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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第30回東京国際映画祭 クロージング報告
東京グランプリは、地球の環境破壊を憂う『グレイン』に!

東京グランプリ『グレイン』セミフ・カプランオール監督と審査員長トミー・リー・ジョーンズさん
撮影:宮崎暁美

記念すべき第30回を迎えた東京国際映画祭。
2017年10月25日(水)、東京・六本木ヒルズ・アリーナでの華やかなレッドカーペットで幕開けを飾った映画祭も、あっという間に10日間の会期を終えました。
最終日の11月3日(祝・金)には、EXシアター六本木でクロージングセレモニーが開かれ、各賞の発表・授賞式が行われました。
東京グランプリは、『グレイン』に輝きました。
トルコのセミフ・カプランオール監督が、トルコ・ドイツ・フランス・スウェーデン・カタールから資金を得て、ジャン=マルク・バールさんを主役に迎えてモノクロで撮った近未来の地球。環境破壊から地球を守ろうとする男の物語は、クロージング作品として上映されたアル・ゴア元アメリカ副大統領の『不都合な真実2:放置された地球』とも呼応する作品です。
栄えある各賞の受賞作品を、受賞者の皆さんの喜びの声と共に、発表順にお届けします。

  (受賞一覧は、こちら


期間中、シネジャのスタッフ4人、それぞれの思いで作品やイベントを選んで、映画祭の会場を駆け巡りました。

  (東京国際映画祭を振り返って


東京国際映画祭関連の報告記事一覧を文末に掲載しています。
ぜひ一覧表から記事を選んでお読みいただければ幸いです。


★東京国際映画祭 クロージング報告 目次★

◎クロージングセレモニー
◎クロージング作品 ゲスト アル・ゴア氏登壇
【第30回東京国際映画祭 受賞結果】
東京映画祭を振り返って
東京国際映画祭関連報告記事一覧


◎クロージングセレモニー

11月3日(祝・金) EXシアター六本木にて

午後3時。各国から集まった映画人や取材人、そして大勢の観客が各賞の発表を待ち構える中、いよいよクロージングセレモニーが始まりました。
司会は、フジテレビアナウンサーの笠井信輔さん。
以下、各賞の発表順にお届けします。


◆東京ジェムストーン賞

東京国際映画祭 ビジョン30 の一つである「映画の未来の開拓」に沿って、今回新設された賞。宝石の原石(ジェムストーン)を東京で発掘し、世界に輝きを放って貰う一助になることを目的にしたもの。映画祭に出品された全作品の中から、若手俳優数名を映画祭事務局が選出。男女問わない賞ですが、今年は4人の女優さんが選ばれました。

★石橋静河さん(『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』)

「お芝居を始めて日が浅いのですが、このような機会に恵まれていて本当に幸せです。これからも努力をすることを忘れずに頑張っていきたいです」


東京ジェムストーン賞 石橋静河さん(『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』)
撮影 左:景山咲子、右:宮崎暁美

★松岡茉優さん(『勝手にふるえてろ』)

ビデオメッセージ「第一回の賞に選んでいただいたのに、直接受け取りにいけなくて残念です、少ない人数で少ない時間で撮った映画なのですが、こんなにたくさんの方に観ていただけて嬉しいです。日本映画が元気になるように頑張りたいです」


東京ジェムストーン賞 松岡茉優さん(『勝手にふるえてろ』) 撮影:宮崎暁美
右:オープニングにて

★アデリーヌ・デルミさん(『マリリンヌ』)

ビデオメッセージ「舞台公演中で伺えませんが、心より感謝申しあげます。メルシー、メルシー、メルシー!」


東京ジェムストーン賞 アデリーヌ・デルミさん(『マリリンヌ』) 撮影:宮崎暁美

★ダフネ・ローさん(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)

「3年前、出演作が出品されて、東京国際映画祭にはご縁を感じています。この賞を励みとして、これからも役者として頑張りたいです」と、左右に笑顔をふりまいてくださいました。


東京ジェムストーン賞 ダフネ・ローさん(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)
撮影 左:景山咲子 右:宮崎暁美



東京ジェムストーン賞 石橋静河さんとダフネ・ローさん 撮影:宮崎暁美

◆日本映画スプラッシュ部門作品賞

★『Of Love & Law』(日英合作ドキュメンタリー映画)


日本映画スプラッシュ部門作品賞 『Of Love & Law』 戸田ひかる監督 撮影:宮崎暁美

戸田ひかる監督がスタッフと共に登壇。「この部門にドキュメンタリーが出品できたことにびっくりしていました。賞も貰えるといいなと実は狙ってました」と正直な気持ちを語りました。映画は、大阪のゲイカップルの弁護士を追ったもの。長年欧州で活動してきた戸田監督ですが、偶然彼らに出会って、22年ぶりに日本で暮らしながら撮影を敢行。国際共同制作で、外から見た日本社会の現実が描かれていることに注目です。


◆アジアの未来部門

★国際交流基金アジアセンター特別賞

『僕の帰る場所』(日本・ミャンマー共同製作)

日本で暮らすミャンマーの一家の物語。「現実とフィクションのバランスが素晴らしい。国籍を超えた視野で描いた作品」と受賞理由が語られました。


国際交流基金アジアセンター特別賞 『僕の帰る場所』藤元明緒監督 撮影:宮崎暁美

藤元明緒監督が登壇。「今は、ありがとうしか言えない」と感無量のご様子。Youtubeで流されているのでと、ミャンマー語でも一言。(恐らく、ありがとう)


続いて、作品賞発表にあたり、審査員の行定勲監督が総評。


アジアの未来部門 審査員 行定勲監督 撮影:景山咲子

「ユニークな作品が多く、個人的に楽しみました。描かれるべきテーマは素晴らしいのに、詰め込みすぎて、観る側に何が言いたいのか伝わらない作品も多かったのが残念」と、ちょっと苦言を呈しました。審査会議は紛糾することなく、二つの作品に集中。作品賞のほかにスペシャル・メンションが設けたことが語られました。

発表は、韓国のプロデューサー、オ・ジョンワンさんより。


アジアの未来部門 審査員 プロデューサー、オ・ジョンワンさん  撮影:景山咲子

★スペシャル・メンション

『老いた野獣』(中国)

アジアの未来部門 スペシャル・メンション 『老いた野獣』チョウ・ズーヤン監督
撮影 左:宮崎暁美 右:景山咲子

チョウ・ズーヤン監督が登壇。10年前に構想、色々な困難の末、ようやく完成した初監督作品。東京国際映画祭で二つの忘れられないこととして、「二回目の上映後、車椅子のおばあさんが何も言わずサインを求めてくださったことと、スタッフルームでスタッフ全員起立して拍手してくださったこと」と語りました。
微笑ましい思い出を持って帰っていただけるのが嬉しいです。


★作品賞

『僕の帰る場所』(日本・ミャンマー共同製作)

アジアの未来部門 作品賞 『僕の帰る場所』藤元明緒監督 撮影:宮崎暁美

藤元明緒監督、「先に発表された国際交流基金アジアセンター特別賞の折には、自分一人で登壇して寂しかった」と、ミャンマーの民族服を着た家族4人やスタッフを引き連れて登壇。男の子二人が可愛い。
司会の笠井さんから「お母さんと二人の子どもはほんとの家族。お父さんは赤の他人」と紹介がありました。長い撮影を経て、本物の家族のよう!


アジアの未来、作品賞について語る審査員のホセ=ルイス・レボルディノスさん

◆コンペティション部門

いよいよ、コンペティション部門。88の国と地域から1538作品(過去最多)がエントリーし、その中から選ばれた15作品が正式出品されました。

まずは、観客賞から。


★観客賞

『勝手にふるえてろ』(日本)

観客賞『勝手にふるえてろ』大九明子監督 撮影:宮崎暁美

大九明子監督が「わ~!」と驚きの声をあげて登壇。
東京国際映画祭みなと委員会より、まずはハッピが差し出され、これを纏って受賞の喜びを語るのが伝統と言われ、ちょっと恥ずかしそうに羽織る大九監督。
「予算の少ない作品で、ノミネート自体びっくり。紙を破いて投票してくださった方々に感謝します。映画にしがみついてきてよかった」と、ほんとうに嬉しそうに語りました。


★最優秀脚本賞 Presented by WOWOW

『ペット安楽死請負人』(フィンランド)

最優秀脚本賞 Presented by WOWOW 『ペット安楽死請負人』 ヤニ・ポソさん(プロデューサー)
撮影 左:景山咲子 右:宮崎暁美

今年創設された賞。プロデューサーのヤニ・ポソさんは「賞金で、次の長編作品を」と意欲を語りました。


オープニングにて 撮影:宮崎暁美         
左:テーム・ニッキ監督(脚本/編集/美術/衣装も)
右:俳優のマッティ・オンニスマーさん       

★最優秀芸術貢献賞

『迫り来る嵐』(中国)

最優秀芸術貢献賞 『迫り来る嵐』 ドン・ユエ監督 撮影:宮崎暁美

ドン・ユエ監督が神妙な面持ちで登壇。
「プロデューサーのシアオさんに出会えてラッキー。風水のいいロケ地に感謝。主演の二人、私の家族やスタッフにも感謝。力を貰って作ることができました」


★最優秀男優賞

ドアン・イーホンさん(『迫り来る嵐』中国)

最優秀男優賞 ドアン・イーホンさん(『迫り来る嵐』) 撮影:宮崎暁美

ドアン・イーホンさん「演じたユィ・グオウェイも、こうして舞台に立ちましたが血だらけでした。映画に参加する全員の火花の散るような努力で完成。家族、スタッフ、監督に感謝します。愛の力を感じました」と力強く語りました。

「選出するのに、ほんとに時間がかかりませんでした」と審査員のヴィッキー・チャオさん。


審査員のヴィッキー・チャオさんと、男優賞ドアン・イーホンさん(『迫り来る嵐』)  撮影:景山咲子

★最優秀女優賞

アデリーヌ・デルミさん(『マリリンヌ』フランス)

最優秀女優賞 アデリーヌ・デルミさん(『マリリンヌ』) 撮影;宮崎暁美

ビデオメッセージで再びアデリーヌさん登場「監督にブラボー!」
司会の笠井さんより、「先ほどの東京ジェムストーン賞の時のビデオではありません」

「初出演で堂々としている彼女に全員一致で決まりました」と審査員の永瀬正敏さん


審査員の永瀬正敏さん  撮影:景山咲子

★最優秀監督賞

エドモンド・ヨウ監督(『アケラット-ロヒンギャの祈り』マレーシア)

最優秀監督賞 エドモンド・ヨウ監督(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)
撮影 左:宮崎暁美 右:景山咲子

「20人以内の小さなクルーで、12日間モンスーンの中で作りました。一人一人がいろんな仕事をこなし、ほぼ全員俳優としても登場しています。私は33歳ですが、クルーは皆20代で、年を取った気分でした」と涙ぐみながら語るエドモンド・ヨウ監督。
「ダフネが賞を貰った時に泣きそうになって、もう泣いちゃいけないと思ったのですが」と続け、「ロヒンギャの人たちの過酷な運命、答えはありませんが観ていただいて感じ取っていただければ」と締め括りました。


★審査員特別賞

『ナポリ、輝きの陰で』(イタリア)

審査員特別賞 『ナポリ、輝きの陰で』 シルビア・ルーツィ監督、ルカ・ベッリーノ監督
撮影 左:景山咲子 右:宮崎暁美

シルビア・ルーツィ監督、ルカ・ベッリーノ監督
「クルーはこの二人だけ。職人的な作品に大きな賞をいただけて嬉しい」と喜びを語りました。「星座から取ったタイトルで、光は強いけど見えない。主役の二人は初演技でした。決して簡単でないところで生きている人たちに捧げたい。この映画にとって初めての賞で、今後の運にもつながっていくことと思います」と、ほんとうに嬉しそうに語る二人でした。


そして、いよいよ最高賞である東京グランプリの発表。

審査委員長のトミー・リー・ジョーンズさんが登壇。
「全員一致で決まりました。美しい撮影方法に感銘を受けました。神話を現実に捉えているのが素敵だなと。


審査委員長 トミー・リー・ジョーンズさん

こうして発表されたのは、『グレイン』でした。
トルコのセミフ・カプランオール監督がモノクロで描いた近未来の地球。


★東京グランプリ

『グレイン』(トルコ・ドイツ・フランス・スウェーデン・カタール合作)

東京グランプリ 『グレイン』 セミフ・カプランオール監督
撮影 左:景山咲子 右:宮崎暁美

セミフ・カプランオール監督が、静々と登壇。
「ドウモ、アリガトウ」の日本語の後は、トルコ語で。「招待してくださった東京国際映画祭、そして、審査員の皆様に感謝します。この映画は長い旅路をたどりました。製作に5年かかりました。ここから世界に向かって行く出発点になったと信じています。製作に携わってくれたスタッフ、キャスト、特にジャン=マルク・バールさん、そしてすべての方々にお礼申しあげます。とても興奮しています」と、高まる気持ちを抑えながら、さらに続けて、「私たちは生活しているすべての瞬間で世界に様々な害を与えています。過剰な消費、資本主義がある。人々に価値を見出しましょう。私たちはどこから来て、どこに向かっているかを把握して理解しなければならないと思います。私は監督として、大地、種、創造されるということに敬意を払いながらこの作品を作りました。今回の映画を作ることは神が導いてくださったことと思っています」と、神への感謝で締め括りました。

トミー・リー・ジョーンズ審査委員長からトロフィーの授与。

東京グランプリ 『グレイン』 セミフ・カプランオール監督 と審査員長 トミー・リー・ジョーンズさん
撮影 左:景山咲子 右:宮崎暁美

続いて、小池百合子東京都知事から麒麟像の授与。


東京グランプリ 『グレイン』
左:セミフ・カプランオール監督と、小池百合子東京都知事  撮影:景山咲子
右:セミフ・カプランオール監督  撮影:宮崎暁美            


オープニングにて
左:ジャン=マルク・バールさん(俳優) 右:セミフ・カプランオール監督
撮影:宮崎暁美


◆審査員総評


コンペティション部門 審査員

ここで、審査員全員が登壇。
トミー・リー・ジョーンズ審査委員長が代表して挨拶。
「一番楽しかったのは、審査員の皆さんと友情を築くことができたことでした。皆さん聡明で思慮深い方々でした。でも、大変な困難を伴いました。5つの違う言語故に通訳が必要で、まるで国連のようでした。それぞれが違った言語を話すので、ユーモアを共有するのが難しかった」と、国連での会議が言語の違いから、なかなか気持ちを共有できないことを示唆するような発言で始まりました。
「15本の作品を審査するのは、とても大変でした。最良の映画祭は、映画製作者や観客を、厳しい商業的需要から解放するべきものであると思います。カークラッシュ、銃口、都市の爆発や洪水、危機に陥っている女性、思春期のスーパーヒーローも必要としません。もちろん、それらが悪いとは言いませんが、ただ、私たちは必要としていないのです」ときっぱり。「最良の映画祭は理路整然とした物語、そして視覚的美しさを求めます。映画製作者は皆さんの時間を無駄にするために生まれてきたわけではありません。皆さんに謙虚な心と希望を持って仕える者たちだと、審査員を代表して申しあげます。私たちの決定は明白であります。アリガトウゴザイマシタ」と、観客に真摯に語りかけました。



◎クロージング作品 ゲスト アル・ゴア氏登壇

トミー・リー・ジョーンズさんが、クロージング作品のゲストを呼び込みます。
「53年、友情を築いてきました。いろいろな賞を受賞された映画製作者で、とても思慮深い方。多くの製作者のように続編を手がけられました。映画『不都合な真実2:放置された地球』については、アル・ゴアさんご自身に詳しく語っていただきましょう!」

ここで、アル・ゴア元米国副大統領が登壇。


アル・ゴア元米国副大統領を迎えるトミー・リー・ジョーンズさん 撮影:景山咲子

トミー・リー・ジョーンズさんが、駆け寄って大きくハグ。そして、握手。
「旧友トミーとここで会えるとは!」と感無量のアル・ゴアさん。
司会の笠井さんより「ハーバード大学でルームメイトだったそうです」とフォロー。


アル・ゴア元米国副大統領
撮影 左:宮崎暁美 右:景山咲子

「ドウモ アリガトウ。クロージング作品に選んでいただき光栄です。日本で配給していただける東和ピクチャーズさんに感謝します。11月18日から公開されます。この映画を観て、感じて、楽しんで、これをチャレンジとして受け止めていただければと思います。皆さますべてに、この気候危機解決の一員になっていただければと思います」と環境問題への関心を求めました。


アル・ゴア元米国副大統領と小池百合子東京都知事
撮影 左:宮崎暁美 右:景山咲子

ここで、10年前に『不都合な真実』の日本公開時に環境大臣を務めていた小池百合子東京都知事が登壇。「10年を経て、『不都合な真実2』を完成されたことお祝い申し上げたいと思います。
この10年間で、ますます地球の環境がひどくなってきていると感じておられる方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。ゴアさんは地球を守る伝道師だと思っております。フィルムを通して、より多くの方々に私たちが地球を壊しているという意識改革を啓発していただければと思います」と、ゴア氏にエールをおくりました。



◎閉会の言葉

東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター 久松猛朗氏が登壇。
「祝祭感溢れる、誰もが参加したくなる映画祭をめざしました。楽しんでいただけましたなら幸いです。来年はさらに充実した映画祭を目指します」と締め括り、第30回東京国際映画祭は閉会しました。


東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター 久松猛朗氏  撮影:宮崎暁美

取材: 宮崎暁美(写真)、景山咲子(文・写真)

【第30回東京国際映画祭 受賞結果】

受賞者全員 (c)2017 TIFF
受賞者全員 (c)2017 TIFF

◆コンペティション部門

観客賞:『勝手にふるえてろ』(大九明子監督)
最優秀脚本賞 Presented by WOWOW:『ペット安楽死請負人』(テーム・ニッキ監督)
最優秀芸術貢献賞:『迫り来る嵐』(ドン・ユエ監督)
最優秀男優賞:ドアン・イーホン(『迫り来る嵐』)
最優秀女優賞:アデリーヌ・デルミ(『マリリンヌ』)
最優秀監督賞:エドモンド・ヨウ監督(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)
審査員特別賞:『ナポリ、輝きの陰で』(シルビア・ルーツィ監督、ルカ・ベッリーノ監督)
東京グランプリ:『グレイン』(セミフ・カプランオール監督)

◆日本映画スプラッシュ部門

作品賞:『Of Love & Law』(戸田ひかる監督)

◆アジアの未来部門

スペシャル・メンション:『老いた野獣』(チョウ・ズーヤン監督)
国際交流基金アジアセンター特別賞:『僕の帰る場所』(藤元明緒監督)
作品賞:『僕の帰る場所』(藤元明緒監督)

◆東京ジェムストーン賞

石橋静河(『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』)
松岡茉優(『勝手にふるえてろ』)
アデリーヌ・デルミ(『マリリンヌ』)
ダフネ・ロー(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)



****☆****☆****☆****

◆東京映画祭を振り返って◆

10月5日から12日まで山形国際ドキュメンタリー映画祭、10月20日から26日まで中国映画週間、10月25日から11月3日まで東京国際映画祭と怒涛の映画祭シーズンの1ヶ月が終わりました。ほぼ毎日映画祭に参加し、映画を観続けた、忙しいけど充実した日々。10数年ぶりにオープニングも取材しました。東京国際映画祭では18本の作品を観ることができました。でも、後半さすがに疲れが出て朝起きることができなくて見逃した作品が3作。そのうち『グレイン』『アケラット-ロヒンギャの祈り』の2作が受賞作に。観ることができなかったのがちょっと悔しい。
でも、今回の受賞作、観客賞が『勝手にふるえてろ』の大九明子監督、日本映画スプラッシュ部門の作品賞は『Of Love & Law』の戸田ひかる監督と、日本の女性監督の作品が2作入ったのが嬉しい。2014年のあいち国際女性映画祭で大九明子監督、天野千尋監督、名倉愛監督の『放課後ロスト』が上映されましたが、それから3年たって東京国際映画祭での観客賞受賞、感慨深いものがあります。この作品には、東京ジェムストーン賞を受賞した松岡茉優さんが出演していました。すでに大九監督との繋がりがあったのですね。


あいち国際女性映画祭2014にて  撮影:宮崎暁美

今回、東京ジェムストーン賞を受賞した石橋静河さんと戸田ひかる監督は海外生活が長く、日本語のスピーチだけでなく、自身で英語スピーチもしていたのが印象的でした。そして頼もしく思いました。
主演男優賞を受賞した段奕宏(ドアン・イーホン)さんは、『迫り来る嵐』だけでなく東京国際映画祭協賛企画の中国映画週間でも出演作が2本上映され、合計3本もの出演作がこの映画祭期間中に上映されました。中国映画週間での上映作『潜入捜査』では麻薬王、『記憶の中の殺人者』では刑事なのに殺人者という役どころ。実力派なんですね。
また『僕の帰る場所』はドキュメンタリー作品かと思ったのですが、実話を元にした作品でした。この作品はぜひ公開してほしいと思いました。(暁)


~8日間、私の「観たい」映画を探して~
受賞作品発表で観逃した映画に悔しい思いをしています。
期間中、33本とギリギリまで体力を使いました。どちらかというと私は「映画祭体質」で一日4本は平気ですが、それも3日間連続が限界でした。
しかしながら、数行のそそられる映画紹介文を読んだら最後、止めようなど無理な話……そんな贅沢で幸せな8日間でした。
私的にはグランプリは『スパーリング・パートナー』で主演男優賞はマチュー・カソヴィッツさんと思っていました。
日本映画スプラッシュは私の勘がドンピシャ! で戸田ひかる監督『Of Love & Law』が来ました。それも女性監督で二重に嬉しい作品でした。
他に印象に残ったのは『石頭』『ナッシングウッドの王子』『大仏+』で公開を期待しています。(美)


事前試写は今年6本で、そのうち4本しか見られませんでした。その分会期中忙しく、上映時間が重なる作品に迷う日々。取材より本編を観るのを優先したので30本は観られましたが、他の人の感想を聞き、受賞作品を知るともっと観たかったと欲が出ます。特に2つ受賞の藤元明緒監督の『僕の帰る場所』を見逃したのが悔やまれます。公開へのはずみとこれからの励みになりますように。
人間の暗部を描いた作品が多いせいか連日観ていると疲れがたまってきます。間に軽くて楽しいものを挟み込んで、エネルギー充電していました。そういう作品はあまり受賞できないからか、少ないのが辛いところ。やはりワールドフォーカスの作品に観るべきものが多かったです。少年少女に見せたいというユース部門もありますが、『リーナ・ラブ』はきつい内容で、こうなりたいと思える作品を選んでほしいものです。ARIGATO賞がなくなり、若手俳優対象の東京ジェムストーン賞が新設されましたが、女優賞受賞の人も入っていました。選定時期によるのかもしれませんが、次点候補もあげておいて受賞者以外を選んだほうが励みになると思います。アリーナでの30周年記念野外上映は充実の作品群でしたが、あいにくお天気の悪い日が多く残念。TIFFスタッフの方々には今年もお世話になりました。感謝。(白)


いつものことですが、中東やイスラ―ム絡みの映画を中心にスケジュールを組んだ結果、映画は17本しか観られませんでした。でも、合間に、記者会見 3件、Q&A取材 6件、個別インタビュ― 2件、イベント 3件に、レッドカーペットやクロ―ジングと、たっぷり映画祭を楽しみました。(報告記事を書かなくちゃで、あとが大変!)
そして、今年も記憶に残る素敵な映画たちに出会えました。
中でも、『ナッシングウッドの王子』と、『サッドヒルを掘り返せ』は、映画愛に溢れた人たちを追ったドキュメンタリ―で、映画っていいな~ 映画が人を幸せにしてくれると、胸がいっぱいになりました。

一方、東京グランプリに輝いた『グレイン』は、実は私的には入り込めなかった映画でした。
ユスフ三部作のセミフ・カブランオ―ル監督の新作なので、とても楽しみにしていたのですが、始まってみたら、言葉が英語。トルコ語でないことにがっかりして、崇高な内容なのに、私の心にすぅ~っと入り込んで来なかったのです。
もう一度観る機会があれば、違った印象になると思います。
クロ―ジングの最後、記念撮影のために壇上に向かう監督に、トルコ語でおめでとうと声をかけることができました。振り向いて、トルコ語でありがとうを返してくださいました。
トルコの監督さんが受賞されたのは、なんといっても嬉しい♪

今回、もうひとつがっかりだったのが、審査員として来日されたイランのレザー・ミ―ルキャリミ監督と、とうとう声を交わすチャンスがなかったこと。何度もお顔は拝見したのですが…
でも、こんなに素敵な笑顔を撮ることができたので、よしとしましょう! (咲)


コンペティション部門 審査員 レザ・ミルキャリミ監督 撮影:景山咲子


東京国際映画祭報告記事 一覧

特別記事

特別記事 東京国際映画祭 コンペティション部門『ザ・ホーム-父が死んだ』アスガー・ユセフィネジャド監督・女優モハデセ・ヘイラトさん来日報告

作品紹介

2017東京/沖縄・中国映画週間 東京では10月20日(金)から10月26日(木)まで開催されます

スタッフ日記

●第30回東京国際映画祭 記者会見 多彩な映画祭の全容が発表されました  (咲)
●東京国際映画祭が近づいてきました!
●「2017東京/沖縄・中国映画週間」始まる (暁)
●祝 開幕!第30回東京国際映画祭  トホホなレッドカーペット取材(咲)
●東京国際映画祭 充実の2日目 アダン・ホドロフスキーに海老蔵に (咲)
●第30回東京国際映画祭 オープニング(暁)
●東京国際映画祭 『ザ・ホーム-父が死んだ』結末に主演女優もびっくりの全編トルコ語のイラン映画 (咲)
●『ペット安楽死請負人』(フィンランド)Q&A
●『グッドランド』(ルクセンブルク)会見
●映画の合間に六本木ヒルズで楽しむ
●残り2日
●TIFF試写最終日
●東京国際映画祭 『スヴェタ』 手話を交えての記者会見  (咲)

ミッキーの毎日・映画三昧

■東京国際映画祭(1)バス運転手の人生・2作品 『ミッドナイト・バス』『パンとバスの2度目のハツコイ』
■東京国際映画祭(2)『うろんなところ』『写真甲子園 0.5秒の夏』
■東京国際映画祭(3)『大仏+』『フォーリー・アーティスト』
■東京国際映画祭(4)『ポップ・アイ』『現れた男』
■東京国際映画祭(5)『地球はお祭り騒ぎ』
■東京国際映画祭 (6)『石頭』『ペット安楽死請負人』
■東京国際映画祭(7)『隣人たち』『詩人の恋』
■東京国際映画祭(8) 映画愛に満ち溢れたドキュメンタリー2作品『サッドヒルを掘り返せ』『ナッシングウッドの王子』
■東京国際映画祭(9)受賞作品 『Of Love & Law』
(順次追加します)

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