女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『私の頭の中の消しゴム』来日記者会見

チョン・ウソン、イ・ジェハン

2005年8月9日(火) 於 キャピタル東急ホテル
出席者:チョン・ウソン、イ・ジェハン監督
司会:伊藤さとり

10月下旬からのロードショーを前に、都内ホテルにて『私の頭の中の消しゴム』PRのために来日したチョン・ウソンとイ・ジェハン監督が記者会見を行った。

本作は、若年性アルツハイマー病に侵された社長令嬢スジン(ソン・イェジン)と工事現場で働く大工のチョルス(チョン・ウソン)のラブストーリー。(2004年釜山映画祭期間中に行われたセールスプロモーションで)昨年末の時点で、日本が買い付けした韓国映画の中で一番高い金額で交渉が成立したことが話題をさらった作品だ。

チョン・ウソンは今回が5度目の来日だが、間違いなく今までで一番の盛況ぶり。会場にはムービー30台、スチールカメラマン100人、記者と合わせて約400人が集まり、立ち見の人たちがドアからあふれ出てしまうほどの熱気だった。

壇上に現れたチョン・ウソンは白いシャツにジーンズ、グレーのジャケット姿。顔が小さい、そして脚がなが〜〜い。

しばしうっとり。モデル出身だけあって立ち姿が美しく、惚れ惚れするスタイルのよさである。日に焼けた顔つきが精悍そのもので、笑うと歯の白さが際立つ。頬も引き締まり、ぐっと大人の男の魅力が増してきた印象を受けた。

以下は記者会見の抜粋。監督も同席でしたが、場内の注目がチョン・ウソンに集中したせいか、発言も控えめだったのでチョン・ウソンの発言のみをまとめました。

Q1 映画の中でコーラを飲んでゲップ?するシーンが印象的でしたが、撮影のときにあの音がでるまで大変だったのでは?

ウソン 意識して音を出そうとするとなかなかうまくいかず、缶コーラを8本くらい飲んだ記憶があります。ただ私は男ですから比較的うまくできたかなと思っています。ソン・イェジンさんのほうが女性ですから、あの音を出すのは大変だったと思います。

Q2 チョン・ウソンさんの頭の中に消しゴムがあるとしたら、一番消したい記憶、人は何ですか? また消したくないものも教えてください。

ウソン 消したい記憶はありません。なぜなら今の私という存在があるのは過去があるからです。過去というのはつまり記憶であり、思い出という言葉に置き換えられると思います。その記憶を消してしまうことは真の私の姿を消してしまうことになると思うからです。
 とはいえ、もし他のものがすべて消えてしまってもひとつだけ残したいものがあるとすればやはり愛ですね。そして愛する人です。愛という記憶は自分でもっていると同時に、相手も持っていてくれている、つまり相手は私の記憶もすべてもっているということです。ですから、愛する人を覚えておくというのは、私自身の記憶もそれだけたくさん持っていられるということだと思います。

Q3 羽田空港でたくさんのファンに迎えられていかがでしたか?

ウソン ファンの皆さんが待っていてくださって嬉しくて本当に感謝をしています。ファンの方たちの姿をみると、私は謙虚な気持ちになります。私は映画が好きで、その好きな仕事をして、演技をお見せしているだけなんですが、そんな私に無条件の愛を与えてくれるということに本当に感謝しています。

Q4 座右の銘は?

ウソン いつも心の中で考えている言葉が「尊重」という言葉です。それは対象がたとえ物であれ、人であれ、何に対しても尊重する気持ちが大切だと思っています。

Q5 ウソンさんはこれまで男っぽいタイプの映画に出演してきましたが、今回本格的な恋愛映画、そしてとても感性豊かな作品に出演したことで、自分の気持ちの中で変わったと思うことや、発見したこと、感じたことがあったら教えてください。

ウソン 私は20代の頃からラブストーリーに興味がありました。影響を受けた映画もやはりラブストーリー、メロドラマが多かったんです。20代のときに演じたかったのも、愛の物語でした。でも実際は男の友情がメインの映画がとても多かった。なかなか恋愛映画に出演するチャンスがなかったので、喉の渇きを覚えるような気持ちで、(いい作品に出会うことを)待ち望んでいました。その気持ちが最も大きくなったのが『MUSA 〜武士〜』に出演した後でした。ちょうどそのときにイ・ジェハン監督から本作のシナリオをもらったのです。とても嬉しく思いましたし、すぐ出演を決めました。

Q6 一番印象に残っているシーンは?

ウソン ラストのコンビニエンスストアのシーン。それから何といってもエンディングです。あのシーンは悲劇的な状況ですが、どこかに希望をもたせてくれるシーンだと思います。スジンとチョルスがどこかに向かって旅立っていく姿が、希望を与えてくれるのがよかった。とても切ない現実ではありますが、若い男女が「見えない希望」を探して旅立っていく、その姿がとても美しいと思いました。演じながら、美しい涙を流せるのではないか、と思いました。


ここまでで質疑応答は終了し、花束贈呈へ。

この映画は日本のTVドラマ「Pure Soul 君がぼくを忘れても」のリメイクということで、TV版に主演した永作博美さんが花束をもって駆けつけた。永作さんはチョン・ウソンの印象を聞かれ、「実物のほうが(映画の中より)数段素敵です、もし(ウソンさんと)共演するとしたら、『私の頭の中の消しゴム』はとっても悲しい話なので、ハッピーなお話で共演したいですね」とコメント。それに対してチョン・ウソンがハングルで返答。通訳さんが「ええ、もちろんです」と訳したのを聞くと、すかさず真似して「モチロンデス」と日本語で答えてくれた。

 映画の中でチョン・ウソンが演じるチョルスは、とてもぶっきらぼうな男性だったが、実際にみた彼はささやくような声で物静かに話す男性。そのギャップがまた会見に集まった女性陣のハートを掴んでしまったこと、間違いなしです。韓国では大スターの彼、今までテレビドラマにほとんど出演しておらず、映画でも作品を厳選してきたせいで、日本での知名度はそれほど高くありませんでした。が、この作品で一気にブレイクすること間違いなしですね。



イ・ジェハン
イ・ジェハン監督
ちょっと、うじきつよし似





チョン・ウソン
チョン・ウソン氏




チョン・ウソン




イ・ジェハン
永作さんから花束をもらう




永作博美
永作博美さん




チョン・ウソン、イ・ジェハン




チョン・ウソン




チョン・ウソン




チョン・ウソン

作品紹介はこちら

チョン・ウソン氏お出迎え&『私の頭の中の消しゴム』舞台挨拶レポート

8月末発売のシネマ・ジャーナル65号にも『私の頭の中の消しゴム』詳細記事があります。

return to top

(記事:吹田恵子 まとめ:景山咲子 写真:梅木直子)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。