監督 井上梅次
キャスト チェン・ペイペイ/チン・フェイ/リリー・ホー
三姉妹の人生模様をそれぞれの理想の男性との愛を絡めて語った香港製ミュージカル。 井上梅次が松竹で撮った『踊りたい夜』(63)をショウ・ブラザースのために自らリメイクした作品。 音楽は服部良一。
中国語のセリフで昔の日本映画を観ている気分になった。 歌のくり返しがちっとしつこくて飽きるけど、昔はこんなものだったのかなぁ。 手品師のダメな父親や、へそ曲がりのバレエ教師など、脇の男性達も面白かった。
井上監督は日活で活躍された後、香港でこの作品を始めとして10数本を手がけている。香港に映画の種を蒔いたわけで、その後香港映画は黄金時代を迎える。
歌って踊って大活躍のペイペイさんは、同年の『大酔侠』で一躍女性剣劇スターとなっている。1946年生まれだそうなので、そのときは20歳そこそこ。後に結婚して女優をやめアメリカへ渡り、ダンスの勉強をしたとか。『グリーン・デスティニー』で彼女は久しぶりにスクリーンに戻ってきた。凄みのある悪役女剣士を演じていたのを初めて観て「この人はだ,誰?」と思ったものだった。こんなに綺麗な人だったのね。今女優となった娘さんがそっくり。時間がとれず『大酔侠』を観なかったのが悔やまれまる。ちなみに元ネタの『踊りたい夜』は、水谷良重、倍賞千恵子、鰐淵晴子が出演。リメイク版の3人の雰囲気がぴったり同じ!!
監督 蒋欽民(ジャン・チンミン)
キャスト 劉[火華](リュウ・イエ)/董潔(ドン・ジエ)/陶虹(タオ・ホン)
異なる障害を持つ男女の心のふれあいを中国南部の大自然の中で描く、美しく感動的な愛の物語。日本で映画を学んだ監督の第2作目。主演のリュウ・イエとドン・ジエは中国映画界の期待の新星。
小さな山村に、子供の頃の事故で聴力を失った息子と、銃の暴発で目を失った父親が住んでいる。 筆売りにやってきた口の聞けない美しい娘は、ひょんなことから2人と暮らすようになる。互いのないところを補いあうつつましい暮らしが始まる。息子は幼馴染の村の娘に思いを寄せているが、明るく奔放な娘は村で唯一人のインテリ青年と恋仲になる。それを知らずに、父と息子は求婚の歌を娘の家の前で歌いつづけるが…
原作は東西〈ドンシー〉著の恋愛小説『没有語言的生活』で、 これに惚れこんだ監督が自ら映画化の交渉に出かけたのだとか。 映画の中に生かされたのはだいたい三分の一。 あとは、ロケハンをして原作者も一緒に話し合いながら作っていったのだそうだ。
岩波ホールの大ヒット作『山の郵便配達』で主演の劉[火華]は、今回も山中での撮影に加え監督いわく「いかにもいそうな純朴な青年」役を演じている。舞台挨拶に現れた彼は「大きな子犬」のような雰囲気。黒目勝ちの大きな瞳に恥ずかしそうな笑顔。なんだかかまいたくなってしまうタイプ。『藍宇』での大胆演技や、寒い山中での撮影もこなせるのだから、見た目よりずっとしっかりしているのかもしれない。長い手足が所在なげで、いつも俯きかげん。隣できりりと背筋を伸ばし、正面を向いている董潔と好対照。
彼女はネットで募集した「5万人の中から選ばれた美少女」なのだ。張藝謀監督の『至福の時』が初主演作。そちらは盲目の少女、今回は口がきけない少女という2作続きで障害者の役となった。質問の受け答えに無駄がなく、まじめな優等生という感じ。端正なおひな様顔で、今回の映画の昔話のような雰囲気にはよく似合う。「鶴女房」のおつうのような健気な感じがするのだ。時折見せる笑顔がとても可愛い。
このシナリオは、明るい村娘役の陶虹のために書かれたそうだが、ご本人は 「スケジュールが合わず来られなくて残念です。日本の皆様によろしく。」とのこと。2度のティーチ・インで2度とも「衝撃的なラスト」をつっこまれた監督は、苦笑しながら「初めから決めてありました」と答えていた。
私はどうしても原作が気になるので、ネットで探し回ってやっと見つけて飛ばし飛ばし読んでみた。「魯迅文学賞」を受賞したという感動作だけあって、映画よりずっと現実的でむごいお話。ラストをあんな風にしたのは、監督の主人公達への愛情ではなかったか? と、推測しています。
「むかしむかし、目の見えないお父さんと、耳の聞こえない息子のところに、美しい口のきけない娘がやってきました」で始まるお話と思えば、受け入れられる結末なのであります。あとは公開のとき劇場でお確かめ下さい。
監督 キム・ジウン/ノンスィー・ニミブット/陳可辛(ピーター・チャン)
キャスト キム・ヘス/コムギッ・ユッティヨン/黎明(レオン・ライ)
韓国、タイ、香港を代表する新世代監督3人がそれぞれの地元を舞台に監督したオムニバス・ホラー。 アジア映画の国境を超えた新時代のあり方を見据えて活動を開始したアプローズ・ピクチャーズの企画製作作品。
ホラーが苦手なので目をつぶりながら観ていた(?)。それなのに韓国映画は音だけでも恐くて、心臓に悪い。家に1人でいると思い出しそうなシーン満載だった。タイ映画は言語がホンワカしているせいか恐くない。出てくるシーンがタイの伝統芸能だったりして、身近なものではないせいもある。「恐くないよ」と聞いていたので、安心して目を開けて観ていた(?)最後の香港版は良かった。主演の黎明は、つかみ所のない茫洋とした役もはまる。妻の蘇りを固く信じて、尽くし続ける愛情深い夫の姿に泣かされてしまった。『ラブソング』で共演した曾志偉(エリック・ツァン)との絡みも楽しい。妻の死体もそうは見えないし、見え隠れする女の子が不思議なくらいで、ホラー風愛情物語といった感じだった。公開も決まっているようなのでお楽しみに。
* この作品は台湾金馬奨にノミネートされ、黎明が初の最優秀主演男優賞を獲得。 おめでとうございます!