シャリファ・アリヤナ |
シャリファ・アリヤナは今も女優をやっているんですか?
Pete:やっているよ。彼女は本当に才能がある。MVを撮ったとき、彼女がカメラの前に立ってカメラを観た瞬間、もうその眼光の強さといったら! 普段は遊ぶのが大好きな女の子なんだよ。それが、舞台に上がった瞬間に、切り替わるんだ。才能あるよ。彼女のお母さんも女優なんだよ。
シャリファ・アリヤナには女優としてデビューしている3人の姉妹がいる。長女のシャリファ・アリヤはテレビドラマの女優で、映画『マクシン』では幼いオーキッドの母親役で出演している。次女のシャリファ・アマニは『細い目』のオーキッドを演じていた。一番下のシャリファ・アリシャは、ヤスミン・アハマド監督の最新作『Muallaf』にシャリファ・アマニと共に出演しているという。まさに女優一家である。
MVを観ても、いわゆるマレーシア・ニューウェーブの人たちが協力しているのを感じるんですが、このニューウェーブと呼ばれる活動が活発になったきっかけは何ですか?
Pete:始まりは5年前。映画に関して言うと、何人か重要な人間がいる。一人はジェームス・リー(李添興)。彼が最初にデジタル・ビデオを持ったんだ。誰も観る人いなかったんだけど、大学の小さな仲間内で見せていた。来ていたのは2,30人程でとても少なかった。その後、アミール・ムハマドやホー・ユーハン(何宇恆)と言った人たちが出てきた。最初はどれもとても実験的なものだった。まずお金がなかったし、俳優もいなかったから。みんなアマチュアだった。大きな変化が訪れたのは、ホー・ユーハンが国外で賞を獲った頃から。最初に撮った映画『ミン』で受賞したんだ。タン・チュイムイ(陳翠梅)も受賞、ジェームス・リーも受賞、そしてヤスミン・アハマドが出てきた。でも、ヤスミンには他の監督たちとの大きな違いがあった。ヤスミンは彼らと違って、金持ちだった(笑)。
重要よね。
左から ホー・ユーハン、ヤスミン・アハマド
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マレーシア政府は少しは態度が変わったんですか?
Pete:変わらないよ。マレーシア政府はまったく芸術をごまかしている。“文化”という文字を見ても、彼らには“芸術”という言葉は思い浮かばない。彼らの頭には“観光客”しか浮かばない。マレーシアの文化庁は“The Ministry of Arts, Culture and Tourism”と言うんだよ。みんな一緒なんだ。そして”Tourism”がこの中で最も金を稼ぎ出すでしょ。ニューウェーブ・フィルムは”Arts”なんだよ。そして映画が描き出すマレーシアは、政府が観光客に見せたいマレーシアではない
そうですか? わたしは彼らの映画を観てマレーシアに興味を持ったんだけど。
Pete:それが正しいよ。でも政府は違うんだ。以前から変わりはしない。たとえユーハンやチュイムイやアミールらが海外で賞を獲って帰ってきても、よくてちょっと賞金がでるくらいさ。今のところ、大きな変化は何もない。これは大きな問題だよ。
でも、もう一言付け加えよう。こういう状況はもちろん良くはないけれど、良い点もある。マレーシア・ニューウェーブはこういう状況から、とてもユニークな文化になった。政府の金はあてにせず、自分で資金繰りをするという精神は、作品にも影響する。出資者の顔色を気にする必要がない。だからとても個性的なものになるんだ。
ニューウェーブの監督たちの多くは地方から出てきている。ピート・テオもサバ州の出身だ。彼らはみんな貧しい。それこそがリアル・マレーシアなんだと、ピートは言う。そして、皆さんには博物館的なマレーシア文化ではなく、生きたマレーシア文化を観に来て欲しいと望んでいる。