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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

あいち国際女性映画祭2017

シネマジャーナルHPですでに掲載されたあいち国際女性映画祭記事
あいち国際女性映画祭2017始まる
http://cinemajournal.seesaa.net/article/453282024.html

あいち国際女性映画祭 受賞結果
http://cinemajournal.seesaa.net/article/453370121.html

      9月5日レセプションに参加したゲスト
      左から 
      司葉子さん 『用心棒』出演
      キーレン・パン監督 『29+1』香港
      シーグリッド・アーンドレア・P・ベルナード監督 『キタキタ』フィリピン
      山上千恵子監督 『たたかいつづける女たち~均等法前夜から明日へバトンをつなぐ~』


目次:


あいち国際女性映画祭2017 ゲスト監督インタビュー記事

彼らが本気で編むときは、』荻上直子監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/aichi/index02.html
29+1』キーレン・パン監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/aichi/index03.html
わたしたち』ユン・ガウン監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/watashitachi/index.html


―なにげに凄いあいち国際女性映画祭―

髙野史枝(名古屋在住)

22年という長さ

 毎年9月に愛知県主催で行われる「あいち国際女性映画祭」は、今年で22回目を数える。22年といえば、産まれたばかりの子が大学を卒業して社会人になる歳月だ。

 私はこの映画祭の第1回から10年以上司会者としてかかわっていたので、感慨が深い。最初のころの「何とかして女性監督の存在を映画界に認めさせたい!」「女性監督が育ってほしい!」などという熱気やイキオイは随分沈静化したけれど(それだけシャカリキにならなくても、女性監督の存在は確かなものになってきた・・・という証左かもしれないが)、やっぱり女性監督の作品をきちんと上映し続けているこの映画祭には大きな意義があると思う。また映画祭の歴史が積み重なることで、女性監督の歩みの記録も残る。将来的には貴重な映画的資料になるだろう。全国的にはそれほど有名な映画祭とは言えないが、「なにげに凄い映画祭」だと評価してほしいな…と思う。
 今年は13本の上映とフィルムコンペティション参加15本、特別企画4本。


『たたかいつづける女たち~均等法前夜から明日へバトンをつなぐ~』

(ドキュメンタリー/2017/日本/山上千恵子)


山上千恵子監督

 私がフェミニズム運動に関わりを持ったのは90年代初め。 名古屋を拠点にした「ワーキングウーマン」というグループに参加した時からだ。このグループ自体は1987年の「男女雇用均等法」をきっかけに誕生しているのだが、その創立メンバーの多くは80年代の「リブ運動」に参加したことのある女性たち。みんなから当時のリブ運動のひたむきで熱い運動の様子を聞いて 「そのころを知ってるなんて羨ましいな・・・」と思ったものだった。この映画では、1984年のクリスマスイブに行われた「イブ・リブ・リレー」の様子が映し出される。「イブ・リブ・リレー」とは、国会で均等法が成立する直前、女性たちが要望書をバトンの形にしてリレーでつなぎ、それを渡すために労働省に向かって走ったというユニークな活動。まさにその当日、山上監督がバイクに乗りビデオで撮影したという貴重な実写フィルムが映画の柱になっている。

 現在はフェミニズム運動というと「オバさんたちの運動」(いや、もう「オバーさんたちの運動」かも・・・)というイメージがあるのに比べ、走っている女性の誰もが若く生き生きしているのに感動!日本のフェミニズム運動は、こんな若い女性たちの手で希望に満ちたスタートをしたんだなァ・・・と実感できた。それから30年、日本の女性の状況はどうか?世界経済フォーラムが2016年に発表した「男女平等国別ランキング」では、なんと世界144ヶ国のうち111位という屈辱的な位置にとどまっている・・・。しかも毎年その順位を落としているという惨状にガッカリする。

 しかし、この映画に出てくる現代の女性たちは、そのころの「イブ・リブ・リレー」のバトンを受け継いで、マタハラ裁判を支援したり、ディーセントワークを提案したり、学習会を続けたりしながら、しぶとく息長く闘い続けている。

 質疑で私が、「そのころの様子を映したビデオがまだ残っていたら、ぜひまた映画にしてほしい」とお願いしてみたが、監督からは「探したらあるかも・・・でももうそんな元気がないので、だれか作るなら提供します」とのお返事。ガッカリしたが、質疑の最後に、あいち国際女性映画祭でも『第7官界彷徨 尾崎翠を探して』『百合祭』などが上映された浜野佐知監督が立ち上がり、「私が映画監督を目指した60年代は、映画監督だけではなく働く場で女性はマイノリティー。みんなそれに対する怒りがあった。今は分断があったり隠されていたりして、女性差別があっても気づけない。女性たちの中にもう一度怒りのパワーが必要」と語った。そして山上監督に対して「『フィルムを提供するからだれか作って…』なんて言わず、ぜひ自分で作ってほしい!」と、相変わらずの「ハマノ節」で檄を飛ばしていた。賛成です!


『キタキタ』

(2017/フィリピン/シーグリッド・アーンドレア・P・ベルナード)


シーグリッド・アーンドレア・P・ベルナード監督

 フィリピン人の若い女性監督が、フィリピン人の俳優・スタッフと札幌オールロケで作り上げたラブコメディ。インディ―ズ映画として作られたが、フィリピンで公開されると大人気を呼んで、インディーズ映画としては破格の6億円という興行成績を上げ、アメリカでの一般上映も決まったという作品だ。「キタキタ」とは、タガログ語で「I see you」という意味だが、「キタキタ」を早く言うと「またね」の意味もあるそうだ。

 札幌で英語野津アーガイドをするフィリピン神野レアは、日本神野恋人と別れたショックで一時的に失明する。そんな彼女に、自宅の前に偶然住んでいたフィリピン人のトニョが手を差し伸べた。ユーモラスなトニョのおかげでレアは笑顔を取り戻し、ふたりは徐々に心を通わせていく。やがて失明から回復したレアは・・・。

 日本に来て気に入った…という、可愛らしいユカタ姿でトークの舞台に登場したシーグリッド監督。大阪アジアン映画祭では『アニタのラスト・チャチャ』でスペシャル・メンション賞も獲得している実力派の監督だ。女優も兼ねているという事で、とてもチャーミング。Q&Aでも茶目っ気たっぷりの回答で人気抜群だった。


(舞台トーク抜粋)

―どんな発想からこの映画が生まれたんですか

シーグリッド監督 以前映画を撮っている時に骨折をしたことがあり、その時は落ち込みましたが、「どんな時でも人生の明るい面を見て生きていく」と学び、そのメッセージを込めました。フィリピンにはOFW(オーバーシーズ・フィリピン・ワーカーズ)が多く、その人たちを主人公にすると暗い物語になりがちです。でも、この映画ではその明るい部分を描きました。主演の女優も飛び切り美人ではないし、男優も喜劇俳優なのでハンサムではありません。美男美女ではない二人のラブストーリーですが、美しさも「見方による」というのもテーマの一つです

―どうして札幌を舞台にしたんですか

シーグリッド監督 札幌には行ったことがありませんでしたが、プロデューサーが「時間もお金もないけれど、(撮影期間1ヶ月)札幌なら比較的安く撮れる上、とてもいい場所だ」と推薦してくれたので決めました。映画を見て、北海道に関心を示す人が増え、ツアーの数が増えたらしいです。 サッポロビールが重要な小道具として出てくるので、スポンサードしてくれないかな‥と思ったのにダメでした。まだビールの箱が届くのを待っています(笑)


『乳房よ永遠なれ』

(1955/日本/田中絹代)

 田中絹代は女優として有名だけれど、実は6本の映画を撮っている映画監督でもある・・・という事実は、さすがによく知られてきた。私はそのうちの3本(『恋文』『流転の王妃』『お吟さま』)を観ているが、今回この映画祭で『乳房よ永遠なれ』が上映されたのは嬉しかった。あとは『月はのぼりぬ』と『女ばかりの夜』の2本・・・地方にいると、こうした歴史的映画はなかなか観る機会がなくてツラいです。

 『乳房よ永遠なれ』は、乳がんのために若くしてこの世を去った戦後の代表的歌人、中城ふみ子について、最後の恋人だった新聞記者が書いた原作を田中絹代が気に入り、やはり女性の田中澄江に脚本を書かせて実現した作品だ。

 この映画の出来栄えは…「仰天するほど素晴らしい!!!!」

 田中絹代はだれでも知っている通りの大女優で、多くの巨匠のヒロインになっているが、彼女は撮られている時も、じっと監督のやることを観察していて記憶し、それを自分の映画作りに生かしたのではないだろうか。

 日本家屋の中で、低い位置から長い廊下を見せ、その奥から人が歩いてくるシーンなどは、小津安二郎の「ローアングル」をうまく真似て使っているし、霊安室に運ばれていく遺体の後をふらふらと付いていく鬼気迫るシーンなどは、溝口健二の「夢かうつつか判然としない夢幻的なシーン」を見事に踏襲していて震えるほど見事だ。もうひとつ、鏡の使い方の工夫。病院のベッドでふみ子(月丘夢路)は度々手鏡を覗くのだが、そこにあるのは月丘の顔ではなく前後左右の人物だ。ちらりと月丘の意志的な瞳が映り、すぐそのあとに彼女が見たいと思っている人物(恋人役の葉山良二)が映り込み視点が移動する…という印象的なショットに息をのんだ。

© 日活
© 日活

 親友(杉葉子)の夫(森雅之)への秘かな想いの表現も、バス停まで傘をさして歩く長いシーンや、彼が入った風呂に入れてもらって上気する顔などで、控えめながらすごくエロティックに描かれている。抑えた「女の欲望」がゾクゾクするほど伝わってくる。

 監督としての田中絹代の力量は傑出していたのだな・・・と実感した。女性監督の存在そのものが認められていなかった時代だったのがつくづく残念だ。今だったら「本格派の巨匠」として、次々に製作依頼が来たに違い ない。ああ、残りの二本も何とか観たい…。



『わたしたち』 監督 ユン・ガウン

この映画祭で上映された『わたしたち』(2016/韓国)ですが、ユン・ガウン監督にインタビューしました。9月23日に公開されていますので、このインタビューはすでに特別記事にて掲載しています。

シネマジャーナルHP 特別記事 『わたしたち』ユン・ガウン監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/watashitachi/index.html



『彼らが本気で編むときは、』  監督 荻上直子

荻上直子監督のインタビューも独立した特別記事として掲載いたします。

シネマジャーナルHP 特別記事 『彼らが本気で編むときは、』荻上直子監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/aichi/index02.html

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あいち国際女性映画祭2017

宮崎 暁美(東京在住)

22回目を迎えたあいち国際女性映画祭。この映画祭に私は1回目から通っているが、数回行けな かった年もあった。名古屋在住の高野さんと白井さんはともかく、東京から馳せ参じる私としては 交通費と宿泊代をかけても観たい作品があるかどうかが決めてである。今回のラインナップは、半 分以上、他の映画祭で観た作品だったので、行かないでおこうかとぎりぎりまで迷ったけど、ウイ ルあいちで宿泊ができることになり、結局行くことにした。しかし、このあと1ヶ月以内のうちに 香港&山形ドキュメンタリー映画祭が控えていたので、費用節約のため3日間にした。
でも、大阪アジアン映画祭で見逃していた『29+1』を観ることができたし、山上監督にも久し ぶりにお会いできた。そして素晴らしい作品にも出会った。

『七つの米袋』英題:Seven Sacks of Rice  監督:マリセル・カリアガ

<長編フィルム部門> ☆金のコノハズク賞(グランプリ)
フィリピン/2016年/103分
出演:アンフォンソ・イニーゴ・デレン、スー・プラド


 フィリピンの農家に生まれた少年バロン。懸命に働く両親、兄、妹の5人家族。貧しいながらも、仲良しな家族。両親の労苦に報いるため、兄のリトとともに勉学に励むが、米の蓄えは乏しく、生活はますます苦しくなっていく。地主から借りた農地で米を作るが、収穫時には地主にほとんど持っていかれ、一家に残された米は七袋。一家の米袋は一つ減り、二つ減りとジリ貧になる。兄弟で川や田んぼに行き、タニシやバッタを捕まえては売りに行く。たとえわずかでも家計の足しにと二人は働く。そして勉強も頑張っている。そんな助け合う健気な家族の姿が描かれる。フィリピン北部の美しい田園地帯を舞台に、苦しい生活の中で懸命に生きる家族たち。

 最近公開されたベトナムの『草原に黄色い花を見つける』も、そういう貧しい生活の中で、幸せをさがして懸命に生きていく家族の姿が描かれていたが、こういう「名もなく貧しく美しく映画」は、感動と反発と両方の側面があるような気がする。こんな社会がなくなるような世界が実現してほしい。


『天才バレエダンサーの皮肉な運命』 英題:After You're Gone

ロシア/2016年/120分
監督:アンナ・マティソン
出演:セルゲイ・ベズルコフ、アナスタシア・ベズルコワ


名高い天才バレエダンサー、アレクセイ・テムニコフは、90年代に注目を浴びたが、そのキャリアは短く突然に終わった。20年後の現在、バレエ教室を営んでいるが、冷徹な性格が周囲との摩擦を生む。そんな彼の姿に教室の先生も離れていく。しかし、本人は気にしない。去る人は追わずと強気。そんな彼も再起をかけて再度バレエに挑戦するが、病魔に蝕まれていく。そして人生の選択を迫られる。

ロシアのマリインスキー劇場で舞台監督や美術を手掛けてきたアンナ・マチソンがメガホンをとり、かつて天才バレエダンサーと謳われた中年男性に訪れる危機を描いた人間ドラマ。

主演はロシアの人気俳優セルゲイ・ベズルーコフ。マリインスキー劇場の芸術監督ワレリー・ゲルギエフが本人役で出演。2016年・第29回東京国際映画祭コンペティション部門上映作品。本作が3本目の長編劇映画となるアンナ・マチソン監督は、舞台との関わりも深く、本作でも威風漂う姿を見せるマリインスキー劇場の舞台監督や美術などを手掛けている。同劇場の芸術監督ワレリー・ゲルギエフが指揮するオペラの映像監督も務め、その縁でゲルギエフが本人役で登場する。「周りが自分をどう思うかなんて、気にせずただ生きるべきなのです。それこそが勇気であり、大胆であるということです」と監督は語る。

主人公アレクセイがエゴイストで、冷徹、皮肉たっぷりながら、どこか人間らしさも感じさせるキャラクターで、ここまで徹底していると、潔さまで感じた。それにしても、バレエのプロが演じているのかと思ったら、そうではなかったのですね。プロと見まがうばかりの華麗な踊りを披露していますね。バレエの回転シーンやジャンプシーンなど素晴らしかった。それともカメラワークで魅せられるものなのか。バレエの天才というのはなぜか孤高の人が似合う。


『ファイナル・ラウンド』 英題:Final Round

インド/2016年/111分/タミル語(日本語・英語字幕付き)/ 2016年/インド
監督:スダー・コーングラー
出演: R・マーダヴァン、リティカー・シン


かつて有名なボクサーだったプラブは、引退後女子ボクシングのコーチとして成功をおさめていたが、 持ち前の傲慢さが災いして協会と揉めて失墜してしまう。地方へと左遷されるが、赴任地で17歳の魚 売りの少女マディと出会い、その才能にひかれる。 しかし、彼女はボクシングに興味がない。 ふたりはタッグを組んでいけるのか…。

日本でもヒットした『きっと、うまくいく』に出演したマーダヴァンがコーチのプラブ役で主演してプロデューサーも兼ねている。マディ役のリティカー・シンは本物のキックボクサーである。スダー・コーングラー監督はマニラトナム監督(『OKダーリン』)に師事したそう。


ボクシングが好きでない私としては、この作品をパスしようかとも思ったけど、インドの映画で女性ボクサーの話なので観てみようと思った。今までインドの映画をけっこう観てきたけど、インドの女性がボクシングをやっているというイメージがわかなかったし、女性アスリートを育てるスポ根ものというので興味を持った。考えてみればインドの女性がスポーツをしている映画と言えば、サッカー選手をめざす『ベッカムに恋して』ぐらいしか思い出せない。そのくらいインドの女性はスポーツをできる環境にないと思っていたから、まさかボクシングをやっている女性なんて思ってもみなかった。この映画を観てわかったこと。世界の女子ボクシング界でインドの女性はけっこう強いらしい。インドの女性も心強い。


『たたかいつづける女たち~均等法前夜から明日へバトンをつなぐ~』

英題:Women Who Persist ~talk about the Discrimination in the Women's work now~
日本/2017年/71分
監督:山上千恵子
出演:林陽子、栗田隆子、三井マリ子、高木澄子、赤松良子ほか
製作:ワーク・イン<女たちの歴史プロジェクト>
認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)助成作品


映像から

 山上監督は「女たちの歴史プロジェクト」を立ち上げ、マスコミで取り上げられにくい女性たちの運動、歴史、文化などを描く作品を作ってきた。2004年製作の『30年のシスターフッド~70年代ウーマンリブの女たち』(共同監督 瀬山紀子)はシネマジャーナル64号(2005年)でも紹介され、68号(2006年)では「『30年のシスターフッド』アメリカへ!」というタイトルで、山上千恵子監督自身によるレポートが掲載されている。

この作品では、1984年、男女雇用機会均等法制定を前に雇用平等法の要望書をバトンに、労働省までクリスマスイブの街をリレーで走った女たちの姿が映し出され、この法律制定のためにたたかった女性たちの証言が語られる。30年の時を経て、雇用形態が多様化する中で、今はかえって差別が見えにくくなっていると語る人もいる。そして、今も続く差別とたたかう女性たち。「イブ・リブ・リレー」のバトンは今も女性たちに引継がれ、たたかいは続く。男女平等を目指して行動した女たちの活動記録を残しておかなくてはという山上監督の思いが込められている。

1985年、女性差別撤廃条約批准のための国内法整備の一つとして「男女雇用機会均等法」が成立した。しかし、出来上がったものは男女平等を求める女性たちの期待を大きく裏切るもので、機会の均等と引き換えにそれまであった保護規定で廃止のものがあったり、深夜残業解禁など、かえって女性の労働環境を悪くしてしまった部分もある。また、努力義務のみで罰則規定も無し。更に「総合職」「一般職」と女性を分断し、到底女性達が納得できるものではなかった。そのため、女性達は自分達が求める男女平等法を作ろうとたたかい始めた。均等法生みの親である赤松良子さんも、この中で「私だってフェミニストだから、もっといいものを作りたかった!」と語っている。

私が女性たちの運動に関わるようになったのは1975年の国際婦人年。「国際婦人年をきっかけに行動を起こす女たちの会」の活動に参加していた。ここに描かれた「イブ・リブ・リレー」の頃は地方にいて、こういう行動があったことは知らなかったが、ここに出てきた女性たちの何人かは知っている人たちだった。林陽子さん、高木澄子さん、三井マリ子さん、中島里美さんなど、懐かしい人たちの若い頃の姿を見て、多くの女性たちが勇気を持って立ち上がったから今があると思い、私もあの頃の思いを振り返った。そして、女性達はまだまだたたかい続けなければならないと思った。



(C)2017 China 3D Digital Entertainment Limited

『29+1』(香港)

監督・脚本 彭秀慧(キーレン・パン)
出演 周秀娜(クリッシー・チャウ)
   鄭欣宜(ジョイス・チェン)
   蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)
   楊尚斌(ベン・ヨン)
   金燕玲 (エレイン・ジン)

キーレン・パン監督のインタビューは独立した特別記事として掲載いたします。

シネマジャーナルHP 特別記事 『29+1』キーレン・パン監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/aichi/index03.html


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あいち国際女性映画祭2017 〜「愛知・ここだけ」を楽しみ、そして盛り上げる〜

白井美紀子

愛知県人が誇りと思っているものといえば「金の鯱ほこ」「名古屋港水族館」「徳川美術館」「犬山 明治村」……まだあるはずだが浮かんで来ない。若者ならきっとあれもこれもと教えてくれるだ ろうが高齢者には縁遠い。

さて文化的な奥行きは東京、大阪京都、福岡には一歩遅れている。それは私の周りの名古屋人に聞 いてみても皆同様に頷いてくれる。

そんな愛知の地で唯一日本では「ここだけ」の催しが、「あいち国際女性映画祭」だ。 近年、女性監督作品は世界中で増えて喜ばしい限りだが「女性監督」と名うつことなくてもいい時 代には、もう少し時間がかかりそうだ。

今年、22年目を迎えた「あいち」の映画祭を育てて行くのは映画好きを自認するたくさんの方々の 肩にかかっていると自覚しなければならないと思っている。

今年、観賞した中で深く印象に残った作品をあげてみた。


『オリーブの山』ヤエレ・カヤム監督/イスラエル、デンマーク/83分

エルサレム東部のオリーブ山にあるユダヤ人墓地の中の家で暮らす若い主婦ツヴィア。夫はユダヤ教の地域の本部に従事している勤勉な男でいつも疲れ切って帰ってくる。4人の子供の世話や家事の日々だが、子供たちが学校に出ていった後は、時々、気分転換にタバコを吸いながら墓地を散策する。ある夜、墓地で人目をはばかることもなく抱き合っている男女を目撃したツヴィア。彼女の単調な日々の生活に大きな変化が起きて…。


広々とした眺めの良い高台にある場所に白い墓がいっぱい並んでいる光景は息をのむ美しさ。そこに黒い服をまとったツヴィアが対比的に使われていた。

伝統的な戒律を守っている生活で、ツヴァイが穢れ(生理中)の時は夫婦のベッドを離していて、終わったら清めの水槽(ミクヴェ)に身を浸してから、ベッドを引っ付けていた。

ストーリーは変わりばえしないツヴィアの毎日を追っているが、彼女の見た男女たちは売春組織で、最後、彼女のとった思いがけない行動に唖然とした。


『天才バレエダンサーの皮肉な運命』アンナ・マティソン監督/ロシア/120分

若い時に天才バレエダンサーとして人気を得ていたが、90年代にある事故で引退を余儀なくされたアレクセイ・テムニコフ(セルゲイ・ベズルコフ)。

それから20年たった今は手広くバレエ教室を営んでいるが、傲慢な性格で周りとは上手くいっていない。事故の後遺症で体調が悪化する中、思わぬ人生の選択を突きつけられるアレクセイだった。本当のことを言うと対人関係がギクシャクする。だからあまり痛烈なことは言わないようにしている私たち。だけどアレクセイは絶対に自分に「嘘」をつかない。人にも絶対にお世辞はもちろん言わないし思ったことをそのまま言う。

よっぽど人間ができているか、すごく年下以外は彼を避けるようになる。

だが観ているこちらは彼の中年ながらも魅力的な風貌から出てくる「毒を含んだ言葉」に慣れてきて、もっと痛烈に!! と、思うようになった。

ラストのバレエシーンが素晴らしくロシア文化の奥深さも感じさせてくれた。


『こんぷれっくす×コンプレックス』


ふくだみゆき監督/24分/短編フィルム・招待作品

中学生の女の子はあるものに非情に興味をもっていた。 それは・・・ワキゲ。

そう、もじゃもじゃ、ボチボチ、チョビチョビ、ポッツポッツの毛のはえ具合など気になって気なって仕方ない女の子。プールの時間など男の子のワキばかりに目がいってしまう。誰にも言えないし誰にも知られたくない。どうして私はこんなにワキゲが気になって仕方ないのだろう。変態かも・・・。女の子は、勇気を出して「お気に入りのはえ具合のワキゲ」男の子に告白する。その顛末は中学生らしい終わり方だった。女の子の表情がアニメで豊かに描かれていた。絵もシンプルで的確な空間も感じさせてくれた。



☆ブログ「ミッキーの毎日・映画三昧」でも、あいち国際女性映画祭上映作品を紹介しております。 是非ご覧くださいませ。

http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/archives/20170906-1.html
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/archives/20170907-1.html
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/archives/20170908-1.html
http://mikki-eigazanmai.seesaa.net/archives/20170910-1.html


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