポロ11号のアームストロング船長でした。「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」ということばが有名です。地球人として一つでいることはなんと難しいのだろう、と思う昨今だからこそ、広大な宇宙の映像を観てきませんか?(白)
NASAに液体窒素保存されていた、アポロ計画の全記録フィルムをデジタル化する機会にあわせ、制作者たちが通い詰めて選び出した蔵出し映像と、宇宙飛行士たちへのインタビューでつづられています。月や地球の映像も美しいですが、何と言ってももう70歳を越えた宇宙飛行士たちの話が大変面白いです。久しく世捨て人のように暮らしていると言われるニール・アームストロング船長が出演しなかったのは少し残念ですが、共に月へ向かったバズ・オルドリンやマイク・コリンズといった仲間の話から、彼の存在の大きさが感じられます。(梅)
2007/イギリス/カラー/100分/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://themoon.asmik-ace.co.jp/
★六本木ヒルズに宇宙をイメージした『ザ・ムーン』カフェが登場★
1月10日(土)〜18日(日)まで
カフェでは、壮大な宇宙や月、ロケットなどのパネルを設置し、宇宙服、そして、滅多に見ることができない月の石など貴重な品を展示!
『ザ・ムーン』をイメージした期間限定メニューが食べられます!
(※)アンケートに答えると、話題沸騰中の宇宙食が無料でもらえる特典付き!!(※)※数量限定です
「ここなら」コミュニケーションサービスともコラボレーション!ワンセグの最新技術を駆使し、各テーブルでは『ザ・ムーン』ほか、様々なコンテンツを配信!来場時のシチュエーションにより、テーブル上に配信される情報が異なる、驚異の最新技術を体験できる!
監督・脚本・編集:アレックス・コックス(『レポマン』『シド・アンド・ナンシー』)
エグゼクティブ・プロデューサー:ロジャー・コーマン
出演:デル・ザモーラ、エド・パンシューロ、ジャクリン・ジョネット、サイ・リチャードソン、ザン・マクラ—ノン
日雇い仕事にあぶれたメルは、通りがかった家の中から流れてきた曲に足を止める。それは、かつて自分が出演した西部劇のテーマ曲。テレビを観ている男にそのことを告げると、フレッドというその男も出演していたという。当時まだ子役だった二人は、撮影中に脚本家フロビシャーに虐待されたことを根に持っていた。奇しくも、そのフロビシャーがモニュメント・バレーでサイン会をすることを知り、復讐に行こうと意気投合する。メルは娘デライラの車を足にしようと目的を隠してまんまと旅に誘い込む。かくして、3人はロス・アンジェルスからアリゾナの荒野を目指す・・・
道中、メルとフレッドが延々と続ける映画談義には、西部劇や往年のスターへのオマージュと共に率直な批判も飛び出して、西部劇に疎い私も思わず笑ってしまいました。車の後ろには、「奴らを倒し、石油を奪え」のステッカー。そして、繰り返される「石油」「正義」「復讐」の言葉。道中、戦死した人たちのお墓をいくつも通りかかるなど、痛烈なブッシュ批判に拍手喝采です。「自分が外国人(イギリス人)で、しかもコメディという環境だからこそ大事なことが言えたのがポイント」と、来日したアレックス・コックス監督は語っていました。インディペンデントにこだわった本作は、HPで出資者を募り、クルー10名で撮影期間もわずか15日間。ヘリコプターが登場する場面は、イギリスに帰った時に、友人がプレステ用に作ったものを利用してみる?と言うので使ってみたそうですが、思わず本物?という出来でした。ラストは、ジョン・フォードの『捜索者-The Searchers』のロケ地モニュメント・バレーで撮影。雄大な風景に魅了されました。(咲)
2007年/アメリカ/英語/カラー/1:1.78/VIDEO/96分
提供:JVCエンタテイメント 配給・宣伝:アップリンク
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/searchers/
監督・原作・脚本・脚色:リュック・ジャケ
共同脚本・脚色:エリック・ロニャール
撮影:ジェラール・シモン
動物トレーナー:パスカル・トレギー
音楽:アリス・ルイス、エフゲニー・ガルバリン、デヴィッド・レイエス
セット・デザイナー:マルク・ティエボー
出演:ベルティーユ・ノエル=ブリュノー(リラ)、イザベル・カレ(ナレーション/現在のリラ)、トマ・ラリベルトゥ(少年)
秋、リラは学校帰りに初めて野生のキツネに出会う。美しい姿に思わず近づくと、キツネは身を翻して逃げていってしまった。それ以来もう一度キツネに会いたくて、森を探しまわるようになった。冬が過ぎ、キツネに会えないまま春になった。ようやく巣穴を見つけて覗き込むと、そこには子ギツネがいた。リラが出会ったキツネは母親になっていたのだ。
世界中で大ヒットした『皇帝ペンギン』から4年、リュック・ジャケ監督の長編第2作が誕生しました。子どもの頃、野生のきつねに魅せられた体験がベースになった、ドキュメンタリー風のファンタジーです。ロケ地は監督が子ども時代に住んだというフランス南東部のルトール高原と、イタリアのアブルッツォという国立公園。ほとんどリラとキツネの場面なのですが、四季の移り変わりの中に小さな動物たちも登場します。美しい場所をぼ~~っと観ているだけでも、固まった心身がほどけてゆくようです。リラの可愛い部屋や何げないファッションもおしゃれ。(白)
2007/フランス/カラー/96分/スコープサイズ/ドルビーSRD/
★2009年1月10日(土)~新宿ピカデリー、恵比寿ガーデンシネマ、丸の内ピカデリーほかにてロードショー公式 HP >> http://kitsune12.jp/index.html
監督・脚本:中嶋莞爾
エグゼプティブ・プロデューサー:ヴィム・ヴェンダース
撮影:浦田秀穂
美術:木村威夫
音楽:山下雄太
出演:及川光博(高原耕平)、石田えり(高原洋子)、永作博美(高原時枝)、嶋田久作(影山)、品川徹(勅使河原)、塚本僚(耕平・少年時代)ほか
宇宙飛行士の高原耕平は、船外作業中の事故で殉職する。出発前にクローン契約を結んでいたため、合法的に生まれ変わったが、何も知らされていなかった妻の時枝は混乱する。しかもクローンは記憶障害を起こし、新しい記憶はないかわり生前封印していた幼い頃の記憶が復活していた。耕平には子どもの頃、自分を助けようとして溺れた双子の弟がいたのだ。故郷へ向かう途中、耕平は宇宙服を着た自分の死体を発見する。
中嶋莞爾監督が手がけたオリジナル脚本は、2006年サンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞しています。このときの審査委員長はヴィム・ヴェンダース監督。この縁でエグゼクティブ・プロデューサーとして参加しています。クローン技術がもっと発達した近未来、そのときにどう対応すればいいのか。進んでいく技術に人のこころはどうなっていくのだろうか。精神的なテーマを持った物語に、3役を演じる及川光博が意外にはまっていました。(白)
クローン技術で人間一個体を作り出すなんて、ましてや記憶までも再現するなんて、とうてい近未来でできそうにはないけれど、もしも将来できてしまったら、人間はそれをどう受けとめるのでしょうか? 古来から日本人が信じてきた魂と、複数存在するクローンとの関係は? その人をその人たらしめているのは、記憶と肉体だけなのか? そんなかなり壮大なテーマをもちながら、個人の溢れる感情を詩情豊かな映像で静かに、真摯に描いていて、好感が持てます。(梅)
2008/日本/カラー/110分/35mm/アメリカン・ビスタ/DTSステレオ/
配給:アグン 宣伝:アムモ
©2008「クローンは故郷をめざす」製作委員会
公式 HP >> http://clone-homeland.com/
監督・撮影:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:ピーター・バックマン
出演:ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、エルビラ・ミンゲス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ、ジュリア・オーモンド
1955年7月、若きアルゼンチンの医師エルネスト・ゲバラは、放浪の旅の途中、メキシコでフィデル・カストロと出会う。独裁政権に苦しむ故国キューバの革命を志すカストロに賛同したゲバラは、軍医としてゲリラ軍に加わり、チェの愛称で呼ばれるようになる。1956年12月、カストロは総勢82名でキューバ南東コロラダス湾に上陸するも政府軍に攻撃され、生き残ったのはわずか12名。ゲバラは平等社会を目指して、若い兵士の教育にあたり、農民や女子どもには優しく接し、裏切り者には容赦ない態度で臨む。やがて彼は、その統率力を認められ、司令官として部隊を率いるようになる。1958年12月末、ゲバラはカストロからキューバ革命の要となる戦いの命を受ける・・・
2009年1月、革命から50周年を迎えたキューバ。革命の英雄として世界に名を轟かせるチェ・ゲバラだが、アルゼンチン人の彼がなぜキューバの革命に身を投じることになったのか? 『モーターサイクル・ダイアリーズ』を観て以来の疑問だったことが、本作を通じて、おぼろげながらわかったような気がする。カストロとの運命的な出会い、後に妻となる女性戦士アレイダ・マルチとの馴れ初め、詩や文学を愛した彼の人となり・・・ ベニチオ・デル・トロが体現した革命戦士チェ・ゲバラは魅力たっぷりで、人々に愛された人物であることを感じさせてくれる。(咲)
2008年/スペイン・フランス・アメリカ/カラー/シネマスコープ/ドルビーSR・ドルビーデジタル・SDDS/132分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ×日活
公式 HP >> http://che.gyao.jp/
監督:ジェームス・ハニーボーン
ナレーション:ポール・ニューマン(字幕版)、三谷幸喜(吹替版)
後ろ足で立つ姿がなんともユーモラスなミーアキャット。南アフリカに広がる灼熱のカラハリ砂漠で、猛獣や鷲などに囲まれた彼らは、大家族で助け合いながら生きている。『ディープ・ブルー』『アース』を製作したBBCチームが、『皇帝ペンギン』の成功に触発され焦点を当てたのが、大人になっても背丈30cmのミーアキャット。コロと名づけた生まれたばかりの子は、わずか7cm。1年前に生まれた兄が、生きる術を伝授していく。好物のサソリは、まずハサミ部分を切って武装解除。鷲が飛んでくれば、見張り番の合図で穴に急いで潜り込む。ある日、好奇心いっぱいのコロは、家族からはぐれてしまう。やっと見つけた家族は、ライオンの群れの向うだ。コロは無事帰れるのか・・・
直立して皆が同じ方向を向いて立つのは、太陽の光をお腹に浴びるため。毛があまり生えていない腹部は、研究者の間で「動物界のソーラーパネル」と呼ばれているそうだ。猫の一族かと思ったら、英語を見ておわかりの通り猫科ではなく、マングース科。餌の取り方など段階的に難易度を上げて積極的に教育することが確認されているのは、人間以外の哺乳類ではミーアキャットだけだとか。エミー賞受賞歴を誇るサラ・クラスによる音楽も躍動感に溢れていて、大自然で生きることの厳しさと素晴らしさを感じさせてくれる。(咲)
第21回東京国際映画祭「natural TIFF supported by TOYOTA」部門出品作品
TOYOTA Earth Grand Prix特別賞受賞
提供:スタイルジャム、ビーワイルド
配給・宣伝:ギャガ・コミュニケーションズ Powered by ヒューマックスシネマ
2008年/イギリス/カラー/83分/シネマスコープサイズ
公式 HP >> http://meerkat.gyao.jp/
監督・脚本・キャラクターデザイン:FROGMAN (蛙男商会)
原作:うすた京介
声の出演:藤原啓治、金丸淳一、真木よう子、板東英二、伊武雅刀
フリマでピヨ彦は成り行きで筒状のオブジェがついたチョーカーを買ってしまう。家に帰ったピヨ彦は、急に尿意に襲われトイレへ。扉を開けると、そこは一面の別世界! あわてて扉を閉じると部屋には見知らぬ女性が立っていた。それは、なんとフランツ帝国のアルト王女だった! 王女は闇の世界の住人・闇民(やみん)と呼ばれる種族に追われていて、追っ手から逃げる王女と共に、ジャガー、ピヨ彦、不動、高菜、ハマーの5人は異世界へ入り込んでしまう・・・
うすた京介の大人気ギャグ漫画「ピューと吹くジャガー!」(週間少年ジャンプ連載)を、「秘密結社 鷹の爪」シリーズのFROGMANが映画化したアニメ。Flashアニメを得意とするFROGMANらしい切り口に、大いに笑わせていただきました。(咲)
2008/日本
配給:DLE
公式 HP >> http://www.pyu-to.com/
原案・監督・振付:上島雪夫
脚本:松井亜弥
音楽:佐橋俊彦
出演:中河内雅貴(斑鳩隼人)、古川雄大(結城巧)、進藤学、加藤良輔(東大地)、春川恭亮(春日光樹)、宮野真守(藤倉友介)、五代高之(結城尚也)、阿知波悟美(オバちゃん)、根岸季衣(斑鳩雪乃)
隼人はサイクルメッセンジャーのバイトをしながら、一人暮らしをしている。アルコール中毒の母は気力をなくし、施設から出る様子もない。ストリートダンスの仲間だった先輩須藤の手伝い中に、なぜかヤクザらしい男たちに追われるはめになってしまう。一方恵まれた家庭に育った高校生巧は、得意のバイオリンで音大受験を控えているが、同時に続けてきたバレエも諦めきれない。二人はたまたま同じ日に覗いたダンスカンパニーの舞台にすっかり魅了され、オーディションを受けることにした。
「テニスの王子様」ミュージカルから生まれた“キラキラMOVIES”の第一弾。演出家である上島雪夫の初監督作品であり、振り付けのほか、作中のダンスカンパニーの責任者・朝比奈蓮として出演もしています。苦労したらしいワイルドな隼人、坊ちゃま育ちの巧という全く違った環境に育った二人を芯に、個性的な仲間たちが舞台で輝くために汗を流す青春ダンス映画です。若いっていいなぁ。(白)
2008/日本/カラー/102分/
配給:ゴー・シネマ