監督:パトリック・シヴェルセン
脚本:ティム・トーリ
撮影:ハヴァード・ビルケランド
特殊メイク:ジム・ウデンバーグ
出演:コートニー・ホープ(アンバー)、ルタ・ゲドミンタス(スージー)
大都会に憧れ、田舎町を出ることに決めたアンバー。彼女は5人の友人と共に、シカゴのアパートの手付金を納めるために車で向かうが、その途中で車が故障してしまう。途方に暮れるアンバー達の前に停車した1台の大型トレーラー。シカゴへ向かうという運転手に頼み込み、アンバーと仲間はその荷台に乗り込んだ。だが、トラックが停車したのは、人里離れた薄暗い倉庫で、よく見ると古い食肉解体工場のようだった。なぜここにいるのか、いったい何が起こったのか、不安に慄いていた彼らに、突然、群をなした不気味な何ものかが襲いかかってきた!。
怖い作品と思い身構えたが、みんなでシカゴへ行く様子は、まるで青春映画だった。途中、車は故障したが、たまたま通りかかった大型トレイラーの運転手もなかなか良い人に見えた・・・。だが穏やかなのはここまで。ここからの若者たちの運命はDVDで見ていただきたいが、ヒントを一つ。始まりのシーンに注意!アンバーのバイト先の職場(肉屋)の様子や、酒乱の母親との会話をじっくり見聞きしてほしい。そこにストーリー展開のヒントが隠されている。
「なるほど、こんな設定もありか!」と驚いている暇もなく終わってしまった。その終わり方は唐突で物足りないと感じたが、よくよく考えたら、アンバーのその後の「深追い」は禁物だと納得。
※若手ながらも確かな演技力を持ったコートニー・ホープ。はじめてこの作品で知ったが、今後注目して行きたい女優さんだ。(美)
2010年/アメリカ/カラー/85分/16:9シネスコ
DVD発売・販売:株式会社トランスフォーマー
監督:ジェローメ・ル・グリ
脚本:ジェローメ・ル・グリ
撮影:アントワーヌ・モノー
音楽:ジリ・ヘイガー
出演:メラニー・ロラン(リュクレス)、クロヴィス・コルニャック(リコ)、チェッキー・カリョ(アルメニア人)、クリストファー・スティルズ(アレクサンダー)
すご腕の暗殺者で、シングルマザーでもあるリュクレスは、8歳になる娘に自分の職業を説明することもできない生活に疲れ、暗殺者を辞める決意をする。しかし、彼女の殺し屋としての才能を知るリュクレスのボスは、引退を認める条件として、最後の大きな仕事を引き受けるよう要請する。
その仕事とは、石油パイプラインの利権に絡む要人、アレクサンダーを抹殺せよというものだった。彼女にとってそれは難しい仕事ではなかったが、暗殺予定現場にはもう一人の暗殺者が入り込んでいた。
『オーケストラ!』では清純な若手新進バイオンリニスト、『イングロリアス・バスターズ』では一家皆殺しの復讐をうちに秘めたメラニー・ロラン・・・。新作DVD『ラスト・アサシン』では、音楽一家に生まれ声楽の道を志していた過去がある、すご腕の暗殺者リュクレスを演じる。
人里離れた美しい森の中の教会と音楽堂。毎年、中規模の音楽祭が開かれている崇高な地。リュクレスにとって最後の仕事場になるはずのその場所に、彼女はヘンデル作曲の「メサイア」のアルトを受け持つ歌手として潜り込んでいく。
声は本人の声ではなく本職アルト歌手のだが、口の動き、息つぎ時の体の動かし方が上手く、本当に彼女が歌っているように見えた。音楽を聴かせるための作品ではないが、「メサイア」=救世主の意味が、リュクレス母娘の幸せを願うのにぴったりの選曲。
2011年/フランス/カラー/93分/16:9シネスコ
DVD発売・販売:株式会社トランスフォーマー
監督・脚本: チェン・カイコー
原作:司馬遷
撮影:ヤン・シュウ
美術:リウ・チン
衣裳:チェン・トンシュン
出演:グォ・ヨウ(程嬰 ていえい)、ワン・シュエチー(屠岸賈 とがんこ)、ファン・ビンビン(荘妃 そうき)、チャン・フォンイー(公孫 こうそん)、ホァン・シャオミン(韓厥 かんけつ)
2600年前の春秋時代の中国。王の親類筋で隆盛を誇っていた趙家は、敵対する武官屠岸賈の謀略により一族を皆殺しにされる。ただ一人荘妃が出産したばかりの赤子が生き残った。荘妃は立ち会った医師の程嬰に「仇が誰か知らせずに育てて」と託して息絶える。趙家の遺児と間違えられてわが子と妻を殺された程嬰は、遺された子に程勃と名づけ家を封印し屠岸賈へ仕えた。程勃は程嬰と屠岸賈を父と慕って成長する。この秘密を知っているのは、生まれたばかりの程勃の命を救った韓厥のみ。荘妃が死んだことで屠岸賈から責められ、顔を傷つけられた韓厥は折りあるごとに程嬰を訪ね、程勃は不審に思っていた。時が流れ、程勃は15歳となった。
主役級のスターが揃った歴史時代劇。中国では京劇の演目としても長い間親しまれてきた作品ですが、チェン・カイコー監督による初の映画化だとか。大河ドラマにして毎週見ていたいような壮大な物語です。中国の良き文化を伝えたいという監督の思いのつまった、単なる復讐劇ではなく親が子に寄せる無私の愛、長い間に培われる情などを描いて深く印象に残ります。ベテランに混じって臆せず、程勃の子ども時代を演じたのはウィリアム・ワンくん。お父さんの仕事の関係で日本在住。インターナショナルスクールに通っているので、英語のほうが得意なのだそうです。利発そうなきりりとした顔立ちで、今後注目していきたい子役です。(白)
2010年/中国/カラー/128分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:角川映画
公式 HP >> http://www.unmeinoko.jp/
監督:マックス・オフュルス
脚本:アネット・オドマン、マックス・オフュルス
撮影:クリスチャン・マトラ
音楽:ジョルジュ・オーリック
美術:ジャン・ドーボンヌ
衣裳:マルセル・エスコフィエ
出演:マルティーヌ・キャロル(ローラ・モンテス)、ピーター・ユスティノフ、アントン・ウォルブルック
19世紀に実在した踊り子ローラ・モンテスは、その美貌と奔放な性格で音楽家や政治家と数々の浮名を流した。バイエルンの国王ルードヴィヒ1世に寵愛され、国民の反発を買ったことから追われ、落ちぶれていく。映画はサーカスの踊り子となったローラが、観客のぶしつけな質問に答え、当時の思い出を回想する場面をはさみながら進行する。
当時破格の製作費を投入し話題となるも最初の興行成績がふるわず、製作者たちが監督の留守中に無断で編集してしまったといういわくつきの作品。マックス・オフュルス監督は失意のうちに亡くなりましたが、これを惜しんだ人たちが幾度も復元を試み、半世紀も過ぎてからデジタル・リマスター完全復元版が完成しました。監督も俳優も初めて観る人ばかり。しかしサーカス場面と、実在の踊り子を演じたマルティーヌ・キャロルが素敵でした。マルティーヌ・キャロルは50年代のフランス映画界でセックス・シンボルとして絶大な人気があったそうです。4回の結婚、失恋してセーヌ川に身を投げたり、ギャングに誘拐されたりと私生活も波乱の人であったようですが、あのゴージャスな美貌では無理もありません。(白)
1956年/フランス/カラー/110分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
公式 HP >> http://www.eiganokuni.com/
監督:成島出
脚本:長谷川康夫、飯田健三郎
撮影:柴主高秀
照明:長田達也
美術:金田克美
出演:役所広司(山本五十六)、玉木宏(新藤/東京日報記者)、柄本明(米内海軍大臣)、柳葉敏郎(井上成美・海軍事務局長)、阿部寛(山口多門)、香川照之(宗像/東京日報主幹)、原田美枝子(禮子/五十六の妻)
昭和14年。揺れ動く世界情勢は未曽有の危機をはらんでいた。日本国内では日独伊の軍事同盟をめぐって、陸軍を中心とする賛成派と良識派が対立していた。海軍次官山本五十六は、世界大戦突入を憂慮し同盟結成を阻止しようとしていたが、皮肉にも、連合艦隊司令長官に任命されてしまう。
アメリカとの戦争を最後まで反対していた山本五十六は、一旦、戦争と決まると潔くそれに向かって、早期終結にする意外にないと決断する。
若き日に彼がハーバード大学で学んだことがあり、アメリカの国力を知り尽くしていたからだ。今からだからこそ無謀な戦争だったと言えるが、当時は山本の言葉に耳を傾ける軍人はいなかっただろう。
想像していた<連合艦隊司令長官>山本五十六は寡黙で孤高の方と思っていたが、どんな身分の人にも人間的な物言いをしていて、家族への眼差しも穏やかだった。
最期、敵機に撃墜され、死を覚悟した瞬間はどんなことを願い、祈って逝ったか・・・。
第二次世界大戦がどのようにして起こり、山本五十六がどう思って行動したか、その人間性に焦点を合わせて作られていた。心から若い方々に観てほしい作品。
※来年2月の公開される『キツツキと雨』の木こり&ゾンビに扮する役所広司さん。180度違う役柄で楽しませてくれるが、まるで別人のように感じてしまった。凄い役者さんだ。(美)
2011年/日本/カラー
配給:東映
(C)2011 「山本五十六」製作委員会
公式 HP >> http://isoroku.jp/
監督:グレッグ・モットーラ
脚本:サイモン・ベック&ニック・フロスト
撮影:ローレンス・シャー
音楽:デヴィッド・アーノルド
出演:サイモン・ペック(グレアム・ウィリー)、ニック・フロスト(クライヴ・ゴリングス)、ジェイソン・ベイトマン(ゾイル捜査官)、クリステン・ウィグ(ルース・バグス)、セス・ローゲン(ポール)
1947年、アメリカ・ワイオミング州のムーアクロフト。そこで暮らす少女は、ある夜、怪しい光を放つ飛行物体が、愛犬に向かって墜落して来るのを目撃した。
この出来事から60年後、イギリスの自称SF作家クライヴとイラストレーターのグレアムは、世界中のマニアが集まるコミックマーケット<コミコン>に参加した。
翌日、大型キャンピングカーをレンタルして、少年時代から憧れている西部のUFOスポット巡りに出発した。
ところがネバタ州の「エリア51」付近で交通事故現場に遭遇する。付近を見回す彼らの目にうつったのは・・・。
しっかり楽しませてもらった。か細い体で、小さくて、大きな逆三角形の頭、大きな目玉・・・。ポールは60年前に宇宙船から落ちてしまい捕まってしまった。それから「エリア51」で研究材料にされて、最後に解剖っていう時に逃げ出したのだ。
偶然出合ったクライヴたちに助けを求めたのだ。その言葉のやり取りがとてもスピーディで面白く、しかもわかりやすい。どんどんポールに肩入れして応援してしまった。
いただいた試写状の気味悪さはどこへやら・・・宇宙人ポールのガラスのような目がだんだん可愛くなって来た…。
出てくる俳優さんは悪人?や警察の人もみんな個性的で顔の表情が面白い。主役のオタクコンビは、普通笑うと顔の中心が広がるがこの二人は顔の中心に縮んでしまうのでおかしかった。
幕切れも◎。家族で楽しめて、いい気分で帰ることが出来る作品。(美)
2010年/アメリカ=イギリス/カラー/シネマスコープ/104分
配給:アステア+パルコ
公式 HP >> http://paulthemovie.jp/
監督:川島雄三
脚本:川島雄三、田中啓一、今村昌平
撮影:高村倉太郎
照明:大西美津男
美術:中村公彦、千葉一彦
録音:橋本文雄
音楽:黛敏郎
出演:フランキー堺、南田洋子、左幸子、石原裕次郎、芦川いづみ、金子信雄、織田政雄、岡田真澄、植村謙二郎、河野秋武、二谷英明、西村晃、高原駿雄、小林旭、武藤章生、小沢昭一、梅野泰靖、新井麗子、菅井きん、山岡久乃、殿山泰司、市村俊幸
2012年に100周年を迎える日本最古の映画会社である日活。数多あるライブラリーの中から、後の100年まで残したい1本として、日活および川島雄三監督の代表作である本作がデジタル修復する作品に選ばれた。撮影当時のスタッフが修復に携わることで、日本映画黄金期の勢いを感じさせる作品として生まれ変わった本作は、50年代のオールスター・キャストが織りなす、笑いあり涙ありの江戸の“粋”な心に触れる作品。
時は幕末、文久2(1862)年11月。明治維新まであと6年。世情も暗い頃だったが、品川の遊郭の町並みだけは賑わっていた。その旅籠の一軒である「相模屋」でわらじを脱いだ佐平次は勘定を気にする三人の仲間をしりめに、大盤振る舞いをする。だが実はこの男、無一文だった・・・
45歳の若さでお亡くなりにった川島監督は51作品を世に送り出した。『幕末太陽傳』は代表作中の名作。まず1950年代の品川(今の北品川近辺)の宿の様子が映しだされた。その中には舞台になる宿「相模屋」が映っている。フランキー堺扮する佐平次は大盤振る舞いでドンちゃん騒ぎで最後は宿の旦那に「へい、金は一切ござんせん!」と悪びれもせず物置部屋に・・・。いつの間にか、目端の利く番頭さん以上の働きをして気にいられてしまう。その調子よさがたまらなく滑稽。幕末に活躍した歴史上の人物・高杉晋作も宿屋の客として入れてあり、揉め事、相談ごとにのって駄賃を貯める佐平次。若かりし南田洋子、左幸子、芦川いづみさん。初々しい小林旭さんと懐かしいお顔が満載の名作。(美)
古典落語「居残り佐平次」を軸に、「品川心中」「三枚起請」など様々な噺を一本の物語に紡ぎ上げた作品。とにかくテンポがよくて、登場人物の一人一人が生き生きしていて面白い。イノさんこと居残り佐平次演じるフランキー堺の調子の良さは天下一品。石原裕ちゃん演じる高杉晋作はちょっと気障。私のお気に入りは、岡田真澄演じる混血児の若衆喜助。ちょん髷姿ながら、この顔で生粋の品川生まれと言われてもねぇ・・・と皆に言われてしまう可笑しさ。売れっ子女郎こはる(南田洋子)と、彼女に嫉妬の炎を燃やすおそめ(左幸子)の二人が揃ってイノさんに惚れてしまう女優対決も楽しい。こんな映画が作れた時代が懐かしくなる1本。(咲)
1957年/110分/モノクロ/スタンダード
配給:日活
公式 HP >> http://www.nikkatsu.com/bakumatsu/
監督:ジェシカ・ハウスナー
脚本:ジェシカ・ハウスナー
編集:カリーナ・レスラー
撮影:マルティン・ゲシュラハト
美術:カタリーナ・ヴェッパーマン
衣装:タニア・ハウスナー
出演:シルヴィー・テステュー(クリスティーヌ)、レア・セドゥ(マリア)、ブリュノ・トデスキーニ(クノ)、エリナ・レーヴェンソン(セシル)
不治の病で、首から下の身体機能がマヒしているクリスティーヌは、長い間車椅子生活を送っていた。彼女は奇蹟が起こるといわれている巡礼地ルルドのツアーに参加する。
ツアーには、マルタ騎士団というにボランティアがいて、クリスティーヌの身の回りの世話を若いマリアがやってくれる。でもこのマリア、同じ仲間の男に気があって、そっちの交際を優先させるようになり、クリスティーヌや病人たちを避けるようになっていく。
一人ではなにも出来ないクリスティーヌの上に奇蹟はおきるのだろうか。
世界一巡礼者が多いルルドを、一緒に旅をしているような満足感があった。
だが反面、人間の気まぐれな残酷さもしっかりみせてくれた。ツアーの人が自分の体は治るのかと聞くと「精神は治癒される」と言う。わらをもすがる思いの傷病者の気持ちはこんな言葉では納得しないだろう。
ここはキリスト教最大の聖地だが、まぎれもなく人間の世界。いろんな感情がはらんでいて俗世間となんの変わりはなかった。
※『サガン 悲しみよこんにちは』のシルヴィー・テスキューが無表情の中、不安やイライラを見事に表していた。
※ルルドの泉を調べてみた。フランスの南西部で、スペインとの国境であるピレネー山脈のフランス側の山麓にカトリックの聖地ルルドがある。
1858年。ルルドに住む貧しい少女・ベルナデット・スビルーが、村はずれの洞窟で聖母マリアを見て、マリア様の言葉にしたがって洞窟の土を手で掘ると、そこから泉が湧き出し、この泉には病気を治癒する力があるという評判が広がった。
それで多くの巡礼者が集まるようになり、今日では、毎年500万人が世界の各地からルルドを訪れている。(美)
2009年/カラー/オーストリア、フランス、ドイツ/99分
配給:エスパース・サロウ
公式 HP >> http://lourdes-izumi.com/
監督:ブラッド・バード
原作: ブルース・ゲラー
脚本: ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック、クリストファー・マッカリー
撮影:ロバート・エルスウィット
音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:トム・クルーズ(イーサン・ハント)、ジェレミー・レナー(ブラント)、サイモン・ペッグ(ベンジー)、ポーラ・パットン(カーター)、ウラジミール・マシコフ、ジョシュ・ホロウェイ、アニル・カブール、レア・セドゥー
ロシアの中枢クレムレリンが突如爆破された。IMFのエージェント、イーサン・ハントとチームがその容疑をかけられ、アメリカ大統領は「ゴースト・プロトコル」を発令した。IMF長官はハントに苦渋の面持ちで伝える。ハントたちは存在を抹消され、国家の後ろ盾のないまま真犯人を突き止めねばならない、と。しかも彼らの企てる核テロを阻止しなければ、地球規模の戦争が起きることになるのだ。
前作から5年おいて発表された第4作目。モスクワ、ドバイ、ムンバイ、プダペストを舞台に、“諦めない男”イーサン・ハントとそのチームが不可能と思えるミッションを遂行します。命令を出す方は簡単、命の危険があっても「当局はいっさい関知しないのでそのつもりで」と“スパイ大作戦”で聞いたときには「え~!ひどい!」と思いましたっけ。プシューとテープが消えてしまうところは、最近のハイテクに変わりましたが、部下たちが命令に忠実、命がけで任務にあたるのは変わりません。回を重ねるたびに派手に危険になっていくミッションをどのようにこなしていくのか?アニメの『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』のブラッド・バード監督の初めての実写長編作品ですが、期待にたがわずその手腕を発揮しています。製作期間も予算もたっぷり(たぶん)、俳優陣も贅沢なエンタメ作品、ぜひできるだけ大きな画面でお楽しみください。高層ビルの場面は鳥肌がたちそうです。高所恐怖症の方はご注意!(白)
2011年/アメリカ/カラー/132分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公式 HP >> http://www.mi-gp.jp/
監督・脚本・編集:アミール・ナデリ
脚本:アボウ・ファルマン
共同脚本:青山真治、田澤裕一
出演:西島秀俊、常盤貴子、菅田俊、でんでん、鈴木卓爾、笹野高史
「映画は真に娯楽であり、芸術である」と街頭で演説し、台頭する商業主義の映画を嘆く映画監督の秀二。 本物の映画を作りたいという夢を胸に、真の映画を観てもらいたいと、ビルの屋上で名作の自主上映会を続けている。そんな折、兄が借金のトラブルで亡くなる。兄は自分の映画製作資金のために、やくざの世界で金を借りていたのだ。秀二は殴られ屋となって兄の借金を返済する決意をする・・・
お互いに映画狂を自認するアミール・ナデリ監督と俳優西島秀俊が、2005年の第6回東京フィルメックスで運命的に出会って出来上がった作品。二人の映画への熱い思いがほとばしる。脇を固める常盤貴子、菅田俊、笹野高史たちが、秀二のトランス状態を静かに見守る様子も素晴らしい。(咲)
ナデリ監督が『CUT』に込めた思いは、特別記事 アミール・ナデリ監督インタビューでどうぞ!
2011年/日本/カラー/1:1.85
制作協力・配給:ビターズ・エンド
(C)CUT LLC 2011
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/cut/
監督・脚本:ワン・ビン(王兵)
出演:ルウ・イエ(廬野)、シュー・ツェンツー(徐岑子)、ヤン・ハオユー(楊浩宇)、リー・シャンニェン(李祥年)
1960年10月。中国西部甘粛省の夾辺溝労働教育農場。荒涼とした大地に砂塵が舞う。抜けるような青空の下、足取り重く男たちが歩いていく。彼らは反革命思想の“右派”とされて労働による思想改造を命じられている者たちだ。大飢饉で、配給されるのは中味のほとんどないお粥。董(ドン)が「食べ物と交換できそうなのはズボンとシャツしか残ってない」とつぶやくと、同室の陳が「来年の夏着るものがなくなるよ」というが、董にとっては今を生き抜くほうが大切だ。毎日一人二人と餓死していく。董は仲間に「僕が死んだら布団で巻いて妻が来るまで部屋の奥に置いて、上海に遺体を運んでほしいと伝えてくれ」と頼む。董と妻は上海の病院に勤める医師だった。董は西北部を支援したいと家族の反対を押し切って、希望に燃えて蘭州に赴いたのだが、待ち受けていたのは過酷な運命だった・・・
ワン・ビン監督の『鉄西区』(9時間の半分くらい観た)、『鳳鳴―中国の記憶』『名前のない男』を観ているが、この『無言歌』はドキュメンタリーではない。
1956年に毛沢東は、自由な批判を歓迎すると言って「百花斉放、百家争鳴」キャンペーンをした。これはまさしく陰謀で、党の批判をしたと100万人以上の人民に対して「反右派闘争」を始めた。この映画はその時犠牲になった人々の凄惨な姿を描いている。
人がバタバタ死んでいくが土を掘り起こそうにも凍土で掘れもせず、身の回りのものと一緒に裸で少し遠いところに置かれるだけ・・・。訪ねてきた妻に行方不明だと嘘をいったが、死んだ董の死体は、その一部分を誰かに食べられていたからだ。痛ましい映画だったが直視しなければならない。(美)
右派の烙印を押された知識人たちが、地方の町や農村で不遇な生活を強いられた時代があったことを初めて意識したのは、確か『天雲山物語』(謝晋監督/1980年)を観た時だったと思う。文革時代の下放についてはすでによく知っていたので、それが文革以前のことだということに驚きながらも、時代背景を知ろうとすることもなかった。
『無言歌』は、ヤン・シエンホイ(楊顕恵)の小説「告別夾辺溝」を元に、ワン・ビン監督が再教育収容所を生き延びた人たちを探し当て、3年にわたりインタビューを重ねて脚本を作り上げた作品。言論の自由が提唱されたときに意見を述べたひと言が、後に右派の理由とされてしまったという証言。時の権力者の匙加減一つで人の運命が変わってしまう恐ろしさが、研ぎ澄まされた美しい映像によって胸に突き刺さってくるようだった。(咲)
2010年/香港・ベルギー・フランス/109分/HD/DOLBY SRD
配給:ムヴィオラ
公式 HP >> http://mugonka.com/
監督・脚本:ウィリアム・モナハン
原作:ケン・ブルーエン『ロンドン・ブールヴァード』(新潮社刊)
撮影:クリス・メンゲス
音楽:セルジオ・ピッツォーノ
出演:コリン・ファレル(ミッチェル)、キーラ・ナイトレイ(シャーロット)、デヴィッド・シューリス(ジョーダン)、 アンナ・フリエル(ブライオニー)、ベン・チャップリン(ビリー)、レイ・ウィンストン(ギャント)
3年の刑期を終えて出所したミッチェルは組織から足を洗うつもりだった。出所祝いのパーティで芸能記者と知り合い、その縁から元女優のシャーロットのボディガードをすることになった。美しく繊細なシャーロットは女優を引退し、夫とも別れて家に引きこもっていた。毎日のように現れるパパラッチのほかに、ミッチェルを配下におきたいギャングの一味もしつこくつきまとう。田舎の別荘で初めて二人だけになったミッチェルとシャーロットは、穏やかな日々の中で心を開いて寄り添うようになる。
ウィリアム・モナハン監督は、香港映画『インファナルアフェア(原題:無間道)』のハリウッドリメイク版『ディパーテッド』の脚本家。アカデミー賞最優秀脚色賞を受賞しています。監督デビューの本作も、アイルランドの小説を脚色したもの。裏社会と底辺に暮らす人間、セレブの暮らしを対比させ、ミッチェルが暴力の蔓延する世間でまっとうに暮らしたいともがく有り様を描いています。主演の二人に加え、イギリスの俳優たちがクールでちょっと切ない物語を彩っています。(白)
2010年/イギリス/カラー/104分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:日活
(c)2010 GK FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
監督:ジル・パケ=ブランネール
原作:タチアナ・ド・ロネ
脚本:ジル・パケ=ブランネール、セルジュ・ジョンクール
撮影:パスカル・リダオ
音楽:マックス・リヒター
出演:クリスティン・スコット・トーマス(ジュリア・ジャーモンド)、メリュジーヌ・マヤンス(サラ・スタルジンスキ)、ニエル・アレストラップ(ジュール・デュフォール)、フレデリック・ピエロ(ベルトラン・テザック)、エイダン・クイン(ウィリアム・レインズハート)
アメリカ人のジュリアはフランス人の夫、娘と一緒にパリに住んでいる。夫が子どものころ暮らしていた古いアパートには、ジュリアの知らなかった歴史があった。1942年、ナチスの統治下のパリ。早朝にパリ警察によるユダヤ人の一斉検挙が始まった。サラは仲良しの弟をとっさに納戸へ隠し鍵をかける。「かくれんぼよ。お姉ちゃんが戻るまで声を出しはダメ」と。すぐに戻れると思ったのに、サラは母親や近所の人と屋内競技場まで連れて行かれ、そのまま監禁されてしまった。後から後からユダヤ人が詰め込まれ、水も食料もなく、トイレはあふれ、広い競技場はひどい有様になっていった。家に帰って弟を救い出そうと、サラは機会を伺うがもっと遠くの収容所まで運ばれていく。
第23回東京国際映画祭で監督賞と観客賞を受賞した作品が公開になります。小さな姉と弟の行く末を胸がつぶれる思いで見守りました。占領下とはいえ、隣人として暮らしてきた人をユダヤ人であるのを理由に迫害していったこの事件は、長く公にされずにいたそうです。厳しい収容所生活を耐えて生き残った人、命がけで逃げ出した人、それを匿い支援した人。それを現代のジャーナリストが調べ上げていくうちに、アメリカ人の彼女は自分の生き方を見つめなおすことになります。ナチスに従うしかなかった人の悔恨も加えてとても重い映画でしたが、現代に生きる女性の視点も加えたことで、より身近に引き寄せることができたと思います。(白)
昨年の東京国際映画祭で記者会見に登壇したブレネール監督はとても素敵な方。「俳優をされるつもりは?」と聞かれ、「カメラの後ろの方が好き」と照れ笑いされていた。ナチス占領下とはいえ、フランス警察がユダヤ人を連行し収容所に移送したという事実は長らく伏せられていて、1995年、シラク大統領が国家が迫害に加担したことを明らかにし国民に衝撃を与えたという。原作に出会ったのは、世界的ヒットになる前で、映画化権を安く買うことができたそうだ。監督は生まれも育ちもパリだが、ドイツ系ユダヤ人の祖父をホロコーストで亡くしていて、いつか描きたいと思っていたが、こんなに若くして作れるとは思ってなかったと嬉しそうだった。
とにかく凄いのがユダヤ人の収容された競輪場再現シーン。収容当時の写真は残っていないが、取り壊された競輪場を1930年代のスポーツイベントの写真からCGも使って再現。生き残っている方にその時経験した感覚を伺ったら、騒音の凄さ、天井がガラスで暑かったこと、衛生状態がひどく悪臭が漂っていたこと、何が起こっているのかわからず皆がうろうろしていたことなどの証言を得て、それを元に再現。観客にそこにいるような臨場感を感じて貰いたかったそうだ。
世界各地にいる不当に捕らえられている人すべてに向けた映画で、現代的な視点を入れたので、若い人にも歴史を身近に考えて貰いたいと監督は語っていた。(咲)
2010年/フランス/カラー/111分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
(c)2010 - Hugo Productions - Studio 37 - TF1 Droits Audiovisuel - France2 Cinema
公式 HP >> http://www.sara.gaga.ne.jp/
監督:大園康志
撮影:安田耕治
出演:小早川弘江、渋谷奈津子、山田恵子
名古屋の南区で小さな工場を営む小早川弘江さんは56歳。倉庫の中の四畳半で近所の主婦二人と自動車部品の接着作業をしている。一つ5円…一日数千個くっつけるが、彼女たちはその部品が車のどこに使われるのか知らない。
ここは4次下請けの町工場。上の会社からどんだけ仕事がくるのか、全くこないのかも前日の夕方しかわからない。そんな小さな工場を閉める決心をする。カメラは廃業までの日々を坦々と追っている。
モンテカルロテレビ祭のドキュメンタリー部門で最優秀作品賞を受賞したこの1時間の作品は、工場を運営する辛さ、苦しさを恨む言葉はひと言も出てこない。むしろ亭主の笑い話や冗談で笑う方向に気持ちをむけているのだ。
そんな様子を見ていると名古屋の景気を影で支えていてくれたのは、こんな下請けの下請けの下請けの・・・そのまた・・・こんな会社と呼べないほどの工場が一体いくつあったのだろうか。未だ無事に(あえぎながらも)経営しているのはいくつあるのだろうかと、地元である私も今さらながらに考え込んでしまった。
※工場を閉めて職を変えた(老人介護施設)小早川弘江さんが、スーツ姿も颯爽とお出かけするお姿に名古屋女性として誇りに感じた。(美)
2011年/日本/カラー/HD/60分
配給:スターキャット・ケーブルネットワーク映画事業部
公式 HP >> http://waratte-sayonara.jp/index.htm
監督:レフ・マイェフスキ
出演:ルトガー・ハウアー、シャーロット・ランプリング、マイケル・ヨーク
16世紀中期のネーデルランド(主として現在のベルギー、オランダ)が生んだ偉大な画家ピーテル・ブリューゲル。「十字架を担うキリスト」は、十字架を背負ってゴルゴダの丘に向かうキリストの受難の物語を、1564年のフランドルを舞台にして描いた名作。数百人が描きこまれている中から、十数人に焦点をあてて、その人物たちの物語を語っていく。背景にそびえ立つ岩山の頂に建つ風車がゆっくり回りだし、村の一日が始まる。書きかけのスケッチを手に、村へ絵の題材を探しにいくブリューゲル。いつしか風車が止まり、眼の前ではイエス・キリストや聖母マリアが聖書の世界から蘇り、十字架を背負ったキリスト一行が現れる・・・
まさに絵が動き出す面白さ。いくつもの物語が交錯していき、16世紀のフランドル地方に私たちを導いてくれます。
この映画の題材となった絵画「十字架を担うキリスト」が飾られているのは、ウィーン美術史美術館。映画の最後にブリューゲルの絵画を集めた一室が映し出され、隣にある「バベルの塔」を見て、ここに行ったことがあるのをにわかに思い出しました。「バベルの塔」の印象が強すぎて、隣にあった絵のことは覚えていないのです。でも、暗い宗教的な絵画が多いウィーン美術史美術館の中で、大勢の人たちが生き生きと描きこまれたブリューゲルの絵が異彩をはなっていたことだけは記憶にあります。その一人一人が映画の中で動き出すのですから、これは愉快! (咲)
2011年/ポーランド・スウェーデン/96分/英語/カラー/DCP/Blu-ray/16:9/5.1ch
配給:ユーロスペース+ブロードメディア・スタジオ
公式 HP >> http://www.bruegel-ugokue.com/
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
原作:ワジディ・ムアワッド
撮影:アンドレ・トュルパン
音楽:グレゴワール・ヘッツェル
出演:ルブナ・アザバル(ナワル・マルワン)、メリッサ・デゾルモー=プーラン(ジャンヌ・マルワン双子の姉)、マキシム・ゴーデット(シモン・マルワン双子の弟)、レミー・ジラール(公証人のルベル)
カナダ人の双子の姉弟、ジャンヌとシモンは、プールサイドで突然、母親ナワルが放心状態になり倒れてしまう。すぐ入院したがしばらくして亡くなってしまった。
母親ナワルが長年秘書として勤めていた公証人ルベルは、母親の遺言を二人に見せた。
それは、ジャンとシモンの父親、それと兄に宛てた二通の手紙だった。父親は死んだと言われていたが、兄までいると知り困惑する姉弟だった。
この作品は83回アカデミー賞の外国語映画賞で5本のノミネートの中の1本だった(受賞したのはスサンネ・ピア監督『未来を生きる君たちへ』)。
カナダのアカデミー賞にあたるジニー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞など8部門を受賞。
母親の壮絶な過去があぶり出されていくさまが丁寧に描かれていて、真実に突き当たったとき思わず息をとめてしまった。
これは必見作品!最初のシーンの謎が最後にパズルがピタッと合うように出来ていて衝撃を受けた。一度観ただけではわからないシーンもあったので公開されたら是非もう一度観たい作品。
※母親を演じるルブナ・アザバルの強い眼差しが印象的だった。(美)
レバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲を映画化した作品。双子の男女が、亡き母の故郷である中東の地を訪ね、母が異教徒の青年の子供を身ごもった故に故郷を追われたこと、さらには自分たちの誕生の秘密を知るという物語。1970年代の中東の動きを背景にしていますが、テロと報復の連鎖を断ち切りたいという思いをずっしり感じさせてくれて、現代にも通じるものがあります。
10月27日にカナダ大使館で行われた試写の折に来日したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が登壇。「中東でのシーンはヨルダンで撮影。ヨルダンの方だけでなく、レバノン、パレスチナ、シリア、イラクの人々にも出演していいただいて、真のアラブ文化が反映できたと思います」と語られました。「カナダで育って戦争経験がないので、戦争シーンについても彼らに協力をいただいて再現したけれど、アメリカ映画ではないので低予算映画です」とも言われました。お金をかけなくてもスケールの大きな映画を作れることを実感! 見ごたえのある作品。なお、映画では、中東のどこの国と特定していません。(咲)
2010年/カナダ、フランス/カラー/131分/ビスタサイズ
配給:アルバトロス・フィルム
公式 HP >> http://shakunetsu-movie.com/
監督:ニコール・カッセル
脚本:グレン・ウェルズ
撮影:ラッセル・カーペンター
編集:スティーヴン・A・ロッター
音楽:ヘイラー・ペレイラ
衣装:アン・ロス
出演:ケイト・ハドソン(マーリー)、ガエル・ガルシア・ベルナル(ジュリアン医師)、キャシー・ベイツ(マーリーの母)、ルーシー・パンチ(サラ)、ロマニー・マルコ(ピーター)、ウーピー・ゴールドバーク(ゴッド)
マーリーは30歳、独身。広告代理店に勤務していて、夜は仲間たちと楽しく過ごし、恋も順調。そんな彼女に<癌の宣告>が・・・。
突然訪れた絶望と苦しみ・・・そんな時、マーリーが出会ったのは主治医ジュリアンだった。
女性版『50/50』でストーリー展開はありきたり。主治医との恋愛もなんだか身近過ぎて・・・と思って観たが、濃~いお顔の生真面目医師ガエル・ガルシア・ベルナルと開けっぴろげなケイト・ハドソンの意外なコンビが効いていて、治らない癌の痛々しさより、生きている今の幸せをラブコメ風に仕上げている。
彼女の周りもどう接してよいのか迷う姿も丁寧に織り込んであり、キャシー・ベイツ扮する母親が心配するあまり、やること言うこと、みんな裏目になってしまい、最後には喧嘩になる・・・そんな切ない悲しみが体全身から伝わってきた。さすが私の好きなキャシー・ベイツ!
※ウーピー・ゴールドパーグのゴッドのご登場で<死>の怖さが緩和されていた。それがこの作品を後味良くしている。デートにオススメ。(美)
2011年/アメリカ/スコープサイズカラー/107分
配給:ファントム・フィルム
公式 HP >> http://happyending-movie.com/
監督:ショーン・レヴィ(『ナイトミュージアム』)
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ/ロバート・ゼメキス
脚本:ジョン・ゲイティンズ
撮影:マウロ・フィオーレ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ヒュー・ジャックマン(チャーリー・ケントン)、ダコタ・ゴヨ(マックス)、エヴァンジェリン・リリー(ベイリー)、アンソニー・マッキー(フィン)
才能あふれるボクサーだったチャーリー・ケントンは、ロボット格闘技の時代の到来によって戦う場所を失い、プライドも夢さえも失ってしまう。酒びたりで借金まみれ、ロボットのトレーナーとなっても試合の計画も行き当たりばったりだ。自暴自棄な生活を送る彼の前に突然、母を亡くした11歳の息子マックスが現れる。親類に引き取られる前に、父子はしばらく共に暮らし始める。マックスはゴミ捨て場で部品を探すうち、捨てられた旧式ロボット“ATOM”を発見した。
2020年なんてあと9年しかないが、まさかこんな世にはならないだろう。人間同士でなく、代わりに格闘技ロボットを遠隔操作して戦わすのだ。でも20年後30年後ならわからない。
格闘技ロボットもいろんなものがあり、お金次第でどんどん高性能になる。そこに母を失くした息子マックスが旧式ロボット「ATOM」と出会い、改良しながら父子の絆を取戻していく。[リアル・スティール]は、本当の強さの意味。親子の強い絆を意味していると感じた。(美)
マシンとバトルとギャンブルと、男性の好きな3つが揃ったロボット格闘技にのめりこんでいるチャーリー。息子マックスは、初めて会った父親を実に正確に見抜いて、二人のやりとりは息子に軍配。しかしどちらも応援したくなる魅力がある。ダメ父と息子を結び付ける旧式ロボットのアトムと二人のシーンは心なごませる。監督は日本のロボット文化に敬意を表して(アトムの名もそうかな)、作品にも登場させている。ぜひ父子で観てほしい作品。(白)
監督:アルバート・メイズルス、ブラッドリー・カプラン
出演:ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、エルトン・ジョン、デビッド・ボウイ、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ビリー・ジョエル、ジェームズ・テイラー、ビル・クリントン、ハリソン・フォード、レオナルド・ディカプリオ、ジム・キャリー
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが起こったとき、ニューヨークの空港にいたポールは、音楽で何かできることはないかと考える。その1ヵ月後、彼の呼びかけにこたえて多くの芸能人、ミュージシャンが集合。大きなライブイベントとなった。コンサートまでの道のりと、当日のステージ、舞台裏のポールに密着したドキュメンタリー。
ザ・ビートルズのレコードデビューは1962年10月。1966年の来日公演のニュースをよく覚えていますし、「help!」 「Yesterday」も大好きでした。解散後もソロで活動を続けているポールと長いつきあいのカメラマンが、ずっと密着したこの作品はお茶目な表情も捉えています。道行く人たちがポール本人とわかって息を飲むシーン、登場する共演者たち誰もが、ポールと会えて喜ぶシーンなど、今もずっとスーパースターなのねと再確認。懐かしいビートルズナンバーに、ポールの新曲まで披露されます。いうまでもありませんがとてもチャーミングな人でした。(白)
2011年/アメリカ/HD/93分/4:3/
配給:アップリンク
監督:トニー・コールマン
エグゼクティブプロデューサー:ロン・マン
プロデューサー:マーガレット・メイハー脚本:
出演:ジェイク・シマブクロ、ビル・タピア、ジェームズ・ヒル、タイマネ・ガードナー、キモ・ハッセイ、ピーター・ルオンゴ、ジム・ベロフ、デント・メイ、ジェイミー・ケリー・カーティス、ジョン・ブラマ
1800年代後半、もともとはポルトガル移民によってハワイにもたらされた4弦の小さな楽器。当時の王がこの音色を気に入り、宮廷音楽に取り入れたことからウクレレの歴史が始まった。それから50年近く、ハワイのみならずアメリカ本土でも最もポピュラーな楽器として愛されてきた。その後エレキギターに取って代わられたものの、最近また脚光を浴び始めたとか。ウクレレ誕生の歴史をハワイの貴重な映像とともに紹介している。
私にはハワイアンよりもウクレレ漫談でおなじみの楽器でした。このドキュメンタリーには、世界中のウクレレ愛好家やマイスターと呼べる名人が登場し、マイスターたちはなんとも美しい音を作っていました。あの小さな楽器がこんな音を!?と驚きました。思わず楽器店のウインドウを覗いてしまいましたら、ほんとに気軽に買えるお値段からありました。買ったその日から楽しめる簡単なコードもあれば、マイスターのような複雑な演奏まで。弾いている人がみな笑顔で、観ているこちらも笑顔になるドキュメンタリー。(白)
のどかで明るいハワイを感じさせてくれるウクレレの音色。このウクレレがハワイを体現する楽器になったのには、悲しくも美しい物語があったのを知りました。1870年代干ばつに襲われたポルトガルのマデイラ島。それを知ったハワイの王様が何千人ものポルトガル人を受け入れたのです。移民してきた人たちが街角で開いた弦楽器の演奏会が評判を呼び、王様の耳にも届きました。カラカウア王は世界一周した最初の君主。西欧化による伝統文化の喪失でモラルが低下し荒廃した王国を再建する道を探していたのでした。ウクレレの楽しそうな音が気に入り、これまで単調なリズムと踊りで伝えていた神話をウクレレのリズムに乗せハワイ文化を見事復興させました。人口減少で各地から移民を受け入れ、異文化が持ち込まれることにも理解のあったカラカウア王ですが、55歳で亡くなり、その7年後にハワイはアメリカ合衆国に併合されてしまいました。それでも、ハワイがハワイらしさを保っているのはウクレレの音色のお陰でしょうか。そして、気軽さや明るさが受けて世界にも広がったウクレレ。その歴史を本作はウクレレのメロディーに乗せて楽しく伝えてくれます。(咲)
2010年/カナダ/カラー/76分/HD
配給:グラッシィ
提供:グリーンルーム、パルコ 協力:キワヤ商会/カマカ・ウクレレクラブ・ジャパン
公式 HP >> http://mightyuke.jp/
監督:フレデリック・シェンデルフェール
脚本:フレデリック・シェンデルフェール、ジャン=クリストフ・グランジェ
出演:カリーヌ・バナッス(ソフィー・マテラール)、エリック・カントナ(ダミアン・フォルジャ)、メーディ・ネブー、オーレリアン・ルコワン、カリーナ・テスタ、ブリュノ・トデスキーニ
モントリオールに住むソフィーは、バカンスが目前だというのに仕事もなければ一緒に過ごすボーイフレンドもいない。気の毒がった編集者がいい情報を教えてくれた。住まい交換のサイト“swicth.com”なら格安に旅ができるというのだ。パリ在住のベネディクトという女性とバカンスの間だけ部屋を交換できることになった。彼女の豪華なマンションで最高の初日を過ごしたが、翌朝の目覚めは最悪だった。突然パリ警察の一団が乱入して殺人容疑で拘束されてしまう。鍵がかかっていた部屋には血まみれの死体があり、警察はソフィーをベネディクトとして逮捕したのだった。
住まいを交換するサイトは、実際に欧米で盛んに利用されているそうで、キャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレットの『ホリディ』もそれを利用したストーリーでした。保険もあって安全とはいうものの、こんな事件に巻き込まれたらたまりません。殺人の濡れ衣だけでも大迷惑なうえ、説明できるはずの自分の身元が明らかにならないのです。巧妙に張り巡らされた罠に嵌った彼女は、一人真実の究明に走ることになります。特別に訓練されたプロかと思うような活躍振ぶりのカリーヌ・バナッス、次はアクション映画でお目見えするかもしれません。『エリックを探して』に本人役で登場した元サッカー選手のエリック・カントナは、今回渋い刑事を演じて貫禄たっぷり。(白)
2011年/フランス/カラー/100分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ
(c) 2011 CARCHARODON - L&G - PATHE PRODUCTION-FRANCE 2 CINEMA - JOUROR - TERCERA PROD
公式 HP >> http://www.switch-movie.jp/
監督・脚本:ダニエル・ブスタマンテ
出演:ノルマ・アレアンドロ(1985年カンヌ国際映画祭主演女優賞)、コンラッド・バレンスエラ
1977年、軍事政権下のアルゼンチン北東部の州都サンタフェ。
8歳のアンドレスは、いたずら盛りの可愛い男の子。貧しいながら母親の愛情に包まれて暮らしていたが、事故で母が亡くなり、兄アルマンドと共に、祖母オルガと父ラウルが住む家に移り住むことになる。いつも怒鳴ってばかりいる父と、自分の規則を押し付ける祖母。決して近づくなと言われた母と住んでいた家に忍び込んだアンドレスは、母が隠していたビラを持ち帰るが、それは反体制派のものだった・・・
軍事政権時代のアルゼンチンの庶民の暮らしを子どもの目から描いた物語。大人たちはお互いの身を守るために、情報交換しながらピリピリと神経を尖らせて日々をおくっている。子どもはそんな姿を敏感に感じ取って、自分もまた殻に篭っていく。
祖母からシエスタを押し付けられるけど、昼寝をするより、テレビでカンフー番組を観たいアンドレス。(遠く南米でもブルース・リーは人気だったんだ!!) 父親は、余計なことに巻き込まれたくなくてシエスタしているという事情も語られる。
祖母は、何かというと、「近所になんといわれるか」「人が見たらどう思われるか」と言う。世界には、人目を気にしながら暮らさないと命にかかわる人生を強いられている人たちがいることを思い、気ままに暮らしている今を大事にしなくてはとあらためて思った。(咲)
この可愛い少年に魅入ってしまった。もう何もしなくてもいいから、顔をこっちにむけていて! と、お願いしたくなるほど可愛い。お兄ちゃんやおばぁちゃんに甘えるしぐさなんかお手のもの。
死んだ母親はどうも反体制の活動をしていた様子で、家のものが世間や子らに知られないようにやっていたのだ。そんなこととは知る由もないアンドレスは大人たちを観察し、会話を盗み聞きするようになるのだ。
最後は一級品のサスペンスのような幕切れで驚いてしまったが・・・後味が悪いと思えないのは、やっぱりアンドレスが可愛かったからかな。少年・コンラッド・バレンスエラは名優おばぁちゃん・ノルマ・アレアンドロと対等に演技していた。可愛いだけの少年じゃない。(美)
2009年/アルゼンチン/HDCAM/カラー/108分/Dolby Digital SRD
配給・宣伝:Action Inc.
監督:柿本ケンサク・半野喜弘
出演:窪塚洋介、桃生亜希子、ステファン・クロン、ニマ・サール、アラン・“アロニマス”・コンウェイ、エマニュエル・ボナミ、アントワーヌ・ベルジョー
格別目標もなく日々を生きているカメラマンのカズヤ。知人から猫を届けてくれと頼まれパリを訪れる。パリには腹違いの兄弟、聡が住んでいることを思い出し、訪ねてみる。部屋には一緒に住んでいるアントワンヌというトランペッターとセネガル人のニマという女性がいたが、なぜか聡のことを語ろうとしない。 ある日、カズヤは日本人女性、理恵と出逢い、愛し合う仲になる。理恵から、数週間前に聡が自殺していたことを聞かされる・・・
新しい映像表現の場として、架空の映画館「THEATRE TOKYO」http://theatre-tokyo.com/のオープニング作品として上映された同名作品を劇場公開作品として作り変えたもの。
顔も見たことのない腹違いの兄弟・聡のことを、関わっていた人たちから知るカズヤ。全編パリでロケした作品には、アンニュイな雰囲気が漂う。(咲)
2011年/日本/ステレオ/カラー/101分/ヴィスタサイズ
配給:アルシネテラン
公式 HP >> http://ugly.theatre-tokyo.com/
監督:松江哲明
制作:岩淵弘樹
録音:山本タカアキ
撮影:近藤龍人
音楽:前野健太
出演:前野健太
2011年5月。東日本大震災後、ネオンが消えた東京の街。降りしきる雨の夜をミュージシャン前野健太がギターを抱え、歌い、叫び、さすらい歩く渋谷、新宿の街・・・。
私が震災後に上京したのが4月下旬。街灯も店のネオンも消えて、歩くのが恐かった。いままでの明かりの氾濫が嘘みたいだった。
コンビニはある意味、明かりのステーション。その明かりは若者に限らず、夜から深夜にかけて働く人々の命のステーションだったことがわかった。棚に何もないコンビニ、それは紛れもなく東京も被災地だと教えてくれた。
そんな中をギター抱え、弾き語りをしながら夜の東京をさまよう前野健太をカメラで追っている。何も細工もないドキュメンタリーに魅力を感じた。だが前野健太さんの歌に、歩みを止め、耳を傾ける人はいなかった。
映像が暗く、きっと照明もほとんどない状態で長回しをしていたと思うが、私は『ライブテープ』も『トーキョードリフター』も、彼の作る曲の転調する一瞬が大好きだ。何かガラリと変わる曲の雰囲気に痺れる。(美)
2011年/72分/ステレオ
配給:東風
公式 HP >> http://tokyo-drifter.com/
監督:ジョナサン・レヴィン
脚本:ウィル・ライザー
撮影:テリー・ステイシー
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット(アダム)、セス・ローゲン(カイル)、アナ・ケンドリック(キャサリン)、ブライス・ダラス・ハワード(レイチェル)、アンジェリカ・ヒューストン(アダムの母)
アダムが背中や腰の痛みで医者に診てもらうとなんと癌だった。酒もタバコもやらないのになぜ? 5年生存率は50:50。母親は同居を申し出るが、アルツハイマーの父親の世話でいっぱいのはず。恋人レイチェルはアダムの看病や通院を請合ったものの、だんだん重荷になってくる。なんとなくよそよそしい会社の同僚たちにもアダムは居心地が悪い。前と少しも変わらないのは親友のカイルだけ。アダムの癌をナンパに利用したりする。実はカイルもどうしていいかわからなかったのだ。
50/50の確率といっても、こと癌の話になると誰だってめげてしまう。この作品が他の難病ものと違うところは、面白い言葉のやり取りが多く、全編に流れる音楽も彼の気持ちに寄り添ったもので、ほとんどが静かで柔らかな旋律だった。「ここで泣かなきゃ、あんたは鬼だぁ~♪」と何回もリフレインするどこかの国の難病ものとはちょっと違う。アダムは一番の親友であるナンパ男カイルの底抜けの明るさに助けられていた。こんなときはやっぱり同性の友人が一番だ。
人生って健康な人でも明日の命は、極端に考えれば50/50。私たちは99/1ぐらいで“生きている”と信じて毎日をおくっている。そう思えることが、どんなに“幸せ”なことかを教えてくれた作品だった。
※ジョセフ・ゴードン=レヴィットの神経質な所作(爪を噛んでいた)がよかった。よく電車やバスで若い男性が指をしゃぶっていたり、爪を噛んでいるのを度々見るが、そんな方たちも、いろんな悩みを背負いきれないでいるんだなぁとしんみりしてしまった。
※彼の傍にいて、何かを感じ取っているアルツハイマーの父親、心配そうに彼を見つめていた黒い痩せた犬・・・、物言わぬ二つの登場がこの作品の隠し味になっている。(美)
2011年/アメリカ/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
公式 HP >> http://5050.asmik-ace.co.jp/
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:スティーヴン・モファット、エドガー・ライト、ジョー・コーニッシュ
編集:マイケル・カーン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ジェイミー・ベル(タンタン)、アンディ・サーキス(ハドック船長)、 ダニエル・クレイグ(サッカリン)、ニック・フロスト(デュポン)、サイモン・ペッグ(デュポン)、トビー・ジョーンズ(シルク)、スノーウィ(タンタンの相棒の白いフォックステリア犬)
記者のタンタンは、相棒の白い犬スノーウィと一緒にネタを探して街を歩いていたら、露店で<ユニコーン号>という帆船の模型を見つけた。気に入ったので買うと、その場で2人から「お金を10倍でも100倍でも出すから売ってくれ」と執拗に言われた。もちろんタンタンは「売らない」とはっきり断った。
だが帆船模型の中に何か秘密が隠してあったようで、それからのタンタンの身にはいろんな危機が襲いかかるのだった。
2011年/アメリカ・ニュージーランド/スコープサイズ/ドルビーSRD/107分
配給:東宝東和
公式 HP >> http://tintin-movie.jp/
監督・脚本・製作:ベント・ハーメル(『ホルテンさんのはじめての冒険』『酔いどれ詩人になるまえに』『卵の番人』)
原作:レヴィ・ヘンリクセン(警備員としてカメオ出演)
出演:ニーナ・サンジャニ、イゴル・ネセメル、トロン・ファウサ・アウルヴォーグ、
フリチョフ・ソーハイム、ライダル・ソーレンセン
クリスマスイヴを迎え、雪に包まれたノルウェーの小さな町。
33歳の男パウルは妻から家を追い出されて7週間。サンタに変身して子供たちにクリスマスプレゼントを届けたいと、そっと我が家を訪れる。そこには、妻が新しい恋人と仲むつまじく過ごす姿が・・・
トマス少年は、イスラム教徒の少女ビントゥに、「僕の家もクリスマスはお祝いしない」と嘘をついてビントゥの家に遊びに行く。天体望遠鏡で空を眺める二人。ビントゥが望遠鏡を下に向けると、トマスの家でイヴの晩餐が始まっていた・・・
カリンは不倫相手の男クリステンが、毎年「クリスマスが終わったら妻と別れる」という言葉を信じていた。それなのに、今年は「子どもたちがいる間は別れられない」という上に、「二人の女性を同時に愛せると悟った」とまでいわれてしまう。クリステンからのクリスマスプレゼント真紅のスカーフをまとって教会に乗り込むカリン・・・
今年のイヴこそ故郷に帰りたいと物乞いするヨルダン。無賃乗車を決行するが降ろされてしまう。雪の中を彷徨い歩き、止まっていたトラックのドアに手をかけると警報がなり、脇のトレーラーハウスから女性が飛び出してくる。駆けつけた警備員に「なんでもないわ」と伝える女性。実は二人は若い頃、恋人どうしだった。思いがけないクリスマスの夜の再会・・・
医師のクヌートは今年のイヴも休日担当を買って出ていた。不満を漏らす妻に、子どもが出来れば家族で過ごすというが、「子どもを作る暇があるの?」と言われてしまう。急患の連絡が入り駆けつけると、ナイフを突きつけられ、町外れの小屋に連れていかれる。陣痛の始まった女性の夫はかたくなに病院に行くことを拒む。コソボからスウェーデンの姉のもとを訪ねる途中で車が壊れてしまったというセルビア人とアルバニア人のカップル。宗教対立で紛争が起きた故郷に帰れば家族に殺されるという・・・
それぞれの事情を抱えた人たちのクリスマスイヴの出来事。クリスチャンならずとも、クリスマスは家族や大事な人と過ごしたいという思いはよくわかります。いろいろな人生が交錯するちょっぴり切ない物語。(咲)
2010年/ノルウェー=ドイツ=スウェーデン/ノルウェー語、英語、セルビア語/シネマスコープ/ドルビーデジタル/R15
後援:ノルウェー王国大使館
配給:ロングライド
ヒューマントラストシネマ有楽町で初日から12/11(日)まで、合計5回/730名様へのクリスマス・プレゼントあり!
プレゼントの内容は、こちらで確認を。→
http://www.ttcg.jp/human_yurakucho/topics/detail/10606
公式 HP >> http://www.christmas-yoru.jp/
監督:藏方政俊
脚本:小林弘利、ブラジリィー・アン・山田
撮影:柳田裕男
美術:松尾文子
出演:三浦友和(滝島徹)余貴美子(滝島佐和子)小池栄子(片山麻衣/滝島の娘)中尾明慶(小田友彦)吉行和子(井上信子)塚本高史(片山光太/麻衣の夫)
ベテラン運転士・滝島徹は35年間無事故無違反の運転手。定年を一ヵ月後に控えていた。徹は定年後は妻・佐和子を連れて旅行するのが夢だったが、その話をすると、元看護師の佐和子は在宅緩和ケアセンターの看護師を始めたいと言う。そこではげしい口喧嘩になり、妻は家を飛び出してしまった。
一人娘の麻衣は寿司店経営の光太と結婚していて、もうすぐ出産だ。
徹の仕事場では、何を考えているのかサッパリわからない新人運転士の教育を任され、家出した妻からは離婚届けが・・・。生活も気持ちも落ち着かないこのごろだった。
富山地方鉄道の沿線の見事な風景には、自然そのものに〈抱かれている〉心地がした。それも四季を通じて撮られているから嬉しい。
鉄道と素晴らしい〈日本のふるさと〉のような景色をバックに、定年間近に訪れた夫妻の危機、新人運転手小田の教育、そして一人ぼっちで食べるコンビニ弁当・・・と愛しているがゆえの寂しさ、苦しさが描かれている。佐和子から離婚届を渡された徹がどうするのか・・・これは観てのお楽しみ。
※脇役の登場の仕方がパターン化されているのが少し気になるが、米倉斉加年さん扮する・白髪大先輩の元運転士が「定年あとの人生は長いぞ~」と徹につぶやいたひと言が、とても心に響いた。(美)
2011年/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/123分
配給:松竹
(c)2011 「RAILWAYS2」製作委員会
公式 HP >> http://www.railways2.jp/
監督・脚本:松本卓也
撮影:村埜茂樹
音楽:鈴木健二
出演:倉科カナ(花子)、永島敏行(吾朗)、金守珍(キム)、SORA(キムスメ)、水野美紀(タクヨ)、松本光司、植田裕一ほか
香川県小豊島(おでしま)、人間より牛の数が多いこの小さな島で肉牛育成に没頭する吾朗。牛への熱が高じるあまり、一人娘にも牛と同じ名前をつけている。牛がトラウマとなり、牛肉も父親も大嫌いになってしまった花子は東京の美大に進み、帰省もしないでいる。一方、肉牛大会で最高賞を受賞した吾朗の牛の精子を狙っている韓国マフィアがいた。
さぬき映画祭で優秀企画賞、準グランプリを受賞した作品。松本監督はお笑いコンビで活動しながら、映像作品を作っていたそうです(インタビューはこちら)。家族の物語かと思えば、苺で儲けた韓国マフィアの和牛精子をめぐる事件がからんできます。韓国の仲良し父娘と吾朗&花子の対比が愉快で、素直になれない日本の父と娘に共感する方も多いでしょうか。娘役の二人はピカピカに可愛く、味のあるお父さん役二人とのアンサンブルが楽しめます。(白)
2011年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:株式会社アクティブ・シネ・クラブ 宣伝協力:リリオ
公式 HP >> http://hanakononikki.com/
監督・原作:グ・スーヨン
脚本:具光然
撮影:無州英行
音楽:和田薫
美術:仲前智治
出演:松田翔太(グー)、永山絢斗(辰)、柄本時生(マサル)、遠藤要(パクヨンオ)、渡部豪太(安田)、川野直輝(金子)、金子ノブアキ(タカシ)、落合モトキ(パクヨンオの弟)、遠藤雄弥(キムチョンギ)、裵ジョンミョン(カンテファン)、石垣佑磨(イーパッキ)、淡路恵子(グーの祖母)、白竜(若頭)、真木蔵人(庄司)、渡辺 大 (マサ)、芦名星(ナツコ)、真木よう子(姐さん)、中村獅童(高木)、渡部篤郎(藤田)
下関に住むグーは在日韓国人。高校中退でフリーターだ。後輩の辰とマサルが敵対する朝鮮高校のキムの家を襲撃し、婆さんを撲殺した挙句、家に火をつけたと聞く。これを発端にろくでもない暴力の日常が続き、下関に居づらくなったころ得体の知れない男、高木と知り合う。彼の世話で小倉のクラブのマネージャーとなるが、穏やかな暮らしはつかのまだった。
原作・監督のグー・スーヨンの半自伝的作品。久しぶりにスクリーンで観た松田翔太くんは、金髪に眼光鋭く暴力の中を生きる男になっていました。冒頭の、追われて屋根の上を走り回り、月をバックに飛ぶシーンが印象に残ります。下関と小倉を舞台に若手俳優が山ほど出演、演技を競います。中で光っていたのがグーの祖母役の淡路恵子さん。なんてかっこいいお婆ちゃんなんでしょ!(白)
2011年/日本/カラー/108分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東映
(C)2011「ハードロマンチッカー」製作委員会
公式 HP >> http://www.hard-roman-ticcer.com/
監督・脚本:井上都紀(いのうえ つき)
撮影:大森洋介
音楽:柴草玲(しばくさ れい)
美術・衣裳:増田佳恵
出演:柴草玲(真梨子)、千葉ペイトン(立本)、渋谷拓生(松岡)、橘るみ、西島千博
若い日に修道女の道を選んだ真梨子は四十路を迎えた。最近の身体の変調に早い更年期が来たことを知り、信者たちの話に耳を傾けていた。ある日、神父に呼ばれて村岡という男への手紙を届けるよう頼まれる。入院中の信者が音信のない息子へ書いた手紙だった。村岡の元を訪ねる真梨子の後を追う男性がいた。最近教会へ通うようになった立本で、何かと相談をもちかけてくる。真梨子はバレエ教室でピアノ伴奏をすることになり、教会の勤めとは違う楽しさを見出していった。
2008年『大地を叩く女』でゆうばり国際映画祭オフシアター部門グランプリを受賞した井上都紀監督最新作です。こちらも試写で同時上映されました。シンガーソングライターの柴草玲さんが、全く違う雰囲気で両作品に出演しています。シスターという一般人にはほとんど無縁の世界の人を主人公にしたこの作品は、どの女性にも訪れる性や生の変化を静かに描き出しています。柔らかい光を浴びたバレエの静謐なシーンが美しく、秋の風景の中、自転車を走らせるシスターの心の高ぶりが伝わってきました。(白)
2009年/日本/カラー/70分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ゴー・シネマ
(C) 2009 Autumn Adagio Film Committee
公式 HP >> http://www.gocinema.jp/autumnadagio/
監督:ジェイソン・アイズナー
脚本:ジェイソン・アイズナー
出演:ルトガー・ハウアー(ホーボー)、グレゴリー・スミス(スリック)、ブライアン・ダウニー(ドレイク)
列車のコンテナにちゃっかり無賃乗車して町から町へとさすらう初老のホーボーは、仕事を求めて新たな町ホープタウンに降り立った。
そこは暴力と悪政に支配された世界だった。彼は立ち寄った店で強盗たちを思い余って射殺。それをきっかけに悪に立ち向かう決意を固める。ドラックの売人、ポン引きなど、ホーボーは街のダニ共を血祭りに上げていく。これでホープタウンも少しは良くなると思ったが・・・。
チラシのコピーに『悪徳の町ホープタウンに血の雨が降る!衝撃!!!残酷描写連続!!!!!!!
肉体損壊!!出血飛散!!臓器散乱!!男性器銃撃!!5分に1度のショック描写の連続!!
衝撃のバイオレンスアクション!!』
「!」が何個ある?・・・23個あった。これは絶対観なきゃ!きっと、この惨さならシネジャ代表で行かなきゃ誰が行く!って、勝手に張り切って行った。
やってくれました!初監督でこんなのを作られてはタランティーノやロドリゲスも真っ青!その凄さ、説明してもいい?「やめて!聞きたくない・・・」だろうなぁ。
私が試写が終わってから知り合いの男性に「おもしろかったぁ~」と言うと、2人の知らない方がちらっと振り向いた。
もちろん男性向きなんだけど、とことん残虐OKじゃないと5分に一回、○しっ○、ちびっちゃうかも。だから替えパンツ持参で!なんちゃって。
※ホーボーとは流れ者のことで、ルトガー・ハウアーはこの脚本を読んだとき「一体なんだ?これ」と言ったそうだ。クールで味のあるホーボーだった。(美)
2011年/アメリカ/カラー/85分
配給:ショウゲート
公式 HP >> http://hobo-movie.com/
監督:デニス・ガンゼル
脚本:デニス・ガンゼル
出演:カロリーネ・ヘルフルト(レナ)、ニーナ・ホス(ルィーズ)、ジェニファー・ウールリッチ(シャルロット)、アンナ・フィッシャー(ノラ)
ベルリンで盗みをしながら生活していたレナは、ある晩、ナイトクラブで妖しい雰囲気の美しい女ルィーズに声をかけられた。だが、突然首を噛まれたので驚いて立ち去った。その日からレナの体に異変が起きてしまう・・・。
高級ホテルに陣取り、ブランド物を買い、美味しいもの食べて、いい男見つけて鮮血を頂戴する・・・。始めこそおどおどしていたレナも美しくなっていく自分に陶酔してしまう。だが、以前から気にかけてくれていた刑事さんと再会してから彼女の中に迷いが出てくる・・・。
この吸血鬼軍団のお色気とゴージャスさにノックアウトされた。
この監督さんは『THE WAVE ウェイヴ』で注目を浴びた方。扇動的な、いかにもドイツ的な作品だったが、この作品で180度違うものをみせてくれた。
「まぁ、男性向けだな」と思って観たが、男を食べ物とする見方がとっても快感?だった。
※ちらっと、エイズで死んでしまったドイツ人歌手クラウス・ノミのボーイソプラノが聴けた。この数秒の歌声で「もし彼女たちがエイズの人の血を飲んでしまったら・・・」と頭をよぎったが、『告白』で生徒に牛乳に混ぜてってのがあったが、「飲んでもうつらん」と聞いていたことを思い出して苦笑い。(美)
2010年/ドイツ/カラー/スコープ・サイズ/100分
配給:ショウゲート
公式 HP >> http://www.bloodyparty.com/
第18回大阪ヨーロッパ映画祭(11月3日〜12月9日)が間もなく始まります!
フィンランド映画特集、イタリアミラノ特集、環境問題特集など今年も多彩です。
■大阪ヨーロッパ映画祭公式HP
>> http://www.oeff.jp/
2011年11月19日(土)~11月27日(日)
有楽町朝日ホール、東劇 他にて
http://www.filmex.net/
© TOKYO FILMeX 2011
作家性の強い作品揃いの東京フィルメックス。
今年も映画人の個性が光る作品群です。
映画の合間に開かれる無料のトークイベントも魅力です。
ぜひサイトをチェックして、思う存分、映画人の思いに耳を傾けてください。
http://filmex.net/2011/guest.html
上映作品は、10月24日現在40本の予定。 チラシに掲載されていない作品もあります。
監督:ベニー・チャン
脚本:チャコール・タン、チェン・カーチョン
撮影:アンソニー・プン
アクション監督:コリー・ユン
美術:イー・チュンマン
主題歌:アンディ・ラウ「悟」
出演:アンディ・ラウ(侯杰/浄覚)、ニコラス・ツェー(曹蛮)、ファン・ビンビン(顔夕)、ジャッキー・チェン(悟道)、ウー・ジン(浄能)、ユエ・ハイ(方丈)、ユイ・シャオチュン(浄海)、ション・シンシン(ソルント)、シー・イェンレン(浄空)
20世紀初頭、辛亥革命によって清朝が倒れ、軍閥が覇権をめぐり権力争いをしていたころの中国。少林寺の門前には避難民たちが暮らしていた。そこへ敵の大将を追い、軍人たちが少林寺に馬で踏み込んでくる。冷酷な将軍侯杰は、僧たちの頼みを蹴り、捕らえた大将を少林寺の中で撃ち殺し去った。腹心の部下曹蛮に裏切られた侯杰は、最愛の娘を亡くし、妻を拉致されてしまう。かつて愚弄した少林寺の方丈に助けられ匿われた彼は、過去の罪を悔い出家を決意する。
公開を楽しみにしていた作品。しかし李連杰(リー・リンチエ)を一躍スターに押し上げた『少林寺』(1982年)と比較されてしまうのではないかと一抹の不安もあった。少林寺=カンフーというイメージがあり、アクションはどう考えても比較の対象ではないしと思っていた。しかし、アクションだけで見せる作品ではなく、人としての道を説く物語に仕上がっていて、泣ける感動作になっている。少林寺の「なにびとも受け入れる」という精神を伝える作品として描かれていた。
俳優陣も豪華で、見せ場もたくさんある。骨太でありながら娯楽性にとみ、アクションシーンも呉京(ウー・ジン)や熊欣欣(ション・シンシン)、釋延能(シー・イェンレン)などの活躍もあり、見ごたえ十分だった。ジャッキー・チェンも、彼らしいコミカルなアクションを展開して映画が重くなるのを防ぐ一服の清涼剤のようだった。アンディとニコラスが最後に闘うシーンは、二人がしっかりアクションを魅せてくれて嬉しかった。
アンディとファン・ビンビンの娘、勝男(ションナン)役を演じた嶋田瑠那は日中のハーフで、中国で活躍している天才子役。初日舞台挨拶に登場し、撮影エピソードを語っていたが、なんと追っ手に追われ崖をアンディと二人で転げ落ちるシーンはスタントなしで撮ったという。
爆発シーン、殺戮シーンが多いのにはちょっと閉口したが、争うことの空しさ、人の命の尊さを伝えている。アンディ自身の作詞、歌による主題歌「悟」も心に沁みる。
(暁)
2011年/日本中国・香港/カラー/131分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ=カルチュア・パブリッシャーズ
(c) 2011 Emperor Classic Films Company Limited All Rights Reserved
公式 HP >> http://shaolin-movie.jp/
監督:エドワード・ズウィック
脚本:チャールズ・ランドルフ、エドワード・ズウィック マーシャル・ハースコヴィッツ
撮影:スティーヴン・ファイアーバーグ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ジェイク・ギレンホール(ジェイミー・ランドール),アン・ハサウェイ(マギー・マードック)、オリバー・プラット、ハンク・アザリア、ジョシュ・ギャッド、ジル・クレイバーグ、ピーター・フリードマン、ジョージ・シーガルほか
医者一族の中でおちこぼれ気味だったジェイミーは製薬会社の営業マンとなる。持ち前の話術とサービス精神で人気者となるが、ライバル社の牙城を崩すことはなかなかできなかった。営業先の病院で、パーキンソン病患者の若い女性マギーと知り合う。マギーは病気を理由にその場限りの付き合いにしようと、深入りを避けるのだった。一方、新薬バイアグラの販売権を手に入れたジェイミーはまたたくまにトップセールスマンとなる。
全米のベストセラーとなった若手営業マンの手記「涙と笑いの奮闘記 全米セールスNo.1に輝いた“バイアグラ”セールスマン」を元に、若年性パーキンソン病のマギーとの恋をからめたストーリー。こちらのロマンスはフィクションです。ジェイクはチャーミングなプレイボーイのジェイミーがはまり役。『ブロークバック・マウンテン』で夫婦役だったアン・ハサウェイと久々の共演になりました。アンは、難病を患い一見強気だけれど実は繊細なマギーを演じて好感度高し。『プリティ・プリンセス』(2001年)で初めて観たとき、「少女マンガを実写にしたみたい(顔のパーツが大きい)!」と思ったものですが、アイドル路線から出て素敵な女優になりました。(白)
2011年/アメリカ/カラー/113分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー
監督:今関あきよし
脚本:いしかわ彰
撮影:三本木久城
編集:三本木久城
音楽:遠藤浩二
出演:ナスチャ・セリョギナ(カリーナ)、タチアナ・マルヘリ(おばあちゃん)、リュディミラ・シドルケヴィッチ(アーニャおばさん)、イゴリ・シゴフ(アレキサンドルおじさん)、ミンスクの方々
チェルノブイリ事故のあったウクライナの隣国、ベラルーシに住む少女カリーナ。家族が次々と病気に倒れ、ベラルーシの首都ミンスクにある親戚の家で暮らしている。まもなくカリーナも病に倒れてしまう。
入院先で仲良くなった友だちが次々と命を落としていく中で、以前母親から「悪魔のお城があって、毒をまき散らしている」と聞かされたチェルノブイリへ「毒をまくのをやめてもらうため」に一人旅立つのだった。
なんの予備知識なくこの作品を観ると、自然豊かな静かな田舎でおばぁちゃんとかわいい孫カリーナのほのぼのとした交流が描かれている物語のはじまりと思ってしまう。
カリーナは大好きおばぁちゃんの家に数日遊びにきているのだ。いつも田舎で遊んでくれた女の子の家を除くと、荒れ果てた室内が家族の長い不在を映し出していたり、せっかくおばぁちゃんの家で出来た林檎をお土産に持ち帰ったても、親戚のおばさんにすぐ捨てられてしまったりする。そんな映像が静かに進むうちに徐々に「これはただ事ではない」と観ているうちに、姿勢を正してしまった。
今関あきよし監督は、2004年に『少女カリーナに捧ぐ』のタイトルで完成したが公開のチャンスがなく、2010年にベラルーシとチェルノブイリでもう一度撮影をして、タイトルを『カリーナの林檎 ~チェルノブイリの森~』に変えて公開しようとしたところ、福島第一原発事故が発生したという経緯があったそうだ。
※純真なカリーナの姿が、暗く重い内容の物語に希望の光りのように感じた。(美)
2011年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーステレオ/111分
配給:カリーナプロジェクト
公式 HP >> http://kalina-movie.com/
プロデューサー:横山隆晴
撮影:近堂清司
音響:田中政文
出演:石川県門前高校「女子ソフトボール部」の皆さんと先生、ご家族の方々
2006年。日本海に面した石川県奥能登。その能登半島の先端にある小さな町・・・門前町。過疎の町に一校だけある門前高校。その「女子ソフトボール部」の練習風景や試合をカメラが追っていた。
その撮影中、<2007年3月25日>能登半島を震度6強の地震が襲い、この門前町を直撃した。
私の故郷は石川県金沢。能登半島にも3度ほど行っている。だから金沢や能登を舞台にしている映画は里(実家)に帰るような気持ちで観てしまう。
『武士の家計簿』『ゼロの焦点』『手紙』そして『能登の花嫁』。
この『能登の花嫁』もこの<2007年3月25日>の地震に大きく影響された。
当時の撮影秘話をお聞きしたが、この同じ時、同じ場所で石川県門前高校「女子ソフトボール部」の元気な女子高校生が困難を乗り切っていたのだと思うと、それだけで胸がいっぱいになった。
彼女たちは地震後、2週間で荒れたグランドで練習を再開。監督の室谷先生は一球一球に「こんなことで負けられない!」「あきらめるな!」とかけ声をかけながら、生徒を励ましていた。
石川県門前高校は被災、過疎による高校統廃合でなくなってしまったが、彼女たちのソフトボール部で培った精神は、今後いろんな方面に広がっていくと思うと明るい気持ちになった。
※ナレーションはマネージャーだった女の子が担当していた。当時を振り返りながら感極まった声に感動した。(美)
2010年/HD/日本/カラー/110分
配給:スターキャット・エンタープライズ、ピクチャーズデプト
公式 HP >> http://www.akiramenai.org/
監督:岩田ユキ
脚本:岩田ユキ
原作 伊藤たかみ著「指輪をはめたい」文春文庫刊
撮影:翁長周平
美術:井上心平
衣装:伊藤佐智子
音楽:加羽沢美濃
出演:山田孝之(片山輝彦)、小西真奈美(住友智恵)、真木よう子(潮崎めぐみ)、池脇千鶴(鈴木和歌子)、二階堂ふみ(エミ)、水森亜土(鴨川医師)
製薬会社(置き薬)の営業マン片山輝彦(山田孝之)は、ある日スケートリンクで転んで頭を打った拍子に、記憶が一部飛んでしまった。
カバンの中にあった指輪が誰に贈ろうと思っていたかサッパリ覚えがないが、
今付き合っているのは、どうやら3名ということが、だんだん分かってきた。
・会社の先輩でクールな智恵(小西真奈美)
・風俗のセクシーなめぐみ(真木よう子)
・公園で人形劇をしている控えめな和歌子(池脇千鶴)。
そして、もう一人・・・。
主役の山田孝之は気になる若手俳優ナンバー1。コメディからシリアスまで、なんでもOKだし、それぞれが同じ俳優かと思われるほど違ってみえる。声も違って聞こえるから、じっくり役作りをする方だと思う。
さて、この<3股男>が同僚に「ねえ、3択で毎日カレー、ラーメン、寿司だったらどれを選ぶ?」と聞いていた。私なら即座に「寿司!」って言うが、こと結婚となると3択は迷うだろうな。
今は、男の人が「誰と結婚したら幸せにしてくれるだろうか」など考える時代。
「おれが幸せにするよ」の時代は終わったの・・・?
この作品は『婚前特急』にも『モテキ』にも通じるものがあって楽しめた。
※衣装、部屋の設えで、3人の性格、生活状態がよくわかった。
※懐かしい水森亜土さんの出番が少な~い!(美)
2011年/日本/カラー/アメリカンヴィスタ/SR-D/108分
配給: ギャガ、キノフィルムズ
(c)2011 Kino Films/Kinoshita Management Co., Ltd
公式 HP >> http://www.yubiwa-movie.com/
監督:ジョン・ラッセンホップ
脚本:ピーター・アレン&ガブリエル・カソーズ、ジョン・ラッセンホップ&アヴェリー・ダフ
撮影:マイケル・パレット
美術:ジョン・ゲイリー・スティール
編集:アルメン・ミナジャン
音楽:ポール・ハスリンジャー
出演:マット・ディロン(ウェルズ)、ポール・ウォーカー(ジョン)、イドリス・エルバ(ゴードン)、ジェイ・ヘルナンデス(エディ)、マイケル・ケーリー(ジェイク)、ヘイデン・クリステンセン(A.J.)、マリアンヌ・ジャン=パプティスト(ナオミ)
ゴードン、ジョン、A.J.、ジェスそしてジェイクは世間を騒がすクールで最高の腕前をもつ銀行強盗団。彼らは、その計画を寸分の狂いもなく実行し、完璧な時間配分で仕事を終え、素早く逃げる。後には一切の証拠を残さず、その逃走経路も完璧。警察も彼らの尻尾をつかむこともできない。
そんな彼らも、第一線を退こうと、最後に巨額の獲物を奪い取ろうと計画するが・・・。
ひと言で言えば「俳優はイケメン&クールで、アクションど派手のB級作品」だ。
銀行強盗は暴力なし、けが人なしで警報器が鳴っても平静で、事件を空から取材しているヘリコプターを使い、楽々と逃走。あまりの手際の良さに「えぇ~、こんなに上手くいくか?」とつぶやきながらも、この強盗さんたちを応援してしまう。
だが、一方の追う警官2人の(エディとウェルズ)の家庭事情も複雑で、微妙な問題を浮き彫りにしているので、しんみりしてしまった。
※渋いマット・ディロン、キザで素敵なヘイゼン・クリステンセン、そして『秘密と嘘』のマリアンヌ・ジャン=パプティストに久しぶりに出会えた。(美)
2010年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/107分
配給:日活
(c)2010 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://takers-eiga.com/
監督:加藤章一
脚本:日向朝子
原作:中田永一「吉祥寺の朝比奈くん」祥伝社刊
撮影:戸田義久
音楽:野崎美波
出演:桐山漣(朝比奈ヒナタ)、星野真理(山田真野)、要潤(山田哲雄)、柄本佑(藤村博喜)、宮崎将(飲み屋の客)
吉祥寺に住んでいる朝日奈くんは役者への夢も破れてバイト暮らし。ぼくは、どうしてこの街にいるんだろう? そんな朝日奈くんの前に女性が一人現れる。だが彼女は人妻で可愛らしい女の子もいる。そんな彼女に恋してしまった僕は・・・。
ほんわかムードの恋愛映画か?と思っていると、あれあれ・・・先行きがまったく予想できない展開。だが嫌味もなく淡々と描かれているので、若者が住んでみたくなる吉祥寺近辺を一緒に散歩しながら、恋の相談にのってあげているような気分にさせられた。
頼りなさそうな桐山漣と清楚な美人の星野真理が吉祥寺を舞台に醸し出すほのぼの純愛作品、若い方に是非オススメしたい。
※井の頭公園はもちろんのこと、映画館のバウスシアターや、井の頭自然文化園のゾウのハナコも登場。東京近辺の方なら、ゆっくり井の頭公園から神田川をどこまで下っていけるか散策してみませんか。(美)
2011年/HD作品/93分
配給:アステア+スローラーナー
(c) 2011 Eiichi Nakata / 祥伝社 /『吉祥寺の朝比奈くん』製作委員会
公式 HP >> http://kichijojiasahina.jp/
監督:内藤誠
企画:伊藤彰彦
原作:色川武大「明日泣く」(講談社文芸文庫「小さな部屋・明日泣く」所収)
脚本:伊藤彰彦、内藤研
音楽:渋谷毅
出演:斎藤工(武)、汐見ゆかり(キッコ)、武藤昭平(島田)、奥瀬繁、井端珠里、マービン・レノアー、坪内祐三、杉作J太郎
特別出演:島田陽子、梅宮辰夫
文芸誌の新人賞受賞後、小説が書けなくなった武は、編集者に愛想を尽かされつつも賭けマージャンでその日暮らしの怠惰な生活を送っていた。ある日、ミュージシャンの島田に誘われて入ったジャズクラブで、高校時代の同級生キッコに再会する。昔と変わらぬ自由奔放なキッコに振り回されながらも、彼女のジャズピアニストとしての才能には一目置かざるを得ない武。キッコは憧れの黒人ドラマーたちとトリオを結成し活動を始めるが、思うようにうまくいかず武に助けを求めるが・・・。
色川武大(いろかわぶだい)原作の昭和の色濃い青春映画。無気力というわけではなく、何をどうすればいいのかわからない武。「生きたいように生きる。後悔なんて絶対にしない」と言い切るキッコ。静と動の違いこそあれ、集団生活的な日常から少しはみ出してしまっている彼らがどこか懐かしく感じたのは、私も同類だからかもしれません(苦笑)。そして斎藤工さん、汐見ゆかりさんの存在感が、映画の中で本当に「生きている」と感じました。全編に流れるジャズの音色も心地よく、行ったことがないジャズクラブに足を運んでみたくなっちゃいました。キッコのような素敵なピアニストに出逢えることを期待して。(裕)
2011年/カラー/76分/HD/ステレオ
製作:プレジュール/シネグリーオ
配給・宣伝:ブラウニー
© 2011プレジュール/シネグリーオ
★11月19日(土)よりユーロスペースにてレイトショー!
公式 HP >> http://www.asunaku.com/
監督:ベネット・ミラー
脚色:スティブン・ザイリアン、アーロン・ソーキン
原作:マイケル・ルイス「マネーボール」武田ランダムハウスジャパン刊
撮影:ウォーリー・フィスター
美術:ジェス・ゴンコー
出演:ブラッド・ピット(ビリー・ビーン)、ジョナ・ヒル(ピーター・ブランド)フィリップ・シーモア・ホフマン(アート・ハウ)、ロビン・ライト(シャロン)
2002年シーズン、負け放しのオークランド・アスレチックスは、弱くてお金もないチームだった。ゼネラルマネジャーであるビリー・ビーンは、主力の強打やエースが多額の金で引き抜かれる中、周りのスカウトマンたちの提言を無視して、イエール大学で経済学を専攻していたピーター・ブランドのいうデータ分析を徹底的に追求した「マネーボール理論」を強行していく。
選手、アート・ハウ監督の反発を受けながらも、徐々にその成果が出始めるのだった。
「低予算でいかに強いチームを作りるか」という独自の理論で、強い球団に導いた実話を基にした物語。
今年観た邦画で『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という超長い題名の野球映画を思い出した。世界中のマネージャーが読んでいるという『マネジメント』に書かれていることを、高校野球に活かそうと頑張って、甲子園地区予選・決勝戦までいく話だ。もちろん事実を基にしていない。だが、意外な書物や人の提言で推し進める展開は、似ていると思った。
スポーツ音痴の私は、実際のアメリカの野球ニュースなど、チンプンカンプン。
だが、ブラッド・ピットの強引ぶり(名古屋地元の落合監督風?)は新しい顔を見せて貰ったし、太めのジョナ・ヒルは頼もしい補佐役を、体型に似合わずスマートに演じていた。
それに、いつもムスッとした不機嫌顔のフィリップ・シーモア・ホフマンは、からだ全体から<こんなのに付き合っていられるかい!>オーラが、むんむんと出していた。
野球好きにはもちろん必見作品。野球に詳しくない方にも、このお三人の演技に痺れるはず。
※ ビリー・ビーンの戦いは今も同じ球団で続いている・・・ベネット・ミラー監督さん『マネーボール2~シリーズ優勝への道~』なんてのを期待してます!(美)
2011年/アメリカ/カラー/ビスタサイズ/133分
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
公式 HP >> http://www.moneyball.jp/
監督:フー・メイ
脚本:チェン・ハン
撮影:ピーター・パウ
音楽:チャオ・チーピン
衣装:ハイ・チョンマン
出演:チョウ・ユンファ(孔子)、ジョウ・シュン(南子)、チェン・ジェンビン、ヤオ・ルー、ルー・イー、レン・チュアン
紀元前6世紀。周王朝は没落が迫り、諸侯国が覇権争いを繰り広げていた。魯国の没落貴族の家庭に生まれ育った孔子は、乱世を憂い魯国に仕官した。魯の君主、定公は孔子に大きな信頼を寄せて重用した。孔子は期待にたがわず、次々と改革を進め、古い慣習を撤廃、無血で同盟条約を締結させるなど、すばらしい手腕を発揮する。他国からの注目も集まる一方、魯の国で権力を握る者たちには孔子が邪魔。定公を抱きこんで、孔子を追い出そうとする。
孔子の残した論語の有名な言葉のいくつかは私の記憶にもありますが、どういう人生を送ってきたのかはこの映画で初めて知りました。孔子は日本にも大きな影響を与えていますが、中国人にとっては神様にも等しい偉人ではないかと想像します。叡智に富んでいるばかりではなく、誰にも慕われる人格者であった孔子を演じたのはチョウ・ユンファ。長身に衣装も長い髭も似合いますが、丸顔なのですよね。その分温かみがあり、親しみやすい孔子になりました。弟子とともに諸国への旅を続け赤貧には耐えながらも、愛弟子を失って悲嘆にくれる姿にもらい泣きしてしまいました。
江戸時代に孔子廟として建立された湯島聖堂には大きな孔子像(高さ5m)があります。高弟の四賢像(顔子-顔回、曾子、思子-子思、孟子)も安置されているそうです。受験生ではない私も祈願したいこと多々ですが「努力したのか」と叱られそうで実行せず。(白)
2009年/中国/カラー/125分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ツイン
監督:園子温
脚本:園子温
撮影:谷川創平(J.S.C.)
照明:金子康博
音楽:森永泰弘
スタイリスト:袴田知世枝
出演:水野美紀(吉田和子)、冨樫真(尾沢美津子)、神楽坂恵(菊池いずみ)、津田寛治(いずみの夫)、大方斐紗子(美津子の母)
ある大雨の日、渋谷ラブホテル街に取り残されたように建っている古アパートで、女性の死体が発見された。その事件を追う刑事の和子は、捜査を進めるうちに、大学のエリート助教授美津子、売れっ子小説家の妻いずみの秘密を知ることになった。
「東電OL殺人事件」に触発されて作ったこの作品。主演の水野美紀がフルヌードを披露していることでも話題だ。本当の事件とはかけ離れているが、場所、売春、昼と夜の顔があるのは共通。3人の女の性と死の物語だ。
一つの部分ではとっても恵まれている彼女たちは、その反対にとっても不幸な一部分がある・・・そのアンバランスによって心の奥底があぶり出されている。
※ 美津子は奇異な行動をしていたが、殺された実在OLは被害者だ。そのご家族のことを思うと『冷たい熱帯魚』の時のように「ある事件に触発されて」の監督の言葉に素直に納得できない。外国(アメリカ?)なら訴えられるということもあるんじゃないかな。
※ 音楽は『冷たい熱帯魚』の原田智英氏ではないが似たような感じだった。クラシックの使い方など申し分ないが、音楽が画面より勝っている印象もあった。
※ 『WAYA!』に出ている水野美紀さんと別人?と思うくらい見事な変わりようだ。(美)
2011年/日本/カラー/35mm/アメリカンヴィスタ/144分
配給:日活
(C)「恋の罪」製作委員会
公式 HP >> http://www.koi-tumi.com/
監督・脚本:石井裕也
撮影: 沖村志宏
照明: 杉本周士
録音: 加藤大和
編集: 相良直一郎
出演:仲里依紗、中村蒼、石橋凌、稲川代子、並樹史朗、竹内都子、大野百花、近藤芳正、螢雪次朗、瀧川鯉昇、森岡龍、斉藤慶子
この世で一番大切なのは、“粋”に生きること。失くしちゃいけないのは、“義理人情”。それが原光子(仲里依紗)の生き方。妊娠9か月にも関わらずお腹の子供の父親とは別れた。ついに一文無しとなってアパートを引き払い、雲の流れるまま行き着いた先は、子供時代を過ごしたオンボロ長屋。そこには、貧乏で元気のない人たちが暮らしていた。誰よりも崖っぷちな光子なのだが、彼らのために何とかしようと決意する。
「粋って何?」と子供時代の光子が長屋の大家さんに聞くシーンがある。そこで大家さんは「そんなものはわかんない」と潔く答える。しかしその後、同じ長屋に住む陽一が、教科書を忘れた隣の席の女の子にウソをつき自分の教科書を貸してあげる姿を見て、思わずつぶやいてしまうのだ。「……粋だねぇ」と。そこから、義理人情を大切に生きていく光子なわけだが、その姿は徹底している。自分にお金と住むところがなくても、他人を救おうとする。痛々しくも思えるその行動は、“粋”の域を超えてしまったら、ただの変な人でしかない。見るものに光子を“粋”な妊婦、と認識させることは簡単なようで、そのさじ加減はとても難しいものだ。しかし監督は、それを好い加減で描いている。しかも、小さくププっと笑ってしまうような面白さがある。シュールで面白いのと同時に、その姿に感動してしまった。見た後に、思わず誰かに「粋だね!」と言ってしまいたくなる、そんな“粋”な作品。(明)
2011/日本/ビスタサイズ/DTSステレオ/カラー/109分
配給:ショウゲート
(C)2011『ハラがコレなんで』製作委員会
公式 HP >> http://harakore.com/
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
原作・脚本:デビッド・リンゼイ=アベアー
撮影:フランク・G・デマルコ
音楽:アントン・サンコー
出演:ニコール・キッドマン(ベッカ)、アーロン・エッカート(ハウイー)、ダイアン・ウィースト(ベッカの母モリー)、タミー・ブランチャード(妹イジー)、マイルズ・テラー(ジェイソン)、サンドラ・オー(ギャビー)
8ヶ月前、ベッカとハウイーの最愛の一人息子が事故で死んだ。犬を追いかけて道路に飛び出してしまったのだ。まだ4歳だった。ハウイーは息子の面影の残るものを大切にし、遺された画像を観ては涙している。ベッカは手放しで泣くこともできず怒りを家族に向け、悲しみを分かち合おうとする夫を拒絶してしまう。
身近な人に先立たれたとき、いろいろな乗り越え方があるのだと思います。ヘイリーはわかりやすく、ベッカは極端だけれど、子どもを目の前で失ったら自分を責め続けるのではないかしら。車を運転していた高校生の境遇や人柄が違っていたら、ベッカはまた違う行動をしたはず。思いがけず加害者となってしまったジェイソンも苦しんでいて、彼の言葉は夫のいたわりよりもベッカの胸に入ってきたのでしょう。ジェイソンと母がとても重要な役割でした。ベッカがようやく泣けたとき私も荷を下ろしたような気持ちになりました。ニコール・キッドマンが製作に参加し、8年ぶりに主演女優賞にノミネートされた作品。(白)
2010年/アメリカ/カラー/92分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:ロングライド 宣伝:メゾン
(c) 2010 OP EVE 2, LLC. All rights reserved.
公式 HP >> http://www.rabbit-hole.jp/
監督:吉田照幸
脚本:吉田照幸、羽原大介、内村宏幸、平松政俊
撮影:村埜茂樹
音楽:ゲイリー芦屋
出演:小池徹平(新城誠)、生瀬勝久(中西一郎)、田口浩正(斉藤豪太)、中越典子(大橋希美)、入江雅人(皆川康弘)、沢村一樹(川上健)、伊東四朗(根尾社長)ほかたくさん
日本一お騒がせな社員たちによる前代未聞の逆転劇!
新城誠は第1志望ではない業界シェア5位のNEOビールに就職が決まった。配属されたのは営業1課。中西課長は筋金入りのタイガースファン、なぜか悲惨な目にばかり遭う川上ほか個性的なメンバーばかりが揃っていた。1ヶ月経っても契約が取れず、周りの視線の冷たさが気になったころ、新商品企画会議で何の気なしに口から出た案が採用されてしまった。
2004年単発番組、2006年よりレギュラー番組としてゆるい雰囲気が全国のサラリーマンに大うけしている NHKコント番組のまさかの映画化作品。テレビ版は未見ですが、両手両足にあまるほどたくさんの俳優さんが出演しているこの作品。あまりにも怠惰な同僚、理不尽な顧客、サラリーマンの悲哀が漂ってくる小池徹平くんに同情すること必至。「こんな商品出したら業界の笑いものです!」「とっくに笑いものなんだよっ!」というやりとりの新商品が何か?は、劇場で見てくださいましね。(白)
2011年/日本/カラー/108分/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
(C) 2011「劇場版サラリーマンNEO」製作委員会
公式 HP >> http://www.neo-movie.com/
監督:ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン
脚本:マイケル・R・ペリー、オーレン・ペリ
出演:ケイティー・フェザーストン(ケイティ)、スプレイグ・グレイデン(クリスティ)
ケイティとクリスティ姉妹の子どものころのビデオテープが祖母の遺品の中から見つかった。1988年の2人が写っていた。寝室で眠っているところ、暗い部屋で鏡に向かっているところ、誰かを呼んだり、上を向いて話したりしている。ちょっと怖い遊びを始めただけだった。少女たちは何を呼び出してしまったのだろうか。
低予算での製作ながら多くの観客を集めてヒットした『パラノーマル・アクティビティ』。その18年後の1988年が舞台。ホームビデオの映像で見せられると、ドラマ仕立てよりもリアルで怖さが増します。前作は怯える人々のみを見せましたが、今回は初めて「そのモノの影」をポスターから登場させています。良い子は「怖い遊び」をしてはいけません。(白)
2011年/アメリカ/カラー/84分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
(C) 2011 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.paranormal.jp/
監督:ポール・W・S・アンダーソン
脚本:アンドリュー・デイビス
撮影:グレン・マクファーソン
美術:ポール・D・オースタベリー
衣装:ピエール=イブ・ゲロー
音楽:ポール・ハスリンジャー
出演:ローガン・ラーマン(ダルタニアン)、ミラ・ジョヴォヴィッチ(ミレディ)、マシュー・マクファディン(アトス)、レイ・スティーヴンソン(ポルトス)、ルーク・エヴァンス(アラミス)、マッツ・ミケルセン(ロシュフォール隊長)、ガブリエラ・ワイルド(コンスタンス)、ジュノー・テンプル(アンヌ王妃)、フレディ・フォックス(ルイ13世)、オーランド・ブルーム(バッキンガム公爵)、クリストフ・ヴァルツ(リシュリー枢機卿)
17世紀のフランス。ルイ13世とアンヌ王妃の時代であったが、実権はリシュリー枢機卿の手にあり、華やかな悪女ミレディがダブルスパイとして暗躍していた。銃士に憧れ、田舎を出てきた血気盛んな青年ダルタニアンは、旅の途中で枢機卿の手下のロシュフォール隊長に殺されかけるが、ミレディに救われる。パリに到着早々、それと知らずに三銃士のアラミス、ポルトス、アトスともめごとをおこし、それぞれと決闘の約束をしてしまった。リシュリー枢機卿を快く思っていない三銃士は、敵の敵は味方とばかり、若いダルタニアンを仲間に入れる。
アレクサンドル・デュマの古典「三銃士」はこれまでにも何度か映画化されていますが、このたび3Dの面白さを存分に展開した新作が登場しました。「伝説より派手にいこうぜ」がキャッチの一つです。制作費もさぞやと思われるキャストに、美術、衣装のぜいたくさ、アクションの派手さといったら!全国公開よりひとあし早く、22日(土)からの東京国際映画祭のオープニングを飾ります。初の悪役に挑戦するオーランド・ブルームは、黒髪に髭で登場。この頃の男性はみな髭を蓄えているのですね。三銃士も余計に渋く見えるので、幼顔の残るダルタニアンの若さがまぶしいほど。恋におちるコンスタンスは金髪でこれまた妖精のように可愛らしいです。徹底的なエンターテイメント作品を創り上げたポール・W・S・アンダーソン監督はミラ・ジョヴォヴィッチの夫君です。どおりで彼女がことに妖艶なはず。一児の母とは思えない脚線美、アクションも健在です。(白)
2011年/フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ/カラー/104分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
(C)2011 Constantin Film Produktion GmbH, NEF Productions, S.A.S., and New Legacy Film Ltd. All rights reserved.
公式 HP >> http://34.gaga.ne.jp/
監督:ダンカン・ジョーンズ
脚本:ベン・リプリー
撮影:ドン・バーゲス、A.C.E.
音楽:クリス・ベーコン
プロダクション・デザイナー:バリー・チューシッド
出演:ジェイク・ギレンホール(コルター・スティーヴンス大尉)、ミシェル・モナハン(クリスティーナ・ウォーレン)、ベラ・ファーミガ(コリーン・グッドウィン大尉)、ジェフリー・ライト(ラトレッジ博士)
コルター・スティーヴンスが目覚めると列車の中だった。目の前の女性に親しげに話しかけられるが、誰なのかわからない。自分は米軍兵士でアフガニスタンの空で戦闘ヘリコプターを操縦していたのに。混乱したコルターは、洗面所の鏡を確かめる。そこで見たのは、見知らぬ男性の顔だった。背広のポケットの身分証明書には“ショーン・フェントレス 教師”と書かれていた。コルターが呆然としていたとき列車内で大爆発が起こり、なすすべもなく炎と爆風に飲み込まれてしまった。
今度は薄暗いコックピットのような空間で意識をとり戻した。モニターに軍服姿の女性が現れ、状況を説明する。今朝シカゴ行きの列車が爆破され、乗客が全員死亡したこと、その後も連続爆破が予告されていること。そしてコルターの使命は列車の中の乗客の意識に入り込み、車内を捜索して爆破犯人を捜し出すこと。ただし戻れる時間は8分間だけ!!
タイムスリップ、トラベルものは大好きです。自分がその恩恵に浴することはない代わりに、さまざまな想像が楽しめるから。これは脚本のベン・リプリーが思いついたアイディアから生まれたオリジナルストーリーです。繰り返し戻れるとはいえ、たったの8分間です。主役のコルターならずとも「短すぎる!」と文句を言いたくなる短さですが、それが緊迫感を呼び、コルターにすっかり感情移入してしまいます。いや~、ドキドキしました。このプログラムの開発者のラトリッジ博士の傲慢ぶりに腹立ち、少しは味方になってくれそうなグッドウィン大尉に期待し、何よりこの事故から救い出したいクリスティーナはどうなるのか、眼が離せません。戻るたびに手際がよくなるコルターを演じたジェイク・ギレンホール。脚本に惚れこみ、ダンカン・ジョーンズを監督にと強力にプッシュした彼の今まで見せたことのない姿に驚愕する1本。(白)
2011年/アメリカ/カラー/94分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)2011 Summit Entertainment, LLC. All rights reserved.
監督:小林正樹
撮影:吉田誠
音楽:ジェイク・シマブクロ
ナレーション:蒼井優
出演:スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームほか
3月11日の東日本大地震で東北は甚大な被害を受けた。福島県いわき市の大型レジャー施設スパリゾートハワイアンズも例外でなく、4月の余震でついに営業休止に追い込まれた。支配人は稼動できる一部施設に被災住民を受け入れ、フラガールたちは自らも被災しながら踊り続けることを決意、「フラガール全国きずなキャラバン」へと出発する。旧常磐ハワイアンセンター開業前年以来、46年ぶりの復活だった。
地震、津波、原発事故、風評被害に次々と襲われた福島。「フクシマ」はいっきに国際的に認知されてしまいました。誰もがふさぎこんでしまったときに立ち上がったスパリゾートハワイアンズの人たち。東北のハワイをもう一度取り戻そうという強い決意のもと奮闘する様子を、10月の営業再開まで4ヶ月にわたり記録したドキュメンタリーが完成しました。2006年の『フラガール』(主演の蒼井優が今回のナレーションを担当)に大泣きした私、彼女たちの花のような笑顔にホッとし、おおいに力づけられました。問題は山積みだけれど、復興の一歩はすでに踏み出しました。私たちもがんばっぺ!(白)
2011年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース=ジェイ・シネカノン
(C)「がんばっぺ フラガール!」製作委員会
公式 HP >> http://ganbappe.j-cqn.co.jp/
監督・原案:ダンテ・ラム
脚本:ジャック・ン、ホー・マンロン
撮影:ケニー・ツェー
音楽:ヘンリー・ライ
出演:ニコラス・ツェー(サイグァイ)、ニック・チョン(ドン)、グイ・ルンメイ(ディー)、ルー・イー(バーバイ)、ビンセント・ワン、ミャオ・プゥ、リウ・カイチー
香港警察のドン刑事は犯罪組織に密告者を送り込み、内部情報を得ていた。しかし逮捕寸前で密告者の正体がばれてしまい、心身ともに重い傷を負わせてしまう。自責の念にかられたドンは、そっと面倒を見続けていた。凶悪犯罪者バーバイの調査のため、新たな密告者として出所間近な青年サイグァイに声をかける。親の借金のカタに娼婦となっていた妹を救い出すため多額な金が必要なサイグァイは密告者となることを決意する。バーバイと愛人のディーに気に入られて運転手となり、ドンに情報をもたらしていくのだったが。
香港警察の潜入捜査官についての映画は『インファナル・アフェア』シリーズほか多数。本作は警察官以外の人間に、潜入させて密告(タレコミとも言いますね)をさせるというものです。ダンテ・ラム監督お得意のクライム・アクション作品ですが、非情な展開の中グイ・ルンメイが見せる女心に女性観客は共感することでしょう。シリアスな役がすっかり板についてきたニック・チョンがドン刑事、活躍著しいニコラス・ツェーが丸刈り頭でサイグァイを演じます。二人は胸の痛むようなかけひきの捜査を続け、香港の街を縦横に駆け抜ける怒涛のラストへとなだれこみます。
今年4月に行われた香港アカデミー賞授賞式では多くの部門にノミネートされ、ニコラス・ツェーが主演男優賞を受賞しました。彼が10代のころから観ている一香港映画ファンとして、その成長ぶりにぐっとくるものがあります。(白)
2010年/香港/カラー/115分/
配給:ブロードメディア・スタジオ
(C)2010 Emperor Classic Films Company Limited Huayi Brothers Media Corporation All Rights Reserved
公式 HP >> http://www.mikkokusha.net/
監督:ジェローム・サル
脚本:ジュリアン・ラプノー、ジェローム・サル
撮影:ドゥニ・ルーダン
音楽:アレクサンドル・デプラ
出演:トメル・シスレー(ラルゴ・ウィンチ)、シャロン・ストーン(ダイアン・フランケン)、ウルリッヒ・トゥクール(ドワイト・コクラン)、ローラン・テルジェフ(ユング)
巨大財閥ウィンチグループのトップが暗殺された。養子であるが唯一の後継者のラルゴ・ウィンチは、若くしてウィンチグループの総帥となる。その総資産530億ドル。望まずに手に入れた権力と資産についてある決断をする。しかしそれが世界経済もゆるがすほどの影響力を持つために、見えざる敵を呼び寄せることになってしまった。経営陣は乗っ取りを企み、ラルゴには3年前に滞在していたビルマ(現:ミャンマー)で遭遇した大虐殺へ関与したという容疑がかかる。追っ手をかわしながら父の旧友であるユングを訪ねていく。
原作は30年ほど前のベルギーの小説。1990年からはフランス語圏で大人気のバンド・デシネと呼ばれる大人向けコミック版で2010年には17巻目が出版される大ベストセラーとなっています。2008年にはフランスでこの前日譚の映画が公開され、ヒットしています。セレブなヒーローを演じるトメル・シスレーは1974年ドイツ生まれ。9歳でフランスへ移住してドイツ語、フランス語のほか英語、ヘブライ語があやつれるとか。ちょっとワイルドなファッションモデルのようですがアクションもこなして魅力満開です。セクシーで切れ者の検察官ダイアンをシャロン・ストーン。『氷の微笑』で有名になった足の組みかえシーンも見せてくれます。(白)
2010年/フランス、ベルギー、ドイツ/カラー/114分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス
(C)2011-LW Production-Wild Bunch-Climax Films-Wild Bunch Germany-TF1 Films Production-Casa Productions-RT BF
公式 HP >> http://largo-winch.net/
監督・脚本・編集:大浦信行
撮影・編集:辻智彦
出演:あべあゆみ、設楽秀行、鈴木邦男、森垣秀介、針谷大輔、雨宮処凛、蜷川正大、中島岳志、高橋京子
新左翼から新右翼へと身を転じ、スパイ疑惑の仲間を殺害した罪で12年間の服役中に書いた小説「天皇ごっこ」が新日本文学賞を受賞して、一躍時代の寵児となった見沢がその果てに選んだのは自死だった…。日本という国家の中で彷徨い続けた見沢知廉が探し求めていたものとは何だったのか。見沢の関係者のインタビューを通して追っていきます。
見沢氏は自分より少し上の世代。なんと過激で波乱の人生を送ってきた人かと驚きました。粛清に手を下し投獄された一人息子を支え、待ち続けた母はどんな思いだったのでしょう。獄中びっしりと小さな文字で書かれた文章をひそかに受け取り、清書し続けたのは母でした。あげく自死で先立たれるとは想像するだけでも胸がふさがります。いまは平安でありますように。
公開を記念して上映劇場にてトークイベント開催。詳細はHPでお確かめください。(白)
2011年/日本/カラー/ 115分/HD
配給:太秦
(C)「天皇ごっこ」製作委員会
公式 HP >> http://www.tenno-gokko.com/
監督・編集:赤崎正和
製作:池谷薫
撮影:赤崎正和・赤崎久美
音楽:内池秀和
出演:赤崎千鶴、赤崎久美、赤崎正和
立教大現代心理学部映像身体学科の赤崎正和は、卒業制作に家族の映画を企画する。赤崎家の父は交通事故で亡くなり、母と妹との3人の暮らしである。妹の千鶴は自閉症と知的障がいがあり、家で引きこもり気味。妹と母を一年に渡って撮り続けるうち、家族との新しい関係が築かれていく。
障がい者と最も密接な関わりを持つのは両親ですが、その兄弟姉妹もいろいろな面で影響されたりしたりします。両親は子どもより早くこの世を去ることが多いですし、自立できていない子を託すことのできるのはやっぱり兄弟姉妹でしょう。赤崎正和監督はそれまで正面から向き合えなかった妹と、この映画作りを通して近づいたようです。福祉の道を選び、卒業後、都内の知的障がい者施設で働いておられるそうです。10月末にはお母様の久美さんのブログをもとにした単行本“ちづる- 娘と私の「幸せ」な人生”も新評論より出版されます。(白)
2011年/日本/カラー/79分/HD/ビスタサイズ
配給・宣伝:「ちづる」上映委員会
監督:ミシェル・オゼ
撮影:ウォルター・コルベット
出演:グレン・グールド、ジョン・ロバーツ、ウラディーミル・アシュケナージ、コーネリア・フォス、ローン・トーク、ペトゥラ・クラーク、ロクソラーナ・ロスラック、ケビン・バザーナ、フランシス・バロー、ハイメ・ラレード、フレッド・シェリー
特異な天才ピアニスト、グレン・グールド。彼の少年時代から死を迎えるまでを、関わりのあった人々の証言から、知られざる本質と謎を解き明かしていく。
15年ほど前にグールドのモノクロのドキュメンタリーを観たが、それは彼を知る上でやはりほんの一部分だったことが、今回の作品でわかった。
彼が拒否した事柄に興味を持った。まず母親を拒否した・・・彼に英才教育を施した母親との確執、これはほとんどの演奏家が親子との確執なくしては、演奏家は育たない!と言い切れるほど誰しもが通る道である。幼いときから音楽がわかる親が傍で24時間をコントロールしなければ演奏家は育たない。だから、母親と距離をおきたいという願いは彼の世界においては普通のこと。母の死に際に会いに行かなかったのは、ばい菌恐怖症だったからだろう。
そしてコンサートを拒否して、レコーディングに傾倒した・・・これも頷ける。ピアニストはその命でもある楽器を運びこめないのだ。コンサート会場のピアノがどんなものであるか、はじめてのお見合いみたいなものであろう。彼の人生は<拒否できる>ものには成功した。だが<求めるもの>には恵まれなかった。その強さと脆さが彼の音楽にいっそう特異な輝きを持たせているように感じた。(美)
2009年/カナダ/カラー/108分/ビスタサイズ/
配給:アップリンク
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/gould/
監督・脚本:ヤン・サミュエル
撮影:アントワーヌ・ロッシュ
音楽:シリル・オフォール
出演:ソフィー・マルソー(マーガレット)、マートン・ソーカス(マルコム)、ミシェル・デュショーソワ(メリニャック)、ジョナサン・ザッカイ(フィリベール)、エマニュエル・グリュンヴォルド(ドゥロルカ支社長)、ティエリー・アンシス(マチュー)、ジュリエット・シャペイ(少女時代のマルグリット)
キャリアウーマンのマーガレットは、毎日理想の女性に自分をあてはめ仕事に没頭していた。40歳の誕生日、見知らぬおじいさんが会社を訪ねてくる。公証人だというメリニャックは、マーガレットが7歳のときに自分宛に書いて預けた手紙を持ってきた。過去を封印して考えないようにしてきたマーガレットは受け取りを拒否するが、やはり気になって手紙をあけてみる。写真や切り抜き、当時好きだったものがたくさんつまっている手紙から、たくさんの思い出がこぼれ出てきた。
やりがいのある仕事は順調、誕生日には同僚でパートナーでもあるマルコムから求婚され、と幸せそのものに見えたマーガレット。マルグリットという本名をマーガレットに変えてまで封印していた過去と向き合うことになります。昔自分宛に書いた手紙がとてもとても可愛くて、7歳にしてはセンス良すぎる感じもしますが、フランスの子ならフシギじゃないのかしらん。女の子が見たら、きっとすぐ真似したくなるはず。
マーガレットが携わっている仕事が原発の施設を外国に作るというもので、登場する顧客が中国人。経費より安全性をと強調するくだりが印象的でした。(白)
2009年/フランス、ベルギー/カラー/89分/シネスコサイズ/SR
配給:アルシネテラン
(c)2010 Nord-Ouest Films-France2Cinema-Artemis Productions-Rhone-Alpes Cinema Mars -Films
監督:パスカル・ショメイユ
脚本:ローラン・ゼイトゥン、ジェレミー・ドナー、ヨアン・グロム
撮影:ティエリー・アルボガスト
音楽:クラウス・バテルト
出演:ロマン・デュリス(アレックス)、バネッサ・パラディ(ジュリエット)、ジュリー・フェリエ(メラニー)、アンドリュー・リンカーン(ジョナサン)、フランソワ・ダミアン(マルク)、エレーナ・ノゲラ(ソフィ)
アレックスは笑顔と涙を駆使して、不幸な女性を間違った恋愛や結婚から救い出す「別れさせ屋」。別れさせた後は深入りせず、スマートに姿を消している。姉メラニーとその夫マルクをビジネスパートナーに、すでに10年続けている。新たな依頼は、大富豪の娘ジュリエットと婚約者のジョナサンの結婚を阻止し、仲を裂くというものだった。依頼主はジュリエットの父、妻亡き後、断絶していた娘をその手に取り戻したいと願っていた。結婚式まであと10日。
ロマン・デュリスがそんなに人気なのはなぜかしら、とか、この父親の気持ちがわからんとか思いつつ観ました。非の打ち所のない婿を祝福してやったほうが、娘との関係は早く好転するのに。まあ、そうすると映画になりません。別れさせ屋アレックスの手練手管と、ジュリエットの揺れる女心を楽しみましょう。姉夫婦のコメディアンっぷりも光ります。バネッサ・パラディの前歯がいつも気になるのですが、ずっとそのままのところをみるとチャーム・ポイントになっているんですね。パートナーのジョニー・デップとの仲も順調のようで何よりです。(白)
2010年/フランス、モナコ/カラー/105分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル公式 HP >> http://heartbreaker.jp/
監督:ウェス・クレイブン
脚本:ケビン・ウィリアムソン、アーレン・クルーガー
撮影:ピーター・デミング
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:ネーブ・キャンベル(シドニー・ブレスコット)、コートニー・コックス(ゲイル・ウェザース)、デビッド・アークエット(デューイ・ライリー)、エマ・ロバーツ(ジル・ロバーツ)、ヘイデン・パネッティーア(カービイ)、ローリー・カルキン(チャーリー)、メアリー・マクドネル(ケイト・ロバーツ)、ニコ・トルトレッラ(トレヴァー)
田舎町のウッズボローで起こった連続殺人事件から10年。生き残ったシドニーは自伝を発表し、凄惨な事件を乗り越えようとしていた。出版記念サイン会のため久しぶりに故郷に戻ると、犯人のつけていた死神マスクが町中にディスプレイされていた。事件を元にしたホラー映画『スタブ』が大ヒットし、すでに7作目を数えている。熱狂的なホラー映画ファンが毎年『スタブ』シリーズの上映会を開催し、今や恒例行事となっているのだった。
映画の幕開け。女子高生が2人、留守番がてらホラー映画を観ている。電話が鳴り「好きなホラー映画はなんだ?」と相手が尋ねる。このたたみかけてくる冒頭が怖いです。ホラー苦手でこの前作を観ていない私は、しょっぱなからドキドキしました。監督は80年代に『エルム街の悪夢』、90年代に『スクリーム』シリーズが大ヒットし、マスター・オブ・ホラーと呼ばれるウェス・クレイブン。タイトルどおりにかつてのキャストが大人となって戻り、次世代へとつなぐこの作品は11年ぶりに復活したシリーズ4作目です。スピーディなストーリー運び、これから活躍するだろう若手に注目~!(白)
2011年/アメリカ/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(C)2011 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://scream4.asmik-ace.co.jp/
監督:フィリップ・シュテルツェル
脚本:フィリップ・シュテルツェル、クリストフ・ムーラー、アレクサンダー・ディディナ
撮影:コーリャ・ブラント
音楽:インゴ・L・フレンツェル
出演:アレクサンダー・フェーリング(ヨハン・ゲーテ)、ミリアム・シュタイン(シャルロッテ・ブッフ)、モーリッツ・ブライブトロイ(アルベルト・ケストナー)、ヘンリー・ヒュプヒェン(ゲーテの父)
1772年のドイツ。ヨハン・ゲーテは父に従って法律を学んでいたが、作家になるのが夢。しかし原稿を送った出版社に「貴殿に才能は認められない」とつき返され、しぶしぶ田舎町ヴェッツェラーの裁判所の実習生となった。ゲーテは同僚のイェルザーレと意気投合、出かけた舞踏会で酔った若い女性に赤ワインをこぼされる。一張羅の上着を汚されたゲーテに、女性は「法律家?退屈」と言い捨てる。しかし、教会で朝の光りの中歌う彼女は、別人のように美しかった。最悪の出逢いの後、再会したシャルロッテ・ブッフにゲーテはあっというまに恋に落ちた。
実在した芸術家たちを題材にした映画は数多くありますが、ゲーテは初めてのようです。ドイツの文豪として知られるほか、哲学者、自然科学者、政治家、法律家としても一流であったとか。そんなゲーテの若き日の恋を描いた作品です。未来への不安や希望、父親との確執、友情も織り込まれたストーリーは、現代の若者が観ても共感するはず。ゲーテとロッテを演じたアレクサンダー・フェーリングとミリアム・シュタインのみずみずしさ、モーリッツ・ブライブトロイの安定感。舞台美術出身というフィリップ・シュテルツェル監督が選んだロケーションの素晴らしさ(ポーランド国境に近い村)、当時を再現した美術や衣装にも注目してください。(白)
2010年/ドイツ/カラー/105分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
(c)2010 Senator Film Produktion GmbH / deutschfilm GmbH /Warner Bros. Entertainment GmbH / SevenPictures Film GmbH / Erfttal Film-und Fernsehproduktions GmbH & Co. KG / Goldkind Filmproduktion GmbH & Co.KG / herbX film Film- und Fernsehproduktion GmbH /
公式 HP >> http://goethe.gaga.ne.jp/
監督:セス・ゴードン
脚本:マイケル・マーコウィッ他
撮影:ディビッド・ヘニングス
美術:シェパード・フランケル
音楽:クリストファー・レナーツ
衣装:キャロル・ラムジー
出演:ジェイソン・ベイトマン(ニック)、チャーリー・デイ(デール)、ジェイソン・サダイキス(カート)、ジェニファー・アニストン(ドクター・ジュリア)、コリン・ファレル(ポビー)、ケビン・スペイシー(デビッド)
ニックは陰険な上司デビットだが、いつか出世できる希望を持って働いていた。だが昇進はなかった。
歯科助手のデールは口腔外科医のDr. ジュリアに迫られる毎日。婚約者がいるからと断ると婚約者に騙し撮りした写真を見せると脅してくる。
経理担当のカートは温厚で優しい社長ジャックに仕えていたが、突然死んでしまい、遊び人のバカ息子・ボビーが社長になった。もう会社はめちゃくちゃだ。
彼ら3人は友人で、愚痴を言い合う仲だったが、あまりの腹立たしさに殺してしまおうと話がまとまる。殺人コンサルタント?の意見を聞くことに・・・。
大笑い!男3人のおバカさん映画だ。お3人さんより、脇役の方が豪華!
意地悪上司ケヴィン・スペイシー、殺しの指南役ジェイミー・フォックス、男の目がない歯科医師ジェニファー・アニストン、社長の馬鹿息子コリン・ファレルが、これでもか!というほど、どぎつい個性で出てくる。
特にベイトマンを徹底的にいじめるスペイシーが◎ 英語が完璧にわからない私だが、かなりきわどい性的な言葉を使っていると想像する。こんな映画の字幕担当の方は大変だなぁと思う。
『カンパニー・メン』は失業する男の悲哀だが、首にならなくっても『モンスター上司』にいびられては・・・殺すことを想像したくもなるはず。(美)
2011年/アメリカ/シネマスコープ・サイズ/98分
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
公式 HP >> http://www.monster-joushi.jp/
監督:デブラ・グラニック
脚本:デブラ・グラニック、アン・ロッセリーニ
撮影:マイケル・マクドノー
美術:マーク・ホワイト
音楽:ディゴン・ハインクリフエ
衣装:レベッカ・ホファー
出演:ジェニファー・ローレンス(リー)、ジョン・ホークスマ(ティアドロップ)、ディル・ディッキー(メラブ)、ギャレット・ディラハント(バスキン保安官)
ミズリー州南部の村に住む17歳の少女リー・ドリーは、病気(アルツハイマー)の母親と幼い二人の弟妹の面倒を見ている。父親のジェザップは麻薬作りで警察に捕まり、仮釈放中に姿を消してしまう。
保安官は、保釈金は住む家や森が担保だから、本人が裁判に出なければ、家を明け渡すように告げられる。やむなく、リーは父親を探しまわるが・・・。
直訳すると<冬の骨>だ。題名だけで、寒々しい景色が目に浮かぶ。
アメリカの貧しい小さな村で、周りは顔見知りや親戚、遠い血縁などでみんな家庭の事情がわかっている。だけど、父親や叔父が評判悪いために、人間関係もつめたい。
この少女と幼い子どもを心配してくれるのはお隣さんと、リーの親友だけ。
暗い生活の中で、幼い弟に銃の撃ち方や、獲った獣のさばき方を教えていた。自前の森は、食うために欠かせない狩りの場でもあったのだ。この森や家が取られることは、もはや死を意味することだ。
彼女がお金につられて、軍隊へ志願する場面の面接官とのやり取りは印象的だった。ことが解決しても、彼女の運命はこの地で暮らすしかないのかと暗い気持ちのまま終わった。
主演のジェニファー・ローレンス、素顔でふんばって生活していた。(美)
2010年/アメリカ/カラー/アメリカンビスタ/100分
配給:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.wintersbone.jp/
監督:三谷幸喜
脚本:三谷幸喜
撮影:山本英夫
照明:小野晃
音楽:荻野清子
衣装:宇都宮いく子
出演:深津絵里(宝生エミ)、西田敏行(更科六兵衛)、阿部寛(速水悠)、浅野忠信(木戸健一)、竹内結子(日野風子/矢部鈴子)、中井貴一(小佐野徹)
ドジで慌て者のエミは失敗続きの若手弁護士。そんな彼女に事務所の所長は「これが最後のチャンスだ」とくれた事件が資産家妻殺しの事件。被告人の夫は完璧なアリバイがあると言い張る。事件当夜、山深い旅館の一室で金縛りにあっていたというのだ。
彼の上にのしかかっていた落ち武者の幽霊だけが無実を証明するとあって、エミはその旅館を偵察に行くと、案の定、夜中に六兵衛と名乗る落ち武者に・・・。
三谷幸喜監督作品はデビュー作『ラヂオの時間』から全部観ている。軽快なテンポでの台詞のやり取りでクスッと笑える作品ばかりだ。この作品も、西田のオーバー・アクションの芝居と深津のコミカルな演技がうまく絡み合っている。
落ち武者の幽霊が証人なんて考えるだけでも笑えるが、エミは本気だ。
でもこの幽霊が見える、見えないがあるのがまた面白い。見える人の特徴は<最近全くついていない><愛する人が死んだ>、それに何故だか<シナモンが好き>というのが笑える。
それに、目を奪われてしまうシーンがたくさんある。
深田恭子のファミレス・ウェートレス姿。意外なご縁で登場する歴史学者・浅野忠信。
阿部寛のタップダンスと中井貴一の手品・・・。
『THE 有頂天ホテル』のヨーコ(篠原涼子)、『ザ・マジックアワー』の村田大樹(佐藤浩市)は、それぞれの映画から飛び出して応援してくれる。
監督お得意のコメディが散りばめてあり、ご家族みんなで楽しめる作品に仕上がっている。(美)
2010年/日本/カラー/シネスコサイズ/142分
配給:東宝
公式 HP >> http://www.sutekina-eiga.com/
監督:古波津陽
脚本:古波津陽
撮影:千葉孝
出演:井戸田潤(浅見勘太郎)、水野美紀(高島冴子)、木下伸郎(綾小路)、矢崎滋(野田滋)、藤田朋子(牛島えり)、モロ師岡(西康弘)
名古屋市西区の円頓寺(えんどうじ)商店街を舞台にした名古屋ムービー。昔ながらの街並みが残る円頓寺商店街は空き店舗も増えているが、それでも毎日がにぎやかに営まれている。
商店街団長に選ばれたクリーニング屋の勘太郎は、下駄屋を営む頑固一徹な商店街会長シゲさんの店が30周年を迎えるにあたり、ケンカ別れした親友と再会させて感動させようと、商店街のメンバーたちと「宇宙一おせっかい大作戦」を練る・・・。
名古屋に住んでいて名古屋弁ってあまり聞かないが、名古屋弁的イントネーションはよく耳する。この作品も名古屋弁が炸裂しているか?と思っていたが、そんなことはなく、「みやぁ~/してみやぁ~、食べてみやぁ~」とか「ぎゃ~/そうだぎゃぁ~」はあまり出てこなかったのでホッとした。地元で慣れた方が言うのと、慣れない方が言うのでは大違いだから。
分かりきった展開だから期待していなかったが、しっかりした俳優さんをたくさん使っているので、最後まで名古屋リズムにのせられて見入ってしまった。映画なんてほとんど観ていないお年寄りの方も楽しめる作品だ。
※新人・SKE48の矢神久美は期待できる女優さん。それに園子温監督新作『恋の罠』に出ている水野美紀さんも登場する。お名前を確認してするまで、別人と思っていた。
※名古屋市西区の円頓寺(えんどうじ)商店街では、円頓寺映画祭もあり、喫茶店でコーヒー飲みながら、レストランでランチを食べながらの和気藹々の中で無料で楽しめる不思議空間映画祭だ。今年も11月12、13日に開催されるので、是非参加したい。(美)
2011年/日本/カラー/101分
配給:ゴー・シネマ
(c) 2010 なごや下町商店街ムービー製作委員会 All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.nagom.jp/
監督:マッテオ・ガッローネ
原作:ロベルトサヴィアーノ(「死都ゴモラ」河出文庫より今秋に刊行予定)
脚本:マウリツィオ・ブラウッチ、他
撮影:マルコ・オノラーノ
出演:サルヴァトーレ・アブルッツェーゼ(トト)、ジャンフェリーチエ・インパラード(ドン・チーロ)、トニ・セルヴィッロ(フランコ)、サルヴァトーレ・カンタルーポ(パスクワーレ)、マルコ・マコル(マルコ)
イタリア・ナポリ南部を拠点に麻薬、不法投棄、武器の売買、偽ブランドの生産などで巨大な利益を上げ、世界的な犯罪組織となった「カモッラ」の知られざる日常と、それに巻き込まれる庶民の生活を描いた衝撃の作品。カモッラがイタリアのみならず、世界にその影響力を浸透させている実態を描いている。
2年前、東京国際映画祭natural部門で『ビューティフル・カントリー』という皮肉な題の作品をみた。ゴミの不正投棄問題でゆれるイタリア、カンパニア州。政治介入すら許さないカモッラと呼ばれるマフィアのゴミ処理事業の現実を写し撮ったドキュメンタリーだ。ダイオキシン中毒で死んでゆく羊、野菜の育たない畑を耕す農夫、道ばたにはアスベストの不法投棄・・・。
『ゴモラ』と聞いて怪獣ものかと勘違いした私だが、「カモッラ」ならよく知っていた。
ナポリ南部に本拠があるカモッラだが、そこには一般人がすんでいるのか?と疑問に感じるくらい、皆なんかかんかカモッラにつながりがあるみたいだ。
2008年/イタリア/カラー/35mm/ヴィスタ/135分
配給:紀伊国屋書店、マーメイドフィルム
公式 HP >> http://www.eiganokuni.com/gomorra/
会期:2011年10月22日(土)~10月31日(日)
会場:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、シネマート六本木、日比谷TOHOシネマズシャンテほか都内の施設・ホールを使用
チケット:2011年10月8日(土)チケットぴあ、ローソンチケットにて前売鑑賞券発売開始
★学生特別料金 当日券500円
※当日券のみ。劇場窓口で学生証提示が必要です
※公式オープニング作品・特別オープニング作品・公式クロージング作品除く
スケジュールなど詳細は公式HPへ http://2011.tiff-jp.net/ja/
監督:ジョン・ファブロー
原作:スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ
脚本:アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー、デイモン・リンデロフ
撮影:マシュー・リバテーク
プロダクション・デザイン:スコット・チャンプリス
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:ダニエル・クレイグ(ジェイク・ロネガン)、ハリソン・フォード(カーネル・ウッドローグ・ダラーハイド)、オリヴィア・ワイルド(エラ)、サム・ロックウェル(ドク)、アダム・ビーチ(ナット・コロラド)、ポール・ダノ(ハーシー・ダラーハイド)、ノア・リンガー(エメット・タガート)
1873年、アメリカ。アリゾナの荒野で男が眼を覚ます。自分が誰なのか、なぜここにいるのか、何一つ思い出せない。腕には奇妙な輪がはまっていて外せない。人相の悪い男たちに囲まれたが、逆に靴や拳銃を手に入れた。辿り着いた街で、女が話しかけてくる。「何も覚えていないの?」何か知っているそぶりだ。その夜、街は突如現れた未知の飛行物体に襲われた。そのとき男の腕輪が青い光を放ち始める。
西部の街がエイリアンに襲撃され、人々が連れ去られていく。記憶をなくしているよそ者の男をダニエル・クレイグ。街を牛耳るこわもての農場主をハリソン・フォード。“ジェームス・ボンドとインディ・ジョーンズ”ではありませんか!コミックが原作のこの物語、カウボーイが何人集まろうが、エイリアンとの力の差が大きすぎるのですが、この2人の対決と共闘がそれを補って面白くしています。そうそう女子どもも侮れません。『トロン:レガシー』のオリヴィア・ワイルドと『エア・ベンダー』のノア・リンガーもいます。『アイアンマン』のファブロー監督がどう料理していくのか、できるだけ大きな画面でお確かめください。(白)
2011年/アメリカ/カラー/118分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウントピクチャーズジャパン
(C)2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://www.cowboy-alien.jp/
監督:松本佳奈、中村佳代
脚本:白木朋子、松本佳奈、中村佳代
撮影:大橋仁
音楽・主題歌:大貫妙子
出演:小林聡美(トウコ)、加瀬亮(ナガノ)、黒木華(ヤスコ)、原田知世(キクチ)
コンビニの前でアイスを食べようとしていたナガノは、道路に飛び出そうとした喪服の女に気づく。すんでのところで止められた女は悪びれもせず、ナガノに車に乗せてくれるように頼む。女はトウコと名乗り、撮影現場から衣装のまま抜け出してきたのだという。半信半疑のナガノだったが、夜明けの海岸まで乗せていく。
コンビニの前で、映画館で、そして動物園でトウコが出会った人との小さなふれあいを描いています。大きなドラマも声高なセリフもなく、歩いたり立ち止まったりしている人の日常と、ちょっと揺れる思いが浮かびあがります。俳優さんのうまさで淡々とみせる作品。疲れた人には「オアシス」になりそうです。(白)
2011年/日本/カラー/83分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:スールキートス
(C) 2011オアシス計画
公式 HP >> http://www.tokyo-oasis-movie.com/
監督・脚本:オ・ヨンドウ
撮影:グ・チュンモ
音楽:キム・ジョンヨン
出演:ホン・ヨングン(ヨンゴン)、ハ・ウンジョン(ハ・モニカ)、チェ・ヨンジョ、チョ・フンヨン、ソ・ビョンチョル、キム・ヒョンテ、キム・ソンミン
ヨンゴンはテコンドーの腕前に自信がある。今日も街の平和を守るべくパトロールをしていると、男に追いかけられて暴力を受けている女性の姿を見つけた。許さん!と駆けつけたヨンゴンは男たちの言い訳などきかず、ボコボコにしてその女性を助け出した。女性はハ・モニカというミステリアスな美女だった。心から愛する人に出会うまで、と30の今まで童貞を守っていたヨンゴンは二人きりになってドキマギ。実は、モニカは純潔の精子を狙う女エイリアンだったのだ。
最近エイリアンが復活して賑わっている映画界。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞した韓国発のエイリアン映画です。低予算ながらアクション、コメディ、ラブロマンスとなんでもありのSF作品。奇想天外なアイディアとストーリー、ナイスバディのビキニ姿が興味をかきたてたのか、youtubeでの予告編再生回数が20万ヒット越え。これはミニシアター作品としては異例の数字だとか。さらにシアターN渋谷ではビキニ姿の女性は、鑑賞料金無料という大サービス。ただし条件つきですので、劇場HP(http://www.theater-n.com/movie_bikini.html)をまずご覧ください。(白)
2010年/韓国/カラー/75分/ビスタサイズ/
配給:キングレコード 配給協力・宣伝:太秦
©kinomangosteen
公式 HP >> http://www.alien-bikini.com/
監督・脚本:シン・ジョンウォン
撮影:キム・ヨンチョル、パク・チヘ
美術:チョン・ソングン
音楽:キム・ジュンソン
出演:オム・テウン(キム・ガンス巡査)、チョン・ユミ(ピョン・スリョン生態研究員)、ユン・ジェムン(ペク・マンベ猟師)、チャン・ハンソン(チョン・イルマン/ガンショップ経営者/猟師)、キム・ギチョン(村長)
ここはのどかな山奥・サムメリ村。村長は、村の活性化と経済的発展のため、週末農業ビジネスを推し進めていた。そんなある日、ズタズタに引き裂かれた死体が発見された。村人らは、墓を荒らされたと思っていたが、すぐに違う場所で同じ事件が起きた。被害者は、ガンショップを経営する元射撃手チョンの孫娘だった。捜査の結果、殺人事件と断定されたが、チョンは人喰猪のチャウに襲われたのだと言い張った。だが、都会の人々を田舎に呼び寄せる村の週末農業ビジネスを、金儲けのタネにしようとする村長らによって、ニュースはひた隠しにされ、強引に片付けられてしまった。
チラシ・キャッチコピーで、“怪獣映画史上最小スケールのスペクタクル”と書いてあった。怪獣といってもここでは可愛いうりぼうの親、猪。だが普通の猪と思っていたら大変!凄い迫力だった。もちろん作り物だが、カメラの使い方などで「作り物まるわかり」ではなかったし、動きも工夫されていた。 この静かな村と公民館を舞台に、獰猛な猪、猟師、警察、村長、村人らの思惑が深く絡みあってストーリーが展開して、楽しませてくれた。 主な登場人物の一人ひとりは「いま、○○で頭がいっぱい…」という欲望や心配を抱えている。例えば、オム・テウン扮する主役キム・ガンス巡査は、都会から左遷されて来た見知らぬ田舎で、認知症の母親、もうすぐ臨月の妻との新しい生活に不安を持っている。ピョン・スリョン生態研究員は、3年間の調査で明確な<人喰猪>の存在を手柄にしたい…等々。そんなこんなが、何事にも動じないのどかな山河をバックに、生き生きと描かれていた。(美)
2009年/韓国/カラー/121分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:キングレコード
監督:ジョルジョ・ディリッティ
脚本:ジョルジョ・ディリッティ、タニア・ペドローニ
撮影:ロベルト・チマッティ
美術:ジャンカルロ・バジーリ
音楽:マルコ・ビスカリーニ、ダニエレ・フルラーティ
衣装:リア・フランチェスカ・モランディーニ
出演:アルバ・ロルヴァケル(ベニャミーナ)、マヤ・サンサ(レナ)、グレタ・ズッケリ・モンタナーリ(マルティナ)
第二次大戦の1943年、イタリア北部ボローニャ近くの山村が舞台。農家の一人娘である8歳のマルティナは、生まれたばかりの弟が死んでから、口がきけなくなっていた。母親が再び妊娠し、マルティナは妹か弟の誕生を待ちわびていた。
村の周辺ではパルチザンとドイツ軍の戦いは激化していた。夏が過ぎて、地元の若者もパルチザンに加わり、ドイツ軍と戦っていた。そんな中、マルティナに待望の弟が生まれる。だが、数日後、パルチザンに手を焼い
たナチス兵は、女子どもを殺し始める。
1944年の10月に、モンテ・ソーレ村で771人を虐殺した事件は「マルザボットの虐殺」と呼ばれいる。ドイツ軍による住民虐殺はイタリア各地で起こっていたと聞く。
スパイク・リー監督が1944年8月・イタリアのトスカーナで、ナチスが罪のない大勢のイタリア市民を殺害した『セントアンナの奇跡』という作品もある。
フランスは『黄色い星の子供たち』『サラの鍵』に観るようにドイツよりだった。公開中の『ミケランジェロの暗号』では、イタリアの機嫌をとりたいドイツ。そのイタリアでドイツ軍隊が同じキリスト教の牧師や村人たちを惨殺している・・・ほとんど同じ年代でこんなに多方面から映画を観て、考えさせられることばかりだった。
少女役グレタ・ズッケリ・モンタナーリは一言も喋らないが、彼女の歌声と無邪気に生きている弟の姿に希望を感じた。(美)
2009年/イタリア/カラー/シネスコ/117分
配給:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/yagate/
監督:石井克人
脚本:石井克人、山口雅俊、山本健介
原作:真鍋昌平「スマグラー」講談社
出演:妻夫木聡(砧)、永瀬正敏(ジョー)、松雪泰子(山岡)、満島ひかり(田沼ちはる)、安藤政信(背骨)、高嶋政宏(河島)、島田洋八(田沼春治)、テイ龍進(内臓)
1999年世紀末。25歳のフリーター砧涼介は、工業地帯を走る無口なトラック運転手のジョーと、彼をサポートするお気楽なジジイの横に座り、ほんの一ヶ月前のことを思い出していた。
砧は松田優作にあこがれ、役者を目指して劇団に入っていたが、嫌気がさして退団。パチスロで自堕落な生活を送っていたが、中国人の張の儲け話に思わずのってしまう。だが、逆にだまされて300万円の借金を背負う。背に腹は変えられず金貸しの紹介してくれたトラック助手(1日5万円)の仕事に就いたが・・・。
「スマグラー」ってなんだろう・・。
密輸入者。厳しい制限を切り抜ける者。この作品では大変なものを運ぶ秘密の運送屋。ちょっとしたミスが命取りになる危険な仕事。そんな仕事をするはめになった妻夫木聡。
おどおど、なみだ目、唇ぶるぶる・・・妻夫木ファンにとって、きっと目をつむってしまうシーンの連続なので覚悟してみてほしい。
周りの登場人物もちょっと恐い!別の世界の人間たちと言ってもいいくらい。
日本裏組織に対抗する中国マフィアの2人、背骨(安藤政信/あっぱれ全編中国語/最強!ヌンチャクの使い手)と内臓(テイ龍進)コンビの格闘シーンは凄い!
日本裏組織の田沼組組長(島田洋八/台詞のテンポがいい)、凶暴な子分(高嶋政宏/異常性格者ぶりに目を見張る)、組長の女(満島ひかり/口はぶっきらぼうだが美しい・・・)など書きつくせないほど見どころ満載。
殺しだって、痛いのだって平気の方に是非、是非、観ていただきたい。(美)
2011年/日本/カラー/118分
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
(C)真鍋昌平・講談社/2011「スマグラー」製作委員会
★2011年10月22日より新宿バルト9他にて全国ロードショー!
監督:ゴア・ヴァービンスキー
脚本:ジョン・ローガン
アニメーション・スーパーバイザー:ジョン・ノール
作曲:ハンス・ジマー
出演:ジョニー・デップ(ランゴ)、アイラ・フィッシャー(マメータ、)アビゲイル・ブレスリン(プリシラ)、アルフレッド・モリナ(ロード・キル)、ビル・ナイ(ジェイク)
ハイウェイを走る車から投げ出されてしまったペットのカメレオン・ランゴ。水槽から出たことのないランゴが初めて踏み入れた外の世界。そこは灼熱の砂漠だった。水槽という小さな世界で、自分は無敵だと思っていたランゴだったが現実の世界は厳しかった。
砂漠に住むアルマジロに「一日歩いたら町に着く」と言われ、トボトボと歩き出したが、天敵から守る方法も知らず、カエル、タカから命懸けで砂漠の迷宮ダートタウンにたどり着く。
そこの住人たちに、自分はヒーローだと嘘をついたことで陰謀に巻き込まれていく・・・。
カメレオンがヒーローとは……いままでと違うなと興味を持った。
始めこそ、キャラクターのお顔にぎょっとしたが、見慣れてくると「意外とかわいいじゃん」となっていくから可思議。ガラス、木、小さい塵、カメレオンの肌が実写と見間違うくらいの精巧さで(ちょっと気持ち悪かった・・・)驚く。暗い日陰の色合いも、砂漠独特の乾いた空気にも、細かい神経が張り巡らせている画面だった。
声優陣にはジョニー・デップ! 彼がすっごく楽しんでやっているのが伝わってきた。
ランゴの動きは、ジョニー・デップの演技をモーションキャプチャーでとらえて再現。
このモーションキャプチャー は、関節部に加速度センサーを付けた俳優に動作を行ってもらい、動作をデジタルデータに変換して、コンピュータに取り込み、そのデータを元に3次元グラフィックスのキャラクタの動作を構成していく。そして、リアルな動きを持つCGキャラクターが作成できる技術。
ジョー・ジョンストン監督作品『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』の新しい技術<モーフィング>という技と<モーションキャプチャー>を重ね合わせれば誰でもハリウッドスター!なんちゃって。(美)
2011年/アメリカ/シネマスコープ/107分
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
© 2010 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.rango.jp/
監督:浜野佐知
原作:沢部ひとみ「百合子、ダスヴィダーニヤ」
宮本百合子「伸子」「二つの庭」
脚本:山崎邦紀
製作:株式会社旦々舎
撮影:小山田勝治
音楽:吉岡しげみ
出演:菜葉菜(湯浅芳子)、一十三十一(中條百合子)、大杉漣(荒木茂)、吉行和子(中條葭江)、洞口依子(野上弥生子)、大方斐紗子(中條運)、麻生花帆(北村セイ)、平野忠彦(中條精一郎)
(物語)
大正13年、ロシア語を勉強しながら、雑誌「愛国婦人」の編集をしていた湯浅芳子は、先輩作家、野上弥生子の紹介で、中條百合子と出会う。百合子は17歳で天才少女作家と騒がれ、19歳のとき、遊学中のニューヨークで15歳年上で古代ペルシャ語研究者荒木茂と結婚。5年後、湯浅と会ったとき、結婚生活は行き詰っていた。湯浅にひかれつつ、夫とも離れられない百合子。芳子は「私は、男が女に惚れるように、女に惚れる」と公言して憚らない女性だ。二人の情熱的な関係はリーベ(恋)かフレンドシップ(友情)か?ディスカッションしながら関係を深めていく。
(解説)
女性の視点から300本以上のピンク映画を作り続ける浜野佐知監督の最新作。一般映画としては、『第七官界彷徨ー尾崎翠を探して』(98年)、『百合祭』(01年)、『こほろぎ嬢』(06年)につぐ待望の4作目。テーマだけでも十分センセーショナルだが、これを興味本位でなく真正面から真摯に映像化しているのは好感がもてる。情けなさそうでいてしたたかなインテリ夫を演じる大杉漣(荒木茂役)が面白く、一見、現実感のない世界をぐっと身近に感じさせてくれた。この方や遠藤憲一さんなどいまや映画で売れっ子の男優さんたちには独特の色気がある。ドキュメンタリーの世界こそ、有能な女性監督が続々デビューしているが、劇映画をコンスタントに作り続ける浜野監督は貴重だ。もうひとつ魅力なのは衣裳。とにかく、シックで洗練されていて、着物ファンには必見! ぜったいに着物を着てみたくなる。9月7日からの2011年あいち国際女性映画祭のオープニング作品。
★2011年10月から、京都、名古屋、大阪、静岡、東京等でロードショー公開!
東京は10月22日からユーロスペースで公開。
詳しくは公式ホームページの上映情報へ
http://yycompany.net/schedule.html
2011年/日本/カラー/142分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給 株式会社旦々舎
期間:2011年10月23日(日)~26日(水)
会場:セルバンテス文化センター東京 オーディトリアム(B1)
ジェネラルプロデューサー:高野悦子
ディレクター:大竹洋子
コーディネーター:小藤田 千栄子
東京国際映画祭と共に24回目を迎えた東京国際女性映画祭。今年は、8カ国13作品が上映されます。昨年誕生したアジア女性映画祭ネットワーク(NAWFF)参加作品、東北の被災地に生きる女性たちの最新ドキュメンタリー、また「元始、女性は太陽であった」宣言から100年を記念して、「平塚らいてうの生涯」の再上映も行われます。
公式 HP >> http://www.tiwff.com/index.html
監督:ジョー・ジョンストン
脚本:クリストファー・マーカス、スティーブン・マクフィーリー
撮影:シェリー・ジョンソン
美術:リック・ハインリクス
音楽:アラン・シルベストリ
出演:クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャース)、トミー・リー・ジョーンズ(チェスター・フィリップ大佐)、ヒューゴ・ウィーヴィング(ヨハン・シュミット)、ドミニク・クーパー(ハワード・スターク)、ニール・マクドノー(ダム・ダム・ドゥーガン)、デレク・ルーク(ゲイブ・ジョーンズ)、スタンリー・トゥッチ(アースキン博士)、セバスチャン・スタン(バッキー・バーンズ)、ヘイリー・アトウェル(ペギー・カーター)ほか
1941年第2次大戦下のアメリカ、スティーブ・ロジャースは人一倍愛国心がありながら、虚弱なため兵役につけずにいた。親友のバッキーが一度で合格し、207連隊に配属が決まってますます落ち込むスティーブ。そんな時軍医のアースキン博士と知り合い、極秘実験を行う「スーパーソルジャー計画」に参加することになった。関係者の誰もがスティーブの起用を危ぶむが、アースキン博士は過去の失敗から、スティーブの勇気と善良な心を頼みにしていたのだ。かつてアースキン博士ともに計画を担ったヨハン・シュミットが、ヒドラ党の指導者レッド・スカルとなって近づきつつあった。
マーベル社からは「スパイダーマン」「アイアンマン」「ハルク」「X-MEN」など多くのアメリカンコミックが出版されています。「キャプテンアメリカ」は1941年に生まれた“最初のスーパーヒーロー”。『ファンタスティック・フォー』で超人の1人を演じたクリス・エヴァンスが、熱烈なオファーを受けてやっとこの役を引き受けたとのことです。アメリカ中から期待される戦前からのヒーローは重荷であったのかもしれませんが、純粋な心を失わない優しきヒーロー役がとてもよく似合いました。以前のひ弱な身体から強靭な身体に生まれ変わったスティーブ、全く違う人間をうまくつなぐその技術に感嘆しました。超能力を与えられるのではなく自分の能力が増幅されるという設定に、ほかのスーパーヒーローより親近感がわきます。敵役のヒューゴ・ウィーヴィングも、強烈なマスクに負けない存在感たっぷりです。(白)
2011年/アメリカ/カラー/124分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
(C)2010 MVLFFLLC. TM &(C)2010 Marvel Entertainment, LLC and its subsidiaries. All rights reserved.
公式 HP >> http://www.captain-america.jp/
期間:2011年10月15日(土)~19日(水)
会場:NHKみんなのひろばふれあいホール
監督・脚本:井口昇
企画・原作:ピープロダクション
撮影:長野泰隆
アクション監督:カラサワイサオ
音楽:福田裕彦
主題歌: 高野二郎
出演:板尾創路(大門豊)、古原靖久(大門豊/青年期)山崎真実(ミスボーグ)、宮下雄也(秋月玄)、佐津川愛美(AKIKO)、木下ほうか(若杉議員)、渡部裕之(新田警部)、竹中直人(大門博士)、柄本明(悪ノ宮博士)
1970年代、国会議員が連続して狙われる事件が起きた。若杉議員が襲われる現場に駆けつけたのは秘密刑事大門豊と、その相棒の変形型バイクロボット「ザボーガー」。事件の首謀者は、悪ノ宮博士率いる秘密殺人強盗機関「Σ(シグマ)」だった。女サイボーグ「ミスボーグ」とヨロイデスの一団を叩き潰すが、悪ノ宮博士は執拗に追ってくる。大門は敵のミスボーグと幾度も戦ううち、いつしか敵味方を越えた絆を感じるようになる。
25年後。ザボーガーを失い、秘密刑事を退職し今は総理大臣となった若杉の運転手に甘んじている大門。その職も失い、糖尿病に悩む大門の前に、Σの新しい幹部秋月と、Σからの脱走者AKIKOが現れる。
1974~75年にTV放送された特撮ヒーロードラマ「電人ザボーガー」、何度か観た記憶があります。主人公の大門豊は空手の達人で、父親の大門博士が作ったザボーガーは、すわ、というときに「バイクに変身する」のがそれまでのヒーローものと違いました。『トランスフォーマー』の先をいっていますね!当時10代だったという『片腕マシンガール』の井口昇監督が映画化。青年時代の第1部と熟年時代の第2部で構成されています。青年の豊を演じた古原靖久は「炎神戦隊ゴーオンジャー」の主演で初のアクションではありませんが、空手の訓練をし、毎日DVDを見てオリジナルに近づく努力をしたそうです。板尾創路が中年の悲哀を感じさせながら、再び立ち上がるのは往年のファンにも嬉しいことです。若いファンは佐津川愛美のビッグな姿に萌えるかも。
9月に米テキサスで行われた映画祭“ファンタスティック・フェスト”のファンタスティック部門で、監督賞を受賞しました。(白)
2011年/日本/カラー/114分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:キングレコード、ティ・ジョイ
(C)2011「電人ザボーガー」フィルム・パートナーズ
公式 HP >> http://www.zaborgar.com/
監督:エリオット・レスター
脚本:ネイサン・パーカー
原作:ケン・ブルーウン
撮影:ロバート・ハーディ
出演:ジェイソン・ステイサム(ブラント)、パディ・コンシダイン(ナッシュ)、アイダン・ギレン(ワイス/ブリッツ)、ザウエ・アシュトン(フォールズ)、デビッド・モリッシー(ダンロップ)
ブラントは自分のルールに基づいたやり方を貫き通すロンドン警察のはみ出し刑事。犯罪者に容赦ない制裁を加えるため、上層部にはすこぶる受けが悪く、タブロイド紙記者のダンロップにも目の敵にされている。地元の警官を狙った殺人事件がおき、ダンロップの元に情報提供の電話が入る。ダンロップは殺人犯と思われる“ブリッツ”とコンタクトを取ることに成功するが、予告どおり2番目の殺人が起きた。“ブリッツ”は8人殺すと予告したのだ。
ブラントも密告屋からの情報を得て、“ブリッツ”の正体はワイスであることをつきとめる。事件解決のため転属してきたゲイのナッシュとともに捜査を開始するが、ワイスを犯人と断定できる証拠は何もなかった。
アクション映画の出演が続いているジェイソン・ステイサムが本国イギリスで主演したクライム・サスペンス。原作者であるアイルランドのケン・ブルーウンがこのキャスト陣に大満足したとか。イギリスのテレビや舞台の俳優さんが多いので、ステイサムのほかはなじみが薄いのですが、その分キャラクターに色がつかずに面白く観ました。知的なナッシュ、切れた殺人犯のワイス、黒人女性警官、卑屈な密告者役まで印象に残ります。犯人は観客にはすぐに明らかになり、追い求める警察官と犯人とのかけひき、追いつ追われつ、を楽しむ作品です。(白)
2011年/イギリス/カラー/97分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
(C) 2010 Blitz Films Limited.
公式 HP >> http://blitz-movie.jp/
監督:三池崇史
原作:滝口康彦(講談社文庫刊「一命」収録「異聞浪人記」より
脚本:山岸きくみ
撮影:北信康
編集:山下健治
衣装:黒澤和子
美術:林田裕至
音楽:坂本龍一
出演:市川海老蔵(津雲半四郎)、瑛太(千々岩求女)、満島ひかり(美穂)、竹中直人(田尻)、役所広司(斉藤勘解由)、中村梅雀(千々岩甚内)、笹野高史(宗祐)
戦国の時代は終わり、世の中に平和が訪れたようにみえた江戸時代初め。 現実は大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家もない浪人たちがあふれていた。 その浪人たちの間で<狂言切腹>が流行った。 裕福な大名の庭先で切腹させてほしいと願い出ると、面倒な大名から職やお金がもらえるという案配なのだ。 そんなある日、名門・井伊家の門前に一人の侍が切腹を願い出た。その侍の名は津雲半四朗。 困惑した家老の斎藤は、「以前、求女という若い侍が同じことを言って尋ねて来たが、 持っている刀は竹光で、のたうちまわりながら死んだ」と話し聞かせた。 だが、半四郎は驚くべき真実を語り、思いもよらない行動をとるのだった。
時代劇初の3D(試写は2D)。見応えあり! 時代劇で何年ぶりかで涙を流した。
竹光での切腹シーンはこれでもかとばかりの痛みが伝わって来た。あの場面は当分忘れそうにない。
浪人武士の貧しさがあんなひどいものだったのだろうか。
井伊家にしてみればやり方のまずさはあったが、お家大事はお互い様。表立ってなんの問題もない処理の仕方だ。
時代劇ではあるが、今の時代と似ている状況だ。会社は簡単にリストラするが個々の家庭の事情や、リストラされた後、一家離散しても、自殺しても会社も生き残るのに精一杯・・・。
何百年たって、時代はどんどん進化しているが、豊かな者、貧しい者の構図は変わらないなとつくづく感じた。
※市川海老蔵さんの声は、ささやくほどの小さい声もきれいな響きがあり、言葉も明瞭だった。うっとりした。(美)
2011年/カラー/シネマスコープ/127分
配給:松竹
(C) 2011映画「一命」製作委員会
★2011年10月15日 全国ロードショー
公式 HP >> http://www.ichimei.jp/
監督:ルバート・ワイアット
脚本・製作:リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー
撮影:アンドリュー・レスニー
編集:コンラッド・バフ、マーク・ゴールドブラット
衣装:レネー・エイプリル
音楽:パトリック・ドイル
出演者:ジェームス・フランコ(ウィル・ロッドマン)、フリーダ・ピント(キャロライン)
ジョン・リスゴー(チャールズ・ロッドマン)ブライアン・コックス(ジョン・ランドン)
トム・フェルトン(ドッジ)アンディ・サーキス(シーザー)
製薬会社に勤める科学者のウィルは、ある日、実験用の猿が驚くべき知能を見せたことに気付いた。 その猿は、アルツハイマーの試薬が投与されていたのだ。ウィルはそれを専門家や上司、同僚に成果を発表した。 しかし、突如、その猿は暴れ出し、やむなく射殺されてしまう。もちろん、上司からは新薬開発の中止を即座に言い渡される。 ところが、射殺された猿が妊娠していて、母体から取り出したばかりの赤ん坊の猿を連れ帰り“シーザー”と名付けて育てる。 シーザーは小さい赤ちゃんの時から、母親から受け継いだ特殊な遺伝子で類まれな知性を持っていたのだ。 もちろん、ウィルとシーザーの間には本物の親子のような絆が生まれていた。
動物ものが好きでないのと、「猿の惑星」という題名だけで、現実離れしたなんだか恐い作品としり込みしていたが、試写が3回あり、観た方の評判がいいので最後の試写日に行った。
ストーリー展開が分かりやすく、猿の生活に引き込まれてしまった。
おっと、ここでは「猿」ではない。「チンパンジー」なのだ。正式には「ヒト科チンパンジー属」に分類される。
高い知能を持って生まれたシーザーと、ウィルの父親(アルツハイマー病でボケや妄想、徘徊が進むので、
研究中の試薬を投与してみるとなんと治ってしまった・・・)の対比がよかった。
彼ら家族同様の信頼関係はしばらく続くが、シーザーの家族への愛が、不幸のはじまりとなってしまう。
チンパンジーの毛並みやしわなどの精巧さは驚いたが、みんな俳優さんで、目以外はデジタル処理で作られている。
質の高い技術で不自然がない。この作品は小学校高学年からご年配の方まで楽しめそうだ。
※ ウィルの開発中のアルツハイマー病の薬、少しで1~2年の効き目があったみたいだから「私の分も持ってきて~」と叫びたくなった!
※ チンパンジーと人間のDNAの違いは1~4パーセントともいわれているから、始めのウィルとシーザーの幸せな3年間も頷ける。
※ ウィルの家全体が活動的なシーザー仕様に設計工夫されていた。このシーンがとても面白い!
(美)
2011年/アメリカ/106分/シネマスコープ
配給:20世紀フォックス映画
(C) 2011 TWENTIETH CENTURY FOX
★2011年10月7日より TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://www.foxmovies.jp/saruwaku/
監督:ロジャー・アラーズ、ロブ・ミンコフ
脚本:アイリーン・メッキ、ジョナサン・ロバーツ、リンダ・ウールヴァートン
オリジナル作曲・編曲:ハンス・ジマー
挿入歌・主題歌:エルトン・ジョン、ティム・ライス
声の出演(日本語吹き替え版):大和田信也(ムファサ)、中崎達也・宮本充(シンバ)、山本純子・ 華村りこ(ナラ)、壤晴彦(スカー)、三ツ矢雄二(ティモン)、小林アトム(プンバァ)、梅津秀行(ザズー)、槐柳二(ラフィキ)、北浜晴子(サラビ)、岡富枝(シェンジ)
アフリカ、サバンナの動物の国プライドランドの王、ライオンのムファサに世継ぎの王子が生まれた。シンバと名づけられ、両親の愛情と教育係のザズーのもと、すくすくと大きくなった。しかし王位を狙っている王弟のスカーは、無邪気なシンバを騙して禁断の谷へと誘い込む。幼馴染のナラと一緒に遊び半分で出かけたシンバはハイエナに追いかけられ、危ないところをムファサに助けられる。ムファサはシンバに命のつながりと、王としての心得を説くのだった。スカーは次にムーの大群の暴走を引き起こし、またもやシンバをわなにかけた。ムファサはシンバを助けたあと、群れの中へ落ちていく。ムファサの死を自分のせいだと思ったシンバは王国を離れ、スカーはハイエナにシンバ殺害を命じ、まんまと王位についた。砂漠で瀕死の状態のシンバを助けたのはミーアキャットのティモンとイボイノシシのプンバァだった。、
1994年に公開されたディズニーアニメーション最大のヒット作『ライオン・キング』の3D版。今回は日本語吹き替え版、3D公開のみ。17年前の記録が今も破られていないディズニーアニメの金字塔とも言える作品。広大なアフリカの自然を背景にシンバの成長、愛と友情、冒険が、楽しい歌とともに描き出されます。ムファサがシンバに語る命の環もまた大人が子どもに伝えたいこと。ミュージカルが世界中でロングランされているのも、どこででもいつの世でも普遍的なテーマが貫かれているからでしょう。お子様と一緒に日本語版を楽しまれた後は、豪華なキャスト吹き替えの英語版を同時発売のブルーレイで堪能してください。(白)
2011年/アメリカ/カラー/89分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)Disney
監督:アクタン・アリム・クバト
脚本:アクタン・アリム・クバト、タリプ・イブライモフ
撮影:ハッサン・キディラリエフ
出演:アクタン・アリム・クバト、タアライカン・アバゾバ、アスカット・スライマノフ
天山山脈のふもとにあるキルギスの小さな村で「明かりやさん」が風車の手入れをしている。彼はアンテナや電気製品の修理や調節をして村人に重宝がられている。電気代の払えない家には、タダで電気が使えるようにちょっとした細工をすることもある。彼のささやかな夢は、風車をたくさん作って村中の電気をまかなうことと、息子を授かること。
穏やかな村の暮らしの中に都会から男がやってくる。ラジオからは、政治が混乱し国が大きく変わるニュースが報じられていた。
キルギスは旧ロシア連邦の共和国のひとつでした。以前は親ロシアな名前、アクタン・アブディカリコフ監督として自伝的な映画を作っていましたが、キルギス人の生みの親、育ての親の名前をひとつずつとってアリム・クバトと改名したそうです。主演俳優をさがしているうちに、自分で演じることになってしまったそうです。誰にも愛されている人の良い「明かりやさん」は監督そのままのようで、外の動きにとまどう純朴な村人を自然体で演じています。美しい山と湖があり、中央アジアのスイスと呼ばれているキルギスの小さな村にも大きな変革の波が押し寄せ、暮らしが変わってゆきそうです。どうか良い方向にと願わずにいられません。(白)
2010年/キルギス=フランス=ドイツ=イタリア=オランダ/カラー/80分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ビターズ・エンド
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/akari/
監督:ソイ・チェン
製作:ジョニー・トー
脚本:ゼトー・カムイエン、ニコル・タン
撮影:フォン・ユエンマン
音楽:ザヴィエル・ジャモー
出演:ルイス・クー(ブレイン)、リッチー・レン(チャン)、ラム・シュー(太っちょ)、ミシェル・イェ(女)、フォン・ツイファン(おやじ)ほか
黒社会の大物が衆人の目前で死んだ。警察は捜査の上、いくつもの偶然がからんだ運の悪い事故として処理する。実はブレインら4人の闇の仕事人たちが依頼を引き受け、周到に練り上げた計画により事故を装って手を下した殺人であった。次の依頼も成功したかに見えたが、すんでのところで事故に遭い失敗してしまう。ブレインはその事故に違和感を覚え、自分たちが逆に狙われているのではと疑うようになる。
『ドッグ・バイト・ドッグ』『軍鶏』など印象的なクライムアクション作品を送り出してきたソイ・チェン監督作品。一昨年第10回フィルメックスで上映され、ようやく一般公開の運びとなりました。冒頭の事故(中国語で“意外”)がうまく作られた殺人であるのにまず驚きます。もちろん疑われるような痕跡は残しません。一つの狂いも許されない計画を練り上げるチームのリーダー、ブレインにルイス・クー。彼らを脅かす謎の男をリッチー・レン。コメディもラブロマンスもこなす二人ですが、このニコリともしない役も良いです。息詰まるような2人の対決が見ものです。今回は製作のジョニー・トー監督の作品の名バイプレイヤー、ラム・シューも毎回いい味を出しています。どこに出てくるのか楽しみな人。(白)
仲間との信頼関係だけで成り立っているような仕事人の「仕事」。それがちょっとしたことの積み重ねから 人間不信になると、人の言葉が信じられなくなり、自分の見たものをその誤解の方に進ませていってしまう。そういう疑心暗鬼になる人間の弱さ、心理を巧みに描いた作品です。音楽を象徴的に使っていないせいか、スクリーンからは香港の街中の雑踏、雨の匂いが感じられ、一瞬ドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥りました。それだけに殺人のシーンは生々しさがあります。主役ブレインを演じるのは、現在の香港映画界で最も主演作品が多いルイス・クー。ソイ・チェン監督は彼の起用を、「ブレインの用心深い部分が、ルイスの寡黙な性格にも通じる」と考えたそうです。(裕)
2008年/香港/カラー/86分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ 宣伝:フリーマン・オフィス
(c)2009 Media Asia Films(BVI)Ltd.All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.accident-igai.net/
監督:若松節朗
脚本:川崎いづみ
原作:東野圭吾
撮影:蔦井孝洋
美術:和田洋
音楽:住友紀人
出演:岸谷五朗(渡部和也)、深田恭子(仲西秋葉)、木村多江(渡部有美子)、石黒賢(新谷)、田中健(部長)、萬田久子(浜崎妙子)、中村雅俊(仲西達彦)
―この恋は甘い地獄・・・―
充実した仕事と、妻と娘のいる暖かい家庭。何の不満もないはずのサラリーマンの渡部和也。「不倫する奴は馬鹿だと思っていた」はずだったが、派遣社員の仲西秋葉に出会ってそんな気持ちが一変する。送っていった秋葉の家は豪邸だったが、そこでは15年前に人殺しがあったのだという。寂しげで謎めいた秋葉に和也は惹かれ、ついに一線を越えてしまった。妻に知られないよう嘘を重ね、秋葉と会う時間を作る和也に、友人の新谷は「奥さんと別れる覚悟はあるのか」と詰問する。
東野圭吾のベストセラー小説の映画化。中堅のサラリーマンが陥る甘い地獄を描いて、深キョンが相手なら落ちてもいい、と思われる諸氏は多いはず。珍しく静かな悪女っぽい雰囲気を漂わせる彼女は、眼鏡がよく似合って、いつもより大人に見えます。うまく立ち回るつもりが、深みにはまってついに離婚まで考える和也。このあたりはよくある展開ですが、ミステリーをからめるのは東野作品だから。しかし、秋葉の心情がもひとつ理解できず。知っているのに知らないふりを続ける奥さん役の木村多江さんが怖くて(ああ、うまいなぁ!)、不倫願望のある男性諸氏、震えがきて踏みとどまることでしょう。(白)
2011年/日本/カラー/129分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:角川映画
(C)2011「夜明けの街で」製作委員会
公式 HP >> http://www.yoakenomachide.jp/
監督:ダニエル・スタム
脚本:ハック・ボトコ、アンドリュー・ガーランド
撮影:ゾルタン・ホンティ
編集:シルパ・カンナ
音楽:ネイサン・バー
出演者:パトリック・ファビアン(コットン・マーカス)、アシュリー・ベル(ネル)、
アイリス・バー(アイリス)、ルイス・ハーサム(ルイス)
ルイジアナ州バトンルージュで悪魔払いの真実を暴く、告白ドキュメンタリーの出演を承諾したコットン・マーカス牧師は、通算48回目の悪魔払いの儀式をするため、撮影隊と共に郊外のある農場を訪れた。 そこで彼らを待っていたのは、想像を絶する悪夢であった。
「悪魔払いは嘘だよ。こんな細工だってするしね」と牧師が種明かししながら、「じゃあ、我が牧師人生、最後の悪魔払いを実況することにするか、どんなインチキするか、悪魔なんていないってとこお見せしないとな」と、二人の撮影隊と共にいく先は、「悪魔祓いをしてくれ」と、牧師のところに来た何通かの手紙のうち、無作為に選んだ一通の封筒。3人が向かったのは、遠くはなれたアイバンヴィット村の農家。
キリスト教原理主義者の農場主の父・ルイスの手紙には「16歳の娘ネルが夜な夜な不審な行動をして、たくさんの家畜が惨殺されている」と書かれていた。
着いてすぐ撮影隊も一緒だということで揉めるが、なんとか承諾させて牧師はいつものように手品のトリックを使い儀式を行う。
彼の体験では悪魔つきは大概は精神的なもので、儀式で暗示をかけるとほとんどが治った。
案の定、ネルも儀式のあとはぐっすり寝てしまう。だが、その後、数々の異様な出来事が起こり、牧師は「こんなはずはない」と悪魔の存在に驚愕するのだった。と、書けるのはここまで・・・。
題名から受ける印象で身構えてたが、なかなか面白い種明かしもあり、試写室で時々笑い声がした。
未公開映画祭の『ジーザス・キャンプ』のキリスト教原理主義者のドキュメンタリーで狂信的な面を知っていたから、この一家も、その周りも・・・と疑ってかかった。最後になるに従い、笑ってなどおれなくなる展開。
これは撮影隊カメラさんの位置から撮ったもののはずだが、カメラマンの目線だけでは説明がつかない(はっきりしない)箇所があった。その点、少し工夫が必要だ。
※ネル役アシュリー・ベル、清純と悪魔の両極面を演じていた。お見事!の一言。(美)
2010年/アメリカ/・グループ、クロックワークス
★2011年10月8日シネマサンシャイン池袋・新宿バルト、他全国ロードショー
公式 HP >> http://www.lastexorcism.jp/
監督:熊澤誓人
脚本:尾崎将也、うえのきみこ
原案:「僕らの歌は弁当屋で生まれた・YELL」(リンダパブリッシャーズ刊)
撮影:金子正人
音楽:御供信弘
主題歌:ステレオポニー「ありがとう」
出演:阿部寛(大城陽)、ミムラ(大城美智子)、桜庭ななみ(比嘉アヤ)、矢野聖人(真喜志ユウヤ)、森崎ウィン(伊野波カイ)、野村周平(仲村ヨシキ)、吉田妙子(大城千代)、ヒガ リノ(ミキ)、前原エリ(タウン誌の記者)、田辺啓太(赤嶺清順)、きゃんひとみ(真喜志愛)ほか
沖縄で弁当屋を営んでいる大城陽は、バンドをやっている生徒たちが練習場所を探しているのを聞き、店のガレージを提供する。騒音が近所迷惑になり、陽は隣の空き地に音の漏れないスタジオを自分で建てることにした。借金をして材料を調達し、周囲から呆れられながらも黙々と作業をする陽を見て、高校生たちが次々と手伝いにやってくる。何事にも真剣で親身になって若者と向き合う陽は「ニイニイ」と慕われていくが、思いがけず病に倒れてしまった。
沖縄本部町でスタジオ“あじさい音楽村”を手作りし、無償で提供した仲宗根陽(なかそねひかる)さんの実話をもとにしたヒューマンドラマです。ここに集まった若者たちが音楽の練習にとどまらず、仲宗根さんから多くのことを学んでいったことがわかります。人との関わりが希薄になったのを憂えるこの「ニイニイ」は、若者たちの可能性を信じ、その夢を応援するために借金までしてスタジオを作りました。仲宗根さんの熱い思いを支え続けた家族もえらい! “あじさい音楽村”から巣立ったガールズデュオのステレオポニーが、仲宗根さんへの思いをこめた主題歌「ありがとう」を歌っています。
映画の企画段階から阿部寛さん(熱い沖縄の男を好演)の主演を楽しみにしていた仲宗根さん、完成を待たずに亡くなられてしまいましたが、タイトルのように天国からエールを送っているにちがいありません。(白)
2011年/日本/カラー/114分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(c) 2011『天国からのエール』製作委員会
公式 HP >> http://www.yell-movie.com/
監督:砂田麻美
製作・プロデューサー:是枝裕和
撮影:砂田麻美
音楽・主題歌:ハナレグミ
出演:砂田智昭
高度成長期を支えて働き続けた熱血営業マンだった砂田智昭さん。67歳で退職し第2の人生のスタートを切って2年目、健康診断で胃がんが見つかる。すでに手術不可能な第4ステージまで進んでいた。「段取り命」の彼はこれを自分の一大プロジェクトとし、自分の人生を最後までプロデュースすべく行動を開始。まず「エンディング・ノート」を作った。娘である砂田麻美監督はそんな父親の姿を追い、フィルムに残していく。
ドキュメンタリーはなにより登場人物に左右されると毎回観るたびに思います。この主人公である砂田さんが素晴らしい!会社にいたら上司にいてほしい。父親であればほんとに楽しく、頼もしいでしょう。夫であれば、仕事人間でこちらの出る幕がなくちょっと寂しいかもしれないけど、苦労は少なそうです。段取りが苦手で無駄なことばかりに時間を費やしている私は、このエンディング・ノートに感心。自分にもそのうち訪れる最後のときには、この半分でも達成できているようにしたいものです。5人に1人はがんで亡くなっているという今、私の父も発見から1年足らずで逝ってしまいました。冒頭のはじけるような笑顔からしだいに痩せていく砂田さんの姿に、当時を思い出して泣けてしまいました。教会を訪れ、自分の葬儀の段取りまでした砂田さん「上手に死ねるでしょうか」と問うていましたが、上手すぎるほどでしたよ。ハンカチ必携ですが、さわやかでした。(白)
2011年/日本/カラー/89分/
配給:ビターズ・エンド
(c) 2011「エンディングノート」製作委員会
公式 HP >> http://www.ending-note.com/
監督:ナタリア・スミルノフ
脚本:ナタリア・スミルノフ
撮影:バルバラ・アルバレス
出演者:マリア・ネネット(マリア・デル・カルメン)、ガブリエル・ゴイティ(ファン・マリアの夫)、アルトゥーロ・ゴッツ(ロベルト)
アルゼンチンの首都ヴエノスアイレスに住む専業主婦のマリアは、50歳の誕生日にもらったプレゼントがきっかけで人生が一変する。 それまで気づかなかったジグソーパズルを完成させる才能に気づいてしまったのだ。 彼女は大富豪の独身紳士ロベルトに才能を認められ、パズルの世界選手権を目指すことに……。
料理を作るシーンから始まるこの作品は、手馴れた様子が伺えるが、なぜか楽しんでやっているっていうより、やらなくちゃという手つきだったので、違和感を覚えた。隣の広間では親戚が楽しそうに、次々テーブルに運び込まれるマリアの料理を食べている。
マリアは席についている暇もなく、手早く順序よく台所と広間を行き来する。
「あっ、ケーキを出さなくちゃ、ちょっと手伝って?」と息子に頼む。そこではじめてマリアの誕生日だと気づかせる・・・。
この始まりのシーン5,6分で主婦マリアの立ち位置がわかる見事な流れ方だった。
50歳の誕生パーティが終わって、食べ散らかした台所をもくもくと片付けるマリア。ふと一休みと、いただいたプレゼントに目をやると、ありきたりのプレゼントの溢れる中に、ジグソーパズルがあった。そこからマリアの人生が一変する。
それまで気づかなかったジグソーパズルの才能に目覚め、家族にちょっぴり嘘をつきながら、自分だけの新しい世界にのめりこんでいく。つつしみ深い表情の時も、新しい世界に踏み出し、まるで少女のように感動する時も、この女優さんのさまざまな顔の動きに魅せられてしまった。最後、彼女の人生の決断は、遠方からのカメラだけで、表情は写し撮っていなかったが、その終わり方が憎いほど上手かった。
※台詞の中で1000ピースを一日で仕上げると言っていたが 、いっとき凝っていた私はがむしゃらにやって一週間はかかった。
※世界パズル選手権は今年11月にハンガリーで開催。去年はポーランドで日本の方が個人優勝された。
2010年/アルゼンチン・フランス合作/90分/ドルビーデジタル
配給:アルシネテラン
★2011年10月1日より TOHOシネマズシャンテ他にて全国順次公開
公式 HP >> http://www.shiawase-puzzle.com/
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:ニコラス・スパークス「きみを想う夜空に」(エクスナレッジ刊)
脚本:ジェイミー・リンデン
撮影:テリー・ステイシー
音楽:デボラ・ルーリー
出演:チャニング・テイタム(ジョン・タイリー)、アマンダ・サイフリッド(サヴァナ・リン・カーティス)、ヘンリー・トーマス(ティム)、リチャード・ジェンキンス(ジョンの父)
米軍特殊部隊の兵士ジョンは、休暇で帰省中に女子大生のサヴァナと出会う。またたくまに恋に落ち、2週間の休暇はあっというまに過ぎる。任地へと戻ったジョンにサヴァナからの手紙が届き始め、離れてはいても心はつながっていると感じていた。短い休暇を利用して帰省したジョンは、人付き合いの苦手な父がサヴァナとは話せるのに気づく。将来を約束して新しい任務についたころ、アメリカを揺るがす事件が起き2人の運命も大きく変わっていく。
『きみに読む物語』の原作者ニコラス・スパークスのベストセラー「きみを想う夜空に」を映画化。
遠距離恋愛の2人を演じるのは『G.I.ジョー』『陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル』のチャニング・テイタムと、『マンマ・ミーア!』『ジュリエットからの手紙』『赤ずきん』と主演作品が続いているアマンダ・サイフリッド。『ショコラ』『HACHI 約束の犬』のラッセ・ハルストレム監督がメガホンをとっています。今ほどネットも携帯も進歩していない頃、勤務地を明かせないジョンとの手紙のやりとりはかなり特別。予想通り大小の障害が2人の前に立ちはだかり、王道の恋愛ストーリーが揺れつつ進んでいきます。こんな形で人生が変わった人もいただろうね、といまさらながら思います。ジョンと父親とのシーンにじんとしました。(白)
2010年/アメリカ/カラー/108分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
(C)2010 DEAR JOHN, LLC. All rights reserved.
公式 HP >> http://www.cinemacafe.net/official/shinkimi/top.html/
>> 特別記事 『親愛なるきみへ』 ラッセ・ハルストレム監督インタビュー
監督:前田哲
原作:土山しげる 原作協力:大西祥平
脚本:羽原大介、前田哲
撮影:谷川創平
出演:永岡佑(栗原健太/新入り)、勝村政信(テキ屋の南)、落合モトキ(相田)、ぎたろー(チャンコ)、麿赤兒(八戸)、木村文乃 田畑智子、木下ほうか、木野花、内田慈、田中要次、でんでん
とある刑務所の204房に5人目が入ってきた。傷害罪で3年の栗原健太はさっそく「新入り」と呼ばれた。テキ屋の南、元ホストの相田、元力士でプロレスラーのチャンコ、極道だと思われているが実は泥棒の八戸、はぐれものたちは規則正しい刑務所生活をまじめに送っている。楽しみにしているのはやはり食べること、特に一番のごちそうである正月のおせち料理にかける期待は大きい。暮れが近づき、おせちの中から好きなもの取る順番を決めるため、204房恒例の戦いが始まった。今まで生きた中で一番うまい!と思った食べ物の話をして、聞き手がゴクリとつばを飲み込んだら1点もらえるのだ。最高得点は誰に??
「塀の中」ネタは、自分は縁がない(あってはいけません)世界と思うせいか、いつも面白く観ています。『刑務所の中』(2002年/崔洋一監督)という傑作もありました。むちゃくちゃ個性的な俳優ぞろいだったそちらより少し小粒な感じの本作は、それぞれの「思い出めし」「勝負めし」にスポットを当てています。画面に見入る観客も自分の「思い出めし」がなんだったか、つい振り返ってしまうでしょう。男性漫画が原作のせいか下ネタも多いです。浅草の「したまちコメディ映画祭in台東」にてひとあし早く上映(9月19日10:00より浅草公会堂)します。(白)
2011年/日本/カラー/108分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
(C)2011『極道めし』製作委員会(C)土山しげる/双葉社
公式 HP >> http://gokumeshi-movie.com/
監督・脚本・製作:ポール・ハギス
製作総指揮:アニエス・メントレ
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
音楽:ポール・ハギス
出演:ラッセル・クロウ(ジョン・ブレナン)、エリザベス・バンクス(ララ・ブレナン)、ブライアン・デネヒー(ジョージ・ブレナン)、レニー・ジェームズ(ナブルシ警部補)、オリヴィア・ワイルド(ニコール)、タイ・シンプキンス(ルーク)、リーアム・ニーソン(デイモン・ペニントン)
家族3人ごく平凡に暮らしてきた大学教授ジョン、しかしその生活は殺人容疑で妻ララが逮捕されて一変する。ララと不仲の上司が殺され、残された証拠は不利なものばかり。ジョンは子育てをしながらララの無実を信じて奔走するが、容疑は覆らず刑は確定してしまう。絶望したララは獄中で自殺を図り、ジョンは考えぬいた末彼女を取り戻すためある決断をする。
フランス映画『すべて彼女のために』(2008年/フレッド・カヴァイエ監督)を、ポール・ハギス監督、ラッセル・クロウ主演でリメイクしたサスペンス・アクション。こんなに簡単に殺人罪が確定してしまうのか、と唖然。「疑わしきは被告人の利益に」ではなかったのか、灰色は黒なのね…というか、これは裁判が目玉ではなく、妻を取り戻すために夫が命がけで挑むストーリー。ジョンの奪還計画が壁一面に貼られますが(これはよく見るシーン)、どうしてもドン臭くみえるジョンがいったいこの計画通りにできるのか!?とハラハラしてしまいます。リーアム・ニーソンはどんな役割を果たすのかは、見てのお楽しみ。(白)
2010年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
(C)2010 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://threedays.gaga.ne.jp/
監督:ジョン・ウェルズ
脚本:ジョン・ウェルズ
撮影:ロジャーディーキンズ
編集:ロバート・フレイゼン
音楽:アーロン・ジグマン
出演者 ベン・アフレック(ボビー・ウォーカー)、トミー・リー・ジョーンズ(ジーン・マクラリー)、クリス・クーパー(フィル・ウッドワード)、ケヴィン・コスナー(ジャック・ドーラン)
ボビーはボストンに本社がある総合商社の販売部長。年収12万ドル、愛車はポルシェ、趣味はゴルフ。 彼は、そんな成功者のライフスタイルを手に入れるため必死で働いてきた。 だが、リーマン・ショック後の不景気で、突然リストラ宣告される。 思いもかけない出来事だったが、再就職に向かってスタートを切らざるをえないボビー。 思っていた以上に現実は厳しく、その苦境はどん底へ向かっていく・・・。
「思いがけない拾い物作品!」なんて言ったら、4人のアカデミー賞スター様たちに失礼だが、最初の浮かんだ感想がこれだった。
ベン・アフレックの家族、トミー・リー・ジョーンズの夫婦関係、クリス・クーパーの選択、
そして折り合いのあまりよくないボビーの義兄ケヴィン・コスナーの人情味・・・。
自分の人生にとっていちばん大切なものは何なのか?をじっくり考えさせられた作品。
毎年ベストテンで、ベスト・カップル賞を選んでいるが、ボビー(ベン・アフレック)の夫婦が第一候補。
ボビーの家族全員にもなにかあげたいから、ベスト・ファミリー賞もつくらなきゃ!
※ 試写室で観た方が「身近に失職したのがいるから、身につまされた・・・」
「ケヴィン・コスナー、味があったなぁ~」とつぶやいていた。(美)
2010年/アメリカ/ドルビーデジタル/104分
配給:日活
(C) 2010-JOHN WELLS PRODUCTIONS
★2011年9月23日より ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次ロードショー
公式 HP >> http://companymen-movie.com/
監督:大根仁
脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ「モテキ」講談社イブニングKC
撮影:宮元亘
音楽:岩崎太整
出演者:森山未來(藤本幸世)、長澤まさみ(松尾みゆき)、麻生久美子(桝本るみ子)、仲里依紗(愛)真木よう子(唐木素子)
藤本幸世(31歳)。金なし夢なし彼女なし。ニュースサイトのライターとして勤め始めたが、恋愛の方はまるで縁がない。新しい出会いも無くさびしい日々を送っていたが、ある日突然、異性にモテまくる奇跡のシーズン「モテキ」が訪れた!
軽そうな映画と観ているうちに、どんどん気持ちが入りこんで行った。なにもかもが中途半端な彼だが、
好きと決めた彼女に、一言はっきりと「あなたでは成長できない!」と言われる。
上昇思考の彼女には不倫でもいいから成長する男が必要なんだろうが、そこまで言われても、
もう一度トライする意気地なし! 根性なし! 男なんて、おばさんにはわからないが・・・。
女の子4人、案外見た目と違うので、誰もが無理しながら、懸命に幸せ探ししているんだなぁと思い応援したくなった。
主役の森山未來さん、ぴったりの役柄だった。(美)
2011年/118分/ドルビーデジタル
配給:東宝
★2011年9月23日より 全国東宝系にてロードショー公開
公式 HP >> http://www.moteki-movie.jp/
監督・企画:坂田雅子
製作:山上徹二郎
撮影:ビル・メガロス、山田武典、坂田雅子、ロバート・シーモン
音楽:グエン・タイン・トゥン、難波正司
ナレーション:加藤登紀子
2007年に製作されたドキュメンタリー『花はどこへいった』の続編ともいえる作品。フォトジャーナリストであった夫は枯葉剤が原因と思われるがんで亡くなった。10代のときにベトナム戦争に送られて、当時人体に影響はないと言われていた枯葉剤をあびている。ベトナムへ飛び、後遺症に苦しむ人々を取材した。さらに時がたって、アメリカの帰還兵の子どもたちや孫にまでその影響が出ていることがわかる。
帰還兵の娘のヘザーは右足と手の指が欠損して生まれた。母親となった彼女は、アメリカで枯葉剤の被害者と連絡をとり、父が戦ったベトナムを訪ねて枯葉剤による障がいをもって生まれた子どもたちと会う。
1962年にレイチェル・カーソンが書いた「沈黙の春」は、人間の作り出した化学物質が生態系に大きな影響を与え、動植物ばかりでなく人間の命も脅かすと警告した。本書は農薬の危険性を知らせDDTが禁止されるきっかけとなりました。その後のベトナム戦争で大量に散布された枯葉剤には猛毒のダイオキシンが含まれ、戦後も多くの被害者が発生しています。前作で夫の死をきっかけに枯葉剤を追った坂田監督は、まだ足りないことがあると思われたそうです。アメリカでヘザーさんに出会い、彼女のベトナム訪問をフィルムにおさめました。やりきれない映像の中にあってヘザーさんの明るい笑顔に救われます。自分の状況を受け入れ、前向きに活動している姿はほんとに頼もしく、この人がいてくれて良かったと思います。障がい児を育てるベトナムの母親たちのつつましいことにも驚きます。
普段眼にすることのない世界を知り、自分たちがしなくてはならないこと、できることを考えるきっかけになる作品です。あいち国際女性映画祭2011で観客賞を受賞しました。(白)
2011年/日本/カラー/87分/HDV
配給:シグロ
★9月24日(土)~10月21日(金)岩波ホールにて上映
初日9/24(土)11:30の回には坂田雅子監督の舞台挨拶予定
、
9/27(火)11:30の回には加藤登紀子さんのトーク予定
公式 HP >> http://cine.co.jp/chinmoku_haru/
監督・脚本:マチュー・アマルリック
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
音楽:アレクシア・クリスプ=ジョーンズ
出演:マチュー・アマルリック(ジョアキム・ザンド)、ミランダ・コルクラシュ(ミミ・ルー・ムー)、スザンヌ・ラムジー(キトゥン・オン・ザ・キーズ)、リンダ・マラシー(ダディー・マティーニ)
トラブルを起こしてショービジネス業界がら干されてしまったプロジューサーのジョアキムは、家族、愛人、友人を捨て、アメリカに渡った。数年後、アメリカからショーダンサーのグループ「ニューバーレスク」を引き連れて、フランス国内をまわるが、業界人の横やりが入り、パリの公演がつぶれてしまう。彼はなんとかパリ公演を実現しようとするが・・・。
渋くて、落ちぶれた雰囲気が堪らない・・・これぞ大人の映画!ジョアキム役のマチュー・アマルリックは『潜水服は蝶の夢を見る』で有名な個性派男優さん。ジョアキムの人生のように、行き当たりばったりの展開だが、ガソリンスタンドの女性の会話、胸を見せようとするスーパーのレジの女性の逆切れなど、忘れがたいシーンが満載。
特に気に入ったのは、店がサービスで流している音楽を「音を消してくれないか」とか「できないなら音量を下げて」と店の人に頼んでいたシーン。実は私も思い余って、時々言うことがあるので「同類だ!」と嬉しかった。
もう一つ、ダンサーたちのユーモラスなショーが素晴らしい!化粧が濃く、あけすけな物言いをする女性たちだが、身体全体から溢れ出る強さと美しさに惚れ惚れしてしまった。昨年のカンヌで最優秀監督賞を取っているが、三大映画祭作品と比べるとその差(公開されるか、されないかの)を感じた。
(美)
2010年/フランス/カラー/111分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:マジックアワー、IMJエンタテインメント
公式 HP >> http://www.ontour.jp/
会期:2011年9月16日(金)~25日(日)
主要会場: JR博多シティ 9階 T・ジョイ博多、JR九州ホール ★JR博多駅直結!
主催:アジアフォーカス・福岡国際映画祭実行委員会、福岡市
上映作品: アジア13か国・地域 全32作品
(協賛企画を含めると、15か国・地域 約171作品)
今年で21年目を迎えるアジアフォーカス。これまで天神界隈で開催されてきましたが、今年は九州新幹線全線開通とともに誕生したJR博多シティ内のT・ジョイ博多を会場に開催されます。また、福岡市総合図書館や福岡アジア美術館などでも共催事業が予定されております。アジアフォーカスでしか観られない作品も多数! また、アジア各国からのゲストとのQ&Aや、ロビーでの交流もアジアフォーカスでの楽しみです。また、新料金設定として、中高大学生、アジアの民族衣装着用の方は、500 円で映画が観られます。ぜひ民族衣装でお出かけください!
【上映作品】
◆マジョリティ /Majority /トルコ /監督:セレン・ユジェ
◆ナデルとシミン(仮題) / Nader and Simin, A Separation /イラン/監督:アスガー・ファルハディ *ベルリン国際映画祭2011金熊賞受賞
◆ゲシェル~ぎりぎり日記 / Gesher /イラン/監督:ワヒド・ワキリファー
◆カシミールの秋 / Autumn /インド/監督:アーミル・バシール
◆妻は、はるか日本に / The Japanese Wife /インド/監督:アバルナ・セン
◆僕はジダン/ Little Zizou /インド/監督:スーニー・ターラーブルワーラー
『僕はジダン』インド・2007年
◆恋するリトルコメディアン / The Little Comedian /タイ/監督:ウィッタヤー・トーンユーヨン、メート・タラトーン
『恋するリトルコメディアン』タイ・2010年
◆レッド・イーグル / The Red Eagle /タイ/監督:ウイシット・サーサナティアン
◆タンロンの歌姫 / The Fate of A Songstress in Thang Long/ベトナム/監督:ダオ・バー・ソン
『タンロンの歌姫』ベトナム・2010年
◆すばらしき大世界 / It's A Great, Great World/シンガポール/監督:ケルビン・トン
『すばらしき大世界』シンガポール・2010年
◆趙夫人の地獄鍋 / Claypot Curry Killers/マレーシア/監督:ジェームス・リー
◆車の影に / Chassis/フィリピン/監督:アドルフォ・ボリナガ・アリックス Jr.
◆鋼のピアノ / The Piano in a Factory/中国/監督:チャン・メン *東京国際映画祭2010で上映
◆遠い帰郷 / Return Ticket/ 中国/監督:トン・ヨンシン
◆陽に灼けた道 / The Sun Beaten Path/中国/監督:ソンタルジャ
◆冬休みの情景 / Winter Vacation/中国/監督:リー・ホンチー
◆ピノイ・サンデー / Pinoy Sunday/台湾・日本・フィリピン・フランス/監督:ウィ・ディン・ホー *NHKアジアフィルムフェスティバル2010で上映
◆台北カフェ・ストーリー / Taipei Exchanges/台湾/監督:シアオ・ヤーチュアン *東京国際映画祭2010で上映
◆浄土アニャン / Anyang, Paradise City/韓国/監督:パク・チャンギョン
◆Bleak Night(原題)(※「凍てつく夜に」より改題)/ Bleak Night/韓国/監督:ユン・ソンヒョン
◆歓待 / Hospitalite'/日本/監督:深田 晃司
公式 HP >> http://www.focus-on-asia.com/
期日:2011年9月16日(金)~19日(月・祝)
会場:【浅草地区】 「浅草公会堂」/「浅草中映劇場」
【上野地区】 「上野恩賜公園野外ステージ(不忍池水上音楽堂)」/「上野東急2」
http://www.shitacome.jp/2011/index.shtml
チケットは8月13日よりチケットぴあで発売
監督・脚本・製作:ロバート・ロドリゲス
撮影:ロバート・ロドリゲス、ジミー・リンゼイ
編集:ダン・ジマーマン
音楽:ロバート・ロドリゲス、カール・シール
出演:ジェシカ・アルバ(マリッサ・コルテス=ウィルソン)、ジョエル・マクヘイル(ウィルバー・ウィルソン)、 ローワン・ブランチャード(レベッカ)、メイソン・クック(セシル)、ジェレミー・ピヴェン(タイムキーパー)、ダニー・トレホ(イサドール・マチェッティ)、アレクサ・ヴェガ(カルメン・コルテス)、ダリル・サバラ(ジュニ・コルテス)、リッキー・ジャーヴェイス(アルゴノートの声)
レベッカとセシルは何かにつけ競争ばかりしている双子の姉弟。テレビ俳優のパパの再婚相手のマリッサは赤ちゃんを産んで妹が増えた。双子はマリッサがインテリア・コーディネイターだというのを信じていない。何か秘密があると疑っているが、その勘大当たり!実は出産直前まで仕事をしていた敏腕スパイだったのだ。仲良くしようとマリッサがレベッカにプレゼントした赤い宝石のペンダントを狙って、悪者たちが襲ってきた。ペンダントの宝石は時空をあやつる「クロノスサファイア」というお宝だった。このままでは世界中の時間がどんどん早く進み、最後には消滅してしまう。マリッサは双子に真実を打ち明け、2人はスパイ・キッズとしてタイムキーパーを阻止するミッションに挑むことになった。
2001~2003年に毎年製作された『スパイ・キッズ』シリーズの第4作。3Dならぬ4Dとあるのは、通常の画面が立体に見える3Dに加え、匂いも飛び出すから。といっても画面から匂ってくるわけではありません。入場した時に配られる1~8の番号が印刷されたカードに匂いの素が閉じ込められていて、画面に番号が点滅したら、カードにある番号をこすります。するとシーンに関わる匂いが~!家族同伴の試写に5歳のチビちゃん連れで行ってきて、番号が出るたびにきゃ~♪とこすって楽しみました。スパイ・グッズを得て活躍する子どもたちのうちセシルは耳の聞こえない男の子、両耳に補聴器を装着しています。うるさい姉の文句は調整して聞こえなくする場面がありました。ハンディとしては描いていなくて、いい感じでした。シリーズ1~3でスパイ・キッズとして主演していたアレクサ・ヴェガ(カルメン・コルテス)、ダリル・サバラ(ジュニ・コルテス)も成長した姿で登場します。(白)
2011年/アメリカ/カラー/89分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:松竹、アスミック・エース
(c)SPY KIDS 4 SPV, LLC.
公式 HP >> http://sk4d.com/
監督:アンドリュー・ラウ
脚本:ゴードン・チャン、チェン・チーシン
撮影:アンドリュー・ラウ、ン・マンチン
アクション監督:ドニー・イェン
音楽:コンフォート・チャン
出演:ドニー・イェン(チェン・ジェン)、スー・チー(キキ)、アンソニー・ウォン(リウ・ユティエン)、ホァン・ボー(ホアン警部)、ショーン・ユー(曾将軍)、木幡竜(力石大佐)、倉田保昭(力石剛)、AKIRA(日本軍人佐々木)ほか
1925年、列強の思惑が入り乱れ、不穏な空気のただよう上海。チェン・ジェンは、ヨーロッパ戦線でともに戦い、戦死した友人になりすまし、レジスタンス活動をしていた。ナイトクラブ「カサブランカ」を訪れ、クラブの経営者リウ・ユティエンに接近し懐に飛び込むことに成功する。裏の世界の権力者でもあるリウはクラブ歌手のキキを愛人としていたが、チェンは美しくどこか謎めいたキキにひかれていく。そんな折、日本軍が反日中国人の処刑リストを発表する。
ブルース・リーの名作『ドラゴン 怒りの鉄拳』(1971年)から全てが始まったと言っても言い過ぎではないくらい、この後次々とアクション映画が作られました。主人公のチェン・ジェン(陳真)は、実在した武術家の弟子という設定。今回チェン・ジェンを演じるドニー・イェンは出演作が目白押しの香港きっての人気スター。その切れの良いアクションばかりでなく、うちに秘めた思いも表現できる俳優として日本でも新作を心待ちにしているファンが多いです。スー・チーとのロマンスあり、日本軍との戦いあり、ヌードで痛めつけられるシーンありと見逃せません。日本が敵の時代なので憎まれる居心地悪さはあるものの、ブルース・リーを敬愛するドニー・イェンがたっぷり堪能できる作品です。(白)
2010年/中国/カラー/105分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
配給:ツイン 配給協力:太秦
(C)2010 Media Asia Films (BVI) Ltd. Beijing Enlight Pictures Ltd. All Rights Reserved
公式 HP >> http://www.ikarinotekken.com/
監督:田中重幸
脚本:大隅充
撮影:本吉修
音楽:仙石幸太郎
美術:三輪敏雄、林隆
出演:明日待子、中村公彦、三崎千恵子、野末陳平、中島孝、楠トシエ、築地容子、森川時久、大空千尋、本庄彗一郎、藤枝利民、小峰葉子、宮里明見、奈良典子、小澤公平、ラサール石井
1931年(昭和6年)の暮れ、新宿3丁目に劇場「ムーランルージュ新宿座」が開館した。浅草・玉木座で支配人をしていた佐々木千里がたちあげ、この後戦争をはさんで20年間興行を続ける。オリジナルの軽演劇とレビューの4本立てで、ここから有島一郎、望月優子、明日待子、森繁久弥、三崎千恵子、由利徹ら多くの名優が巣立っていった。閉館してから50年、当時を知る数少ない関係者を訪ね、貴重な証言や資料などで構成されたドキュメンタリー。
この映画で初めて「ムーランルージュ新宿座」を知りました。同じころにアチャラカ喜劇で賑わっていた浅草が今も多くの俳優・芸人さんを輩出しているのと違って、閉館して長くたったせいでしょう。このムーラン・ルージュで舞台美術を担当し、閉館後松竹・日活で数々の作品の美術を手がけた中村公彦氏がいます。この方を取材するところから始まりますが、2010年7月に94歳で亡くなられます。頓挫してしまうのかと危ぶまれたころ、かつてムーランの女優だった大空千尋さんを知り、それから次々と関係者をたどることができたそうです。当時のアイドル女優であった明日待子さんが今もお元気で、お年を感じさせない姿を見せたのには驚きました。かつての女優さんたちが三崎千恵子さんを訪ねての昔話もあり、よく間に合ってくれましたという感ひとしおです。(白)
9月18日(日)13:30~16:30
新宿歴史博物館2F講堂にて〈ムーランルージュ新宿座シンポジウム〉というムーラン関係者と明日待子さんを囲んでのトークショーが行われます。
お問い合わせはこちら→http://t.co/QawCDXO
2011年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:アルゴピクチャーズ
(C)幻野プロダクション
公式 HP >> http://shinjukuza.com/
監督:ジョン・カーペンター
脚本:マイケル・ラスムッセン、ショーン・ラスムッセン
出演:アンバー・ハード(クリステン)、メイミー・ガマー(エミリー)、ダニエル・パナベイカー(サラ)、ローラ=リー(ゾーイ)、リンジー・フォンセカ(アイリス)
舞台は60年代の精神病院。20歳のクリステンは身に覚えのない放火の罪で精神病棟に送られる。 同年代の少女ばかりを収容する奥の病棟に隔離された。 クリステンは、その夜から見えない人の気配を感じ、いわれのない不安を抱く。 同じ病棟には、ボロボロのぬいぐるみを不安そうに抱くゾーイ、美しく華やかなサラ、絵を描くのが好きなアイリス、歌が得意なエミリーの4人がいた。 だが、自分は彼女たちとは違うと、必死の思いで病棟から逃げようとするが・・・。
なぁ~だ、そういうことか!と最後に思うが、それにしてもこんなに <その世界>は感覚的にクリアーなの?と思ってしまう。
ネタばれになるからこれ以上言えないが…最後の一瞬まで驚かせてくれた作品。
なにか非常に辛いことが重ならないとこうはならない。どういう生活でどう育てられたか知りたいところだ。
最後にちらっと出てくる常識的で温厚そうなご両親が、不気味に思えてくる・・・後から怖くなる作品。
※4月に公開された『エンジェル・ウォーズ』(これは財産目当てに精神病院に入れられる)によく似た作品。(美)
2011年/アメリカ/89分/スコープサイズ/R-15
配給:ショウゲート
★2011年9月17日 シネパトス銀座にて公開 順次全国公開
監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー
原作・脚本:ポール・ヘンゲ
撮影:ペーター・フォン・ハラー
音楽:マシアス・ウェバー
出演:モーリッツ・ブライブトロイ(ヴィクトル・カウフマン)、ゲオルク・フリードリヒ(ルディ・スメカル)、 ウーズラ・シュトラウス(レナ)、マルト・ケラー(ハンナ・カウフマン)ほか
第2次大戦下のオーストリア、ウィーン。ユダヤ人の画商一族カウフマン家の長男ヴィクトルは、子どものころからともに育ったルディに裏切られ、所有していたミケランジェロの絵をナチスに奪われてしまった。ルディはナチスでの昇進をもくろんでいたのだ。カウフマン家はみな収容所に送られ、ヴィクトルは恋人のレナに後を託す。ナチスは奪った絵をイタリアとの交渉材料にしようとするが、贋作であることが判明してナチスの面子は丸つぶれとなる。戦況を左右するほどの大きな交渉に失敗し、ナチスは躍起になって本物を探すが、隠したカウフマンはすでに収容所で死亡。息子のルディだけが父親から謎のような言葉を残されていた。
ナチスとユダヤ人の映画といえば、悲惨な収容所の話がメインになることが多いのですが、この作品はそうではありません。ミケランジェロの絵画をめぐっての、ナチスとユダヤ人画商の息子の虚虚実実のかけひきがみどころです。泣かずにすんだナチスがらみの映画は初めてでした。ヴォルフガング・ムルンベルガー監督は日本での公開作品こそないものの(映画祭での上映のみ)、本国では期待される俊英監督。『ヒトラーの贋札』のヨゼフ・アイヒホルツァーが製作にあたっています。
モーリッツ・ブライブトロイは逆境にあっても、めげることのないヴィクトルを余裕とユーモアを持って演じていますし、脇を固める俳優も良いです。爽快なラストまで、わくわくしながら楽しめます。(白)
2009年/オーストリア/カラー/106分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス
公式 HP >> http://code-m.jp/
原作:竹原慎二・落合裕介「タナトス~むしけらの拳~」(小学館ヤングサンデーコミックス刊)
監督・脚本・編集:城定秀夫
製作:山田浩貴、林瑞峰、久保和明、長田安正、小浜圭太郎、白鳥久男、塩月隆史
企画協力:木暮義隆(小学館)
協力:小学館
制作プロダクション:レオーネ
主題歌:「愛のまま永遠に」(徳山秀典)
出演:徳山秀典(藤原陸)、佐藤祐基(棚夫木克己)、古川雄大(宮本)、大口兼悟(須藤)、渋川清彦(メガトン山本)、平愛梨(千尋)、升毅(西田会長)、秋本奈緒美(克己の母親)、梅沢富美男(運送会社社長)、特別出演:竹原慎二、ガッツ石松、輪島功一、レパード玉熊、佐藤修、薬師寺保栄
暴走族同士のケンカの助っ人を生業としている陸は、孤独で自閉症気味な不良少年。ある日、陸は、先天性の病でボクシングを続けられなくなったボクサー・棚夫木にケンカを売り、一発の拳でノックアウトされてしまう。今までケンカに負けたことのなかった陸は、棚夫木にリベンジするために彼の所属する西田ボクシングジムに乗り込むが、ボクシングの洗礼を受けながらもその魅力にとりつかれる。そして運送会社で働きながらジムに通い始め、周りの人々とのふれあいの中で当たり前の人としての生活や感情を取り戻していく陸。だが、西田会長が日本ではプロデビューできない棚夫木に、メキシコでのデビュー話を持ちかけたことから陸は反発し、ジムを追放されてしまう。陸の未来は?
元WBA世界ミドル級チャンピオン・竹原慎二さん原案の人気コミックの映画化で、竹原さんを始め、ガッツ石松さんや輪島功一さんら歴代ボクシングチャンピオンも特別出演しています。
陸を演じた徳山秀典さんはボクシング経験者でもあり、過酷なトレーニングで肉体美を作り上げたそうです。クライマックスにはボクシングの聖地・後楽園ホールでの因縁の闘いという見どころもあります。そして陸の不良少年時代の狂犬のような「眼」は特筆すべきもの。徳山さんの俳優としての演技力を超えた殺気を感じました。ボクシングが題材なのでどうしてもボクシングに目が行きがちですが、人は人で変わることができると教えてくれる、心優しい気持ちになれる作品です。(裕)
2011年/日本/101分/カラー/HD
配給・宣伝:ユナイテッドエンタテインメント
★9月10日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー、
10月1日より名古屋・シネマスコーレにて、
10月8日より大阪・シネマート心斎橋にて他全国順次公開!
公式 HP >> http://www.thanatos-movie.com
監督:橋本一
原作:東直己 ススキノ探偵シリーズ「バーにかかってきた電話」(ハヤカワ文庫)
脚本:古沢良太、須藤泰司
音楽:池頼広
出演者:大泉洋(探偵)、松田龍平(高田)、小雪(沙織・霧島敏夫の妻)、西田敏行(霧島敏夫・霧島グループ社長)
札幌ススキノの探偵。と言っも「なんでも屋」みたいなもの。 北大農学部のグータラ助手&俺の運転手の高田と共に、何かと騒々しい毎日を送っている。 携帯などは持ってなく、毎夜通っているBARで依頼の電話を待っている。 そこへ“コンドウキョウコ”と名乗る女から依頼の電話が入る。 職業柄、危険の匂いには敏感なはずだが、簡単な依頼だとつい引き受けた。 だがその直後に拉致され、半殺しの目に遭ってしまう。怒りが収まらぬ探偵の元に、再び“コンドウキョウコ”から電話。 だが、なんの因果か、その依頼も引き受け、知らぬ間に事態の核心に触れていく・・・。
札幌の夜景を堪能した。カメラがとても懐かしい色合いを醸し出していた。
が、景色ばかりに見とれていたわけではない。
主役・大泉洋のひょうきん&真面目顔、助手・松田龍平のやる気ない&あったま(頭)良い!のコンビがいい。
人気度から言えば、この2人を反対にすべきところだが、そこが心憎いほどぴったりしている。
飽きさせない展開で、暑さを忘れて北海道に行った気分だが、
たった一つ「もっと、依頼者の声をしっかりお聞きなさい」といいたくなった。
声は顔より印象深いもの。始めてならばともかく、二度、三度と聞いていて、
探偵ならもっと耳くそほじくって! 修行が足りん! と言いたい。
※ カルメン・マキが歌う ♪「時計を止めて」は久しぶりに心に響く歌だった。(美)
2011年/日本/125分
配給:東映
(c)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
★2011年9月10日より 東映系劇場にて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.tantei-bar.com/
出演:浜崎あゆみ
2010年全国アリーナツアーの特別公演「ayumi hamasaki Rock'n'Roll Circus Tour FINAL ~7days Special~」を3Dデジタルシネマ化。
3Dシネマに一番向いているのはこういうコンサートじゃないでしょうか? ファンなら少しでも近くで観たい、聴きたいもの。大きな会場でのコンサートならではの大掛かりなしかけもダイナミックなダンスも、豆粒のようだったスターもすぐ身近にいるように観ることができます。浜崎あゆみさんを初めて観たのは、台湾地震のチャリティコンサートでした。まだデビューしたばかりの彼女は表情も固くてお人形さんのように見えました。相変わらずスレンダーですが、いまやマドンナのようにパワフルに舞台を縦横に駆け回って歌声を聞かせてくれます。(白)
2010年/日本/カラー/100分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ソニーPCL株式会社"Livespire"
公式 HP >> http://livespire.jp/
監督・脚本・撮影:河瀬直美
原案:坂東眞砂子「逢はなくもあやし」(集英社文庫刊)
美術:井上憲次
音楽:ハシケン
出演:こみずとうた(拓未)、大島葉子(加夜子)、明川哲也(哲也)、麿赤兒(考古学者よっちゃん)、小水たいが(拓未の祖父久雄)、樹木希林(拓未の母)、西川のりお(拓未の父)、山口美也子(加夜子の母)、田中茜乃介(よっちゃんの少年時代
大和三山のほぼ中心に位置する藤原宮跡ではいまも発掘が続けられている。近くの集落で木工を生業として暮らす拓未は、かつて同級生だった加夜子に再会した。地元PR誌の編集者哲也と長い間同棲し、染色に没頭している加夜子は朱花(はねづ)という色に魅せられている。拓未の祖父と加夜子の祖母は戦前互いに想いながら添い遂げられなかった。その思いを受け継ぐかのように2人は愛し合うようになる。
大和三山を男女に見立てて詠んだ歌が冒頭に紹介されます。遠い昔、香具山と耳成山が畝傍山をめぐって争ったように、今の世も2人の男が1人の女を争うという万葉集の歌です。この3人の関係はいくらでもドロドロとできそうですが、大和の風景の中、この淡々としたやりとりが妙に納得できるのでした。長い長いスパンでみると、人の営みは古も今も変わらないのでしょう。とはいえ、哲也に同情。
タイトルのはねづ=はねずは、初夏に咲く紅色の花で庭梅、庭桜と諸説あるようです。染めた色が褪せやすいことから、移ろいやすい(心)の枕詞となっています。(白)
2011年/日本/カラー/91分/DCP・HD
配給:組画 配給協力:東風
(C)2011「朱花の月」製作委員会
公式 HP >> http://www.hanezu.com/
監督:スティーブン・アンダーソン、ドン・ホール
原作:A・A・ミルン
イラスト:E・H・シェパード
声の出演者:青森伸(ナレーター)、亀山助清(プーの台詞)、武本敏彰(プーの歌)、
石田太郎(イーヨーの台詞)、石塚勇(イーヨーの歌)
イギリスの作家A・A・ミルンの児童文学で、ディズニーのキャラクターとしてもおなじみの「くまのプーさん」を映画化したアニメーション。しっぽをなくしたイーヨーのため、「イーヨーのしっぽを捜すコンテスト」をしていたくまのプーさんたち。ところが、クリストファー・ロビンが謎の怪物にさらわれてしまう。早速、助けに向かうプーさんたち。しかし失敗ばかりしてしまい、クリストファー・ロビンをなかなか救出することができない・・・。
子ども向けだけど、時間が短いからついでに観ていくかぁと、メインの映画の後の試写会場に残った。
試写室には、いつもより少なめの人数だったが、観終わってから、「いい気分転換になったな」「すごく楽しめた」「字幕版は上映されるんですかね」など、口々に話していた。
私も人間の持つ嫌味、悪意が子どもらしく(嫌、動物らしくかな)素直に解釈していて、優しい気分に浸った。
何より「のんびり屋さんっていいなぁ」とせかせか先きのことばかり考えている私に、いい薬になった・・・。
子どもももちろんだが、付き添って同行した大人も、穏やかな気持ちにさせる作品。
※絵本の文字がアニメ画面と一体となってこぼれ落ちたり、道具の一部になったり楽しませてくれた。
※プーさんは蜂蜜が大好き。だから蜂蜜の池で泳ぎながら、たらふく食べる空想シーンがあったが、私も幼いころカンテンが好きで、蜜豆のプールに入って、思う存分食べたいと空想していたのを思い出した。(美)
2011年/アメリカ/69分(短編『ネッシーのなみだ』含む)/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C) Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
★2011年9月3日より 全国ロードショー公開
公式 HP >> http://www.disney.co.jp/poohsan/
監督:スー・チャオピン、ジョン・ウー
脚本:スー・チャオピン
撮影:ホーレス・ウォン
アクション監督:スティーヴン・トン
衣装:ワダ・エミ
音楽:ピーター・カム
出演:ミシェル・ヨー(ザン・ジン)、チョン・ウソン(アシャン)、ワン・シュエチー(ホイールキング)、バービー・スー(ジャンチン)、ショーン・ユー(レイ・ビン)、ケリー・リン(シーユー)、レオン・ダイ(マジシャン)、グオ・シャオドン(ジャン・レンフォン)
明の時代。時の宰相が息子とともに暗殺され密かに保管されていた達磨大師のミイラが奪われた。襲った暗殺集団「黒石」のシーユーは、首領転輪王(ホイールキング)を裏切り達磨大師のミイラを持ったまま姿を消す。転輪王はシーユーの首に賞金をかけ、賞金めあての者、手中にすれば武術世界の覇権を握るといわれるミイラを欲する者たちが血眼になって後を追った。
シーユーは過去と決別するべく、ザン・ジンと名を変え、都の片隅でつつましい暮らしをしていた。やがて配達人のアシャンに出会い、2人は所帯を持つ。しかし転輪王の放った追っ手が居所を突き止め、ささやかな幸せは長く続かなかった。
香港からハリウッドに活動の拠点を移し、『レッドクリフ』を大ヒットさせたジョン・ウー監督が、台湾の新鋭スー・チャオピン監督を擁して女性にスポットを当てた武侠映画を作りました。中国、香港、台湾の豪華メンバーに加え、韓国からチョン・ウソンも参加。冒頭のクールなシーユーにはケリー・リン。ザン・ジンはミシェル・ヨー。りりしいばかりでなく『グリーン・ディスティニー』を思い出させる哀切な表情も見せています。気の良い優しい夫とばかりみえたアシャンが突如別の顔を見せ、チョン・ウソンのファンなら必見の展開となります。ジョン・ウー監督の愛娘アンジェルス・ウーも刺客として登場。
この作品を皮切りに、新宿武蔵野館では「香港アクション列伝BIG4・マラソン」がスタートします。8月27日(土)より、12週間にわたって連続公開する4作品『レイン・オブ・アサシン』『レジェンド・オブ・フィスト』『アクシデント』『密告・者』を完全制覇すると、各作品の非売品B2ポスター4枚セットがもらえます。チャレンジしてみてはいかがでしょうか。(白)
2010年/中国・香港・台湾/カラー/120分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:ブロードメディア・スタジオ=カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2010, Lion Rock Productions Limited. All rights reserved
公式 HP >> http://www.reignassassins.com/
監督:佐々部清
原作:浅田次郎
脚本:青島武
撮影:坂江正明
音楽:加羽沢美濃
出演:堺雅人(真柴少佐)、中村獅童(望月曹長)、福士誠治(小泉少尉)、ユースケ・サンタマリア(野口先生)、八千草薫、森迫永依、土屋太鳳、金児憲史、柴俊夫、串田和美、山田明郷、野添義弘、麿赤兒、ジョン・サベージ、麻生久美子、塩谷瞬、北見敏之、ミッキー・カーチス、八名信夫ほか
昭和20年8月10日、帝国陸軍の真柴少佐は、900億円(現代の貨幣価値にすれば200兆円)ものマッカーサーの財宝を移送し隠匿せよと密命を受ける。敗戦を悟った軍上層部が祖国復興を託した軍資金であった。真柴少佐は小泉中尉、望月曹長、勤労動員として呼集された20人の女学生たち、引率の教師野口とともに、極秘で任務を遂行する。真実を知らされていない少女たちはお国のためと信じてきつい作業を続ける。そして14日、上層部からの命令がくだる。
現代に生きる一人の老婦人の回想の形で、終戦直前のできごとを語らせています。これは史実ではなく、フィクションだろうと思いますが徳川の財宝話のようにあるかもしれない、と思わせます。俳優一人ひとりの演技や風景の描写に戦争の不条理で陰惨な部分より純粋な思いを感じました(少女たちがとにかく純朴で可愛いです)。ただアメリカ軍の対応や家族の反応などが、それは綺麗ごとすぎるのじゃ?でありますが、いわんとしているのはそれでなく、人間への信頼や未来への希望なのでしょう。ひっかかったのは少女たちが作業を追えた後入浴して、小泉少尉が「三助をしておりました」という部分。花も恥らう13か14の女の子たちがいくら信頼しているとはいえ、若い男性に背中を流してもらうわけがない!たとえ筋金入りの軍国少女で、兵隊さんの言うことに異議を唱えることはないにしても、これはないでしょう。製作中誰も疑問を持たなかったの???(白)
2011年/日本/カラー/134分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:角川映画
公式 HP >> http://www.nichirin-movie.jp/
監督・脚本 ヤン・シュヴァンクマイエル
出演 ヴァーツラフ・ヘルシュス、クラーラ・イソヴァー、ズザナ・クロネロヴァー、エミーリア・ドシェコヴァー、ダニエラ・バケロヴァー
しがない中年男エフジェン。勤めを終えて家に帰ると口うるさい妻ミラダの愚痴を聞かなければならない日々。楽しみといえば寝る事ぐらいだ。ある日、夢の中でエフジェニエという美しい女性に誘われるままに抱き合っているところを彼女の息子に見られてしまい気まずい思いをする。その夢が気になるエフジェンは、精神分析医ホルボヴァー女史を訪ねカウンセリングを受ける。夢は、どうやら自分が幼い頃に両親を亡くし、児童養護施設で育てられたことが関係しているらしい。エフジェンは夢の操作法に関する本を読み、自分で夢の中に入っていく方法を見つける・・・・
冒頭、監督本人が登場して、「今回は予算が不十分でした」と、切り絵アニメと写真を多用し、お金をかけない方法で描くことにしたことを自虐的に宣言します。あまり動きのない独特の映像の世界が繰り広げられ、観ている私も夢の中をさまよっているようでした。
ヤン・シュヴァンクマイエル監督は、1934年9月4日プラハ生まれで今年77歳。8歳のクリスマスに父親から貰った人形劇セットが、その後の世界観・芸術観の形成に決定的な役割をはたしたそうです。1954年プラハの芸術アカデミー演劇学部人形劇科に入学、義務兵役に就いた後、生涯共に創作活動を行うことになる妻のエヴァ(2005年永眠)と結婚。1983年『対話の可能性』がベルリン映画祭で短編映画部門金熊賞と審査員賞を受賞。 共産党政権下で上映禁止や国内での映画製作禁止など、ブラックリストに載りながらも創作活動を続け、アートアニメーションを代表する映像作家となりました。公開初日8月27日(土)には、監督の舞台挨拶が行われます。シュルレアリストの監督がどんな挨拶をされるのか、ぜひ足をお運びください。詳細は公式サイトでご確認を!(咲)
2010年/チェコ/カラー/35mm/108分/ヨーロピアンヴィスタ/ドルビーデジタルサラウンドEX
配給:ディーライツ
後援:駐日チェコ共和国大使館、CZECH CENTRE TOKYO
公式 HP >> http://survivinglife.jp/
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー
原作:ロバート・ハリス「ゴーストライター」
撮影:パヴェル・エデルマン
編集:エルヴェ・ド・ルーズ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演者:ユアン・マクレガー(ゴースト)、ピアーズ・ブロスナン(アダム・ラング)、
キム・キャトル(アメリア・ブライ)、オリヴィア・ウィリアムズ(ルース・ラング)、
トム・ウィルキンソン(ポール・エメット)
元英国首相アダム・ラングはハンサムでカリスマ性のある政治家だ。今は政治の世界から退いて、講演や執筆活動をしている。そんなラングの自叙伝執筆を依頼されたゴーストライターは、前任者の不審死からこの仕事に乗り気になれなかったが、破格の報酬に仕事を受けてしまう。ゴーストライターは前任者の書き残した原稿を読み始めるが・・・。
2010年の東京国際映画祭で観てから、一般公開を楽しみにしていた作品。だから2度目になるのだが 最初の画面から意味がちゃんとあったことに驚く。これは2度目の「あ~、そうだったのか!なるほど・・・」という面白さが際立っている格別な映画だ。台詞に含まれている皮肉やユーモア(雰囲気的に感じただけ)、 疑惑に気づき始めたゴーストの表情などまっさらな気持ちで2度目を楽しんだ。 音楽も古典的だが、全曲オリジナルだと思う。(ヒッチコック映画風の音楽だった) ユアン・マクレガーの、事件に巻き込まれていく不安感と怖いもの見たさの半々の表情。それと、 ピアース・ブロスナンの傲慢で得体の知れないカリスマ政治家の存在感たっぷりの演技が見事だった。(美)
2010年/フランス、ドイツ、イギリス/128分/シネマスコープ/ドルビー・DTS
配給:日活
© 2010 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
★8月27日よりヒューマントラスト有楽町&渋谷ほか全国ロードショー公開
公式 HP >> http://ghost-writer.jp/
監督:アレクサンドル・アジャ
脚本:ピーター・ゴールドフィンガー、ジョシュ・ストールバーグ
撮影:ジョン・R・レオネッティ
特殊効果メイク:グレゴリー・ニコテロ、ハワード・バーガー
衣装:サーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ
音楽:イケル・ワンドマッチャー
出演:エリザベス・シュー(ジュリー・フォレスター)、アダム・スコット(ノバク)、ジェリー・オコンネル(デリック)、ヴィング・レイムス(ファロン)、スティーヴン・R・マックイーン(ジェイク・フォレスター)、クリストファー・ロイド(グッドマン)、リチャード・ドレイファス(マット)
アメリカ南西部のビクトリア湖畔の町は、今年も春休みシーズンの一大イベントで盛り上がっていた。
大音響の中、女の子たちは派手なビキニ姿で踊りまくり、ビールを飲みながらその姿を見ている男の子たちは興奮状態。
ところが、ちょうどこの頃、湖底で大規模な地割れが発生し、割れ目から数千匹ものピラニアが出てきた。それは200万年前に絶滅したはずの大昔のピラニアで、長年の共食い競争をしぶとく生き抜き、想像を絶する進化を遂げていた。何も知らず青春を満喫していた若者たちは、ピラニア軍団の“餌”となり、美しい湖は血に染まっていくのだった……。
あ~、3D上映でなくてよかった!小さな試写室でみたが、それでも獰猛で歯がぎざぎざなピラニアがこちらに向かって進んでくると身構えてしまった。この作品のピラニアは〈群れで行動〉〈共食いで進化してきた〉〈血に寄ってくる〉の特徴がある。
あまり急だったので犠牲者はたくさん出てしまった。ピラニアが人間を襲う殺戮描写はここで書けないくらい過激でリアル。怖いものみたさに3D映像でみたい気もするが、噂で美女おっぱいも3Dだとか・・・男性に嬉しい作品? でも、大パニックを必死に食い止めようと頑張ったのは女性保安官。3人の子持ちのシングル・マザー。保安官役の女優エリザベス・シューは美人っていうより、理知的な肝っ玉かあさんの役どころを好演していた。
※その保安官の長男を演じるのが、名優スティーヴ・マックイーンのお孫さん。口元がそっくり。
※アメリカでは続編『ピラニア 3DD』が今秋公開だとか・・・Dが一個ふえてるのが気になるところ。(美)
2010年/アメリカ/89分/シネマスコープ/ドルビー・デジタル/R-15
配給:ブロードメディア・スタジオ
★2011年8月27日より TOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて全国ロードショー公開
公式 HP >> http://www.piranha-3d.jp/
監督:イム・サンス
脚本:イム・サンス
撮影:イ・ヒョンドク
照明:パク・セムン
美術:イ・ハジュン
衣装:チェ・セヨン、イ・ウンジュ
音楽:キム・ホンジプ
出演:チョン・ドヨン(ウニ)、イ・ジョンジェ(フン)、ユン・ヨジョン(ビョンシク)、ソウ(フンの妻・ヘラ)
上流階級の屋敷でメイドとして働くことになったウニは、家事と双子を妊娠中の奥様と6歳になるお嬢様の世話も任されていた。古株のメイドの指導も厳しいが、ウニは笑顔を絶やさず一生懸命働いた。 ある日、主人フンに求められ関係を持ってしまう。
『素晴らしい一日』『ハウスメイド』のチョン・ドヨンの右に出る女優さんはいったい韓国に何人いるだろうか・・・ スレンダーな肢体から想像できない肉感的な彼女。あのお風呂掃除のシーンは男の目を釘付けにして離さない。ベッドシーンの白いパンティ姿もセクシーだし、ご主人様・フンも素晴らしい身体(筋肉質の背中に目が奪われてしまった)。それにピアノもプロ並み。それだけでウニはポーっとなったに違いない。ベテラン・メイドのビョンシクの複雑な心の動きと行動に翻弄される家族だが、脚本が丁寧なので、気持ちの動きで理解できない箇所はなかった。
この作品はリメイクと言われているが(『下女』は観ている)富と貧の差、身分の違いの敷居の高低において、昔と今が違うように、私には別物に感じる。 ウニにあってほかの人には無いもの。それはなんでも打ち明けられる友だち。それに早く気づいていたら・・・。(美)
2010年/韓国/107分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:ギャガGAGA
★2011年8月27日より TOHOシネマズシャンテ他で公開
公式 HP >> http://housemaid.gaga.ne.jp/
監督:カン・ウソク
脚本:キム・ギボム
出演:チョン・ジェヨン(キム・サンナム)、ユソン(ナ・ジュウォン)、チャン・ギボム(チャ・ミョンジェ)
キム・ヘソン(チャン・デグン)、イ・ヒョヌ(キン・ジンマン)、カン・シニル(教頭先生)、チョ・ジンウン(チョン・チョルス)
韓国・中学野球の天才ピッチャーと言われながら、突然聴覚を失ったミョンジュは、ろう学校へ転校。二度と野球はしないと誓っていた。そのろう学校の野球部はわずか10人のチームだが、そこに暴行事件で謹慎処分になった国民的スター投手サンナムがコーチとしてやって来る。やる気のしないサンナムだが、夜中一人で投球するミョンジュの姿を見て、「一緒に野球をやろう」と筆談で話し掛けた。
気持ちの良いスポーツ映画。こんなに素直に感動したのは久しぶりだ。
主役のチョン・ジェヨン(『彼とわたしの漂流日記』)の両極(なげやりな態度と熱血指導)の演技が力みがなく自然。彼の声の出し方は、イ・ビョンホンにも負けない腹の底からの野性味のある声。
音が聞こえないチームだから、瞬間の打球の音を捕らえにくいので失敗続きだが、「ミスをしても、申し訳ないと思うなよ」の言葉にどんなにか救われるだろうか。
※私が不思議に思ったのは、中学で突然聴覚を失ったミョンジュのしゃべり方が、 いかにも生まれた時から耳の悪い人と同じしゃべり方だった。そういうものなんだろうか疑問にに感じた。(美)
2011年/韓国/カラー/シネマスコープ/144分
配給:CJ Entertainment Japan
★2011年8月27日シネマート新宿、シネパトス銀座ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://homerun-movie.com/
監督:フェルザン・オズペテク
脚本:フェルザン・オズペテク、イヴァン・コトロネーオ
撮影:マウリツィオ・カルヴェージ
編集:パトリツィオ・マローネ
音楽:パスクァーレ・カタラーノ
出演:リッカルド・スカマルチョ(トンマーゾ)、アレッサンドロ・プレツィオージ(兄・アントニオ)、
エンニオ・ファンタスティキーニ(父・ヴィンチェンツォ)ニコール・グリマウド(アルバ)
主人公トンマーゾはローマに住んでいて作家修行中。実家は南イタリアのレッチェにある老舗のパスタ会社を経営している。兄アントニオが父親ヴィンチェツォの跡を継いで社長になることになり、跡継ぎ披露お祝いの晩餐会が開かれることになる。そのために帰郷したトンマーゾは、兄に自分の秘密を打ち明ける。大学は父の希望の経営学部でなく文学部で、将来は小説家になり、家はつがない。そして自分はゲイだとカミングアウトした。そのことを晩餐会で家族全員にも話そうと思うと、前もって兄だけに伝えたのだが、驚いたことに晩餐会で、兄は「自分はゲイだ」と告白するのだった・・・。
フェルザン・オズペテク監督はイタリア映画祭の常連だ。いままで印象に残った作品は、
★『対角に土星』親しい中年グループのパーティーに来たのは、ゲイのカップル、倦怠期の夫婦、浮気を言い出せない夫等々。そしてその席で起きた「予期せぬ悲しい出来事」を契機に、彼らが抱える様々な問題があぶりだされる。
★『聖なる心』企業のヤリ手女社長が、ある少女と出会ったことで、突然貧しい人々の救済に目覚める。
この2作品とも家族・友人関係を基に、その中にひそむ隠されたものを掘り起こしていた。
この作品『あしたのパスタはアルデンテ』でも兄弟のゲイの秘密だけではなく、
家族や周りの人がずっと隠しているものがあぶりだされて来る。
ほとんどの秘密は心の箱にしまいこんでいるが、兄弟のカミングアウトで「自分にも隠していることがあるけど、言えない・・・かれらは勇気があるな」と思っているはず。
これがアメリカなら問題にならないが、カトリックの国で、しかもイタリアのかかとの部分のレッチェ地方だから無理もない。
軽快な音楽の中、ほろ苦い味のする涙と笑いが入り混じった作品だった。
※一家を訪ねてきたトンマーゾの友人たち(もちろん全員ゲイ)が、ゲイだとバレないように苦労するシーンは爆笑もの。
※今年5月のイタリア映画祭で上映された『初任地にて』ジョルジャ・チェチェレ監督作品もレッチェ地方だった。(美)
2010年/イタリア/113分/カラー/ドルビーデジタル
配給:セテラ・インターナショナル
★2011年8月27日 より シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/aldente/
監督:ジェニファー・ユー・ネルソン
脚本:ジョナサン・エイベル、グレン・バーガー
音楽:ハンス・ジマー、ジョン・パウエル
声の出演:ジャック・ブラック(ポー)、アンジェリーナ・ジョリー(マスター・タイガー)、ダスティン・ホフマン(シーフー老師)、ルーシー・リュー(マスター・ヘビ)、ジャッキー・チェン(マスター・モンキー)、セス・ローゲン(マスター・カマキリ)、デヴィッド・クロス(マスター・ツル)、ジェームズ・ホン(ミスター・ビン)、ゲイリー・オールドマン(シェン大老)、ミシェル・ヨー(予言おばば)、ジャン=クロード・ヴァン・ダム(マスター・ワニ)、ヴィクター・ガーバー(マスター・サイ)、デニス・ヘイスバート(マスター・ウシ)、ダニー・マクブライド(ウルフ隊長)
「伝説の龍の戦士」となったポーだったが、相変わらずくいしんぼうでお調子者。平和の谷を守るために今日もオオカミと戦っていた。オカミ隊長のマークを見たとたん、ポーの体は硬直してしまう。何かを思い出しかけていた。実家を訪ねてガチョウの父ビンさんに赤ん坊の頃のことを訊ねるポー。ビンさんは重い口を開いて、赤ちゃんパンダのポーと出会ったことを打ち明けるのだった。
世界征服と、カンフーの絶滅を願う新たな敵「クジャクのシェン大老」が出現した。火薬を武器に用いて強力な新兵器を作ったシェンは、自分の両親を殺した上、全土をわがものにしようと魔の手を伸ばしていた。
2008年夏に日本公開された『カンフーパンダ』の続編。ガチョウのお父さんに育てられたポーの出生の秘密がいよいよ明らかになります。オリジナル、吹き替え版とも声の出演は前回と同じ。新たな敵シェンはゲイリー・オールドマン、予言おばばはミシェル・ヨー、増えた仲間マスター・ワニにジャン=クロード・ヴァン・ダムと、豪華メンバー。このまま人間版の実写作品を観たいくらいです。お子様と一緒なら吹き替えで、字幕がOKならぜひ英語版でその声の演技をお楽しみください。影絵劇で語られるシェンの生い立ち、エンドロールも見ごたえがあります。超高速3D公開(一部劇場を除く)(白)
2011年/アメリカ/カラー/90分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
(C)2011 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.k-panda2.jp/
監督:ティム・ヒル
脚本:シンコ・ポール、ケン・ダウリオ、ブライアン・リンチ
製作:クリス・メレダンドリ、ミシェル・インベラート・スタービル
音楽:クリストファー・レナーツ
出演:ジェームズ・マースデン(フレッド)、ラッセル・ブランド(イービー)、ケイリー・クオコ(サム・オヘア)、ハンク・アザリア(カルロス、フィル)、ゲイリー・コール(オヘア氏)、エリザベス・パーキンス(オヘア夫人)、ヒュー・ローリー(イービーの父)、デヴィッド・ハッセルホフ
日本語版吹き替え:千葉雄大(フレッド)、山寺宏一(イービー)、坂本真綾(サム)、大塚芳忠(カルロス)、中尾隆聖(フィル)、ささきいさお(デヴィッド・ハッセルホフ)
イースター島にあるお菓子の国では、地下の工場でヒヨコたちがたくさんのキャンディやチョコレートを作っている。世界中の子どもたちへお菓子を配る、栄光のイースターラビットの後継者はウサギの王子のイービー。ところがイービーにはどうしても叶えたい夢があった。それはハリウッドでミュージシャンになること。こっそり国を抜け出したイービーは、ハリウッドで出会った人間のフレッドの力を借りてオーディションを受けることに。その間にヒヨコたちのボスであるカルロスがクーデターを起こしていた。カルロスはお菓子を配るウサギになるのが夢だった。
ユニバーサル・スタジオからカラフルでフワフワ、しかもおいしそうなアニメが届きました。『怪盗グルーの月泥棒』のスタッフが再集結。実写とCGアニメを組み合わせた可愛い物語を作りました。
いまだ定職が決まらず実家住まい、ちょい情けないフレッドを演じるのはジェームズ・マースデン。ウサギのイービーに出会って振り回されながら、夢の実現の後押しをします。いつまでたってもヒヨコのままのヒヨコ軍団への突っ込みはおいといて、ポップコーンと飲み物片手にノリノリの音楽に身を任せましょう。ぬいぐるみとダンスの好きなちびっ子にお勧め!!(白)
実写とCGで描かれる本作。何が可愛いって、イービーのお尻からこぼれ出るゼリー・ビーンズ! なるほど、うさぎ!と感激してしまいます。いい年して自分が何をやりたいかもわからない青年フレッドが、夢に向かってまい進するうさぎのイービーと出会って奮闘する姿に、人間、そうでなくっちゃと元気づけられます。ブラインド・ブラザーズが練習中のスタジオに紛れ込んだイービーがドラムを敲いてセッションする場面も圧巻。子ども向き映画とあなどるなかれ。大人も楽しめます。(咲)
2011年/アメリカ/カラー/95分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:東宝東和
(C)2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://easter-rabbit.jp/
監督:アダム・マッケイ
脚本:アダム・マッケイ、クリス・ヘンチー
撮影:オリバー・ウッド
音楽:ジョン・ブライオン
出演者:ウィル・フェレル(アレン)、マーク・ウォールバーグ(テリー)
エヴァ・メンデス(シーラ)、マイケル・キートン(ジーン刑事)
ニューヨーク市警のスーパー刑事の活躍の陰で、デスクワークの引きこもり刑事アレンと、ここぞって時にドジを踏む熱血刑事テリーは、いつもスーパー刑事をうらやましく眺めるだけの、その他大勢=アザー・ガイズだった。上司から見放され、手渡されたのは木のおもちゃ拳銃とエコカー。そんな二人がなんの手違いか、金融業界を揺るがす国家レベルの巨悪に立ち向かうことになる。
おもしろかったぁ~!主役の2人の、極めつけの情けなさと土壇場の駆け引きの上手さのアンバランスがいい! 刑事ものの映画では、まずスポットライトが当たらない、その他大勢=アザー・ガイズが主役だが、 笑って観ているだけのものではない。アメリカの抱える経済危機(まるでインサイド・ジョブ)の皮肉にも、暗闇にも迫っている。 大いに笑えたのは、栗原とみ子さんの日本語字幕がこの作品の持っている雰囲気にぴったりだったからだと思う。 ちょっときわどいお色気系の愛のささやき?もセンスよく字幕になっていたので唸ってしまった。 考えさせられる難しい作品の合間にオススメの作品。ただ今<大爆笑>公開中!(美)
2010年/アメリカ/カラー/110分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:日活
★2011年8月20日より ヒューマントラストシネマ渋谷、横浜ブルク13ほか全国にて公開中
公式 HP >> http://otherguys.jp/
監督:SABU
原作:宇仁田ゆみ
脚本:林民夫 SABU
撮影:柳田裕男
音楽:森敬
主題歌:PUFFY 「SWEET DROPS」
出演:松山ケンイチ(河地ダイキチ)、香里奈(二谷ゆかり)、芦田愛菜(鹿賀りん)、桐谷美玲(河地カズミ)、キタキマユ(吉井正子)、佐藤瑠生亮(二谷コウキ)、綾野剛(キョウイチ)、木村了、高畑淳子(杉山由美子 )、池脇千鶴(後藤由起)、風吹ジュン(河地良恵)、中村梅雀(河地実)
27歳独身サラリーマンの河地ダイキチは祖父の葬儀で、祖父の隠し子だというりんに会う。まだ6歳で、母親はどこにいるか不明。親戚一同が押し付けあうのを見て、つい口をすべらせ、りんを引き取るはめになってしまった。独身のまま、初めての育児に右往左往するダイキチは、保育所探しから走り回る。ようやく見つけた保育所はあまりに遠くて、数日でギブアップ。このまま仕事と子育てを両立することはできない。ダイキチは大きな決断をせまられることになった。そしてりんの母親のゆくえは??
原作は人気コミックス。まだ結婚もしていないのに、育児をすることになってしまった独身サラリーマン。結婚して幸せ太りかな?の松山ケンイチが、可愛い子役の芦田愛菜ちゃんを抱っこして保育所の送迎に走ります。りんは祖父の娘なので、叔母と甥ということになりますね(笑)。保育所のママ友もできて、少しずつ「育メン」として成長していくダイキチとりんの共同生活はハラハラさせますが、自由に演技してもらったという2人のシーンは胸がぽっと温かくなります。同世代の働くママたちには共感できることがたくさんあることでしょう。(白)
2011年/日本/カラー/114分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
(C)2011「うさぎドロップ」製作委員会
公式 HP >> http://www.usagi-drop.com/
監督・編集:横井健司
脚本:金杉弘子
撮影:下元哲
音楽:遠藤浩二
出演:浜尾京介(葉山託生)、渡辺大輔(崎義一)、滝口幸広(赤池章三)、馬場良馬(三洲新)、内藤大希、高崎翔太
全寮制男子校・祠堂学院の3年となった葉山託生(タクミ)と崎義一(ギイ)。ギイの配慮から2人の恋は人目をしのんだものとなっていた。タクミの兄の命日6月15日が近づき、タクミはギイを誘って墓参にいこうかと悩んでいた。ギイのほうから「一緒に行く」と声をかけられタクミは大喜びする。しかしその同じ日、ギイが参加しなければならない生徒会の行事があった。
ごとうしのぶの人気ボーイズラブ(BL)小説が原作のシリーズ5作目。このシリーズはBLファンのスタッフに行ってもらっていたのが、今回は試写の日に都合が悪く私が担当することになりました。BLお初なので、ちょっとドキドキして観ましたが、あらあら男女の関係と同じなのね(当たり前か)。攻め・受けと言うそうですが、男女のときよりどちらも特徴がきわだっているような感じがしました。女性の願望(観るなら美しいもの)が入っているせいなのか、みんな美少年美青年ばかり。眼の保養じゃ。浜尾・渡辺コンビが最後ということで、公開日には渋谷イメージフォーラムにて舞台挨拶が予定されています。(白)
2011年/日本/カラー/89分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ビデオプランニング
(c) 2011 ごとうしのぶ/角川書店・タクミくんシリーズPartners
公式 HP >> http://takumi-kun.com/
監督:ミカエル・ハフストローム
出演:ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、菊池凛子、デヴッド・モース、フランカ・ポテンテ
太平洋戦争勃発直前、1941年の上海。イギリス、フランス、アメリカ、日本が租界を置き、政治と武力でせめぎあっていた時代。米国からやってきた諜報員のソームズは、友人で同僚のコナーと落ち合う約束をしていたカジノで妖艶な中国女性とポーカー対決し完敗する。肝心のコナーは、日本租界で殺されていた。コナーが上海の闇組織の黒幕で日本との汚い取引をしているランティンを捜査していたことを知ったソームズは、上海ヘラルド紙の記者になりすまし、ランティンが出席するドイツ領事館のパーティに潜り込む。ランティンと話す機会を得たソームズは、日本軍大佐タナカを紹介される。さらに妻アンナだと紹介されたのは、ソームズがカジノで対決した美女だった。カジノで会ったことは夫に言わないでと口止めするアンナ。政治家だったアンナの父は南京事件を非難したことから日本軍に殺されていて、日本軍と手を結んでいるランティンと結婚したのも、抗日の目的があってのことだった・・・
冒頭、「世界の半分が戦争をしていた時代」とテロップが流れ、思わず反戦のメッセージを込めた作品か・・と身構えました。が、本作は、様々な国籍の人たちが、それぞれの国の事情を背負ってお互いを探り合っていた時代の上海で出逢った男と女の恋物語。複雑な事情があるからこそ燃え上がる? ランティンを演じたチョウ・ユンファや日本軍大佐タナカを演じた渡辺謙の存在感が大きくて、主役ソームズの印象が希薄。コナーの恋人役で出演した菊池凛子も、もう少し出番があったらと残念。コン・リーは、相変わらず強い女でした。(咲)
2010年/アメリカ/カラー/シネスコ/SRD,SDDS/105分
配給:ギャガ
公式 HP >> http://shanghai.gaga.ne.jp
監督:アレン・コールター
脚本:ウィル・フェターズ
撮影:ジョナサン・フリーマン
編集:アンドリュー・モンドシェイン
衣装:スーザン・ライアル
美術:スコット・マーフィ
出演:ロバート・パティンソン(タイラー・ホーキンス)、エミリー・デ・レイヴィン(アリー・グレイグ)、ピアーズ・ブロスナン(父・チャールズ)、レオ・ナリン(母・ダイアンヨナ)
1991年、ニューヨーク・ブルックリンに暮らすタイラーは、兄の自殺、家庭の不和などで、苦悩と怒りの心を抱えていた。 ある日出会ったアリーに、彼は初めて本気の愛を感じた。だがアリーにも過去に母親を目前で殺されたという心の傷を抱えていた。
まあ、すこしばかり辛い恋愛映画かなっと思って観たが、暴力的な最初のシーンと衝撃的な終わり方に唖然とした。特に最後は胸が塞いでしまい、試写会場でしばらく動けなかった。 「なんで、あんな終わり方するの?」と、腑に落ちなかったし、置いてきぼりにされたような気分になった。 だが、しばらくたって落ち着いて考えたら、「人の命なんて一寸先は闇だ」というありきたりの言葉しか浮かばなかった。 人間って無力だな、他から受ける影響でどんな人生も危ういものなんだなと・・・、今回の地震や津波災害で、そのことはよくわかってるつもりだったが、「今、生きているだけで、どんなに幸運なことなのか」を身にしみて感じてしまった きっと、主役ロバート・パティンソンの代表作になるだろう。その妹役ルビー・ジェリング、この少女の将来も楽しみだ。(美)
2010年/アメリカ/ドルビーデジタル/113分
配給:ツイン
★2011年8月20日から シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて順次公開
映画祭実行委員長:戸田恵子(女優)
会期・会場:
8月12日(金)・13日(土) 日比谷公会堂
8月18日(木)~21日(日) 調布市文化会館たづくり
世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画史祭児童映画部門の協力を得て1992年にスタートした日本で唯一のこどもたちの世界映画祭。19回目の今年、映画祭の収益の一部は東北に寄付されます。東日本大震災で被災した子供達のための企画も用意されています。 また、参加費無料の当日参加できるワークショップも今年は盛りだくさん! お子様を連れて夏休みのひと時をお楽しみください。
◆映画祭オープニング: 8/12(金)18:30~ 日比谷公会堂
映画祭実行委員長・戸田恵子さんをはじめ、スペシャルゲストとして中山秀征さん、山寺宏一さん、内田恭子さん、ジョン・カビラさん、佐久間レイさんを招き、“ステージ上で、生で日本語に吹替”をする“ライブ・シネマ上映”が行われます。中山秀征さんは今回、ライブ・シネマに初挑戦! 豪華ゲスト共演でライブ・シネマが観られるのは、この回だけの特別プログラム。
また上映の他、マギー審司さんのオープニングマジックショー、大好きなママへ!最高の親孝行ソングを歌う、史上最年少の11歳シンガー・ソングライター水谷ゆうちゃんのデビュー前の初ライブなども行われます。
◆上映作品:
主催:一般社団法人キンダー・フィルム(19thキンダー・フィルム・フェスティバル実行委員会)
共催:調布市、東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、GOETHE-INSTITUTドイツ文化センター
公式 HP >> http://www.kinder.co.jp/
監督・脚本:テレンス・マリック
製作総指揮:ドナルド・ローゼンフェルト
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ブラッド・ピット(オブライエン)、ショーン・ペン(ジャック)、ジェシカ・チャステイン(オブライエン夫人)、フィオナ・ショウ(祖母)、ハンター・マクラケン(若きジャック/長男)、ララミー・エップラー(R.L./次男)、タイ・シェリダン(スティーヴ/三男)
1950年代にテキサスの町で育ったジャックは、今や中年期を迎えていた。仕事に成功し何の不足もない暮らしだったが、ジャックの心の底には深い喪失感があった。いつも強くあれと厳格だった父、全てを包み込む愛情深い母、2人の弟と過ごした子ども時代を思い出す。そのころジャックは父がきらいだった。
寡作で知られるテレンス・マリック監督の最新作。第64回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しました。父親が家長として絶対的な力を持っていたころ、子どもは親の価値観を押し付けられ、それに従順であったり逆に反抗し、そりが合わないまま大人になってしまったりします。ブラッド・ピットが笑顔ひとつ見せずに、ときに暴力も振るう父親を演じています。妻役のジェシカ・チャステインはこの作品で初めて見ましたが、クラッシクな容貌と楚々とした雰囲気がぴったり。3人の息子たちはいずれもテキサスで見つけた演技経験のない子どもたちだったというのが驚きです。天性の素材の良さを生かすべく、子どもたちには3人が兄弟ということを説明しただけ、脚本も渡さず型にはめない演出をしたそうです。この普遍的な家族の物語のあいまに詩のような映像が挟み込まれ、宇宙や人間、神、人生まで考えさせるようなつくりになっています。(白)
2011年/アメリカ/カラー/2時間18分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)2010 Cottonwood Pictures, LLC. All Rights Reserved
公式 HP >> http://www.movies.co.jp/tree-life/
8月13日から2週間、2011年度三大映画祭が東京渋谷で開催されています。 これは、三大映画祭(カンヌ・ベルリン・ヴェネツィア)で受賞した作品でさえ日本で紹介されることが減ったため、新しい試みとして企画されたものです。東京の後、横浜、名古屋(シネマスコーレ)、静岡、大阪、京都、神戸、岡山、沖縄など全国で開催されます。
ビッグサイト・コミケの疲れが出ぬ前に、気になっていた <三大映画祭(カンヌ・ベルリン・ヴェネツィア)受賞の9作品>を観にいった。
★『終わりなき叫び』マハマト=サン・ハルーン監督/フランス、ベルギー、チャド
チャド内戦時代を舞台に、プールの監視員をしている60歳代の男アダムが「息子を兵士にせよ」と町の有力者から強要されるが…。
○チャドの国や内乱を調べてみた。
チャド共和国
1960年にフランスより独立、人口約53万人、国土面積は日本の3倍以上。
スーダン、リビア、ニジェール、ナイジェリア、カメルーン、中央アフリカ共和国に囲まれている。
労働人口の8割は自給的な農場。綿花、落花生、トウモロコシを栽培。
地下資源は石油、ウラン、金が少量発見されているが、内戦のため未開発。
内戦の原因はフランスから独立したものの、トルパルバイ大統領のフランス依存の国家経営と、野党の結成禁止と反対勢力の粛清を行った。内戦は1969年から2008年に至るまで続いている。
現在も不穏な状態にある。
★『唇を閉ざせ』ギョーム・カネ監督/フランス
8年前に何者かによって殺された妻が忘れられない医師のアレックスは、
妻が殺害された同じ湖で、また死体があがったことで、警察は8年前の妻の事件から再捜査することになった。そんな時、驚愕するメールが飛び込んで来た。アレックスの元に死んだはずの妻からメール着信があった…。
○サスペンスは大好きだが、ちょっと解りづらい。観ていて退屈はしないし、最後に謎解きを映像で説明するのでわかるが、なぜかすっきりとは納得できなかった。
特別上映『第33回セザール賞』最優秀監督賞、最優秀男優賞受賞作品
© 2006 – Les Productions du Trésor – EuropaCorp – Caneo Films – M6 Films
★『中国娘』グオ・シャオルー監督/イギリス、フランス、ドイツ
なんにもない中国のど田舎。つまらない日常に嫌気がさした女の子メイは、都会に憧れ、重慶に来たが、雇われた縫製工場では不良品を出したため、即、首になる。
次は美容院。だが美容院とは名ばかりで、裏では売春もする。そこでヤクザ風の男スパイキーと出会うが、彼は抗争に巻き込まれ、突然死んでしまう。そこからメイはロンドンに渡り、マッサージ店で知り合った年金生活者の老人ハントと結婚する…。
○田舎に住んでいる時からのメイの行動や、重慶の工場で不良品を出す、などを見ていると、悪いけど「面立ちはすっきりした美人だか、あんた、ちょっとトロイわぁ」と言いたくなった。手近な男と愛しあったり、結婚するが、その男たちも悪者じゃないが、イマイチ負け犬っぽい。この先どうなっちゃうのか、おばさんとしては、心配だけが残った。
この場当たり的な行動で今後どうなるんだろう…と娘を中国と置き換えるなんて、頭に浮かんで来たが…深読みしずぎかな。
特別上映『第62回ロカルノ国際映画祭』金豹賞受賞作品
★『宇宙飛行士の医者』アレクセイ・ゲルマン・ジュニア監督/ロシア
『フルスタリョフ、車を!』のアレクセイ・ゲルマンの息子の作品。
1961年、カザフスタン。 ダニエルはソ連初の有人宇宙飛行計画に従事する医者。
彼は国家のために若者たちの命が犠牲になることが、納得できなかった。
ある日、ついに友人の士官が死に、ダニエルは神経衰弱になってしまう。
○建物内部の侘しさ、小道具の陳腐さ、泥まみれの道…当時のロシアを彷彿とさせる映像の中、会話だけが何か意味深な気分を与えてくれた……が、半分以上寝てしまった。ちゃんと観た方が、「ガガーリンの役の方もいたし、あんな犠牲をはらって成功させたんだね」と教えてくれた。名古屋スコーレでもう一度観よう。
『第65回ヴェネツィア国際映画祭』銀獅子賞(監督賞)受賞作品
★『夏の終止符』アレクセイ・ポポグレブスキー監督/ロシア
ロシアの北極圏の島の気象観測所で、二人の男が働いている。定期的に気象や周囲の放射能を測定し、本国にデータを通信する。ここで働く年配者のセルゲイは、この仕事に使命感を持っていて忠実に作業を行うが(といっても、若者に言い含めて内緒でます釣りに行ってしまう)、新人助手のパベルは、夏だけ観測所で過ごしたいと申請してきた若者だった。
そんなある日、セルゲイがます釣りに行って若者一人の時に、意外なニュースが飛び込んできた。タイミングが悪く、釣りから帰ってきたセルゲイに伝えられないでいた……。
○ほとんど二人だけで、こんなに緊張感が続くなんて…。9作品観て、はっきり言ってこれが一番私好み。
ただ一つ、解らないことがあった。
島の観測は放射能測定の目的でもあったが、放射能を発している装置(見るからにお粗末なものだったが)あった。この装置自体、映画の重要な小道具なのだ。
北極にどんだけ放射能の影響がきているか測定に来ているのに、なぜにそれを発する装置がある?・・・と不思議でしようがない。
『第60回ベルリン国際映画祭』銀熊賞(男優賞、芸術貢献賞)受賞作品
©Koktebel Film
★『恋愛社会学のススメ』マーレン・アーデ監督/ドイツ
サルディニアの避暑地にあるクリスの別荘に来たギッティ。二人は理想的なカップルに見えるが、建築家のクリスは自分の才能に自信がなく、ギッティは個性的だが少々お調子者で、バンドのマネージャーをやっている。
そんな避暑地に彼の友人夫婦と偶然出会い食事に招かれるが、自分たちより何もかもがランクが上。自分たちが理想カップルと思っていたが、上をみたらがっくり…どうすればいいのか解らなくなった二人は…。
○ぎゃあぎゃあ楽しそうに騒いでいると思えば、ちょっとしたことで二人は喧嘩したり、別行動をとったりで、目まぐるしい二人。自分より何もかもレベルが上のカップルに自信をなくすが、「人がどんなに幸せな生活してたって、幸運に恵まれていたって、あなたたち一人ひとりの幸せが目減りするわけじゃないのよ!」と意見したくなった。
だがこの二人、いかにも自分たちより下だわ、と思う相手には嘘ついてまで付き合わない…特にクリスはその点はっきりしている。ギッティはともかくもクリスは嫌い、大嫌いな男のタイプ。
ずっと愛し合うって、そう簡単ではなく、いい時なんてすぐ終わってしまう…と思う。
長続きする第一の基本は、車間距離ならぬ「人間距離」じゃないかな。
ただ、ドイツ映画でここまできっちり男女関係に焦点をあてたのはなかったと思うので、そういう点で期待した作品。ギッティの心の動きに万国共通なものを感じた。
『第59回ベルリン国際映画祭』銀熊賞(女優賞、審査員賞)受賞作品
©Komplizen Film
★『キナタイ・マニラ・アンダーグラウンド』ブリランテ・メンドーサ監督/仏・フィリピン
ペッピングは若い恋人にかわいい赤ん坊が産まれたのを区切りに、結婚式を挙げて、貧しいながらも仲良く親子3人で暮らし始めた。だが、彼は貧乏な警察学校の生徒で、生活費を稼ぐために麻薬の売買をしていた。そんなある日、汚職に関係していた友人から、魅力的な儲け話があり、簡単に引き受けてしまう…。
○メンドーサ監督だ! 去年の福岡アジアフォーカス映画祭で『ばあさん』が上映された。
フィリピン・マニラの下町で殺人事件の加害者もお金で釈放されるので、必死にお金の工面をする「ばあさん」の姿を思い出す。(シネジャ80号 P.24に記事掲載)
そのとき、この国の警察っていったいどうなってるの?と疑問におもったが、『キナタイ~』では警察に限らず、闇社会は汚職、賄賂、掟でがんじがらめ。フィリピン版『冷たい熱帯魚』で現実味にかけてはフィリピンが数段上。残酷な箇所をうまく撮っている。
2009年カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品
(C)Swift Productions 2009
★『ハッピー・ゴー・ラッキー』マイク・リー監督/イギリス
ポピー・クロスは30歳。楽天的な女性で小学校の教師をしている。 もう長い間、親友のゾエと一緒に暮らしている。最近では、気難しいインストラクターに運転を習い、夜は情熱的なフラメンコの講習も受けている。彼女の誰へだてない開けっ広げな性格は、何かと誤解を生むが…はたして彼女は幸せな出会いがあるだろうか。
○マイク・リー作品『秘密と嘘』『人生は、時々晴れ』『ヴェラドレイク』・・・これらの作品で、痛みのわかる一人前の大人にしていただいた。
この『ハッピー・ゴー・ラッキー』、これは今までと反対だ。何が反対か?
マイク・リー作品の脇役と主役の入れ替えだ。
元来、主役は気難しい自動車インストラクターであり、わけのわからないことを口走るフラメンコ先生であり、ホームレスの得体のわからない男であり、暴力を振るわれているいじめっ子少年の家庭なのだ。(と思う…)
そう思ってみると、このポピー・クロスは、今までのマイク・リー主役たちに「人生、なんとかなるよ。私もいろんなことあるけど、自分の気持ちをどんどん前に出して、明るく生きていくわよ」とはっぱをかけているような作品だった。
『第58回ベルリン国際映画祭』銀熊賞(女優賞)受賞作品
©2007 Untitled 06 Distribution Limited, Channel4 Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.
★『我らが愛にゆれる時』ワン・シャオシュアイ監督/中国
メイ・チューは娘ハーハーの骨髄移植のため、ハーハーの父シアオ・ルーに連絡を取る。いまは別れてそれぞれ別の相手と結婚しているが、娘の病のために適合検査を受けるのだ。だが結果はだめだった。諦めきれないメイ・チューが次に考えたことは…。
○この作品は二年前、福岡アジアフォーカス映画祭で原題『愛を信ず』で観た。メイ・チューは一番適合する元旦那の精子をもらい兄弟を産みたい!とお願いに行き、承諾されたが失敗。まだまだあきらめられないメイ・チューは…。
中国の一人っ子政策がここではネックになり、双方のつれあいも当然黙っているわけにはいかなくなるのだ。
『私の中のあなた』と同じような設定だが、『我らが~』の方が人情を感じる作品。この監督さんの『重慶ブルース』も◎。公開されるのを期待している。
第58回ベルリン国際映画祭』銀熊賞(脚本賞)受賞作品
全作品みたが、やはり見応えがあり満足した。渋谷の劇場は少ない時でも半分は入っていた。時々試写でお見かけする方や映画友達にもお会いした。映画好きには応えられない企画。ずっと続けてほしいものだ。(美)
配給:熱帯美術館 配給協力:グアパ・グアポ
(c) 2011 sandaifestival All Rights Reserved.
★8月13日(土)~8月26日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー
その他の映画館情報に関しては公式サイトをご覧ください。
公式 HP >> http://sandaifestival.jp/
監督:サイモン・ウェスト
原案:ルイス・ジョン・カリーノ
脚本:リチャード・ウェンク ルイス・ジョン・カリーノ
撮影:エリック・シュミット
プロダクションデザイン: リチャード・ラサール
音楽:マーク・アイシャム
出演:ジェイソン・ステイサム(アーサー・ビショップ)、ベン・フォスター(スティーブ・マッケンナ)、ドナルド・サザーランド(ハリー・マッケンナ) 、トニー・ゴールドウィン(ディーン・サンダーソン)、ジェームズ・ローガン(ホルヘ)、ミニ・アンデン(サラ)
コロンビアの麻薬王が自宅のプールで暗殺された。一片の証拠すら残さない完璧な仕事ぶりで「メカニック」と呼ばれているアーサー・ビショップの仕業だった。事件は事故死とみなされ、ビショップは次のターゲットへと向かう。闇の組織からの注文はアーサーの親友でこの稼業を仕込んでくれた恩あるハリー。プロに徹して冷酷に任務を遂行したアーサーは、ハリーの葬儀に出席する。荒れた生活を送るハリーの一人息子スティーブは、親父の仇をとる、とアーサーに自分に仕事を教えるようせまる。
1973年日本公開された同名作品のリメイクです。前作の主演は男臭いチャールズ・ブロンソン。ハリウッドスターを起用したCMのはしり「う~む、マンダム」の彼ですが、今やわかる人は少ないでしょうか。オリジナルを観たいと思いましたが、DVD化はされていませんでした。
本作は孤高のヒットマンが親友を殺す羽目になり、その息子を同じヒットマンとして鍛えるという、皮肉なストーリー。冒頭の周到な暗殺場面、初心者を連れての逃亡場面などドキドキもの。ジェイソン・ステイサムを一躍有名にした『トランスポーター』シリーズのように車を飛ばし、ビルから飛び降りとアクションシーン満載。メカにも強く、いろいろなしかけがあるのも楽しめます。(白)
2010年/アメリカ/カラー/93分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
(C)Scared Productions, Inc. 2010
公式 HP >> http://mechanic-movie.jp/
監督:エミリオ・アラゴン
脚本:フェルナンド・カステツ,エミリオ・アラゴン
撮影:ダビ・オメデス
音楽:エミリオ・アラゴン
出演:イマノール・アリアス(ホルヘ)、ルイス・オマール(エンリケ)、ロジェール・プリンセプ(ミゲル)、カルメン・マチ(ロシオ)
フランコ独裁政権下のスペイン、マドリード。喜劇役者ホルヘは、内戦中に愛する妻子を爆撃で失ってしまった。傷心のホルヘが一座に戻ると、相方のエンリケが親を亡くした男の子ミゲルを引き取って世話をしていた。息子を思い出させるミゲルに最初は冷淡なホルヘだったが、稽古熱心でよく気の回るミゲルに少しずつ優しい情を取り戻していく。互いになくてはならない関係が築かれたとき、3人は大きな事件にまきこまれていく。
激動の時代を背景に、息子を亡くした父と、親を亡くした男の子とが心寄せ合うまでを描いたハンカチ必携の作品です。この物語はスペインで有名な芸能一家であるアラゴン監督のお父様の子ども時代の体験がもとになっているのだそうです。ラストに登場する貫禄のコメディアンは、お父様ご本人。
イマノル・アリアス、ルイス・オマールのしみじみと魅了するベテランコンビと、明るい子役のロジェール・プリンセプ3人のやりとりがほほえましいです。『永遠のこどもたち』でも天才子役ぶりを発揮していたロジェール・プリンセプ、こちらでは舞台での軽妙なショーも披露しています。ベテランにまじって少しも臆せず、笑顔を見せて堂々のコメディアンっぷりでした。今後の成長が楽しみです。本誌81号にエミリオ・アラゴン監督、出演のカルメン・マチさんが来日した際のインタビューを掲載しています。そちらもご覧ください。(白)
2010年/スペイン/カラー/123分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アルシネテラン
(C)2010 Vers til Cinema, Globomedia & Antena 3 Films. Exclusive Distributor: IMAGINA INTERNATIONAL SALES. All Rights Reserved
監督:川野浩司
原作・脚本:白川蓮『小説 アメイジング グレイス~儚き男たちへの詩』(エベイユ刊)
主題歌:神田沙也加「Amazing Grace」
製作総指揮:久保和明
プロデューサー:久保和明、佐伯寛之
製作・制作プロダクション:レオーネ
出演:窪塚俊介(蓮)、宮田大三(大成)、神田沙也加(雫)、鎌苅健太(秀人)、粟島瑞丸(慎哉)、上吉原陽(裕亮)、畑山隆則(吉永)、宮地真緒(理紗)、永山たかし(ヒロシ)、鳥肌実(田崎)、佐藤貢三(黒崎)、ベンガル(片桐)、渋川清彦(京介)、美保純(小百合)
とある田舎町の暴走族仲間である蓮、大成、秀人、慎哉、裕亮は、夜な夜な警察とのバトルを繰り広げながらバイクを乗り回し、青春を謳歌していた。 バカ騒ぎをしつつもどこか心優しい彼らだったが、ひとりの仲間の死をきっかけに皆の絆が崩れ始め、少年から大人へそれぞれの道を歩み始める。 蓮の父親はヤクザの組長で、兄も跡を継いでいるという環境の中、当然のように彼は地元でヤクザとして生きていくことを決める。 大成は蓮に憧れを抱きつつも対峙するように故郷を捨てて、新宿歌舞伎町のヤクザの門を叩く。 そして2人の運命はだんだんとすれ違っていくが・・・。
蓮が母を知らずにヤクザの家庭に育ち、大成が母の愛情を一身に受けて育った対比。 お互いにそれがコンプレックスになっていて、羨ましさから反発を感じてすれ違っていく想いが、痛いほどスクリーンから伝わってきました。 そんな行き場のない想いを、神田沙也加さん演じる雫が歌う讃美歌「Amazing Grace」が救ってくれたのかもしれません。 暴走族のシーンでは150台を超えるリアルな暴走族、新宿のシーンでは深夜の歌舞伎町ロケを敢行したとのことで、ドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥ることもしばしば。 歌舞伎町のインテリヤクザ役の元ボクサー畑山隆則さんは、やはり目つきに凄みがありました。 (裕)
2010年/日本映画/カラー/ビスタ/121分 ©2010LEONE
配給:グアバ・グアボ
宣伝:ブラウニー
★8月13日(土)よりシネマート六本木にてロードショー(他全国順次公開予定)
監督・脚本・製作:マイケル・エプスタイン
特別協力:オノ・ヨーコ
撮影・マイケル・チン
編集:エド・バーテスキ
出演者:ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、エルトン・ジョンら
<THE BEATLESのジョン>がジョン・レノンを取り戻した街、彼が最も愛した街、彼の命を奪うことになった街…ニューヨーク。
1970年にビートルズが解散するが、結婚したばかりのジョン・レノンとオノ・ヨーコはビートルズを解散に追い込んだといわれて、ひどいバッシングを受ける。ふたりは逃げるようにニューヨークに移り住み、そこで自由を満喫し、馴染んでいく。
だが、この二人もジョンのちょっとした浮気が元で、亀裂ができてしまい別居。
オノ・ヨーコが忘れられないジョンは、エルトン・ジョンの助力で1年半後に再会し、ニューヨーク・ダコタ・ハウスに住む。その後、息子ショーンが誕生する。
1980年12月に凶弾に倒れるまで暮らした9年間を、オノ・ヨーコの全面的な協力を得て作られたドキュメンタリー。
ここに写されたものは紛れもない彼女と彼女から見たジョン・レノンの伝記ドキュメンタリー映画で音楽映画ではないが、赤裸々な二人の9年間を濃密に描いている。その間のアメリカ政府への訴え、行動、思惑も興味深い。
ジョンの言葉の端々にサム=テイラー・ウッド監督の『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』で知ったミミおばさんの名は出てきたが、前妻との間の男の子ジュリアンについては彼自身からは聞けなかった。
オノ・ヨーコとの子ショーンをものすごく可愛がっていたが、ヨーコに遠慮してたのかも。
調べてみたら、2人は今でも時々連絡を取り合っているらしい。
※ 以前ドキュメンタリーで、LGBT公立学校 ハーヴェイ・ミルク・ハイスクール設立資金協力のために演奏する場面があったが、そのとき、オノ・ヨーコが「出だしがわからないから、後ろから背中をたたいて合図して」と若者に言っていたのをおもいだす。実際、この作品中でもあまりリズム感のよろしくないオノ・ヨ-コを垣間見ることができる。
※ 俳優ブラッド・ピットが、1980年にNYの自宅アパート前で射殺された元ビートルズのジョン・レノンについて、その伝記映画の制作に意欲満々で、自身がレノン役で登場する可能性もあるとのこと。ブラピがジョンを?・・・微妙・・・。(美)
2010年/アメリカ/115分/ビスタ/デシタル
配給:サジフィルムズ
★2011年8月13日 東京都写真美術館ホールほか全国ロードショー公開
公式 HP >> http://johnlennon-ny.jp/
監督:マット・リーヴス
原作:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト「MORSE モールス」(ハヤカワ文庫)
撮影:グレッグ・フレイザー
音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:コディ・スミット=マクフィー(オーウェン)、クロエ・グレース・モレッツ(アビー)
雪に閉ざされた田舎町。12歳の少年オーウェンは、学校でいじめに合っているが、 母子二人暮らしで、精神的に不安定な母親には相談できずにいた。 孤独な少年の楽しみは、古い団地の部屋から望遠鏡でのぞき見することだった。 ある日、雪の中を裸足で歩く少女の姿が飛び込んできた。 隣の室に最近引っ越して来た少女だった。 孤独な2人はしだいに惹かれあうようになり、オーウェンはアビーに隠された<秘密>を知るが、 そのころ、町では連続猟奇殺人が度々起こるようになり、捜査は2人の住む団地へと及ぶ。
『ぼくのエリ 200歳の少女』のアメリカ版。
『キック・アス』のクロエ・グレース・モレッツ、オーウェンは『ザ・ロード』のコディ・スミット=マクフィー。
トーマス・アルフレッドソン監督のスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』を3回観てるが、
お習字でうまく書こうと先生のお手本を下敷きに生徒がなぞったような・・・作品。
ちょっと違うパターンを期待したが、まるで同じ。
ただ、クロエ・グレース・モレッツは、神秘性と残酷さを併せ持った複雑な役柄を好演していた。
少女の表情の中に、老成した表情も垣間見せていた。(美)
カラー/アメリカ/スコープサイズ/ドルビーデジタル/116分
配給:配給:アスミック・エース
★2011年8月5日 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
公式 HP >> http://morse-movie.com/
監督:谷口正晃
プロデューサー: 松岡周作
エグゼクティブプロデューサー: 一志順夫
企画プロデューサー: 村山達哉
原作:小島なお
脚本:菅野友恵
撮影:上野彰吾
美術:寺尾淳
編集:伊藤潤一
出演:桐谷美玲 三浦貴大 月船さらら 高島礼子
高校2年生の喜瀬志摩は文芸新人歌壇賞を最年少で受賞した歌人。ある日ずっと好きだった鏑木健人に告白され付き合うことになるが、どう接していいかわからずに戸惑ってしまう。一方、短歌のほうも師匠でもある母から、誰かを想う歌という課題を出されるが、何も思い浮かばず悩み始める。そんな時、大学の夏休みで帰省していた2つ年上の幼なじみ、航大と再会する。彼は志摩が心を許して何でも話せる存在で、悩みを聞いてもらうが…。
三浦貴大の声が切ない。主人公の幼なじみの役で出演している彼だが、海辺のシーンでのセリフがとても切なくて印象に残った。その切なさは物語全体を集約するものでもあると思う。主人公は高校生活の中で歌人という職業とどう向き合うかで悩み、また、恋人との接し方で悩んでいる。若さ故の青春ともいうべき、その時代にしか感じることのできない心の痛みが伝わってきた。はじめての気持ちをどう消化していくか、その葛藤が丁寧に描かれていてよかった。(明)
2011年/日本/カラー/72分/ヴィスタ/ステレオ
配給:スタイルジャム
(C)「乱反射/スノーフレーク」製作委員会
公式 HP >> http://www.ranhansha-snowflake.jp/
監督:谷口正晃
プロデューサー: 松岡周作
エグゼクティブプロデューサー: 一志順夫
企画プロデューサー: 村山達哉
原作:大崎梢
脚本:矢新図
撮影:上野彰吾
美術:寺尾淳
編集:伊藤潤一
出演:桐谷美玲 青山ハル 白石隼也 石丸幹二
函館に住む短大2年生の真乃には遠藤速人という忘れられない幼なじみがいた。10年前、当時小学5年生だった彼の家の車が函館湾の岸壁から海に飛び込んだのだ。事件は一家心中とされ終わったのだが、長男の速人の遺体だけが見つかっていなかった。短大卒業目前に、真乃の前に速人にそっくりな青年が現れた。それをきっかけに真乃は速人の死にまつわる事件を調べ始めるが、次々と不思議なことが起こり始める。
こちらは同時上映の「乱反射」とは全く異なったテイストで、始まりから驚いた。ミステリーとしては伏線から謎解きまでが甘く、ラブストーリーとしては胸にぐっとくるものがあまりないので、見ていて不思議なところが多かった。物語の中に入り込んで見るのは難しいが、新たな桐谷美玲の一面を見ることができる作品だと思う。(明)
2011年/日本/カラー/74分/ヴィスタ/ステレオ
配給:スタイルジャム
(C)「乱反射/スノーフレーク」製作委員会
公式 HP >> http://www.ranhansha-snowflake.jp/
監督:リゼット・マリー・フラナリー
製作:ヘザー・ハウナニ・ギウニ、ルース・ボラン
撮影:ブライアン・ウィルコックス
出演:カメハメハスクールの先生、生徒とその家族たち
1887年、王の子孫の寄付により創設された名門のカメハメハスクール。ハワイの各地から集まってきた生徒たちは、毎年3月に開催されるハワイ語の合唱コンクールに参加する。9~12年生までの各学年からリーダーを選出し、男声、女声、課題曲と自由曲で競う。リーダーは1年間指揮の練習と全員をまとめ、歌のレベルアップに心を砕き、ときには重圧に押しつぶされそうになりながら本番を迎える。
ハワイがアメリカに併合された後、公立学校の授業は英語オンリーとなり、ハワイ語が公用語として認められたのは1987年とごく最近のこと。日常でも使われなくなっているハワイ語を護り、先人の伝統と文化を継承しようという活動の一つがこのハワイ語での合唱でしょうか。先生方の熱意と、それに答えようと努力する生徒たち。リーダーに選抜されるのはたいへんに名誉あることのようで、インタビューにこたえるリーダーとその家族たちのようすがほほえましいです。誇りと責任感を胸にリーダーとなった中に日系の男子生徒もいて、ハワイには古くから日本からの移民が多かったのだと今さらながら思い出しました。筆者の中学・高校時代にもクラス全員参加の合唱祭がありました。熱心な子もそうでない子もいるのはいずこも同じ。しかし、当日はみな真剣になりました。ハワイ全土にテレビ中継されるというコンクールのシーンは圧巻で、入賞したチーム、惜しくももれたチームみんなに拍手したくなるほどです。(白)
2009年/アメリカ/カラー/86分/
配給:グラッシィ
公式 HP >> http://www.onevoicemovie.jp/
監督・脚本・原作:新藤兼人
撮影:林雅彦
音楽:林光
出演:豊川悦司(松山啓)、大竹しのぶ(森川友子)、六平直政(森川定造)、大杉漣(泉屋吉五郎)、柄本明(森川勇吉)、倍賞美津子(森川チヨ)、津川雅彦(松山啓太の伯父・利ヱ門)、川上麻衣子(松山美江)、絵沢萠子(利ヱ門の女房)、大地泰仁(森川三平)、渡辺大(和尚)、麿赤兒(下士官)ほか
1945年夏、召集された100人の中年の兵隊たち。彼らの赴任先は上官のくじ引きによって決まった。松山啓太は同室の森川定造から一枚のハガキを預かる。それは定造の妻友子からの「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないのでなんの風情もありません」と言うハガキだった。検閲が厳しく返事が出せないので、啓太が生きて戻ったなら友子に「確かにハガキを読んだ」と伝えてくれというのだった。南方に行くこと即ち死を意味していた戦争末期であった。100人のうち生き残ったのはわずか6人、宝塚に赴任した啓太もその一人だった。故郷に帰ると家は空だった。啓太が戦死したと思った妻は、啓太の父親と深い仲となり2人は出奔していた。気力をそがれて無為に暮らしていた啓太は、定造から預かったハガキを友子に返そうと旅立つ。
現役では最高齢の新藤兼人監督が自身の体験をもとに「これが最後の作品」と渾身で作った作品。クジ運で生き残ったと罪悪感を抱える啓太に、友子が浴びせる言葉は厳しいものです。長男の定造が戦死した後は家を護るために、老いた舅姑に請われて弟の嫁となりますが、その弟も戦死。家に縛られたままの友子も戦争に翻弄された一人でした。
兵士が村人に送られて出征する場面、遺骨となって白木の箱が戻ってくる場面が遠景でとらえられており、淡々とした繰り返しのこの情景が日本中であったことに思いが飛びます。舅姑のかけひきの表情や、啓太の逃げた女房との再会、団長の横恋慕など生きていく人間の哀れさ滑稽さも見せながら、死ぬよりずっといい、生きていてなんぼという気になります。ラストの風景がまた素敵。新藤監督には「これが最後」などといわず、まだまだお元気で製作してほしいものです。(白)
2011年/日本/カラー/114分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:東京テアトル
公式 HP >> http://www.ichimai-no-hagaki.jp/
監督:石田優子
企画:渡部朋子
撮影:大津幸四郎
音楽:小川洋
出演:中沢啓治、渡部朋子(聞き手)
少年ジャンプの連載から始まった漫画「はだしのゲン」。作者の中沢啓治氏が生まれ育った広島の思い出の地を歩きながら、自身の生い立ちと被爆体験を語ります。貴重な原画を随所に挟みながら、「自分という被写体を通して戦争と核兵器のない社会が少しでも近づけばいい」という中沢氏の思いに迫ります。
「はだしのゲン」は長崎在住の30年前にコミックスを揃えて読んでいました。当時6歳だった中沢氏の実体験と鮮明な記憶を基にしたそのストーリー、原爆の描写に震えましたが、長崎の原爆資料館も見学していましたので、大げさではないと思った記憶があります。試写の後に、その中沢氏とこのドキュメンタリーを撮った石田優子監督の会見があったことは幸せでした。戦後65年も過ぎたのにまさかの原発事故のあった今年、原子力は人間がコントロールできるものではない、と話された中沢氏の強い口調が忘れられません。(白)
2011年/日本/カラー/77分/HDV
配給:シグロ
公式 HP >> http://cine.co.jp/gen/
監督:英勉
脚本:池田鉄洋
撮影:藤本信成
音楽:川嶋可能
主題歌:GOING UNDER GROUND 「RAW LIFE」
出演:中村蒼(小笠原元気/オガ)、池松壮亮(大和田舵/カジ)、冨田佳輔(上田優/ウエダ)、川原一馬(田村誠史郎/タムラ)、金子直史(城島順平/ジョー)、稲葉友(橋本俊/ハシモト)、池田鉄洋(神田宗典)
池松男子高校に入学したオガこと小笠原元気は、女子にもてることを第一条件に部活の見学をしていた。眼に飛び込んできたのが、演劇部。ジュリエット役の美女に一目ぼれして入部希望したものの、ここは男子校。演じていたのは3年の先輩男子だった!しかも部長を押し付けられるオガ。3年生が抜けると廃部になってしまうため、親友のカジを引っ張り込み人数だけは確保する。アイドルおたくの顧問神田先生のつてで女子高演劇部の見学に行った彼らは力量の違いに唖然・呆然。演劇祭に向けて猛特訓を開始した。
いつも印象的な役柄の池田鉄洋氏が担当した脚本は小ネタ、ギャグ満載。『ハンサム★スーツ』、『高校デビュー』の英監督の演出で、若い男の子たちは思いっきりバカをやってくれて、「バカだぁ~」と思いつつクスクス笑えます。肝心の演劇祭の出し物がなかなか明らかにならず、その特訓がなんの役に立つのかとフシギに思いますが、ちょっとお待ちを。幕が開いたとたん全て納得。試写室内爆笑の渦でした。『大奥』以来、オトメンな役づいている中村蒼くん、今回も可愛いコスプレを見せてくれます。池松壮亮くんはじめ、個性的な部員を演じる若手俳優たちもそれぞれこれからの活躍が楽しみです(一番次作が気になるのは、池田鉄洋さんだったりするのですが)。(白)
世間の「演劇部」のイメージってどうなのでしょうか。私は高校生の時、暗いとか、地味というイメージを持っていました。池松男子高校演劇部の部員たちは、そのイメージを裏切らない地味さと暗い雰囲気を出しながらも、それを逆手にとり底抜けに明るく活動しています。始まりから最後まで彼らは全力です。男子校の中で、のびのびと真っすぐに、好きなことに打ち込む姿はとても爽快でもあります。そして一人ひとりの個性的なキャラクターも魅力的で、友達になりたくなってしまうぐらいです。
この作品を見る際には、パンフレットを先に読まずに、まっさらな状態で見ることを強く勧めます。是非、愛すべきキャラクター達と一緒に笑って、笑って、少し悩んで、笑って下さい。これから来ると思います。演劇男子。(明)
2011年/日本/カラー/86分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ショウゲート
公式 HP >> http://ikedan-movie.com/
監督・撮影:古居みずえ(『ガーダ ―パレスチナの詩―』)
プロデューサー:野中章弘、竹藤佳世
編集:辻井潔(『花と兵隊』『ミツバチの羽音と地球の回転』)
音響設計:菊池信之(『玄牝-げんぴん-』『ゲゲゲの女房』)
音楽:ヤスミン植月千春
民家、モスク、工場、学校、オリーブ畑など、あらゆるものが破壊され、1400人もの人たちが犠牲になった2008年から2009年にかけてのイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃。20年近くパレスチナを取材してきた古居監督にとっても、これ程の惨状は初めてだった。監督は、一族が一度に29人も殺されるという過酷な経験をしたサムニ家の子どもたちに焦点を当てて爆撃の残したものを問いかける。
冒頭、のどかにロバ車に女性や子ども達が大勢乗って道を行く光景。「はにゅうの宿」の曲が切なくて、普通に平和に暮らしたいだけというパレスチナの人たちの思いがグッと迫りました。そのあとに続く映像では、無差別攻撃のむごさを目の当たりにして、言葉を失いました。子供たちがイスラエル軍の残した薬きょうや、肉親の血のついた石を集めている姿に、幼心に肉親を横暴なやり方で殺されたことを忘れてはいけないと決意していることを感じます。そんな中、「武器ではなく教育の力で戦いたい」という女の子の言葉に救われる思いがしました。戦争のない世界は、いつになったら実現するのでしょう・・・(咲)
2011年/日本/カラー/86分/DVCAM/ステレオ
協力:横浜YMCA対人地雷の会、古居みずえドキュメンタリー映画支援の会
製作・配給:アジアプレス・インターナショナル
◆映画公開中に古居みずえ監督と多彩なゲストによるトークが行われます。
(※ゲスト・トーク内容は変更の可能性があります。公式サイトで確認ください。)
公式 HP >> http://whatwesaw.jp/
監督・撮影・プロデュース:ヨゼフ・フィルスマイアー(『スターリングラード』)
音楽:グスターボ・サンタオラヤ(『バベル』)
アドバイザー:ラインホルト・メスナー
原作著作:ラインホルト・メスナー「裸の山 ナンガ・パルバート」(山と溪谷社刊)
出演:フロリアン・シュテッター(『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最後の日々』)、アンドレアス・トビアス、カール・マルコヴィクス(『ヒトラーの贋札』)、シュテファン・シュローダー、レナ・シュトルツェ(『マーラー君に捧げるアダージョ』)
1970年、25歳の若き登山家ラインホルト・メスナーはヘンリヒコッファー博士の遠征隊の招待を受け、弟ギュンターと共に、「裸の山」と呼ばれているナンガ・パルバート(標高8125M)ルパール壁に初登攀を果たした。
しかし、喜びもつかの間、下降のアクシデントで初登攀成功から一週間後に、兄ラインホルトだけが下山した。
運命の山ヒマラヤで一体なにがあったのか、その登攀をめぐり遠征隊とのスキャンダルなどがドイツ中を駆け巡るのだった…。
2010年東京国際映画祭TOYOTA EARTH GRAND PRIXで審査員特別賞を受賞した作品。
この時は『断崖のふたり』という題で、ドイツ映画『アイガー北壁』のすぐ後だったので、さすがドイツ映画だと感動した。
アイガー北壁と比べて3倍の高さを誇る、世界屈指の登攀困難な山に立ち向かう兄弟の緊迫した状況に、
結果がわかっていながらも、無事を心から祈ってしまった。
弟は、ずっと兄の影(手下)のような存在に我慢できなかったこと。基本的な装備の欠落。他のグループとの競争心など弟の死の原因はいろいろ考えられるが、その一つ一つを、原作者でもある「裸の山 ナンガ・パルバート」の著者ラインホルト・メスナーは、正直に描いている。その後の彼の行動や信念も立派だった。
それに、山の案内人であるシェルパたちを尊重する映像が多かった。
彼らたちの力や日ごろの山に対する感がなくては手も足も出ない登山映画でこれは珍しいことだ。
最後の字幕でこんなに感動したり、気持ちが救われた作品は稀だ。(美)
ヒマラヤというと、恐らく真っ先に浮かぶのはネパールですが、この映画の舞台NANGA PARBATは、ヒマラヤの西端パキスタンにある世界で9番目に高い山。ウルドゥー語の発音に近いカタカナ表記は、「ナンガー・パルバット」ですが、映画のプレス資料では、「ナンガ・パルバート」となっています。
映画には、ギルギットのあたりと思われる町や、色彩鮮やかな絵が書かれたパキスタン名物のトラック、民族服シャルワール・カミーズ姿の人々も映し出されます。羊の皮で乳製品を作ったり、糸を繰ったりしている村の日常生活も切り取っていて、山好きな人だけでなくアジアの国に興味のある人には嬉しい光景。ラインホルトは、命を救ってくれたディアミール谷の村に学校を建設するなどの支援も行っていて、パキスタンの人たちを大勢映画に登場させているのも恩返しの一つかもしれません。(咲)
2009年/ドイツ映画/カラー/35㎜/シネマスコープ/104分
配給:フェイス・トゥ・フェイス
公式 HP >> http://www.himalaya-unmei.com/
監督:パトリック・ルシエ
脚本:トッド・ファーマー
撮影:ブライアン・ピアソン
編集:デヴィン・C・ルシエ
衣装:マリー・E・マクレオド
美術:ネイサン・アモンドソン
出演:ニコラス・ケイジ(ミルトン)、アンバー・ハード(パイパー)、
ウィリアム・フィクトナー(追跡者)、ビリー・バーグ(ヨナ・キング)
カルト教団によって大切な家族を奪われ、復讐を誓うジョン・ミルトンは、勝ち気なウエイトレス・パイパーと出会い、彼女と共に、次々と敵対者を倒して復讐の旅を続ける。 そんな彼を追うFBIを名乗る謎の追跡者、警察、カルト教団との攻防戦は激化していく。
復讐の鬼となったニコラス・ケイジ。激しい撃ち合いで死んだはずだが、また息を吹き返して戦う。 おかしいぞ~と思っていたら、案の定・・・。でも暑気払いには案外こんな映画がいいかも。 2Dで観たが3D体感したい作品だ。高級ビンテージ車が出てくるが、激しいカーアクションでぐちゃぐちゃ。 濃い顔のニコラス・ケイジに対して、涼しげなFBI追跡者のウィリアム・フィクトナーに肩入れしてしまったのは暑さのせいかな。(美)
2010年/アメリカ/ドルビーデジタル/101分
配給:日活
★2011年8月6日 全国ロードショー
公式 HP >> http://www.da3d.jp/
監督:ジュリアン・シュナーベル (『潜水服は蝶の夢を見る』)
出演:ヒアム・アッバス(『シリアの花嫁』『扉をたたく人』)、フリーダ・ピント(『スラムドッグ$ミリオネア』)、アレクサンダー・シディグ
母親を亡くした7歳のミラルは、ダール・エッティフル(子どもの家)に身を寄せる。ここは、イスラエル建国の陰で孤児となったパレスチナの子どもたちのためにヒンドゥ・ホセイニという女性が私財を注ぎ込んで創設した学校だった。17歳になったミラルは、子どもたちに勉強を教えるために赴いた難民キャンプでイスラエル軍に家屋が破壊される光景を目の当たりにする。そこで知り合った活動家ハーニの理想に燃える姿に共感し、ミラルは抵抗運動に参加するようになる。それは恩師ヒンドゥの教育こそが平和への道という理念にそむくものだった・・・
1973年イスラエルに生まれ、イタリアでジャーナリストとして活躍してきたルーラ・ジブリールの自伝的小説「ミラル」の映画化。
生涯を子どもたちの教育に捧げたヒンドゥ・ホセイニをパレスチナ人の名女優ヒアム・アッバスが体現していて圧巻。なにより注目してほしいのが、冒頭の1947年のクリスマスの場面です。ホセイニ家はイスラーム教徒ですが、毎年クリスマスツリーとして庭の木を近くのキリスト教徒の家庭に贈り一緒に祝うのです。その場にはユダヤ人もいて、イスラエル建国以前には、イスラーム、ユダヤ、キリスト教と異なった宗教の人たちが共生していたことを示しています。監督の映画に込めた平和共存への思いを強く感じる場面です。ちなみに、クリスマスが終わると、木はまた土に植えられます。パレスチナの名家ホセイニ家の心優しさを感じる伝統です。本来は自然と共に生き、心穏やかなパレスチナの人たちが自爆テロに走らざるをえないような環境を作り上げているイスラエルの存在を強く感じた作品でした。(咲)
2010年/フランス・イスラエル・イタリア・インド/112分/35mm/DLP/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD
配給:ユーロスペース+ブロードメディア・スタジオ
公式 HP >> http://www.miral.jp/
監督:マイケル・ベイ
脚本:アーレン・クルーガー
撮影:アミール・モクリ
プロダクションデザイン:ナイジェル・フェルプス
音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー
出演:シャイア・ラブーフ(サム・ウィトウィッキー)、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー(カーリー・ミラー)、パトリック・デンプシー(ディラン・グールド)、ジョシュ・デュアメル(ウィリアム・レノックス大尉)、タイリース・ギブソン(ロバート・エッブス軍曹)、ジョン・タトゥーロ(セイモア・シモンズ)、ケヴィン・ダン(ロン・ウィトウィッキー)、ジュリー・ホワイト(ジュディ・ウィトウィッキー)、ジョン・マルコヴィッチ(ブルース・ブラゾフ)、フランシス・マクドーマンド(シャーロット・ミアリング国家情報局長官)
1969年7月20日、アポロ11号が月面着陸に成功した。世界中が中継映像に釘付けになっているとき、月の裏側ではある調査が秘密裏に行われていた。宇宙飛行士たちは、そこでトランスフォーマーたちの宇宙船が不時着していたのを発見する。
そして、現代のアメリカ。サムは大学を卒業したが就職先が決まらず、恋人のカーリーの部屋に居候の身。ようやく決まった会社には知らない役員からの推薦状が渡っていた。メール室での勤務が始まったとたん、オフィス機器に姿を変えていたあの金属生命体が出現、再びサムは悪夢のような戦いの日々に突入する。
20数年前に大流行した合体ロボのおもちゃを覚えている方も多いでしょう。これも実は日本で生まれ、アメリカを席巻した精巧なアクションフィギュアが始まり。第1作の『トランスフォーマー』 (2007) で観客を驚かせ、第2作『トランスフォーマー/リベンジ』(2009)でさらにスケールアップし、この3作目が最終作。高校生だったサムが社会人となりました。
3Dカメラを導入しての空中撮影、戦闘シーンは大迫力でした。こんなのに来られたら人間社会などひとたまりもありません。いくら政府高官がいばってみても、人間の法律や約束事で縛れるわけでもなく、強大な敵ディセプティコンと戦うのは正義のオートボットたち。あまり人間の出番がないのですが、バンブルビーとサムの友情は健在。恋人役のトップモデルの素晴らしい脚線美も拝めたり、国家情報局長官という実力者が見た目地味~なおばさんだったりが楽しい。お笑い&癒し担当のサムの両親やチビオートボットたちも◎。一番の見所はやっぱり実写とCGを融合させた戦闘シーン。音もびんびん響きます。体感ゲームができたら怖いだろうな~。(白)
2011年/アメリカ/カラー/154分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
(C)2011 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED
公式 HP >> http://www.tf3-movie.jp/
監督:ジャスティン・チャドウィック
脚本:アン・ピーコック
撮影:ロブ・ハーディ
音楽:アレックス・ヘッフェス
出演:ナオミ・ハリス(ジェーン・オビンチェ)、オリヴァー・リトンド(キマニ・ナンガ・マルゲ)、トニー・キゴロギ(チャールズ・オビンチェ)
ケニア独立から39年がたった2003年、政府はようやく無償教育制度をスタートさせた。誰でも学校で勉強ができるようになったと聞いた84歳のマルゲは、意気軒昂に学校の受付へと向かう。しかし、さまざまな理由をつけられて門前払いにあってしまう。マルゲはあきらめずに毎日学校へ行き、自分も学びたいのだと訴える。校長のジェーンは真剣なマルゲの様子についに折れ、周囲の反対を押し切って彼を受け入れる。長い間独立運動に身を投じて、読み書きのできなかったマルゲは子どもたちに混じって1年生となった。
長身のマルゲが小さな子どもたちの中でABCから学ぶ場面はユーモラスであり、この年齢になっても学ぶ意欲をもち続けていることに心打たれます。同じ年頃の村の老人たちがおしゃべりに花を咲かせるか、飲んだくれているのを横目に背筋を伸ばして通学するマルゲの姿は堂々としています。
実在のキマニ・マルゲは勉学の機会を持たず、長じてからは独立運動の闘士となりました。何もかも失った過酷な過去を持ちながら、希望を捨てずに独立を勝ち取り自由に学ぶ権利も手に入れました。笑顔の彼の写真がエンドロールに登場します。最年長の小学生としてギネスブックにものったマルゲの新聞記事から数々の映画人たちが、マルゲの半生の映画化へと動き出したのだそうです。いくつになっても遅いということはないのだと希望の種を一つもらいました(白)
2010年/イギリス/カラー/103分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス
公式 HP >> http://84-guinness.com/
監督:ドミニク・セナ
脚本:ブラギ・シャット
撮影:アミール・モクリ
音楽:アトリ・オーヴァーソン
出演:ニコラス・ケイジ(ベイメン)、ロン・パールマン(フェルソン)、ティーヴン・キャンベル・ムーア(デベルザック)、クレア・フォイ(女)、スティーヴン・グレアム(ハガマー)、ウルリク・トムセン(エッカート)、ロバート・シーハン(カイ)、クリストファー・リー(ダンブロワーズ枢機卿)
14世紀のヨーロッパ。神の名の下に10年もの間戦ってきたベイメンとフェイソンは、女や子どもまで犠牲となる戦いに嫌気が差し十字軍を抜けて旅に出る。村々ではペストが蔓延し、悲惨な情景が広がっていた。2人は紋章のついた剣を見られ、十字軍の脱走兵として捕縛されてしまう。病床にある枢機卿は十字軍の勇者と知って、魔女と疑われている女を修道院まで送り届けることを頼む。疫病は悪魔の仕業とされ、修道院の古文書に書かれている魔女の力を奪う呪文で封印しようというのだ。腕利きの騎士エッカート、デベルザック神父、枢機卿の侍者カイが加わり、詐欺師のハガマーを道案内にセヴラックまでの長い旅が始まった。
魔女や魔法使いといえば馴染みのあるのが『メアリー・ポピンズ』、ジブリの『魔女の宅急便』と可愛らしいものばかり。欧米でいう悪魔は、変身自在いろいろな能力があるようで、日本の力自慢の鬼とは違いますね。このデビルクエストでは、魔女とみなされた若い女を5人の男が護送していきます。名のついていない女を演じるのはイギリスの新進女優。戦争とペストで疲弊しきっている世の中なので、画面は薄暗くニコラス・ケイジはじめ俳優も埃と血と汗にまみれた姿ばかり。深い森では狼に襲われ、ようやく辿り着いた修道院には想像を絶するものが待ち構えています。まるでロールプレイングゲームのようなストーリーですが、参加できないので傍観。暗くて寒い中世の空気に浸ってみるのも、この熱い暑い夏一興です。(白)
2010年/アメリカ/カラー/ドルビーデジタル
配給:角川映画
(C)2010 SEASON OF THE WITCH DISTRIBUTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://devilquest.jp/
監督:マーティン・キャンベル
脚本:ウィリアム・モナハン、アンドリュー・ボーヴェル
撮影:フィル・メヒューBSC
編集:スチュアート・ベアードACE
衣装デザイン:リンディ・ヘミング
音楽:ハワード・ショア
出演:メル・ギブソン(トーマス・クレイブン)レイ・ウィンストン(ジェドバーク)、
ダニー・ヒューストン(ベネット)、ポヤナ・ノヴァコヴィッチ(エマ・クレイブン)
ボストン警察殺人課に勤務するベテラン刑事トーマス・クレイブンは、ボストンの駅で久々に帰ってくる一人娘エマを待っていた。 24歳のエマは大学を出て、ある大企業で研修生てして働き始めていた。クレイブンにとってエマはたった一人の家族で、自分の命より大切な存在だった。エマはその日体調がすぐれず嘔吐を繰り返していた。 彼女が病院に連れて行ってほしいと言うので、用意して玄関を出るか出ないかの瞬間に「クレイブン!」という大きな声と同時に、家の前に止まっていた車からエマは撃たれてしまった。 エマはクレイブンの腕の中で息を引き取った。始めは自分の身代わりかと思ったが、思い当たることはなく、調べていくうちに・・・。
メル・ギブソンの娘エマを想うこまやかな愛情がひしひしと伝わってきた。
彼も、彼の周りの警察も射殺された時「クレイブン!」と叫ばれたので、クレイブン自身を殺そうとして、
娘にあたったと勘違いをしていたが、エマはエマ・クレイブンだからエマを狙ったともいえる。
案の定、エマは勤める会社の裏を知り、ある政治家に調査するよう秘密裏に訴えていた。
エマの身体の具合は、殺人の手段として今、東北地方で問題になっている「アレ」だ。
ソ連のリトビネンコも放射性物質ポロニウム210を飲まされ殺されるという事件があったが、現実の方が映画より早かったわけだ。
どうせ数日で死んでしまうのに何故、エマは殺されたかは観てのお楽しみ。
※大会社と政界の癒着や、国民だましなど、今一番の問題がふんだんに含まれている(美)
2010年/アメリカ・イギリス合作/ドルビーデジタル/PG-12/116分
配給:ポニーキャニオン
★2011年7月30日 全国ロードショー
公式 HP >> http://www.fukushuu-movie.com/
監督:ジェームズ・ガン
脚本:ジェームズ・ガン
撮影:シティーヴ・ゲイナー
編集:カーラ・シルヴァーマン
衣装デザイン:メアリー・マシューズ
音楽:タイラー・ベイツ
出演:レイン・ウィルソン(フランク・ターボ/クリムゾンボルト)、
リブ・タイラー(妻・サラ)、ケヴィン・ベーコン(ギャングのジャック)、
エレン・ペイジ(リビー/ボルティー)
中年太りで冴えないフランクは、美人の妻サラが昔のボーイフレンドでギャングのジャックと逃げてしまう。 妻を取り戻そうとジャックの組織に乗り込むが、逆に子分たちにボコボコにされる。 夢で神のお告げをうけ、手製でコスチュームを作り、「クリムゾン・ボルト(赤い稲妻)」に変身する。 手製のコスチュームに身を包み、 偶然知り合ったクレイジーな相棒ボルティーと一緒に犯罪危険地帯に乗り込む。
『キック・アス』のおじ様バージョン?と言えそう。
武器弾薬をスーパーマーケットで大量に買って、ジャックの大邸宅に乗り込み戦闘が展開される。
どんなに人を殺しても傷つけても警察はこない非現実的な映画だが、エレン・ペイジ(リビー/ボルティー)の顔の半分が○○○○されるシーンは、乾いた恐怖でぞくっとした。
主役のレイン・ウィルソンは『メタルヘッド』でダメな父親役だった。このダメパパにも赤い稲妻コスチュームを着せてあげたいよ。
エレン・ペイジ、リヴ・タイラー、ケヴィン・ベーコンと多彩なキャストで楽しめる作品。
※レイン・ウィルソンは赤い稲妻コスチュームのマスクをつけると、俄然凛々しくなる。眉間のしわが隠れるからかな。
※いま公開中で、題名が同じような『SUPER 8 スーパーエイト』J・J・エイブラムス監督/アメリカ/があるが、お間違いのないよう・・・。(まぁ、間違って観てもこれも面白い!)
(美)
2010年/アメリカ/ドルビーデジタル/96分
配給:ファインフィルムズ
★7月30日(土)よりシアターN渋谷、新宿武蔵野館にて「シャラップ・クライム!」ロードショー
公式 HP >> http://www.finefilms.co.jp/super/
監督:マリア・ノバロ
脚本:マリア・ノバロ
撮影:ヘラルド・バロッソ
音楽:サンティアゴ・チャベス、フディス・デ・レオン
出演:オフェリア・メディーナ(母親ララ)、アナ・オフェリア・ムルギア(母娘共通の友人・ブランギ)、ウルスラ・プルネダ(ダリア)
シングルマザーのダリアはコミュニティーラジオのパーソナリティ。 だが、それだけでは暮らしがたたず、母のララに内緒で、息子コスモとの生活費を父から受け取っている。 母親のララは、メキシコ先住民が治療に用いる薬草を研究する民族植物学者。 別れた夫や娘とは適度な距離を保ち自立した生活をしていた。ある日、ララはアルツハイマーと診断され…。
不思議な映像空間に浸った。植物(ハーブ)の薬効を説き明かす流れと女が生を模索する展開は見事としか言えない。しかし…非常に受け入れがたい展開もあった。
娘はシングルマザーといえども実父から援助され、
たまには元夫には子供を預かってもらう。その気ままな生活に、突然母親の介護が忍び寄る。
母親も経済的にも自立した女だったが、最期は病院も介護ホームも嫌だという。
人は生まれ来る時、一人でスルリとはいかない。ほとんどの場合、少なくとも母親の力みや介助が必要だ。
死もいくら自立していても、一人、死に行くことはできない。
できないけど、それを自立した女として、いまさら最期は病院も介護ホームも嫌だといえるか?
私なら「悪いけど適当なところをさがしてくれないか」と言う。それまでに自分でも調べておくし、実際いろんなところを見ている。
死に向かう難しさと、女性の自立の不確かさだけが印象に残った作品でもある。
※ 植物の効用が何度か画面に表れる。それが映画内容とあいまって非常に意味深であった。
人にも効用があり、家族、それを取り巻く人たち一人ひとりの効用が生活をスムーズにさせたり、
反対にやりにくくさせたりしているのかなと思った。
※母親ララ役のオフェリア・メディーナは、ポール・ルデュク監督の『フリーダ・カーロ』の、
眉毛が一本につながっていた主役の女優さんだ!(美)
2010年/メキシコ/HD/120分
配給:Action Inc.
★2011年7月23日 シネマート新宿、8月中旬より全国順次公開
公式 HP >> http://www.action-inc.co.jp/hierbas/
監督・脚本:ローズ・ボッシュ
撮影:ダヴィッド・ウンガロ
美術:オリヴィエ・ラウー
出演:メラニー・ロラン(アネット・モノ)、ジャン・レノ(シェインバウム医師)、ガド・エルマレ(シュメル・ヴァイスマン)、ラファエル・アゴゲ(スラ・ヴァイスマン)、ユーゴ・ルヴェルデ(ジョー・ヴァイスマン)ほか
ナチス・ドイツ占領下のパリ。それまでフランス国民として暮らしていたユダヤ人は、胸に黄色い星をつけることを義務付けられ、行動を制限された。1942年7月16日早朝、フランス警察はユダヤ人一斉検挙に踏み切った。ヴァイスマン一家も起こされ、追い立てられる。13000人もの人々がヴェル・ディヴ(冬季競技場)に集められた。ほとんど着の身着のままできた人たちは余分な食料も水もないまま、5日間閉じ込められた末、各地の収容所へと送られた。
昨年のTIFFで『サラの鍵』が上映され、好評を博しました。同じ事件を扱っており、こちらはユダヤ人の一家族、中でも子どもたちと赤十字から派遣された若い看護士を中心にストーリーが進みます。この事件は1995年、大統領がフランス政府の責任を認めるまで、ナチスドイツによる迫害のひとつだととらえられていたそうです。上からの命令に従うしかなかった当時ですが、そんな中でも勇気ある行動をした人、苦難を越えて生き延びた人々がいました。親から引き離された子どもたちが、再び会えることを願いながら必死で生きるさまに涙誘われます。収容所を描いた映画は数多く作られ、観るたびに胸がつぶれる思いです。過去のことではなく、今も同じようなことがほかの国で起きていることに目を向けねば。(白)
2010年/フランス、ドイツ、ハンガリー/カラー/125分/シネスコ/ドルビーSRD
配給:アルバトロス・フィルム
公式 HP >> http://www.kiiroihoshi-movie.com/
監督・原案・編集:西川文恵
脚本:田中智章
撮影:丸池修
音楽:D・A・I
手話監修:大橋ひろえ
ダンス振り付け:佐藤有希 小倉加有里
出演:大場はるか(高野優紀), 普天間みさき(鈴木麗奈), 梅本静香(山原美希), 上杉まゆみ(坂口野梨子), 工藤あゆり(岸本美子), 松本あやか(新田さくら), 立花あんり(河井千尋), 池田光咲(庄田ジュリ), 渡辺真起子(高野志摩子)
地方の街に住む優紀は聾学校に通う中学生。父親は亡くなり、遅くまで働く母と2人暮らしだ。ある日、通学路で練習に励む女子のダンスチームを遠巻きに眺めていて、キャプテンの麗奈に声をかけられる。聴者のチームで優紀は人一倍努力し、みんなに溶け込んでいく。しかし大会を前にして麗奈が足を怪我し、そのポジションが新人の優紀に回ってきたことから、チームの中がぎくしゃくし始めた。
聾者が主人公のドラマは「星の金貨」「愛しているといってくれ」などいくつか見ました。映画では『あの夏、いちばん静かな海。』『星に願いを。』があります。ダンスと結びついているのは初めてですが、手話とダンスは考えたらどちらも身体を使って伝えようとするもので、共通点があります。ソロでなく、チームでのダンスということで、主人公が鍛えられていきます。新潟でのロケを敢行し、山並み、青空、田んぼの稲穂などをバックに、自然の中で汗を流す少女たちがとても可愛いストレートな映画でした。難を言えば「みんな可愛すぎる」のですが、そのへんを西川監督に伺っていますので、後でウェブ特別記事として掲載します。お楽しみに。(白)
2009年/日本/カラー/85分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
宣伝:ユナイテッドエンタテインメント
(C)アイマックス
公式 HP >> http://www.aze-michi.com/
監督:シュロミー・エルダール
出演:ラーイダ・アブー=ムスタファー、ラズ・ソメフ、ファウジー・アブー=ムスタファー、ナイーム・アブー=ムスタファー
封鎖されたパレスチナ・ガザ地区からイスラエル・テルアビブの病院に運び込まれたパレスチナ人の赤ちゃんの命を救おうと奔走するユダヤ人医師とパレスチナ人の母親の思いを追ったドキュメンタリー。医師の要請でジャーナリストであるエルダール監督はテレビで手術費用の寄付を呼びかける。匿名で寄付に応じたユダヤ人はテロで子どもを亡くしている。赤ちゃんの母親ラーイダは、イスラエルのプロパガンダに利用されそうだと不安を隠せない。あげく、助かったらこの子は将来剣を持ってエルサレムを解放すると言い、監督は何の為に助けたのかと苛立つ。後にラーイダの発言はアラブ人の機嫌を取る為だったと判明する・・・・
監督、母親、医師、関係者のその時その時の思いが直球で伝わってくる作品。
母親ラーイダさんが、イスラエルの病院で働くパレスチナ人の医師を紹介された時に、その医師がガザの自宅で娘3人がイスラエルの爆撃で亡くなったと聞かされ、「犠牲になるのはよくあることね」と応じます。肉親を亡くすことが日常茶飯事になっていることをまざまざと感じる発言でした。
公開を前に来日したエルダール監督にお話を伺いました。(インタビュー記事を82号に掲載しています。)監督はアラビア語が堪能とのことだったので、学んだ経緯を伺ったところ、監督のご両親がイラクからの移民だと知りました。2005年のアラブ映画祭で上映された『忘却のバグダッド』(サミール監督)で、中東戦争勃発により、イラク政府からイラク国籍を剥奪され、強制移住のような形で十二万人ものユダヤの人たちがイラクからイスラエルに移民したことを知ったのですが、まさに監督のご両親が該当者だった次第です。イスラエルという国家には、いろんな人たちの複雑な思いが詰まっていることを目の当たりにしたひと時でした。
監督はこれまでの報道で、報復は過剰、報いは必ずブーメランのように返ってくると、イスラエルの凶行を伝えてもイスラエルの国民を動かすことはできなかったと嘆きます。
一方、ユダヤ人は怖いと思っていたラーイダさんは、半年病院で一緒に過ごすうちに、そんなにひどいことをする人たちじゃないと思い始めます。壁に隔てられて共に過ごす機会のないことが、まさに二つの民族の間に壁を作っていることを感じました。まずは目に見える分離壁を壊すことが平和への第一歩。心を通わせる機会を作らなくては!(咲)
2010年/アメリカ・イスラエル/ カラー/デジタル/ドキュメンタリー/90分
配給:スターサンズ
公式 HP >> http://www.inochinokodomo.com/
監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎駿、丹羽圭子
音楽:武部聡志
撮影:奥井敦
音響:笠松広司
声の出演:長澤まさみ(松崎海)、岡田准一(風間俊)、竹下景子(松崎花)、石田ゆり子(北斗美樹)、風吹ジュン(松崎良子)
1963年横浜。港の見える丘にある下宿屋コクリコ荘。
そこを切り盛りする16歳の少女・海。
彼女は毎朝、船乗りの父に教わった信号旗を海に向かって揚げていた。旗の意味は「安全な航行を祈る」。
一方、その旗を見ていた者がいた。タグボートで通学していた17歳の少年・俊だ。
ある日、海は高校の文化部部室の建物、通称「カルチェラタン」の取り壊しに反対する学生たちの運動に巻き込まれ、そこで1学年上の新聞部の少年・俊と出会う。2人は次第にひかれあっていく・・・。
「なかよし」に連載された高橋千鶴・佐山哲郎による少女漫画をスタジオジブリが映画化。
『ゲド戦記』の宮崎吾朗が5年ぶりの監督作品。
翌年に東京オリンピックを控え、新しいものが素晴らしいものと信じていた時代。私も16~17歳だった。
日常生活の制服ひだスカートの寝押しや電気洗濯機(しぼるローラーがついている)が懐かしかった。
実写では見落としてしまうが、このアニメは描写が細かいので懐かしさが倍増した。
声の出演者はみんな◎、台詞にはちゃんと息つぎがある。それなのに、アニメのキャラクターは瞬きしない?に気付いた。
ずっと大きな目を見開いて・・・、気になって仕方なかった。アニメだったらそんなこと「あたり前田のクラッカー」?
※ この当時の横浜と東京新橋がとても遠くに感じたし、のどかな港町から大都会の変化も楽しめた。
流行した歌「上を向いて歩こう」やスター「舟木一夫」、庶民生活がたっぷりと味わえた。
この時代にこの場所で生活した方にとって、ため息なしでは観られない作品。
※ 男女交際も清らかなもので“一緒に帰る=付き合っている”時代だった・・・。(美)
2010年/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/91分
配給:東宝
★2011年7月16日 全国東宝系ロードショー
公式 HP >> http://kokurikozaka.jp/
監督:阪本順治
脚本:荒井晴彦、阪本順治
撮影:笠松則通
音楽:安川午朗
美術:原田満生
出演:原田芳雄(風祭善)、大楠道代(風祭貴子)、岸部一徳(治)、佐藤浩市(バスの運転手)三國連太郎(貴子の父)
雄大な南アルプスの麓にある大鹿村。ここで300年以上前からの歴史をもつ地芝居「大鹿歌舞伎」の公演が5日後に控えていた。
その花形役者であるシカ料理店主・風祭善の元に、18年前、駆け落ちして村を離れた妻・貴子と幼なじみの治の二人が帰って来た。
妻は脳の疾患で記憶をなくしつつあり、途方に暮れた治が、恥を忍んで帰ってきたのだ。
結局、風祭善は駆け落ちしたことすら忘れてしまった貴子を、治ともども店に住まわせることになる。奇妙な共同生活が始まった。
一方、大鹿歌舞伎は公演日が迫っていた。風祭善の相手役が事故で出られなくなってしまったが、
貴子は18年前に演じていた役柄のセリフだけはしっかりと記憶していた。
公演当日。幕が開き、例年通り多くの観客が見守る中、善と貴子、そして村民たちが力を合わせた演目が始まろうとしていた・・・。
この大鹿村の景色は別天地(温泉もあるし)、出てくる方々は大鹿歌舞伎によって、人間を磨き、人生を生き抜いてきた達人ばかり。
脚本のよさも、芝居がかった演技も、大鹿村の生活にふんわりと溶け込んでいた。
ワクワクしながら観た日本映画は久しぶり。大鹿村に行ってみたい。
※ 善(原田芳雄)と治(岸部一徳)の言い合っているシーンは大変な修羅場になりそうな設定だが、なぜか笑わってしまった。(美)
2011年/日本/カラー/35mm/93分
配給:東映
★2011年7月16日 全国ロードショー
公式 HP >> http://ohshika-movie.com/
監督:D・J・カルーソー
脚本:アルフレッド・ガフ&マイルズ・ミラー
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
音楽:トレヴァー・ラビン
出演:アレックス・ペティファー(ジョン/ナンバー4)、ティモシー・オリファント(ヘンリー)、テリーサ・パーマー(ナンバー6)、ダイアナ・アグロン(サラ)、カラン・マッコーリフ(サム)、ジェイク・アベル(マーク)
世界中に散らばった9人の選ばれし若者たちがいた。そのうちの一人ジョンは守護者であるヘンリーとともに、各地を転々と移動する生活を送っていた。それまでの友人も思い出も、自らの痕跡も消し去って別の地に移動しなければならない。ある日3番目の若者が命を落とし、ジョンの能力が覚醒するが、ヘンリーはまだ制御できない力を使うことを禁じる。
新しい町でハイスクールに通うようになったジョンはサラという美少女に出会う。ジョンは人に迎合しない彼女にだんだん惹かれていき、初めて普通のティーンエイジャーとしての日々を送っていた。しかし見えざる敵は背後に迫っており、次のターゲットはナンバー4である自分。守るものができたジョンは逃げ出さずに戦うことを選ぶ。
この若者たちがなぜ逃亡生活を送らねばならないのか、追い詰めてくる敵は誰なのか、作品の中ですこしずつ明らかにされます。守護者はもっと早く真実を告げて準備をさせるべきだ、とつい思ってしまいました。えらくカッコいい女戦士ナンバー6は、『明日、君がいない』(2005)で印象深いヒロインを演じたテリーサ・パーマー。『魔法使いの弟子』では高いところに上らされていましたが、今回は一人で生き抜いてきた孤高の戦士という設定でアクションも気合入っています。ナンバー5、7、8、9がまだ登場していないので、当然続編があるのでしょうね。主人公の成長に期待。(白)
2011年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.movies.co.jp/no4/
アジアのクィア映画(※ AQFFでは「クィア」という言葉をレズビアン, ゲイ, バイセクシュアル, トランスジェンダーを中心とするセクシュアル・マイノリティの総称として使用しています)だけを上映する世界で唯一の映画祭・AQFFが開催されます。
会場:シネマート六本木
日程:2011年7月8日(金)~10日(日)、7月15日(金)~17日(日) 計6日間
日時指定一回券:前売 1300円、当日 1500円
主催:AQFF運営事務局
~AQFF 開催主旨~
アジアにおけるセクシュアル・マイノリティたちは、欧米に比べ抑圧が厳しく、性的指向を理由に逮捕・死刑となる国も存在します。そのため、彼らの存在は“タブー”であり、私たちの身近において、その姿を見る・知る機会はほとんどありませんでした。しかし、彼らは確かに存在し、様々な活動を通じてその声を上げ始めています。
映画界におきましても、欧米作品に比べると、アジアのクィア作品は制作される機会が圧倒的に少ないのが現状です。
しかし、近年良質な作品が次々と発表され、注目を集め始めています。
このような現状にある今、私たちはアジアという身近な環境で制作された作品を通し、アジアのセクシュアル・マイノリティの姿、ライフスタイル、家族や友達、社会との関係の様々なあり方を紹介すること─偏見がまだ残る日本社会に提示していくこと─に大きな意義があると考えています。
その中でも特に、私たちはインディペンデント映画(自主制作映画)を発掘・紹介することに力を入れております。内容に関しての制約が少ない分、より当事者目線で描けるという利点がありながら、商業作品に比べると、発表する場を得るのが格段に難しい自主制作のクィア作品を発掘・紹介することで、当映画祭の意義をより深くすると同時に、新たな才能を発見、日本および世界の映画製作現場を活性化し、映像文化の発展のための一端を担うことを目指しております。
公式 HP >> http://aqff.jp/
監督:チャン・イーモウ(張芸謀)(『HERO』『LOVERS』『初恋のきた道』『紅いコーリャン』)
出演:チョウ・ドンユィ(周冬雨)、ショーン・ドウ(竇驍)、シー・メイチュアン(奚美娟)
時代は文化大革命が続く1970年代初め。 農民こそ最高だとされた社会で、高校生のジンチュウは、下方政策のために、農村へ住み込み実習に行かされる。 宿泊先の村長の家で地質調査をする青年スンに出会う。 年上のスンはいろいろとジンチュウを助け、やがて二人は密かに会うようになる。
久しぶりに純愛映画を観た。ジンチュウ役のチョウ・ドンユイは揺れ動く乙女心を、スン役のショーン・ドウは常にジンチュウの幸せを願う誠実さを・・・。
彼女の穢れない表情、彼の涼しい目元に釘付けされた。
この時代知識人を弾圧したので、教師だったジンチュウの父母は反革命分子として迫害されていた。
母親は、娘の恋愛が外に知るところとなれば職を失ってしまう。だが、若い二人の想いは高まる一方。
といっても接吻すらない。ジンチュウが性に関して非常に無知だからだ。
チャン・イーモウは、無知だがひたむきに生きる少女の心情を引き出す天才。
もう老境の年代である私も、ジンチュウの心に寄り添い、切ない想いを噛みしめた。
※『初恋のきた道』では文盲の少女、この『サンザシの樹の下で』では性に関して無知な少女をヒロインにしている。無知だからこそ大胆になる反面もありハラハラした。
一歩間違えればジョアン・チェン監督の『シュウシュウの季節』だ。(美)
2010年/中国映画/113分/カラー/シネスコ
宣伝・配給:ギャガ株式会社
公式 HP >> http://sanzashi.gaga.ne.jp/
監督・脚本:ディート・モンティエル
撮影: ブノワ・ドゥローム
出演:チャニング・テイタム(ジョナサン・ホワイト)、トレイシー・モーガン(ヴィニー)、ケイティ・ホームズ(ケリー・ホワイト)、レイ・リオッタ(マサーズ)、ジュリエット・ビノシュ(ローレン・ブリッジス)、アル・パチーノ(スタンフォード)ほか
2002年ニューヨーク。ジョナサン・ホワイトはニューヨーク市警の警官になった。持病のある幼い娘と妻との家庭を大切にしていたが、近頃遠いクイーンズ警察に転属になった。警官だった父はジョナサンが子どものころ殉職し、祖母と二人で住んだ場所でもある。当時関わってしまった事件を父の相棒だったスタンフォードがもみ消してしまい、ジョナサンは心に封印しながらもトラウマを抱えている。何年も過ぎた今、クイーンズ警察で誰かに脅迫めいたいやがらせをされたうえ、新聞社には過去の事件を蒸し返す投書が送りつけられていた。
誰が重要な鍵を握るのか、出演の顔ぶれから先読みしてしまうはやめましょう(>自分)。ラストへ続く道筋は一つではないので、想像の余地はいくらでもあるのですが。クイーンズの集合住宅が俯瞰でとらえられるシーンに、この中でどれだけのいさかいや事件がおこっただろうとつい考えてしまいました。白人であるジョナサン・ホワイトはこの地域から出て、マイホームを手に入れていますが、彼をかばってくれた黒人の幼馴染はそこから出ないまま。追い詰められていくジョナサンが、その幼馴染を疑ってしまうくだりが悲しいです。権力とお金が集まるところが腐敗しやすいのも世の常ながら自浄作用よ、働け。(白)
2010年/アメリカ/カラー/95分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:日活
公式 HP >> http://inbou-daishou.com/
監督・脚本:シュエ・シャオルー
製作:ビル・コン
撮影:クリストファー・ドイル
音楽:久石譲
出演:ジェット・リー(ワン・シンチョン)、ウェン・ジャン(ターフー)、グイ・ルンメイ(リンリン)、ジュー・ユアンユアン(チャイ)
平凡にして偉大なるすべての父と母へ─
チンタオの水族館で働くワン・シンチョンは、妻亡き後自閉症の息子ターフーを男手一つで育ててきた。人と関わるのが苦手なターフーの世話をつききりでみてきたシンチョンは、自分が末期がんで余命がいくばくもないこと知る。ターフーを不憫に思い、心中を図るつもりで海に飛び込むが、泳ぎの得意なターフーは縄を解いて逃げ出してしまう。シンチョンはターフーが一人でも生きていけるように、少しでも幸せであるようにと残された時間を使う。毎日根気よく生活の技術を教え始めるが、時間は刻々と過ぎていく。
妻に先立たれてしまい、障がいのある一人息子の行く末を案じる父親をジェット・リーが情細やかに演じています。シュエ・シャオルー監督は、学生時代から自閉症児の施設にボランティアとして通っており、その体験と思いをこの作品にこめています。一人っ子政策を進めた中国では、親がいなくなったとき頼りになる兄弟姉妹がありません。この作品では普段なにくれとなく気にかけてくれる隣人があり、施設探しではターフーのかつての恩師が助けになってくれます。チンタオの景色や水族館での撮影も美しく、現実はもっと厳しいだろうと思いつつも、人の可能性や善意を信じたくなる映画です。(白)
2010年/中国/カラー/98分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クレストインターナショナル
(C)2010 Nice Select Limited. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://kaiyoutendo.com/
監督・脚本:中島央
撮影:豊田実
音楽:坪口昌恭
出演:ジョシュ・ロング レベッカ・ジェンセン ジョン・ボーレン ルアナ・パラーモ キャリー・ラトルッジ
新進気鋭の若手脚本家ヴァンセント・ナイト(ジョシュ・ロング)は、5年前に華々しくデビューを飾ったものの、その後は次回作が書けずスランプに苦しんでいた。同棲中の彼女(レベッカ・ジェンセン)との仲は落ち着いているものの、創作意欲を刺激するような事件はなく、彼女との実生活をベースに書き始めたラブ・ストーリーはすぐにアイディアに詰まってしまう。そんな彼に、映画会社のエージェントであるボブ(ジョン・ボーレン)は、最後のチャンスとして一週間以内に脚本を仕上げるように命じた。追いつめられたヴィンセントは、自分の気持ちと正直に向き合い、脚本を書き上げようとするが……。
アメリカで映画制作を学び、脚本家としてのキャリアをスタートさせた中島央監督の初長編にして、日本デビュー作。スランプに陥った脚本家が現実と妄想の間をさまよいながら進む物語。日本人監督でありながらも、全て英語で場所も現地で撮影されています。『ノルウェイの森』で感じた逆です。日本の映画として見ていたつもりがどこか異国臭がするという。劇中には日本を感じられるものはないはずなのですが、とても共感できました。
また、彼らを遠い世界に感じることなく、身近に感じることが出来ました。というのも、監督の育った国柄もあるとは思いますがそれだけでなく、脚本家という特別な職業をピックアップしながらも物語の主軸を恋愛に置いているからこそ、そう感じられたのだと思います。近くも遠くの世界という映画を表現した普遍的な愛の物語、とても暖かい世界でした。監督の次回作も決定しているらしいので要チェックです。(明)
2010年/アメリカ/カラー/89分/
配給:アルゴピクチャーズ
公式 HP >> http://www.lily-movie.com/
監督:ディート・モンティエル
脚本:ディート・モンティエル
撮影:ブノワ・デローム
編集:ジェイク・プシンスキー
衣装:サンドラ・ヘルナンデス
音楽:デヴィット・ウィットマン、ジョナサン・エリアン
出演者:チャニング・テイタム(ジョナサン・ホワイト)、トレイシー・モーガン(ヴィンセント・カーター)、ケイティ・ホームズ(ケリー・ホワイト)、レイ・リオッタ(マリオン・マサーズ)、ジュリエット・ビノシュ(ローレン・ブリッジス)、アル・パチーノ(チャールズ・スタンフォード)
ニューヨーク・クイーンズを舞台に過去に揉み消された事件の暴露と、腐敗した権力構造があぶり出されて行くクライムサスペンス。
ニューヨーク市警のジョナサンはクイーンズ地区に配属された。少年の頃、ジョナサンはこの街で誤って人を殺した事件を隠蔽した過去を持っていた。しかしその過去をほのめかす脅迫状が届き、新聞に隠蔽された事件の記事が掲載されて…。
幼いときに運悪く2人を殺してしまったジョナサン。確実に知っていたのは仲良しの黒人少年ヴィニーとその妹ヴィッキー。そして殉職したジョナサンの父の相棒の刑事スタンフォードだけ。誰が暴露しているか疑心暗鬼になり、ジョナサンは破滅の道へと進んでいくが、犯人も自分の想像とは違う方向に展開していくという皮肉がこめられている作品。
ジュリエット・ビノシュやアル・パチーノなど大物俳優が出ている割りには、小ぶりにまとめてあるのが惜しいが、ストーリー展開は現実的で納得がいく。
アメリカ公営住宅を舞台の映画と聞けば、去年公開されたリチャード・ギア主演の『クロッシング』を思い出すが、このニューヨーク・クイーンズの公営住宅を、上から撮った映像は美しく、幾何学的な巨大迷路のように見え、なにかをしっかり隠している城砦のようにも見えた。(美)
2010年/アメリカ/ドルビーデジタル/95分/PG-12
配給:日活
★2011年7月9日より銀座シネパトスで上映中、8月~9月に全国順次ロードショー
公式 HP >> http://inbou-daishou.com/
製作・脚本・監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
音楽:ブライアン・イースデル
指揮:サー・トーマス・ビーチャム
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
撮影:ジャック・カーディフ
美術:ハイン・ヘロックス
振付:ロバード・ヘルプマン、レオニード・マシーン
出演:モイラ・シアラー(ヴィクトリア・ペイジ)、アントン・ウォルブルック(ボリス・レルモントフ)、 マリウス・ゴーリング(ジュリアン・クラスター)、ロバート・ヘルプマン(イワン)、レオニード・マシーン(グリシャ・リュボフ)
バレエ団を主宰するボリス・レルモントフはロンドン公演の折に2人の新人を発掘した。一人は新進作曲家のジュリアン・クラスター。もう一人は社交界の令嬢、ヴィクトリア・ペイジ。彼女は群舞のダンサーとしてスタートを切ったが、プリマのボロンスカヤが結婚引退した後、新作バレエ「赤い靴」のプリマに抜擢される。クラスターも作曲を担当し、初演は大成功をおさめた。どの演目も次々と自分のものにしていくヴィクトリアは、芸術への挑戦という同じ目的を持ったクラスターと、強く結ばれていく。二人の関係は芸術至上主義のレルモントフの知るところとなり、ヴィクトリアをバレエに専念させるためにクラスターは解雇されてしまう。
マーティン・スコセッシ監督が3年の歳月をかけて蘇らせた1本。60年以上も前の作品であるにも関わらず、芸術と人生のはざまで引き裂かれる2人の物語としても、ふんだんに盛り込まれたバレエシーンを観るにしても、少しも古くありません。「仕事か家庭か」で悩む女性の物語ともとることができます。舞台が一幅の絵のようですが、これは美術監督のハイン・ヘロックスが画家で、まず絵を描いて撮影のジャック・カーディフに見せたからでしょうか。1948年のアカデミー賞で、劇映画音楽賞のほか、美術監督・装置賞を受賞しています。「赤い靴」上演のシーンは、映画的手法も駆使して、鮮やかな赤い靴から目が離せないまま、素晴らしい舞台を見終えた気分になります。
主演のモイラ・シアラーは実際にバレエ団のプリマで、この作品で初めての女優としてデビューしました。今のバレリーナよりぽっちゃりしていますね。映画と違って、実生活では作家と結婚して一男三女に恵まれ、幸せな結婚生活を全うしたそうです。
日本で公開されたのは1950年。当時はまだ白黒の映画が主流でしたので、この作品は「総天然色映画」と宣伝され、リアルタイムで鑑賞した読者の方が本誌72号「私のこの1本」に思い出を寄せています。(白)
1948年/イギリス/カラー/136分/モノラル
配給:デイライト、コミュニティセンター 宣伝:メゾン
公式 HP >> http://www.red-shoes.jpn.com/
監督:ケネス・ブラナー
脚本:アシュリー・エドワード・ミラー、ザック・ステンツ、ドン・ペイン
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
プロダクションデザイン:ボー・ウェルチ
衣装デザイン:アレクサンドラ・バーン
音楽:パトリック・ドイル
出演:クリス・ヘムズワース(ソー)、ナタリー・ポートマン(ジェーン・フォスター)、トム・ヒドルストン(ロキ)、ステラン・スカルスガルド(エリック・セルヴィグ教授)、コルム・フィオール(ラウフェイ)、レイ・スティーヴンソン(ヴォルスタッグ)、イドリス・エルバ(ヘイムダル)、カット・デニングス(ダーシー)、浅野忠信(ホーガン)、レネ・ルッソ (フリッガ)、アンソニー・ホプキンス(オーディン)
神々の国アスガルドの王オーディンはいつしか老齢となり、最強の戦士である息子ソーに王位を譲る準備にとりかかっていた。氷の国ヨトゥンハイムを統べるラウフェイとは長年の協定により平和を維持してきたが、ソーの戴冠の日、ラウフェイの兵士数人が協定を破って進入する。短気なソーは独断でヨトゥンハイムへ出かけ、復讐しようとする。危うく大惨事になるところを止めたオーディンは、武器のムジョルニアはじめすべてをソーからとりあげ、ミッドガルドの世界にある地球へと追放した。
そのころニューメキシコの砂漠では宇宙物理学者のセルヴィク博士、ジェーンとダーシーが天体の異変を調査していた。そこへ神々の世界からソーが落ちてくる。
アメリカンコミックスを才人ケネス・ブラナーが映画化。あまりにも強くて傲慢なオレ様ヒーローが、神の力を剥奪されて落ちてきたのは地球。出会った宇宙物理学者ジェーンに、あちらとこちらの世界の関わりは、ソー自身が説明するくだりがあるので、注目してください。オレ様なソーをクリス・ヘムズワース(筋肉マンみたいです!)。このところ出ずっぱりのナタリー・ポートマンが、この乱暴者の神に大きな影響を与えていくジェーンを演じます。ソーを助ける三銃士の一人ホーガンに浅野忠信。渡辺謙についでハリウッドで活躍していってほしいものです。
幾つめのヒーローものになるのか、もう数えられませんが「神々の世界」という今までになかった舞台をどう視覚化しているのかも見所。重厚な舞台装置や衣装は保存してどこかで見せてほしいくらいです。お話は始まったばかり。これから二つの世界はどうなっていくのか楽しみにしましょう。
いかにもいまどきの女の子のダーシー、どこかで見たことがある・・・と探したら2008年『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』でチャーリーがときめくスーザン役の子でした。再会すると嬉しいものです。(白)
2011年/アメリカ/カラー/115分/シネスコサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウントピクチャーズ ジャパン
(C)2010 Marvel,(C)2010 MVLFFLLC. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.mighty-thor.jp/
監督 : セミフ・カプランオール
出演者 : ボラ・アルタシュ、エンダル・ベシクチオール
6歳のユスフは、人里離れた森に囲まれた家で両親と暮らしている。蜂蜜取りの名人のお父さんが大好きだ。「今日は何をした? 秘密の話なら小声でいいよ」という父の耳元にこっそり話しかけるユスフ。学校で教科書がうまく読めなかったユスフは声が出せなくなっていた。その年、蜂が森からいなくなってしまった。父は、蜂を求めて遠くの黒崖に行くといって家をあとにする。翌々日戻ると言っていたのに、父はなかなか帰ってこない・・・
大自然を舞台にゆったりと時が流れ、『パンドラの箱』(イェシム・ウスタオウル監督)、『ゼフィール』(ベルマ・バシュ監督)、『時間と風』(レハ・エルデム監督)などのトルコ作品を思い起こしました。人は自然に逆らっては生きていけないこと、人の命には限りがあることを切々と感じました。そして、人と人との繋がりの大切さも。
第60回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品
2010年/トルコ、ドイツ/カラー/アメリカンビスタサイズ/ドルビーデジタル/103分
配給:アルシネテラン
セミフ・カプランオール監督が青年期ユスフの話である『ミルク』の脚本を書いているときに、この若者が大人になった未来『卵』と幼い少年だった過去『蜂蜜』に想いを馳せたことから誕生したユスフ3部作。その完結編にあたる『蜂蜜』の公開を記念して、第1部『卵』、第2部『ミルク』も公開されます。
第1部『卵』原題:YUMURTA
2007年/トルコ・ギリシャ/トルコ語/カラー/97分
イスタンブルで古本屋を営みながら暮らす詩人のユスフ。母親が亡くなったとの知らせを受け、故郷ティレの町に車を走らせる。葬儀が終わり、ユスフは遠縁の娘アイラがこの5年間、母と一緒に住み面倒をみてくれていたことを知る。アイラから、羊を生贄にしてほしいという母の遺言を聞き、アイラと共に願掛けの場所へ向かう・・・
故郷の家の冷蔵庫に、ユスフが処女詩集で文学賞を取ったという新聞記事が貼ってあって、母親が息子を誇らしく思いながら遠くで見守っていたのを感じました。いつも植木に話しかけていたというお母さん・・・ 息子に会いたかっただろうと涙、涙・・・
第2部『ミルク』原題:SÜT
2008年/トルコ・フランス・ドイツ/トルコ語/カラー/102分
高校を卒業し、母親のしぼったミルクを売り歩くユスフ。時間があると、詩を書いては、文芸誌に投稿している。掲載された本が届いていないかと配達されるのが待ちきれず郵便局を訪ねる日々。ある日、ユスフは本屋で詩の好きな娘と知り合う・・・
母と二人暮らしで生活が苦しい中、詩作に耽るユスフ。そして、淡い恋心。夢を持ち、恋に憧れた青春の日々が懐かしい。
蜂蜜、ミルク、卵といえば、どれもトルコの朝食に欠かせないものたち。自然の恵みで彩られたトルコの豊かな朝食を思い出します。ユスフ3部作も、どれもがトルコの豊かな自然を感じさせてくれる作品。
ユスフ3部作の第1部にあたる『卵』では、詩人として生きるユスフ、第2部では、高校を卒業し、母の営む牛乳屋さんを手伝いながら詩を書いては雑誌に投稿するユスフ、そして第3部では、6歳のユスフと養蜂家のお父さんとの関係が描かれています。詩人として名を成したユスフが、どんな青年期を過ごしたのか、そして幼心に刻み込まれるようなどんな経験をしたのだろうか・・・と、玉葱の皮を剥いでいくように、過去に迫っていくという手法で監督は3部作を作ったと聞いていました。なのに、『蜂蜜』の最初の方で、お父さんがユスフにカレンダーを読ませる場面があって、「2009年10月21日 ヘジラ暦1388年・・・」と、時代が『卵』のユスフの幼少期ではないことを知り、混乱してしまいます。(ちなみに、このカレンダー、その日の歴史的出来事やコーラン等の言葉が掲載されているもの。入手してみたい!) 3作を観終わって、3部作のユスフが同一人物なのか、そうでないのかは、それほど重要なことでなく、小さい頃からの様々な経験によって、人格が形成されていくことを感じ取ればいいのだと思いました。
3作それぞれに、蜂蜜、ミルク、卵の3つのアイテムが、重要な鍵となってさりげなく登場するのを見つけるのも楽しいでしょう。『卵』では、「BAL(蜂蜜)」のタイトルの本を持っているユスフが一瞬写って、彼の詩集のタイトルが「蜂蜜」なのだと思わせてくれます。『蜂蜜』では、ミルクを飲めないユスフに代わって、お父さんがこっそりミルクを飲んでくれます。さまざまな隠し玉をぜひ見つけてください。(咲)
『ミルク』、『卵』はエーゲ海地方を舞台にしていますが、最後の作品『蜂蜜』の舞台は黒海地方リゼのチャムルヘムスィン。ここをロケ地に選んだ理由は、こちらでどうぞ!
http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20090831_100716.html
★7/2(土)、銀座テアトルシネマ他全国順次ロードショー
7/30(土)、銀座テアトルシネマにて第1部「卵」/第2部「ミルク」連続上映
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/honey/
監督・脚本:チェ・ドンフン
製作総指揮:キャサリン・キム
撮影:チェ・ヨンファン
音楽:チャン・ヨンギュ
出演:カン・ドンウォン(チョン・ウチ)、キム・ユンソク(ファダム)、イム・スジョン(ソ・インギョン)、ユ・ヘジン(チョレン)、ベク・ユンシク(チョングァン)ほか
500年前、神秘の笛によって天上の牢獄に閉じ込められていた妖怪たちが、門番の仙人の手違いで脱獄してしまった。道士ファダムと仙人たちは高名なチョングァン大師に会い、笛の力を借りようとする。ファダムは笛を手に入れるためチョングァン大師を殺し、その罪をチョン・ウチにかぶせた。そうとしらずに仙人はチョン・ウチと相棒のチョレンを封印することにし、ファダムがいったんは手にした笛もチョン・ウチと一緒に掛け軸の中に入れてしまった。
時が流れて現代。仙人の瓢箪が壊れ、封印されていた妖怪が再び地上に現れた。人間に姿を変えて暮らしていた3人の仙人たちは、チョン・ウチに妖怪を退治させようと絵の中から解放した。チョン・ウチとチョレンはすっかり変わってしまった街を歩くうち、以前助けた未亡人にうりふたつの女性ソ・インギョンに出会う。
チョン・ウチとは実在したと伝えられている英雄で、数々の小説で親しまれています。この作品は舞台を現代に移し、韓国初のスーパーヒーロー作品となりました。ワイヤーワークでここと思えばまたあちら、と飛んだり跳ねたりのアクションを見せるカン・ドンウォンはひたすらカッコいいです。このところシリアスな作品が続いていましたが、相棒役のユ・ヘジンとのコメディ演技や、ロングコートやレザーのファッションも見せてくれてファンには嬉しい1本です。主役にまさるとも劣らない活躍のユ・ヘジンには、ずっと注目しています。いろいろな作品で顔を見る貴重な俳優さん。(白)
2009年/韓国/カラー/136分/シネスコ/ドルビーデジタル
配給:ツイン 宣伝:フリーマンオフィス
(C) 2009 CJ ENERTAINMENT, UNITED PICTURES & ZIP CINEMA. ALL RIGHTS RESERVED
公式 HP >> http:// www.jeonwoochi.jp/
監督:J.J.エイブラムス
脚本:J.J.エイブラムス
撮影:ラリー・フォン
音楽:マイケル・ジアッキーノ
出演:カイル・チャンドラー(ジャクソン)、エル・ファニング(アリス)、ジョエル・コートニー(ジョー)、ロン・エルダード(デイナード)
1979年の夏、オハイオ州の田舎町。保安官補の父と暮らす14歳の少年ジョーは、突然の仕事中の事故で母親を亡くし、 親子ともども深い悲しみを抱えていた。ジョーの唯一の楽しみは、夏休みに入ったこの時期に、友だち6人と8ミリで「ゾンビ映画」を撮ることだった。ジョーはメイキャップ担当で、憎からず想っているアリスの顔に化粧が出来るのも密かな楽しみだった。 だが、ジョーの父は仲間の付き合いを快く思っていないのがジョーには不満だった。 脚本・監督は行動派のチャーリー。彼の考えで夜中に撮影することになった。 駅の線路脇でカメラを廻していると貨物列車に小型トラックが突っ込み、脱線爆発の大事故が発生する。 ジョーたちは逃げ出したが、残した8ミリカメラは倒れたまま貨車の残骸を写していた。そこには・・・。
スピルバーグが製作をしているから「E.T.」を予想していたが、「スタンド・バイ・ミー」の趣がある青春ものだった。 子どもたちは自然の演技で、一人ひとりが映画作りに役立つ特技があり、子どもながらよく頑張っている姿は爽やかだ。 ダコタ・ファニングの妹エル・ファニングは、『somewhere』に出ていたが、また違った少女の美しさで魅了させてくれる。 ジョエル役は素人だが、これもまた恋心を初々しく演じている。
この作品には事実が含まれている。それがわかって観ると面白さ倍増するはず。
★エリア51の謎
この秘密施設は、アメリカのネバタ州ラスベガスの北北西に位置する広大な秘密施設。
「UFOが運び込まれているのでは?」「宇宙人がいるのでは?」といった噂が絶えない。
★政府陰謀の謎
ここで描かれる列車の脱線事故は、1979年にオハイオ州で実際に起こった出来事で、
この列車は冷戦下の核兵器に関連したものを運んでいたという噂がある。
この事故は公式な記録が残っておらず、政府が隠蔽のために事故記録を抹消したのではないかと噂されている。
★コンテナを破壊するパワーを持った<何か>の謎
エリア51から輸送中のコンテナの中にいる、破壊的なパワーを持った何か。
海外では、怪物の画や猟師が偶然撮ってしまった謎の写真など、すでにいろいろな情報が錯綜している。
※エンドロールで子どもたちの8ミリ「ゾンビ映画」が流れるが、なかなかの出来栄えだった。(美)
2011年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/112分
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
★2011年6月24日 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://www.super8-movie.jp/
監督・プロデューサー:ジャン=ポール・ジョー
プロデューサー:ベアトリス・カミュラ・ジョー
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:セヴァン・スズキ、ハイダグワイの人びと、古野隆雄、福井県池田町の人びと、バルジャック村の人びと、ポワトゥーシャラントの人びと、コルシカ島の人びと、オンディーヌ・エリオット、ニコラ・ウロ、ピエール・ラビ、
1992年、地球環境サミットで伝説のスピーチをした12歳の少女、セヴァン・スズキ。「どうやってなおすかわからないものを壊し続けるのはもうやめてください」と地球環境の保護を訴えた。彼女は29歳になり、もうすぐ母となる立場から、「大切なのは生活の質と健康、子ども。自分たちをどう救うかを考えていきたい」と語りかける。
監督は2009年『未来の食卓』を発表し、大きな反響をまきおこしたジャン=ポール・ジョー監督。地球のさまざまな場所へカメラとともにでかけ、地球と共存する人々の活動を紹介する。前作に登場したバルジャック村のその後、福岡県の合鴨農法、福井県池田村の無農薬食材作りなど日本で「食」を守り人々も紹介される。この試写を観た後に原発事故が起きた。セヴァンはなんと思っただろうか。代わりに先のスピーチを借り、単語を置き換えて「どうやって処理したらいいかわからないものを作り続けるのはもうやめてください」と言いたい。(白)
2010年/フランス/カラー/120分/ドキュメンタリー
配給・宣伝:アップリンク
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/severn/
監督:亀井亨
原作・脚本:永森裕二
撮影:中尾正人
音楽:野中“まさ”雄一
出演:小日向文世(犬飼保)、ちはる(犬飼潤子)、木南晴夏(鳥飼カエデ)、池田鉄洋(蓮田喜一郎)、徳永えり(菊田萌子)、でんでん(鳥飼正)、佐藤二朗(芝二郎)、清水章吾(蓮田重彦)
犬が嫌いな、犬飼さんちに、犬が来ました
48歳の犬飼保は離島のスーパーに単身赴任中。家族とのネット会話が唯一の楽しみだ。でも最近なんだか様子がおかしい。そんなとき無責任な店長のおかげで新製品の苦情処理のために東京出張となった。喜んで1年ぶりの自宅に帰ってみると、そこには保の大の苦手な犬がいた!いつも笑っているような表情のサモエド犬のサモン。父親が単身赴任で寂しいからと、子どもたちが飼い始めたのだった。
柔らかい笑顔がトレードマークの小日向さん。その笑顔にそっくりな犬との共演になりました。どっちが先にキャスティングされたんでしょう??大忙しの小日向さんかな、やっぱり。お父さんがいないときに家族に加わったサモンは、家の中の序列で上になってしまったようで、後からやってきたお父さんが奮闘します。これまでの犬猫シリーズの脚本を担当してきた永森裕二氏、今回初めて、犬が苦手で、コミュニケーションをとるのに苦労する主人公をすえました。この作品ができるまでの間にこっそり犬を家族に迎え入れたそうなので、後の作品で違いが出てくるのかもしれません。いつもユニークな役柄で目をひく池田鉄洋さんがちゃらんぽらんな店長を、佐藤二朗さんがペットショップ店員を演じていて笑いを誘います。(白)
2010年/日本/カラー/92分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:AMGエンタテインメント 宣伝:マジックアワー
(C)2011「犬飼さんちの犬」製作委員会
公式 HP >> http://inukaisan.info/
監督:ユエン・ウーピン
脚本:クリスティン・トー
撮影:チャオ・シャオティン
音楽:梅林茂
出演:チウ・マンチェク(スー・サン)、ジョウ・シュン(シャオイン)、アンディ・オン(ユアン)、グオ・シャオトン(部下)、ミシェル・ヨー(ユ医師)、ゴードン・リュー(仙人)、ジェイ・チョウ(武神)
戦乱の清朝時代。高名な戦士スー・サンは親王を助けた手柄を義兄ユアンに譲り、自分は武術を極めようと妻シャオインと田舎に引きこもる。5年後長官となったユアンは、かねてより親の仇と恨んでいたスー・サンの父親を殺害する。「五毒邪拳」を究め正道を外れていたユアンの父が成敗されたのだったが、そのユアンもまた同じ技を身につけていた。スー・サンは邪拳に破れて重傷を負い、一人息子フォンもさらわれてしまった。ユ医師によって一命を取り留めるが、心の傷は癒えず酒に溺れる日々が続いた。シャオインの励ましでようやく立ち直ったスー・サンは武術の鍛錬に励み、仙人や武神と出会って戦ううち新しい技「酔拳」を習得する。
『ドランク・モンキー/酔拳』は1978年製作で、日本では翌年の公開。初めてジャッキー・チェンが日本に知られた作品です。師匠役のユエン・シャオティンとの面白いかけあいと、「酔うほどに強くなる」というそれまで観たことがなかったカンフーアクションを強烈に覚えています。今回の作品も同じユエン・ウーピン監督が師匠のスー・サンを主役に、酔拳と彼の壮絶な戦いの物語を誕生させました。いつもすっきりした立ち姿のチウ・マンチェクがスー・サン。驚いたのはアンディ・オンの悪役っぷりと、その痛すぎる防具。目が点です。2人の力の入った戦いに手に汗にぎり、これがすごくて、おかげで後半スー・サンがよれよれになってから外国人勢との戦いはかすみました。(白)
2010年/中国/カラー/115分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ツイン
(C)2010 UNIVERSAL STUDIOS GRAND PLENTIFULL HOLDINGS GROUP LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://www.suiken-movie.jp/
演出: いのうえひでのり (舞台スタッフ)
作: 中島かずき
作詞: 森雪之丞
出演:古田新太 天海祐希 浦井健治 山本太郎 神田沙也加 森奈みはる 橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと 藤木孝
17世紀のヨーロッパ、イベリア半島。天下の大泥棒・石川五右衛門(古田新太)は女海賊アンヌ・ザ・トルネード(天海祐希)の用心棒として暴れまわっていた。そんなある日、アンヌが実は小国の王家継承者だと判明。王亡き後の腐敗政治を知らされた彼女は、持ち前の男気で女王を引き受ける。しかし、最初の仕事は海賊の討伐。不本意ながらも昔の仲間や五右衛門と対立することになる。そして五右衛門は、この一連のことを不審に思い、城へ乗り込んでいく。
とにかく天海祐希がかっこいい。私は彼女の宝塚時代を知らないのだが、きっとその時を知る人は懐かしく感じるだろうし、私のように知らない人は免疫がないのでメロメロになってしまうと思う。この女海賊の役は天海祐希以外にありえないのではないか、というくらいはまり役だった。そして、古田新太はやっぱり素敵。数々のドラマや映画で目にする機会はあったが、舞台の彼はまた少し輝きが違う。頭にミスマッチ(?)のカツラが始めは笑ってしまうのだが、途中から「面白いのに、なんか…かっこいい」という事態が起きてくる。さすがだ。
ゲキ×シネは舞台のライブ感をそのまま映画館で上映するという、新しい試みだ。役者の表情がアップになったり、演出の見せたい所がより明確になっていたりするので、会場の客席とはまた違った楽しみ方ができる。(しかも安い!)この企画は2004年から始まっているそうだが、今回の『薔薇とサムライ』で知名度が一気に急上昇するのではないだろうか。(明)
2011年/日本/カラー/197分(途中休憩有)/5.1サウンド
配給:ヴィレッヂ ティ・ジョイ
(C)2011 劇団☆新感線・ヴィレッヂ
公式 HP >> http://www.bara-samu.com/
監督:乾 弘明
プロデューサー:益田祐美子 朴 埈永
エクゼクティブプロデューサー:金住則行 蘇元永 金成煥
旅人:入矢麻衣
語り:西岡德馬
出演:崔 光雄 立野敏昭 植島寶照 山田耕健 李 明勲 芦澤七郎他
日本で飛鳥時代の玉虫厨子の復元が進んでいた頃、韓国でも新羅時代の玉虫装飾馬具が職人の手によって復刻されていた。日本で玉虫厨子が作られたのは、今からおよそ1400年前。韓国・慶州で発掘された玉虫装飾馬具は約1500年前のもの。同じ技法で作られた両国の装飾品からは、海峡を越えて文化が継承されたことが推し量られる。それが時を同じくして現代に蘇った偶然。在日4世の入矢麻衣がナビゲーターとなって、復元に携わる職人たちの作業場を訪ね、さらには1400年以上前から続く日韓の文化交流の軌跡や辛い歴史を辿る。
『蘇る玉虫厨子』(乾弘明監督・2009年)を観た韓国蔚山MBC放送局の朴埈永プロデューサーからMBC制作のTV番組「千年不死の光、1500年ぶりに復活」のDVDが送られてきたことをきっかけに誕生した日韓合作ドキュメンタリー。何千枚もの玉虫の翅(はね)を古の技法を想像しながら装飾していく両国の職人たちの真摯な姿に目を見張ります。奈良、対馬、壱岐、ソウル、慶州、釜山を訪れて日韓両国の文化交流の歴史を紐解く中で、豊臣秀吉の朝鮮出兵や、江戸時代の鎖国されていた頃にも続いていた朝鮮通信使のことなども語られます。本作の魅力は何といっても旅人の入矢麻衣さん。撮影当時高校生だった麻衣さんが、在日4世である自身のアイデンティティを見つめ、さらには日韓の新たな架け橋になろうと模索する姿が素敵です。(咲)
2011年/日韓合作/カラー/ステレオ/65分
※観光庁「スクリーンツーリズム促進プロジェクト推進事業」選定
配給:海峡をつなぐ光製作委員会 配給協力:東京テアトル
公式 HP >> http://heiseimaster.com/kaikyou/
期間:2011年6月23日(木)~6月26日(日)
会場:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇
1993年から2005年まで、毎年6月に横浜で開催されていた「フランス映画祭横浜」が、2006年に会場を東京・大阪などに移し、時期も3月に変更されました。六本木ヒルズでのレッドカーペットも定着したかに思っていましたが、今年は、また時期が6月に戻り、場所も有楽町に変更となりました。運営も、有楽町朝日ホールでの開催が定着した東京フィルメックスがユニフランス・フィルムズと共に担当しています。
今年の団長はリュック・ベッソン監督。オタール・イオセリアーニ、ジャン=ポール・ジョー、レベッカ・ズロトヴスキ、ファブリス・ゴベールなどのアーティストと共に来日します。
【上映作品】
<長編作品>
主催 ユニフランス・フィルムズ
共催 朝日新聞社
公式 HP >> http://unifrance.jp/festival/
共同監督:阿武野勝彦・鈴木祐司
撮影:塩屋久夫
音声・水中撮影:森恒次郎
音楽:本多俊之
ナレーション:宮本信子
出演:澤井余志郎、野田之一
―まだ、ありがとうとは言えない。―
三重県四日市市、磯津地区―公害裁判へ立ち上がった人々と、38年にわたって彼らを支え続けた男がいる。
澤井余志郎さんは、1966年から最も被害の酷い磯津地区に足を運び、患者たちの聞き取りを始めた。磯津は第一コンビナートの対岸にあり、有害物質を含む工場の煤煙にさらされていた。当時の磯津の大気は、環境基準の4・5倍の亜硫酸ガスで汚染されていた。
1967年、第1次訴訟。原告団の一人が野田之一さん。3代続く漁師の家で14歳から海に出た。伊勢湾一の漁師になるのが夢だったが、働き盛りの34歳のとき気管支喘息を発症、10年にわたる入院生活を送った。1972年、5年に及んだ裁判で原告側勝訴。このとき野田さんは「四日市にはじめて青空が戻ったときに、ありがとうとお礼を言いたい」と語った。澤井さんは弁護団と患者を結ぶパイプ役として奔走した。文集を発行し、文章と写真での記録を始め、現在も続いている。
日本の公害病は?と聞かれてすぐ回答できるでしょうか? 話題になったそのときは記憶していても、特に関わりがなければ時間の経過とともに忘れてしまいます。そのうちの一つ、石油コンビナートの排煙による「四日市喘息」に苦しんだ人々と、支援し続けた人のドキュメンタリーです。澤井さんは40年間記録を続け、公害文集を60冊発行しました。最初はガリ版で、現在は80歳を過ぎて覚えたパソコンで1文字1文字記しています。娘さんは「いつも文集のガリ切りをしていた背中ばかり覚えている」といいます。温和な表情の澤井さんのどこに長い間患者たちを支え続ける強い意志と、エネルギーがあるのでしょう。今も澤井さんと野田さんは小学校での語り部を続け、澤井さんは関心と監視が絶えないようにと記録を継続しています。(白)
*日本の四大公害病(ウィキペディアより)
水俣病 1956年熊本県水俣湾 有機水銀による水質汚染や底質汚染
第二水俣病(新潟水俣病)1964年新潟県阿賀川流域 有機水銀による水質汚染や底質汚染
四日市ぜんそく 1960年から1972年三重県四日市市 主に亜硫酸ガスによる大気汚染
イタイイタイ病 1910年代から1970年代前半に富山県神通川流域 カドミウムによる水質汚染
2010/日本/カラー/HD/94分/ドキュメンタリー
製作・著作・配給:東海テレビ
配給協力:東風 宣伝協力:スリーピン
公式 HP >> http://www.aozoradorobo.jp/
監督:ハイレ・ゲリマ
出演:アーロン・アレフェ/アビュユ・テドラ/テジェ・テスファウン/タケレチ・ベイエネ
1990年代初頭、ドイツから故国エチオピアの村の母のもとに帰ってきたアンベルブル。ベルリンで暴徒に襲われ片足を失った彼を、村人たちは冷ややかな目で迎える。アンベルブルは、これまで自分の辿ってきた道を振り返る。1970年代初頭、医者になることを志してドイツに留学。そこで味わった人種差別。そして、皇帝ハイレ・セラシエ1世が廃位したニュースを目にし、社会変革を遂行しようと故国に戻った友人を追って帰国するも、知識人と労働者階級が対立し自己批判を求められる。その後、軍事独裁政権に政治目的で利用され、東ドイツへ送られる。そして再び戻ってきた故国。この国に未来はあるのかと自問する日々・・・
エチオピア正教の絵画を背景に、聖歌と思われる魂の叫びのような唸る声が響いてきて、冒頭から惹き込まれました。エチオピアの1970年代から1990年代の現代史を背景にした作品。時代が交錯して、ちょっとわかりにくい部分はあるものの、エチオピアで皇帝廃位以降、中国の文化革命のような階級闘争があったことなど、エチオピアの現代史を垣間見ることができました。また、エチオピアの因習や風俗も興味深いものでした。なお、「テザ」とはエチオピアの言語アムハラ語で「朝露」と「幼少期」の2つの意味を持つそうです。タイトルに込めた監督の思いは? (咲)
2008年/エチオピア=ドイツ=フランス/アムハラ語・英語/カラー/35mm/140分
配給:シネマトリックス
公式 HP >> http://www.cinematrix.jp/teza/
グラウベル・ローシャ(Glauber Rocha)1938年~1981年
ポルトガルで次回作を準備中、43歳の若さで急逝したグラウベル・ローシャは、ブラジルのニューシネマ「シネマ・ノーヴォ」を代表する映画監督。没後30年を記念して、代表作5作品が連続上映されます。
上映作品
◆『バラベント』(Barravento)
1962年/モノクロ/79分★日本初公開
◆『黒い神と白い悪魔』(完全版)(Deus e o Diano na Terra do Sol)
1964年/モノクロ/118分 第17回カンヌ国際映画祭パルムドールにノミネート
◆『狂乱の大地』(Terra em Transe)
1967年/モノクロ/107分 ★日本初公開
第20回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞
◆『アントニオ・ダス・モルテス』(O Dragao da maldade Contra o Santo Guerreiro)
1969年/カラー/100分
第22回カンヌ国際映画祭監督賞
◆『大地の時代』(A Idade da Terra)
1980年/カラー/151分 ★日本初公開
各作品の詳細は、公式HPで確認ください。
“狂気の映像作家”と形容されるグラウベル・ローシャ。鮮烈なデビューを飾った長編第一作の『バラベント』から、遺作となった『大地の時代』を含む5本がデジタルリマスター版で上映されます。
『アントニオ・ダス・モルテス』や『黒い神と白い悪魔』で、ブラジルの土俗的な世界がかもしだす独特の映像に惹き込まれました。『狂乱の大地』では、架空の共和国エルドラドを舞台に、政治的抑圧と貧困からの解放を求める詩人の姿が幻想的かつ力強く描かれ、これも独特の世界。『テザ 慟哭の大地』のエチオピアのハイレ・ゲリマ監督がローシャの影響を受けたと語っています。ローシャの3作品を観て、まさにそれを感じました。あわせて鑑賞すると興味深いと思います。(咲)
配給:日本スカイウェイ、アダンソニア
配給協力:コミュニティシネマセンター
協力:ブラジル大使館
公式 HP >> http://sky-way.jp/rocha/
監督:石井裕也
脚本:石井裕也
撮影:橋本清明
音楽:今村左悶、野村知秋
美術:沖原正純
出演:光石研(宮田淳一)、田口トモロヲ(真田)、森岡龍(宮田の息子・俊也)、吉永淳(宮田の娘・桃子)、西田尚美(宮田の妻)
妻を失い、男手ひとつで俊也と桃子を育ててきた宮田淳一。 トラックの運転手として貧乏ながらも、子ども2人をしっかりと育ててきたつもりだ。 見栄や意地を張りまくり、やせ我慢をしてまで“男”を貫こうとする淳一。 そんなある日、二人の子供が東京の大学に進学することが決まり……。
ダンディってきいてすぐ思い浮かべるのはリチャード・ギア様!
光石研さんの、約32年ぶりの主演映画が『あぜ道のダンディ』ときいて「あぜ道」は合っていても「ダンディはなぁ・・・」と思って観た。
はじまりはなかなか面白く、競輪のごとく、このまま行けばベストテン入りしそう…とウキウキしたが、 中盤、息切れしてしまい、テンポが遅くなってしまった。 今、この年代が一番つらい世代じゃないかな。 幼馴染の田口トモロヲさんとの会話などは、同じ年代の男の方にはぐっと来ると思う。 50歳の冴えない男の切なさを胸にしまいこんで、男気を通す「ダンディ」。 地味な作りだが、この監督さんの前作『川の底からこんにちは』にもある<世代間のギクシャク交流の面白み>は生きている。
※そういえばこの「ダンディ」という言葉はこのごろあまりきかない。 ダンディに生きるなんて無理な時代だから、もうすぐ死語になると思わないでもない。
(美)
2011年/日本/カラー/110分
配給:ビターズ・エンド
★2011年6月18日 テアトル新宿、ユナイテッド・シネマ前橋、シネマテークたかさき他全国順次ロードショー
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/azemichi/
監督:チャン・ユジョン
出演:イム・スジョン(『サッドムービー』『角砂糖』『..ing』)、コン・ユ(『龍が如く』「コーヒープリンス1号店」)
ミュージカル「ラストショー」の舞台監督として仕事に没頭しているソ・ジウは、お見合い相手のパイロットからプロポーズされても結婚する気にならない。10年前にインドの旅で出会った初恋の人が忘れられないのだ。そんなジウを父親は「初恋さがし株式会社」に連れて行く。そこは、生真面目さ故に旅行会社で上司とぶつかり辞めてしまったハン・ギジュンが起業した会社だった。「キム・ジョンウク」という名前だけを頼りにジウの初恋の相手を張り切って探し出そうとするギジュンに対し、ジウは逆に迷惑顔。ジウの真意は? そして、初恋の相手キム・ジョンウクは見つかるのか・・・
キム・レウォンと共演した『アメノナカノ青空』での病気がちの内気な少女役や、『角砂糖』での女性騎手役が初々しかったイム・スジョン。30代を迎え、化粧もろくにせず黙々と仕事に打ち込む舞台監督役も、相変わらず純な雰囲気。コン・ユは、生真面目なサラリーマン役をコミカルにこなす一方で、二役で演じる初恋のキム・ジョンウクとして登場する時には、とてもスマートでカッコいい。
ジウがインド行きのフライトの中でキム・ジョンウクと知り合い、淡い恋心を抱きながら二人で過ごすインドの町は、西インドのジョドプール。旧市街の建物が青く塗られ、ブルーシティの異名を持つジョドプールには、町を挟むようにマハラジャの王宮二つが高台に立っていて、まさに恋をするにはうってつけの町。実は、本作を観にいく前日の夜、テレビでジョドプールを紹介する番組があって、かつてこの町を3度訪れたことがある私は懐かしく思い出していたのでした。ターバンやサリー姿のインドの人たちで熱気を帯びた駅のプラットフォームで、彼の後姿を見失いそうになりながら追うジウの姿に、ジョドプールに向かう列車に乗り込むジャイプールの駅で同行の人たちを見失って青ざめたことを思い出しました。韓国映画で初めてインドロケを敢行した本作。ジョドプールの風景もたっぷり楽しめます。(咲)
2010年/韓国/112分/カラー/シネマスコープ
配給:CJ Entertainment Japan
公式 HP >> http://www.hatsukoi-sagashi.com/
監督・脚本:ゲラ・バブルアニ
製作:リック・シュウォーツ
撮影:マイケル・マクドノー
出演:サム・ライリー(ヴィンス・フェロー)、ジェイソン・ステイサム(ジャスパー)、ミッキー・ローク(パトリック)、レイ・ウィンストン(ロナルド)、マイケル・シャノン(ヘンリー)、カーティス・50セント・ジャクソン(ジミー)
電気工のヴィンスはまじめに働き続けていたが、貧しさはいかんともしがたく、父の入院費のため母は家を抵当に入れることにした。そんな折に工事を請け負った家主の儲け話を耳にする。届いた封筒を開け「これで大金が手に入る」と、喜んでいた家主は、薬の過剰摂取で急死。立ち会ったヴィンスは騒ぎにまぎれてその封筒を盗み出す。指示通りの準備をして、森の奥の邸宅に辿り着いた。同じころ、刑務所から囚人のパトリックが拉致され、ジャスパーは死期の近づいた兄を病院から連れ出していた。1~17の番号を持った男たちが集まった。ヴィンスが知らずに参加したのは、17人が命をかけた勝率1%のロシアン・ルーレットだった。
2007年に日本で公開された『13/ザメッティ』(2005年)はゲラ・バブルアニ監督の初の長編作品、実弟ギオルギ・バブルアニを主演に製作したモノクロ映画でした。命を投げ出す貧しい参加者が、運だけを頼りに銃の引き金に手をかけ合図を待ちます。人の命に大金を賭けて楽しむ金持ちに悪寒を感じながら、ゲームが進んでいくのにドキドキしました。
本作はハリウッドがリメイク権を獲得し、ゲラ・バブルアニ監督自身が新しい要素を加えて脚本を書き、監督したものです。キャストの顔ぶれや、シーンの多さに予算が倍増したのがありあり。ストーリーに負けない個性の強い俳優が集められています。結果がわかっているにも関わらず、前と同じように手に汗握る思いでした。心臓の弱い方はご注意ください。(白)
2010年/アメリカ/カラー/97分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給・宣伝:プレシディオ
(C)2009 ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://www.russian-roulette.jp/
監督:栗村実
出演:佐久間麻由、田中里枝、岡村多加江、上村聡、岸建太朗、菊池透、増本庄一郎
渋谷のダイニングバーCoo。ここで働く砂織は、人に料理を作るのが生き甲斐。それなのに、寡黙な若い常連客・九条は何を出しても食べてくれない。人前で食べることに抵抗があるのかとカツサンドをお土産に渡すが、托鉢僧にあげてしまったことを知って落ち込む。もう1人の常連客・美江は同棲中の彼氏・小日向がぐ〜たらで働こうとしないストレスから食に走り、いつもトイレで吐いている。ある日、妊娠したことを小日向に伝えると、「俺が食べさせてやる」と答えたきり姿を消してしまう。美江の勤める小さな会社の社長・小中は、経営が苦しくなり、ここ数日何も食べてない。家では大食いの妻・咲枝が娘と美味しそうにご馳走を並べて食べている。ある夜、娘のために用意してあったお弁当をこっそり食べてしまう。食べなければ生きていけない自分に嫌気がさした小中は、「即身仏になる」と言って、河原で段ボールハウスに篭ってしまう・・・
段ボールハウスの小さな窓から河原の草むらを眺める男の姿に何が始まるのかと思ったら、ダイニングバーに集う男女が繰り広げる「食」をめぐる人間模様でした。
製作予算100万円、撮影期間6日間。撮影場所は、渋谷のダイニングバーCoo、監督の自宅マンションと会社事務所。
「苦しみのほとんどは食べ物が原因で起こる」というブッダの言葉が冒頭に掲げられます。食べることの意味、人と人との繋がりを、ちょっぴりユーモアを交え、かつ哀しみも感じさせながら綴った作品。出てくる料理がどれも飛び切り美味しそうで、グッとお腹が空きました。人間、美味しく食べれてこその人生ですよね!(咲)
2010年/日本/カラー/75分/HD
配給:フェイス・トゥ・フェイス
★6月18日(土) 東京・渋谷ユーロスペースほか全国公開
公式 HP >> http://www.9miles.net/meshiotome/
■会期 2011年6月10日(金)~12日(日)、21日(火)~23日(木) ※6日間
■会場 愛知芸術文化センター12階アートスペースA〔定員180名〕
■主催 愛知芸術文化センター
■企画・お問い合わせ 愛知県文化情報センター
Tel.052-971-5511 内線532 Fax.052-971-5605
E-mail: bunjo@aac.pref.aichi.jp
URL http://www.aac.pref.aichi.jp/
■協力・作品提供 イメージフォーラム、プラネット映画資料図書館
■入場無料
“この上映会は、初期のサイレント映画から今日までの映像表現の流れを、既存のジャンル区分を離れた、横断的な視点から見つめようとする試みです。そこには各時代ごとにクリエーターたちが、ジャンルの枠に捕らわれず、映像表現の可能性を追求する形で、冒険心や探求心に根ざした、実験精神を発揮していったことを見出せるでしょう。
人間が抱えている不寛容とは何かを、当時のアメリカで起こった、労働者のストライキを取り上げた《現代篇》を軸に、古代都市バビロン没落の物語《バビロン篇》、キリストの架刑を描く《エルサレム篇》、16世紀のサン・バルテルミ事件を取り上げた《フランス篇》の4つのパートを並列して描き、有機的に結合することで問い掛けた、グリフィスの実験的な超大作『イントレランス』(1916年)を、サイレント本来の映写スピード秒間18コマと、現在の標準スピードである秒間24コマのサウンド版で、対比して上映。また『イントレランス』の影響を受けたパロディとの見方もある、バスター・キートンのスラップスティック・コメディ『キートンの恋愛三代記』(1923年、共同監督:エディ・クライン)も上映します。
他に愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品より、監督自身の映画製作の模様と、写真家・荒木経惟、舞踏家・麿赤児、ファッション・デザイナー荒川眞一郎の創作の舞台裏を並行して描いた園子温『うつしみ』(1999年、シリーズ第8弾)や、海外で受賞が相次ぎ話題となっている大山慶『HAND SOAP』(2008年、同第17弾)、昨年12月に初公開し、音への斬新で先鋭的なアプローチが反響を呼んでいる柴田剛『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(2010年、同第19弾)など、現代の映画の最前線と呼ぶに相応しい作品をセレクト。また、同時期に開催する「イメージフォーラム・フェスティバル2011」(会期:6月15日(水)~19日(日))と連動し、同フェスティバル一般公募部門に愛知県から応募された作品より、意欲的な注目作を選んだ〈愛知特別プログラム「愛知の新世代たち」〉も実施。映像表現の明日を予感させる、フレッシュな作品に触れてください。”
■上映スケジュール
★印は、愛知県文化情報センター所蔵作品。1階アートライブラリーでリクエストによる鑑賞が可能です。
監督・製作・脚本:ジュリー・テイモア:
原作:ウィリアム・シェークスピア
撮影:スチュアート・ドライバーグ
音楽:エリオット・ゴールデンサール
出演:ヘレン・ミレン(プロスペラ)、リーヴ・カーニー(王子ファーディナンド)、トム・コンティ(顧問官ゴンザーロー)、クリス・クーパー(ミラノ大公アントーニオ)、アラン・カミング(王弟セバスチャン)、ジャイモン・フンスー(キャリバン)、フェリシティ・ジョーンズ(ミランダ)、ラッセル・ブランド(道化師トリンキュロー)、アルフレッド・モリナ(酒蔵係ステファノー)、デヴィッド・ストラザーン(ナポリ王アロンゾー)、ベン・ウィショー(妖精エアリエル)
ナポリ王アロンゾーは、娘の婚礼の帰りの航海で大きな嵐に巻き込まれ側近とともに近くの島へ流れ着く。しかし世継ぎである王子ファーディナンドが行方知れずになり悲嘆にくれる。嵐はこの島に住むプロスペラが魔術で起こしたもの。彼女は名君と慕われたミラノ大公の后であったが、大公の死後腹黒い実弟アントーニオと、彼にそそのかされたアロンゾーによって、娘ミランダと2人追放されたのだ。プロスペラは孤島で魔術を極め、裏切り者たちへの復讐の機会をこの日まで待っていたのだった。ミランダは遭難した人々を案じて浜辺を歩き、フェルディナンド王子に出会う。母親と下働きのキャリバン以外の人間に初めて会ったミランダは、たちまち心を奪われてしまう。
ジュリー・テイモア監督は1997年にミュージカル「ライオン・キング」の演出、舞台衣装を手がけて多くの賞を受けています。1986年にオフ・ブロードウェイの舞台でこの「テンペスト」の演出をしていますが、そのせいかどうか、広い野外での劇を見ているような感じがしました。聞き分けられないけれど、台詞回しも舞台の調子なのでしょうか。原作ではプロスペローという男性だった主人公を女性に変え、ヘレン・ミレンが貫禄で演じています。英国女王ができる人ですものね。ほかのキャストも豪華で、プロスペラがまとうガウンやドレスなどサンディ・パウエル デザインの手の込んだ衣装も見所。妖精エアリエルは『パフューム』のベン・ウィショー、この人って人間っぽくない役が似合います。プロスペラや妖精エアリエルの魔術の場面は映画ならではの効果。テイモア監督の1986年当時の舞台とこの映画版を見比べてみたいものです。(白)
2010年/アメリカ/カラー/110分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:東北新社
公式 HP >> http://www.tfc-movie.net/tempest/
監督:J・ブレイクソン
脚本:J・ブレイクソン
撮影:フィリップ・ブローバック
音楽:マーク・カンハム
美術:リッキー・エアーズ
出演:ジェマ・アーターソン(アリス)、マーティン・コムストン(ダニー)、
エディ・マーサン(ヴィック)
黙々と室内で大工仕事?に没頭する2人の男。ヒゲの中年男ヴィックと若い男性ダニーは刑務所で知り合った仲間だ。 二人の目的は誘拐で、アジト作りをしているのだ。ターゲットの富豪の娘“アリス・クリード”は、ダニーが見つけた。 誘拐も予定どおりうまく行き、ベッドに縛りつけ、ビデオカメラを回して、彼女に刃物を突きつけ 「パパ、私は誘拐された。身代金を支払わなければ殺される。お願い、助けて!」と言わせる。 身代金は200万ポンドを要求した。ここまでは狂いもなく進行したが・・・。
登場人物はたったの3人。しかもストーリーの大部分はさびれたアパートの一室で巻き起こるだけ。
この誘拐事件は本当に予測不能。だが、流れるようにストーリーはある方向に向かう。
役者3人の演技の確かさと一瞬の緩みのない緊張感で、最後まで密室サスペンスに体ごと持っていかれた。
まるでジェットコースターに乗っているようだった。
※チェロの音が重厚さを醸し出していた。
※ヴィック役のエディ・マーサンは『ヴェラ・ドレイク』で、娘の婚約者で出ていた俳優さんだ。(美)
2009年/イギリス/シネスコープ/ドルビー・デジタル/カラー/101分
配給:ロングライド
★2011年6月11日 ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほかにて全国順次ロードショー公開
公式 HP >> http://www.alice-sissou.jp/
監督:田中誠
原作:岩崎夏海「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(ダイヤモンド社刊)
脚本:岩崎夏海
撮影:中山光一
美術:小泉博康
出演:前田敦子(川島みなみ)、瀬戸康史(浅野慶一郎)、大泉洋(加地誠)、峰岸みなみ(北条文乃)池松壮亮(柏木次郎)、川口春名(宮田夕紀)西田尚美(宮田靖代)
病気で入院中の親友・夕紀に代わって、毎年、甲子園の東京都予選で一回戦で負けている野球部のマネージャーをすることになった女子高生の川島みなnみ。しかし、エースの浅野をはじめ、部員の大半は練習をさぼって遊び放題。 途方に暮れたみなみは、「マネージャー」の仕事について書かれた本を探すことにした。
この長い題名でまず驚く。今年一番の長い題かな。原作は電子書籍を含め累計発行部数200万部を突破しているベストセラーで、高校野球部の女子マネージャーが、ピーター・ドラッカーの名著「マネジメント」に感動して、野球部の活動の中で、その内容を実践していく青春もの。
スポーツ嫌いで、野球の約束事も知らない私だから、細かいことはわからないが、これを楽しめたから自分でも驚いている。
それにわからないことを、本屋に行って探してみるという行動にまいってしまった。
今なら、サクサクっとネット検索だから。
・野球部の定義=目的を考える。
・マーケティングに取り組む=部員一人ひとりの抱える悩みをリサーチする。
・人の強みを発揮させる=ポジションごとの練習や競争制導入で個々の持つ能力を引き出す。
・イノベーションに取り組む=野球で常識とされてきた送りバントや守りの投球術を刷新していく。等々。
明るく前向きなみなみにかかっては、NO!と言えない男子部員。だが、だんだん変わってきて・・・。
この中で特に後輩のマネージャー役・文乃(峰岸みなみ)が好演していた。
美人ではないが、表情に高校生らしいものが出ていた。
※一瞬、「ピーター・ドラッカー氏」が出てきたが、ご本人だろうか。(美)
2011年/日本/ビスタサイズ/ドルビー・デジタル/カラー/125分
配給:東宝
★2011年6月4日 全国ロードショー 東宝系劇場で公開
公式 HP >> http://moshidora.jp/
監督:新城毅彦
原作:矢沢あい「パラダイス・キス」
脚本:坂東賢治
撮影:安田光
音楽:池頼広
主題歌:YUI「HELLO ~Paradise Kiss~」
エンディングテーマ: YUI「YOU」
出演:北川景子(早坂紫) 、向井理 (小泉譲二)、山本裕(徳森浩行)、五十嵐隼士(イザベラ)、大政絢(櫻田実和子)、賀来賢人(永瀬嵐) 、加藤夏希(麻生香)ほか
早坂紫(ゆかり)は母親の期待に応えようと子どもの頃から勉強に励んできた。有名進学校に進んだにもかかわらず、そろそろ実力不足が露呈し、成績は下がるばかり。落ち込んでいるときに派手な格好の男に「デザインスクールのショーでモデルをやらないか」と勧誘される。その男嵐とやりあううち、食事抜きだった紫は倒れてしまい彼らのアトリエ「パラダイス・キス」で介抱される。そこでデザイナーの卵ジョージと出会った紫は、強引さに反発しながらもその才能に惹かれていく。母親とケンカし、家を飛び出した紫はジョージのマンションに厄介になる羽目になった…。
人気漫画が原作で、話の展開もかなり漫画チックです。女の子の好きなものがいっぱい詰まっている作品で、アトリエ内部のかわいらしさといったら、かなり昔の女の子の私でさえ、そばでよく見たかった! 進学校の女生徒ってこんなに服持ってないんじゃ、と疑問に思うほど、紫がとっかえひっかえ着て見せるファッションも同世代の女子は見逃せません。ファッションショーに向けての準備のシーンもなんだかわくわくします。向井理くんはジョージの強引さがあまり似合わないのですが、その優しいところが好き!というファンは、珍しくキザなセリフも吐く彼を観にいきましょう。(白)
2011年/日本/カラー/115分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
(C)2011 「パラダイス・キス」製作委員会
公式 HP >> http://www.parakiss.jp/
監督:ジュリアス・ケンプ
脚本:シオン・シガードソン
撮影:シガ^ビョーク・ヨンスドッティル
音楽:ヒルマー・ウーン・ヒルマソン
美術:エガート・ケティルスソン
出演:ガンナー・ハンセン(船長)、ピラ・ヴィータラ(アネット)、裕木奈江(エンドウ)テレンス・アンダーソン(レオン)、ミランダ・ヘネシー(マリー)
ホエール・ウォッチングに世界中から観光客が集まるアイスランド・レイキャヴィク。
よく晴れたある日、6組の乗客を乗せたホエールウォッチングの観光客が出港した。
しかし乗客の悪ふざけから船長が死に観光船は帰港できなくなった。そこにやって来た家族経営の捕鯨船が彼らを救うが……。
世界に広がった反捕鯨運動で捕鯨ができなくなった一家が、ホエール・ウォッチングに訪れる観光客を次々に殺していたのだが、6組の大人数だったために、手が回らなくなってしまうのだ。
鯨捕り方法を使って殺戮する場面は面白いが、ほかは見慣れた場面で、やや古典的ホラー映画だ。
6組すべて国が違う観光客だったが、裕木奈江は日本人観光客のガイド?役で、うまく立ち回っていた。
※『4月の涙』の主役のピヒラ・ヴィターラも出ている。
※ 5月21日に公開されたチャールズ・ファーガソン監督『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』の映画の始まりはアイスランドだった。ジュリアス・ケンプ監督は、この作品がクランク・アップした1週間後に金融危機が起こったと書いてあった。
アイスランドの不景気な様子がしっかり映し出されていた。(美)
2009年/アイスランド/カラー/88分
配給:アップリンク
★2011年6月4日 銀座シネパトス、新宿K's cinemaほかにて全国順次公開
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/rwwm/
監督:モハメド・アルダラジー
出演:ヤッセル・タリーブ、シャーザード・フセイン、バシール・アルマジド
2003年、サッダーム・フセイン政権が崩壊して3週間後。イラク北部に住むクルド人の少年アーメッドは、祖母に連れられて旅に出る。生後間もない頃に戦地に赴いたまま戻らない父が、南部ナシリアの刑務所にいるとの戦友からの手紙を頼りに探しに行くのだ。歴史の時間に習ったバビロンの空中庭園がその近くにあるのもアーメッドは楽しみだった。ヒッチハイクしてたどり着いたバグダードの街は荒れ果てている。クルド語しか話せない祖母の代わりに、アーメッドはアラビア語で南に行くバスの乗り場を聞き出す。満員のバスになんとか乗り込みナシリアを目指すが、刑務所の手前でガソリンがないとバスを降ろされてしまう。徒歩で刑務所にたどり着くが、建物は崩壊し、身内を探す大勢の人たちが騒然としている。近くで集団墓地が見つかったと教えられ、再びバスに乗るが、また途中で止まってしまう。車内で知り合ったムサが二人を心配して一緒に集団墓地に向かう。夜アーメッドが寝た後、ムサと話していた祖母は、彼がサッダーム時代にクルド人大虐殺に関わったことを知る。強要されたと弁解するムサを祖母はなかなか許せない。わだかまりを残したまま、翌日ムサは遠慮がちに二人を集団墓地に案内する・・・
どこに葬られたかもわからない夫や息子たち・・・ 集団墓地で泣き叫びながら胸をたたく女性たちの姿が痛ましい。ムサが大虐殺に関わったのは強いられたものだったと心の痛みを語る場面には、加害者もまた被害者だということを強く感じました。最初はムサに「殺人者」と怒ったおばあさんも、孫に「誰かに傷つけられても、相手を許すのよ」と自らに諭すように語ります。ニムルドやバビロンの遺跡、美しいモスクの青いドーム、沙漠に沈む大きな太陽・・・ 美しい風景も織り交ぜながら描いた本作には、民族や宗教の違いを超えて国を再生し、いつかイラクが素晴らしい国になってほしいという監督の願いを強く感じました。 (咲)
2010年/イラク・イギリス・フランス・オランダ・パレスチナ・UAE・エジプト/カラー/35ミリ/シネマスコープ/ドルビー5.1chSRD/90分
配給:トランスフォーマー
公式 HP >> http://www.babylon-movie.com/
監督:廣木隆一
原作:「軽蔑」中上健次 1992年発行。2011年角川書店より文庫化決定
脚本:奥寺佐渡子
撮影:鍋島淳裕
証明:豊見山明長
編集:菊池純一
美術:丸尾知行
出演:高良健吾(カズ)、鈴木杏(真知子)、大森南朋(山畑)、緑魔子(マダム)、小林薫(カズの父)、根岸季衣(カズの母)、田口トモロヲ(カズの叔父)、忍成修吾(浜口)
地方の名家の一人息子として生まれたカズ・二宮一彦は、新宿歌舞伎町でヤクザな暮らしをしていた。ある日、兄貴分の伊藤から、賭博でできた600万円の借金をチャラにするから、バー・ニュー・ワールドをめちゃくちゃにしろと命じられる。すぐさま実行したカズは、どさくさに紛れて、前から魅かれていたニュー・ワールドの踊り子・真知子を強引に連れ出し故郷へ駆け落ちする。カズの故郷で一緒に生活を始める2人だが、周囲は2人の関係を認めない。やがて、カズにも田舎にも失望した真知子は東京へ戻るが、真知子がいなくなった短期間にカズは高利貸しの山畑の金で賭博をして、多額の借金を作る。失意のカズは再び彼女を追い求めるが・・・。
一言でいえば、ねっとり風味の映画。この"ねっとり"に絡みとられてしまった。
踊り子・杏の体から出る、目線から放たれる、台詞からあふれる"ねっとり"さに、興奮した。『花とアリス』で蒼井優と競演して(と、いうよりも2番手だった鈴木杏)いた子がこんな雰囲気が出せる女優になっていた。ポール・ダンスシーンではイマイチ体が重く、もう少しうまく誤魔化せばいいのに・・・と監督の意地悪?を思わないでもなかったが、それも最後までじっくり見ていると「とってもうまい踊り手だったら、こんな行動にはでないから、あれでよかったんだ」と勝手に納得。彼女の裸体も美しいと思う反面、蚊の刺された後やシミの汚れもあり、ちゃんと生活しているなと思わせる近距離感がたまらなかった。この子には幸せになってもらいたいと願いながら観終わった
真知子役のことばかり書いてしまったが、後は『軽蔑』すべきというか、わからないことだらけだった。
田舎の人たちは何を守ろうとしていたのか・・・。守ろうとどんな努力をしていたのか。
26歳のカズだが,まるでやってることは中学生並み。
どうしてこうなったか? 親や周りは本気でカズを心配していたか?
田舎も金持ちも守るものは体裁だけ・・・カズは犠牲者だったのか。
だったらこの『軽蔑』の題名は誰のものだろう・・・。
ごちゃごちゃ書いたが、ひさびさに触感の違う作品で思わず痛烈になってしまった。監督さんの力量は鈴木杏と脚本の奥寺佐渡子の起用でわかる。※『八日目の蝉』も奥寺佐渡子脚本だ。(美)
2011年/カラー/ビスタサイズ/TDS-S/136分
配給:東宝東和
2011年6月4日 角川シネマ新宿ほかにて全国ロードシヨー
公式 HP >> http://www.keibetsu.jp/index.html
監督:トマス・ヴィンターベア
原作:ヨナス・T・ベングトソン「SUBMARINO」AC Books刊
脚本:トビアス・リンホルム&トマス・ヴィンターベア
撮影:シャーロッテ・ブルース・クリステンセン
音楽:トマス・ブラックマン
美術:トーベン・スティ・ニールセン
衣装:マルグレーテ・ラスムセン
出演:ヤコブ・セーダーグレン(ニック)、ペーター・プラウボー(ニックの弟・マーティンの父)、パトリシア・シューマン(ソフィー)モーテン・ローセ(イヴァン)、グスタウ・フィッシャー・ケアウルフ(マーティン)、セバスチャン・ブル・サーニング(ニックの少年時代)、マッス・ブロー(ニックの弟の少年時代)
デンマーク・コペンハーゲン。
アルコール依存症の母親と暮らす兄弟は、貧しさと怠惰と暴力があふれた悲惨な生活をしていた。兄弟の唯一の希望は、生まれて間もないもう一人の弟だった。酔っては生活も育児も放棄している母親に代わって、盗んだミルクで赤ん坊を育てていた。電話帳からよい名前を見つけ、教会の洗礼の真似事をする。そんなある日、熱が出てむづかる赤ん坊を気遣いながらも、兄弟は遊びに夢中になり、気が付いたときは既に冷たくなっていたのだった・・・。それから、兄弟は連絡もとらず別々の人生を歩んでいたが、母の死の知らせで、何十年ぶりに再会した。
デンマークという国は“ゆりかごから墓場まで”福祉が行き届いている国ではなかったかと疑問におもいながら観た。とんでもないひどい家庭だった。2人の子もまともな食べ物も食べていなかった。2人の子ども時代に福祉の助けはなかったのが不思議だった。そんな兄弟も何十年後には、体は大きく成長して大人になっていたが、心は傷ついたまま、お互いに思い出したくない幼い弟に対する悔いを引き摺り続けていた。その証拠に兄は怠惰な生活と暴力、弟は麻薬と精神も体も蝕まれていた。ここでは、皮肉なことに福祉がこのようにさせたとも考えられた。その矛盾が監督さんの狙いかなと思った。あるべき時に(子ども時代)なくて、多少、福祉がなくても(働く意欲がそがれてしまう)やれそうな時にある福祉。こんなふうに書いてしまうとやりきれない気持ちになってしまうが最後には、なんとかやっていける幸せの予感が用意されている。(美)
2010年/デンマーク/カラー/ドルビーデジタル/114分
配給:ビターズ・エンド
★2011年6月4日 シネスイッチ銀座ほかにて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.bitters.co.jp/hikari/
監督・脚本:是枝裕和
撮影:山崎裕
音楽:くるり
主題歌:岸田繁「奇跡」
出演:前田航基(大迫航一:兄)、前田旺志郎(木南龍之介:弟)、林凌雅(福元佑)、永吉星之介(太田真 内田伽羅(有吉恵美)、橋本環奈(早見かんな)、磯邊蓮登(磯邊蓮登)、オダギリジョー(木南健次)、夏川結衣有吉恭子)、 阿部寛(坂上守先生)、長澤まさみ(三村幸知先生)、 原田芳雄(山本亘)、大塚寧々(大迫のぞみ)、樹木希林(大迫秀子)、橋爪功(大迫周吉)
両親が離婚したため、それぞれについて別れて住むことになった兄弟。6年生の航一は母の実家鹿児島へ、4年生の龍之介は父と博多で暮らしている。いつかまた家族4人が一緒に暮らせるように、兄弟は連絡をとりあっていた。九州新幹線が博多と鹿児島を結ぶ日が近づいて、航一は「その一番列車の“さくら”と“つばめ”がすれ違うとき、大きなエネルギーが生まれて奇跡が起きる」という噂を耳にする。その場所と時間を調べてお願いをしよう!とそれぞれに友達を誘って、落ち合う約束をする。
是枝監督の2004年の作品『誰も知らない』を思い出す、子どもたちが生き生きとしている映画です。演技はほぼ初体験という彼らは、脚本を渡されず当日のシーンの説明とセリフを口頭で伝えられたそうです。カメラを意識することなく、自然な動きを引き出すよう監督が演出するところをそっと覗きたい気がします。是枝監督作品常連のベテラン俳優たちは、脇で子どもたちを見守り映画をしっかりと支えています。兄弟役の2人は実の兄弟で「まえだまえだ」というプロのお笑いコンビなのだそうです。テレビを全然見ないもので、この作品で初めて知りました。これから俳優としてオファーがきそうです。
しっかりしたまじめなお兄ちゃん(それなのに、その願い事はちょっと)、屈託のないモテモテの弟(実は努力して楽しくしている)に奇跡は起きるのか!?(白)
2011年/日本/カラー/123分/ビスタサイズ/DTS,SR
配給・宣伝:GAGA★
(C)2011「奇跡」製作委員会
公式 HP >> http://kiseki.gaga.ne.jp/
監督:ジョージ・ノルフィ
原作:フィリップ・K・ディック「アジャストメントーディック短編集」ハヤカワ文庫
脚本:ジョージ・ノルフィ
撮影:ジョン・トール・ASC
音楽:トーマス・ニューマン
衣装:カシア・ワリッカ=メイモン
出演:マット・デイモン(デヴィッド・ノリス)、エミリー・ブラント(エリース・セラス)、テレンス・スタンプ(トンプソン)アンソニー・マッキー(ハリー)、ジョン・スラッテリー(リチャードソン)、マイケル・ケリー(チャーリー・トレイナー)
上院議員候補のデヴィット・ノリスはブルックリンのスラム街で育ったことや、幼いときに家族全員を亡くした経歴が有権者を引き付けていた。だが、過去のスキャンダルが暴露され落選してしまう。デヴィッドが敗北宣言の練習をトイレで隠れてしていた時、誰もいないはずのトイレ個室から美しい女性が現れた。瞬時に意気投合した2人。女性はバレリーナのエリース、たちまち恋に落ちる。しかし、突如現れた男たち“アジャストメント・ビューロー(運命操作局)”によって拉致されてしまうデヴィッド。 彼らの目的は、本来、愛し合う予定ではなかったデヴィッドとエリースの運命を操作することだった。
運命調整局なんて興味深い仕事を想定したこの作品、観ているうちにこんな組織で活躍したくなった。
『ヒアアフター』(地震で先送りになったが)のマット・デイモンとこの作品のマット・デイモンと比べて観るという楽しみで、試写会が待ち遠しかった。『ヒアアフター』は自信をなくした切ない彼だが、ここでのマット・デイモンは狂おしいほど一人の女性を愛する男を演じている。運命を変える仕事はただ一人の運命だけの問題でなくなるから、仕事人としては、それに巻き込まれる人たちも変えないといけない。大変な仕事だ。だからそれに匹敵する強運の持ち主だけに施される。デヴィッドの器が大統領の大きさだから、周りの思惑は相当なものだった。
※なにも知らずにチョイスした次の映画『トゥルー・グリット』(コーエン兄弟監督作品)でもデイモン様にお会いできた! そこには、遠くから女の子を守る<無口で渋いマット・デイモン>がいた。(美)
2010年/アメリカ/カラー/ビスタ・サイズ/ドルビーSRD/106分
配給:東宝東和
★2011年5月27日 TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
公式 HP >> http://adjustment-movie.jp/
東京学生映画祭は、東京近郊の大学・大学院・専門学校に所属する映像製作者から作品を募集し、予選を通過した作品を本選で上映、グランプリ作品を決定・表彰するという、関東では最大規模の学生映画のコンペティションです。また今回で開催23年目を迎え、長い歴史の中で、現在日本映画界の第一線で活躍するプロの映画監督も数多く輩出してきました。今年は海外学生の作品上映も加わりました。是非、若い力を発見しに行ってみてください。
スケジュール | ||
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5月27日 | 13:00 開演(12:30 開場) | 特別企画 海外学生作品上映会 -言葉と海を超えて- |
(ゲスト) 矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター) 梅林茂(映画音楽家)、落合賢(映画監督) |
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19:00 開演(18:30 開場) | 第23回 東京学生映画祭 本選 アニメーション部門、授賞式 | |
(審査員) 新海誠(『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』脚本/監督等) ヤマサキオサム(『地球へ...』『イタズラな Kiss』『薄桜鬼』監督等) |
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28日 | 13:00 開演(12:30 開場) | 第23回 東京学生映画祭 本選 実写部門 1日目 |
29日 | 13:00 開演(12:30 開場) | 第23回 東京学生映画祭 本選 実写部門 2日目、授賞式 |
(審査員) 大森立嗣(『ゲルマニウムの夜』、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』、『まほろ駅前多田便利軒』監督) 田口トモロヲ(『アイデン&ティティ』、『色即ぜねれいしょん』監督、但し29日のみの出演) 林家しん平(『深海獣レイゴー』、『深海獣雷牙』、『落語物語』、『駕瞑羅(ガメラ)4 真実』監督) |
※27日は海外作品上映会終了後、全席入れ替えの後本選アニメ-ション部門を開催致します。(チケット別)
開催地: 世田谷区 北沢タウンホール(小田急線・井の頭線「下北沢」駅より徒歩 5 分)
入場料:
海外学生作品上映会 前売り券:500円 当日券:600円
本選アニメーション部門 前売り券:500円 当日券:600円
27日 1日通し券 前売り券:800円 当日券:1000円
本選実写部門1日目 前売り券:800円 当日券:1000円
本選実写部門2日目 前売り券:800円 当日券:1000円
※詳しいチケット購入方法は公式HPをご覧下さい。
主催:第23回東京学生映画祭企画委員会、世田谷区 北沢タウンホール
後援:東京国際映画祭、映像産業振興機構(vipo)
お問い合わせ:tougakusai@gmail.com
公式 HP >> http://www.tougakusai.com/
エグゼクティブプロデューサー・監督:市川徹
脚本:長谷川圭一
撮影監督:Sam ケイジ・ヤノ
歌:白井貴子
出演:長谷川初範(高峰譲吉)、篠田三郎(桜井錠二)、渡辺裕之(金子堅太郎)、田中美里(麻績村貴子)、川久保拓司(豊田佐吉)、ナオミ・グレース(キャロライン・ヒッチ)、柴田理恵(村井初)、六平直政(村井六郎)、松方弘樹(渋沢栄一)ほか
若くして渡米し、消化酵素タカヂアスターゼの抽出、アドレナリンの結晶化などに成功した高峰譲吉。ニューヨークまで取材に訪れた日本人女性貴子は、業績をおごることなく、控えめで日米親善に心を砕いている高峰博士に心動かされる。日本の桜をアメリカで咲かせたいと熱望するシドモア女史を紹介された高峰はさっそく苗木の手配をする。しかし、はるばる海を越えてシアトルに到着した苗木に害虫がついており、全て焼却処分されてしまった。気落ちする関係者の中で一人高峰博士だけが「これまでも簡単に成し遂げられたことはなかった。Try,Try Again!!」というのだった。
高峰譲吉の偉業については2010年3月公開の『さくら、さくら サムライ化学者高峰譲吉の生涯』に詳しいです。こちらはその続編として、化学者、実業家以外の博士の姿を描いています。私財を投じて桜の苗木をアメリカに根付かせ、無官の大使として民間外交に尽力した高峰博士の功績は、今も美しく咲くワシントンの桜とともにいつまでも残るでしょう。犀川を初めとした石川、富山での国内ロケに加えて今回は海外ロケも敢行。「Try,Try Again!」というセリフに、スタッフ・キャストも励まされたのではないでしょうか。(白)
2010年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ムービートマト 宣伝協力:フレスコ・エンタテインメント
(c)2011「TAKAMINE」製作委員会
公式 HP >> http://j-takamine.com/
監督:山下敦弘
原作:川本三郎「マイ・バック・ページ」平凡社刊
脚本:向井康介
撮影:近藤龍人
音楽:ミト、きだしゅんすけ
主題歌: 真心ブラザーズ「My Back Pages」
出演:妻夫木聡(沢田雅巳)、松山ケンイチ(梅山/片桐優)、忽那汐里(倉田眞子)、石橋杏奈(安宅重子)、韓英恵(浅井七恵)、中村蒼(柴山洋)、長塚圭史(唐谷義朗 東大全共闘議長)、山内圭哉(前橋勇 京大全共闘議長)、古舘寛治 (中平武弘 週刊東都記者)、あがた森魚(飯島 東都ジャーナルデスク)、三浦友和(白石 東都新聞社社会部部長)
― 俺たちは何を信じるのか?―
1969年、激動の時代。理想に燃えて東都新聞社に入社、週刊誌の記者となった沢田は街の潜入ルポを書きながら活動家にも注目していた。1971年、沢田は先輩記者中平とともに、梅山と名乗る活動家と初めて接触することになり、会談場所に自室を提供し取材を開始する。革命を起こすと豪語する梅山に中平は疑念をいだくが、沢田は愛読書の話をし、ギターで弾き語りをする彼に親近感をいだく。記者として大きな記事を書けるかもしれないという期待、深く関わっていくことの恐れも感じる沢田だったが、梅山はついに事件を起こし死亡者が出てしまう。
川本三郎氏の体験を書かれた原作を読みました。学生運動が盛んだったころ高校生だった私も東大紛争のニュースをはっきり覚えています。ベトナム戦争が激化し、報道される悲惨なようすに言葉を失っていました。米軍基地のある日本にいる自分たちが何かしなければいけないと思いながら手をこまねいていました。自分はいち早く結婚して家庭が最重要となってしまいましたが、さまざまな運動に身を投じていた友人も多かったのです。熱かった学生運動も、連合赤軍事件でひどく後味の悪いまま下火となりました。
あの時代に青春を過ごした団塊の世代の私はこの映画を観て、何もできなかった自分、進んだにしろ挫折したに違いない自分が2人に重なり、沢田の涙にじんわり胸が痛みました。どこまでも信じようとする沢田、言葉数は多いけれどとらえどころのない梅山、タイプこそ違え、行きたい道へ進みきれなかった2人は遠い人ではありません。山下監督、脚本の向井氏、主演のお2人もこの時代を知らない世代であるにも関わらず、その空気がよく出ていました。天下の朝日新聞社内の力関係が描かれたシーンもちょいと面白かったです。川本氏は活躍中ですが、Kは今どうしているのでしょう?(白)
2010年/日本/カラー/141分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(C)2011映画『マイ・バック・ページ』製作委員会
公式 HP >> http://mbp-movie.com/
監督・脚本:ダニエル・リー
撮影:トニー・チャン
音楽:ヘンライー・ライ
出演:ドニー・イェン(青龍/チンロン)、ヴィッキー・チャオ(ホア)、ウーズン(砂漠の判事・天鷹幇)、チー・ユーウー(玄武)、ケイト・ツイ(トゥオトゥオ)、ロー・ガーイン(ジア)、サモ・ハン(チン親王)ほか
長く続く明王朝、その繁栄を裏から支えたのは「錦衣衛(きんいえい)」と呼ばれる秘密警察。暗殺も担うその集団の最高指揮官「青龍(チンロン)」には必殺の処刑剣「大明十四刀」が授けられた。朝廷の中で陰謀を企てたものにより、青龍は一人裏切り者として追われる身の上となってしまった。鏢局(ひょうきょく/護送屋)に紛れ込んだ青龍は、真相を明らかにしようと鏢局の一人娘チャオ・ホアと旅をする。途中、盗賊「砂漠の判事・天鷹幇(てんおうほう)」と戦うも、意気投合して強い味方を得る。
香港きってのトップスターとなったドニー・イェンの作品公開が続いています。ドニーの強さも良き相手あってこそ映えるのですが、今回の目玉は台湾のアイドルユニット「飛輪海(フェイルンハイ)」のウーズンと、ケイト・ツイ(『天使の眼、野獣の街』でデビュー)。2人ともこんなアクションができるんですね。というか、アクションをやらないと香港映画では活躍場所が狭くなってしまうのかも。スタントもいるのでしょうが、2人頑張っています。すっかり大人の女性となったヴィッキー・チャオも恋する女心を見せて綺麗だし、サモハン御大も存在感たっぷり。映画オリジナルという処刑剣が、ひところ流行った合体ロボの武器版というか早い話十徳ナイフみたいで、男の子がほしがりそう。(白)
2010年/中国/カラー/113分/スコープサイズ/ドルビーSRD
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式 HP >> http://shokeiken.com/
監督:セス・ゴードン イントロダクション&各エピソード間構成
モーガン・スパーロック『ロシャンダが別名なら』
アレックス・ギブニー『純粋さの崩壊』
ユージーン・ジャレキ『「素晴らしき哉、人生!」とは限らない』
レイチェル・グレイディ&ハイディ・ユーイング『高校一年生を買収して成功に導けるか』
原作:スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー著「ヤバい経済学」東洋経済新報社刊
出演:スティーヴン・D・レヴィット(シカゴ大学経済学部教授)、スティーヴン・J・ダブナー(ジャーナリスト)
スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナーの著作「ヤバい経済学」はデータをもとに、日常のさまざまな事柄を経済学的に分析してみせる。この作品は気鋭のドキュメンタリー監督が、4つのエピソードを独自に映像化したもの。共通するのはインセンティブ(やりがい/成功報酬)だ。赤ちゃんの名づけ、大相撲の八百長、犯罪の発生率と妊娠中絶の関係、高校生はお金に釣られて成績を上げるか?などなど。目からウロコの経済学エンターテイメント。
それぞれ作風の違う4つの短編をうまくつないで、合間に著者たちのコメントをはさんでいます。おかたい経済学もこんな先生に解説してもらったら、もっとわかりやすくて面白いのになあ。原作は大ベストセラーとなって、日本でも2007年に「ヤバい経済学」、2010年に続編の「超ヤバい経済学」が翻訳出版されています。著者たちのブログは今も煩雑に更新されて、いつも新しいネタを提供しているようです。英語力があれば探して読むんだけど。せめて翻訳本を読まなくては。(白)
2010年/アメリカ/カラー/93分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アンプラグド
(c)2010 Freakonomics Movie,LLC
公式 HP >> http://www.yaba-kei.jp/
『ドリーム・ホーム』公開を記念して、1999年~2011年までの彼のフィルムグラフィーの中から厳選した5作品を劇場初公開!商業デビュー前の幻の短編から、ベルリン映画祭でも絶賛された代表作、そして『ドリーム・ホーム』へとつながる作品、特定のジャンルにとらわれない変幻自在の作品を一気に体感できるチャンスです。
『夏休みの宿題』(1999/12分)
『ビヨンド・アワ・ケン』(2004/98分)
『AV』(2005/104分)
『イザベラ』(2006/108分)
『些細なこと』(2007/90分)
配給・宣伝:ユナイテッド・エンタテインメント
©Media Asia Films(BVi) Ltd.All Right Reserved./©Making Film
公式 HP >> http://www.phc-movie.com/
監督:パン・ホ-チョン
原作:パン・ホーチョン
脚本:パン・ホーチョン
撮影:ユー・リクウァイ
音楽:ガブリエル・ロベルト
編集:ヴェンダース・リー
美術:マン・リンチュン
出演:ジェシー・ホー(チェン)、イーチャン・ソン (シウトウ)、
ローレンス・チョウ (オン)、デレク・ツァン( チュン)
香港の下町で、病弱な父と高校生の弟と暮らすチェンは、不幸な生い立ちだが、 働き者で、いつかビクトリア湾を一望できる高級マンションを買うことを熱望していた。 ついに頭金が貯まり買おうとしたが、ちょうど株式市場が高騰して、 売り主が値を吊り上げたため買えなくなった。怒り狂ったチェンはとんでもないことを実行した。
これは大阪アジアンで初公開だった。スプラッター作品だから「すごい場面がある!」という評判が先行して、切符もいち早く完売した。確かに11人(一人は妊婦)の殺し方など工夫を凝らしているが・・・納得できないのは、そこまで豪華マンションにこだわるものが見えてこない。ホラー大好きな私は2回観たが、しかしあそこまで残忍にさせる必要があったか、彼女はなぜあそこまでしたかが、やはりわからなかった。もっとわからないのは、彼女はもう一人意外な人物を殺していることだ。 2度目も同じように興奮して楽しめたから、この手のものがお好きな方には是非お薦めしたい。 凶行のきっかけを香港社会の経済や住宅問題に絡めていた点が、普通のホラーじゃないってところかな。
※ジェシー・ホーさん(チェン)の怪我は、足を貫通していたはずだが、最後、普通に歩いていたので驚く。 あの怪我なら一生足を引きずって歩くとおもうが・・・。音楽が◎だった。(美)
2010年/香港/カラー/HD/96分
配給:ユナイテッドエンタテメント
★2011年5月28日 シアターNほかにて全国順次ロードショー
公式 HP >> http://www.dreamhome-movie.com/
監督:金子修介
脚本:吉田ウーロン太
撮影:釘宮慎治
照明:福長弘章
美術:高橋俊秋
音楽:MOKU
編集:洲崎千恵子
制作:エクセレントフィルムズ
ポールダンス指導:REIKO
主題歌:「☆ギミギミ☆」Sug(ポニーキャニオン)
特別協力:LUXURICA
出演:荒井敦史(アツシ)、阿久津愼太郎(シンタロウ)、山口賢貴(ヤマグチ)、近江陽一郎(ヨウイチロウ)、上鶴徹(カミツル)、三津谷亮(ミッチー)、池岡亮介(イケオカ)、西井幸人(ユキト)、根岸拓哉(タクヤ)、陣内将(ジンナイ)、泉カイ(ナミコ)、橋本愛実(カナ)、柳裕美(ユミ)、螢雪次朗(レモネード吉岡)
芸人修行中のアツシとシンタロウ、リストラされたサラリーマンのヤマグチ、関西出身のホームレスのカミツル、モテないことに悩むヨウイチロウ、青森から出てきた訛りのあるミツヤたちは、それぞれの事情から「お笑いワークショップ」に参加するためにお金を振り込む。だが教室に行ってみると、そこはポールダンスのレッスンスタジオで、彼らは振り込め詐欺に遭ってしまったことに気づく。意気消沈する彼らだったが、講師ナミコのポールダンスに魅了され、情けない今までの自分と決別するべく、男だけのポールダンスショーを行うことを思いつく。厳しいレッスンにも耐え、いろいろな技も習得して迎えたショー当日。思わぬ出来事が彼らを待ち受けていた。
「D-BOYS」の弟分ボーイズユニット「D2(ディーツー)」。個々で舞台・テレビなどで活躍している彼ら10人の、ユニットとしてしては初となる映画作品です。今までに男の子が女性のスポーツといわれている(た)シンクロや新体操に挑戦する映画、テレビなどはありましたが、今回はアメリカのストリップショーなどで踊られているポールダンスに挑むというもの。スタントなしで彼らが実際にポールダンスを習得していくさまは、ドキュメンタリーを見ているようでした。メンバーそれぞれに個性もあり見せ場もあり、「D2入門編」として楽しめます。彼らのこれからの活躍が楽しみです。(裕)
2010年/日本/HD/ビスタサイズ/ステレオ/85分
配給:Thanks Lab.
★5月28日(土)、全国順次ロードショー!
公式 HP >> http://www.pdbmovie.com/
監督・脚本:マルコ・ベロッキオ
共同脚本:フランチェスカ・チェゼッリ
撮影:ダニエーレ・チブリ
音楽:カルロ・クリヴェッリ
出演:ジョヴァンナ・メッゾジョルノ(イーダ・ダルセル)、フィリッポ・ティーミ(ベニート・ムッソリーニ/ベニート・アルビノ)ほか
第一次大戦前のイタリア。官憲に追われる男を建物の陰に引き寄せる女。政治集会で熱弁をふるっていた彼を彼女は見逃さなかった。恋人を装って抱き合ったとたん、女は恋に落ちる。
社会党の機関誌編集長をしていたムッソリーニは、過激な言動からその要職を解かれてしまうが、恋人となったイーダの資金援助を受け新たな日刊紙「ポポロ・ディタリア」を創刊する。さらへ深く政治活動へと身を投じていくムッソリーニを支え、子どもを身ごもり、幸せに浸るイーダだったが、ムッソリーニには妻子があった。
ストーリーを追うと、どこにでもありそうな普遍的な男と女の愛の物語ですが、イタリアの総統として君臨したムッソリーニと、その愛人が主人公。ムッソリーニを支え愛し続けたイーダを、『コレラの時代の愛』のジョヴァンナ・メッゾジョルノが情熱的に演じています。ムッソリーニ役は長く舞台で活躍していたフィリッポ・ティーミ。成長した息子も演じていますが、ムッソリーニの物まねをする場面があり、その迫力に唖然。ふたりともこの作品で数々の賞を獲得しています。
歴史に葬り去られたイーダを生き生きと蘇らせたのは、イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督。日本での作品公開は2006年の『夜よ、こんにちは』(2003年製作)以来です。この作品でイタリアのダヴィド・デ・ドナテッロ賞の監督賞を受賞。熱くてドラマチックな愛の物語(この人たちはきっと体温が高いに違いない、と思ってしまう)を劇場のスクリーンでお楽しみください。(白)
2009年/イタリア、フランス/カラー/128分/1×1,85/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー 宣伝:マジックアワー
★5月28日(土)より、東京・シネマート新宿、6月11日(土)より、大阪・シネマート心斎橋 ほか全国順次ロードショー
公式 HP >> http://www.ainoshouri.com/
開催日程:5月28日(土)~6月17日(金)
会場:新宿K’sシネマ
名古屋シネマスコーレで、2010年12月25日(土)より先行開催された【真!韓国映画祭2011】が、いよいよ東京で5月28日(土)より開催されます。
「今を知る、本物の韓国映画がここにある」というコンセプトのもと、一昨年から始まった“真!韓国映画祭”。今年も、社会や家族の問題をテーマにした6作品(4作品+特別上映PART1)が選ばれたほか、特別上映PART2として、昨年の真!韓国映画祭で上映された4作品や、キム・ギドク監督作品『サマリア』、ドキュメンタリーとして異例のロングランを記録した『牛の鈴音』、チュ・ジフン主演の『キッチン ~3人のレシピ~』と『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』などが上映されます。
韓流ですっかりお馴染みになった隣国韓国の素の姿や、悲しい歴史を感じることのできる作品をスクリーンで鑑賞できる絶好の機会です。
●上映作品
『ソウルのバングラデシュ人』
『小さな池 -1950年・ノグンリ虐殺事件-』
『坡州 パジュ』
『キュレーター、ジョンフンさんの恋愛日記』
【特別上映PART1】
『ただよう想い。』
『ささやきの夏』
【特別上映PART2】
『サマリア』
『キッチン ~3人のレシピ~』
『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』
『私のちいさなピアニスト』
『牛の鈴音』
『空を歩く少年』
『今、このままがいい』
『ビバ!ラブ』
『飛べ、ペンギン』
監督:シン・ドンイル
出演:ペク・ジニ、Mahub Alam Pollob、イ・イルファ
全州国際映画祭(2009)観客評論家賞
2009年/韓国/107分
17歳の女子高生ミンソ。シングルマザーの母親はカラオケ店の経営と恋人の世話で忙しくミンソのことをかまってくれない。夏休み、ミンソは英語塾に通おうとアルバイトを始めるが、なかなか資金が貯まらない。そんなある日、バスで隣の席に座ったバングラデシュから出稼ぎに来ているカリムのポケットからこぼれ落ちた財布を持ち逃げする。気づいて追いかけてきた彼が警察に突き出すというが、ミンソは願いを一つ聞くからチャラにしてくれと提案する。カリムは、前職場の社長宅に1年分の未払い給料を請求しに一緒に行ってくれと頼む・・・・
【韓国映画ショーケース2009】で『バンドゥビ』という原題で上映されましたが、バンドゥビとはベンガル語で友達のこと。ミンソとカリムはこんな風に出会ったけれど、だんだんと打ち解けていきます。ミンソとカリムの人種、性別、宗教の違いを超えての友情が爽やか。カリムと同じバングラデシュから出稼ぎに来ている人たちがお互い支えあって暮らしている姿も微笑ましい。一方、ミンソが英語塾の白人教師にカリムを紹介したときのカリムを見下げたような態度に、ミンソはふっと疑問を持ちます。母親の恋人も、「あの男と付き合うのは危険では?」と偏見丸出し。また、日本でもよく問題になる不法滞在の外国人に対する経営者の不当な扱いや出入国管理局の容赦ない態度は、韓国でも同じだなと思いました。カリムの語る「友達を笑わせることのできる者は天国へ行ける」というイスラームの教えに、共生のヒントがありそうです。(咲)
監督・脚本:イ・サンウ
出演/キム・スンウク カン・シンイル ムン・ソングン ソン・ガンホ(友情出演)
2010年/韓国/86分
1950年7月、朝鮮戦争勃発から1ヶ月。“大門岩”に守られた谷間の村では、戦況も知らないまま、小学校では全国合唱コンクールの練習が行われ、老人たちは道に縁台を出して囲碁を楽しんでいる。しかし、南下してくる北朝鮮軍の勢いに、米軍は大田(テジョン)から釜山(プサン)に通じる唯一の道である老斤里(ノグンリ)一帯に阻止戦を設け、村民500名余りに強制避難勧告を出す。米軍がトラックで避難させてくれるという場所に集団で向かうが、突然攻撃の弾が飛んでくる。避難民の中に北朝鮮の“赤”がいるとの未確認情報により、米軍は避難民すべてを殺害せよとの命令を下したのだ。橋の下に寄り添って弾をよける人々。容赦ない攻撃が続き、生き残ったのは、わずか25名だった・・・
この事件は、生存者を中心とした住民達の真相究明の要求にも関わらず、韓国政府とアメリカ政府によって50年間封印されていた。1999年にAP通信が真相を報道、翌年それがピュリッツァー賞を受賞し、世界に知れ渡る。韓国政府は2005年になってようやく被害者の名誉を回復する。しかし、朝鮮戦争当時、米軍の起こした民間人虐殺は60件余りあるとされ、本件は真相が明らかにされた唯一の事件である。
“危険分子”がいると正当化して攻撃が行われ、民間人が巻き込まれて死傷するのが戦争の常。どんな状況であっても、人の命を奪う権利は誰にもないでしょう。兵士だろうと民間人だろうと・・・ それなのに世界から戦争がなくならないのは、虚しく悲しい。
『小さな池―1950年・ノグンリ虐殺事件―』には、この事件を知ってもらいたいという監督の思いに賛同して、映画やドラマでよく見かける名優たちが大勢出演しています。ソン・ガンホも警察幹部役で出ていたらしいですが、気がつかず残念! (咲)
★その他の作品内容については、公式HPで確認ください。
公式 HP >> http://www.ks-cinema.com/
本誌64号 キム・ギドク監督記者会見
主演女優来日記者会見
キム・ギドク監督来日記者会見
本誌76号 チュ・ジフン、ホン・ジヨン監督記者会見、ホン・ジヨン監督インタビュー
チュ・ジフン、ホン・ジヨン監督記者会見
ホン・ジヨン監督インタビュー
本誌77号 あいち国際女性映画祭2009『今、このままがいい』プ・ジヨン監督インタビュー
第22回東京国際女性映画祭『今このままがいい』プ・ジヨン監督 Q&A
シン・ミナさん来日報告
本誌77号 あいち国際女性映画祭2009
本誌80号 第23回東京国際女性映画祭
主演チェ・ギュファン舞台挨拶・囲み取材報告
イム・スルレ監督インタビュー2010年 2月27日
真!韓国映画祭オープニングイベント&『飛べ、ペンギン』Q&A
監督:ロブ・マーシャル
脚本:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ
撮影:ダリウス・ウォルスキー、A.S.C.
視覚効果監修:チャールズ・ギブソン
プロダクションデザイン:ジョン・マイヤー
衣装デザイン:ペニー・ローズ
音楽:ハンス・ジマー
出演:ジョニー・デップ(ジャック・スパロウ)、ペネロペ・クルス(アンジェリカ)、ジェフリー・ラッシュ(バルボッサ)、イアン・マクシェーン(黒ひげ)、サム・クラフリン(フィリップ)、アストリッド・ベルジュ=フリスベ(シレーナ)、ケヴィン・R・マクナリー(ギブス)、キース・リチャーズ(ティーグ・スパロウ)ほか
ジャック・スパロウは自分と間違えられて縛り首寸前の相棒ギブスを救出するべくロンドンにやってきた。巷ではジャック・スパロウが永遠の生命を得られるという「生命の泉」を求めて航海に出るという噂が流れていた。ギブスを逃がした後、ジャックは英国王に捕らえられ、スペインより先に泉を探し出すように厳命されるが、懐に隠し持っていた地図は何者かに盗まれていた。英国海軍の船長となるのは宿敵の海賊バルボッサだった。彼は片足をなくし、いまや英国王に忠誠を誓う海軍将校となっていた。城から逃げおおせて街に出たジャックは、かつて愛した女海賊アンジェリカと再会する。彼女は父親のために「生命の泉」のありかをさがしていた。
相変わらず飄々としながらチャーミングな孤高の海賊キャプテン・ジャック・スパロウ。ジョニー・デップのはまり役となって4作目となりました。このシリーズのプロデューサーはヒットメーカーのジェリー・ブラッカイマー。前3作のゴア・ヴァービンスキーに変わって、『NINE』『SAYURI』のロブ・マーシャル監督がメガホンをとっています。アクション指導という項目が見当たりませんが、戦闘場面では粗野な海賊ばかりでなく、イギリス、スペインの海軍とアクションも多いので、振り付け師でもある監督が楽しんで関わったのかもしれません。ペネロペ・クルスがかつての恋人アンジェリカ、ジャックを翻弄しながらも可愛らしいです。いちばん可愛いのはジャックですけどね。
冒頭ロンドンの通りを走る馬車に飛び込んだジャックが、乗っていた貴婦人(なんとジュディ・デンチ)にキスしてすぐ降りてしまう場面があります。驚く貴婦人ですが、うっとりして「もう行ってしまうの?」(イヤリングを盗まれている)あっはっは!ジョニー・デップファンには見逃せない作品ですね。まだまだ続きますよ~。エンドロールの後も席を立たないようにご注意ください。(白)
(C)Disney Enterprises, Inc.
★5月20日(金)全国ロードショー/3D同時公開公式 HP >> http://www.disney.co.jp/pirates/
監督:翰光(ハン・グァン)(『ガイサンシーとその姉妹たち』)
企画・製作:山上徹二郎
編集・制作:ジャン・ユンカーマン
ナレーション:山川建夫
出演:鄭義(作家)、高行健(劇作家・画家)、王丹(歴史学者)、楊建利(政治活動家)、張伯笠(牧師)、胡平(政治評論家)、黄翔(詩人)、徐文立(政治家)、馬徳昇(画家)、王克平(彫刻家)、陳邁平(小説家・劇作家)
中国では、1960年代の文化大革命から1989年6月4日の天安門事件を経て、多くの人々が世界各国への亡命を余儀なくされてきた。かつて万里の長城を築いて他民族の侵略を防いできた中国。今、海外からの情報だけでなく、中国人同士の間も目に見えない長城によって遮断され、民主化の動きが阻まれている。
翰光監督は、1987年に留学生として来日。天安門事件以降、自分に影響を与えてくれた知識人たちが次々と海外に亡命したことを知る。彼らはなぜ国を離れなければならなかったのか? そして、なぜまだ故国に戻れないのか? 彼らは今の中国とこれからの中国をどう見ているのか? 本作は民主化を求める亡命者たちの思いを伝えるドキュメンタリー。
天安門の民主大学と中国の監獄大学で学んだと語る人、逃亡している身だと知りながら匿ってくれた見知らぬ人たちに感謝する作家、詩集を世界各地で発行し認められたものの、故国中国で発表できなければ意味がないと嘆く詩人、親ともいえる政府が我が子である学生たちに銃を向けるとは思わなかったと息巻く歴史学者・・・ 皆に共通するのは、いつか中国に帰りたいという愛国心。「♪故郷に帰れるのはいつの日か・・・」と、皆で歌いながら故国に思いを馳せる姿にほろりとさせられました。心残りは母の死に目に会えなかったことと語る人。「国が許しても信用して帰ってきてはいけない」と母親からの手紙に書いてあったというくだりには、息子に会いたい気持ちよりも我が子を守りたい母の気持ちを切々と感じました。人権を守ってくれるはずの国を信用できない悲しさ・・・ 世界には、自分たちが人間らしく生きるために主張して弾圧される人がいかに多いことでしょう。一方、1960年~70年代初頭に吹き荒れた日本での学生運動の嵐が信じられないほど、主張しなくなった日本人・・・ 本作では、何ものも恐れず自分の意見をいう勇気を見せつけられました。(咲)
長編ドキュメンタリー/カラー/HDV/118分/2010年
製作・配給 : シグロ
公式 HP >> http://www.exile2010.asia/jp/
監督:チャールズ・ファーガソン
原案・脚本:チャド・ベック
ナレーション:マット・デイモン
2008 年9月、世界中に吹き荒れたリーマンショックの嵐。本作は、リーマン・ブラザーズの経営破綻が、いかに世界中を巻き込む経済崩壊に繋がったかを検証するドキュメンタリー。投資家、金融界関係者、政治家、学者、ジャーナリスト、弁護士、映画監督など、様々な人々にインタビュー。取材はアメリカだけでなく、アイスランド、フランス、中国、シンガポールなどにもおよぶ。冒頭、美しく経済的にも恵まれたアイスランドが経済危機に襲われていく様子が圧巻。
字幕監修をした経済評論家の森永卓郎氏の言葉が本作の核心を突いているので引用したい。
「百年に一度の経済危機をもたらしたリーマンショック。その原因は、経済システムの問題ではなかった。アメリカ政府、金融界、そしてそれを擁護する御用学者による鉄のトライアングルが、空前の規模の詐欺事件を起こした。それはある意味、銀行自身による銀行強盗だった。しかも、その犯人たちは誰一人として逮捕されず、いまだにこの世を謳歌している。彼らが再び強盗を始めようとしている今こそ、この真実に目を向けるべきだ」
当時、サブプライム・ローンという言葉を初めて耳にしました。普通ならローンを組めないような低所得者層の人たちがローンを組んで住宅を購入。あげく、支払いが滞り差し押さえにあって、せっかく購入した新居を追い出された姿をニュースで見たものでした。そのサブプライム・ローンが売り出した金融機関は損することのない仕組みであること、そんなローンを許したのが、政府による法改正による規制緩和。その裏には、金融界の差し金で規制緩和を勧めた経済学者がいたことなどが明かされていきます。が、当然ながら肝心要の当事者たちはことごとく取材拒否。逆に「インサイド・ジョブ(内部の犯行)」というタイトルが真実味を帯びて浮かび上がってきます。
都合のいいように法律が変えられ、都合の悪いことはことごとく隠し通す・・・ ほかの問題にも同様のことがいえそうですね。(咲)
2010年/アメリカ/スコープサイズ/SDDS、ドルビーデジタル、ドルビーSR/1時間48分
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
第83 回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞受賞
公式 HP >> http://www.insidejob.jp/
監督:ジョアン・スファール
出演:エリック・エルモスニーノ、ルーシー・ゴードン、レティシア・カスタ、ダグ・ジョーンズ ミレーヌ・ジャンバノワ、アナ・ムグラリス、ヨランド・モロー、サラ・フォレスティエ、クロード・シャブロル
セルジュ・ゲンスブール。
1928年4月2日パリ生まれ。本名 リュシアン・ギンズブルグ。
フランスの作曲家、作詞家、歌手、映画監督、俳優、画家・・・。
1991年3月2日 パリの自宅にて死去。享年62歳。
セルジュ・ゲンスブールとは、どんな人物だったのか?
本作は、ゲンスブールに心酔するジョアン・スファール監督が、彼の足跡を辿って、彼の人生を寓話的に描いた物語。
両親は帝政ロシア(現在のウクライナのハリコフ)出身のユダヤ人。画家を目指し、バーでピアノ弾きの仕事をしながら美術学校に通っていた時に、サルバトール・ダリの愛人と出逢い一夜を共にする。華麗な女性遍歴の幕開け。その後、画家の道を捨て、音楽で身を立てることを決意。「リラの門の切符切り」でメジャーデビュー後は、人気作曲家として飛ぶ鳥を落とす勢い。エディット・ピアフやフランス・ギャルなど有名歌手たちに曲を提供する。ブリジット・バルドーとの不倫の恋、映画『スローガン』で共演したイギリス人女優ジェーン・バーキン(当時20歳)との3度目の結婚、最後のパートナーとなった30歳下のモデル・歌手バンブーとの出逢い等々、“ユダヤ人で醜男”というコンプレックスを抱えながら、ゲンスブールは美女にモテるダンディな男だった・・・
フランス映画祭2010の団長として来日したジェーン・バーキンが、「私のフランス語はセルジュの腕の中で学んだスラングから始まった」と笑顔で発言されたのを思い出しました。ゲンスブールが一番長く連れ添ったのがバーキン。こんな破天荒な人生を送った人物だったことを本作で知りました。
本作が映画初監督作品となるジョアン・スファールは、もともとバンドデシネ(フランスのコミック)作家。冒頭アニメーションで描かれるナチスドイツ統治時代のパリの様子がお洒落。若き日のゲンスブールが、軍隊の足音におびえて裏通りに隠れ、襟につけた黄色いダビデの星を保安官バッジに変形させる場面には、ゲンスブールと同じユダヤの血が流れるスファール監督の思いを感じました。(咲)
2010年/フランス・アメリカ/フランス語/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル・DTS/2時間2分
配給:クロックワークス
公式 HP >> http://gainsbourg-movie.jp/
原作:西村滋「お菓子放浪記」(理論社/講談社文庫刊)
脚本:西井史子、泉悦子、近藤明男
撮影:久保田悦朗
音楽:沢田完
衣装:萬木利昭、他
美術:中川理仁
出演:吉井一肇(西村アキオ)、早織(浜田陽子・西村カナ2役)、遠藤憲一(遠山刑事、)山田吾一(国分学院院長)、いしだあゆみ(野田フサノ)、竹内郁子(トミ子、)尾藤イサオ(徳さん)、林隆三(尾上紋三郎)
親のないアキオは孤児院に入れられたが脱走を繰り返すので、ついに感化院送りになる。
そこで酷いいじめに合うが、陽子先生が歌う「お菓子と娘」につかの間の安らぎを感じる。
彼女が転勤して別れてからも手紙のやりとりがあり、孤独なアキオの唯一の慰めになった。
昭和十八年春、東京。
養子にしてくれたフサノのおかげで、感化院を出たアキオは、子どもながらも映画のフィルム運びなどで働くが、強欲なフサノと喧嘩して飛び出してしまう・・・。
監督さんの暖かいまなざしを随所に感じた。前作の『ふみ子の海』は日本海側のどんよりとした雪空、
『エクレール~』は、震災で貴重なフィルムとなった太平洋側の太陽のさす雪景色。その対比が出ていたので驚いた。
だが、なんと言っても主演の吉井一肇がよかった。彼のビブラートのかかっていない真っ直ぐな声が、一途な気持ちを表現しているようだった。
この少年を見つけ、主役にできたことで映画の格がグンとあがった。
「お菓子と娘」の歌が、アキオと陽子先生を結びつけ、戦後の厳しい時代を二人して甘いお菓子作りの夢を現実にして行く・・・。
なんだかほのかな甘い香りが体全体を包んでくれる・・・そんな作品だった。いまでも、私の頭の中で「お菓子と娘」がリピートしている。
※1 父が私の中学2年に亡くなり、葬式に来た父の古い友人から 「戦争中にあなた方のお父さんから手紙をもらったから、形見として持参したよ」と10通ほどの封筒をくれた。 内容はたいしたものではなかったが、追伸に「あ~、黒砂糖が食べたい・・・」とか 「母君のぜんざいがわすれられない」や「サッカリン!感謝」など書いてあった。 そのとき「とうさんはこんなに甘党だった?」と思ったものだ。 父も、いいえ、日本全国の人々がこの時代、甘いものを宝物のように感じていたんだなと感慨深い。
※2 残念だったことは、感化院に入ったその日に丸坊主のはず、吝嗇なフサノもあの年齢なら白髪か白髪まじり。 この頭髪に関しては、生活感や時代を表すことだけに少し残念。(美)
2011年/日本/カラー/ビスタビジョン/105分
配給:『エクレール お菓子放浪記』全国配給委員会 マジックアワー
★2011年5月21日 テアトル新宿にてロードショー
公式 HP >> http://www.eclair-okashi.com/
監督:冨永昌敬
撮影:月永雄太、冨永昌敬
音響効果: パードン木村
ナレーター: 野宮真貴
出演:大野松雄
テレビアニメのさきがけとなった手塚治虫の「鉄腕アトム」(1963年~)の、アトムの足音を覚えている方は多いはず。ピョコッ、ピョコッというあの音を作り出したのは、音響デザイナーの大野松雄氏だ。未来都市や宇宙の音はどんなふうに創造されていったのか。50年代に電子音楽が始まって以来、常に新しい音を追い求めていった大野氏の足跡を多くの作品や証言から辿っていく。
「鉄腕アトム」をリアルタイムで見ていた筆者は、あの音がどうやって生まれたのか興味津々でした。大野氏が実際にやってみせてくれたのは、単純でなんとも独創的な方法。製作当時、あの手塚治虫氏とアニメの音を巡って丁々発止、一歩も譲らないなんて!互いにプロフェッショナルなお2人はすっかり意気投合したに違いありません。そんなエピソードも交えながら、なかなか知ることのできない音響の世界50年の輪郭を見せてもらえました。(白)
2010年/日本/カラー、白黒/82分/16:9/ステレオ
配給・宣伝:東風
公式 HP >> http://www.atom-ashioto.jp/
監督:常田高志
プロデューサー:榊正昭
タケオこと新倉壮朗(にいくらたけお)さんはアフリカンドラムが大好き。
アフリカでのドラムとダンスのワークショップに参加したタケオくんが念願のセネガルの地に降り立った瞬間から始まるこの作品は、ダウン症候群として生を受けた彼を幼少期から家族が撮り溜めた映像と常田監督が同行し密着した旅先アフリカの日々で構成されています。
小さい時から音楽、とりわけリズムに対して鋭敏な才能を見せた彼が出会ったのがアフリカンドラムでした。人一倍努力家な彼は若い時から人前で演奏するまで成長しました。アフリカでは祭事のダンスに飛び入りし、人間国宝であるドゥドゥ・ンジャエ・ローズさんと演奏をし、最後にバオバブの巨木と対話するようにドラムを演奏し、木の精霊に音の捧げ物をして別れを告げます。
4月16日(土)東京ウィメンズプラザホールで行われた完成披露上映会に足を運びました。
この作品は、ダウン症候群の彼にとって遠方への旅行がかなりなリスクを伴う為、旅先の姿を残しておきたいという家族の願いからが生まれたといいます。何より彼の笑顔とスクリーンからほとばしり出てくる心の叫びのようなリズムに圧倒され、彼を取り巻く人々の優しさを強く感じた作品でした。
上映後にワガン・ンジャエ・ローズさんとタケオさんのサバール演奏が行われ、サバールの硬質な音に驚いたのか最初はぎこちなかった会場でしたが、次第に熱気を帯び、いつの間にか最後には全員が立ち上がっていました。現在、彼は働きながら障がいのある子どもたちに音楽と触れ合う場を提供する活動も行っていて、その様子も作品の中で紹介されていました。(眞)
2011年作品/日本/76分/16:9/HD/カラー/ドキュメンタリー
企画・製作:映画「タケオ」製作委員会/映像グループ ローポジション
特別記事『タケオ〜ダウン症ドラマーの物語』完成披露東京上映会報告
★5/21大阪市立こども文化センター、6/11浦和文化センター, 9/4男女共同参画センター横浜北(横浜・あざみ野)ほか、各地で上映予定
公式 HP >> http://www.takeo-cinema.jp
監督:ゲイリー・ウィニック
脚本:ホセ・リベーラ、ティム・サリヴァン
撮影:マルコ・ポンテコルヴォ
編集:ビル・パンコウ
衣装:ニコレッタ・エルコーレ
出演:アマンダ・セイフライド(ソフィ)、クリストファー・イーガン(チャーリー)、
ガエル・ガルシア・ベルナル(ヴィクター)フランコ・ネロ(ロレンツォ)、
ヴァネッサ・レッドグレイヴ(クレア)
世界遺産にも選ばれた愛の都・ヴェローナに、婚約者の仕事でこの地に来たライター志望のアメリカ人・ソフィは、婚約者の仕事中心の身勝手さから、一人ぼっちになってしまい、『ロミオとジュリエット』で有名な、ジュリエットの生家にふらりと見学がてら入ってみた。そして、その家のレンガ壁から50年前の古い手紙を見つけたソフィは、進められて返事を書いて投函する。 その手紙が奇跡的に書いた方に届き、驚くことに甥を伴ってヴェローナにきてしまったのだ・・・。クレアは返事を書いたソフィーと一緒に初恋の人を探す旅をはじめる。
不朽の名作『ロミオとジュリエット』の舞台で、世界遺産にも選ばれた愛の都・ヴェローナ。 その街にはジュリエットの生家があり、年間5000通もの恋の悩みが届けられている。 そして、“ジュリエットの秘書“と呼ばれる女性たちが、その手紙に返事を書いている。 ジュリエットからの手紙から生まれた実話を基にしたラブ・ストーリーだが、 あんまり偶然が重なりすぎて、本当のところはどうだったのかと疑ってしまう夢なき私。 だが気品のある老婦人ヴァネッサ・レッドグレイヴに釘付け! ガエル・ガルシア・ベルナルが調子のよい婚約者という脇役の設定だが、 彼の軽妙さが生きていて楽しそうに演じていた。(美)
2010年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/ドルビーデジタルDTS/105分
配給:ショウゲート
★2011年5月14日 Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開
公式 HP >> http://www.juliet-movie.jp/
監督:本田隆一
原作・脚本:前田司郎「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」(幻冬舎文庫刊)
撮影:小林元北信康
音楽:蔦谷好位置
照明:堀直之
装飾:田口貴久
編集:山中貴夫
出演:竹野内豊(大木信義)、水川あさみ(大木咲)、荒川良々(いいじま)、片桐はいり(但馬)樹木希林(占い師の女)、柄本明(濡れた男)
大木信義と咲は長い同棲生活の末に結婚した。新婚生活も気分はいっこうに盛り上がらず、引越し荷物に紛れ込んだ炊飯ジャーを巡って喧嘩が始まった。 そんな中、咲は近所のスーパーに買い物に出掛けたが、途中ですれ違った男がコートに隠すように、見つからなかった自分たちの炊飯ジャーを持っていた?!
奇想天外のストーリーで驚く。
「何? この映画、どうなっているの?」と、先行きを半分あきらめて観ているうちに、ある一言でえらく感動してしまった。この2人は「これから生まれてくる人たちの世界」に入り込んでしまうのだ・・・。この先は言えないが、結婚した男女のかけがえのない縁の深さを、ファンタジー風にアレンジして描いている。
この監督さんの今までの作品で『裁判長!ここは懲役4年でどうすか~』は好みではなかったが、『GSワンダーランド』は大好き。そしてこの『大木家のたのしい旅行』で感動&ホロリ。この監督さんの次の作品が楽しみだ。
※1 旅行って、行く前がわくわくして楽しいが、この作品の旅行は<観て>からの方がうんとたのしくなりそう・・・。
※2『太平洋の奇跡』の竹野内豊が、面倒くさがりの夫を自然体で演じていた。
(美)
2010年/日本/カラー/121分
配給:GAGA
★2011年5月14日 新宿バルト9ほかにて全国ロードショー
公式 HP >> http://ookike.gaga.ne.jp/
監督:ダーレン・アロノフスキー
原案:アンドレス・ハインツ
脚本:マーク・ヘイマン、アンドレス・ハインツ、ジョン・マクラフリン
撮影:マシュー・リバティーク
振付:バンジャマン・ミルピエ
音楽:クリント・マンセル
出演:ナタリー・ポートマン(ニナ・セイヤーズ)、ヴァンサン・カッセル(トーマス・ルーロイ)、ミラ・クニス(リリー)、バーバラ・ハーシー(エリカ・セイヤーズ)、ウィノナ・ライダー(ベス・マッキンタイア)、バンジャマン・ミルピエ
純白の野心は、やがて漆黒の狂気に変わる… 成し遂げられなかった夢を自分に託す母。その期待を一身に背負ってきたニナは、バレエ団の優等生だったが、これまで役に恵まれずにきた。長年プリマの座に君臨してきたベスが引退し、ついにチャンスが到来する。しかし新作の「白鳥の湖」は、一人のプリマが白鳥と黒鳥を演じなければならない。純真で可憐な白鳥は完璧に踊れても、魔性の黒鳥はニナの個性から程遠く、苦しい日が続いた。芸術監督の厳しい注文と、ニナと正反対に官能的なリリーの出現に焦燥感を募らせていく。
ナタリー・ポートマンはバレエの素養があったそうですが、この役柄のために専門家から特訓を受けています。鍛えられた美しくしなやかな身体で踊りきり、シーンの9割は彼女自身の映像とか。ウクライナ出身のミラ・クニスは『ザ・ウォーカー』でデンゼル・ワシントンの相棒となりましたが、この作品では奔放なライバル役。大きな目が印象的です。娘を管理し続ける母親に唖然としましたが、この作品と前後して観た『ザ・ファイター』でも才能ある息子に入れ込むモンスターママが登場していましたっけ。子どものうちはそれが必要かもしれないけれど、長じるにつけ自我の芽生える娘・息子は、親の気持ちと裏腹に孤独になっていきます。タイプの違う母親だけれどどちらも強烈でした。しだいに追い詰められていくニナを渾身で演じたナタリー・ポートマンは、アカデミー賞主演女優賞ほか数々の受賞に加え、振付と王子役だったバンジャマン・ミルピエとの婚約・妊娠というおまけもつきました。おめでとう!(白)
2010年/アメリカ、/カラー/108分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:20世紀FOX
(C)2010 Twentieth Century Fox.
★5月11日(水)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
原作 石塚真一「岳」(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載)
監督 片山 修
脚本:吉田智子
撮影:藤石 修 美術:新田隆之 録音:湯脇房雄 照明:川辺隆之 編集:松尾茂樹 助監督:櫻井宏明 製作担当:菊島高広 音楽プロデューサー:北原京子 音響効果:大河原将 スクリプター:谷 恵子
山岳コーディネート:大森義昭
キャスト:小栗 旬 長澤まさみ 佐々木蔵之介 石田卓也 市毛良枝 渡部篤郎 矢柴俊博 やべきょうすけ 浜田 学 鈴之助 尾上寛之 波岡一喜 森 廉 ベンガル 宇梶剛士 光石 研 中越典子 石黒 賢
音楽:佐藤直紀
(オリジナル・サウンドトラック/ワーナーミュージック・ジャパン)
主題歌:「あの太陽が、この世界を照らし続けるように。」コブクロ
槍・穂高連峰、後立山連峰など北アルプスを舞台に、山岳救助ボランティアの主人公(島崎三歩)と山岳遭難救助隊の活動を通して、登山者の命を守る人々の活動を描いている。世界中の山を登り歩いて、誰よりも山を知り、山を愛する島崎三歩は、大きな包容力を持ち、おおらかで太陽のように明るい登山家である。北アルプスを庭のように自由自在に歩き回り、登山者の安全に務めている。遭難があったときには真っ先に駆けつけ、山岳遭難救助隊に引き渡すまで救助活動を行い、超人的な活躍をする。山麓の山荘のおかみ(市毛良枝)が作る大盛りのスパゲティが大好きで、ここを拠点に山に出入りしている。
山岳救助隊に椎野久美(長澤まさみ)が配属されて来て、山岳救助隊隊長・野田正人(佐々木蔵之介)や三歩の過酷な訓練を乗り越え救助隊員として成長していく。そして、ある遭難がきっかけで、久美がなぜ救助隊員に応募してきたのかがわかる。
命の大切さと人々のつながり、大自然の雄大さと厳しさを描いた作品。
原作は石塚真一のコミック『岳』(小学館ビッグコミックオリジナル連載)
『岳 -ガク-』を観て
山が好きで、1975年ころから1995年頃まで山の写真を撮っていた。しかも信州が好きで1970年からの約10年の間に、山やスキーに60回くらい信州に通った。特に大糸線沿線から見ることができる後立山の山々が好きで、その中でも鹿島槍という山が一番好きだった。その後、この鹿島槍の写真を撮るという大義名分で1981年から延べ5年近くこの沿線に住み、働きながら写真を撮っていた。鹿島槍ヶ岳を綺麗に見ることができる五竜遠見尾根には30回くらい登ったかもしれない。また隣りにある八方尾根は、私が長く暮らした白馬村八方の目の前にあり、それ以上登ったかもしれない。
今回、この作品に惹かれたのは、映画チラシに八方尾根から写した写真が使われていて、しかもバックに私の好きな五竜遠見尾根と鹿島槍ヶ岳が写っていたから。八方尾根や五竜遠見尾根は比較的簡単に登れて、日本有数の景色を眺めることができる。もちろん尾根から稜線に出たら大変なのだけど、自分が苦労して登った山々が舞台の映画というだけで嬉しい。
白馬村に5年近くいるうち、やはり山岳ガイドの人や山岳救助の人たちとも知り合いになったし、彼らの仕事を見てきた。命と向き合う彼らの仕事を見て、彼らの活動をもっと世の中の人に知ってもらいたいとずっと思ってきた。それを実現してくれたのがこの作品だった。
後立山では、長野県警の山岳救助隊と、その人たちを支える山小屋の人や、三歩のような救助ボランティア(主にガイドの人が、要請があると救助に向っていたと思う)、そういう人たちの活動があって、遭難者救助が成り立っていた。そのことを、この作品を見ながら思い出した。
漫画が原作とのことで、漫画を見ない私にとって、山岳救助のことが漫画になっているということ自体が驚きだった。主人公三歩を見て、モデルになった人がいるのか聞いてみたくなった。
この作品の舞台は、穂高岳周辺のようだけど、そこまで入るのはけっこう大変ということもあって、後立山周辺でかなり撮影しているのかなと思った。チラシなどは八方尾根で撮影したものが多かったけど、映画の最後のシーンは奥穂高岳山頂で撮ったのだなと思った。ジャンダルムが写っていた。また、アイスクライミングなどは八ヶ岳硫黄岳周辺で撮影したとのこと。日本の山々の様々な姿もこの映画は見せてくれる。
もう何年も山には行ってないが、この作品を観て北アルプスの山々に行きたくなった。(暁)
上映時間:2時間5分/シネマスコープ/ドルビーデジタル
製作:東宝 テレビ朝日 小学館 トライストーン・エンタテイメント 小学館集英社プロダクション KDDI 博報堂DYメディアパートナーズ 毎日新聞社 長野朝日放送 日本出版販売
製作プロダクション:東宝映画
(C)2011 「岳 -ガク-」製作委員会
(C)2005 石塚真一/小学館
★全国東宝系(2011年5月7日公開)
公式 HP >> http://www.gaku-movie.jp/
監督:ジョン・チュウ
撮影:リード・スムート
音楽:デボラ・ルーリー
出演:ジャスティン・ビーバー、ボーイズIIメン、マイリー・サイラス、ショーン・キングストン、リュダクリス、ジェイデン・スミス、アッシャー
3Dドキュメンタリー映画。17歳のトップアイドル歌手ジャスティンの生い立ちから、プライベート映像、即売り切れたマディソン・スクエア・ガーデンでのライブまでが見られる。子どものころの動画をお母さんがyoutubeに投稿したのがきっかけ。離れて住む祖父母や友人に見せるつもりで掲載したら、その歌唱とキュートさにアクセス数がうなぎのぼり。音楽プロデューサーの目に留まり、カナダの音楽好きの少年だったジャスティンは、ミリオンセラー、ヒットチャートの独走、ライブ成功など記録を塗り替えるスターになった。
試写の案内があって初めてスーパーアイドルだと知りました。わりと小柄で中性的なルックスは、永遠の少年であるピーター・パンを思い起こさせます。彼を支える家族やマネージャー、ライブの準備にあたるスタッフのコメントも収録し、一番年下のジャスティンに関わる人の多いことに驚きます。そういう人たちが、ビジネスを越えた愛情を持ってあたっているのが垣間見え、ホッとしました。ほとんど親戚のおばちゃん気分です。
タイトル「NEVER SAY NEVER」は、この作品のテーマ曲であり、ジャッキー・チェンとジェイデン・スミス主演の『ベスト・キッド』のエンディング曲でもあります。仲良しのジェイデンもライブで一緒に歌っています。
5月17日にはZEPP大阪、19日には東京の武道館でのライブが予定されています。その予習にぴったりのこの作品で一足早く盛り上がりましょう。(白)
2010年/アメリカ/カラー/105分/
配給:パラマウントピクチャーズジャパン
(C)2010 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.justinbieber-movie.jp/
監督:アク・ロウヒミエス
出演:サムリ・バウラモ、 ピラ・ビータラ、イ―ロ・アホ
1918年、フィンランド内戦末期、左派赤衛軍の女性兵士たちが右派白衛軍の男性兵士たちに捕えられる。乱暴され、銃殺される女性兵士たち。ひとり生き残った女性兵士ミーナを、准士官のアーロは、公正な裁判にかけるべく小船で湖を連行していくが孤島に漂着してしまう。二人で過ごすうちお互い惹かれあうようになる。その後、公平な裁判にかけることで定評のあるエーミル判事のもとに辿り着くが、二人を待っていたのは公平とは程遠い過酷な運命だった・・・
フィンランドに内戦の歴史があったことを本作で初めて知りました。しかも、大勢の女性が兵士として戦ったことに驚かされました。昨年11月、フィンランド映画祭の折に来日したアク・ロウヒミエス監督にお会いし、そのことをまずお伺いしたら、フィンランドは女性がヨーロッパで初めて参政権を得た国で、内戦当時から男女平等だったとのこと。しかも、内戦では、貧しい者の立場で女性たちが立ち上がったそうです。
ヒロインの女性兵士ミーナは、戦友の女性マルッタから自分が死んだら息子エイノを迎えに行ってほしいと頼まれます。そのエイノを演じたのは、監督の実の息子さん。学校で作文に「お父さんが自宅で銃を持ってあれこれ命令する」と書いたことから、先生が「お宅は大丈夫ですか?」と電話してきたそうです。「撮影中で内戦の渦中にいたので、そんなことを書いてしまったようです」と監督は語っていました。
政治的でない形で内戦をテーマにした初めての映画で、しかも白衛軍・赤衛軍双方が戦争の犠牲者だったという公平な視点で描いたのだそうです。美しいフィンランドの風景の中で切ない二人の思いが引き立っていました。また、最後に映し出される当時の写真には、二度と繰り返してはならない悲劇をずっしり感じました。(咲)
2009年/フィンランド・ドイツ・ギリシャ/フィンランド語/114分/35mm/カラー16:9
配給:アルシネテラン
シネマジャーナル81号にアク・ロウヒミエス監督インタビューを掲載しています。
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/namida/
監督・脚本・撮影・美術・編集・音楽:ノ・ヨンソク
録音:キム・ヨンス
整音:ノ・ジェウォン
出演:ソン・サムドン(ヒョクチン)、シン・ウンソブ(トラック運転手)、キム・ガンヒ(ペンションの隣室の美女)イ・ラニ(ラニ)
彼女に振られたヒョクジンを慰めようと友人たちが飲み会を開いてくれた。その席で、江原道のチョンソンへ旅行に行こうという話が持ち上がり、ヒョクジンはしぶしぶ承諾した。 だが翌朝、約束の集合場所に来たのはヒョクジンだけだった。ほかの友人は酔っ払ってまだ寝ているとか、今から仕事だとかいい加減な返事。ヒョクジンは、旅を言い出した友人の「後から必ず合流する」という言葉を信じて、1人で紹介された江原道のペンションへと向かう。しかし、いい先輩だと聞いていたペンションの主人は無愛想。だが、隣の部屋の美女にタバコをねだられたり、親しく口をきいたりして、いい雰囲気になり・・・。
こんな面白い<トホホ・ロードムービー>が100万円以下で制作されたとは驚きだ。最後のオチにも大笑い。韓国映画界の新しい才能ある監督さん誕生だ。江原道のチョンソンへ旅行に行こうという設定だが、またここが田舎、何もない田舎・・・。その何にもない田舎のペンションに着くまでに、いろんなことがヒョクジンの身にふりかかる。韓国の男性は女の人には本当に優しいので、いろんな辛い目(はたで見ているには面白いが)をするのだが、こんな旅も終わってみて気づく・・・失恋の痛手は何処へ?と。今年のベストテンに入りそうだ。(美)
2009年/韓国/カラー/デジタル/ビスタ/116分
配給:エスピーオー
★2011年5月7日 シネマート新宿にてロードショー
監督:リサ・チョロデンコ
脚本:リサ・チョロデンコ
共同脚本:スチュアート・ブルムバーグ
音楽:カーター・バーウェル
撮影:イゴール・ジャデュー=リロ
出演:アネット・ベニング(ニック)、ジュリアン・ムーア(ジュールス)、マーク・ラファロ(ポール)、ミア・ワシコウスカ(ジョニ)、ジョシュ・ハッチャーソン(レイザー)
長年共に暮らしてきた同性カップルの子どもたちが、自分たちの父親を捜し始めたことから起きる騒動をコミカルに描いている。アネット・ベニングとジュリアン・ムーアの同性婚カップル。同じ父親(見知らぬ)の精子から生まれた長女ジョニと弟レイザーは、それぞれの母親と一緒に4人仲良く暮らしていた。そんなある日、自分たちの本当の父親の存在が気になり始めた姉弟は、2人で彼を訪ねる。そのことがそれぞれの母親ニックとジュールスに知れたことから、家族の関係が危うくなる。
アメリカでは子どもが18歳になると、希望すれば父親を教えてもらえる。だから姉が18歳になったとき、弟の方が姉に調べてみてと頼むのだった。父親は案外すんなり見つかり、子どもを喜んで向かえ、子も<男の父親>もなかなかいいなぁ!となるが、問題は2人の母だ。同性のカップルでも普通のカップルと同じように嫉妬や意見の食い違いで喧嘩する。まぁ、当然のことだが、生活の場でも一般と変わらない男女?の役割分担みたいなのが歴然とある。夫役の女医は「こんなに生活ができるのは誰のおかげ?」と言わんばかりだし、妻役ガーデニングプランナーは「私が仕事するのが気に入らないんでしょ」となる。どんなカップルでも同じ台詞だ。途中は波乱含みだが、最後は丸くおさまるのが、ちょっと私としては物足りなかった。
※ 同姓婚の2人ばかりに目がいってしまったが、娘・息子の友人関係がとてもよく、友人たちは彼らを特異な家族という受け止め方をしていなかった。(美)
2010年/アメリカ/カラー/ビスタ/ドルビーSRD/107分
配給:ショウゲート
★2011年4月29日 渋谷シネクイント他にて全国ロードショー
公式 HP >> http://allright-movie.com/
監督:成島出
原作:角田光代「八日目の蟬」(中公文庫)
脚本:奥寺佐渡子
撮影:藤澤順一
美術:松本知恵
照明:金沢正夫
音楽:安川午朗
出演:井上真央(秋山恵理菜)、永作博美(野々宮希和子)、小池栄子(安藤千草)、森口瑤子(秋山の妻)田中哲司(秋山丈博)、渡邉このみ(恵理菜の幼少時代)、市川美和子(沢田久美/エステル)余貴美子(エンゼル)平田満(平田雄三)
1995年10月東京地裁。秋山夫婦の生後6ヶ月の恵理菜を誘拐して、4年間逃亡しながら育てた野々宮希和子の論告求刑が言いわたされた。裁判長から「最後に言いたいことがありますか」といわれた希和子は「4年間、子育ての喜びを味わわせていただき感謝します。」と答えた。
事件の発端は、会社の上司であった秋山と不倫関係だった希和子は、妊娠したが望んでも産むことはかなわなかった。そして、中絶の後、子どもが二度と生まれない体になってしまう。そんなころ秋山の妻が出産したことを知り、男の身勝手を思い知らされて別れる決心をするが、
その前にひと目だけでも赤ちゃんを見たいと思い、秋山の家にむかう・・・。
泣ける映画だ。試写会場ですすり泣くのが聞こえた。実際にこの手の事件があった。成り行きは同じで、男の留守宅に入り火をつけて、寝ている子ども2人を殺してしまった事件があった。それよりは、不倫相手の子を誘拐して4年間育てたんだから、現実の事件よりは幾分救いがあるかな?なんて思ったが、どっちにしても張本人の男にとって地獄だ。誘拐された娘や父母のその後は悲惨だ。
主役を演じた井上真央の背中が見事。2回出てきた彼女の背中が、すべてを拒否しているかのように物語っていた。子役時代の渡邊このみもうまい!あの表情で泣けてしまった。この作品は女の悲しみを追っているが、女はどっちにしても被害者。加害者である男の本心や後悔の叫びがもう少しほしかった。
※ ひと目赤ちゃんをみようと、希和子が秋山の自宅に行ったところ、夫婦は留守で赤ちゃんだけ・・・。これが外国なら、赤ちゃんを一人寝かせて留守するなんて、(映画では土砂降りの雨で、秋山を妻が駅まで車で送っていく少しの間だけの設定だと思ったが)それだけで親の資格なし!と判定される。あくまでこの状況は日本だけにしか通用しない。外国の映画祭に出したらブーイングかな。(美)
2011年/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/147分
配給:松竹
(c)2011映画「八日目の蟬」製作委員会
★2011年4月29日(金)から丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
公式 HP >> http://www.youkame.com/
監督:リュ・スンワン
脚本:パク・フンジョン
撮影:チョン・ジョンフン
美術:チェ・ジョン
編集:キム・サンボム、キム・ジェボム
出演:ファン・ジョンミン(チェ・チョルギ)、リュ・スンボム(チュ・ヤン)、ユ・ヘジン(チャン・ソック)、チョン・ホジン(カン局長)、イ・ドンソク(マ・デホ)、チョン・マンシク(コン捜査官)
韓国警察は、国民に衝撃を与えた女児連続殺人事件の犯人をあげることも出来ず、有力容疑者を誤って射殺してしまう。 警察上層部は事件を解決したかに見せたいが為に、“犯人のでっちあげ”を画策する。 親戚の不始末で弱みのあった広域捜査官のチョルギは、上司から‘犯人をでっちあげろ’と命令され、見返りに昇進を保障された…。
とても丁寧に作られている。犯人をでっちあげるために、どうしても取引をしなければならなくなり、3回取引をする。と同時に保身も絡み、思いがけない展開もあり、最後は自暴自棄になってしまう。これは今の韓国の設定で描かれているが、今、公開されている『ショージとタカオ』は、今から約40年前の日本で、警察のずさんな捜査で誤認逮捕された2人のドキュメンタリーだ。
どの時代でも、どこの国でも、警察の権威を保つためにはどんな手でもつかうのだろうか。もう一度じっくり観てみたい作品だ。
主演は『ユア・マイ・サンシャイン』の優しいお兄さんのファン・ジョンミン。
敵対する検事に、監督さんの実兄リュ・スンボム(眼鏡が似合う!)。
悪役が板についている建設会社社長役のユ・ヘジン(この方の演技が一番印象的だった)。
見るからに犯人らしい風貌のイ・ドンソクとその家族等々、どの端役の方も素晴らしい演技で現実味を出していた。(美)
2010年/韓国/カラー/シネマスコープ/SRD/119分
配給:CJ ENTERTAINMENT
★2011年4月29日金曜 銀座シネパトス、シネマート新宿にて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.3torihiki.com/
*会期*
シネマート六本木: 4/29(金・祝)~6/3(金)
シネマート心斎橋: 6月中旬より開催
*上映予定作品*
香港映画には、ジャッキー・チェンやキョンシーの時代から親しんでいたけれど、『男たちの挽歌』で、香港ノワールという新しいタイプの香港映画の世界にぞっこん惚れこんでしまったのを懐かしく思い出します。それからというもの、香港映画がかかれば必ず映画館に駆けつけたものでした。一つ一つの作品を観た時のワクワクした気持ちが、タイトルを観ただけで蘇ってきて、もう涙が出そうなくらい嬉しいライナップ!
全作品デジタル上映ですが、大きなスクリーンで観る感激はひとしお。どの作品もお奨めです。『男たちの挽歌』公開(1986 年、日本公開は1987 年)から25年! 香港映画の上映会場が熱気に溢れていたあの当時に、まだ幼かったりしてスクリーンで観たことのなかった方にも、ぜひ足を運んでほしい企画です。韓国でリメイクされた『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』が、いかに元祖『男たちの挽歌』をベースにしているのか、また、どこが違うのかを比べてみるのも面白いでしょう。今やハリウッドで活躍するチョウ・ユンファやジェット・リーの若かりし頃の雄姿や、アジア映画の重鎮トニー・レオンの目力、今は亡きレスリー・チャンの可愛い姿も大画面でぜひ堪能してください。(咲)
◆シネマジャーナルでの上映作品掲載号
男たちの挽歌 12号, 41号, 67号
(参考:男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW 81号 特別記事 『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』~男たちのイベント~)
風の輝く朝に 14号 映画評
狼たちの絆 20号
冒険王 39号
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマル
撮影:クリストフ・ボーカルヌAFC
音楽:ジャコ・ヴァン・ドルマル
衣装:ウラ・ゴーテ
メイクアップ:カーチェ・ヴァン・ダム
出演:ジャレット・レト(ニモ)、サラ・ポーリー(エリース)、
ダイアン・クルーガー(アンナ)リン・ダン・ファン(ジーン)、
リス・エヴァンス(ニモの父親)、ナターシャ・リトル(ニモの母親)
2092年。人間は化学の力で<死ぬことのない世界>に。 テレビ中継で映されているのは118歳の老人ニモだ。 世界最高齢の唯一‘死ぬ’人間。世界中で人間が死ぬのをみるために実況中継されている。 彼以外にその過去を知る人はいない。 新聞記者が彼に「人間が死ぬ時代はどんな世界でしたか」と聞くと 彼は少しずつ自分の人生を思い出すのだった。
この試写会場には時間ギリギリに入ったのでプレス資料を全く見なかった。
作品によって資料を見ない方がいい場合と、読んで、ある程度知識を入れておいた方がいい場合がある。
これは読んだ方がいい作品だった。一言でいうと“人生アミダクジ映画”だ。
この老人の人生は、まず、父母の離婚でどちらに付くかの選択、3人の女性との結婚の3とおりの選択、いろいろな選択の1パターンずつを映像化されているので、前知識がないと(私には)頭がゴチャゴチャになってしまった。
帰りの電車で資料を観て「えぇ~、そうなんだぁ~、もう一度観た~い!」とくやしかった。
妻になったかものしれない3人はみんな幸せな顔をしていなかったことがすごく気になった。
もうひとつ気になったのは、ニモの人生で子どもについての選択はなかった。どうしてだろう。確か2人の子がいた。
これが老婆の回想なら、産むか産まないから始まり、生まれてくる子が男だったら女だったらとか、
子についての迷いや選択もあったはず。次回作は女性版で!と勝手に願っている。(美)
※ニモの118歳、死ぬ間際のメイクアップ(カーチェ・ヴァン・ダム氏)がすごかった。
2009年/フランス、ドイツ、カナダ、ベルギー/カラー/ドルビーSRD DTS/137分
配給:アステア
★2011年4月30日 ヒューマントラスト渋谷ほかにて全国順次ロードショー
公式 HP >> http://www.astaire.co.jp/mr.nobody/
監督:パーシー・アドロン(『バグダッド・カフェ』&フェリックス・アドロン
出演:ヨハネス・ジルバーシュナイダー、バーバラ・ロマーナー、カール・マルコヴィクス
今年生誕150年、没後100年を迎える天才作曲家グスタフ・マーラーの末期に迫る物語。
1910年夏、作曲家であり指揮者として活躍するグスタフ・マーラーが、オランダ・ライデンで休暇を過ごしている精神分析医フロイトを訪ねる。19歳年下の最愛の妻アルマが5歳年下の建築家と不倫関係にあることを知り、苦しみを打ち明けにきたのだ。フロイトにアルマがどのような存在かと尋ねられたマーラーは、「アルマは相棒、相談役、妻、母親、友人、恋人、ミューズ、自分のすべて」と答える。続いてフロイトに「あなたの犯した罪は何ですか?」と尋ねられたマーラーは、罪を犯したのは妻で、自分に罪はないと怒って帰るが、その質問がどうしても気になり、夜中に再びフロイトを訪れ、マーラーはアルマと初めて出会った日のことを語りだす・・・
マーラーの妻となったアルマは、画家クリムトやブルク劇場監督のブルクハルトからも想いを寄せられるほど魅力的な女性。また、作曲も手掛ける才媛だったそうです。なのに、マーラーからの「結婚したら作曲を一切やめて妻として尽くしてほしい」という条件をのんで結婚。フロイトに悩みを打ち明けるマーラーのなんと身勝手なこと。長年マーラーを下支えしてきたのにアルマが吹っ切れたような行動に出たのもさもありなんと思いました。死期が迫った頃、罪滅ぼしのように妻の歌曲集を出版していることに、少し安堵しました。(咲)
2010年/ドイツ・オーストリア/ドイツ語/102分/ヴィスタ/ドルビーSRD
配給:セテラ・インターナショナル
公式 HP >> http://www.cetera.co.jp/mahler/
監督:和田篤司
原作:山田悠介「アバター」(角川書店)
脚本:野口照夫
製作:「アバター」製作委員会
音楽:碇英記
主題歌:The alps「青写真」
制作プロダクション:ネビュラ
配給:太秦
出演:橋本愛(阿武隈川道子)、坂田梨香子(阿波野妙子)、水沢奈子(西園寺真琴)、はねゆり(松元直美)、佐野和真(山之内均)、加藤虎ノ介(溝口弘)、紺野まひる(阿武隈川恭子)
10歳の時に事故で父親を亡くした道子は、クラスで一番地味な女の子。高校二年生の誕生日に母から初めての携帯電話をプレゼントされ喜ぶが、クラスを仕切っている『学園の女王』の妙子に、SNSサイトの“アバQ”に強制的に入会させられることとなる。初めは興味を持っていなかった道子だったが、あることがきっかけで【アバター】をレアアイテムで着飾ることにはまっていく。そんな道子の生活は一変し、ついには妙子を『学園の女王』の座から引きずりおろし、自身が新女王となってアバターサークルという集団を結成する。そして心に秘めていた復讐を果たしていくのだが・・・。
【アバター】とは、インターネットコミュニティで用いられる「自分の分身となるキャラクター」だそうです。自己紹介の写真代わりみたいなものでしょうか。その【アバター】をいろんなアイテム(洋服や小物)で着飾ることがそんなにおもしろいのか?と私も道子同様、最初は思いました。でも登場するレアアイテムのかわいいことといったら!レアアイテムはお金だけではなく運がよくなければ手に入れることはできません。だから「運がいい人」=「スゴイ人」=「学園の女王」という図式になり、ちょっと運がよかったばかりに道子は崇められ、そして彼女自身をも変えていってしまったのでしょう。どんどんエスカレートしていくさまに、映画とはいえ実際に起こることもあるかもしれないと、視覚的ではない心理的な恐怖を感じました。
道子を演じた橋本愛さんは、映画『告白』のクラス委員長役で注目された15歳。そしてモデルとしても活躍中の若手女優さんたちが生徒役を演じていますが、中でも妙子役の坂田梨香子さんの憎らしいほどの意地悪い表情は出色でした。(裕)
2011年/日本/カラー/ビスタ/92分
© 2010山田悠介/角川書店/「アバター」製作委員会
★4月30日(土)より、シアターN渋谷ほか全国順次公開
公式 HP >> http://www.ava-q.com/
監督:ミケランジェロ・フランマルティーノ
脚本:ミケランジェロ・フランマルティーノ
製作:マルタ・ドンゼリ他
撮影:アンドレア・ロカテッリ
美術:マシュー・ブロウサード
音楽:パオロ・ベンヴェヌッティ他
出演:ジュゼッペ・フーダ(老牧夫)、ブルーノ・ティンパノ(炭焼き職人)、ナザレノ・ティンパノ(炭焼き職人)
南イタリア・カラブリア地方。山に囲まれた草原に山羊の群れを追う老牧夫の姿があった。 彼は、毎晩教会の床の埃を水にとかして飲み、眠りに就く。 ある晩、彼は静かに息を引き取った。翌日誕生する仔山羊。初めての放牧でその仔山羊は群れからはぐれてしまう。
昨年観たフランスのドキュメンタリー『モダン・ライフ』のイタリア版といえるだろう。 老牧夫の死を知らせたいと犬が吠えまくるが誰も気づかず…と、そんな風に私は感じたが、名場面だった。 山羊たちも、息たえだえの老人の部屋に「早く草を食べにいこうよ」というようになだれ込んでいた。台詞が一つもなく、長まわしのカメラもよく、静かな中にユーモアもあり佳作だ。 人間も動物も植物も木もみんな土に返ることが、神秘的に映し出されていた。 この地方では昔から教会の床の埃は病人や動物の薬になっていたと書いてあったが、 教会に祈りに来た人々とのつながりを求めているような気がする。 GW公開だが、喧騒をはなれて、こんな静かな映画を観るのも、きっと良い休養になると思う。(美)
2010年/イタリア=ドイツ=スイス/カラー/88分/ステレオ/ヴィスタ/
配給:ザジフィルムズ
© Vivo film, Essential Filmproduktion, Invisibile Film, ventura film.
公式 HP >> http://www.zaziefilms.com/4inochi/
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:クリフォード・アーヴィング「THE HOAX/世界を騙した世紀の詐欺事件」
脚本:ウィリアム・ウィーラー
撮影:オリヴァー・ステイプルトン
音楽:カーター・バーウェル
衣装:デヴィッド・C・ロビンソン
編集:アンドリュー・モンドシェイン
美術:マーク・リッカー
出演:リチャード・ギア(クリフォード・アーヴィング)、アルフレッド・モリナ(ディック・サスキンド)、マーシャ・ゲイ・ハーデン(エディス・アーヴィング)ホープ・デイヴィス(アンドレア・テイト)
1971年ニューヨーク。世間から忘れられていた作家・クリフォード・アーヴィングは、世界一の財力と権力を持ち、謎に包まれているハワード・ヒューズに目をつけ、偽りの伝記を大手の出版社に持ち込み、大金を手に入れようと企てる・・・。
これは実際に起きた詐欺事件で、2年間刑に服したクリフォード・アーヴィング自身が回想録を書いたものを、『サイダー・ハウス・ルール』『ショコラ』のラッセ・ハルストレム監督が映画化。
もう、大好きなリチャード・ギア様が詐欺師なんて許せん!でも彼は、脚本を読んで本作の虜になったらしい…。
この徹底的に私生活、いや、写真すらもないハワード・ヒューズ。誰もちゃんと知らないってところがミソだ。だから、いわゆる「彼のことなら僕、知っているよ。会ったこともあるよ」と自慢する人たちが、「この筆跡は本物だ」とか「この声は確かにヒューズの声だ」なんていうから、大新聞社も出版社も信じてしまう。そして本が出来上がったところで、本物ヒューズさんが公式発表してさし止める。もっと早くすりぁいいのに・・・。本を全部燃やしているシーンで、一冊ぐらい、今もお宝としてのこってないのかしら?と思ったが、どうだろうか。
ギア様は嘘の上にまた嘘をついて、しまいには自分も信じこんでしまう役柄を茫洋とした表情で演じていた。ちょっと気の弱い感じだが、話すときは人の目をしっかり見据えているので、80パーセント嘘?!とおもっていた人も段々パーセントが低くなる。
こんなに時代背景が面白く、内容が事実で興味深いのに、ちょっぴりワクワク感がたりないのが残念。監督はまだ存命のご本人アーヴィングに会った印象を「彼は温かく迎えてくれた。大変温厚な方だたが、心のうちは全くわからなかった」と語っている。(美)
2006年/アメリカ/カラー/116分
配給:ファインフィルムズ
★2011年4月30日 シアターNほかにて全国ロードシヨー
公式 HP >> http://www.finefilms.co.jp/hoax/
監督:アイヴァン・ライトマン
脚本:エリザベス・メリウェザー
撮影:ロジェ・ストファーズ
音楽:ジョン・デブニー
出演:ナタリー・ポートマン(エマ)、アシュトン・カッチャー(アダム)、グレタ・ガーウィグ、ミンディ・カリング、リュダクリス
医師のエマは忙しくて恋をしている暇もない、面倒なのと傷つくのがいやなのだ。子どもの頃のサマーキャンプで一緒になったアダムと出会い、2人はドライなセックスフレンドになる約束をする。ルールは「ケンカしない」「嘘をつかない」「嫉妬しない」「真剣に見つめない」などなど。初めはうまく行っていたかに見えたこの関係も、アダムがまずエマに恋してしまい、エマはアダムと別れようというが…。2人の行方はどうなってしまうのか?
『ブラック・スワン』で主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンの気軽なラブコメディ。『ブラック・スワン』では、きまじめなバレリーナがライバルの出現でしだいに精神的に追い詰められていくハードな役だったので、製作も勤めたこの作品ではのびのび楽しそうに演じている感じがします。お相手は長身でハンサムなアシュトン・カッチャー。年の差カップルと話題になったデミ・ムーアとは最近どうなったのでしょう。(白)
2011年/アメリカ/カラー/108分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
(C)2011 DW Studios L.L.C. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.dakitai-kankei.jp/
監督:サイモン・ウェルズ
原作:バークリー・ブリーズド
脚本:サイモン・ウェルズ、ウェンディ・ウェルズ
撮影:ロバート・プレスリー
音楽:ジョン・パウエル
声の出演:セス・グリーン/濱田龍臣(マイロ)、ダン・フォグラー/間宮康弘(グリブル)、ジョーン・キューザック/本田貴子(マイロのママ)、トム・エヴェレット・スコット/設楽統(マイロのパパ)、エリザベス・ハーノイス/藤村歩(キイ)
マイロは9歳の少年。大好きなパパは出張中。口うるさいママと2人きりだ。つまんない思いでいるところにママにゴミ出しを言いつけられ、思わずひどい一言を口走ってしまう。ママはとても悲しそうだったのに、マイロは謝ることができなかった。そんな2人を遠~~~くから見つめる目があった。その夜、庭に突然現れた宇宙船にママがさらわれてしまう。必死で追いかけたマイロはなんとか宇宙船にもぐりこみ、着いたところは火星だった。謎の男グリブルの手を借りてママ救出大作戦を開始する。
ロバート・ゼメキス製作が製作にあたった3Dのアドベンチャーアニメ。製作風景がエンディングでちょっとだけ見ることができます。表情豊かなのはモーションキャプチャー(で合っているかしら?)を顔にもたくさんつけているから。火星の描写も細部まで凝っていて、機械に囲まれたグリブルの家はまるでおたくのお城です。ママをさらった火星人が日本のタレントさんに似ているのですが、誰というのは書かないでおきます。どうぞスクリーンでお確かめください。マイロと一緒に火星の3D空間を楽しんでくださいね。(白)
2011年/アメリカ/カラー/89分/
配給:ディズニー.
(C)Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
監督・脚本・プロダクション・デザイン:アダム・エリオット
撮影:ジェラルド・トンプソン
音楽:デイル・コーネリアス
声の出演:トニ・コレット(メアリー・デイジー・ディンクル)、フィリップ・シーモア・ホフマン(マックス・ジェリー・ホロウィッツ)、エリック・バナ(ダミアン)、ベサニー・ウィットモア(幼いメアリー)
オーストラリアのメルボルンに住む8歳のメアリーには友達がいない。電話帳で見つけた変わった名前のアメリカの男性に手紙を書いてみた。見知らぬ女の子からの手紙を受け取ったのは、ニューヨークのマックス・ジェリー・ホロウィッツ。中年で肥満体の彼は人と話すのが苦手で、一人でアパートに住んでいる。マックスはメアリーにタイプで丁寧な返事を書いた。ふたりはそれから20年以上も文通を続けることになる。
ちょっと変わったこのストーリーは、アダム・エリオット監督の経験をもとに作られました。オーストラリアに住む監督と、ニューヨークに住むアスペルガー症候群の友人は20年来文通を続けてきたそうです。可愛いキャラクターが人気の日本のアニメとは一線を画する独特な登場人物たちが、この物語をリアリティのある深いものにしています。アニメの最高峰であるアヌシー国際アニメーション映画祭で最優秀賞を獲得したのをはじめ、各国で絶賛されている作品です。吹き替えの俳優さんも素晴らしい~。(白)
2008年/オーストラリア/カラー/94分/
配給:エスパース・サロウ
(C)2008 Screen Australia, SBS, Melodrama Pictures Pty Limited, and Film Victoria
公式 HP >> http://maryandmax-movie.com/
チェルノブイリの原発事故から25年目の今年、『ナージャの村』『アレクセイの泉』などチェルノブイリの原発事故を掘り下げたドキュメンタリーを製作した本橋成一監督がオーナーのポレポレ東中野で4月23日(土)~5月6日(金)まで、「特集上映 25年目のチェルノブイリ」という、原発に関連した作品が上映されます。
おりしも、今年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災によって、福島第一原発の事故が起こり、原発の安全神話が崩れました。
こんな時だからこそ、原発のことを考えてみませんか。(暁)
上映作品
※詳細な作品解説や上映スケジュールは http://www.mmjp.or.jp/pole2/をご参照ください。
料金
当日 : 一般1400円/大・専1200円/中・高・シニア1000円
前売 : 五回券5000円/三回券3600円(Pコード:462-752)
イベント情報
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
監督:ピエール・トレトン
脚本:ピエール・トレトン、エヴ・ギルー
撮影:レオ・アンスタン
音楽:コム・アギアル
編集:ドミニク・オヴレー
出演:ピエール・ベルジェ氏 そのほかイヴ・サンローランゆかりの方、モデルさんたち。
世界中の人々を魅了した20世紀後半を代表するデザイナー、イヴ・サンローラン。 彼の素晴らしい業績と終生のパートナーであったピエール・べルジェ氏による回想と語りでつづられたドキュメンタリー。彼らが長い年月で買い集めたたくさんの美術品がオークションにかけられる様子を追いながら秘蔵の映像や写真などで構成されている。
引退記者会見する痛ましい彼が最初の画面に映し出された。その後から、彼の若い時代のいかにも恥ずかしそうなナイーブな姿に驚く。細身の長身に頬笑みをたたえ、奇跡の王子様とも呼びたい程に輝くイヴ・サンローラン。なんて美しい方だったのだろう。いつも傍からはなれないで彼を見守り続けたペルジュ氏と歩んだ成功の道と、ファッションを生み出す血の出るような苦しみを、実際のフィルム編成で語られていた。少年のような繊細な神経で商業的な打算や利益など無関係なイヴを、ベルジェ氏の大きな愛と政治力で支え続けて来たからこそ、イヴの才能は花開いたのだ。(美)
2010年/フランス/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/103分
配給:ファントム・フィルム
★2011年4月23日 TOHOシネマズ六本木ヒルズ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://www.ysl-movie.com/
監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」文春文庫刊
撮影:大塚亮
音楽・主題歌:岸田繁(くるり)
出演:瑛太(多田啓介)、松田龍平(行天春彦)、片岡礼子(ルル)、鈴木杏(ハイシー)、本上まなみ(三峰凪子)、柄本佑(山下)、横山幸汰(由良)、梅沢昌代(山下の母)、大森南朋(山田)、松尾スズキ(シンちゃん)、麿赤児(岡)、高良健吾(星)、岸部一徳(早坂)
まほろ駅前で便利屋を営むバツイチ男の多田啓介、様々なお客の要望にまじ めに応えている。常連客の岡家でいつもの仕事を終えた帰り、中学の同級生だった行天春彦に出 会う。一言も口を聞かない中学生だった行天は、よく喋る変な奴になっていた。泊めてくれと頼 まれ、一晩だけと答える多田。翌日2人で預かったチワワを依頼人に返しにいくと、夜逃げした 後で家はもぬけのカラだった。正月早々、一人暮らしの多田の家になぜかチワワと行天がいつい てしまうのだった。
直木賞の受賞作を大森立嗣監督がすてきな作品に仕上げました。4度目の競演となる瑛太と松田龍平が演じる生真面目な多田と、飄々としてつかみどころのない行天はまるで正反対ですが、2人とも癒えない傷を心の底に抱えています。由良と同じ目の高さで真剣に向き合う多田、だらしないように見えて、ぽつりと光る言葉を発する行天。便利軒にやってくる一癖も二癖もある顧客たちと、ついつい深く関わってしまう2人のストーリーの絡み方が絶妙です。
すっかり気に入って原作をすぐに読みました。この2人以外に考えられないほどぴたりとはまった配役、空気感が心地良いです。原作はシリーズものなので、きっと作られるだろう続編が今から待ちどおしい〜。(白)
2010年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
★4月23日(土) 新宿ピカデリー、有楽町スバル座、渋谷ユーロスペース 他 全国ロードショー
特別記事 『まほろ駅前多田便利軒』 完成披露試写会 舞台挨拶報告もご覧下さい。
公式 HP >> http://mahoro.asmik-ace.co.jp/
監督/脚本:マルコム・クラーク
共同監督:スチュアート・サンダー
ナレーター:イアン・ホルム(『ロード・オブ・ザ・リング』)
森の中に点在する美しい建物群・・・ ナチスドイツが国際社会からの非難をかわすために作ったテレージエンシュタット収容所。ここには、音楽、映画、演劇など芸術の才能のあるユダヤ人たちが集められ、戦況が悪化する中でも文化活動が続けられていた。その収容所の人道性を誇示するためのプロパガンダ映画の監督を任命されたクルト・ゲロン。本作は彼の辿った運命を追ったドキュメンタリー。
クルト・ゲロンは、ベルリンのユダヤ人の両親の元に生まれ、最初は医者を目指したが、ナイトクラブの舞台の魅力に取りつかれ舞台俳優となる。マレーネ・ディートリッヒと共演した映画『嘆きの天使』や、1928年、ベルリンでの舞台「三文オペラ」初演で主役を務めるなどして有名になる。ことにナチスのパロディで人気を博した彼だが、興味のあるのは演劇のことのみで、政治には関心がなかった。一方で、第三帝国の宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの指示で制作された反ユダヤ主義的なプロパガンダ映画『永遠のユダヤ人』に出演したゲロンは、ユダヤ人の悪いイメージを植えつける役割を果たすことになる。そんな彼だが、収容所ではいつも楽しそうに皆を和ませていたという。アウシュビッツ行きの貨物列車の扉を閉める役目も、人々に恐怖を与えないようにこなしていた様子が再現される。そして自らもテレージエンシュタット収容所のプロパガンダ映画の撮影終了後、アウシュビッツに送られ、到着後すぐに処刑される・・・
ゲロンの作ったプロパガンダ映画は断片のみが現存するという。ゲロンはハリウッドに行くチャンスもあったのに、招聘主がファーストクラスの乗船券を用意しなかったことに憤慨し、ヨーロッパに留まり、結果、アウシュビッツで命を落とすことなる。振り返りもせず、堂々と貨車に乗り込んだという証言が悲しい。
アウシュビッツで処刑や強制労働のそばで明るい曲を演奏していた音楽隊を描いたNHKのテレビ番組「死の国の旋律〜アウシュビッツと音楽家たち」を2月に再放送で観た。(初回放送:BShi 2003年11月) 芸術の才能が認められ収容所で優遇されることへの安堵には後ろめたさも伴う。しかも、いつ自分も苦しい立場に追い込まれるかもしれないという紙一重の状況だ。音楽隊の生き残りの女性たちの語る当時の胸のうちの苦しさは、まさにゲロンも同じだったのだろう。楽しそうに振舞うことで、辛い気持ちを吹き飛ばしていたに違いない。人間が同じ人間に対してどうしてこんな残酷なことができるのだろう。繰り返してはいけない悲劇を、クルト・ゲロンの人生を通じて教えてくれる作品。(咲)
2003年/アメリカ/英語/カラー/デジタル/93分
配給:Dream One Film
★2011年4月23日(土)〜 新宿K's cinemaにて緊急公開!!
監督:ロブ・レターマン
脚本:ジョー・スティルマン、ニコラス・ストーラー
撮影:デヴィッド・タッターソル、BSC
音楽:ヘンリー・ジャックマン
衣装:サミー・シェルドン
出演:ジャック・ブラック(レミュエル・ガリバー)、ジェイソン・シーゲル(ホレイショ)、エミリー・ブラント(メアリー王女)アマンダ・ピート(ダーシー・シルバーマン)、ビリー・コノリー(セオドア王)、クリス・オダウド(エドワード将軍)
ニューヨークの新聞社で働くレミュエル・ガリバーは旅行記者になりたいと思っていたが、気づいたら郵便係をもう10年もやっていた。新人たちがどんどん彼を追い抜いていき、意中の旅行担当編集者の女性ダーシーを5年も想い続けながら、デートにも誘えないでいる。そんなガリバーを、本物の旅行好きと信じ込んだダーシーは、船が行方不明になるという伝説があるバミューダ島を探索する旅行記事を頼む。いまさら引っ込みがつかないガリバーは単身大海原に漕ぎ出して行くのだった。
ジャック・ブラックの弾けぶりが痛快。小人の国に着いたり、巨大な国に着いたりの大活躍。そして最後には恋も実り、出世もするお決まりストーリーだが気楽に楽しめた。大きさの違い、生活習慣の違いなど皮肉もまじえて、うまくミックスされていた。ジャック・ブラック=ロック魂も健在。字幕担当の石田泰子さんの言葉えらびのセンスに拍手を贈りたい。(美)
2010年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/85分
配給:20世紀フォックス映画
★2011年4月15日 TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
監督・脚本・編集:ドロタ・ケンジェジャフスカ
製作・撮影・編集:アルトゥル・ラインハルト
音楽:ヴウォデク・パヴリク
出演:ダヌタ・シャフラルスカ(アニェラ)、クシシュトフ・グロビシュ(息子)、パトリツィヤ・シェフチク(孫娘)、カミル・ビタウ(ドストエフスキー)、ロベルト・トマシェフスキ(しつこい男)、ヴィトルト・カチャノフスキ(公証人)、マウゴジャタ・ロジニャトフスカ(医師)、アグニェシュカ・ポトシャドリク(娘)
ワルシャワ郊外の古い家で愛犬フィラデルフィアと暮らすアニェラは91歳。身だしなみを整え、愛犬と会話し、たまに電話で息子と話している。いつも双眼鏡で眺めている2軒の隣家の片方には、成金らしい男が愛人を住まわせている。もう片方は若いカップルが音楽教室を開いていていつも子どもたちの声がにぎやかだ。自分の人生が終わりに近づいていると考えたアニェラは、思い出の多いこの家に息子一家が住んでくれることを心中で望んでいる。息子と訪ねてきた孫娘にそれとなく聞いてみたが、わがままいっぱいに育った孫娘は「燃やしちゃえば」と言い放ち、指輪をねだる始末。
全編美しいモノクロの作品。林の中の古い家のたたずまい、一人かくしゃくとして誇り高く生きるアニェラにほれぼれしました。愛犬のフィラは大切な家族で、その豊かな表情がアップになるたびに人間のような気がするほどでした(演技賞をあげたい!)。誠実な愛犬に引きかえ、一人息子の不実ときたら!大切に育ててきたにちがいない息子に期待を裏切られる切なさが身にしみます。洋の東西を問わずよくある話なのでしょうが、その後アニェラが下した決断に溜飲が下がる思いです。脚本も演出もカメラも素晴らしいですが、アニェラを演じたダヌタ・シャフラルスカの上品な可愛らしさが一番の見所。(白)
2007年/ポーランド/カラー/104分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パイオニア映画シネマデスク 宣伝強力:アルシネテラン
★4月16日(土)、岩波ホールほか全国順次公開
監督・脚本:イ・ユンギ
原作:平安寿子「素晴らしい一日」(文春文庫刊)
撮影:チェ・サンホ
音楽:キム・ジョンボム
出演:チョン・ドヨン(ヒス)、ハ・ジョンウ(ビョンウン)
仕事がなく、貯金も底をついてしまったヒスは、ほかの男と結婚するからと別れた元彼ビョンウンを訪ねる。1年前に貸した350万ウォンを返してもらうつもりだ。競馬場で見つけたビョンウンは、相変わらず能天気で甲斐性もないままだった。もちろんすぐ返せるお金もなく「必ず返すから」というが、いつになるか信用できない。ヒスは自分の借金を返済するためにビョンウンが新しく借金をするのについていく羽目になってしまった。それはヒスの知らないビョンウンの女たちを訪ね回る一日となる。
前作の『アドリブ・ナイト』に続き、平安寿子原作を映画化したイ・ユンギ監督。原作は短編ですが、借金行脚の一日を丁寧に描いた長めの作品になっています。結婚するはずだった男と別れ、会いたくもなかった元彼に返済をせまるヒスを、チョン・ドヨンがきついアイメイクで笑顔一つ見せずに演じています。全くお金に縁のない、人柄だけは良い甲斐性なしビョンウンをハ・ジョンウ。こちらも『チェイサー』とは大違い。俳優さんは本当にいくつもの顔を持っているのですね。
ビョンウンが訪ねる女友達はそれぞれいろいろな生活をしていますが、みな彼のためになにがしかの現金を差し出します。何気ない会話の中にビョンウンの良さが現れて、ヒスのとげとげしさが和らいでいくところがいいです。ヒスの表情が少しずつ変化していくのに注目してください。二人ともうまい俳優さんですねぇ。(白)
2008年/韓国/カラー/124分/35mm
配給:エスピーオー
★4月16日(土)、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
監督:テディ・チャン
製作:ピーター・チャン
特別協力:アンドリュー・ラウ
出演:ドニー・イェン、レオン・ライ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン、ワン・シュエチー、レオン・カーフェイ、フー・ジュン、エリック・ツァン、クリス・リー、サイモン・ヤム
1906年、辛亥革命前夜の香港。腐敗した清朝の打倒を目指す孫文が武装蜂起のため同志との密談に香港に立ち寄るとの情報が入る。同時に清朝・西太后が暗殺団五百人を仕向けたことを知った活動家は、孫文を守るために護衛団の結成に奔走する。集まったのは、商人や物ごいに身を落とした武術家など、名もない民間人たちだった。そして孫文が中環の船着場に降り立つ・・・
孫文の1時間の香港滞在中、暗殺団の目をくらませようと、孫文の身代わりの人物を乗せた車を引いてまわるのですが、護衛をかって出た義士団の者たちが次々に暗殺団にやられてしまいます。この映画で描かれている密談は史実とは異なりますが、革命が成就された陰で名もなき人々が数多く命を落としたことをずっしりと感じさせてくれました。冒頭、「デモクラシーとは・・・」と熱く説くヤン先生が撃たれてしまうのですが、演じているのは張學友。プレス資料に居並ぶ豪華キャストの中には名前がなかったのですが、特別出演でした。キャストそれぞれが素晴らしい演技をみせてくれます。なかでもニコラス・ツェー君演じる車夫アスーのいじらしいこと! ちょっと惚れ直しました。(咲)
2009年/中国・香港合作/カラー/139分/シネスコ/ドルビーSR,ドルビーデジタル
配給:ギャガ+ギャガロゴ
★2011年4月16日シネマスクエアとうきゅう他全国ロードショー
公式 HP >> http://sonbun.gaga.ne.jp/
[東京会場]
会期:4月16日(土), 17日(日)
会場:UPLINK FACTORY in 渋谷
主催:UPLINK、韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)
後援:大韓民国文化体育観光部、韓国文化院、日本アニメーション学会(JSAS)、日本アニメーション協会(JAA)
料金:1プログラム(座談会)1,200円、 UPLINKホームページにてメール予約1,000円
1回券1,200円、 3回券3,300円、 パスポート4,000円
[大阪会場]
会期:4月23日(土)~28日(木)
会場:PLANET+1
主催:PLANET+1、韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)
後援:大韓民国文化体育観光部、 駐大阪大韓民国総領事館、韓国文化院、日本アニメーション学会(JSAS)、日本アニメーション協会(JAA)
料金:一般1回券800円、会員/学生500円
パスポート:一般2000円、会員/学生1500円
※特別上映「少年勇者ギルドン」1000円 (*23日特別上映+トークのみ1500円)
[名古屋会場]
会期:5月14日(土), 15日(日)
会場:愛知芸術文化センター 12F、アートスペースE・F
主催:CINEMA KOREA、韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)、愛知芸術文化センター
協力:ANIMATION TAPES、スタジオきんぎょ
後援:大韓民国文化体育観光部、駐日韓国大使館韓国文化院、日本アニメーション学会(JSAS)、 日本アニメーション協会(JAA)、日本映像学会中部支部、財団法人 愛知県国際交流協会、財団法人 名古屋国際センター
料金:1プログラム 1,000円、パスポート 3,000円 ※当日券のみ
毎秋、ソウルで開催される自主制作アニメ映画祭「インディ・アニフェスト」(主催:韓国インディペンデント・アニメーション協会)に応募された学生・一般作品の中から受賞作を中心に最新の短編アニメーションを上映!
※ 上映作品・プログラム・ゲストは各会場で異なります。公式サイトでご確認ください。
※ 韓国のアニメーション作家から、震災被害を受けた日本にエールメッセージが続々到着しており、これらの原画も各会場で展示予定です。(下記公式サイトでも4枚公開中)
監督:マイケル・マドセン
出演:T・アイカス、C・R・ブロケンハイム、M・イェンセン、B・ルンドクヴィスト、W・パイレ、E・ロウコラ、S・サヴォリンネ、T・セッパラ、P・ヴィキベリ
フィンランドで建設中の10万年間保持されることを想定した核廃棄物最終処理場を描いたドキュメンタリー映画。
原子力発電所から生まれる放射性廃棄物が生物に無害になるまでには、最低10万年間要すると考えられている。現在、世界中の各地で原発から出される大量の高レベル放射性廃棄物は暫定的な集積所に蓄えられている。しかし、その集積所は自然災害、人災などの影響を受けやすいため、フィンランドでは世界初の永久地層処分場の建設が決定された。「オンカロ(隠れた場所)」と呼ぶプロジェクトで、ヘルシンキから西に240kmの島オルキルオトで固い岩を削って建設される地下都市のような巨大システム。監督自ら建設進行中の調査施設に潜入し、このプロジェクトの実行を決定した専門家たちに、「オンカロ」建設の理念と、抱える問題を問いかけていく。廃棄物が一定量に達すると施設は封鎖され、二度と開けられることはない。けれども、未来の人類に危険性を確実に警告できるかどうかが課題だという。
科学技術の発達した時代に生きている今、いろいろな便利を享受している一方で、未来の人類に負の遺産を作り続けていることを思い知りました。
映画の中で地震が起きるところには原発は作らないとフィンランドの専門家は明言しています。でも、今回起こってしまった大震災による福島原発事故・・・ 本作は、当初この秋に公開予定でしたが、この度、事故が起きたことから原発に関する知識を得たいという多くの人たちのために、4月2日から渋谷アップリンクで緊急公開されました。4月16日からは、都内で拡大公開され、全国でも順次公開されます。
なお、この映画の入場料のうち200円が東日本大震災の義援金として寄付されます。(咲)
2009年/79分/デンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリア/英語/カラー/HD/16:9/ビデオ
配給・宣伝:アップリンク
★2011年4月2日(土)渋谷アップリンクにて緊急公開!
4月16日(土)より、渋谷アップリンク、ヒューマントラストシネマ有楽町、吉祥寺バウスシアター、横浜ニューテアトルで拡大公開他、全国順次公開
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/100000
監督・脚本:小川和也
主演・共同脚本:アクラム・テラーウィ
出演:アクラム・テラーウィ、ラナ・ズレイク、小市慢太郎ほか
パレスチナ西岸地区に接するイスラエルの街タイベ。ここに住む寿司職人のズベイルは、イスラエル国籍を持つパレスチナ人。妻に先立たれ、二人の子どもを育てている彼のささやかな夢は、妹アイシャの結婚式の日、新車で彼女を式場に送ること。式を数日後に控えたある日、ズベイルは20年かけて貯めたお金でついにブラックメタリックの新車スバル・レガシィを購入する。ズベイルは近所の人たちに羊を振舞い、新車購入を皆で踊って祝う。ところが翌日、買ったばかりの車が跡形もなく消えていた! アイシャは車が見つかるまでは結婚しないと言い出す。何が何でもレガシィを取り戻さなくてはと、まずは車泥棒の名手アデルに相談にいく。はたして、結婚式の日までにレガシィは見つかるのか・・・
パレスチナ西岸地区では車のディーラーが少なく、タイベの街の車泥棒による供給が重宝されているという。イスラエル都市部で盗まれた車は、タイベから境界線を越えてパレスチナのトルカレムに運ばれ、解体・再生・販売されるのだ。そして、イスラエルで日本車といえば、富士重工社のスバルブランド。主要自動車メーカーがアラブ諸国への輸出を優先し、イスラエルへの輸出を控えたためだ。そんな車事情を背景にしているが、本作は人情やユーモアに溢れた楽しい作品。花嫁となる妹を思う兄の気持ちが切々と伝わる物語でもある。
兄と一緒に車を買いに行ったアイシャが、店の女性に「あなたも結婚式にきて」と誘う。「アラブの結婚式は初めて!」と嬉しそうな姿に、ユダヤ人とパレスチナ人が普通に交じり合えることを感じさせてくれる。アラビア語とヘブライ語に加え、日本語も飛び交う本作、冒頭から「私がお嫁に行く人はどんなひと~♪」という雪村いづみの「ケ・セラ・セラ」が流れる。不思議とイスラエルの街に似合う。紛争のイメージばかりが伝わるイスラエル&パレスチナの人々の日常の姿が生き生きと描かれていて嬉しい。(咲)
2010年/イタリア・日本/アラビア語・ヘブライ語・英語・日本語/16mm/カラー/シネマスコープ/98分
後援:イスラエル大使館、駐日パレスチナ常駐総代表部
配給・宣伝:レボリューション
配給・宣伝協力:アップリンク
★2011年4月16日よりアップリンクXにて公開
公式 HP >> http://www.pinksubaru.jp/index.html
監督・構成・エブゼクティブプロデューサー:周防正行
振付:ローラン・プティ
出演:ルイジ・ボニーノ、草刈民代、ジャン=シャル・ヴェルシェール、リエンツ・チャン、ナタナエル・マリー、マルタン・アリアーグ、グレゴワール・ランシエ、ユージーン・チャップリン、ローラン・プティ
フランスの巨匠振付家ローラン・プティがチャップリンの数々の名作を題材に作ったバレエ作品<ダンシング・チャップリン>。1991年の初演からチャップリンを踊り続けてきたダンサー、ルイジ・ボニーノが還暦を迎え(2009年の撮影時)、このままではバレエ界の幻の作品になってしまうと危惧した周防監督が、ルイジが肉体的に踊れなくなる前にフィルムに残したいと映画化。
草刈民代さんが嬉々とした笑顔で踊る姿に、周防監督の愛情をたっぷり感じる作品でした。私にとっては、ルイジ・ボニーノが素顔で静かに語る姿が何より魅力的でした。年齢を聞かれたルイジが「you kill me?」と言いながら「60歳」と答えてすぐ、「ここカット!」と照れる姿も素敵でした。ダンディで渋い彼が、ちゃんとチョビ髭のおどけたチャップリンスタイルに変身していくのですが、思えばチャップリン自身も素顔は美男でしたね。(咲)
2010年/日本/カラー/アメリカンビスタサイズ/ドルビーデジタル/136分
配給:アルタミラピクチャーズ /東京テアトル
★4月16日(土)《チャップリンの生誕記念日》より銀座テアトルシネマほか全国にて公開
公式 HP >> http://www.dancing-chaplin.jp
開催劇場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ
開催日:4月10日(日)~11月6日(日)まで 毎週日曜日の夜
入場料金:当日のみ、1000円
走った! 飛んだ! ケガした?!
ぼくらのジャッキー映画31作品を一挙上映!
ジャッキー・チェンが『バトルクリーク・ブロー』でハリウッド初主演を果たしてから昨年で30周年。
また、1961年に中国戯劇学院に7歳で入学したジャッキーにとって今年は芸能生活50周年にあたります。
さらに2011年はジャッキー公式認定100本目の作品『1991(原題)』も公開予定!
それを記念して過去の主演映画31作品を一気に見せる「大成龍祭 2011」が開催されます。
上映ラインナップなどの詳細はこちら >>
http://www.twin2.co.jp/dvd/jackie/index.html
[上映日程]
★上映はデジタル上映になります。
東京以外では・・・
監督・脚本:カン・ヒョジン
撮影:ナ・スンリョン
音楽:イ・ニョム
出演:ナ・ムニ(ジョンジャ)、キム・スミ(ヨンヒ)、キム・ヘオク(シンジャ)、イム・チャンジョン(パン・ジュンソク)
仲良しのジョンジャ、ヨンヒ、シンジャは平均年齢65歳のおばちゃん3人組。ささやかな夢はお金を貯めてハワイ旅行に行くことだった。8年かかってようやく実現しそうになったある日、銀行で強盗事件が発生。運悪くいあわせた3人の虎の子の旅行資金も奪われてしまう。おまけに振り込み手続きが終了していなかったので、銀行からの保障もないことがわかった。怒り心頭の3人はお金を取り戻し、何が何でもハワイに行こうと画策する。
韓国映画でよく見かけるおばあちゃん、お母さん役の女優さん3人が主人公。韓国で公開されるや大ヒットした楽しい作品です。おばちゃんが3人寄れば怖いものはない!あれこれ知恵を絞ったあげくの銀行強盗、拉致したコーチについて特訓する場面も笑えます。原案はドイツ映画『ヤンババ! ばばぁ強盗団がやって来る!』(すごい邦題)だそうですが、今度はハリウッドからリメイクのオファーがあったとか。この年頃の人が活躍する映画が少ないですものね。おばちゃんパワーをもらって元気を充電しましょう。(白)
2010年/韓国/カラー/109分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:エスピーオー
公式 HP >> http://www.cinemart.co.jp/gangster/
製作:㈱現代ぷろだくしょん
製作総指揮・監督:山田火砂子
脚本:長坂秀佳、池田太郎、山田火砂子
プロデューサー:井上真紀子、国枝秀美、藪原信子、萩原浩司
音楽:石川鷹彦
撮影監督:長田勇市
キャスト:村上弘明、工藤夕貴、中条きよし、市川笑也、隆 大介、笛木優子、さとう宗幸、石倉三郎 他
製作年:2011年 上映時間:116分 画面サイズ:ビスタビジョン 色:カラー
音響:DTSステレオ
コピーライト:© 現代ぷろだくしょん
【物語】
留岡幸助は日本の社会福祉の先駆者で少年更正教育の実践家。感化院(現在の児童自立支援施設)、北海道遠軽家庭学校の創始者として知られる。1864年(元治元年)岡山県高梁に生まれ、生後まもなく米屋を営んでいた留岡家の養子になった。明治になり町民も学校に通えることになったが、8歳の時、武士の子に一方的に棒で打たれ、耐えきれずに相手に噛みつき打ち負かす。しかし、このことで米屋を営む実家は得意先を失い、父からは折檻を受けたあげく学校を退学させられ、商人になることを強いられる。幼くして不平等な社会に憤りを感じたこの経験が差別を改める活動に従事するきっかけになった。
キリスト教に出会った幸助は、同志社英学校(神学科)に入学。卒業後牧師になり活曜していたが、明治24年、金森通倫牧師の勧めで妻子を連れて北海道・空知にある監獄の教誨師(刑務所などの矯正施設において、収容者や受刑者の徳性の育成や精神的救済を行う人)に就任する。
強制労働など過酷な刑罰を受ける囚人達の姿を見て、なんとか囚徒を更生させ、監獄を改革しようと、自ら独房の中に入り囚徒に話を聞いた。その調査から犯罪の芽は子供の頃の体験に基づくと確信し、「家庭にして学校、学校にして家庭」という「家庭学校」を巣鴨に作り、少年感化事業の先駆者となる。後に巣鴨の地がひらけ都会になると、ルソー『エミール』の中の「子供を育てるには大自然の中が一番」という説に共感し、北海道・遠軽の地に家庭学校を作る。この家庭学校は現在も実在し、映画の冒頭に建物が出てくる。
【感想・情報】
山田火砂子監督は、実写版の『はだしのゲン』、『春男の翔んだ空』、『裸の大将放浪記』など数多くの映画を製作・公開してきた。最近では『石井のおとうさんありがとう 岡山孤児院・石井十次の生涯 』(>>作品紹介)、『筆子・その愛-天使のピアノ-』(シネマジャーナル68号、69号で紹介)を監督している。石井十次は孤児院を開設、石井筆子は夫と共に知的障害者施設を運営した女性という風に、社会的弱者のための救済施設を作った人たちを描いてきた。
この『大地の詩 留岡幸助物語』も、家庭環境から犯罪を犯すようになった少年を救済する家庭学校を創設した人の物語である。今となっては一部の人にしか知られていない人の仕事にスポットを当てることで、日本の福祉の黎明期を作った人たちを忘れないというリスペクトになっている。(暁)
公式 HP >> http://www.gendaipro.com/tomeoka/
監督:ルネ・フェレ
出演:マリー・フェレ マルク・バルベ ダヴィッド・モロー
18世紀中頃。モーツァルト一家の欧州各地を巡る演奏旅行も3年の歳月が流れていた。11歳の息子ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの奏でるヴァイオリンと、15歳の姉ナンネルの伴奏は各地で絶賛されていた。ある雪の深い日、パリのヴェルサイユ宮殿に向かう途中で馬車の車輪が壊れ、一家は近くの女子修道院に身を寄せる。修道院の隣の家には王の娘たち3人が幽閉されていて、その末娘、13歳のルイーズは、音楽的才能に溢れるナンネルに魅了され、彼女をナナと呼び、永遠の友情を誓う。姉弟がヴェルサイユ宮殿で演奏すると知ったルイーズは、ナンネルに音楽教師の息子ユーグ宛の恋文を託す。その手紙がきっかけでナンネルは王太子と知り合い、二人の間に恋心が芽生える・・・
天才音楽家として有名なモーツァルトの陰で、自らも音楽の才能に恵まれながら生涯注目されることのなかった姉ナンネルに焦点を当てた物語。天才音楽家の誉れ高いアマデウス・モーツァルトが、5歳の時に初めて作曲したとされる曲も、実は姉が作曲したというエピソードも出てきますが、彼女の作曲した曲は一つも残っておらず、真相はいかに? ルネ・フェレ監督の実の娘マリー・フェレの演じるナンネルは美しさの中に芯の強さを感じさせてくれました。男装のナンネルも魅力的。 各地で王族や貴族の前で演奏を披露した一家。冒頭、父レオポルド・モーツァルトが旅先から故郷ザルツブルグの友たちへ宛てた手紙で、報奨金代わりの豪華な品々も旅の足枷にしかならず旅費に窮していると嘆いています。お礼に現金は失礼だと思っても、受け取る方はやっぱり嬉しいものよね・・・と、映画の最初に妙に感心してしまったのでした。(咲)
音楽の才能があっても、女性だからその才能も花開かなかったことを描いた作品に、2006年イギリス、ハンガリー映画『敬愛なるベートーヴェン』で、才能がありながら、写譜やベートーヴェンの身の回りの世話をしていたアンナ。また、2009年ドイツ・フランス・ハンガリー映画の『クララ・シューマン 愛の協奏曲』で、病気のシューマンに変わりに、指揮棒を振ってブーイングされたクララなど(クララは演奏家としては才能を発揮できたが)の作品がある。
ナンネルも才能はモーツァルトにも負けないものがあって、作曲はしたらしいが曲は残っていない。彼女が作ったような曲を想像した曲が流れていた。
監督さんは自分の娘2人を使い(ナンネルとルイーズ姫)作ったが、時代のおっとり感が出ていてよかった。ルイーズ姫は特に幼いながら、自分の人生を達観しているようすをうまく出していた。姉より、感がいいみたいだ。だが、モーツァルト君はイメージじゃなかった。バイオリンもバリバリの現代の弾き方・・・。モーツァルト家族もルネ・フェレ家族も結束の力は強い!(美)
2010年/フランス/120分
配給:アルバトロス・フィルム
★2011年4月9日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開
公式 HP >> http://nannerl-mozart.com/
監督:前田弘二
脚本:高田亮、前田弘二
主題歌:「DANCING BABE」 / MONOBRIGHT(DefSTAR RECORDS)
出演:吉高由里子、加瀬亮、浜野謙太(SAKEROCK)、杏、石橋杏奈、青木崇高、榎木孝明、吉村卓也
池下チエは営業職としてテキパキ働く24歳。人生、時間を有効に使わなくっちゃと、5人の彼氏とつきあっている。番号を付けた5本の鍵を駆使する毎日。そんなある日、親友のトシコが長年付き合っていた彼と出来ちゃった結婚! 結婚式でブーケを受け取ってしまったチエ。トシコから、「結婚もいいわよ。査定して最後に残った人と結婚しちゃえば?」と言われ、まだまだ結婚する気はないけど、ほんとの相手を探そうと5人のメリット・デメリットを書き出す。そして、まずはデメリットだらけの田無タクミに別れを告げにいくが、「え? 僕たちつきあってないじゃん」と言われてしまい、ギャフンと言わせようと復讐に乗り出す・・・
「限られた人生、いろんな人と体験したほうが絶対得!」というチエの姿に若い頃の自分を見るようでした。男性も女性も、結局はそういう気持ちがあるのではないでしょうか。一筋・・・なんていうのは幻想ではないかとも。そうやっていろんな人と付き合っている中で、居心地のよい人と、より長く一緒に居たいということではないかと思うのですが、気がついたら、まわりに誰もいなかった! 大震災後の不安な日々、寄り添って暮らせる人がいたら・・・と思う今日この頃。若い方には、是非本作を観て元気を出していただいて、自分の「一人」を見つけてほしい。(咲)
2011年/カラー/アメリカンヴィスタ/107分
配給 : ビターズ・エンド、ショウゲート
『婚前特急』完成披露試写会 舞台挨拶レポート
http://www.cinemajournal.net/special/2010/konzen/index.html
公式 HP >> http://konzentokkyu.com/
監督:英勉
脚本:福田雄一
撮影:藤本信成
音楽:吉川慶
出演:溝端淳平 大野いと 菅田将暉 逢沢りな 古川雄輝 宮澤佐江 岡本玲 増田有華 池田依來沙 塚地武雅 温水洋一
中学時代部活一筋で過ごした長嶋晴菜(大野いと)は、高校では彼氏を作って素敵な恋愛をしようと思い高校デビューをする。しかし、半年経ってもまったく彼氏ができる気配もない。そんな彼女の前に、校内イチ人気の先輩・小宮山ヨウ(溝端淳平)が現れた。彼を絶対に好きにならないことを条件に「モテコーチ」をしてもらうことに。
原作は『別冊マーガレット』に03年~08年に掲載され累計590万部を突破した大ヒットラブストーリー、河原和音による「高校デビュー」。シリアスなシーンだと思えば、すぐに吹き出してしまう場面になる演出やキャラクターにあったそれぞれのファッションがとても印象的でした。その中で一番気になったのは塚地武雅さんの存在です。役名は流行りの音楽グループを連想させる“TSUKAXILE”(一人なのに)。伝説のストリートミュージシャンという役柄。出演時間はとても短いのですが、流石の存在感。歌がとても上手です。
とにかく細かいところまで見逃せません。この映画、少女漫画好きなら胸キュン間違いなしだと思います。(明)
2010年/日本/カラー/93分/ヴィスタヴィジョンサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(C)2011『高校デビュー』製作委員会 (C)河原和音/集英社
公式 HP >> http://www.koigashitai.com/
監督:大森一樹
原作:森沢明夫「津軽百年食堂」(小学館刊)
出演:藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、中田敦彦(オリエンタルラジオ)、福田沙紀、ちすん、早織、前田倫良、永岡佑、藤吉久美子、大杉漣、かとうかず子、野村宏伸、手塚理美、伊武雅刀
弘前で百年続く大森食堂の長男陽一。中学生の頃から父に津軽蕎麦作りを仕込まれていたが、父との確執から店を継がず、東京の結婚式場でバルーンアートをしながら暮らしている。ある日、式場でカメラマンをしている七海とぶつかり、照明器具を壊してしまう。彼女がふっとこぼした言葉から同じ弘前の出身だと知る陽一。照明器具を弁償する代わりに、陽一は七海にアパートの一部屋を提供し共同生活することを提案する。津軽蕎麦を七海に作ってご馳走する陽一。そんなある日、弘前の父が交通事故で入院してしまう。祖母フキの「お客さんを待ってる店が可哀想‥」という言葉を聞いて大急ぎで弘前に帰って店を開く。病床の父からは蕎麦の出来がなってないと一蹴されるが、桜の季節を前に祖母が逝き、桜祭りの会場に屋台を出す決心をする。折しも七海も失恋し弘前に戻り、父が残した写真館を復活させる決意をする。
弘前城築城四百年を記念して、弘前の人たちより依頼されて大森監督が撮った作品。弘前というと、桜。30年以上前のことですが、ちょうど桜の季節に訪れたことがあって、朝6時頃にお城付近を散策していたら、私の脇をゴザや縄を持った人たちがどっと走り去っていきました。ちょうど開門の時間だったのでした・・・ 桜、岩木山、りんご畑、点在する洋館、こぎん刺し子と、弘前の町を代表するアイテムが映画の中にとてもうまく盛り込まれていて、久しぶりに弘前に行きたくなりました。
映画は、明治時代末期に食堂を開いた初代の賢治の物語が、現代に生きる4代目の陽一の物語の間に程よく織り込まれて進んでいきます。食堂を続けてほしいと願う祖母フキの気持ちがしみじみと伝わってきました。
なお、本作はこの度の大震災で津波の被害を受けた八戸でも撮影が行われています。
2010年/カラー/35mm/ヴィスタサイズ/DTSステレオ/106分
配給:日活/リベロ
シネマジャーナル81号に大森一樹監督インタビューを掲載しています。
公式 HP >> http://tsugaru100-movie.com/
監督・脚本・撮影:ヤン・ヨンヒ(梁 英姫)
エグゼクティブプロデューサー: チェ・ヒョンムク
世界中を涙と笑いで包んだ傑作『ディア・ピョンヤン』から5年。
在日2世の映像作家ヤン・ヨンヒが、
近くて遠いふたつの国をつなぐ絆と愛を描いた
可笑しくも切ない家族の物語。
前作『ディア・ピョンヤン』では初めて観る北朝鮮の普通の生活にひきつけられました。国の政策で3人の息子を北朝鮮に送り出した父親は、総連の幹部として国のために働き続けました。当時はその後の変化を想像もしなかったでしょう。仲の良い両親のもとずっと日本で育ったヤン・ヨンヒ監督は、初めて訪れたピョンヤンで、懐かしい兄たちに再会します。姪や甥の成長ぶりをビデオで撮影し、近くて遠い国に住む家族たちの1シーン1シーンを大切に残してきました。
今回の作品はその中から、姪のソナちゃんを中心にまとめた家族の物語第2弾です。監督のカメラがとらえるご両親の笑顔がとても素敵なのですが、撮影を始めた当初、お父様はこちらを向いてもくれなかったそうです。5年10年と続けるうちに父と娘とのわだかまりもほぐれてきたことがわかり、ああ良かったねと思います。本作は日本で暮らすご両親と監督、ピョンヤンで暮らすお兄さん家族の貴重な記録でもあり、「またきっと会えるよね」という監督の愛情と希望がこめられています。お兄さんの奥様がギターを爪弾きながら歌う「オモニ(お母さん)」も必聴!(白)
2010年/韓国・日本/カラー/82分/
配給:スターサンズ
公式 HP >> http://www.sona-movie.com/
監督・脚本:中島央
撮影:豊田実
音楽:坪口昌恭
出演:ジョシュ・ロング レベッカ・ジェンセン ジョン・ボーレン ルアナ・パラーモ キャリー・ラトルッジ
新進気鋭の若手脚本家ヴァンセント・ナイト(ジョシュ・ロング)は、5年前に華々しくデビューを飾ったものの、その後は次回作が書けずスランプに苦しんでいた。同棲中の彼女(レベッカ・ジェンセン)との仲は落ち着いているものの、創作意欲を刺激するような事件はなく、彼女との実生活をベースに書き始めたラブ・ストーリーはすぐにアイディアに詰まってしまう。そんな彼に、映画会社のエージェントであるボブ(ジョン・ボーレン)は、最後のチャンスとして一週間以内に脚本を仕上げるように命じた。追いつめられたヴィンセントは、自分の気持ちと正直に向き合い、脚本を書き上げようとするが……。
アメリカで映画制作を学び、脚本家としてのキャリアをスタートさせた中島央監督の初長編にして、日本デビュー作。スランプに陥った脚本家が現実と妄想の間をさまよいながら進む物語。日本人監督でありながらも、全て英語で場所も現地で撮影されています。『ノルウェイの森』で感じた逆です。日本の映画として見ていたつもりがどこか異国臭がするという。劇中には日本を感じられるものはないはずなのですが、とても共感できました。
また、彼らを遠い世界に感じることなく、身近に感じることが出来ました。というのも、監督の育った国柄もあるとは思いますがそれだけでなく、脚本家という特別な職業をピックアップしながらも物語の主軸を恋愛に置いているからこそ、そう感じられたのだと思います。近くも遠くの世界という映画を表現した普遍的な愛の物語、とても暖かい世界でした。監督の次回作も決定しているらしいので要チェックです。(明)
2010年/アメリカ/カラー/89分/
配給:アルゴピクチャーズ
公式 HP >> http://www.lily-movie.com/
監督:チャン・チョルス
出演: ソ・ヨンヒ( 『チェイサー』「善徳女王」)、チ・ソンウォン(「イサン」『ハーモニー 心をつなぐ歌』)
ソウルの銀行で働く都会的な女性ヘウォン。日ごろのストレス解消の為に幼い頃過ごした無島を訪れる。人口9名の島では、幼馴染のボクナムが夫や住民たちに奴隷のように働かされたり、男の相手をさせられたりと虐待されていた。ついにある日、ボクナムは切れて、男たちや老婆たちを惨殺し始める・・・
東京フィルメックスでの上映後に登壇した監督はじめ来日ゲストの方から「楽しくご覧いただけましたか~?」と第一声。うっ、楽しく・・・は、ちょっと違うと思ったのですが、思い返すと、この映画は楽しむしかないかもと。本作は性的暴行を受けた女性が加害者となった複数の事件がきっかけとなって構想したそうです。ボクナム役をなかなか引き受ける女優がいなかった中、ソ・ヨンヒさんがこの役を熱望したのは、彼女のお母さんが苦労していたのを見ていて、それを解きほぐしてあげたいという思いがあったからだと監督から伺いました。私が注目したのは、もう一人の主役ヘウォン役のチ・ジョンウォンさん。『ハーモニー 心をつなぐ歌』での死刑囚の母に心を開かない娘役やドラマ「イ・サン」の妊娠したと偽る側室役でも冷たい感じをかもし出していたのですが、ご本人は地方出の田舎育ちで、心が暖かくて面倒見のいい人だそうです。
本作では、虐待されていたボクナムが耐え切れなくてついに反撃に出るのですが、『ハーモニー 心をつなぐ歌』でも男の行動によって偶発的や衝動的に罪を犯してしまう女性が描かれていたことを思い起こしました。
また、島に住むお婆さんたち四人が同じ女性であるボクナムを擁護するどころか、彼女を許さない態度なのも気になりました。「韓国には強い男児待望論があって、女性は男のために苦労するもの。自分も苦労してきたにもかかわらず、若い世代に男に従えと強いるようなところがあります」と監督は語っていました。「傍観者がいる限り、加害者は絶えない」ことも、本作で言いたかったとのこと。目を背けたくなる残虐なシーンもありますが、監督や出演者のお話を伺って、深いテーマをスタッフ皆で楽しみながら撮ったのだなぁと感じました。(咲)
2010年/韓国/115分/カラー/シネマスコープ
配給:キングレコード
シネマジャーナル81号にチャン・チョルス監督インタビューを掲載しています。
監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ
マサチューセッツ州、労働者の街ローウェル。ディッキーは、街の名を有名にしたと自負するボクサーだ。テレビのドキュメンタリー番組の取材に、麻薬でハイになりながら意気揚々とかつての栄光を語っている。隣で見守る弟ミッキーもボクサーだが、短気で喧嘩っ早い異父兄ディッキーとは対照的に、物静かでなかなかチャンスを掴めないでいる。ラスベガスのジムから引き抜きの声もかかるが、マネージャー役の母親アリスとトレーナーを買って出た兄はミッキーに世界タイトルマッチに挑ませようと離さない。そんな中、ミッキーは酒場で働くシャーリーンと知り合い恋に落ちる。ディッキーがとんでもない体重差の試合をミッキーに組ませて完敗したのをみたシャーリーンは、家族と決別させないとボクサーとしても、人間としてもぼろぼろになってしまうと立ち上がる・・・
実在のアイルランド系アメリカ人ボクサー、ミッキー・ウォードと、その家族の物語。弟を思うがゆえに、空回りする兄を熱演したクリスチャン・ベールと、過保護でいつまでも息子たちに強権を振るう強烈な母親を演じたメリッサ・レオが、第83回アカデミー賞でそれぞれ助演男優賞と助演女優賞を受賞。 とんでもない家族から逃げ出したいと思っても、やっぱり家族は家族。共に喜ぶ姿が眩しい。(咲)
2010年/アメリカ/カラー/シネスコ/ドルビーデジタル、ドルビーSR/116分
配給:ギャガ Powered by ヒューマックスシネマ
公式 HP >> http://thefighter.gaga.ne.jp/
監督:川野浩司
脚本:金杉弘子 川野浩司
撮影:福本淳
音楽:Tomi Yo
主題歌: 高田梢枝 「ほしのふるまち」
出演:中村蒼(堤恒太郎)、山下リオ(一ノ瀬渚)、児玉絹世(栗田美奈子)、KG(宮本正樹)、 柴田理恵、羽田美智子、[友情出演]トミーズ雅、[特別出演] 笑福亭松之助、手塚理美
東京の進学校でおちこぼれてしまった医者の息子恒太郎は、母親の希望で富山県の氷見市に転校し、遠い親戚の宮本家にあずけられることになった。宮本家の一人息子正樹は、地元高校では人気者のスポーツマン、東京の大学に進学していた。恒太郎は隣家の一ノ瀬渚と同じクラスになり、東京で働くことに憧れる栗田美奈子に好意を寄せられる。渚は父を亡くした後、母を助けるため部活もやめてアルバイトをしていたが、母が過労で倒れてしまい進学をあきらめてすぐ就職しようと決意する。文化祭の出し物の担当になった恒太郎と渚はプラネタリウムを作ることになり、恒太郎は宇宙と星に夢中だったころのことを思い出す。渚と見上げた夜空は満天の星が輝いていた。
小学館ヤングサンデーコミックスの原秀則の人気漫画が原作。『大奥』『BECK』と最近出演作が続いている中村蒼、『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』『武士道シックスティーン』の山下リオが主演した爽やかな青春ラブストーリー。失意の恒太郎を迎えるにぎやかな宮本家のお母さんに柴田理恵。「いっぱい食べられ、食べられ」という土地の言葉があたたかいです。将来の進路を決める高校生たちが、それぞれの迷いや行く手にある障害を乗り越えて再生し、成長していく物語。いつの時代も変わりません。『大奥』で乙女チックな演技を見せた中村蒼くんに注目していますが、濃い目の顔立ちから香港の俳優サイモン・ヤムを思い出しちゃいます。彼のように息の長い個性的な俳優さんになってくれると嬉しい。(白)
2010年/日本/カラー/120分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:よしもとアール・アンド・シー
(c)2011「ほしのふるまち」製作委員会
公式 HP >> http://www.hoshi-full.com/
監督・脚本:エズミール・フィーリョ
プロデューサー:サラ・シルヴェイラ、マリア・イオネスク
脚本・出演:イズマエル・カネッペレ
撮影監督:マウロ・ピニェイロJr.
音楽:ネロ・ヨハン
出演:エンリケ・ラレー(名前のない少年“ミスター・タンブリンマン”)、トゥアネ・エジェルス(脚のない少女“ジングル・ジャングル”)、イズマエル・カネッペレ(ジュリアン)、サムエル・ヘジナット(ジエゴ)、アウレア・バチスタ(名前のない少年の母)
ブラジルの南部にある、ドイツ移民の伝統が今も強く残る小さな田舎町。ミスター・タンブリンマンというハンドルネームの少年は、チャットで知り合ったE.Fからボブ・ディランのコンサートに誘われる。そのためには、村から出なくてはならなかった。ある日少年は、年上の男と出会う。男は以前、心中をしたが自分だけ生き残り、村に戻ってきたのだった。同じ頃、少年はネットの中に亡くなった少女ジングルジャングルの写真サイトを発見する。少女はネットの中で永遠に生き続けるのだった。
監督が主要キャストのひとりであるカネッペルの原作に惚れ込み、舞台となるブラジルのテウトニアで若者のキャストを選び、実際の撮影もそこで行ったそうです。だからか映画というよりドキュメンタリーを見ているようで、時に主役の目を通してテウトニアのどこか寂しげな風景、行き場のない想いを感じました。素人とは思えない若者たちの存在感は見事で、特にジエゴ役のサムエルが印象に残りました。(裕)
※ 主役の少年が映画の中で見ている「ジングルジャングル」の写真サイトを実際に見ることができます。
Jingle Jangle の Flickr http://www.flickr.com/photos/uncolortv/
2009年/ブラジル・フランス/ポルトガル語・ドイツ語/101分/35mm
宣伝・配給:アップリンク
★2011年3月26日(土)シアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/namaenonai/
監督・脚色・製作:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
原作:チャールズ・ポーティス「トゥルー・グリット」早川書房刊
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:カーター・バーウェル
出演:ジェフ・ブリッジス(ルースター・コグバーン)、マット・デイモン(ラビーフ)、ジョシュ・ブローリン(チェイニー)、バリー・ペッパー(ラッキー・ネッド・ペッパー)、ヘイリー・スタインフェルド(マティ・ロス)ほか
天罰なんか待ってられない
14歳の少女マティ・ロスは、牧場主の父親が殺されたと知らされ、母親の代わりに遺体を引き取りにやってきた。父を殺したのは使用人のチェイニー、わずか2枚の金貨のために銃で雇い主を撃ったのだ。マティは気丈に後始末をすませた後、父の仇を討つために「トゥルー・グリット(真の勇気)」があるといわれる隻眼の連邦保安官ルースターを訪ねる。彼は大酒飲みのうえマティを子ども扱いするが、報酬とマティの決心の固さに依頼を引き受ける。足取りを追ってインディアン領へ向かう途中、別の容疑でチェイニーを探しているテキサス・レンジャーのラビーフに出会う。チェイニーは悪党ネッドの仲間になっているらしい。
久しぶりの西部劇に敵討ちとは。14歳の少女が大人を雇って、父親を殺した犯人を追って旅をするところが変わっています。原作は新聞の連載小説だったそうで、山あり谷ありのストーリーに個性的な登場人物が次々とお目見え。監督のコーエン兄弟も作者チャールズ・ポーティスのファンで、この小説が一番映画化に適していると選んだのだとか。14歳の少女の口から語られる小説そのままに、タフなマティを軸にすえて過酷な旅が進んでいきます。ジェフ・ブリッジス、マット・デイモンらアカデミー賞俳優を相手に、これがデビュー作とは思えない堂々とした演技のヘイリー・スタインフェルド(1996年生まれ)は、マティに負けない根性の持ち主のようです。助演女優賞はノミネートのみでしたが、これから幾度も機会はあるんじゃないでしょうか。今回ようやく気づいたこと、ジョシュ・ブローリンが『グーニーズ』(1985年 デビュー作)のお兄ちゃん(ブランド)だったこと。全然結びつきませんでした。いやー、すっかり大人になって。(白)
2010年/アメリカ/カラー/105分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
公式 HP >> http://www.truegrit.jp/
監督:伊勢真一
撮影:石倉隆二、世良隆浩
出演:細谷亮太、子どもたちほか
「大丈夫。」は小児科医・細谷亮太さんの口グセです。診察を終えると、必ず最後にひとこと付け加えるのです。それは子どもたちへ向けただけでなく、40年来小児がん治療にあたってきた細谷先生の祈りのコトバ、自分への励ましのコトバなのかもしれません。細谷先生は子どもたちとの日々を綴ったご自身の句集をめくり、ときどきの思いを語ります。
前作『風のかたち―小児がんと仲間たちの10年―』は、「小児がんの子どもの7割から8割が治るようになっていること、しかし、その事実があまり知られていないことが、治った子どもたちの生きにくさにつながっている」ことを知ってもらいたい、と作られました。1時間45分の作品に使われなかったフィルムは膨大な量です。その中の細谷先生のロングインタビューを中心にした姉妹編のドキュメンタリー。
不治の病ではなくなってきたのですね。とは言っても、深いところにできる小児がんは難しい病気で、2、3割の子どもは完治できず亡くなっています。子どもたちが元気に参加したキャンプや、病院での治療のようすが画面に登場します。「将来はお医者さんになって病気の子どもを治してあげたい」と語った子の笑顔がストップし、少し間をおいて名前となくなった年が文字で出るのがたまりません。子どもに先立たれてしまった親御さんの無念はいかばかりかと辛いです。それでも子どもたちのしなやかさ、強さに力づけられ、こういう場面が残ってよかったね、とも思います。観た人の胸にポツリと残るから。
細谷先生が筆で書く一句一句は、医師としての沈痛な思いと、逝ってしまった子どもへの鎮魂の思いにあふれています。同じタイトルの書籍が映画「大丈夫。」製作上映委員会の編著でいせフィルムから発行されています。(白)
2011/日本/カラー/85分/
製作:いせFILM スマートムンストン関連映画製作委員会
公式 HP >> http://www2.odn.ne.jp/ise-film/
監督:サム・メンデス
脚本:デイブ・エガーズ&ヴェンデラ・ヴィーダ
撮影:エレン・クラスASC
音楽:アレクシ・マードック
編集:サラ・フラック
衣装:ジョン・ダン
出演:ジョン・クラシンスキー(バート)、マーヤ・ルドルフ(ヴェローナ)、カルメン・イジョゴ(ジェリー)アリソン・ジャネイ(リリー)
友人どうしのように仲が良いカップル、バートとヴェローナに、思いがけなく子どもが授かり、妊娠6ヶ月のお腹はふっくらしてきた。そんなある日、近くに住むバードの両親が「ベルギーで暮らす」と言い出す。若い2人が両親の暮らすコロラドに来たのは、将来赤ん坊が生まれたら、何かと面倒を見てくれるだろうと考えていたから、コロラドに住む理由がなくなってしまった。それに両親の大きな家に住めるかと思ったが、両親は他人に貸して行ってしまった。そこで二人は理想の新天地を探すため旅に出ることに決めた。
『アメリカン・ビューティ』のサム・メンデス。
個性的な人々の嫌みのない台詞で笑わせてくれた。
<住めば都>というがどこに住んでも、そこの友人や隣人を無視することはできないのはアメリカだからだろうか。
若い2人より父母世代が家を貸して、外国で暮らそうと実行するすばやさに驚くが、
父母の傍で暮らして、少し子どもの世話を頼もうという考えはどうなんだろう。
日本なら、友人や親戚はあまり近くないほうが・・・なんて思ってしまう。
最後に決めたところはとっても素晴らしい家だった。
「こんないいところあるなら、早く思い出してよ。一緒になって心配していたのに・・・、
でもハッピーエンドだからよかったね」と言ってあげたくなった。(美)
2009年/アメリカ/98分/カラー/ドルビーデジタル/ビスタ
配給:フェイス・トゥ・フェイス
★2011年3月19日 ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.ddp-movie.jp/ouchi/
監督・原作・脚本:品川ヒロシ
撮影:北信康
美術:相馬直樹
照明:渡部嘉
出演:佐藤隆太(黒沢飛夫)、上地雄輔(鬼塚龍平)、石原さとみ(宮崎由美子)、綾部祐二(石井保)宮川大輔(金井)、長原成樹(河原)、新井浩文(城川)、秋山竜次(小渕川)、笹野高史(門倉)
結成10年の売れない漫才コンビ“ブラックストーン”の飛夫は、相方の保から解散したいと言われた。 原因は保の借金だった。ヤケになった飛夫は、トラブルに巻き込まれ留置場に入れられてしまった。 そこで出会ったのが、毎日喧嘩に明け暮れる龍平だった。全身タトゥーだらけの龍平にビビっていた飛夫だったが、話をする中で、ツッコミの才能があることに気づくのだった。 「おれとコンビを組まない?」と誘うと簡単にOKする龍平。こうして急ごしらえの漫才コンビ“ドラゴンフライ”が誕生した。
試写会場でこんなに笑ったのは久しぶり。喧嘩も漫才もスピードが命!一瞬の戸惑いも命取り。 あまりの早いしゃべりで思わず見過ごすところだったが、言葉を受けた相手が、 意味を把握しないうちに表情を作っていたのが気になった。 台詞がもうわかっているはずもなく、受けの表情が早いのはいただけない。 だが、出演した芸人さんの達者なしゃべりや目つきに新鮮なものを感じた。 デブのガンダムオタク秋山竜次のしゃべりや、すっごく悪い男を演じた新井浩文が特によかった。(美)
2010年/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSRD/137分
配給:角川
★2011年3月19日 角川シネマ新宿ほかにて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.manzaigang.jp/
脚本・監督:アーヴィン・チェン(陳駿霖)
製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース
出演:ジャック・ヤオ(姚淳耀)、アンバー・クォ(郭采潔)、ジョセフ・チャン(張孝全)、トニー・ヤン(楊祐寧)、クー・ユールン(柯宇綸)、カオ・リンフェン(高凌風)
台北の街角で両親の営む中華料理店を手伝うカイ。パリに行ってしまった恋人を追いかけて、自分もいつかパリに行こうと、毎晩本屋に座り込んでフランス語の勉強する日々。本屋で働くスージーは毎晩来るカイを優しく見守っていた。ある日、カイはパリにいる恋人から別れの電話を受ける。なんとしても彼女の心を引き止めたい! そんなカイに地元の不動産屋のオヤジがパリ行きの旅費を出す見返りに小包の運び屋をしてくれと申し出てくる。パリに出発する前の晩、小包を受け取り、親友のカオと祝杯をあげよう夜市に繰り出す。夜市で本屋のスージーが一人で食事をしているのを見かけた二人は、彼女を誘ってぶらぶらするうち、カオとはぐれてしまう。その頃、小包を狙った三人組がカイではなくカオを誘拐してしまう・・・
どこか懐かしいたたずまいの街角でパリに行くためにタクシーに乗り込む恋人を見送るカイ。一生懸命フランス語で留守番電話にメッセージを残すカイが切ない。すぐそばに自分を気にかけてくれる可愛い女の子がいるのに、なかなか気づかない。わぁ~どんくさい! 気のない彼女を追いかけて無理にパリに行かなくても・・・とハラハラするけど、恋に恋してる時は、そんなものかも。お洒落なのに、なぜかベタ。とっても台北が愛おしくなる映画。 エドワード・ヤンの映画でお馴染みのクー・ユールン(柯宇綸)や、出番は少ないけれど高捷(ジャック・ガオ)も出ていて、ちょっと嬉しい。(咲)
2010年/台湾・アメリカ/ビスタサイズ/ドルビーデジタル/北京語・台湾語/85分
提供:アミューズソフト
配給:アミューズソフト ショウゲート
公式 HP >> http://aurevoirtaipei.jp/
監督:バイロン・ハワード/ネイサン・グレノ
製作総指揮:ジョン・ラセター、グレン・キーン
脚本:ダン・フォーゲルマン
音楽:アラン・メンケン
声の出演:マンディ・ムーア/中川翔子(ラプンツェル)、ザカリー・リーヴァイ/畠中洋(フリン・ライダー)、ドナ・マーフィ/剣幸(ゴーテル)ほか
ディズニー・アニメーション・スタジオ 第50作記念作品
─それは、ディズニー史上最も美しく、ミステリアスな物語。
深い森の中にそびえたっている高い塔。住んでいるのは母親マダム・ゴーテルと、長い金色の髪の美しい娘ラプンツェル。彼女は出入り口のないこの塔から一歩も外に出たことがない。外の世界は恐ろしいと母親から聞かされ、窓から眺めるだけで満足してきた。ただ一つだけ気になるのは、毎年自分の誕生日に必ず空に浮かぶたくさんの小さな「灯り」。なぜその日だけ現れるのか知りたい、もっとそばで見たい気持ちは年々強くなるばかり。18歳の誕生日の前日、母親が留守の間に大泥棒のフリンが塔に侵入する。初めて母親以外の人間と会ったラプンツェルは、あの「灯り」を見るため彼を案内人に、外の世界へ出かけることにした。それは運命を変える大冒険!!
グリム童話の「ラプンツェル(髪長姫)」を子どもの頃に読み、高い塔の窓から下ろされる金色の髪を想像してうっとり、羨ましかったものです。映画は原作をもとにしてはいますが、21世紀のラプンツェルは、塔の中だけでも楽しみを見つけて暮らせる明るい娘です。そして自分から冒険に飛び込む勇気がある新しいタイプのプリンセス。初めて外に出て大喜びしたかと思えば、母親を裏切ったと落ち込む様子も可愛らしいです。
プリンスならぬ大泥棒のフリンは、スタッフの女性たちから集めた「これぞイケメン」という男性たちを参考に作り出したキャラクターなのだそうですよ。
魔法の金色の髪は豊かで美しく、その長さを利用してあっと思うようなアクションも展開します。唯一の親友、カメレオンのパスカル、とても人間くさい馬のマキシマス、酒場で出会う荒くれ者たちなど、ラプンツェルの夢を応援してくれる仲間たちもいいキャラ揃い。どんな年代の方にも楽しめる要素がたっぷりです。春休みにぜひご家族でご覧下さい。(白)
2010年/アメリカ/カラー/101分/ビスタサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)Disney Enterprises, inc. All Rights Reserved.
監督:飯島敏宏
脚本:千束北男
撮影:稲垣涌三
美術:池谷仙克
音楽:冬木透
出演:高田純次(鴇田和昭)、高橋惠子(鴇田摩智)、麗奈(花森美咲/警察花子)、秋野太作(佐藤一郎)、黒部進(石田勉)、森次晃嗣(花森寛治)、堀内正美(吉沢四郎)、木野花(佐藤里香)、桜井浩子(杉浦紀子)、高橋ひとみ(市村真希)、中原裕也(加納修)、青山草太(鴇田和弘)、井上順、林隆三(森本慶太)、竜雷太(大島忠)ほか
大手商社に勤めてついに定年の日を迎えた鴇田和昭(ときたかずあき)。仕事一筋に生きてきたが、これからは家族とともに第2の人生をともくろんでいた。しかし、結婚間近の一人息子和弘は、折角建てた2世帯住宅には住まない、と宣言する。リタイア組の老人たちと知り合って初めてこの虹の丘タウンが平均年齢68歳と高齢化していることを知る。
カルチャー教室で忙しい妻の摩智は、代わりに自治会に参加する和昭におとなしくしているよう釘をさすが、いつのまにか「祭りの実行委員」を引き受けるはめになってしまった。
ベテランの飯島監督はこれまでさまざまなジャンルのTVドラマをプロデュース・演出されています。ウルトラQ、ウルトラマンシリーズ、「金曜日の妻たちへ」(1987年)はおしゃれなニュータウンに住む核家族のドラマ。「金妻」と名前が定着するくらい大ヒットしました。これがもう20年以上前だとは。『ホームカミング』はちょうどその頃にニュータウンに住んだ家族たちの現在、ということになるでしょうか。金妻とちがって不倫の話ではなく、鴇田をはじめとする熟年世代がお祭りを成功させ、町を元気にしようと奮闘する物語です。リタイア組を演じるのはみな懐かしい顔ぶれ。あ、ウルトラマンのハヤタ、モロボシ、アキコ隊員が~!そういう自分も一緒に年取ってきているので、熟年世代の生きがいや老後の問題など将来でなく、今のわが身のことなのです。身につまされました。監督の地元町田市のみなさんが全面協力しています。(白)
2010年/日本/カラー/105分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス 宣伝協力:フリーマン
(C)ホームカミング製作委員会
公式 HP >> http://home-coming.jp/
監督・脚本:フローリア・シジスモンディ
原作:シェリー・カーリー著「Neon Angel」
撮影:ブノワ・デビー
音楽監修:ジョージ・ドラクリアス
出演:クリステン・スチュワート(ジョーン・ジェット)、ダコタ・ファニング(シェリー・カーリー)、マイケル・シャノン(キム・フォーリー)ほか
1975年、ロサンゼルス。ロックといえばまだ男だけのものだった時代。ジョーン・ジェットはギターを習いに行くが、ロックは女には教えないと言われる。敏腕プロデューサーのキム・フォーリーは、そんなジョーンに10代の女の子だけを集めてバンドを作ろうと持ちかける。ロックをやりたい子は他にもいた。なかなか見つからなかったヴォーカルとしてシェリー・カーリーが加わり、ガールズ・バンド「ランナウェイズ」が誕生した。男社会の中で差別を受けながら、着実に力をつけていった彼女たちはレコード会社との契約をものにする。その人気は日本にまでも飛び火していった。
1977年にランナウェイズが来日して、テレビの歌謡番組に出たのをよく覚えています。それまで見たこともないシェリー(当時はチェリー)の過激な衣装と、パワフルなパフォーマンスに驚きました。当時メンバーは15~17歳くらいだったのですね。一生懸命さがなんだか痛ましい。
シェリー・カーリーの自伝本をもとに、今も現役のミュージシャンであるジョーン・ジェットが製作総指揮をつとめ、自身を演じるクリステン・スチュワートに細かい指導をしたそうなので、まるでドキュメンタリーのような雰囲気もあります。70年代の曲の数々、クリステン・スチュワート、ダコタ・ファニングの熱演が心に残る女の子たちの青春ストーリー。(白)
2010年/アメリカ/カラー/107分/シネマスコープサイズ/ドルビーデジタル
配給:クロックワークス 宣伝:アルシネテラン
(C)2010 Apparition,LLC.All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.runaways.jp/
企画・原案・監督:大鶴義丹
脚本:一雫ライオン
音楽・主題歌:heidi.「月光ショータイム」(ジェネオンユニバーサル)
出演:風間俊介(タクジ)、黄川田将也(ジュン)、杉浦太雄(シュンジ)、藤田玲(ケン)、八代みなせ(マヨコ)、森下悠里(ミミコ)、新城隼人(ジュンの父親)、ダイアモンド☆ユカイ(ライブハウスのマスター)、マーティ・フリードマン(トーマス)、つまみ枝豆(農協の課長)、徳光和夫(アナウンサー)、heidi.(heidi.)、宍戸開(信二)、吉田羊(美佐)、加藤和樹(龍二)
タクジは群馬県前橋から少し離れた田舎で、昼間は家業の農業を手伝い、夜はヴィジュアル系バンド「プリンシパル」のボーカルとして活動している。バンドのメンバーのジュン、シュンジ、ケンも家業を手伝いながら東京に出てプロになることを夢見ているが、ライブハウスでの観客は20人程度。おまけにパンクバンド「鈍牛」のボーカル・龍二の迫力にいつもびびっている小心者たちだ。ある日、リーダーのジュンが、父親の体調不良のためバンドを辞めると言い出す。タクジはいつまでも夢を見ていられないというジュンに腹を立てつつも、自らも姉の妊娠で農業を本格的に継ぐ決断に迫られる。そんな中、農協で働くマヨコが以前から「プリンシパル」のファンで、バンドを辞めないでほしいとタクジに伝えに来る。彼女との出会いで「プリンシパル」に朗報が舞い込んでくるのだが・・・。
東京に出てプロになりたいと思いながらも、家業や故郷を捨てきれないタクジ。風間俊介さんの好演もあり、夢と現実の狭間で葛藤する彼に、青春真っ只中の人も青春が遠い昔の人も共感できると思います。 タクジらが選んだ道は観てのお楽しみですが、何事にもそういう道があるんだと気付かせてくれたような気がします。そして家族、仲間、ファン・・・人を思いやる優しさや暖かさにあふれた、笑いと共に涙ありの作品です。加藤和樹さんの今までのイメージとは違う、お笑い的な役どころにも注目です(笑)。 「プリンシパル」の演奏シーンはとってもかっこよくて、こんなバンドがいたらライブに通っちゃうと思うほど。彼らの音楽は今作品にも登場しているヴィジュアル系バンド「heidi.」の曲ですが、試写の帰り道は彼らの曲が耳について離れませんでした。CD買おうかな。(裕)
2011年/105分/ヴィスタサイズ/DTSステレオ
配給:ケイダッシュステージ、リンクライツ
宣伝:フリーマン・オフィス
★3月12日(土)よりシネ・リーブル池袋にて先行ロードショー
公式 HP >> http://www.maebashivisual.com/
監督:樋本淳
プロデューサー:平澤大輔
製作:クラシコ製作委員会
ナレーション:安めぐみ
音楽:OGRE YOU ASSHOLE
配給・宣伝:ブラウニー
出演:AC長野パルセイロ、松本山雅FC
日本のサッカーリーグは、プロである「Jリーグ(J1、J2)」の下に、全国のアマチュアの「JFL(日本フットボールリーグ)」、次いで全国を9ブロックに分けた「地域リーグ(4部またはJ4)」がある。その地域リーグの中でもっとも激戦といわれる「北信越リーグ」に属するチームを応援する、サポーターたちの熱い日々を追ったドキュメンタリー。
サッカーを題材にしているけれども選手ではなく、応援しているチームそれぞれのサポーターのサッカーへの愛情、郷土愛が、老若男女関係なくいきいきと描かれています。
「北信越リーグ」では、AC長野パルセイロと松本山雅FCが長年の宿命のライバルとして戦う、「信州ダービー」と呼ばれる因縁の対決(=クラシコ)が行われました。サポーターたちの熱い想いを見ていると情が入ってしまい、どちらにも勝ってほしい気持ちになります。サッカーに興味がなかった人たちが地元新聞でチーム快進撃の記事を読み、スタジアムに足を運ぶ姿もありました。
チーム運営資金やサッカーの技術向上など課題はまだあるようですが、地域リーグがますます地域に根ざして発展するよう期待しています。(裕)
2010年/日本/97分/HDV
★3月12日(土)より池袋シネマ・ロサ、吉祥寺バウスシアターにて公開〈全国順次公開〉
公式 HP >> http://www.clasico-movie.com/
監督:マイケル・アプテッド
脚本:スティーヴン・ナイト
撮影:レミ・アデファラシン
音楽:デヴィッド・アーノルド
出演:ヨアン・グリフィズ(ウィリアム・ウィルバーフォース)、ロモーラ・ガライ(バーバラ・スプーナー)、ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・ピット)、アルバート・フィニー(ジョン・ニュートン)、ルーファス・シーウェル(トーマス・クラークソン)、ユッスー・ンドゥール(オラウダ・エキアノ)、マイケル・ガンボン(チャールズ・ジェームズ・フォックス卿)
その歌が教えてくれた。
愛で歴史を変えられると。
200年の時を経て今明かされる、名曲誕生に秘められた感動の実話。
18世紀のイギリス。若くして国会議員になった俊英ウィリアム・ウィルバーフォースは、イギリスをはじめ列強の国々が奴隷貿易によって富を得ていること、一般の人々もそれが当たり前と思っていることに胸を痛めていた。彼が師と仰ぐジョン・ニュートン牧師は、かつて奴隷輸送船の船長であったことを悔いて詩を作っていた。ウィリアムはその歌「アメイジング・グレイス」を心の支えとして、盟友のウィリアム・ピットらと非人道的な貿易を廃止しようと活動を続けていく。
18世紀の日本は江戸時代。私達が時代物の映画やドラマを楽しむのと同じように、英国でも歴史の転換期に活躍した人物のドラマが好まれているのでしょうか。衣装や美術を観るのも楽しいです。
ヨアン・グリフィズは『キング・アーサー』でランスロット、『ファンタスティック・フォー』ではMr.ファンタスティックを演じた美形俳優ですが、はっきりした顔立ちがこの歴史大作にぴったり。理想に燃える若い政治家を体現しています。ジョン・ニュートンは300近くの賛美歌の作詞をした牧師で、「アメイジング・グレイス」はそのうちのひとつです。歌詞のように「神の恵みは全ての人に与えられる」はずですが、同じ神を信じ、歌を歌いつつも今なお争いの絶えない世界であるのは残念。本田美奈子さんの歌声に胸がきゅっと痛くなりました。(白)
2006年/イギリス/カラー/118分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:プレシディオ
©2006 BRISTOL BAY PRODUCTIONS LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://www.amazing-movie.jp/
監督:イェジ・アントチャク
出演:ピョートル・アダムチク、ダヌタ・ステンカ(『カティンの森』)、ボジェナ・スタフーラ、アダム・ヴォロノーヴィチ
音楽:チェロ:ヨーヨー・マ、ピアノ:ヤーヌシュ・オレイニチャク、横山幸雄
帝政ロシアの圧制に苦しむ19世紀ポーランド。作曲家フレデリック・ショパンは支配者から要求される作風を受け入れられず、自由な活動を求めてパリに行く。なかなか認められず、アメリカ行きも考えていた頃、人気音楽家フランツ・リストの計らいで曲を披露する機会を得、瞬く間にパリ社交界の寵児となる。故国ポーランド貴族の娘マリアへの求婚を断られ失意の中にいたショパンは、作家ジョルジュ・サンドと運命的に出会い、歳の差を越えて二人に愛が芽生える。ショパンの病気療養と人目を避けるため二人はマヨルカ島に身を潜める・・・・
あまりにも有名なショパンとジョルジュ・サンドとの恋。マヨルカ島の二人が暮らしていた修道院をかれこれ20年近く前に訪ねたことがあるのですが、美しいながら侘しさを感じる場所でした。ここで二人密かに愛をはぐくんだのか・・・と心が騒いだのを思い出しますが、サンドの息子や娘も一緒にマヨルカ島で暮らしていて、彼らとの葛藤があったことを本作で初めて知りました。ショパンとも歳の近い息子にとって、母親の恋はさぞかし辛いものがあったと思いました。故国ポーランドのショパンの心臓が納められている教会も訪ねたことがあって、姉によって心臓だけが運ばれたくだりもしんみりと拝見しました。ピアノを習っていた中学生の頃、ショパンの曲をよく弾いていた私にとって、ショパンはとても親しみを感じている人物だったはずなのに、何も知らなかったことをあらためて思いました。それにしても、今や譜面を見ても、まったく弾けません・・・ あの美しい曲の数々を弾けた自分を懐かしく思い出しました。(咲)
ポーランド/2002年/英語/126分
配給:ショウゲート
公式 HP >> http://www.chopin-movie.com/
監督・脚本:アレハンドロ・アメナーバル(『アザーズ』『海を飛ぶ夢』)
脚本:マテオ・ヒル(『海を飛ぶ夢』『オープン・ユア・アイズ』)
出演:レイチェル・ワイズ(『ナイロビの蜂』)、マックス・ミンゲラ(『ソーシャル・ネットワーク』)、オスカー・アイザック(『ロビン・フッド』)、マイケル・ロンズデール(『ミュンヘン』)、サミ・サミール(『ワールド・オブ・ライズ』)
4世紀末、ローマ帝国の学術都市として繁栄するエジプト、アレクサンドリア。 青年たちを前に、宇宙の中の地球について模型を使いながら講義する天文学者ヒュパティア。図書館館長テオンの娘でもある彼女は、その美貌と頭脳明晰なことから生徒たちの憧れの的だった。生徒の中には後にアレクサンドリアの長官となるオレステスや、奴隷のダオスがいた。折りしも、これまで迫害の対象となっていたキリスト教が、貧しい者を助ける思想で下層階級を惹きつけ台頭してくる。信仰について言い争う生徒たちに「世の中で何が起きようと、私たちは兄弟よ」と諭すヒュパティア。しかし、キリスト教が国教となり、ユダヤ教やエジプトの多神教との関係が一転。皇帝はエジプトの多神教神殿や図書館破壊の命令を下す・・・。
キリスト教徒たちが襲ってくる中、図書館の所蔵品である巻物を抱えるヒュパティアの姿が痛々しい。アレクサンドリア図書館最後の館長となったテオンの娘として知られる彼女は、実在の天文学者。女性であるがゆえに、当時の社会では認められず、その功績は残念ながら後世に伝えられませんでした。アレハンドロ・アメナーバル監督が、彼女に焦点をあてて、学術の中心としてのアレクサンドリアの崩壊を描いたことに興味を持ちました。 今世紀初めにユネスコの再興事業によってアレクサンドリア図書館の全貌が徐々に明らかになっています。映画を観て、2009年に横浜で開催された「海のエジプト展」で見たアレクサンドリアを思い出しました。あの繁栄を極めた都市が崩壊していく姿を映画で感じることができました。
一つ、印象的だったのは、キリスト教徒が安息日に集まるユダヤ人を襲った場面。「安息日で抵抗できないのを知って石を投げてきた」と、ユダヤ人が嘆きます。安息日に、エルサレムの嘆きの壁で写真を撮ろうとしたら、シャッターを押すのも「仕事」だから、ダメだと言われたのを思い出しました。襲われても、安息日には襲い返さないユダヤ人にあっぱれです。(咲)
2009年/スペイン映画/カラー/シネスコ/ドルビーSR、ドルビーデジタル/2時間7分
配給:ギャガ powered by ヒューマックスシネマ
公式 HP >> http://alexandria.gaga.ne.jp/
監督:柴田昌平(『ひめゆり』)
撮影:那倉幸一
出演:長谷川力雄、椎葉クニ子、小林亀清、杉本充、大浦栄二、中山きくの、河合和香、井村健人、大浦浩、大浦百合子、河合由香、河合玲香、椎葉勝、椎葉ミチヨ、陳内一瑛、沼口和美、長谷川園江
『ひめゆり』についで柴田監督が追ったのは「森の聞き書き甲子園」。毎年百人の高校生が、百人の「森の名手・名人」を訪ねて、古くから伝えられてきた技や暮らしの知恵を聞き書きするというもの。もう十年も続けられています。応募して選ばれると、一面識もない名人にアポイントをとり、訪ねて行って仕事を見せてもらい、話を聞いていきます。「森聞き」に参加した中から、四組の名人と高校生がこの作品に登場しています。高校生には祖父母くらいの年代、全く違った人生を歩んできた人たちとどんなふうに会話を続けていくのかと見守りました。まだ世の中に出る前で、漠然と不安を感じている高校生が、名人たちに問いかける言葉は素朴でまっすぐです。経験豊かな先達は、その直球を受け止めて、ときにはひねりもきかせながらやんわりと返します。やりとりを重ねるうち双方の人生がくっきりと現れてきます。
「高校生がお年寄りに話を聞く?そんな映画のどこが面白いんだ」と企画を持ち込んだ先で監督が繰り返し耳にした言葉だそうです。それが、面白かったのですよ。含蓄のある名人のことばに素直に驚いたり、頷いたりする高校生たち。これがほんとの祖父母と孫だったらまた違うことになるかと思います。長い間先人が伝えてきた、残しておきたい山や里の暮らしの知恵を、町に住む私たちは忘れてしまっています。電気もガスもない、物資の少ない時代から受け継がれてきた業や知恵は、これからも残しておきたいものです。こういう真摯な取り組みが10年も続けられてきたのに驚き、これからも存続されるよう応援したいと思いました。(白)
2010年/日本/カラー/ドキュメンタリー
製作/配給:プロダクション・エイシア
監督:リウ・ジエ(『北京の自転車』撮影監督)
撮影監督:大塚竜治
音楽:林強(リン・チャン)
出演:ニー・ダーホン(『活きる』『王妃の紋章』)、メイ・ティン(『追憶の上海』)、チー・ダオ、ソン・エイシェン、ジェン・ジェン
1997年、中国・河北省涿州(たくしゅう)市。裁判官ティエンは一人娘をひき逃げ事故で亡くして以来、食事の席で妻との会話もなく無気力に暮らしている。判決に恨みを持つ者の仕業ではないかと噂される中、ティエンは黙々と法に忠実に判決を下す日々だった。ある日、車2台の窃盗容疑で捕まった青年チウ・ウーを担当することになる。現行の法では、車2台の窃盗は死刑。時は刑法改正の直前で、改正後には死刑ではなくなる。裁判委員会で議論を重ねた結果、死刑判決を下すティエン。折しも、腎臓を患う地元有力者リー社長はチウ・ウーの腎臓が自分に適合することを知り、死刑執行を早くするよう金の力で圧力をかけてくる。いよいよ死刑執行の日、ティエンは思わぬ行動に出る・・・
昨夏SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で『透析』のタイトルで上映され、観客賞を受賞。シネジャスタッフ三人が絶賛し、公開を待ち望んでいました。リウ・ジエ監督が『北京の自転車』の撮影監督だったことや、撮影監督が日本人であるということでも注目していた作品。
すっかり気落ちした妻に代わって、食事を作る裁判官の姿が涙ぐましいです。仕事から帰って、料理を作り、三人掛けの椅子の一つが空席になった食卓で妻と二人で黙々と食べる日々・・・ また、娘を亡くした寂しさを紛らすために飼い始めた犬ですが、当局から届けを出していないとお咎めを受ける場面では、『わが家の犬は世界一』(路学長監督)を思い出しました。心の支えをさらに奪われる妻の気持ちが切々と伝わってきました。質素な裁判官の部屋に比べて、リー社長の洒落たインテリアの部屋が眩しく、もうあの頃から中国で富める人はとてつもなく裕福だったのを感じました。
撮影監督・大塚竜治さんにリウ・ジエ監督のこだわりや、撮影時のことをお伺いしました。インタビュー記事を本誌81号に掲載します。Web版特別記事では、大塚竜治さんの中国での活動を中心に報告予定です。(咲)
2009年/中国/北京語/カラー/98分
配給・宣伝:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/asa/
監督:グザヴィエ・ボーヴォク
脚本:グザヴィエ・ボーヴォク、エチエンヌ・コマール
撮影:カロリーヌ・シャンブティエ
美術:ミシェル・バルテレミ
衣装:マリエル・ロボー
出演:ランベール・ウィルソン(クリスチャン)、マイケル・ロンズデール(セレスタン)、オリヴィエ・ラブンダン(クリストフ)フィリップ・ロダンバッシュ(木谷曹長)、ジャック・エルラン(アメデ)ロイック・ピジョン(ジャン=ピェール)グザヴィエ・マリー(ミシェル)
1990年代。イスラム教の国アルジェリアの小さな山村にあるカトリック修道院では、 修道士たちが厳しい戒律を守りながら暮らしていた。彼らはイスラム教徒の地元民とも良好な関係を築き、 医師でもあるリュックは診療所を開き、住民を診察していた。 そんな中、内戦が激しくなり、修道院近くにもイスラム過激派グループのテロで犠牲者が出始める。 修道士たちも、祖国フランスへ避難すべきか、村にとどまるべきかで意見が分かれたが、 誰にも結論は出せなかった。ついにフランス政府から帰国命令が出されたが…。
この事件は、1996年にアルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を映画化した作品。過激な原理主義者の暴力により、教会も安全な場所ではなくなる。本国に帰りたい者、村人と共にここに残るという者、迷っている者・・・。神に仕える男たちが、神に近い男であるはずもなく、ただひたすらに祈り、神の存在を信じたいと願うばかりだ。
修道士たちは心の葛藤を乗り越え、そして決断していく中で、神々となったと感じた。(美)
2010年/フランス/フランス語、アラビア語/カラー/120分/35mm
配給:マジック・アワー
★3月5日から シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
公式 HP >> http://www.ofgods-and-men.jp/
製作・監督・脚本・撮影・録音・編集:マーク・プライス
出演:アラステア・カートン(コリン)、デイジー・エイトケンス(コリンの姉リンダ)、タット・ウォーリー(マーレン)ほか
ある日突然世界中で死者が蘇り、ゾンビとなって生きた人間を襲い始めた。ゾンビに噛まれた人間はいったん死んだ後、みなゾンビとなり食料の人間を襲う。次々とゾンビが増え、ロンドンも壊滅状態になった。コリンも巻き込まれ、ゾンビとなってしまう。猛烈な空腹感に襲われたコリンもほかのゾンビと人間の肉を食べてしまった。ゾンビ狩をする人間たちから逃れ、思うように動かない身体で一歩一歩進むコリン。人間としての記憶は薄れかけていたが、彼にはどうしても行かねばならないところがあった。
製作費わずかに450ポンド(およそ6000円)のこの作品、俳優、エキストラたちのギャラはなし。マーク・プライス監督は、9歳の夏『ジョーズ』に衝撃を受け、毎日ビデオを観続けて全てのセリフや効果音まで丸暗記してしまったとか。生粋の映画少年ですね。彼はジョージ・A・ロメロ監督(『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』ほか、ゾンビ映画の巨匠)を敬愛していて、ずっとこの『コリン』の企画を暖めていたのだそうです。コリンの視点から描かれた本作は、かすかな記憶をたよりに、人間に追われながらも先へ先へと歩く様が哀切です。ゾンビを襲う人間のほうがよほど怖い気がしました。しかし、全部の人間がゾンビになってしまっては、ゾンビも食料不足で壊滅するではないですか。あ、もう死んでいたのでした。どうしましょ!?(白)
2008年/イギリス/カラー/97分/
配給:エデン
公式 HP >> http://www.colinmovie.jp/
監督・企画・プロデューサー:市川徹
脚本:佐伯俊道、下島三重子
撮影:吉田秀夫
音楽:小川類
編集:横山智佐子
出演:加藤雅也(高峰譲吉)、ナオミ・グレース(譲吉の妻・キャロライン)、 国分佐智子(譲吉の妹・順と順の曾孫の二役)大橋吾郎(益田孝・三井物産の祖・譲吉の理解者)、美木良介(浅野財閥の祖で譲吉と同郷)萩尾みどり(譲吉の母・ゆき)夏木陽介(譲吉の父・清一)、松方弘樹(渋沢栄一・譲吉の支援者)
金沢市郊外の救急センターで患者の緊急手術が行われた。その時、医師が止血剤を「エピネフリン」と言ったのを「きちんとアドレナリンとよぶべきだ」と反発した看護士がいた。彼女こそ、アドレナリンの結晶化に成功した高峰譲吉の子孫であった。
消化酵素タカジアースターゼを発明した高峰博士の生涯を描いている。
私は金沢出身だから『武士の家計簿』も、この『さくらさくら』も何倍も気を入れて観てしまう。明治35年生まれの亡き父は薬好きが高じて、家には薬棚まであり、ちょっと具合が悪いと聞くや、家人は当然のこと、近所、勤め先の役所まで、あれこれと薬を紹介や乳鉢で調合?していた記憶がある。常備薬の中にはエビオス、大田胃散、ビオフェルミンそしてタカジアースターゼもあった。
高峰譲吉はその当時では、外国人の妻と結婚するなど、特異な人生を歩んでいるが、精神は侍だ。この作品は、今の日本人が失ったサムライ精神と、これからの日本に求められる各分野の新しいチャレンジ精神の二つを描き切っている。
多分、予算の都合上、思うような撮影場所で撮れないなどでご苦労もあったかと感じる箇所があったが、高峰譲吉の生涯を知ることができて嬉しかった。(美)
2010年/日本/カラー/133分
配給:アステア
★2011年3月5日 銀座シネパトス他、順次公開
公式 HP >> http://sakurasakura.jp/
監督:チョ・ミョンナム『大胆な家族』
企画・製作:カン・ムンソク(姜 文錫)
プロデューサー:パク・ミジョン、キム・ソンフン
脚本:チョ・マンベ、ユン・ホンギ、ジョン・デソン
撮影:キム・ユンス 照明:イ・スング 衣装監督:クォン・ユジン
編集:コ・イムピョ 音響:イ・スンヨプ 音楽:ハ・グァンフン
原作:シン・ホジン「海兵隊には何か特別なことがある」
出演:イ・アイ、ソン・ビョンホ、イム・ウォンヒ、キム・ミンギ
男でもほとんど耐えられないという海兵隊訓練過程を1位で通過した女副士官イ・ユミ。彼女の夢でもある、海兵隊特殊捜査隊に入隊するが、女性だということで、なかなか相手にされない。そんな彼女に与えられたミッションは、軍事訓練において、万年最下位の第3チームを指導し最高のチームにすることだった!!なかなか上官として認めないチーム員や、ライバルの妨害工作により、前途多難な状況に陥ってしまう…。しかし、彼女にはどうしてもやり遂げなければいけないある理由があったのだ。どんな逆境にも耐え、頑張るイ・ユミ姿に、最初は反発していた同僚たちも感化され協力し合い、万年最下位の第3チームは一つになっていく。しかし、師団級訓練の過程で彼らは思わぬところに不時着してしまう。そこは、北朝鮮の領土だったのだ・・。
世界で唯一の分断国家がある朝鮮半島がとても物騒になってきている今日この頃、何だかタイムリーすぎて冗談では済まされないのだが、戦闘シーンや過酷な訓練シーンが見せ場というわけではなく、若い女性が孤軍奮闘するチャレンジ精神、リーダーシップとチームワーク、父娘の絆、上官と部下の信頼などがテーマであり、観た後に暖かく明るい気持ちが残り明日もがんばろうという勇気が沸いてくる映画である。
実際の韓国海軍での軍服や銃を使用し、特訓風景などの生活を再現。主演のイ・アイは、撮影3ヶ月前から専任トレーナーとともに基礎体力訓練をし、男性にも耐え難いという海兵隊教育と救助スイミング法、ダイビング、基礎体力訓練など実戦を彷彿とさせる訓練に耐えた。そして、数々の国内映画祭に新人女優賞にノミネートされるなど、次世代を背負う女優として注目されている。舞台出身のソン・ビョンホは、実際会う機会があり話を聞いてみると、『飛べペンギン』の課長や『GOOD BAD WEIRD』のアヘン商人などの優しくコミカルで軽快な役柄がご本人に近いのだが、今回演じたシリアスで厳しいが情にあふれる上官役も新鮮だ。幅広い役柄をこなす素敵な俳優さんだ。チョ・ミョンナム監督は「この映画を通して私達が国のために何をすべきなのか何ができるのかを考えて欲しい」また「自分より韓国というチームの一員として他人を配慮し、愛することが必要ではないか。」というメッセージを伝えながらも軽快で面白い映画を撮った。公開を迎える前にご病気のため40代の若さで故人となられたのは本当に残念だ。(祥)
2010年/韓国/105分/韓国語/35mm/カラー/アメリカンビスタ/SRD
製作:思い出の蝉 提供:ロッテシネマ 配給:アルシネテラン
★2011年3月5日(土) シネマート新宿、シネマート六本木他 全国順次公開
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/rok/
1992年の地球サミットの年に映像を通して地球環境について考えることを目的に始まったアジアで初めての「環境」をテーマとした国際映像祭。29の国と地域から集まった163作品の中から選ばれた14作品と特別上映のショートフィルム3作品が上映されます。作品は、ドキュメンタリーをはじめとして、ドラマ、アニメーションで、ショートフィルムから長編まで、さまざまな角度から環境を扱った映画が集まりました。2005年度からは、全世界を対象とした「子どものための環境映像部門」を開設し、未来を担う子どもたちが楽しみつつ環境を考えるきっかけを作ることにも力を入れています。
期間:2011年3月4日(金)~6日(日)
会場:四谷区民ホール(東京都新宿区内藤町87番地 四谷区民センター9階)
東京メトロ・丸ノ内線「新宿御苑前駅」大木戸門方向(2番)出口
新宿通りを四谷方向へ徒歩約5分
http://shinjuku-kuminhall.com/pc/pdf/yotsuya_map.pdf
告知映像
http://www.youtube.com/EARTHVISION1992
参加協力費 1日1,000円 高校生以下無料・事前予約不要
3日間通し協力費(カタログ付き)一般2,000円 学生1,500円
配給:【主催】アース・ビジョン組織委員会
【共催】新宿区 NPO法人新宿環境活動ネット
公式 HP >> http://www.earth-vision.jp/
監督:ロジャー・ミッシェル
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
撮影:アルヴィン・クーフラー
音楽:デヴィッド・アーノルド
出演:レイチェル・マクアダムス(ベッキー・フラー)、ハリソン・フォード(マイク・ポメロイ)、ダイアン・キートン(コリーン・ペック)、パトリック・ウィルソン(アダム・ベネット)、ジェフ・ゴールドブラム(ジェリー・バーンズ)ほか
「私にはムリ」って、思ってない?
28歳独身のテレビプロデューサー、ベッキーはいきなり失業してしまった。懸命な就職活動の甲斐あってニューヨークのテレビ局に仕事を見つける。担当は視聴率最下位、打ち切り寸前のモーニングショーだった。それでも同じ局のアダムと知り合ってちょっぴりハッピー。しかし番組ではやっと確保した憧れの大物キャスター、マイクはプライド高く、ものすごく我儘+お局さまキャスターのコリーンとのコンビも最悪。ベッキーが一人頑張っているのに、視聴率は下がるばかり…。
『ノッティング・ヒルの恋人』のロジャー・ミッシェル監督、『プラダを着た悪魔』の脚本家アライン・ブロッシュ・マッケンナが組んだ、働く女子にエネルギーをくれる新作。ハリソン・フォードのロマンチックコメディ出演は初めて見たような気がしますが、ダイアン・キートンとともにさすがの貫禄です。『きみに読む物語』のレイチェル・マクアダムスが、夢をあきらめずに頑張るヒロインをベテラン2人を相手に元気いっぱい演じて共感を呼びます。(白)
2010年/アメリカ/カラー/107分/
配給:パラマウント
(C)2010 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.koi-news.jp/
監督:クリストファー・マンガー
製作総指揮・脚本:カイウラニ・リー
撮影:ハスケル・ウェクスラー
出演:カイウラニ・リー
「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないのです。
生物学者であるレイチェル・カーソンは、メーン州のコテージで「沈黙の春」(1962年発行)を執筆中。幼いときから自然の中で育ち、何よりも地球と命を愛してきた彼女は、化学物質による汚染を憂えている。家族の生活を支え、早くに亡くなってしまった妹の息子を引き取って養子とし、自然とたわむれる子どもの様子に目を細める。しかし、癌に侵されている彼女にはあまり時間が残されていない。
予備知識なしで観たうえ、レイチェル・カーソンのお顔を知らなかったので、はじめご本人が残したフィルムなのかと思ってしまいました。これは製作・脚本・主演をしているカイウラニ・リーが、カーソン女史の著書「センス・オブ・ワンダー」を長い間一人芝居で演じていたものを映画化したものです。自らの癌と闘いながら講演や執筆を続けていた最後の1年。カーソン女史がいつも夏をすごしたお気に入りのコテージで、インタビューに答えるドキュメンタリーの形をとっています。早くから化学物質による環境破壊の問題を告発していた彼女が、保守政権や化学薬品の会社などから批判を受けながら、毅然として屈しなかったようすが見えます。カーソン本人からメッセージを受け取った気のする作品でした。(白)
レイチェル・カーソンは、1962年に出版した「沈黙の春」で、世界で初めて化学物質が環境に与える危険性を告発した生物学者である。この本がきっかけになり、環境運動が始まったといえるかもしれない。農薬会社や製薬会社、マスコミなど、彼女の主張が不都合な人々からの批判にさらされたが、それに怯むことなく環境の危機を訴えた。その批判にさらされている最中の晩年、癌を患っていたカーソンはアメリカ メイン州の海岸にある自分の別荘を訪れ、豊かな自然の中で甥のロジャーと過ごした。本作は、彼女の遺作となった「センス・オブ・ワンダー(神秘さや、不思議なものに目を見張る感性)」の映画化である。
「レイチェル・カーソンという女性は科学者でしたが活動家ではありませんでした。フルタイムの仕事を持ち、家族を養いながらも、現代で最も重要な本を書き上げたのです」とクリストファー・マンガー監督は語る。
カーソンの思いが込められたこの映画の元になったのは、主演女優カイウラニ・リーが、カーソンのメッセージを伝えるために脚本を執筆し、18年もの間カーソンの最後の一年を演じてきた一人芝居「センス・オブ・ワンダー」である。彼女は「自然と触れ合えば皆、自然と恋に落ちる。それこそが地球を守る唯一の方法であるということを、多くの人に伝えたくてこの舞台を始めた」という。本人かと見紛うばかりの映像は、長年に渡る彼女の演技のたわものだろう。
撮影場所をカーソンが穏やかに余生を送ったメイン州の海岸にあるコテージに移し、豊かな自然の中で甥のロジャーと過ごした日々を美しいドキュメンタリー・タッチで再現した。
この作品の翻訳字幕は上遠恵子さん。レイチェル・カーソンの著書「センス・オブ・ワンダー」の訳者であり、レイチェル・カーソン日本協会会長である。2001年にはドキュメンタリー映画『センス・オブ・ワンダー レーチェル・カーソンの贈りもの』に自ら出演。この『センス・オブ・ワンダー レーチェル・カーソンの贈りもの』も、このメイン州のコテージが舞台で、上遠恵子さんがこの本を朗読する形で描かれた。
*シネマジャーナル53号(2001年発行)で、『センス・オブ・ワンダー レーチェル・カーソンの贈りもの』を紹介している。
カイウラニ・リーさんと上遠恵子さん、「地球と生命を愛したレイチェル・カーソンが伝えたかったこと」を、日米双方で人々に伝達し続けているということが心強い。(暁)
4/11(月)福岡伸一さん×上遠恵子さん 対談付き上映開催 http://www.uplink.co.jp/kansei/news.php#1534
2008年/イギリス/カラー/55分/
配給:アップリンク
公式 HP >> http://www.uplink.co.jp/kansei/
監督・脚本・プロデューサー:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン (『ノーカントリー』『バーン・アフター・リーディング』)
出演:マイケル・スタールバーグ、リチャード・カインド、アダム・アーキン
1967年、テキサス州ミッドウェスタン郊外にマイホームを構えるラリー・ゴプニック。大学の物理学教授の彼にとって、もっぱらの関心事は、2週間後に控えた息子ダニーのバルミツバー(13歳で行うユダヤ教の成人式)と大学で終身雇用が認められるかどうかということだった。居候する兄アーサーがバスルームを占領して娘サラとのいさかいが絶えなかったり、息子が同級生にいじめられていたりと小さな悩み事はあったけれど、平々凡々な毎日。そんなある日、妻から突然離婚を言い渡される。しかも、親友のサイと再婚するというのだ。とりあえず家を出て行ってくれと言われ、兄と共にモーテル暮らしをすることになる。さらに、大学にはラリーを中傷する匿名の投書が届いたり、落第点を付けたアジア系学生から文化的摩擦だと訴えられたりと踏んだり蹴ったり。悩み事がある時にはラビ(ユダヤ教の指導者)に相談するのがユダヤ人だと、ラビのもとに出かけるラリー。最初のラビには、「僕も神を見失った」と言われ、次のラビからも、ある歯医者が経験した奇妙な物語を聞かされるだけで適切なアドバイスが貰えない。最後の頼みの綱、最上位のラビであるマーシャク師のところに行くが面談してもらえない。やがて息子の成人式の日がやってくる・・・・
コーエン兄弟が、自分達の育ったユダヤ人コミュニティーを舞台に、親の世代であるラリーを主人公に描いた作品。自分たちは息子ダニーの世代。バルミツバーの為に、ユダヤ教経典であるトーラ(モーセの五書)をレコードで聴きながら暗誦する場面には、コーエン兄弟もあのようにして律法を覚えたのだろうかと、二人の少年時代を思い浮かべました。
冒頭、「身に降りかかる出来事をありのまま受け入れよ」という言葉に続いて、雪の中、馬車の輪がはずれたのを助けてくれた男を家に招待するが、妻が「その男は3年前に死んだ! 私たちは呪われた」と男を刺す物語が印象的に描かれています。イディッシュ語で語られていて、よく知られた寓話なのかと思ったら、コーエン兄弟お得意のホラ話。後に続くラリーの物語とは何の関係もないそうです。
予告編で印象的な場面は、最上位のラビであるマーシャク師のところに行くも、秘書に師は忙しいと断られるくだり。寝ているように見えるマーシャク師ですが、瞑想中という次第。本編を観れば、もっと笑えます。真面目に平凡な人生を送ってきた人物が災難に見舞われるという、どこにでも起こりえる物語ですが、アメリカに根付いているユダヤ人コミュニティーの一端を垣間見れる作品にもなっていて興味深かったです。(咲)
2009年/アメリカ/106分/カラー/ドルビーデジタル/ビスタサイズ
配給:フェイス・トゥ・フェイス
公式 HP >> http://www.ddp-movie.jp/seriousman/
監督・脚本: 大森一樹
出演: 熊倉功、丸山優子、坂田鉄平、松村真知子、大関真、大竹浩一、佐原健二、水野久美 他
制作協力:劇団スーパー・エキセントリック・シアター
丘の上の寂れた遊園地&動物園に詐欺容疑で指名手配中の男・田口(熊倉功)が逃げ込んでくる。檻の前で動物と会話する女がいたり、迷彩服の兵士がゲリラと戦っていたりする中、話のスケールが大き過ぎる老人や一文無しになった銀座の元ママ、9.11で同僚を失った元銀行員などが田口に話しかけてくる。彼らと話すうち、ここで神経科クリニックの開放治療が行われていることを知る。様々な問題を抱えた患者のほか、医師、インドネシア人の看護師、彼らを取材に来たインドネシアのテレビ局クルーなどもいる。風変わりな人たちと過ごすうちに、田口は一体誰が正常で誰が異常なのかわからなくなっていく。やがて、患者の妄想が妄想を呼び、思わぬ事件が起こる・・・
本作が、10年程前の宝塚ファミリーランド閉園の折りに思いついた題材と知り、ちょっと嬉しくなりました。宝塚といえば四季折々両親に連れられて行った懐かしい場所。閉園が決まってすぐに壊されたので撮影は実現しなかったそうです。遊園地、動物園、植物園、日帰り温泉、歌劇と華やかだった宝塚と比べると、撮影場所の群馬県桐生が岡公園は自然が豊かながら、ちょっと寂れた感じがしました。だからこそ神経科クリニックの開放治療もあり得る設定だなぁ~と。本作は大森一樹監督自ら脚本を手がけたもの。インタビューの時間をいただき監督にお目にかかった時に、「医師免許取ったけど、一日も医者として働いたことありません。監督も飽きたから、そろそろ医者でもやってみようかな」とおっしゃるので、「それは患者にとって怖いですよ」と思わず言ってしまいました。思えば、心の病に関して映画で取り扱っているし、頼りになる先生になりそうです。(監督インタビューは、本誌81号でどうぞ!)
また、本作で心を和ませてくれるのが、「浜辺の歌」「花のまち」といった懐かしい日本の唱歌。中でも「黄金虫」の歌には五木寛之の短編「こがね虫たちの夜」を思い出して、思わずにんまり。(世代がばれますねぇ!)
本作の製作会社ADKアーツが手がける、日本の唱歌を歌い継ぐ「にほんのうた」プロジェクトの中から選曲されたもの。「にほんのうたキャラバン」が、未来を担う子供たちに唱歌・童謡を歌い継いでもらおうと、全国の小学校を無償で巡回しているそうです。
にほんのうた実行委員会 公式HP http://nihonnouta.net/
(咲)
2011年/日本/HDCAM/カラー/16:9/97分/ステレオ
配給:グアパ・グアポ
公式 HP >> http://sekadoko.jp/
監督:トム・フーパー
脚本:デヴィッド・サイドラー
撮影:ダニー・コーエンBSC
音楽:アレクサンドラ・デスプラ
衣装:ジェニー・ビーヴァン
出演:コリン・ファース(ジョージ6世)、ジェフリー・ラッシュ(スピーチ矯正の専門家ライオネル)、ヘレナ・ボナム=カーター(ジョージ6世の妃エリザベス)ガイ・ピアース(エドワード8世)、ティモシー・スポール(ウィンストン・チャーチル)
幼い頃から吃音というコンプレックスを抱えた内気な男が、“王冠を賭ける恋”で王位を捨てた兄の代わりに王座についた。現在のエリザベス女王の父ジョージ6世だ。彼はスピーチ矯正の第一人者ライオネルの独自の治療法で治そうと試みるが…
劣等感のかたまりのようだった英国王ジョージ6世を、『シングルマン』のコリン・ファースが演じる。
私の好みは『シングルマン』のセクシィなコリン・ファースだが、
この作品の生真面目で、家族を愛してやまない王も、コリン・ファースならではのものだ。
ヒトラーのポーランド進攻を受けて、宣戦布告する演説は、はらはらしながら聞いたが、流暢に語りかけるより、深い感動を覚えた。
ジョージ6世は幸せな方だったと思った。
王を陰で支え続けたエリザベスは101歳まで、皇太后としてイギリス皇室の行く末を見守っていた。
※この中でシンプソン夫人のことを悪く描いていたが、真実のところはどうだったのだろう。(美)
2010年/イギリス×オーストラリア合作/カラー/ヴィスタ/ドルビーSR、ドルビーデジタル/118分
配給:ギャガ GAGA★
© 2010 See-Saw Films. All rights reserved.
★2011年2月26日 TOHOシネマズ・シャンテ、BUNKAMURAル・シネマにてロードショー
公式 HP >> http://kingsspeech.gaga.ne.jp/
昨年(2010年)、第20回を迎えたアジアフォーカス・福岡国際映画祭では、2006年から観客の投票で決定される“福岡観客賞” (06年及び07年はコダックVISIONアワード)が実施されています。この度、2006年から2009年に受賞した4作品が東京で上映されます。併せて、アジアフォーカスディレクターの梁木靖弘氏と映画評論家・村山匡一郎氏の対談も行われます。 どの作品も観客賞に輝いた感動作です。東京で観ることのできる貴重な機会、ぜひお出かけください。(咲)
会場: 映画美学校シアター (東京都渋谷区円山町1-5 2階 TEL03-5459-1850)
主催: アジアフォーカス・福岡国際映画祭実行委員会
問合せ先:アジアフォーカス・福岡国際映画祭実行委員会 TEL 080-6440-8974
平日9時00分~17時00分 2月19日(土)から、土日も対応
入場料:当日 1作品 500円(入替制)(前売りはありません)
※特別対談は無料です
◆『神に誓って』(In the Name of God)
ショエーブ・マンスール監督/2007年/パキスタン・イギリス・アメリカ/169分/35mm
時代は、2001年9月11日の前後。パキスタンの比較的上流階級の家庭に育ち、音楽家を目指していた兄弟の歩む正反対の人生を描いたもの。兄マンスールは、9.11の直前にアメリカに留学。警察の拷問を受けたりしながらも、キリスト教徒の学友ジェイニーと恋に落ち、音楽の勉強を続けます。かたや、弟サルマドは宗教指導者に洗脳され、音楽を捨て原理主義者となります。兄弟の従姉マリヤムは、イギリス育ち。パキスタン人である父親は、イスラーム教徒の女性はイスラーム教徒としか結婚してはならぬと、マリヤムを無理矢理サルマドと結婚させます。
監督は、9.11事件の後のパキスタンの置かれている状況を背景に描きながら、イスラームという宗教をどう捉えたらいいのか?と、自国パキスタンを含めたイスラーム教徒自身に問いかけたかったといいます。「技術的には未熟なところがある作品に観客賞を頂けたことがすごく嬉しい」と語るショエーブ・マンスール監督でした。
★ショエーブ・マンスール監督記者会見の模様をシネマジャーナル75号に掲載しています。
公式 HP >> http://www.focus-on-asia.com/jimukyoku/month/2011/01/20/
日程:2月26日(土)~3月4日(金)
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷
製作費わずか45ポンド(約5856円、*2010年12月1日現在)で作られ、その低予算とは思えない完成度の高さで国際マーケットで話題騒然となり、レインダンス映画祭最優秀マイクロ・バジェット映画賞をはじめ数々の映画祭で賞を獲得、新たなる才能の誕生として世界の映画界を震撼させた『コリン LOVE OF THE DEAD』が、3月5日(土)より公開されます。 それを記念し、スクリーンでは滅多に観られない伝説の傑作ゾンビ映画の数々を一挙上映する「東京国際ゾンビ映画祭」が開催されることになりました。
上映作品:邦題 | 製作年 | 製作国 | 監督 | 上映 時間 | 備考 |
ゾンビ(ダリオ・アルジェント監修版)HDリマスター版 | 1978 | 米・伊 | ジョージ・A・ロメロ | 119 | |
ゾンビ(米国劇場公開版) | 1978 | 米 | ジョージ・A・ロメロ | 127 | 劇場初上映 |
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(デジタル修復版) | 1968 | 米 | ジョージ・A・ロメロ | 96 | |
ダイアリー・オブ・ザ・デッド | 2007 | 米 | ジョージ・A・ロメロ | 95 | |
サバイバル・オブ・ザ・デッド | 2009 | 米 | ジョージ・A・ロメロ | 90 | |
死霊のえじき | 1985 | 米 | ジョージ・A・ロメロ | 102 | |
ゾンビランド | 2009 | 米 | ルーベン・フライシャー | 87 | |
サンゲリア(デジタル・リマスター版) | 1979 | 伊 | ルチオ・フルチ | 91 | |
ビヨンド(デジタル・リマスター版) | 1980 | 伊 | ルチオ・フルチ | 90 | |
地獄の門(デジタル・リマスター版) | 1980 | 伊 | ルチオ・フルチ | 92 | |
墓地裏の家(デジタル・リマスター版) | 1981 | 伊 | ルチオ・フルチ | 89 | |
悪魔の墓場(HDリマスター版) | 1974 | 伊・西 | ジョージ・グロウ | 94 | |
アイランド・オブ・ザ・デッド | 2006 | 伊 | ビンセント・ドーン | 93 | 日本初公開 |
デッドランド | 2008 | 米 | ゲイリー・ウガレック | 88 | 日本初公開 |
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コリン LOVE OF THE DEAD | 2008 | 英 | マーク・プライス | 97 | 特別先行上映 |
詳細は『コリン LOVE OF THE DEAD』公式 HP で!>> http://www.colinmovie.jp/
監督:キム・ジウン(『箪笥』『甘い人生』『グッド・バッド・ウィアード』)
撮影:イ・モゲ (2010青龍映画賞 撮影賞受賞)
出演:イ・ビョンホン、チェ・ミンシク
ある夜、雪の夜道で車がパンクし、レッカー車の到着を待っていた若い女性が、黄色いスクールバスに乗った男に連れ去られた。地元警察は大規模な捜索を開始するが、まもなく川底から切断された頭部が発見される。人間の所業とは思えぬこのおぞましい殺人事件の被害者は、引退した重犯罪課の刑事チャンの娘ジュヨンだった。一ヵ月前にジュヨンと婚約したばかりの国家情報院捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)は、最愛の女性を救えなかった自分のふがいなさを何度も呪う。深い絶望感に苦しむ彼は、自力で犯人を追い詰める決心をする。スヒョンはチャンが入手した捜査資料をもとに、ギョンチョル(チェ・ミンシク)という中年男が犯人だと特定。ギョンチョルとは血も涙もない凶行を繰り返し、ひたすら快楽のみを貪り尽くす常軌を逸した男。良心のかけらも持ち合わせていない悪魔そのものだった。スヒョンは彼女を殺した男に同じ苦しみを与えるため、恐ろしく冷酷な報復を誓う。残虐な殺人鬼に復讐することは、彼自身も怪物になることだとしても…。
怪物と闘う者は自らが怪物と化さぬよう心せよ。
お前が深淵を覗き込む時、深淵もまたお前を覗き込んでいるのだ。
― フリードリヒ・ニーチェ「善悪の彼岸」より
血みどろでグロい暴力描写は見ているだけで相当痛そうだが、そこはさすがキム・ジウン監督。 細部にこだわりぬいた図に効果的な光と音がちりばめられると、不思議にとても美しい。鬼気迫る猟奇殺人鬼を演じたチェ・ミンシク、残酷で冷血な復讐の鬼に堕ちていく男の狂気と悲哀を無表情に抑えた中にも繊細に表現したイ・ビョンホン。2人の俳優の演技は圧巻だ。韓国公開用編集バージョンのようだが、海外の映画祭で上映された詳細残酷ショットを追加したバージョンではなく、感情の変化をより丁寧に描くことに重きをおいた編集での日本公開となっているように見える。海外ではキム・ジウン監督の最高作品とまで評された完成度の高い作品と評された。またブラックユーモアと消化すれば笑える箇所も盛り込まれている。筆者も1回目に観たときは衝撃的だったが3回目には映像の美しさと感情演技に感動する余裕ができた。女性ファンの皆さんも怖がらずに、頬の筋肉の細かい動きまでをクローズアップで追われるイ・ビョンホンの美しい横顔を拝みに劇場へ足を運んだら良いと思う。(祥)
2010年/韓国/上映時間:144分/カラー/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:根本理恵
配給:ブロードメディア・スタジオ
© 2010 PEPPERMINT & COMPANY CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
★2011年2月26日(土)丸の内ルーブル他全国ロードショー
公式 HP >> http://isawthedevil.co.jp/
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:ジュリエット・ビノシュ、ウィリアム・シメル
イタリア、南トスカーナ地方の小さな町アレッツォ。本物と贋作についての本を書いた英国人作家ジェームズの講演に遅れて入ってきたフランス人女性。息子が空腹を訴えた為に、連絡先を作家に渡してくれと主催者に手渡して中座する。女性の経営するギャラリーを訪ねてきたジェームズは、誘われるままに郊外の美しい村ルチニャーノへ行く。散策しながら、本物と贋作について語り合う二人。途中で寄ったカフェのマダムが彼らを夫婦だと間違えたことから、二人は長年連れ添ってきた夫婦を演じ始める・・・・
アッバス・キアロスタミ監督がイランを飛び出し、ジュリエット・ビノシュを主役に迎えて全編イタリア・トスカーナ地方で撮った作品。
東京フィルメックスの特別招待作品として上映された折、映画が終わって明るくなったら、舞台下の真ん中にキアロスタミ監督が満席の客席に向って立って待ち構えていました。観客の顔が見えるようにとスポットライトも消しての和やかなQ&A。久しぶりに来日された監督を、日本の観客は大喜びで迎えました。男性からの質問が続いて、女性からの質問を促す監督。「男と女がいつまでたっても交じり合わない映画なのよ」と連れ合いに言われたという男性から、「女性と映画、どちらがミステリアス?」と聞かれ、「どちらも美しく複雑」と答えました。本作は贋作を種に永遠に終わらない男女関係を語りたかったのだそうです。
本音炸裂の会話にほんとうは夫婦だった?と騙されそうになりますが、設定は夫婦ではありません。でも、二人の関係を質問されたキアロスタミ自身、「今日、映画をまた観て、この二人は本当に結婚しているのか・・・と自分も思いました」と観客を煙に巻いていました。
糸杉、バックミラーに写る姿、延々と続く会話・・・ キアロスタミ映画でお馴染みのアイテムは健在。そして、イランの詩人メヘディ・アハヴァン・サレスの詩「葉の落ちた庭」が引用されるところがあって、詩を愛するイラン人の心を感じさせてくれます。(咲)
2010年/フランス・イタリア合作/106分/35mm/カラー作品/1.85:1/ドルビーSRD
配給:ユーロスペース
宣伝:テレザ
公式 HP >> http://www.toscana-gansaku.com/
監督:ジョニー・トー、ワイ・カーファイ
脚本:ワイ・カーファイ、アウ・キンイー
撮影:チェン・チュウキョン、トー・フンモ
出演:ラウ・チンワン(元刑事バン)、ラム・カートン(コウ・チーワイ刑事)、アンディ・オン(ホー・カーアン刑事)、ケリー・リン(元妻/チャン・メイワー刑事)、チョン・シウファイ、ラム・シュ、エディ・コー、フローラ・チャンほか
新人のホー刑事は西九龍署に配属された。先輩のバン刑事の特異な推理方法に驚愕する。吊るした豚に斬りつけたり、スーツケースに入り込んで階段を転げ落ちたり…そうすることで、被害者の心情をなぞり真犯人に迫れるのだという。ホーは畏敬の念を持つが、バンはあまりに奇矯な行動を繰り返したため、馘首されてしまった。5年後、ホーは失踪したウォン刑事の銃を使った連続殺人事件の捜査に行き詰まり、バンのもとを訪れる。
ウォンと最後に行動をともにしたのはコウ刑事だった。バンの目には、コウの中に男女7人の異なった人格が見えた。
ジョニー・トー監督が2007年に発表した本作、第20回TIFFアジアの風部門で上映されています。ようやく一般公開となりました。一風変わった犯罪モノです。濃い~ラウ・チンワンが身体をはった捜査で、真犯人に近づいていく異能のバン刑事を熱演します。妄想と現実が交錯するバン、コウとその中にある7つの人格の表現など、なかなか面白いです。多重人格の7人をどう見せるのかと思ったら、全員がぞろぞろ歩いたり車の中でぎゅうづめになったりで、思わず吹き出しました。ラム・シュが相変わらずいい味を出していましたが、ほかの人格ももっと活躍させてほしかったです。多重人格といえないまでも、一人の人間にはいろいろな面があるもの。私がどう見えるのかと想像すると、ちょっと怖い。(白)
衝撃的な作品だった。奇抜な捜査方法で事件を解決するというストーリーは、変といえば変。でもいかにも香港映画らしく、そういうこともありと思わせるものだった。
殺人犯を追い詰めていく映画だけど、そのアプローチの仕方、謎解きの方法が斬新。
そしてジョニー・トー印の映画だった。
バン刑事を演じる劉青雲(ラウ・チンワン)の鬼気極まる演技に圧倒されたけど、最初の豚に切りつけるシーンや、警察を退職する時に自分の耳をカットしてしまうシーンは、おどろおどろしい感じがして怖かった。劉青雲はギョロ目で怖い印象があるけど、『つきせぬ想い』など、今までの役柄は、「顔はこわおもてだけど、実は優しい人」という役が多く、今回のように何するかわからない不気味な役柄はめずらしい。
安志杰(アンディ・オン)は、この奇妙な方法で犯人探しや事件解決を図る先輩のバン刑事の捜査方法なら事件が解決できるのではないかとバンの元をたずね、事件解決を目指すが、一緒に捜査にあたるなかでバン元刑事に振り回される。この作品では安志杰の華麗なアクションを見ることができなかったのが残念だけど、彼の演技者としての成長を見ることができた。でも、『香港国際警察』の最後、ジャッキー・チェンとずっと格闘しているシーンが忘れられず、彼のアクションがいつかまた見たいと思った。
最初、タイトルにある7人の容疑者の意味がわからなかったけど、ひとりの人に7人の人格があるからだったんだと知った。7人の人格を持つコウ刑事を演じるのは林家棟(ラム・カートン)。彼はいつも犯人や裏切り者の役が多いけど、悪人顔ではないので、その意外性を監督は狙っているのかなとも思った。劉徳華(アンディ・ラウ)の事務所に所属している(いた?)ので、『アンディ・ラウ ダンス・オブ・ドリーム』『インファナル・アフェア』など初期の映画出演作品はアンディと一緒に出演していたが、『エレクション』に出演して以来、すっかりジョニー・トー組に。『イップマン 序章』では警察署長を演じていて、けっこう重要な役どころだったし、最近、結構キーパソンとして活躍しているなと思う。
7人の人格役の中に劉錦玲(ラウ・カムリン)をみつけ驚いた。93年の『天長地久/アンディ・ラウのスター伝説』で、アンディの恋人役を演じていた人。ここ数年名前を見なかったので、すでに引退したのかなと思っていたけど、今も変わらず女優を続けていたんだと嬉しかった。
それにこの7人の人格者の中には、林雪(ラム・シュ)や張兆輝(チョン・シウファイ)もいて、さらに林熙蕾(ケリー・リン)もバン刑事の元妻役で出演ということで、ジョニー・トー組健在。
偶然の妙というか…。3人が銃を向け合ったシーンでは、誰も自分の銃ではないという設定。それぞれ、めぐり巡って他人の銃を持つはめになったあげく、誰も自分の銃ではなく他人の銃を向け合うシーンの滑稽さ。緊張感溢れるシーンなのに、思わずこのシーンで「ジョニー・トー印」と思って、クスっと笑ってしまった。でも、けっこう怖いシーンが多かったので、何回もは観ることができないかな。
それにしてもジョニー・トー監督の作品は、『ヒーロー・ネバー・ダイ 』『マッスルモンク』など、エグイものや、オドロオドロシイ作品も結構多く、私としては『過ぎ行く時の中で』『ターンレフト・ターンライト』『Needing You』のようなラブロマンスの方が好きなので、今回、大阪アジアン映画祭2011で上映される最新作『単身男女』が、次は公開されたらいいなと思っている。
ところで、ジョニー・トー監督作品特集が「シネマヴェーラ渋谷」で組まれ、こちらでもジョニー・トー作品を観ることができる。こちらもぜひ観てみてください。(暁)
「ジョニー・トーとゆかいな仲間たち -ゼロ年代香港映画傑作選-」
2007年/香港/カラー/89分/シネマスコープ/ステレオ
配給:彩プロ
(C)2007 One Hundred Years Of Film Company Limited All Rights Reserved.
公式 HP >> http://mad-tantei.com/
監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ(『サラエボの花』)
出演:ズリンカ・ツヴィテシッチ、レオン・ルチェフ、ミリャナ・カラノヴィッチ、エルミン・ブラヴォ
航空機のキャビン・アテンダントのルナは、空港の管制室に勤めるアマルと結婚を前提に同棲中。そろそろ子供が欲しいと願っている。ある日、アマルが勤務中にお酒を飲んだことが発覚し6ヶ月の停職処分を受けてしまう。指定されたセラピーへの参加を拒否するアマル。気晴らしに二人は車で外出するが、帰り道に対面衝突してしまう。ぶつかった車の中から出てきた男は、アマルの戦友バフリヤだった。一見してムスリムと判る服装をしている彼は、「女性とは握手できない」とルナの出した手を拒む。数日後、アマルがバフリヤに仕事を紹介してもらったと言って、仕事場である遠く離れた湖に行ってしまう。ルナが心配になって湖畔のキャンプを訪ねると、そこでは女性がきっちり肌を隠し、男女別に過ごしていた。黒装束の女性から「世間が噂するようなテロ集団じゃないか安心して」と言われるが、世俗的なイスラームの家庭に育ったルナには違和感を覚える光景だった。一方で、アマルは「酒も飲まず、兄弟たちと心安らかに暮らせる。人生がこんなに美しいものだったか」と満足している様子だ。犠牲祭の日、祖母の家に集まる親戚たち。そこへアマルがやってきて、「お酒で祝うのは正しい信仰じゃない」と息巻く。祖母が言う。「夫は酒も飲んだけど、アッラーのこともちゃんと信じていた。あなたは湖で高慢を学んだの?」 それからもアマルは朝から熱心にお祈りし、モスクの集団礼拝にも出かけていくのだった。なかなか妊娠できず、かつて医者から人工授精を薦められていた二人だったが、アマルはちゃんと結婚するまでは婚前交渉も人工授精も出来ないと言い出す始末。「僕は変わってない。良い人間になりたいだけ」と言うが、ルナにはなかなか理解できない。そんな折、ルナは妊娠していることを知る。さて、二人はどうするのか・・・
原題の「Na Putu」とは、ボスニア語で「何かに向かう途中にいる」という意味で、人生の岐路で選択を迫られていたり、精神的な意味での自分探しという意味もあるそうです。紛争で家族を失って心の痛みがまだ癒えないルナとアマル。だからこそ幸せになりたい気持ちがひしひしと伝わってきました。妊娠を知ったルナが、最後に決断を下した時の輝いた顔が素敵でした。
本作の舞台となっているサラエボは、イスラーム教徒の多い町。以前、勤めていた商社でユーゴスラビア駐在20年以上になる方から、分離独立前のユーゴスラビアの話を聞く機会がよくありました。サラエボでレストランに入ったら、イスラーム教徒の経営する店でお酒を置いてなくてがっかりしたことがあったそうです。もちろん、その店には豚肉料理もなかったとのこと。紛争前は民族や宗教が違っても分け隔てなく共存していたとも聞きました。ルナやルナの家族もイスラーム教徒ですが、それは生まれながらにしてのもの。日本人の多くの家庭に仏壇があると思えば理解できると思います。ちなみに我が家は代々神道。ふだん意識していませんが、「宗教は?」と聞かれれば、神道と答えます。ルナの家族がイスラームのお祭りを祝っている場面をみて、もとはといえばオスマントルコがあの地にもたらしたイスラームも人々の生活の中に根付いていることを思いました。キリスト教にも極端に戒律を守る宗派があるように、アマルが傾倒する原理主義も特殊なものでしょう。本来、宗教は心の安泰を求めるもので、他人との摩擦を起こすためのものではないはずです。そんなことも監督は本作で語りたかったのではないでしょうか。
(咲)
2010年/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、オーストリア、ドイツ、クロアチア/カラー/シネスコ/ドルビーSRD/104分
配給:アルバトロス・フィルム /ツイン
公式 HP >> http://www.saraebo-kibou.com/
製作総指揮 : ジョン・ウー(『男たちの挽歌』1986年 香港)
監督 : ソン・ヘソン(『私たちの幸せな時間』)
出演:チュ・ジンモ、ソン・スンホン、キム・ガンウ、チョ・ハンソン
主題歌 CHEMISTRY「a better tomorrow」Defstar Records Inc.
数年前に北朝鮮から脱出してきたヒョクは、釜山を拠点にする武器密輸組織で、同じく北朝鮮出身のヨンチュンと共に、組織を支える大物として暗躍するようになっていた。気がかりは、一緒に脱北を試みたのに失敗して行方不明になった弟チョルのことだった。ある日、ヒョクのことを父親のように世話をしているパク警部が「弟が見つかった」と知らせにくる。脱北者収容所に会いに行くが、チョルは兄を拒否して差し入れも受け取らない。ヒョクは足を洗うことを決意して最後の仕事であるタイでの取引に臨むが、同行してきたボスの甥テミンの策略にはまり、地元警察に逮捕されてしまう。3年後、タイの刑務所を出所し釜山に戻ったヒョクは、かつて自分と共に活躍していたヨンチュンが右脚をひきずりながら組織の駐車場で洗車する姿を目の当たりにする。一方、かつて小心者だったテミンは組織を牛耳っていた。自分たちを裏切ったテミンに復讐しようとヨンチュンから持ちかけられたヒョクは、警官となった弟チョルに迷惑をかけられないと戸惑いながらも、ロシアのマフィアとの取引現場襲撃を決意する・・・
そこかしこに、オリジナル版『男たちの挽歌』の映像が思い浮かんで、確かにリメイクであることが明白なのに、脱北者の兄弟の葛藤を主軸に置いたことで、韓国を舞台にした物語として全く別物の映画に仕上がっているところが凄いです。ジョン・ウーが脚本を読んでリメイクを快諾し、完成作品を観て「リウェイク(再覚醒)」と絶賛しているのも納得です。オリジナルでティ・ロンが演じた兄役を、『霜花店 運命、その愛』で、愛する部下に王妃と夜を共にさせるという苦渋の決断をする王様を演じたチュ・ジンモが好演。抑えた演技と目力で重厚な雰囲気をかもし出しています。また、チョウ・ユンファが演じたマークにあたるヨンチュンを演じたソン・スンホンが白いスーツ姿で二挺拳銃をぶっ放す姿は、ユンファとは別物のカッコ良さ。爪楊枝に変わって、棒キャンデイーをくわえているのはご愛嬌。難を言えば、『男たちの挽歌』でレスリー・チャンに落ちた身としては、弟チョルには、ウォン・ビンかチョ・ヒョンジェあたりの可愛い系をあてがって欲しかった! キム・ガンウ、いい俳優さんだとは思うのですが、『京義線』などで観ているはずなのに印象になくって・・・(すみません!) また、裏切り者役のチョ・ハンソンもレイ・チーホンのことを思うと、太り過ぎだなぁ~と。いろいろ比較するとキリがないし、賛否両論あると思うのですが、『男たちの挽歌II』主題歌「奔向末來日子」のメロディー(はい、メロディーだけです! レスリーの歌声は聴けません・・・)が流れる場所もあって、元祖『男たちの挽歌』ファンには間違いなく嬉しい一作です。(咲)
★元祖『男たちの挽歌』は、シネマート5周年記念企画【香港電影天堂 SPECIAL】でどうぞ!
http://www.cinemart.co.jp/theater/hongkongmovie/
★元祖『男たちの挽歌』との徹底比較は、こちらで!
http://banka2011.com/special/index.html
2010年/韓国/シネマスコープ/ドルビーデジタル/123分
配給:東映
公式 HP >> http://www.banka2011.com/
>> 特別記事 『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』~男たちのイベント~
監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋、いながききよたか、前田こうこ
撮影:安田光
音楽:平井真美子
主題歌:ももちひろこ「明日、キミと手をつなぐよ」
出演:江口洋介(十村遼太郎)、蒼井優(臼場なつめ)、江口のりこ(マリコ)、尾上寛之(海)、ネイサン・バーグ(ジュリアン・ウィルソン)、戸田恵子(依子・ウィルソン)、佐々木すみ江(なつめの祖母)ほか
―甘くない人生に、ときどきスイーツ。きっと幸せになれる。
東京で人気の洋菓子店コアンドルに、恋人の海を追って臼場なつめが訪ねてくる。修行中のはずだった海はすでにやめた後で、行く先がわからない。このまま戻るわけにもいかず、あてのないなつめはオーナーで店長の依子に泣きつく。しばらく住み込みの見習いとして働けることになった。鹿児島の田舎のケーキ店の娘だったが、それまでの経験がこの店では全く通用しない。厳しい修行をしながら、海の行方を探して鹿児島へ連れて帰る決心をする。
コアンドルにやってくる常連客の中に評論家の十村遼太郎がいた。彼は依子の古い知人で天才パティシエだったのに、今は一切手を引いてしまったことがわかる。
『白夜行』の深川栄洋監督作品。全く違うテイストで、甘くてちょっとほろ苦いおしゃれなスイーツ映画です。ハッピーなバレンタインデーにぴったり。朴訥でがんこなヒロインを蒼井優が鹿児島なまりで、心に傷をかかえた天才パティシエを江口洋介が演じています。いろんなことを乗り越えてなつめが成長していく物語。綺麗でおいしそうなケーキがたくさん出てくるので、帰りにはケーキやさんに直行しそうです。
元舞台女優の常連の夫人役、すてきな人で誰かと思ったら加賀まりこさん。ちょうど60~70年代の作品での愛くるしい表情を観たばかり、この年代の女優さんをもっと出してほしいな。(白)
2010年/日本/カラー/115分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(C)2010『洋菓子店コアンドル』製作委員会
公式 HP >> http://www.coin-de-rue-movie.com/
監督:トッド・ウィリアムズ
脚本:マイケル・R・ペリー、クリストファー・ランドン
撮影:マイケル・シモンズ
プロダクションデザイン:ジェニファー・スペンス
出演:ケイティー・フェザーストン、スプレイグ・グレイデン、ブライアン・ボーランドほか
2006年、アメリカ。サンディエゴ郊外に住むレイ一家にある日空き巣が入る。家の中はめちゃくちゃ、これからの用心のために監視カメラを家中に設置する。また不可解なできごとがおき、監視カメラの映像をチェックすると、そこには信じられない映像が残っていた!!
怖い映画は苦手なので、1はホラー好きの(美)さんに観てもらいました。SAWシリーズを観たので少し免疫がついたかも、と観にいきました。監視カメラの映像はリアルな感じがして、なかなか怖いです。そろそろ来るかな、来るかなと身構えていたので、肩こりになってしまいました。カップルやグループでワーワーキャーキャーと観ると、盛り上がってより楽しめそうです。(白)
2010年/アメリカ/カラー/91分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:パラマウント
(C)2010 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
公式 HP >> http://www.paranormal2.jp/
監督:平山秀幸
原作:ドン・ジョーンズ著「タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日」
脚本:西岡琢也
撮影:柴崎幸三
音楽:加古隆
出演:竹野内豊(大場栄大尉)、ショーン・マクゴーウァン(ルイス大尉)、井上真央(青野千恵子 民間人・看護婦)、山田孝之(木谷曹長)、柄本時生(池上上等兵・精神を病む)、阿部サダヲ(アメリカ捕虜で英語が話せる)、唐沢寿明(堀内一等兵)
サイパン島で日本軍玉砕の後、512日もの間戦い続け、アメリカ軍から“フォックス”と呼ばれ畏れられた日本人がいた。大場栄大尉だ。最後47名の隊になったが、7万人のアメリカ兵に立ち向かい、200人の民間人を守りぬいた。
最後には敵であるアメリカ軍から、誇り高き日本人とも言われた。
大場栄を演ずる竹之内豊・・・トレンディー・ドラマ風と思って期待していなかったが、こんな力があるなど思ってもみなかった。
とにかく大場栄そのものだった。ただ、減量して痩せたばかりではなく、声がかすれたり、くぐもったりして、栄養不足なんだなと感じさせる箇所がたくさんあった。
作品中、他の兵士、民間人が、大場大尉に注ぐ目線が、カメラの目線になって、判断を委ねられている苦しみ、迷いが伝わってきた。
切羽詰った状況、死を見つめる覚悟、どの場面を切り取っても、人間の真っ当さが滲み出ていた。
実際はもっと悲惨で、アメリカ軍の関係もこんなにきれいごとだったとは思えないが、戦争を知らない人にとって、この島でどんなことが起こっていたかを知ってもらうには、これぐらいの描き方がよかったのだと思う。
大場大尉はもちろん実在の人物で(それも愛知県)、帰還してから40年近く生きておられた方。
同じ島で戦ったドン・ジョーンズ氏が、戦後20年たった頃、「タッポーチョ」を刊行したいと連絡を受けた。
始めは躊躇したが、書くなら正確に書いてもらいたいと思い、何回も2人は会って、戦いの記録を書いたそうだ。
現在はその本は絶版となっているが、なんとか読みたいものだ。(美)
2010年/カラー/128分/シネマスコープ/ドルビーデジタルサウンズEX
配給:東宝
© 2011「太平洋の奇跡」製作委員会
★2011年2月11日 東宝系映画館にて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.taiheiyo-no-kiseki.jp/
監督:川野浩司
脚本:蒲田幸成
原作:新堂冬樹(「ギャングスタ」徳間文庫)
主題歌:「今だけ人生ロックンロール」三人サイトー
出演:崎本大海(川谷銀二)、久保田悠来(白石力)、佐々木喜英(サクラザカ)、滝口幸広(赤星新)、袴田裕幸(久留井竜)、松崎裕(タイソン)、鎌田順也(マスチフ)、伊藤陽佑(白蠍)、根本大介(覇王)、平田弥里(真耶先生)、藤浦めぐ(綾先生)、ゆき(由美)
銀二は中学でのパシリの自分に決別すべく、ヤンキー高校・明王工業に入学する。この学校を制覇したものに与えられる「ギャングスタ」の称号をつかむため粋がるが、所詮喧嘩が弱く勝てる相手がいない。そこで喧嘩が恐ろしく強くて女好きの力に目をつけ、「ギャングスタ」の座に就かせようとする。最初は興味を示さなかった力も、明王四天王のイケメン・サクラザカに嫉妬心を燃やし、やっとその気になり、二人の間に友情も芽生え始める。そんなときライバル校・第一高専の「明王狩り」が始まり、伝説の「ギャングスタ」ルシファーも少年院から出所してくる。果たして銀二と力は「ギャングスタ」の称号をつかめるのか?
伝説の「ギャングスタ」の称号を手に入れるため、銀二と力の奮闘・友情を描いた、新堂冬樹さん原作の実写化。観ているとなぜか懐かしい気持ちになるのは、劇中に「仲間を助けに行く喧嘩は青春」というようなセリフがあり、ヤンキー=青春を描いているからなのでしょう。ヤンキーそれぞれにキャッチフレーズがあり、得意技とか性格設定も違うので、ゲームを見ているような感覚で喧嘩の対戦も楽しめます。明王四天王勢ぞろいの画は、ちょっと感動(私だけ?)。反目しあっていた相手と一緒に戦ったり、友情を深めていく様に、やっぱり青春っていいものだなと思いました。力役の久保田さんのバトルシーンは迫力がありカッコイイのですが、そのあとに女性のもとにコミカルに走って行く姿には笑わせていただきました。そしてサクラザカ役の佐々木さんの足技がとってもキレイだと思ったら、彼はカポエイラをやっているそうです。本当に素晴らしき足技なので、必見の価値あり!(裕)
2010年/日本/87分/HD/ステレオ
(c)2011ギャングスタ製作委員会
公式 HP >> http://www.gangsta-movie.com/
>> 特別記事 『ギャングスタ』初日舞台挨拶
北欧映画の祭典が冬の渋谷を熱くします。
2009年カンヌ映画祭で物議を醸したラース・フォン・トリアー監督の『アンチクライスト』を始め、フィンランド放射性廃棄物の真実に迫る衝撃のドキュメンタリー『100,000年後の安全』、裕木奈江主演、アイスランド初のスラッシャームービー『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』の3本がジャパンプレミア上映されます。また、ラース・フォン・トリアー、ルーカス・ムーディソンの監督特集ほか、北欧の上質な作品を旧作、劇場未公開作併せて16本上映。アイスランド音楽のトークショーなども開催され、1週間の北欧づくしです。
期間:2011年2月12日(土)~2月20(日)
場所:渋谷 ユーロスペース、アップリンク
詳しい情報は公式サイトをご覧下さい。
公式 HP >> http://www.tnlf.jp/
監督:オリバー・ストーン
脚本:アラン・ロープ&スティーブン・シフ
撮影:ロドリコ・ブリエト,ASC,AMC
音楽:クレイグ・アームストロング
衣装:エレン・マイロニック
出演:マイケル・ダグラス(ゴードン・ゲッコー)、シャイア・ラブーフ(ジェイク・ムーア)、
ジョシュ・ブローリン(ブレトン・ジェームス)キャリー・マリガン(ウィニー・ゲッコー)
インサイダー取引で8年の刑期を終え出所したゲッコーは誰の迎えもない。 だが、彼の経済先読み情報の著書を発行するなど、密かに返り咲きをもくろんでいた。 ゲッコーの娘ウィニーは家庭崩壊させた父を許そうとしないが、 婚約者ジェイクは投資銀行のエネルギー担当をしている有能な若者だった。 彼はウィニーに内緒で、時の人ゲッコーに会いに行く・・・。 p>
ゲッコーと娘ウィニーの確執や、内緒で父に合ったことが原因でジェイクと仲違いする若いカップルの愛憎がきっちり描かれている。
このマイケル・ダグラス扮するゲッコーはしたたかで金儲けのためなら、娘夫婦を騙す?なんて平気なヤカラだ。でも何故か最後には納得してしまうのは、今、こんな時代だからだろうか。まさしく今の経済状況を描き切っている。
2010年/アメリカ/カラー/133分/シネマスコープ/ドルビーSR・SRD,DTS
配給:東宝
★2011年2月4日 TOHOシネマズ日劇他にて全国ロードショー
監督・脚本:一尾直樹
撮影:金子正人
美術:安藤伸
音楽:倖山リオ
主題歌:angela『「リアル」は…』
出演:尾野真千子(アイ)、郭智博(ユウ)、菊里ひかり(ケイ)、國村隼(アイの父親)、萬田久子(アイの母親)、麻生祐未(ケイの母親)、風間トオル(ケイの母親の恋人)、今井清隆(音楽大学教授)、遠野あすか(ユウの彼女)、内山理名(猫を抱く女)
両親と暮らし、家でピアノを教えているアイ。妻子と別れた会社員のユウ。母親とその恋人をさめた目でみている高校生のケイ。なんの関わりもなかった3人があることからつながっていく。
一尾直樹監督の前作は、2002年の『溺れる人』。つながりが壊れていく夫婦を片岡礼子、塚本晋也。ストーリーは暗そうですが、ちょっと見てみたいです。今度の作品は逆に他人同士がつながっていきます。介在するのは、目に見えないものでこれは観客にゆだねられているんでしょうか。アイの家も食卓も全く生活観なく、グラビア写真のようでした。生活感とは無縁で、とってもアートな感じなので私には苦手なジャンルですが、今一人でなにかをさがしている人、誰かとつながりたい、と思っている人の心には響くんじゃないかな。(白)
2010年/日本/カラー/98分/ビスタサイズ/DTSステレオ
配給:マコトヤ
(C)2011「心中天使」製作委員会
公式 HP >> http://shinchutenshi.com/
>> 特別記事 『心中天使』(英題 SYNCHRONICITY) 初日舞台挨拶
監督:ワン・チュエンアン
脚本:ワン・チュエンアン、ナ・ジン
撮影:ルッツ・ライテマイヤー
音楽:マー・ペン
出演:リサ・ルー(ユィアー)、リン・フォン(リゥ・イェンション)、シュー・ツァイゲン(ルー・シャンミン)、モニカ・モー(ナナ)
―40年後の再会も、いつもの食卓からはじめよう。
上海の主婦ユィアーの元に40年前別れたきりの元夫リゥ・イェンションからの手紙が届いた。元国民党軍兵士のイェンションは、内戦の混乱の中生き別れたまま台湾で別の人生を送ってきたのだった。身重の身体で一人上海に取り残されたユィアーは、なにくれとなく面倒をみてくれたシャンミンと再婚した。今は子や孫に囲まれ平穏な暮らしをしていたが、再会を熱望するイェンションに心がゆれている。息子や娘はなんでいまさらと渋い顔をするが、夫のシャンミンは歓迎しようという。
ワン監督は『トゥヤーの結婚』でベルリン映画祭金熊賞、続くこの作品では2010年銀熊賞(最優秀脚本賞)を受賞しています。どちらの作品にも妻1人に夫が2人。それぞれの心情がとても興味深いです。ユィアー役のリサ・ルーはすでに80歳を過ぎています(役の設定は60代でしょう)が、その艶やかさ、可愛らしさといったら!70代と60代の夫役の俳優さんより断然若いではありませんか。枯れたおばあちゃんではないので、この役に説得力があります。
一年きりの新婚生活で離れ離れになってしまった夫と、40年暮らした現在の夫との間でユィアーは板ばさみになりますが、元夫について台湾に行こうとするユィアーに私はちょっと唖然。「いい人だけど愛はなかった」と言われてしまったシャンミンが気の毒になってしまいました。つましい生活の中で精一杯のもてなしをし、イェンションとは「家族です」と酒を酌み交わすいいお父さんです。私ならこっちです。面白いのは離婚届を出しに行ったら、結婚の届けが出ていないと言われ、ユィアーとシャンミンが結婚写真を撮ること。なんだか笑えてしまうのですが、子どもたちの出生届はいったい?戦争によって引き裂かれた家族たちは膨大な数にのぼるでしょう。その後この夫婦のように再会できたのでしょうか?(白)
2010年/中国/カラー/1時間36分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
公式 HP >> http://shokutaku.gaga.ne.jp/
監督:ブラッド・アンダーソン(『マシニスト』)
出演:ヘイデン・クリステンセン タンディ・ニュートン ジョン・レグイザモ
ある夜、デトロイトの映画館。突然停電が起こって映写機が止まる。ヘッドライトを付けた映写技師のポールが観客席に行ってみると、衣服や靴だけが抜け殻のように散乱し、誰一人いなくなっていた。同じ頃、懐中電灯を手に病院を走り回っていて一人取り残された理学療法士のローズマリー。そして、たくさんのキャンドルが灯る部屋で目覚めたTVレポーターのルーク。隣で寝ていたはずの恋人の姿はなく、外にも人の気配がない。事態を飲み込めないまま、「人」を求めて町を彷徨い、光の漏れるバーにたどり着く3人。自家発電のバーには、ジェームス少年が母の帰りを待ちわびてたたずんでいた。どうやら光が自分たちを救ったらしいと気づいた4人は、光を盾に襲いくる闇に立ち向かう・・・・
映写技師ポールが停電直前に読んでいた本に、16世紀末、ロアノーク島で起きた集団失踪事件のことが書かれたいたことを思い出すシーンがある。全住民がこつ然と姿を消し、「CROATAN」という謎の文字だけが残されていたというもの。町を彷徨っていたポールたちが教会の壁に同じ文字を見つける。これはいったい何を意味するのか・・・ 後半30分、さて、この映画、どう終わるのか・・・と胸がしめつけられるような思いがしました。『マシニスト』で、1年間眠っていない不眠症の男が不可解な出来事に巻き込まれていく姿を観た時にも、同様に観終わった時に力が抜けたのを思い出しました。結末はご自身でどうぞ!(咲)
2010年/アメリカ/シネスコ/ドルビーデジタル/91分
配給:リベロ /日活
監督:木村好克
プロデューサー・脚本・アクション監督:西冬彦
製作:福原英行、倉内均、奥田尚志
企画:日達長夫
エグゼクティブ・プロデューサー:加藤和夫、紀伊宗之
主題歌:「Ready☆Steady☆Go!」歌:武田梨奈
出演:武田梨奈(紅彩夏/池上彩夏)、飛松陽菜(紅菜月/サクラ)、中達也(紅達也)、横山一敏(武藤竜士)、リチャード・ウィリアム・ヘセルトン(キース)、入山法子(池上美紀)、滝沢沙織(大橋怜子)、堀部圭亮(田川周)
世界最強といわれた沖縄の空手家・紅宗次郎の家系に生まれた紅彩夏は、幼い頃に伝説の黒帯を狙う謎の集団に襲われ、目の前で父を殺されて妹・菜月を奪われた。時が経ち彩夏は、本名も紅空手の後継者であることも隠し、普通の高校生として生活していた。しかしある出来事がきっかけとなり、離ればなれになっていた菜月と運命的な再会を果たすが、菜月は謎の集団によって殺人マシンとして育てられていた。菜月を取り戻すため、彩夏は紅空手の封印を解き、たったひとりで敵のアジトに乗り込んでいく。
全アクションの全カットがノーワイヤー、ノーCG、ノースタントというだけでも驚きなのに、主演が武田梨奈さんという19歳の見るも清楚な女の子。冒頭の、彼女が映画館でスリを捕まえるシーンから、彼女のアクションの虜となること間違いなし。強いだけではなく、空手の構え、足技、手の動き・・・どれをとっても、きれいな上に品があります。さすが空手歴9年、琉球少林流空手道黒帯(二段)という有段者。菜月役の飛松陽菜さんも、空手歴4年半ながら負けず劣らずのアクションシーンはお見事です。ラストのクレジットが流れるバックでは、撮影のリハーサル風景が映し出されます。ジャッキー映画のNG場面とはまた違う、アクションの厳しさがわかる映像となっています。(裕)
2011年/日本/91分/VISTA/6次元アクションサラウンド
(c)2011東映ビデオ/アマゾンラテルナ
公式 HP >> http://www.t-joy.net/kg/
監督:齊藤潤一
制作・著作・配給:東海テレビ放送
プロデューサー:阿武野勝彦
撮影:村田敦崇
音楽:村井秀清
ナレーション:中村獅童
80年代に「戸塚ヨットスクール事件」として騒がれました。連日のニュースを覚えている方も多いことでしょう。子どもたちがこづきまわされ、足蹴にされる映像に「教育か暴力か」と世論が沸騰しました。訓練生の相次ぐ死亡により、戸塚校長やコーチは刑事責任を問われ、服役。2006年にスクールに復帰した戸塚宏校長とスクールの現在を追ったドキュメンタリー。
かつてのような厳しい体罰はおこなわれていませんが、戸塚校長の信念は揺るぐことはなく、スクールでの指導や各地での講演に忙しい日々を送っています。当時のニュース映像もはさみながら、ニュースでは伺いしれなかった内側を見せます。家族との面談、スクールでの生活、逃げ出した寮生の捜索のようすなど見ていてほっとしたのは、短期、長期とやってきた小学生の男の子がすっかりたくましくなって帰っていったこと。どこへも行き場のない年長の青年が長く寮生としていたりもします。引きこもりやニートの寮生が殆どになっているようですが、そういう子どもが家庭にいられない、学校や職場に戻れない、受け皿となる施設もない、悩む親や教師の相談する場所もない、というないないづくしの中を戸塚校長が唇を引き結んで走り回っているように思えました。
小学校よりも就学前、生まれてからの家庭での育ち方が一番重要なのでは、と一緒に試写を見た(美)さんと話しました。子どもが普通に(普通とはなんぞやと聞かないで)育ってくれた私たちはラッキーだったと思いました。しかし、実際に家庭内暴力や渦中にいる人にそんなことを言っても始まりません。自己責任という言葉で追い詰めるのでなく、社会の問題として考えることをしなくては。また、問題行動の原因に病気があるかどうかも判断できる専門家がいてほしいとも思いました。(白)
2010年/日本/カラー/98分/HD
配給協力:東風
公式 HP >> http://www.heiseidilemma.jp/
監督:園子温
脚本:園子温
撮影:木村信也
照明:尾下栄治
音楽:原田智英
衣装:荒木里江
美術:松塚隆史
出演:吹越満(社本信行)、でんでん(村田幸雄)、黒沢あすか(村田の妻・愛子)神楽坂恵(社本の妻・妙子)、梶原ひかり(社本の娘・美津子)
若い後妻を娶ったことで、実の娘とぎくしゃくした不和を抱えている社本家は、小さな熱帯魚店を経営していた。
そんな時、娘・美津子がスーパーで万引きをした事件をきっかけに、同業者の村田夫婦と知り合う。
人柄も、話し方もそつのない村田の巧みな誘いに、高級熱帯魚の輸入を手伝うこのになった実直な社本は、
予想もしなかった破滅の道に、連れ込まれてしまう・・・。
昨年フィルメックスで観たときは、一人、ものすごい風速の台風の中にいるような、必死な体勢で観終わり、体が硬直していて肩が痛くなった。けっこうホラー好きと自認しているが、「こりぁ、すごいもの観た!」と思っただけで、頭は真空・・・(台風の目の中にいる?)。
その後、試写の案内があり、今度こそはじっくり観てみよう覚悟して行った。
見落としていた脚本の面白さ、カメラの位置、それに音楽。特に通奏低音や和太鼓が胸に迫ってくる。
それにしても吹越満さんもでんでんさんも、今までとは真逆なキャスティング。狂気をはらんでの熱演だ。
この作品は監督の実体験と(えっ、どこが実体験なんだろう・・・)1993年に起こった埼玉の愛犬家殺人事件や、他の猟奇事件にヒントを得て作られた物語。
丁寧に死体処理されていく行程は手抜き一切なし!だから、ご覚悟あれ!(美)
2010年/日本/カラー/35mm/146分/アメリカンビスタ/DTRーSR
配給:日活
(c)NIKKATSU
★2011年1月29日 テアトル新宿ほかにて全国ロードショー
公式 HP >> http://www.coldfish.jp/
>> 特別記事 『冷たい熱帯魚』園子温監督インタビュー~2010年9月13日 第35回トロント国際映画祭にて
監督:村上匡宏(「8月のシンフォニー」)
声の出演:松本保典(「サザエさん」)、福圓美里(「おおきく振りかぶって」)、高木渉(「ゲゲゲの鬼太郎」)、塚田正昭(「鋼の錬金術師」)、吉野裕行(「ヤッターマン」」)、京田尚子(「それいけ!アンパンマン」)、玉川砂記子(「攻殻機動隊」)、青木誠(「キャプテン翼」)、千葉翔也(「ナイトミュージアム」)
昭和39年のお正月。東京・大田区蒲田で町工場を営む山崎家では新年早々、職人気質の父・有三と、卒業後は大企業に勤めたいという大学生の長男・太一が大喧嘩。ちゃぶ台がひっくり返されて重箱の御節料理が飛び散ってしまう。高校生の長女・裕子はそんな騒動をよそに同級生と初詣へ。小学五年生の次男・公平も近所の空き地で野球に夢中だ。空き地の隣の家にボールを飛ばしてしまってガラスを割るのも日常茶飯事。空き地に家が建つことになり立ち入り禁止になった日、いつもガラスを割られていた家の主が巨人・長島選手のサイン入りボールを公平に差し出す。家では、町工場のお得意さんから詐欺にあったり、長女・裕子が毎晩遅く帰ってきたりと、心配事が絶えない。やがて、10月10日、東京オリンピックの開会式。家族揃って聖火が灯るのを眺める山崎家だった・・・
昭和39年の家族の日常を描いた物語。昭和39年といえば、東京オリンピック開催を前に東海道新幹線が開通したり、羽田空港国際線滑走路完成するなど、日本が大きく変わろうとしていた時代。冒頭、昭和38年を振り返り、ケネディ大統領が暗殺されたことなどがテレビから流れてきます。まさに、私も主人公の公平とほぼ同じ世代。当時のことがまざまざと蘇ってきました。当時、神戸に住んでいましたが、学校には東京オリンピックの為に、各教室に1台ずつテレビが設置されたものでした。
長女・裕子が川崎大師に初詣に行き、出会った憧れの先輩・沢渡祐介とタコ焼きを食べる場面があります。沢渡が「大阪のタコ焼きはもっと美味しい」と語るのですが、まさにそう! 15歳の時に神戸から東京に引越ししてきて、うどん粉を固めたような不味いタコ焼きに驚いたのを思い出します。今では、東京でもそこそこ美味しいタコ焼きが食べられますが、当時は母が近所の電気屋さんに行って「タコ焼き器はありますか?」と聞いたら、「鯛焼き器ですか?」と聞かれる位、東京でタコ焼きの認知度は低かったように思います。昭和38年頃、大阪から東京まで特急こだまで6時間半の時代でした。時間の短縮やテレビの普及で地方それぞれの特色が薄れてきて、違いがそれほどなくなってきたように思います。また、当時は大晦日といえば紅白歌合戦を家族揃って見るのが一般的だった時代。今より家族の絆が強かったのも確かでしょう。
もう一つ注目したいのは、この山崎家の町工場。新幹線の部品を作っているのですが、手仕事を大事にしています。こうした日本人の実直な下支えが日本を経済大国に押し上げたことを忘れてはならないと思います。
本作は、シニア世代に向けて作られたアニメ。団塊の世代や、そのちょっと下の世代は、「鉄腕アトム」や「鉄人28号」等々、アニメや漫画で育った世代。アニメで昭和を懐かしむのも楽しい。(咲)
2010年/日本/100分
◆テレビ版:30分13話のTVシリーズを劇場版と同時制作!
テレビ版監督:釘宮洋(「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」)、東郷 光宏(「ラブゲッCHU~ミラクル声優白書」)
ネット6(tvk、テレ玉、チバテレ、三重テレビ、KBS京都、サンテレビ)で放送予定:
2010年年末年始スペシャル放送ならびに2011年4月から本放送
企画プロデュース:ワオワールド、シンク
制作:ワオワールド
配給:シンク
公式 HP >> http://www.shouwa-movie.jp/
監督:木村祐一
脚本:木村祐一、井土紀州
撮影:池内義浩
音楽:藤原いくろう
出演:村上純(古川修一)、香椎由宇(綾城まり)、吉川晃司(父・古川肇)、鈴木杏樹(母・慶子)、田畑智子(姉・和恵)、高岡蒼甫(小倉弘之)ほか
修一は東京で一人暮らし。恋人まりとの結婚を控え、新居を探しに入った不動産屋で、小学校時代の同級生弘之に再会する。仲良しだったのに、ちょっとしたことからずっと離れてしまっていたのだった。気まずそうな様子の修一を気にするまりに、しぶしぶわけを話すことになった。
両親が引越しするため、久しぶりに実家の片付けに帰った修一は、この家で過ごした懐かしい日々を思い出す。出鱈目、いやオリジナルな歌の得意な明るい母、人とはちょっと違うところに芯が通っている働き者の父、先に大人になってどきまぎさせた姉・・・いろいろなことが浮かんでくる。
木村祐一監督最新作。「ワラライフ!!」は「What a wonderful life!!」。木村監督がぜひ残しておきたかった家族のエピソードを集め、削る作業を繰り返して出来上がった作品です。前作『ニセ札』の囲み取材の折、子どものころやご両親のことを懐かしそうに語っていたのを思い出しました。大きな事件も起こらないやさしい作品です。誰にも似たような家族との暮らし、友達との思い出、これから一緒に暮らしていく人との計画があるのではないでしょうか。平和な毎日の積み重ねが大事、小さな幸せを大切にしてね、家族や友達を思い出してねと言われた気がします。(白)
2010年/日本/カラー/94分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ファントム・フィルム
(c)2010「ワラライフ!!」製作委員会
公式 HP >> http://www.wararaifu.com/
監督:ロベルト・シュヴェンケ
脚本:エリック・ホーバー、ジョン・ホーバー
撮影:フロリアン・バルハウス
音楽:クリストフ・ベック
出演:ブルース・ウィリス(フランク)、モーガン・フリーマン(ジョー)、ジョン・マルコヴィッチ(マーヴィン)、ヘレン・ミレン(ヴィクトリア)、メアリー=ルイーズ・パーカー(サラ)、カール・アーバン(ウィリアム)ほか
アメリカを揺るがす巨大な陰謀に、伝説のチーム≪RED≫が甦る!
元CIAの凄腕エージェントだったフランクは、引退して片田舎に住んでいる。今もトレーニングを欠かさず、規則正しい静かな暮らしを送っていた。家族を持たなかったフランクの唯一の楽しみは、会ったこともない年金係のサラに電話をすること。ハーレクインロマンスの好きなサラに合わせて、同じ本を読み他愛のない話をしている。ある日突然自宅がプロ集団に襲撃を受け、そんな暮らしが破られた。命を狙っているのは古巣のCIAらしい。好意を持っているサラにも危険が及ぶと判断、無理やり連れ出した彼女とともに、元上司のジョーを老人施設に訪ねる。
「RED」とは“Retired Extremely Dangerous(引退した超危険人物)”の頭文字をとったもの。ひとくせもふたくせもあるREDたちが、なぜかかつての職場のCIAから抹殺されそうになり、反撃を開始します。ブルース・ウィリスはまたもやダイハードな役柄。若い現役におじさんおばさんも決して引けをとりません。大きな陰謀が隠されていることがしだいにわかっていきますが、シリアスにならずコメディ色を強くして楽しませてくれます。
クールにどんな仕事もこなす現役エージェントのウィリアム(カール・アーバン)をどこで見たんだっけ~?と調べたら『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2002年)のエオメルでした。2009年の『スター・トレック』のドクター・マッコイでもあります。REDたちを相手にいい戦いっぷり。久々にスクリーンで見たメアリー=ルイーズ・パーカーがヒロインなのですが、ヘレン・ミレンの存在感が大きいです。エリザベス女王を演じたこの方はコメディも余裕ですね。もっと観たい!(白)
2010年/アメリカ/カラー/1時間51分/シネマスコープサイズ/ドルビーSRD
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
公式 HP >> http://www.movies.co.jp/red/
監督・脚本:シャロン・マグアイア
原作: クリス・クリーヴ『息子を奪ったあなたへ』(早川書房刊)
音楽:梅林茂
出演:ミシェル・ウィリアムズ(若い母親)、ユアン・マクレガー(ジャスパー・ブラック)、マシュー・マクファディン(テレンス・ブッチャー)ほか
イーストエンドの公団に住む若い夫婦。夫は警察官で爆発物処理という不規則で神経を使う仕事にあたっている。最愛の息子だけをよりどころに、気持ちを持て余す妻は夜中にバーへ一人出かけ、新聞記者のジャスパーと出遭った。彼は公団の近くの高級住宅街の住人。話が弾んで、そのまま一夜を共にし、急速にひかれあう2人。スタジアムに夫と息子を送り出し、サッカー観戦をやめたジャスパーと自宅で情事を楽しんでいるとき、テレビがスタジアムの爆破事件を告げる。半狂乱で現場に駆けつけるが、息子も夫も見つからない。罪悪感と喪失感で若い母親は心を閉ざしてしまう。
シャロン・マグアイア監督は2001年『ブリジット・ジョーンズの日記』で大ヒットを放ちました。その後新作の紹介がなく、こちらは2008年ですが最新作。「blown apart」は「打ちのめされる」という意味で、原題の「INCENDIARY」は焼夷弾、扇動者、放火者などの意味があります。テロ事件で最愛の息子と夫をなくした若い母親(名前がありません)の喪失と葛藤、再生までを描いています。演じるミシェル・ウィリアムズは05年にヒース・レジャーとの間に女の子をもうけていますが、07年に破局。ヒースは08年1月に急逝しています。母親になって全ての見方が変わったというミシェルは、この役を体現する間「砂嵐の中にいるようだった」と言います。ジャスパー役のマグレガーは、自責の念を抱きながら真実を追究していく様子が好ましく、見ていてほっとしました。(白)
2008年/イギリス/カラー/100分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:リベロ/日活
(C) 2008 CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION/INCENDIARY LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
公式 HP >> http://blown-apart.com/
監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋、入江信吾、山本あかり
原作:東野圭吾
撮影:石井浩一
美術:岩城南海子
音楽:平井真美子
出演:堀北真希(西本雪穂)、高良健吾(桐原亮司)、船越英一郎(笹垣潤三)、戸田恵子(桐原弥生子)、田中哲司(松浦勇)、姜暢雄(篠塚一成)、緑友利恵(川島江利子)、粟田麗(栗原典子)、今井悠貴(亮司子ども時代)、福本史織(雪穂子ども時代)ほか
1955年、廃ビルで質屋の店主が殺された。店の従業員の松浦と、愛人関係にあった店主の妻の弥生子の二人が容疑者として上げられるが、店主の一人息子亮司が母のアリバイを主張する。捜査にあたった笹垣刑事は亮司の子どもとは思えない暗い目が気にかかる。店主が直前に訪ねた西本文代がガス中毒死、笹垣刑事は一人娘の雪穂の大人びた様子にまた気持ちがひっかかるのだった。西本文代の質屋店主殺人を裏付ける証拠が見つかり、被疑者死亡のまま事件は解決を迎える。しかし、笹垣刑事にはどうしても腑に落ちず、以来長い間この事件を追っていくことになった。
数年後、遠縁の唐沢家の養女となった雪穂は美しく聡明な少女に成長していた。亮司はあやしげな商売に手を染めながら自活し、20歳年上の薬剤師典子と出会って一緒に暮らすようになる。2人の周辺には不可解な事件が影のようにつきまとっていた。昇進も棒に振った笹垣刑事の愚直な捜査は、次第に過去の事件の真相へと近づいていく。
850ページにも及ぶ東野圭吾氏の原作をどのように映像化したのか、興味津々で観ました。深い闇を抱えた雪穂と亮司の2人を好演した若い堀北真希、高良健吾は撮影がほんとに大変だったようすです。西本雪穂は少女時代の過酷な経験から、心のスイッチを切ってしまい高みだけを目指して生きたのでしょう。わかることはなくとも「ただ見た人の心に残ってほしい」、という堀北真希の言葉が率直です。 『ハリヨの夏』のまぶしい白いシャツ姿の高校生役から注目していた高良健吾。このところいろいろな作品へ出ずっぱりです。この人はどんな汚れ役をやっても「君が悪いんじゃないよ」といいたくなる透明感があります。繊細な表情が印象に残りました。また笹垣刑事の捜査への執念だけでなく、わが子を亡くした後、亮司によせる慈愛の情を見せた船越英一郎の演技がこの辛い物語に温かみを添えていました。(白)
2010年/日本/カラー/110分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:ギャガ
(C)2011 映画「白夜行」製作委員会
公式 HP >> http://byakuyako.gaga.ne.jp/
>> 特別記事 『白夜行』完成披露試写会 舞台挨拶レポート
監督・脚本:カン・テギュ
出演:キム・ユンジン、ナ・ムニ、カン・イェウォン、チョン・スヨン、パク・ジョンミョン、イ・ダヒ、チャン・ヨンナム
韓国・清州女子刑務所。妊娠中に暴力を受けて偶発的に夫を殺してしまったジョンへは刑務所内で男の子ミヌを出産する。韓国の法律で1歳半までは自分で子育てすることを許されているが、その後は手放さなければならない。ミヌの1歳の誕生日、同室の元音大教師で死刑囚のムノク、元クラブ歌手のファジャ、元プロレスラーのヨンシルたちとバースデーケーキを用意して賑やかに誕生日パーティーを開く。お誕生日の唄を歌おうとするジョンヘに、音痴なのを知っている皆はあわてて止めたりして陽気に過ごすが、皆それぞれ収監されている身、心の傷を抱えている。そんなある日、慰問に来た合唱団の歌声を聴いたジョンへは感動し、自分達も歌ってみたいと刑務所内に合唱団を作る許可を願い出る。在監者の更正の一助になればと合唱団結成を認める所長。それも、半年後に結果を出せば外泊を許可するという条件付きだ。元音楽教師ムノクを中心に週数回の練習を行い、半年後、刑務所内でコンサートを開くジョンへたち。約束通り外泊を許されるジョンヘだが、それは1歳半になった息子ミヌとの別れる前の最後のひと時だった・・・
本作を撮るにあたって、実際に女子刑務所に収監された女性たちに話を聴いた監督は、多くの人たちが男性から何かされて、突発的に極端な行動をとったために重い罪になり、死刑囚もいれば長期囚もいるということを知ったという。そういう事情も盛り込んで作った本作は、母性に目覚める女性、ドメスティック・バイオレンス、死刑制度、収監された人と家族の関係など様々な問題を描きながら、暗くならず心を和ませてくれる作品。そうはいっても、現実は厳しい。収監されたという事実は一生付きまとう。「韓国で300万人が号泣し喝采を贈った感動の物語」には違いないのだけれど、実際に収監された人たちのことを思うと複雑な思いも残ります。
それはさておき、本作の出演者の中で今回注目したのは、死刑囚の元音楽教師ムノクを演じたナ・ムニさん。今、観ているKBSチャンネルのドラマ「噂のチル姫」と「風吹く良き日」の2作品におばあさん役として出演していて、どちらもちょっとタイプは違うけれど、ガァガァ怒鳴って、まくし立てる役柄。この作品では落ち着いていて、さすが元音大教師という雰囲気を出しています。経歴を調べてみたら、これまで観た映画にも数多く出演されていました。また、死刑囚の母親になかなか心を開かない娘を演じているチ・ソンウォンさんは、ドラマ「イ・サン」で側室を演じていた時に、ちょっと冷たい感じでちょっと注目していた新進の女優さん。本作に続き『ビー・デビル』でも、冷たい女を好演しています。(もちろん本人はいたって暖かい方だそう)(咲)
2010年/韓国/カラー/1.85/SRD/115分
配給:CJ Entertainment Japan
◆シネマジャーナル80号に、昨年10月コリアンシネマウィークで上映されるのに合せて来日したカン・テギュ監督にインタビューした記事を掲載しています。
公式 HP >> http://www.harmony-movie.com/
監督:長崎俊一、石井聡一、江藤尚志、川西純、中西尚人、水落豊
主題歌:JUJU「願い」
出演:大森南朋、松嶋菜々子、中尾彬、内野聖陽、高畑淳子、北乃きい ほか
「あきら!」「愛犬家をたずねて。」「DOG NAP」「お母さんは心配症」「犬の名前」「バニラのかけら」と題した5本のオムニバス作品。笑ったり怒ったり、心配したり、犬と暮らしたことのある人なら共感できるエピソードを積み重ねた幕の内弁当のような味わいです。
2005年の『いぬのえいが』に続く犬にまつわる小さな物語を集めた第2弾。豪華な俳優陣に、芸達者な可愛い犬たちもいっぱい。犬と自分の思い出がある人は、タイトルのようにどれかに自分が重ねられるでしょう。愛犬を亡くした経験のある方は、ハンカチを用意のうえご覧ください。
大森南朋、松嶋菜々子の夫婦と愛犬ラッキーの暮らしをつづった「犬の名前」に少年時代の大森の役で、『誘拐ラプソディー』の林遼威くんが出演していました。久しぶりにスクリーンに復帰した松嶋が、必死で夫を支えるけなげな妻を演じ、こんな状況に陥ったら自分ならどうするかと考えさせられました。介護するほうではなく、「若年」なしの「アルツハイマー」が心配な筆者です。(白)
2010年/日本/カラー/1時間28分/ビスタサイズ/ドルビーデジタル
配給:アスミック・エース
(C)2010「犬とあなたの物語」製作委員会
公式 HP >> http://inu-eiga.com/
監督:ウィルソン・イップ
アクション監督:サモ・ハン・キンポー
脚本:エドモンド・ウォン
撮影:プーン・ハンサン
音楽:川井憲次
出演:ドニー・イェン(イップ)、サモ・ハン・キンポー(ホン)、ホァン・シャオミン(ウォン)、リン・ホン、ルイス・ファン、ダーレン・シャラヴィ、ケント・チェン、サイモン・ヤムほか
1950年、広東省佛山から香港に移住してきたイップは詠春拳を教える武館を開く。血気盛んなウォンが訪れ、イップの腕に感嘆した彼は友人たちを引き連れて入門し、ようやく弟子がそろった。ただし武館を開く前に掟に従うよう、洪拳の師範ホンに告げられ、イップは武術界の先輩たちと戦うことになった。一方、日中戦争時代に命がけで助力を惜しまなかった親友に出会ったイップは、変わり果てた姿に心を痛め、彼の保護を約束し、息子の仕事を紹介する。
同じウィルソン・イップ監督による『SPL/狼よ静かに死ね』(2005年)以来のドニー・イェン、サモ・ハン・キンポーの競演です。サモ・ハン御大はジャッキー・チェンとともに数10年前からの作品で見ていますが、ドニー・イェンを知ったのは『ワンス・アポン・ア・タイム/天地大乱』(1992年)でした。その華麗なアクションに「だ、誰この人!」と驚愕したものです。『SPL/狼よ静かに死ね』の記者会見で来日したとき、お二人そろったところを拝見し、思わずミーハーに戻って感激しました!!それはともかく、この作品中2人のアクション対決は必見です。互いに敬意をはらい、友情に発展していくところにぐっときます。イギリス人ボクサーとの中国武術の誇りをかけての戦いは、何度見てもハラハラし手に汗を握りました。
昨年の東京国際映画祭で、この作品の前の物語である『イップ・マン 序章』(2008年)とともに上映されましたが、ブル-ス・リー(生誕70周年)の師匠になるエピソードが入った後発のこちらが先に公開となりました。5000人以上の動員によって序章の公開が決まるそうです。ぜひヒットして上映が実現しますように。(白)
2010年/香港/カラー/109分/シネマスコープ/ドルビーSRD
配給:フェイス・トゥ・フェイス/リベロ
(C)2010 Mandarin Films Limited. All Rights Reserved
公式 HP >> http://www.ip-man-movie.com/
監督、脚本:ジェフ・ラウ
撮影:エドモンド・フォン
編集:アンジー・ラム
美術:ビル・ルイ
武術監督:リチャード・ユン
出演:アレックス・フォン(K1)、フー・ジュン(タイチョン)、スン・リー(ムイ)、カン・ウェイ(ソウチン)、ロナルド・チェン(コン先生)、ウー・ジン(K88)、エリック・ツァン(ラム主任)、ロー・カーイン(インミン)
西暦2046年、中国・黒江省の小さな村の警察署長タイチョンは、政府の科学センター・ラム主任に見込まれ、極秘開発されたサイボーグ警官K1を預かることになる。女性警官ムイは彼に胸をときめかせるが、昔から彼女を想っていたタイチョンはそれがおもしろくない。そんなある日、K1の前に、彼と同様に開発されながら自己の意識に目覚めセンターを逃走した新型サイボーグ・K88が現れる。トランスフォームして巨大ロボットと化した2人は死闘を繰り広げるが、タイチョンが殺されてしまう。K1はタイチョンの死を隠すために彼をロボット化してしまうが、それによってまた事件が起こる。
香港映画といえば、アクション、コメディ、カンフー、キョンシー・・・それにSF、ロボット、ラブロマンスが、CGの特殊効果とうまく融合してつくられたエンターテインメント作品です。随所に織り込まれる視覚的笑いが、いい意味で香港B級感が漂います。そしてハリウッドに負けていないといわんばかりの『トランスフォーマー』ばりのCGには本当に驚きました。やるな~香港映画!そして人間の感情を持たないはずのロボットK1の愛の告白は、脚本も担当したジェフ・ラウ監督に拍手したいほど、とっても素敵なセリフで泣けます。ラストのCGにも涙。キュンキュンしますよ!(裕)
2009年東京国際映画祭正式出品作品
2009年/中国・香港/103分/シネスコ/広東語/ドルビー
©2010 National Arts Films Production Limited.
配給:竹書房
★1月22日(土)よりシアターN渋谷ほか全国順次公開!
監督・脚本:クラウス・ハロ
出演:カーリナ・ハザード(レイラ)、ヘイッキ・ノウシアイネン(ヤコブ牧師)、ユッカ・ケイノネン(郵便配達人)ほか
1970年代のフィンランド。レイラは模範囚として恩赦を得、刑務所を出ることになった。12年間服役し、帰る家さえない彼女に所長は牧師館での仕事を紹介する。古ぼけた館に一人住む盲目のヤコブ牧師は、レイラを暖かく歓迎するが、頑なな彼女はろくに言葉も交わさない。仕事は、牧師のもとに届く手紙を読んで聞かせ、悩める人々への返事を書くことだった。毎日手紙を届ける郵便配達人はレイラにあからさまに不審な目を向け、二人は険悪な状態になる。将来に何の希望もなく、いやいや仕事をするレイラはこっそり手紙を捨て、何食わぬ顔ですごしていた。そしてある日から手紙が届かなくなり、ヤコブ牧師はすっかり気落ちしてしまう。
フィンランドの映画といえばアキ・カウリスマキ監督と、ヘルシンキが舞台だった『かもめ食堂』しか思い浮かびませんでした。2009年、2010年と映画祭が開かれていたんですね。製作本数も少なく、日本に紹介されることもまれですが、2010年の映画祭で紹介されたうちから2本の公開が決まりました。本作がそのうちの1本で、アカデミー映画賞の外国映画部門のフィンランド代表でした。
登場人物はほとんど3人。人里離れた教会と牧師館のたたずまい、ヤコブ牧師の清貧な暮らしと人柄にまず胸をうたれます。レイラがどんな罪で服役していたのかは、なかなか明らかにされません。75分と短い中で少ない台詞と、確かな俳優の演技でドラマが生まれ、試写室はしだいに鼻をすする音が増えていきました。私もすっかり泣けてしまい、かけなくてもいいメガネをかけて外へ出ました。心洗われるという言葉がぴったりの作品です。(白)
2009年/フィンランド/カラー/75分/シネマスコープサイズ/
配給:アルシネテラン
公式 HP >> http://www.alcine-terran.com/tegami/
監督:チャオ・イエ(趙曄)
出演:リー・ジーチョン、リュウ・ユアンシェン
ジャライノールは内モンゴル自治区満州里にある、炭鉱の町。露天掘りの石炭を運ぶ鉄道機関士の朱老(ジュー・ヨウシアン)と、その後輩で警手の李治中(リー・ジーチョン)は、親子ほど年が離れているが、いつも一緒に仕事をしてきて仲が良い。長く勤めた朱老の定年の時期がせまり、ロシア国境の近くに住む娘夫婦のもとへ行くことになった。朱老は愛用の自転車を治中に残し別れを告げるが、離れがたい治中は見送りにとついていく。
蒸気機関車が現役で走る広大な景色が圧巻です。鉄道ファン必見。動いている映像も切り取られた1シーンも美しく、シンガポール映画祭で撮影賞を獲得した作品というのに納得です。主演の2人は監督の知人で全くの素人、炭鉱で働く人々の協力を得たそうで、まるでドキュメンタリーのような味わい。監督は「演技指導はしない」とのことですが、2人の間に通う素朴な情愛が伝わってきました。(白)
吐く息が白く、ぴーんと張り詰めた空気が伝わってくる。蒸気機関車の機関士席に座るジューたちのシルエットが美しい。まだ蒸気機関車が健在な場所があるのだと驚いたら、中国でもここが最後の聖地。2010年に蒸気機関車が廃止されると知った監督が、その姿を映像に残したくて、この物語を撮ったのだという。鉄ちゃんの友達に教えなくては・・・と思ったら、当然、もう知ってました。実は私も乗り鉄。のんびり列車に乗って旅に出たくなりました。
それにしても別れはつらいもの。見送りにいって、別れられなくていつまでも付いていきたくなる気持ちはわかるけど、あそこまで見送るか・・・ (咲)
2008年/中国/カラー/92分/HD/
配給:シネマトリックス
『ジャライノール』の公開を記念して、毎年、ポレポレ東中野にて開催している<中国インディペンデント映画祭>より反響の大きかった作品を上映!!
『ジャライノール』チャオ・イエ監督のデビュー作『馬烏甲(マー・ウージャ)』と特別プレミア上映する最新作『光男の栗』をはじめ中国の今を感じる必見の全7作品! 詳細はポレポレ東中野HP(http://www.mmjp.or.jp/pole2/)まで。
公式 HP >> http://cinematrix.jp/jalainur/
監督:星譲
脚本:半澤律子
原作:眉村卓「妻に捧げた1778話」新潮新書、他
撮影:浅野仙夫
編集:河村慎二
音楽:本間勇輔
照明:三上日出志
出演:草彅剛(牧村朔太郎)、竹内結子(妻・節子)、谷原章介(朔太郎の友人・滝沢)、吉瀬美智子(滝沢の妻・美奈)大杉漣(医師)、風吹ジュン(節子の母)
作家眉村卓氏と癌でお亡くなりなった妻悦子さんの実話。亡くなるまでの五年間を「人は笑うと免疫力が上がる」という医師の言葉を信じて、一日一編の短編小説を毎日欠かさず妻に送り続けた…。
ストーリーを読んだだけで、泣けそうになってしまったが、お涙頂戴作品ではない。優しい草彅剛扮する夫に、これだけ愛されたら妻としては本望だと思う。妻が亡くなったあと、夫は一人ぼっちになるが、なんだかホッとしている雰囲気もあって、かえって救われた気持ちになった。短編小説の内容が着ぐるみの人形や、手作りのロボットで表現されていて楽しめたし、病院内部の照明のあて方が、とても優しい気持ちにさせてくれた。(美)
2010年/日本/カラー/ドルビーSR/ビスタビジョン/139分
配給:東宝
★1月15日 全国東宝系にてロードショー
公式 HP >> http://www.bokutsuma.jp/
監督:アン・リー
脚本:ジェームス・シェイマス
原作:エリオット・タイバー、トム・モンテ、「ウッドストックがやってくる」河出書房新社
製作総指揮:ジェームス・シェイマス、他
製作:マイケル・ハウスマン
撮影:エリック・ゴーティエ
編集:ティム・スクワイアズ
音楽:ダニー・エルフマン
衣装:ジョセフ・G・アウリシ
出演:ディミトリー・マーティン(エリオット・タイチバーグ)、ダン・フォグラー(デヴォン)、ヘンリー・グッドマン(ジェイク・タイチバーグ)ジョナサン・グロフ(マイケル・ラング)、ユージン・レヴィ(マックス・ヤスガー) 、ジェフリー・ディーン・モーガン(ダン)、イメルダ・スタウントン(ソニア・タイチバーグ)
1969年、インテリア・デザイナーとして働いていたエリオットは、ニューヨーク州のホワイトレイクで、 年老いた両親のモーテル“エル・モナコ”の経営危機を脱するために奔走していた。ある日、近くの町で予定されていた野外音楽祭が、キャンセルされて困っているのを知ったエリオットは、 町の活性化に繋がるとウッドストックのプロデューサーに電話をかけた。
『ブロークバック・マウンテン』の監督さんが、ウッドストック40周年を記念して作った作品。頼りない青年が、この世界最大級の催し物をしていく過程で、成長していく姿がとても清々しい。それに、主人公の一家はユダヤ系移民の家族。この父母がユニークだ。強欲だが憎めないお母さんは『ヴェラ・ドレイク』で堕胎をする役の女優さんだ。エリオットの親友・ビリーに『MILK』の青年。女装趣味の元海兵隊のヴィルマに『僕の大事なコレクション』のリーヴ・シュレイバー監督。思い出深い役者さんたちが3人も!もう一度観たい! 牧場を借り切って音楽祭を敢行するが、この田舎町に50万人が押し寄せてしまう。例えば、この町が5000人の人口とすると100倍だ。私一人住まいの4LDKに<100人よんで映画会する>を想像してみた・・・。朝、昼、夕方、晩で分けて、1回で20人かぁ、(やれるかもな)。トイレは下車した地下鉄で用をたしてくださいと前もって警告(でも一度はいくからトイレを掃除しなきゃ)。 飲み物持参でゴミは持ち帰る・・・なんていろいろ空想してしまった。(美)
2009年/アメリカ/カラー/121分/ドルビーデジタル/ビスタ
公式 HP >> http://ddp-movie.jp/woodstock/
監督:トニー・スコット
脚本:マーク・ボンバック
製作:ミミ・ロジャース他
撮影:ベン・セレシン
音楽:ハリー・グレッグソン・ウィリアムズ
出演:デンゼル・ワシントン(フランク)、クリス・パイン(ウィル)
映画概要紹介ペンシルバニア州の操車場で整備員のミスにより、全長800Mの無人貨物列車が突然暴走を始める。 化学物質を大量に積んだまま暴走する列車を、ベテラン機関士と新米車掌が命がけで、引き起こしかねない大惨事を命懸けで止めようとするが・・・。
人々を未曾有の恐怖に陥れる戦慄のサスペンス・アクション。興奮した!
2001年にアメリカの北東部で実際に起こった事故をもとにつくられた作品。
だんだんと切迫する状況を、CG利用を最小限にした圧倒的な臨場感はすごい!
だが、最後の最後で、すべて丸くおさまりすぎの感があり残念。
終わり方は『サブウェイ123 激突』の方よかった。
公開が1月7日だから、正月気分を仕事モードに変えるにはもってこいの作品。(美)
2010年/アメリカ/カラー/99分
配給:20世紀フォックス映画
★2011年1月7日 TOHOシネマズ有楽座他全国ロードショー
監督・脚本・脚色 : フランソワ・オゾン
出演 : カトリーヌ・ドヌーヴ、 ジェラール・ドパルデュー、 ファブリス・ルキーニ、 カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ 、ジェレミー・レニエ
結婚30年になるスザンヌは、家事も仕事もしなくていいブルジョワ主婦。ジョギングや趣味のポエム作りで時間をつぶす日々。娘からは、「ママみたいなお飾りの妻になりたくない」と言われている。そんなある日、夫ロベールが経営する雨傘工場で従業員たちがストライキを起こす。社長室に監禁されたロベールは、ショックで倒れてしまい、成り行きで経営経験のないスザンヌが工場を運営することに。労働組合の要求を断固拒否したロベールと違って、創業者の娘でもあるスザンヌは古くからの従業員の気持ちも汲んで改善を図る。そして主婦目線で斬新なアイディアをどんどん出し、雨傘の売れ行きも伸びていく。思いもかけない自分の経営手腕を見出して生き生きと毎日をおくっているところに、夫が退院してくる・・・。
原題のPOTICH(ポティッシュ)は、棚や暖炉の上に飾られる贅沢で豪華だけど実用性のない花瓶や壷のこと。転じて、美しいが夫の陰に隠れ、自分を持たない女性に対して軽蔑的に用いられる言葉だという。本作は、社会の中に自分の居場所を探す女性を描きたいと考えていたフランソワ・オゾン監督が、1970年代を背景にした演劇「ポティッシュ」を映画化したもの。
「どうせ女性には何もできない」と思っている夫をギャフンと言わす妻を、カトリーヌ・ドヌーヴが素敵に演じています。冒頭、ドヌーヴが赤い上下のジャージで頭にカーラーを巻いたままの姿でジョギングする姿に、笑える予感。でも、単なるコメディーではない、旧態依然とした男どもを笑い飛ばす女性賛歌の映画。スカッと気持ちいい。(咲)
2010年/フランス/カラー/ビスタ/ドルビーSR、ドルビーデジタル/103分
配給:ギャガ
公式 HP >> http://amagasa.gaga.ne.jp/