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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『チョコレート・ファイター』
プラッチャヤー・ピンゲーオ監督&阿部寛さんインタビュー

プラッチャヤー・ピンゲーオ監督、阿部寛

5月23日(土)より、新宿ピカデリーほか 全国順次公開されている『チョコレート・ファイター』。『マッハ!』のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督が仕掛ける美少女生傷アクション・ムービーです。公開に先立ち監督が来日し、主人公の父親役を演じた阿部寛さんと共に合同インタビューに答えて下さいました。激しいアクション映画を撮る監督ですが、素顔はいたって物静か。日本のアキハバラが大好きで、黙々と物作りをしていれば幸せといった方でした。この日も、阿部寛さんが前のインタビューの時間が延びて少し待っていたのですが、その間、部屋の隅っこで購入したばかりのものをごそごそと組み立てていました。

この作品が生まれたのは

プラッチャヤー・ピンゲーオ

監督: 女性を主人公にし、小柄な女性が大きな男性をバタバタとやっつけていく作品を作りたかったのです。リアリティを出すために、天才的な能力を発揮する自閉症の少女というアイディアを考え付きました。
 先の2本の映画を世界に紹介した後、アクションとドラマのバランスなど、辛口のコメントをいただいたんです。そこでこの作品では、よく知られている病気、親子の問題といったテーマを結びつけました。
 主人公はアクションに至るまでに、どこかで悔しさを味わっています。抑えつけているその悔しさを発散する形で相手と戦う。そこで観客の共感を得られるわけです。観客に参加してもらうため、そこまで引っ張っていく筋立ては必要なのです。

父親を日本人としたのは?

監督: これは私が日本好きだったから。それが1つ。2つ目はジージャーの顔が、タイ人からは日本人っぽく見えるので、父親が日本人でヤクザということにしたのです。人を介して阿部さんにOKの返事をもらったときは本当に大喜びしました。こんな大物の俳優さんに出演してもらうことになって、この映画は絶対失敗できないと一層気を引き締めました。

アクション映画の最前線で

阿部寛

阿部: はじめはきっちりした台本がまだなかったので、どこまでアクションをやるかわからなかったんです。Ⅴシネで刀を使ったことがありますが、自分ではそんなにできる方ではないと思っていました。
 現場で俳優たちがステージを作り、建物をダンボールなどで再現してアクションの練習をしているところを見ましたが、やっぱり凄い! 日本だったらあそこまでやりません。たとえば日本では1日で撮るところを1週間かけるんですね。妥協がないんです。目が醒める思いをしました。
 僕のアクション場面は、時代劇でなくヤクザの刀ですから、芝居を入れながらアレンジしました。日本語のできるディレクターが間に入ってくれましたし、監督に細かく指示していただいて相談しながらやりました。撮影期間はタイで20日、日本で7日くらい。すごくやりやすい環境を作っていただきました。監督はじめみなさんフレンドリーで、僕のいろんな意見も取り入れてくださったので感謝しています。

怪我について

監督: 保険や保障はあります。契約の中で生命保険をかけることになっていますから。今回2、3日~1週間の入院という怪我人はありました。
 実は、大事な阿部さんにも怪我をさせてしまったんです。相手のパンチが3テイクとも当たって、顔が腫れ上がってしまいました。その日はもう撮影ができないほどで、私は翌日阿部さんに会うまで心配で心配で。日本のスターをこんな目に遭わせてしまって、私は日本に攻め込まれるんじゃないかと思いました。幸い翌日腫れはひいて大分直っていましたが、阿部さんは文句一つ言わず、撮影を続けられたんです。ほんとに感謝、感動しました。
 他にもう1つ阿部さんに感動したことがあります。阿部さんの殺陣のシーンは、私がすでに組み立てて、見本のビデオを撮ってありました。殺陣はスタントがやって阿部さんの顔を編集で入れて、うまくできると思っていたんです。ところが阿部さんは全部自分で演じて、スタントの部分は一切使いませんでした。期待以上のいい殺陣になりました。

裏話

監督: 大阪でこの映画をご披露したとき、この殺陣の件のほか、「阿部さんをどうやって脱がせたのですか?」という質問がありました(一同笑)。私は阿部さんが今まで脱いだことがあるのかどうか知らなかったのです。

阿部: Vシネでやったことありますよ(笑)。

監督: 映画で使うのは後ろ姿、お尻のほうです。前のほうは自分で責任持って下さいといったんです。(阿部さん笑)そしたらなんかテープで貼っていました。阿部さんから脱ぐのは困るとも言われなかったので、説得に苦労したことはありません。

阿部: 台本にそう書いてありましたし。

監督: ただ、阿部さんの相手役のソムが歌手なので、本当の俳優さんほどのスピリットがなくて、服を脱ぐとかベッドシーンとかはできないと言ったんです。それでスタントの女性にして編集しました。

阿部: そんなこと言っていいんですか(笑)。ソムの彼氏が現場に来ていて、奥のほうでこんな顔(睨む)していたらしいんです。「彼氏が来ているのでごめんなさい。いなきゃできたんだけど」と後で謝られました。

監督: そうそうそう(笑)。

5月23日(土)より、新宿ピカデリーほか 全国順次公開

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(まとめ:白石 写真:梅木)

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