独特の気だるい雰囲気で、熟女の香りを振りまいている女優桃井かおりさんが、自身の小説を元に脚本を執筆してメガホンを取った、初監督作品『無花果の顔』が、いよいよ初日を迎えました。前夫役の石倉三郎さんと後夫役の高橋克美さんを両脇に従えて行われた、爆笑、爆笑の舞台挨拶の模様をお届けします。
司会は、襟川クロさん。
司会:外で大きな拍手を聞きながら、皆さん嬉しそうに観てくれたのだなぁ〜と思いました。今日はたくさんの公開初日作品がある中で、この映画を選んでいただき、ありがとうございます。今日は監督で主演の桃井かおりさん、二人の夫、石倉三郎さん、高橋克美さんの3人に起こしいただきました。
舞台脇から登壇する3人。桃井かおりさんは、深くスリットの入った赤と黒のセクシーなドレス姿。もう、満開の花のよう。男二人従えて、堂々の登場でした。
司会:艶やかで美しい桃井さん、まずはご挨拶を!
桃井:朝早いので、ほんとにご迷惑おかけしています。今日で映画を手放すことになり、ほっとしています。今日いらして頂いた方は共犯者。チケット2〜3枚は売りつけて、助けてくださいね〜
司会:Ex−husbandの石倉さん、どうぞ!
石倉:本来、私が本夫です。皆さん、ご覧いただけましたか?(拍手) 桃井監督から声をかけて頂いた時には、天にも舞い上がる気持ちで参加させて頂いたのですが、撮影は地獄でした。(笑)これ程フレキシブルな監督は初めてで、私たち凡人には思いつかないような発想をされるので、何百分の1も理解できないようなことばかりでした。OK貰った時には、ほんと、ほっとしました。長い間この世界にいますが、初めて仕事したなぁという気がしました。(笑)
釜山では招待作品として上映して頂いたのですが(拍手)、外国の辛口の記者の方が、コンペに出していたら、間違いなく主演男優賞だと書いてくださいました。長い間俳優をしてきて、これ程名誉なことを言われたのは、初めてです。あきらめず、こつこつやっていれば、こういう名誉も頂けるのだなと、胸がいっぱいになりました。今年還暦を迎えたのですが、私個人へのはなむけだと思いました。来年に向け、大きなエンジンを頂いた思いで、監督には、ほんとに感謝しています。また、2月には、ベルリン国際映画祭の招待作品に選んで貰えました。(拍手)
(ガッツポーズをする、桃井かおり監督!)
司会:2番目の夫になる高橋克美さん、どうぞ!
高橋:後夫役の高橋です。(笑) 私も話を頂いた時には、子供の頃から憧れていた桃井さんからということで、舞い上がってしまいましたが、現場は大変でした。桃井ワールド炸裂で、ノロウィルス以上に強烈でした。(笑)出来上がった映画を観てみて、作品を観るというより、あ〜この時なぁ〜と、シーン、シーンを思い出しまして、これ程ロケ現場を思い出す映画も初めてでした。センスがセンスしている感じで、色彩感覚といい、大好きな映画です。ベルリンでは初日に上映してくださるとのことで、招待と初日とで二重にめでたいことだと思います。(拍手)
司会:ところで、撮影の時には、何を撮っているかの説明をしないで撮っていたのですって?
桃井:今どの場面なのかの現場の説明をしないで、生撮り、活け撮り。例えば、コロッケ食べているシーンは、お父さんが死んだシーンなのだけど、私が「お父さん、遅いわねぇ」と言ったら、しばらくリアクションがなくって、やっと花ちゃんがコロッケに手をだしてくれて、場面が繋がったんです。日常的な姿を出したいなと。自分が活け撮りされたいタイプなんです。
司会:プロでもアマでもアドリブで自然体で撮るには、演じる人も上手くないとダメですよね。
桃井:お父さん活け撮りの時、例えば、塩辛を食べてる時には、「ナメクジみたいね〜」とか、いやなことばかり言ってみたら、活性化して、機嫌がよくなっていって・・。窮地に落ち込むと明るくなるんです。後夫の方は、花ちゃんが出来ないとフォローばかりするので、隔離して撮りました。(笑)
司会:シナリオはちゃんとあったのですよね?
全員:はい!ちゃんと。それほど変わってないですよ。
石倉:花ちゃんと僕は似たようなタイプ。美人の妻からは生まれない。かけあわせると、こうかなと。
桃井:花ちゃんは、今日は大阪で、一人で舞台挨拶頑張ってます。野放しにしておいて大丈夫だろうと。
司会:それにしても、突然のプロポーズでしたねぇ。
高橋:すべてが理解を超えたところで起こるんです。居酒屋だっていうので、前掛けとかするのかなと思ったら、なんだかきちんとした衣装で・・・。いまだに納得してないですよ。
桃井:あの日は、3時間で撮らなくてはいけなくて、しゃべっちゃいけないバーにして、プロポーズも早くしたんです。
高橋:完全に注文してる感じでしたよね。
桃井:照明の中村さんが、「いいの? こんな早くて?」と、崩れてましたね。ちょっと早いかなと思ったけど、1回で決めにしてしまいました。
司会:今回は、もう一つサプライズがありましたよね。
桃井:主題歌をロスで作ってもらったのですが、オカマが少年を狙ってるみたいなところを入れたいと、日本語の詩を私が書いたのを渡して、入れてみたら、いい感じになったの。静かなる全米デビューなの。フィグ&ピーチとして上昇中です。応援してね。
司会:コンビニのシーンでもバックで流れてましたよね。
桃井:主題歌も応援してほしいけど、『大奥』『武士の一分』を相手に戦っている映画。『大奥』には出てなくてよかった。誘われそうなタイプなのにね。『武士の一分』だけじゃなくて、無花果も観なくては、人生わからない!
石倉:私、『犬神家の一族』にも出てるんですが、あれだけ観ただけじゃ私がわからない。
桃井:『犬神家の一族』で仮面の中は私だと言ってるの。
高橋:池の橋は僕ってことでいいですか?
桃井:何しろ大金と闘っている映画です。応援してくださいね。
「フォトセッションに移ります」の声に、客席から、大きな花束がいくつか届きます。満面の笑みで受け取る桃井さん。いよいよ、3人並んでポーズをとったところで、「ポスターをそばにお持ちしますね」と、さえぎられる。「そうよね、これなくちゃ、何の映画かわかんないものね」と、桃井さんらしい言葉がぽろり。最後まで、爆笑爆笑の舞台挨拶でした。
食卓を囲む家族の会話や、突然家族が逝ってしまったときに、悲しむよりも、なんだかわからない行動を取ってしまうところなど、映画は、ほんとにどこにでもありそうな日常を描いているのに、桃井かおりワールド炸裂で、久しぶりに素直に笑ったり、泣いたりできました。でも、実を言うと、マスコミ向け試写では、あまり声をたてて笑ったりする人がいなくて、笑い声を押し殺すのが辛かった! 劇場でもう一度笑いなおしたい映画です。
『無花果の顔』12月23日(土)より、シネマスクエアとうきゅう他 全国ロードショー
作品紹介