3月11日(土)よりシネスイッチ銀座、109シネマズMM横浜ほかで公開される『かもめ食堂』。フィンランドはヘルシンキの街に1人の日本人女性が食堂を開きます。そこで繰り広げられる、ワケアリ?な日本人女性3人と、ヘルシンキの街の人々とのちょっと可笑しくて、あったかい日々が描かれます。肩肘はってがむしゃらに働いている人たちには「ちょっと肩の力を抜いてごらんよ」と、何の目的も無くぼんやり生きてる人たちには「ちゃんと食べて、ちゃんと生きてる?」と、ボンと肩を叩いてくれるような作品です。
この素敵な作品を撮ったのが荻上直子監督。『バーバー吉野』『恋は五・七・五!』に続き、これが劇場公開第3作目となります。これまでもユニークな設定と、どこか可笑しみのある人物描写で楽しい作品を撮っていますが、今回はまたフィンランドでおにぎりを売るというとびきりユニークな設定と、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこという、これまたとびきり魅力的な女優陣を迎えて、なんとも心楽しい作品に仕上がりました。公開に先駆けて、ここでは荻上監督の合同インタビューの一部と完成披露試写会の様子をお伝えしましょう。
1972年、千葉県出身。千葉大学工学部画像工学科卒業後、渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で学ぶ。2000年に帰国し、第23回ぴあフィルムフェスティバル/PFFアワード'01で音楽賞を受賞。PFFスカラシップの権利を獲得し、制作したデビュー作『バーバー吉野』(03)がベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞を受賞。第2作目『恋は五・七・五!』(04)も全国公開された。映画の他に、「サボテン・ジャーニー」(04、日本テレビ系)、「やっぱり猫が好き2005」(05、フジテレビ系)といったテレビドラマの脚本も手がけている。注目の若手女性映画監督である。
この映画を撮ることになった経緯を教えてください。
プロデューサーが何か思うところあったのか「フィンランドで映画を撮る」という企画を立ち上げまして、プロデューサーから群ようこさんに原作の執筆をお願いしたんです。わたしは『バーバー吉野』を撮った後に、もたいまさこさんと「次はどこか外国で撮りたいね」というようなことを話していましたので、喜んで参加しました。
では初めにフィンランドありきだったのですね。フィンランドと聞いて驚きませんでしたか?
実はわたしが学生のときに家にフィンランド人の学生がホームステイしていたことがあって、知らない国ではなかったんですね。ですから驚きも無くて、お話がきたときにやらせていただきたいと即答したんです。
フィンランドのスタッフと一緒に仕事をしてみて、印象に残ったことはありますか?
みんな本当に心根が良くて、いやな人とかいなくて、優しいんです。フィンランドの国民性が、ゆったり、のんびりしていて、街中を走っている人がいないんですね。時間が3倍くらいゆっくり流れてる感じ。撮影も3倍くらいかかるんですけど(笑)。最初はそれが慣れなかったです。わたしの中では「今日中にここまで撮ろう」というスケジュールがあるのですが、誰もついて来てくれなくて、1人で焦っちゃって。もうしょうがないと思って、3日目くらいからあちらのテンポに委ねることにしたんです。出来上がったものを自分で観てみたら、作品の中に時間がゆったりと流れていて、これは多分焦っているわたしを彼らのペースに引きずり込んでくれた結果、生まれたものなので、よかったなと思っています。
フィンランドで撮ったことで利点はありましたか?
日本じゃ考えられないんですが、10時間以上撮影してはいけないとか、土、日は休まなくてはいけないとかいった決まりがあるんですね。でもそのおかげで、考える時間が一杯持てて、次の撮影に集中できるということは良かったです。
先ほどはフィンランド人スタッフの良いところを仰ってましたが、逆にこういう点は日本を見倣ってほしいと思ったことってありますか?
疲れてくるとね、ダレてくるんですよ。目が死んできちゃって。日本の現場だと20時間やってても誰一人文句言わなかったりするんですよ。あの勤勉さってのはすごいなってあらためて思いました。まだまだ、もっと良い絵を撮る!っていうカメラマンが多いんですが、そういう意気込みはあんまり感じられ無かったなぁ。
コミュニケーションは何語でとったんですか?
英語です
フィンランド語は?
難しくて。でも撮影が進むうちに、フィンランド人は片言の日本語を、日本人は片言のフィンランド語を使ったりしていました。
監督の作品には必ずもたいまさこさんが出演されていますが、もたいさんに惹かれる理由と、小林さんと片桐さんの魅力についても教えて下さい。
もたいさんは普段はあまり喋らない、とても大人しい方なんですが、たまに喋ることが核心を突いていたり、ちょっと毒もあったりしてとっても可笑しかったりするんです。本当に不思議なオーラを持っている人で、わたしはそれが大好きです。
小林さんは、今回全編を通して何をやっても本当に綺麗で、お料理もきっと普段からなさっているんでしょうけど、姿が凛として美しくて、それはわたしが想像していた何十倍も素敵なものになりました。子供の頃から憧れていた方だったので、一緒にお仕事ができて本当に嬉しかったんです。天才なのかなと思わせられる人でした。
片桐さんは、普段はとても個性的で強烈なキャラクターを演じることが多い方じゃないですか。でも今回は普通の女性でいて欲しかった。今回の役では、意外にと言うと変ですが、今までの舞台や映画では観たことの無い、凄くチャーミングな片桐さんを見せて下さって、年上なのに失礼ですがとっても可愛らしく見えました。
『過去のない男』(02年、アキ・カウリスマキ監督)のマルック・ペルトラさんも出演されていますが、彼のキャスティングは?
主演の3人に関しては初めからキャスティングされていましたが、フィンランド人の出演者はみんなオーディションで選びました。彼もオーディションなんです。何十人もの後に出て来て下さって、やっぱり一番味があって、渋くて格好良かったのでお願いしました。
年金暮らしのおばさんたちも出ていると聞きましたが、その方達も?
3人のおばちゃんたちもオーディションで選びました。おばちゃんには困らなかったですね。よりどりみどりで(笑)。
撮影現場を見にくるおばさんたちもたくさんいたんですか?
いやぁ、そうでもないです。フィンランド人って、基本的にシャイなのであんまりミーハーな部分がないみたいですね。
フィンランドの街並に匹敵するほど、シナモンロールなど食べ物も印象的ですが、そのあたりのこだわりはありましたか?
もちろんあります。この映画は食堂の話で、食べ物が4人目の主役なので、絶対に美味しそうに撮りたかったし、おいしそうに食べている人を撮らなくちゃいけないと思って、優秀なフード・コーディネーターをスタッフに入れて、彼女に映画の中に出てくる食事は作ってもらいました。実際食べてもおいしくて、フィンランド人のスタッフもパクパク食べてました。
食べ物をおいしく見せる工夫はどのようにしましたか?
食べ物のレイアウトが一番重要なのかなと思って、日本で事前にフード・コーディネーターと食器の組み合わせなども含めて研究して行ったんです。多分カメラマンもおいしそうで食べたいなと思って撮ってくれたんだと思います。
食べ物は元気の源というイメージなのだと思うのですが、監督にとって一番元気になる食べ物は何ですか?
米ですね。実はわたしはあんまり炊事が得意じゃなくて、ほとんどやってこなかったんですが、この映画をきっかけにご飯を鍋で炊くことを始めて、鍋で炊くとこんなに美味しいんだと発見しました。
日本でもフィンランド映画『ヘイフラワーとキルトシュー』が公開されて、あちらはちょっと過剰なほどポップな世界でしたが、今回は真似したくなるようなシンプル&モダンなインテリアでした。インテリアに関しても食器と同様かなりこだわったのですか?
フィンランド人ってあんまり服装にこだわらないらしく、そんなにカッコいい人とか見かけないんですけど、インテリアに関してはどこの店を覗いても、シンプル&モダンないいものを使っています。それは一般の家庭にお邪魔してもそうで、アンティークなものを大事に使っている人たちなんですね。そういった日常的に使っているものを無理なく映画にも使いたいと思って、選びました。
ご自身のお部屋も変わりましたか?
変わりましたね! フィンランドは結局5回往復したのですが、行くたびにイッタラ社の食器を重たい思いをして買ってきましたし、引っ越しをしたばかりだったこともあって、カーテンの生地をガツンと買ってきて母親に縫ってもらったりして、すっかりフィンランドです。
最近の映画ファンはロケ地を訪ねて行ったりする人も多いですが、今も訪ねて行ける場所などはありますか?
ありますよ。ロケ地マップも作ったんです。かもめ食堂も今はもとのお店に戻って営業していますが、わたしたちがつけたガラス戸のところの「かもめ食堂」のロゴだけ残してもらってあります。
登場人物の過去はほとんど語られなかったり、場所がフィンランドであってもいかにもフィンランドらしい風景を前面に出すわけでは無かったりと、全部を見せないところに豊かさを感じたのですが、監督としてはどういう狙いがあったのでしょうか?
フィンランドで撮るからといって、わざわざ森や湖をたくさん見せるような押し付けがましいことはしたくないと思っていました。食堂がメインなので、そこでの撮影が多くなるというのも必然だったのですが。主人公たちが頑張って、何かを必死に成し遂げるというタイプの人たちではなくて、自然にゆったりと、姿勢を正して潔く、でも肩の力を抜いて生活している様子が素敵だったので、作り手の側も肩の力を抜いて、押し付けがましくないものを撮ろうと思っていました。
ガッチャマンやおいしいコーヒーの入れ方など、色々と面白いエピソードがありますか、原作にあったものと監督が演出で付け加えたものを教えて下さい。
ガッチャマンは群さんの原作にありました。コーヒーの入れ方の話や、プールのシーン、あとファンタジーの部分はわたしが付け加えさせてもらいました。
そういう面白いシーンを考えるヒントはどこから?
ヒントと言うか、体感的に自分がこの人だったらと考えるんです。例えば、ずっとかもめ食堂の中にいて、退屈しないはずがないと思うとプールに行かせちゃったりとか、もたいさんのキャラクターだったらこの時点ですぐに買い物に行きたいだろうとか、すぐに森に走って行きたいだろうとか、そういう考え方で次のシーンへとつないでいます。
一番お気に入りのシーンは?
ミドリとサチエの会話で、ミドリが「それもたった今思い付いたこじつけですか?」と聞いたときに、サチエが「バレました?」と言うのですが、その時の小林さんが凄く可愛くて大好きなんです。あと、3人がおにぎりをむすんでいるシーンも好きだし、最後のシーンはとっても好きですね。
この映画は一番どんな人に観てもらいたいですか?
色んな人に! 日本人だけでなく、もちろんフィンランド人にも観てもらいたいし、仕事を一生懸命やっちゃってる人に観てもらいたいですね。
では特に女性映画としてつくったわけではないのですね?
全然、そんなつもりはないですね。わたしは極力フェミニストな方向へは行かないようにしています。
フィンランドでの公開は決まっているんですか?
日程までは決定していないのですが、秋頃に公開予定です。
監督自身は主人公サチエ、ミドリ、マサコの誰に似てると思いますか?
フィンランドでの撮影という未知なるものの大変さをあまり考えずに行動に移せてしまうあたりは、サチエと似てるかなと思います。でもミドリのチャーミングさが自分にもあるといいなと思います。
監督の理想の女性像は?
このかもめ食堂のサチエさんには憧れますね。強くて、1人で生きてゆけて、なんでも受入れられる懐の深い人ですよね。憧れるけれど、自分はなれないかもと思います。
この映画を撮って、監督自身は何か変わったことはありますか?
マダマダだなというのが、今回ベテランの役者さんたちと仕事をして分かったことで、演出力をもうちょっと頑張ってどうにかしたいと思いました。そしてフィンランドで映画が撮れたから、もうどこででも撮れるという自信につながったので、もちろん日本語が好きなので日本でも映画を撮りたいのですが、もっと他の外国でもまた映画を作りたいなと思っています。
映画を撮るときに共通して描きたいものはありますか?
う〜ん、わかんないなぁ。何だろう。(しばし思案)わたしはアメリカで6年暮らしていたので、無意識のうちに日本の文化に対して敏感になっていたようで、これからもそれは引きずるのかなと思います。
日本の映画界に女性監督が少ない中で、荻上監督は比較的順調に作品を撮って来ているという印象があるのですが、プレッシャーなんかは感じますか?
それよく聞かれるんですけど、全然ないです。今回は特にフィンランドという国が女性の9割は働いているし、大統領も女性だし、だからなのか離婚率も高いらしいのですが、監督が女性であっても当たり前みたいな環境で映画を撮ることができたので、余計に感じませんでした。日本でもあまり感じていないです。ただ、たまに女性監督だったら誰でもいいと思って仕事を依頼してくるプロデューサーがいて、そういうのは分かるのでお断りするようにしています。映画監督は男女関係なく大変な仕事だと思います。
作品を観ていると時おりフォトジェニックで良い場面が観られるのですが、学校はアラーキー(荒木経惟)さんの後輩にあたるわけですね。学生のときはどんな写真を撮っていたのですか?
子供や人物を撮っていました。アラーキーさんはとても好きで、そういうのを目指して千葉大学へ行きました。
監督として日常的に気をつけていることはありますか?
いっぱいありますよ。えっと、レトルトものはあんまり食べないようにしようとか、お酒はあんまり飲み過ぎないようにしようとか、お酒で記憶をなくすのはもうやめようとか、わたしはマザコンなので母にこれ以上頼るのはやめようとか(笑)。映画に関して言うと、次にどんなものを作ろうかということは、常に考えています。友達と飲んでいても、犬の散歩をしていても、いつもいつも考えて探して歩いている感じがします。
この次の企みは?
フィンランドで映画が撮れたので、また外国で映画が撮りたいなと思っています。そして、次を撮って自分の持ち味を決定づけられればいいなと思っています。
こちらはインタビューの一部です。更なる内容は、4月末発売予定の次号のシネマジャーナル本誌(67号)に掲載予定です。
2006年2月27日(月) @ TOKYO FMホール
公開に先駆けて行われた完成披露試写会では、上映の前に荻上直子監督、原作者の群ようこさん、そして3人の主演女優、小林聡美さん、片桐はいりさん、もたいまさこさんによる舞台挨拶が行われました。片桐さんが司会を務めるちょっとしたトークショー形式でしたが、片桐さんが「なんか、ちょっとどうしよう・・・」という感じでアタフタしてる様子が可笑しかったです。小林さんはチャキチャキとして軽妙で、完全にツッコミ型。もたいさんは、口数は少ないのですが、口を開くと絶妙の間でボケたりツッコンだり。3人とも抜群のコンビネーションを見せてくれました。
片桐:こんばんは! 私はフィンランドにあるかもめ食堂の従業員の代表としてまいりました、ミドリ役の片桐はいりです。よろしくお願いいたします。この映画は2005年7月から9月まで、ヘルシンキでオールロケを行って撮影しました。わたし、ミドリはある理由で日本からフィンランドへ旅立ちまして流れ着いたかもめ食堂の店主のサチエさんに凄くお世話になりました。その店主のサチエさんを紹介したいと思います。サチエさん!
小林:どうも〜、みなさんこんばんは。
片桐:お世話になりました。
小林:こちらこそ。ちょっと、なんではいりさんが司会を?
片桐:スタッフ代表ということで。
小林:ご苦労様です!
片桐:じゃ、もう1人紹介しますね。私のスタッフ仲間で、最後にやって来るお客さんのマサコさん役のもたいまさこさんをご紹介します。
小林:司会がいないで、3人でどうすればいいでしょう。
片桐:まあまあ、いかがでしたか? かもめ食堂のロケは?
小林:去年の8月の半ばからひと月かけてヘルシンキという街でロケをしましたが、行ったっきりで、撮影しかやらなくていいという、非常に恵まれた仕事の環境で。
片桐:ブロイラーみたいなね。(笑)
小林:本当にのんびりと楽しく撮影させていただきました。どうでしたか?
もたい:えっと、この映画は去年の8月の・・・
小林:同じこと言ってるから。(笑) 笑いに持ってくとそういう映画と勘違いされるから。ね、わかった?
もたい:とてもフィンランドと言うところは日本人の感覚と似ているところがありまして、もともと蒙古斑があるという、つながりがあるんですね。
片桐:このあいだもスウェーデンの方に「フィンランドの方ですか?」って聞かれたんです(笑)。なんか似た感じがあるんだそうですよ。
小林:なんかのんびりした感じというか、静かな感じ。「Oh! Yeah!」って感じじゃなくて、良くても「良かったよぉ」ってあんまり言わない。「くそぉ!」って思ってもあんまり悔しがらないとか、感情の表現の仕方が近いものがありますね。
片桐:親しみやすい感じでした。
小林:帰りたくなかったですもんね。
片桐:はい、街のリズムに馴染むと。それでは、かもめ食堂の生みの親であるお二人をお呼びしてよろしいでしょうか? 原作の群ようこさんと、監督の荻上直子さんに登場していただきたいと思います。
<お二人登場>
片桐:群さんはヘルシンキに行ったんですか?
群:いえ、行ってないんです。
片桐:監督は何回行かれたんですか?
荻上:わたしは5回往復して、合計3ヶ月ちょっといました。
片桐:あちらに行ってみて驚いたことがたくさんあったんです。原作はどうしてこの雰囲気が分かったんだろうって。
群:あ、ありがとうございます。行ってないで書いちゃったというのが、一番わたしの中で汚点という。
小林:フィンランドの映画観たり、本を読んだりとかはしたんですか?
群:アキ・カウリスマキの映画が好きで観てたりしてましたけど、この原作を書くのには観光ビデオ2本と地図帳と、旅の指さし単語帳・・・
小林:あれ便利ですよね! ずいぶん役立ちました。
群:それらを資料に書きました。
片桐:行くときに飛行機の中で、シナモンロールが出て来て「なんでこんなこと群さんはご存知だったんだろう?」って思ったんですよ。
小林:映画を観た後だと観客の皆さんと共有できるんですけど、観てないのにあいつらだけ盛り上がってみたいなのもなんかね。(笑)あ、監督にもなんか聞いて下さいよ、司会なんだから。
片桐:あ、いかがでしたか、監督?
荻上:わたしもアキ・カウリスマキの映画ぐらいしか知らなくて、どんよりしたイメージがあったんですが、空が青くて、高くて、澄んだ空気で、ゆったりのんびり、走っている人がいないところでした。
片桐:一回、街なかで凄い走っている人がいるなと思ったら、スタッフでしたね。(笑)この映画は俳優の身の回りの人以外は、ほとんどがフィンランドのスタッフで、言葉が通じなかったりしたんですが、監督はそのあたりはどうでしたか?
荻上:テンポがのんびりゆったりしているので、最初はちょっとイライラしてしまいましたが、だんだん彼らの良さに引きずり込まれていってという感じでしょうか。
片桐:動じないスタッフでしたね。
小林:でも撮影スタッフって、まあ外国で撮影したこと無かったのでわかりませんが、似たような雰囲気を持っていますね。音声さんは音声さんぽいし、照明さんは照明さんらしいし。
片桐:そですねぇ・・・ あぁ、あと何をお話しすればいいんだろう。
小林:映画の見どころとか聞いて下さいよ。
荻上:ごはんがおいしそうなんです。小林さんが多分普段からやっていらっしゃるんだろうなという立ち振る舞いで・・・(小林さん、ちょっと得意げで笑いを誘う)
片桐:皆さん、ごはんを召し上がってからご覧になった方がよろしいかと・・・
もたい:もう、手遅れです(爆笑)
小林:はいりさんはどうでした?
片桐:わたしは色々と遊びに行ったりとかしてしまったのですけど、街の流れるリズムが全く違っていて、それを感じていただけると、映画の不思議なリズムも感じられるのではないかと思います。
小林:多分、大爆笑とか期待して観ると、ちょっと期待はずれだと思います。多分、笑うのは1ヶ所位じゃないでしょうか?
もたい:そうですね。それもクスッと心の中でね。爆笑は全然ないと・・・
小林:全然ないですか。ごめんなさい。(笑)
もたい:群さんは原作と出来上がったものと、どう違うと思いますか?
群:そうですね、映画の方が優しい感じかしら。脚本は荻上さんが書いてくれたじゃないですか。決定稿を読んではいたんですけど、映像が具体的に分からなかったんですね。試写で観たときに、原作にないところがわたしはとってもいいと思ったんです。わたしはフィンランドに行っていたとしてもあのシーンは書かなかったと思うし、原作を読んで彼女がイメージしてくれたことなんですが、それがとても良かったです。
荻上:逆に映画に無いところが原作にはあったりもします。
小林:そうなんですよね。映画を観る限りでは3人の背景が見えてこないんですけど、「なんで3人はフィンランドへ行ったのか?」とかそういう疑問を持たれたら、原作を読んで下さい。謎が全て分かります。過去が書かれていますので。
群:歌舞伎みたいだと言われるんですよね。筋書きを見つつ、映画を観るとより分かりやすいという。
もたい:2度楽しんでいただけると思います。原作も併せてということでございます。
(小林さんももたいさんも、おもいっきりセールス口調で場内の笑いを誘う)
片桐:監督の方から他に映画の見どころなどを。
荻上:えっ、えっと、やっぱり主演の3人の女優さんたちがとても美しくて、凛とした佇まいがわたしはとっても好きです。それは観ていただけば伝わると思います。
3人:ありがとうございます!
片桐:えーっと・・・ 観終わってとても不思議な映画です、きっと。面白くても面白いと、面白くなくても面白くないと、声を大にして色んな人に言っていただいて「ホントカ、ホントカ?」と観に来ていただけたら嬉しいと思います。えー、よろしいでしょうか?
小林:いいですよ。もー、たっぷりやりました。この後、観ていただかないとね。
片桐:そうですね。早く観ないと、お腹空いちゃいますもんね。それでは。
舞台挨拶の後に主演の3人を囲んで記者会見がありました。そこでひとつ面白かった質問が、「それぞれの思い出の食堂はありますか?」というものでした。
もたいさんが「年も年なので、外食が苦手で、1人でお店に入って食べられるのはおそば屋さんぐらい。だから、かもめ食堂のようなお店があったらいいなと思います」と答えていらっしゃいました。もたいさんは自分で料理はしないとも仰っていたのですが、では普段の食事はどうされているのでしょう??
小林さんも「かもめ食堂のような場所があったら行きますね」と仰ってました。確かに1人で気軽にバランスの良い、美味しいご飯を食べられる場所って少ないんですよね。
片桐さんは「大森のダイシン百貨店のお好み食堂が好きで行ってました」とのお答え。正式名称は「ダイシン百貨店ファミリー食堂」。昔懐かしい百貨店の最上階のナポリタンとかお子様ランチとかがある食堂が健在なんですね。一度、行ってみようかな。
とにかくおいしそうな食事とおいしそうに食べる人たちがたくさん出てくるので、くれぐれも空腹のまま映画館に行かないようご注意申し上げます。そしてもしも銀座で観終わって、シナモンロールが食べたくなったら、松屋へゴー。銀座本店地下1階和洋菓子売場に「ムーミンベーカリー&カフェ」が映画公開中の3月15日〜26日まで登場し、劇中のシナモンロールそっくりなシナモンプッラなどフィンランドの味が味わえるそうです。
3月11日よりシネスイッチ銀座、109シネマズMM横浜ほかにてロードショー