にこにこと笑いながら登場したハン・ソッキュ、フォトセッションでは右から左へを2度繰り返した後、自ら「もう一度行きましょう!」と、サービス精神旺盛。間近で見るハン・ソッキュは、とてもスリム。インタービュー中、笑みを絶やさず、しかもひとつひとつの質問に丁寧に言葉をかみしめるように答えてくれた。そして、「私はしゃべりすぎる嫌いがありますので、すべて通訳していただくと、貴重な時間がどんどんなくなってしまいます。抄訳でご了承お願いします。」と、前もって断りがあったので、たくさんしゃべってくれたのに、 おそらく半分位しか訳してもらえなかったのだと思う。ハングルが理解できないのがほんとうに残念だった。
ソッキュ:こんなに多くの方が来てくださって、『二重スパイ』に関心をお寄せ頂き感謝しています。
Q 出演する映画は必ずヒットすると言われていますが、どのようにして出演作を選ぶのですか? また、人気の秘密は?
ソッキュ:基準はそれほどないんですよ。自分の映画感にあったものを選んでいます。今までの9本の出演作はすべてそうです。人気の秘密は自分ではわからないですね。 皆さんにお聞きしたいです。 (かなり照れていました。)
Q 活動しなかった3年間に、なぜ映画に出るかを考えたそうですが、答えは?
ソッキュ:今は映画だけですが、最初は演劇も目指していました。 これからも演劇はやるつもりはないです。なぜ、映画に出るかの答えですが、 1つ見つけたのは、観客の為に演技するということです。
Q ご自分が吟味して選んだ作品とのことですが、あらためて、出来あがってみていかがですか?
ソッキュ:1つの作品に出演すると決めたら後悔はしません。『二重スパイ』は韓国において重要な意味を持つ作品だと思います。統一の問題は、私たち両国の国民にとって、ほんとうに大きな問題です。
Q この作品の中で、南北問題のどの部分が気に入ったのでしょうか? また、他に南北を描いたシナリオは何本位来たのでしょうか?
ソッキュ:『シュリ』に出演した後、南北を題材にしたシナリオは結構きました。この作品を読んで、いいか悪いかは別にして、1つの信念を貫いた人物を演じてみたいと思ったのです。2003年の現在、韓国にとって必要と思いましたので、この作品を選びました。
Q 二重スパイという難しい役柄にあたって、どこが難しかったでしょうか? また、心がけたことは?
ソッキュ:イム・ビュンホは明確な目的を持っているので演じやすかったのですが、二重スパイとしての普段の生活も演じる必要があって、映画の中でも二重の演技をする必要がありました。
Q 北の独特な言葉をどう意識しましたか?
ソッキュ:イメージを崩すのでは・・と思ったのですが、南に溶け込んだ役ということで、ソウル方言でいいといわれました。「韓国バンザイ!」のシーンは、力強い北の人の話し方を意識しましたが・・
Q 海外ロケは初めてだと伺っていますが、その感想は?
ソッキュ:ドイツのシーンはプラハで、リオデジャネイロのシーンはポルトガルで撮りました。両方とも初めての地だったのですが、いかに効果的に撮るかに苦心しました。また、プラハは夜の撮影でしたので、時間との戦いでした。昼寝て、夜撮るという次第でした。
Q 体をどのように鍛えたのでしょう?
ソッキュ:体を鍛えるよりも、北から来た人から身のこなし方などを教えていただきました。『シュリ』のときは、8週間辛いトレーニングをしたのですが…
Q 大変だったシーンは?
ソッキュ:エンディングの死をどのように見せるかが重要でした。70点以上取れれば・・と思っていました。テイクはエンディングが一番多くて、10回撮ったのですが、結果、2回目に撮ったものがOKになったのです。グリーンフィッシュのときは、22回撮って、やはり2回目でした。回数はそれほど重要でないということですね。
Q 分断・南北統一は、日本でも関心が高い問題ですが、日本人に対してメッセージをお願いします。
ソッキュ:『二重スパイ』は、分断体制を維持する為に働いた人達を描いています。分断は外から与えられたものですが、中でこのように傷の膿を出して、統一への夢を果たしたいと考えています。
*ときどき、記者会見場を振り向いて、愛想よく会場を後にしたハン・ソッキュ。 人柄の良さがにじみ出ていて、人気の秘密を知ったような気がしました。
彼女のデビュー作 『KUMIHO 千年愛』は、いかにもの韓国美人という印象しかなかったのだが、『エンジェルスノー』では、1日しか生きられない子供を授かった母親役を好演、さらに『二重スパイ』では、生まれながらにして、北のスパイという宿命を背負った女性を静かにさりげなく演じている。でも、登場した彼女はやっぱりコリアンビューティ。華がありました。
Q 数あるシナリオから、この作品を選んだ理由は?
ソヨン:今まで出たことのないジャンルで、女性のキャラクターが届けるメッセージが気に入りました。『エンジェルスノー』と同じ会社で、会社からも勧められました。
Q 内面的演技にあたって、苦労した点は? また、どんなところに気を配りましたか?
ソヨン:一番大切なのは、シナリオに忠実に演じるということでした。 完全にその主人公になるのは無理ですが、人物像を自分なりに現像して演技に臨みました。
Q 韓国で生まれ育ちながら北のスパイという、非日常的な役作りはどのように心がけましたか?
ソヨン:運命でスパイになったため、生きることに対して消極的にならざるを得ない役柄で、家族だけは大切にしなければいけないという思いで演じました。
Q 韓国の女優さんはたとえば大声を出してはいけないなどのイメージがあったり、またキャラクターが比較的限られていると思うのですが・・・
ソヨン:韓国映画での女性のキャラクターが限定されているというのは、ある程度言えるかもしれません。私自身は、一人で静かにしているのも好きだし、皆でにぎやかにしているのも好きです。役を演じるときには、そのキャラクターになりきります。これからは、韓国映画における女性の役割も多様になってくると信じています。
Q 共演がハン・ソッキュさんに決まった時の感想と、実際に共演してみての印象は?
ソヨン:映画のキャスティングは、私のほうが先に決まっていました。 ハン・ソッキュさんに決まってよかったなと思いました。CMでご一緒したことがあり、少し知っていました。優等生タイプに見られていますが、実際にそうですね。いつも同じような感情で、落ち着いていらして・・・
Q 幼い頃日本に住んでいて、お兄さんも日本に住んでいるそうですが、『二重スパイ』公開にあたって、日本の観客にとくに観てほしい点などお聞かせください。
ソヨン:同じ民族でありながら分断された痛みを持っているこんな国家が世界には存在しているということを、知ってほしいですね。
Q 『エンジェルスノー』では、詩の朗読、今度はDJ役、どちらもしゃべり方がとても綺麗ですが、普段から訓練なさっているのですか?
ソヨン:DJを実際1年間やった経験があります。 マイクの前でしゃべることが好きですので、自然に溶け込めました。
Q DJ役で、静かなしゃべり方をなさっていましたが、韓国の女性のDJの特有のしゃべり方なのでしょうか?
ソヨン:DJもいろいろあります。交通関係は明るくとか。今回は夜の音楽タイムのDJ役だったので、ゆったりと静かな語り口調にしました。必ずしも特有のしゃべり方があるわけではありません。今回の役柄でいえば、DJ以外の部分も、感情を抑えた人物ですので、声を抑え、速度も落としました。
Q 11月に夏のシーンを撮って辛かったと聞いていますが、ほかに辛かったことや、気に入っているシーンや、エピソードがありましたら、お聞かせください。
ソヨン:ソッキュさんもプロで、ほとんど問題なく撮り終えました。個人的には、チェコとポルトガルでのロケが印象的でした。ロケ中にお誕生日を祝ってもらったり、ソッキュさんがオペラ鑑賞に連れて行ってくださったり、楽しかったです。好きなシーンは、リオでの彼の帰りを待っているシーンです。
*ソヨンさんが一番好きだと言ったシーンは、ほんとに日常のなにげないシーン。私が試写会でこの作品を観たのは、アメリカがイラクに攻め入った3月20日。そんな普通の静かなひとときを過ごせない人たちも、今の世界には大勢いるのだと思うとやるせなくなったのですが、さりげない中に味わいのあるシーンでした。