アフリカンドラマーとしてステージに立つタケオこと新倉壮朗(にいくらたけお)さんのドキュメンタリー完成披露上映会はアットホームな雰囲気の中始まりました。
長い間、アフリカンドラムを叩く人の憧れの地、西アフリカに行きたいと思っていたタケオさんですが、ダウン症である彼にとって遠方への旅行はかなりなリスクを伴うものであったため、旅先の姿を残しておきたいという家族の願いからこの作品が生まれたといいます。
幼少期からの彼の姿を家族が撮り溜めた映像と、常田高志監督が同行し密着した旅先、セネガルの日々で構成されるスクリーンからほとばしり出てくるのはタケオさんのリズム、そして通奏低音のように全体に流れているのが彼を取り巻く人々の優しさでした。
家族はタケオさんに何にも縛られずやりたいことをさせようと彼を解き放ちます。小さい時から音楽、とりわけリズムに対して鋭敏な才能を見せた彼が気に入ったのがアフリカンドラムでした。
人一倍努力家でもあった彼がアフリカンドラムをマスターするのにそう長い時間はかからなかったようで、そんな彼の上達の裏にはワークショップの先生アローナ・ンジャエ・ローズさんの大きな存在がありました。
旅先でタケオさんが具間見せる素顔は多くの人を魅了し、セネガルの首都ダカールではアローナさんの父でセネガル初の間国宝となったサバール(セネガルの太鼓)の名手ドゥドゥ・ンジャエ・ローズさんとの再会も果たします。
この日、上映後にセネガルでのワークショップを主催したドゥドゥさんのもう一人の息子ワガンさんとタケオさんとのサバール演奏が行われました。多分、この日会場に来ていた多くの人はサバールの音を初めて聴いたかもしれません。その硬質な音に度肝を抜かれたように最初はぎこちなかった会場の雰囲気でしたが、次第に熱気を帯び、いつの間にか最後には全員が立ち上がっていました。
音楽ドキュメンタリーを観た後でその人の演奏を生で聴くという体験はなかなかあるものではなく、今回の上映はとても貴重な体験となりました。