2009年2月18日(木)18:30~
於 韓国文化院ハンマダンホール
ポレポレ東中野で2月27日から始まった「真!韓国映画祭 in Tokyo」を前に、上映作品4本のうちの1本の『飛べ、ペンギン』に出演したチェ・ギュファンさんを招いて、特別試写会が開かれました。
司会は、主催者の一人であるシネマコリア代表の西村嘉夫氏。まず、「真!韓国映画祭」を今年から始められた動機を簡単に述べられました。
西村:私ども「シネマコリア」は映画祭を開催している団体なのですが、この度、韓国の映画会社「キノアイ」さん、名古屋のミニシアター「シネマスコーレ」さんと3社で、4本の映画を配給して「真!韓国映画祭」を開催することになりました。韓国では、年間100本前後の映画が製作されています。ですが、日本では、ドラマに出て有名な俳優や、国際的に有名な監督の作品しか公開されていない状態です。知られていないけれど有望な俳優や監督の映画で面白いものがたくさんあります。そのような作品を集めて紹介したいと、映画祭を開催することになりました。本日上映する『飛べ、ペンギン』は、4つのエピソードから成る作品ですが、2番目の主人公であるチェ・ギュファンさんに今日はお越しいただきました。
西村さんに紹介されて、チェ・ギュファンさんが登壇します。背が高い!
西村:まずは日本の観客の皆さんにご挨拶を!
ギュファン:皆さん、お会いできて嬉しいです。『飛べ、ペンギン』に出演しているチェ・ギュファンです。今、僕は大阪に住みながら日本語を勉強しているので、まだ上手じゃないですが、日本語でご挨拶します。(おぉ~流暢な日本語! 会場から拍手が沸きます。この後も日本語で長い挨拶が続きました。)今からご覧いただく『飛べ、ペンギン』にはたくさんの俳優が出ていますが、僕たち皆、撮影中には、日本で上映されるとは思ってもいませんでした。日本の皆さんがこのように関心を持っていることを知れば、今日来られなかった他の出演者も喜ぶと思います。出演者を代表して今日いらした皆様に感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。今日お越しの皆さま方には、『飛べ、ペンギン』というタイトルを見て、ペンギンが出てくるアニメだと思った方もいるかもしれませんが、アニメでもないし、残念ながらペンギンも一度も出てきません。だったらなぜ『飛べ、ペンギン』にしたのでしょうか? その答を考えながら映画をご覧になれば、もっと面白いと思います。この映画は、とても素朴な映画です。有名な俳優が出ている訳でも、派手なストーリー展開がある訳でもありませんが、地味でも心温まる面白さと感動があると思います。この映画は現代の韓国人の生活をリアルに描いた作品です。日本に似ているところも、そうでないところもあると思いますが、きっと共感していただけると思います。なぜなら、人間なら誰もが持っている権利、人権の話だからです。自分の人権が大事なら、他の人の人権も大事ではないでしょうか。私、そして貴方、さらに皆が一緒に生きていくということを考えてみませんか? と、この映画は言っています。面白いかも、つまらないかもしれませんが、最後まで楽にご覧になって下さい。下手な日本語でしたが、大丈夫でしたか? 最後まで聞いて下さってありがとうございます。
(会場から大きな拍手が途中で何度も起こりました。一生懸命日本語で語ってくださったので、ほぼ全てを私も一生懸命聴き取って、ここに掲載しました。)
西村:今回、ずっとメールでギュファンさんと韓国語でやりとりしていました。ですので、日本にいらっしゃるのに、あまり日本語が出来ないのかなと思って、東京駅で新幹線を待っている時にも、ハングルで話しかけた方がいいのかなと思っていたのですが、お会いしてみたら、わ~っと日本語で話しかけられてしまって、ほんと、びっくりしました。恐らく日常会話は全然問題なく出来るので、今日も日本語で全部やろうかとも思ったのですが、韓国映画ファンの方はきっとギュファンさんの韓国語も聞きたいのですよね? 一言、韓国語でご挨拶お願いします。
ギュファン:アンニョンハセヨ。あ~ 韓国語で話すと、とても楽ですね。大阪に住みながら日本語を勉強しているのですが、日本語で挨拶するのは緊張しました。この映画は僕にとってとても印象深い映画なのですが、一番印象深いのは、日本で上映されて、このように皆さんとお会いできたということです。楽しい時間にしてください。
西村:今日、通訳をお願いしていますのは、大阪でギュファンさんに日本語を教えている先生である金純姫(きむ・すに)さんです。さて、この映画の見どころは?
ギュファン:この作品は韓国で人権映画として作られました。国家人権委員会が製作したのですが、人権映画というと難しくて堅苦しいと思われるかもしれません。でも、この映画は少し違います。韓国の社会や生活を正直に表わしていますが、一方で、温かくてユーモアに溢れた作りになっています。観終わった後、温かい気持ちになると思います。
西村:韓国映画を10年以上紹介してきたのですが、韓国と日本の関係は面白くて、違うようですごく似ている部分や、似ているようで、やっぱり違うという部分があると思います。この映画も、日本と韓国は違うなぁ~という部分と、全く同じだと共感できる部分があります。この映画は、名古屋で上映して、大爆笑に次ぐ大爆笑で、ほんとに楽しい映画です。
ギュファン:大阪で試写会をしたのですが、大勢の日本の方が観てくださいました。とても不思議だったのは、韓国ではこのシーンではすごく反応があって笑ってくださったのに、日本の皆さんは静かにご覧になっていたということがありました。今日は、家で観ていると思って、笑いたい時には笑って観てください。
西村: 日本と韓国、どんなところが違うと感じますか?
ギュファン: 8回位日本に来ています。最初に日本に来て感じたのは、町が綺麗で人が親切なことでした。今、大阪で一ヶ月半生活をしていて、日本と韓国で違うところもすごく多いと感じています。一番大変なのは、飲み物を勧められた時です。「どっちがいい?」と言われて、どれがいいかわからないので「ケンチャナヨ」と言ったら、いらないのかと思って飲み物を貰えなかったりします。韓国では、「ケンチャナヨ」といえば、どっちでもいいということなのですが・・・ 断る表現なのか、欲しい時の言葉なのか、こんがらがります。日本に来て、大阪には美味しい食べ物が多いのですが、通天閣前の串カツ屋さんが一番美味しいです。(韓国の方にとって、「つ」の発音は難しいらしく、「ちゅ」に近い可愛らしい発音に聞こえます。「つ」が二つ入る「通天閣前の串カツ屋」は、ほんとに可愛いいです!)
笑いに包まれたギュファンさんと西村さんのトークが終って、フォトセッション。
西村:最後にメッセージを!
ギュファン:(日本語で) 面白いかもつまらないかもしれませんが、最後まで楽にご覧になって下さい。ありがとうございます。
映画の上映が始まり、広いロビーで囲み取材が行われました。
*代表質問
-舞台挨拶を終えて、日本の観客とお会いになっていかがでしたか?
ギュファン: 日本語で話すのがすごく緊張しました。観客の皆さんの反応が良かったので楽に話すことができました。日本語で挨拶するとは思ってもみませんでした。上映前の挨拶でしたので、終った後、楽しい気持ちで帰ってくださればと思います。
-お酒の飲めないベジタリアンで、いじめられる役で、笑いも取っていましたが、キャラクターを作るうえで考えたことは?
ギュファン: 僕はベジタリアンじゃないです。肉もタバコもお酒も好きです。ベジタリアンを演じるのが難しくて、先輩にいじめられて、どう反応すればいいのかもよくわかりませんでした。監督に「役のジュフンは好みが違うだけで普通の人。変な人じゃない」と言われて、いじめられた時は、自分の自然な気持ちで表現することができました。
*記者とのQ&A
- 大阪で勉強されていますが、継続的にずっと住む予定ですか?
ギュファン:日本も同じだと思いますが、韓国でも全ての文化の中心はソウルです。日本でも首都である東京で近々映画の勉強などをする予定です。最初に大阪に来た理由は、映画関係者には関西出身の方が多いという話を聞いたからです。関西出身の方は面白いとも聞きました。ですので、関西弁も理解できなくてはと思いました。関西地方に知り合いが多いということもあって、大阪を基点にして勉強しています。
-大阪にはいつ頃までいますか?
ギュファン:今年の夏までは大阪にいます。
― 大阪に行けば会えちゃうのですね。どこに行けば?
ギュファン:通天閣の前の串カツ屋さんで! それが一番美味しいです!
- 今日は標準語でお話されましたが、大阪では関西弁で話したりもして、使い分けしているのですか?
ギュファン:まだそんな水準には達してないのですが、聞きながら、これが標準語だな、関西弁だなとわかるようになりました。関西弁の中で一番頭に残っているのは、「なんでやねん」です。
(実は私の質問だったのですが、私自身、神戸出身で、もう東京の方がずっと長いのですが、関西に行くと今でもほかの人たちにつられて関西弁になってしまいます。あの環境の中で標準語をしゃべるということは、逆に凄いことだと思うのです。)
- 夏までいると誕生日になってしまいますが、韓国で嘆き悲しむ人がいるのでは?
ギュファン:日本で新しく出会った方も多いので、その人達と過ごしたいですね。
- 東京へはいつ頃出てきますか?
ギュファン: 秋には行こうと思います。
- そうすると、韓国での仕事は?
ギュファン:今、韓国で所属している事務所がありますが、向こうで仕事が決まったら、向こうに行こうと思います。日本と行ったり来たりします。
- 日本での滞在は演技の勉強のためですか?
ギュファン:幼い頃から日本に対する関心が多くて、もっと知りたいと思いました。その国を知るには、まず言葉を習えば、その国の文化や生活なども分かると思いました。僕の好きな日本の映画監督は、北野武さん、崔洋一さん、イ・サンイルさん、黒沢清さんなどです。いつか出演できたら嬉しいです。
- この映画を観ていたら、韓国では女性と男性の立場が入れ替わりつつあるようにみえました。日本の状況と近くなってきているのでしょうか?
ギュファン:韓国と日本の男性の大きな違いは、韓国男性は軍隊に行くということです。軍隊に行くことがすごく影響を与えます。年功序列も非常に大事にします。一方で韓国の女性たちの社会的地位もすごく上がってきています。段々、男女平等になってきている状態だと思います。
- すぐに映画の社会に入られて、普通の会社に勤められたことはないのですか?
ギュファン: ゼンゼン!
― 普段の生活でも、映画の撮影の仲間とオフの時などに、お酒を強要することは多いのですか?
ギュファン:それは韓国のどこでも見られる光景です。僕も強要したことがありますし、強要されたこともあります。誰もが皆、被害者だと思いますが、考え方を変えると自分が加害者になっている場合もあります。『飛べ、ペンギン』はそれを考える映画でもあると思います。
- 好きな映画は? また、自分で作るとしたらどういうテーマで作りますか?
ギュファン:僕の一番好きな映画は『ゴッドファーザー』です。僕は日本で在日コリアンの生活を見ながら、アメリカのイタリア移民の人と似ている部分があると思いました。以前から、移民問題に関心がありました。『パッチギ!』『血と骨』などにも興味があります。そういう映画に出演したいと思います。もし製作されるのであれば手助けしたいとも思っています。それが日本語を勉強している理由でもあります。
- 考え方を伺っていると、俳優というよりも監督のような雰囲気がします。
ギュファン:実は、韓国では演劇の演出はやっていました。今は役者として活動したいです。僕の好きなハリウッド俳優は、クリント・イーストウッド、アル・パチーノ、ロバート・デニーロ、デンゼル・ワシントン、メル・ギブソンなどですが、この人たちの共通点は、皆、映画監督をしたことがあるということです。今、映画監督をすることを考えていませんが、演技の経験の多い俳優は、皆、自分で映画を撮りたいと思うようです。今は俳優をやりたいです。
- これは是非やってみたいという役はありますか?
ギュファン: やってみたいというよりも、世の中、生きていてこんな人もいるんだと共感できるようなキャラクターをやってみたいですね。僕は元々刑事の役が好きです。 僕、刑事みたいじゃないですか?(ここだけ日本語) 刑事の役が多かったです。- 日本で生活をしていて楽しいことは?
ギュファン:綺麗で静かなところが日本のとてもいいところです。僕は1人でランニングするのが好きなのですが、近所に海があって海を見ながら走るのですが、韓国では海が少ないので、それはとても幸せな気持ちになります。
- 3サイズと趣味などを教えてください。
ギュファン:3サイズは女性じゃないのでよくわからないです。忘れてしまいました。(笑)趣味は水泳です。それと乗馬です。乗馬はドラマのために始めました。韓国では、役者たちは歴史ドラマに出るために、皆ほとんど馬に乗れます。(思い出したように)身長は184cm、足は280です。あ、28cmです。A型の蟹座です。
― 几帳面で真面目なのは当たっていますか?
ギュファン:はい! 血液型占いは当たっています。
― 日本語の先生である金純姫さんと通訳の感じがとてもいいですが、それはいつも一緒に行動されているからですか?
ギュファン: 実は、一緒に練習しました。
― 練習の成果がありましたね。長さとか間とか、とてもよかったですね。
西村: 最初はプロの通訳の方をお願いしていたのですが、ギュファンさんより、自分の先生にして欲しいとリクエストがありました。
― 今日、自分でメイクや衣装を?
ギュファン:日本では自分でやります。今日の衣装も実はユニクロで買いました。安いのでたくさん! 襟に付いているペンギンは、日本のホームステイ先の方から頂きました。
- ホームステイ先で料理を作ったりしますか?
ギュファン:料理は全然できないんです。ホームステイ先が焼き肉屋さんなので、美味しいものを頂いています。
- それでは、体型維持が大変じゃないですか?
ギュファン:家の近くにクラブがあるので、そこに毎日通って運動したり水泳したりしています。
和やかな雰囲気の中で、笑顔を絶やさずにお話してくださったギュファンさん。もっと映画の内容についてお伺いしたかったのですが、彼自身の日本での生活が中心になってしまいました。韓国と日本、どちらの国でも、役者として活躍されるのを楽しみに見守りたいと思います。
取材:景山咲子
→ 作品紹介
→ 『飛べ、ペンギン』イム・スルレ監督インタビュー
→ 真!韓国映画祭オープニングイベント&『飛べ、ペンギン』Q&A
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