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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

(1)[泥沼化するパレスチナ情勢・・・今ぜひ見て欲しい!『プロミス』作品紹介]
(2)[5月28日 プロミス特別試写会 監督トークショー レポート]
(3)[5月30日 監督インタビュー レポート]

『プロミス』特集

『プロミス』監督トークショー

May 28, 2002
(渋谷クロスタワーホールにて)

『プロミス』試写会の後、3人の共同監督の内、B.Z.ゴールドバーグ(以下:BZ)及び カルロス・ボラド(以下:カルロス)を招いてのトークショーが開かれました。

B.Z.ゴールドバーグ、カルロス・ボラド

◆はじめに(BZ)
『プロミス』は、1995年秋 パレスチナ・イスラエル双方の子供たちへの取材開始から、6年かかって出来上がりました。この間に撮った約200時間のフィルムを編集したものですが、この6年は、イスラエルとパレスチナの関係が比較的穏やかだった時期でした。状況が悪化した今では作れなかったものですが、お互いの欲望や怖れなど今に通じるものです。

Q: 撮影に当たり、親が反対した子供はいましたか?

BZ: 皆サポートしてくれました。皆、子供たちを誇りに思い喜んで参加させてくれました。
100人以上の子供たちに取材し、その中から20人にしぼり、最終的に7人を選びました。

カルロス: 1人だけ、映画には出なかったのですが、両親の許可を得られないパレスチナ人の女の子がいました。

Q: 今でも子供たちと交流は続いていますか?

BZ: ほとんどの子供たちとコンタクトを取っています。今日も双子の兄弟から E-MAILが届いてました。

カルロス: 状況は悪いけど皆元気にしています。撮影を通して、家族の様な気持ちなんです。

Q: 現実的にパレスチナーイスラエル問題が解決して欲しいと皆思っているが、お2人は具体的にどう考えているのですか?

BZ: とてもとても難しい質問ですね。私たちは政治家ではなく映画監督なので実際に手は下せませんが、いつか将来2つが1つになる時が来ると思います。それがどうやっていつ実現するかはわかりませんが・・・ ヨルダン川西岸からイスラエル軍が去ることが解決策。以前は、このことすら口に出来なかった。いつかイスラエルは去らなければならないけれど、それが1年後なのか15年後なのか・・・ その間にも多くの血が流れることになる。

Q: パレスチナ難民のファラジにユダヤ人の双子が電話しなかった理由を聞きましたか?

BZ: 映画の中に3つの答えがあると思います。
第1に、言葉の問題。第2に双子の両親がまた会いに行くことに対して危険と考えていて双子自身複雑な気持ちなんです。結局、スポーツとお互いが敵だという繋がりしかないので、お互い本当の友達にはなれなかったということだと思います。

Q: 正統派ユダヤと、世俗的ユダヤの価値観の違いは?

カルロス: イスラエルの中でも色々な考え方を持っています。

BZ: 正統派は、10〜20%で、世俗的ユダヤとはまったく違います。世俗派は正統派を嫌っているし、怖れてもいます。

Q: 経済的違いはあるのですか?

BZ: 経済的な違いは大きな問題ではありません。
正統派は質素で貧しい人も多い。子供が多くて、7人〜10人。世俗派は子供が2人位。正統派は政府から援助を受け、兵役も免れているので、世俗派から見た正統派は公平でないと思っているのです。

Q: イスラエル・パレスチナで上映する方が効果が大きいと思いますが、それは危険なことなのでしょうか?

BZ: 世界中で上映してきたし、イスラエルでも公開され、テレビでも上映されました。
でも、アラブではなかなか上映許可が取れないのです。ヨルダンの王室が見て、関心を持ってくれたのですが、結局ヨルダン国内での上映はできませんでした。レバノンやクウェートでも上映に向けての動きはあったのですが、実現していません。アラビア語の字幕をつけて、闇でビデオを回している状態です。

司会者: 多くの人がこの映画を見て、中東問題をよく知って欲しいですね。

Q: 子供たちの年は? また、いつ頃から敵対心を持つものなのでしょうか?

BZ: 撮影時8〜12歳で、今は14〜17歳。強い考え方は環境によって小さいときから植付けられたものです。この地では、6〜7歳の小さい頃から敵対心を持っていますが、それも環境のせいです。

Q: パレスチナ難民のファラジが、BZ監督が帰ったあと、ユダヤの双子の兄弟と仲良くなったことさえ忘れてしまうのではと怖れていましたが、撮影の終わった後も双方の交流の場を作る活動はできないのでしょうか?

BZ: お互いが出会うことは、とても大事なこと。でも、実際には難民キャンプから出ることは今現在難しいし、それが解決しないと会うこともできない。また、和平条約を結んだとしても、ユダヤ人とパレスチナ人はお互いを知らない為に、お互いに敵対心を持っているので、会ってお互いを知ること以外、お互いを許し尊重する気持ちは現れないでしょう。

感想: 将来を変えるのは子供たちと思っています。(拍手)
お互いの交流が本当に大事だと思います。実現を願っています。

BZ: インシャッラー(アラビア語で、"神の思し召しがあれば")

Q: ユダヤ人のモイセ君の妹が、将来はお嫁さんになって家庭を守る…という女性として保守的な考えを持っているのに対し、パレスチナ人のサナベルちゃんは父親がジャーナリストということもあって、パレスチナ人としての意識も強く、お互いに理解することが大事という進歩的な考え方を持っているという、タイプの違う女性を登場させていたのも興味深かったです。 意図的に2人を取り上げたのでしょうか?

BZ: 女の子たちに限らず、子供たちは成長とともに考え方も変わってきています。
モイセの妹は、今はインデペンデントな性格に、ハマス指示者のマフムードはBMWやアクション映画が大好き、正統派ユダヤ教徒のシュロモは相変わらず休みなく朝7時から夜9時半までユダヤの律法の勉強、サナベルはアカデミー賞の授賞式出席の為、渡米。スピーチも用意していましたが、残念ながら受賞しなかったので、スピーチはできませんでしたが、パレスチナの情勢が悪化して帰国できなくなり、しばらくアメリカに留まり、その間に100近くのインタビューを受け、上手にさばいていました。ユダヤ人のモイセはハリーポッターをヘブライ語に訳したいと言っています。ファラジは難民キャンプの中で希望を失いアメリカに行きたいと思っています。

カルロス: リベラルな考えを持つ、意思の強いサナベルと、それに対しモイセの妹の保守的なところが対照的で、もう1人の女性監督から、もっと女の子を取り上げてほしいとの声もありました。

Q: 次回作は? イスラエルで撮るとしたら、どんなものを撮りたいですか?

BZ: イスラエルでは、あのときのようにお互いの領地を行き来して撮ることはできません。
次はまったく違うタイプの短編になるでしょう。
『プロミス』は、何かをしなければならないという気持ちから撮りました。
私たちは人間なのだ、白黒つけなければいけないというのでなく、子供たちにカメラを向けて答えを探している内に、この映画ができたといえます。

Q: この子供たちを今後も追っていく予定はありますか?

BZ: 多分そうなるでしょう。映画の題材以上に彼らはパートナー。彼らが何を望むかで、考えていきたい。

『プロミス』パンフレット

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(記事:かげやまさきこ  写真:もうりなちこ)
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