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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。
Sept. 17, 2001

日活ロマンポルノ30周年記念企画パート1

私のおすすめロマンポルノ

私のおすすめは、まず東陽一監督の『ラブレター』(81)です。出演は、関根(高橋)恵子、中村嘉葎雄、加賀まり子、中谷昇。絡みも少なく、暴力的でないので、ロマンポルノを観たことがない人でもあまり抵抗なく観れると思います。関根恵子がうさぎみなたいな唇で駄々をこね、中村は「こんにゃろめ」となだめます。ちょっと不自然なほど丁寧できれいな台詞で、イチャイチャします。脚本は田中陽造。関根恵子は若くして『おさな妻』(70)を演じましたが、やはりこの映画のほうがずっと色っぽく、きれいだと思います。おかっぱと、ショートカットがありますがどちらも可愛いです。昼間から白いネグリジェで庭をうろうろし、かがんで胸が見えるのですが、そういうところもお気に入りです。この映画はロマンポルノ10周年記念として作られ、従来のロマンポルノファンには不評だったらしいのですが、私にとっては初めて好きになったロマンポルノです。

たぶん、一般女性にとってのロマンポルノの入口は神代辰巳だと思うのですが、やはり男性向けに女性が描かれているような気がします。絡みも多く、多少露骨ですが、『四畳半襖の裏張り』(73)を観て、夜が明けるまでのふたりの時間にゆったり身を委ねてみてほしいと思います。姫田真左久が撮影です。

今私が1番好きな監督は小沼勝です。SMと謳われるのが多いので躊躇していましたが、どれを観ても女性がしなやかな強さをもっており、一見、犯されたり、男に利用されたりしていますが、最終的には女も満足するか、別れても彼女には確固たる精神があり、ひとりでも強く生きていくだろうと予測させて終わるのです。たいていロマンポルノを観終わると、「女ってなんなの」とふがいない気持ちになることは少なくないですが、小沼監督は人形として演出しているようで、その実、逆だと思います。代表作では、『花と蛇』(74)より『生贄夫人』(74)がおすすめです。確かにSMで、描写もきついですが、やはり台詞が丁寧で、ちょっと古い、つくったような言葉で心地よいです。これは私の趣味なのかもしれません。こちらも田中陽造脚本です。いろんな汚い場面もありますが、それに拮抗してか、鬱蒼とした夏の森が美しく、湿気の肌目まで映っているように感じます。大胆なロングショットで、岩山と小さく見える二人をドーンと唐突に捉えるところも、度肝を抜かれます。

神代の『女地獄・森は濡れた』(73)もSMですが、こちらも森の魔窟のイメージが強烈に残っており、好きな映画です。絡みは度を越しているようで、ちょっと見るに耐えませんが、蝋燭の灯がともす古びた廊下はきれいで、うっとりします。撮影は前田米造。ロマンポルノではありませんが、金子修介の『1999年の夏休み』(88)も大好きなので、私は森が好きな少女趣味なのかもしれません。そういう意味では、やはり『夢野久作の少女地獄』(77)を撮った小沼勝が好きなのは当然で、記憶に新しい『NAGISA』(00)に出てきた洋館も、妙に高級なお母さんも大好きなものですから、なにかこう、シャルル・ペローのようなおとぎ話が好きな人は小沼ファンになるのではないでしょうか。『軽井沢夫人』(82)もあります。SMの女王と呼ばれる谷ナオミは、きれいで妖艶、とは私は感じられませんでしたが、『妻たちの性体験 夫の眼の前で、今…』(80)に出てくる風祭ゆきの高級マダムぶりは好きです。でも、これは壮絶な強姦が待っています。

現在OLの方は、『OL官能日記 あァ!私の中で』(77)があります。お父さんを心配する真面目な娘さんです。『ベッド・イン』(86)は、落ち着いた映画。大人のためのラブストーリー。荒井晴彦脚本。荒井さんの描く女性心理はいつも共感します。なんで、こんな細かいところまで知ってるんでしょうね。ほんとに男が書いてるの? といつも思うのですが。

パート1「私のおすすめロマンポルノ」
パート2「私とロマンポルノ」
パート3「続・私のおすすめロマンポルノ」

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(文:フクモト)
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