2月27日 ポレポレ東中野にて
2月27日から、ポレポレ東中野にて「真!韓国映画祭」が開催されました。遅ればせながら、オープニングイベントと、その後上映された『飛べ、ペンギン』のQ&Aの模様をレポートします。
「真!韓国映画祭」は、1980年代から韓国映画を上映している名古屋のミニシアター「シネマスコーレ」、西村嘉夫さんが代表を務める「シネマコリア」(1990年代から未公開の韓国映画を紹介してきました)、2008年から新しく多様な作品の製作・配給を始めた韓国の映画会社「キノアイ」の三者が、韓国の“今”を伝える韓国映画4本を「真!韓国映画祭」という映画祭形式で共同配給しています。
去年末、名古屋から始まり、この2月から3月にかけて東京での上映がありました。
今回上映された『飛べ、ペンギン』『ビバ!ラブ』『空を歩く少年』『今、このままがいい』は“家族”をテーマにした作品です。
古くて新しいテーマ“家族”。そこから垣間見えるリアルな“韓国の姿”と“新しい家族の形”を感じてください。「早期教育」「熟年離婚」「希薄化する家族関係」…。今、韓国が抱える様々な問題を痛烈に突き付けながら、そこから軽やかに自由になる主人公たちの姿を、斬新で作品性豊かに描く珠玉の映画たち。「真!韓国映画祭」では、そんな気鋭の映像作家を選りすぐった最新作を一挙公開いたします。
「真!韓国映画祭」HPでは、このように書かれています。
http://cinemakorea.org/rkcf/theater.html
オープニングイベントには、上映4作品の監督やプロデューサー、また『飛べ、ペンギン』に主演しているチェ・ギュファンさんが参加しました。2/27(土)『飛べ、ペンギン』上映前に行われたオープニング舞台挨拶の写真です。
現在、4/3(土)~/4/30(金)まで、大阪の第七藝術劇場で上映中で、今後、夏に京都シネマで公開予定です。また順次、全国開催予定だそうです。これから上映される地方の方、ぜひ観に行ってみてください。
オープニングの舞台挨拶後上映された『飛べ、ペンギン』の上映後、ゲストが登壇し、Q&Aが行われました。その模様をレポートします。
Q:韓国の人権委員会からの依頼で作った作品だそうですが、7本目の作品とのこと。今までの作品は何人かの監督がオムニバスで作っていましたが、今回イム・スルレ監督一人で作った理由は?
イム・スルレ監督:予算が少なかった(笑)。今まで40人くらいの監督が関わっているのですが、人権委員会は、私が断れない性格だということを知っていて依頼をしてきたと思います(笑)。
Q:国家人権委員会からの注文は?
イム・スルレ監督:今までの作品は暗かったり深刻だったので、観る人が少なくなっていました。それで、今回は明るいタッチでという希望がありました。
Q:市役所を舞台に、そこに働く人びとのことを描いた作品で、シナリオが素晴らしかった。誰が考えたのですか?
イム・スルレ監督:シナリオは私です。韓国は人権映画を作りやすい、それだけ不条理が多いということだけど、どのテーマにしようと思い、インターネットから話題を拾った。インターネットのサイトにハンドルネームを使って入り、いろいろ話題を集めました。
Q:チェ・ギュファンさんにお聞きします。イム・スルレ監督の演出はいかがでしたか? イム・スルレ監督のことは前から知っていたのですか?
チェ・ギュファン:イム・スルレ監督の長編デビュー作『三人友達』を学生時代に観て、いつかイム・スルレ監督の作品に出たいと思っていたら、この映画でチャンスがめぐってきました。俳優が演じるときに大変なのは何か。監督が何を表したいかがわからないこと。監督の言い方を理解したときが演じやすいと思います。イム・スルレ監督は、一見怖そうに見えるけど、実際は気さくな人で、俳優が演技をしやすい雰囲気を作ってくれたり、何が言いたいかもよくわかる監督です。
僕はこの作品ではベジタリアンでお酒も飲めないという役柄ですが、ほんとうは、肉も食べるし、お酒も好きです。今回、食べるシーンも多く、おいしくいただきながら楽しく演じました。
Q:プロデューサーにお聞きします。作品を日本で上映するにあたっての気持ち、映画製作費用、撮影期間、キャスティングなどについてお聞きします。
プロデューサー:日本の人がどのように観てくれるか心配でした。韓国の観客と同じように笑って観てくれたので一安心です。この作品は、今回の作品の中で一番低予算の映画ですが、ほんとはもっと安い予算の予定でした(笑)。製作委員会、監督、俳優たちが寄付する形で作った作品です。撮影期間は1ヶ月くらい。
4つのエピソードがありましたが、最後の老夫婦を演じた俳優さんたちは、韓国の大俳優で、今まで30年間映画にかかわってきた人たちです。こういう素晴らしい映画が公開されないのは残念と言って出演してくれました。映画の趣旨を俳優さんたちに説明し、受け入れてもらい、有名な俳優さんも受け入れてくれました。
Q:韓国のありのままの姿を見て、うれしいと同時に痛い、悲しい気持ちにもなる。社会の制度、システムのあり方に迫った作品でした。社会が変わっていってほしいという内容のある、愛のある映画でした。
イム・スルレ監督:『三人友達』(1996年)、『ワイキキ・ブラザーズ』(2001年)の頃に較べると、『もし、あなたなら~6つの視線』(『飛べ、ペンギン』と同じく人権映画)の一編『彼女の重さ』(2003年)あたりから明るく撮るようになりました。年を経て自分の視点も変わり、制度やシステムよりも人びとの特性や心を撮るようになったと思います。この作品では、直接的に語るより、ユーモアと笑いを描き、「こういうことを考えなくちゃね」と、思ってくれたらいいという風に描きました。
Q:上司が昼食や飲みに行くのに部下を誘うのは、人権侵害として描いたのですか? それとも、日常生活の一部として描いたのですか?
イム・スルレ監督:これは日常のできごととして描きました。韓国では職場の人全員で昼食を食べに行き、職場の連帯をはかるのが普通です。今日、実はインタビューを何件か受けたのですが、みなさん、昼休みに職場の人全員で食事に行くのは韓国ではよくあることか聞かれました。よほど、ものめずらしかったようです(笑)。さっき、インターネットで話題を集めたと言いましたが、その中で、韓国で働いていたという日本人から、このお昼休みに職場全員で食事に行かねばならないということが苦痛だったという投稿がありました。韓国と日本、似ているところもありますが、こういうところが全然違いますね。とはいえ、韓国も変わってきて、若い人の中にはこういう習慣に従わない人も出てきています。
Q:社会問題に対する関心、こういう映画を撮り続けるモチベーションとは?
イム・スルレ監督:韓国社会は、機会均等ではありません。学歴社会です。大学を出ていないということで差別することはよくないというのは常々思っています。これからも社会の弱者を考え、彼らのことを描いていきたいと思います。