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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

(1)[泥沼化するパレスチナ情勢・・・今ぜひ見て欲しい!『プロミス』作品紹介]
(2)[5月28日 プロミス特別試写会 監督トークショー レポート]
(3)[5月30日 監督インタビュー レポート]

『プロミス』特集

泥沼化するパレスチナ情勢・・・今ぜひ見て欲しい!
『プロミス』作品紹介

『プロミス』

PROMISES/2001年/アメリカ/カラー/104分
監督・プロデューサー:ジャスティーン・シャビロ/B.Z.ゴールドバーグ
共同監督・編集:カルロス・ボラド
製作:PROMISES FILM PROJECT
配給:アップリンク

アップリンクHomepage: http://www.uplink.co.jp/film/promises/index.html
Shaheen's Homepage : http://homepage2.nifty.com/shaheen/promises.html

この作品は、イスラエルとパレスチナの関係が比較的穏やかだった1997年〜2000年にかけて、パレスチナ自治区やエルサレム近郊の子供たちと、監督の1人であるB.Z. ゴールドバーグとの交流を追ったドキュメンタリー映画です。ユダヤ系アメリカ人の彼は、ヘブライ語とアラビア語が堪能で、彼だからこそパレスチナ、ユダヤ双方の子供たちとのコミュニケートが可能なものとなっています。

撮影をしていく内、思いもかけずユダヤ人の双子の兄弟がパレスチナ難民キャンプを訪れるという形で、双方の子供たちの交流が実現します。難民キャンプにいるパレスチナの子供たちは、検問所があるためにキャンプの外に出る事は難しく、車で15分のエルサレムの旧市街に行ったこともないのです。 ましてや、ユダヤ人の子と話す機会もなかったのです。 言葉はあまり通じないけれど、ゲームや食事を一緒にすることで楽しく過ごす子供たち・・・。けれど、それは束の間の友情に終わってしまいます。

状況が悪化した今では、あのときのようにお互いの領地を行き来することはできません。 生まれた時から対立する中で育った子供たちが、お互いに根強い敵対心を持っている実態、そして、ひとときの触れ合いが、ほんの少しでも歩みよりのきっかけになったことを、この映画は私たちに教えてくれます。
和平実現への道は遠いけれど、世界中の多くの人たちがこの映画を見て、パレスチナのみならず、世界各地の紛争解決の糸口を見つけてくれればなぁと願ってやみません。

◆この映画に登場する、パレスチナとイスラエルに住む7人の子ども達をご紹介しておきましょう。

ファラジ

エルサレムからほんの15分のところにある難民キャンプに住むファラジ。彼は5歳のときに友達がイスラエル兵に殺されたことや、祖母の代にイスラエルによって故郷を追い出されたことから、いつの日か仇を取りたいと思っている。 そんな彼も、ユダヤの双子兄弟が難民キャンプに遊びにくる日、鏡の前で髪の毛を一生懸命梳かして彼らを迎える。そしてその後も、つたない英語で双子兄弟に何度か電話を試みる。

サナベル

ファラジと同じ難民キャンプに住むサナベルは、ジャーナリストの父親がイスラエルの刑務所に抑留されている。保守的なイスラム社会の女の子とは違って自分の意見をしっかりと持つ彼女は、お互いに話し合って許し合うことが大切よと力説する。

マハムード

ブロンドの髪と青い瞳のマハムードはハマス(イスラム抵抗運動)の支持者。父親は旧市外のイスラム教徒地区で、3代に渡り香辛料とコーヒーを売る店を経営している。「ここは絶対アラブ人の土地さ。ここで生まれ育ったのは僕らだ。」「もっとユダヤ人を殺してアラブ人はどんどん強くなるんだ。」と、あどけないながら、しっかりした口調で語る。

ヤルコ、ダニエル

西エルサレムに住むポーランド移民ユダヤ人の双子の兄弟ヤルコダニエル
「神様を信じている?」という彼らの質問に、ナチスのユダヤ人強制収容所体験者のおじいちゃんは、なかなか答えられない。やっと出た言葉は、「神様がいたら、あんなひどい目にはあわなかったさ・・・」
リベラルなユダヤ人家庭に育った双子の兄弟は、「戦争やテロで人々が死んだと聞くたびに殺し合ってバカみたいだと感じる」「仲良く暮らせばいいのに」と思っている。
でも、そんな彼らのもっぱらの関心事は、バレーボールの選手として強くなりたいという、ふつ〜の男の子だ。

モイセ

鉄条網で囲まれたユダヤ人入植地に住むモイセ。周りはパレスチナ人の居住区で、銃を構えた兵士たちに守られて暮らしている。「発砲してもアラブ人に当たるだけだから問題ないさ」「アラブ人とは口もききたくない。皆殺しにすればいいんだ」と豪語する彼は、ユダヤの律法に書かれた"神様がユダヤ人にパレスチナの地を与えた"という部分を一生懸命探して見せる。

シュロモ

エルサレム旧市街のユダヤ教徒地区に住む少年シュロモは、ラビ(聖職者)になるために1日12時間トーラー(モーセ五書)を勉強している。超正統派ユダヤ教徒なので、兵役義務は免除され、代わりに国からの給付を受けて、神学校に籍を置いている。「僕はアラブ人の気持ちも分かる。50年前に土地を奪われて心細いんだと思う。でもアラブ人とは友達になれない。」と言いながら、すれ違ったアラブ人の子と、そっぽを向くのではなく、しゃっくりの真似をし合う姿が微笑ましい。

上映予定

東京 BOX東中野(03-5389-6780) 7月13日(土)より夏休みロードショー!
大坂 シネ・ヌーヴォ(06-6582-1416) 8/31〜9/27
宮崎映画祭(実行委員会:0985-60-3911) 9/15、16
金沢 シネモンド(076-220-5007) 9/21〜27
札幌 シアターキノ(011-231-9355) 10/5〜18
名古屋 シネマテーク(052-733-3959) 10/12〜25(予定)

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(文:かげやまさきこ   映画写真提供: アップリンク)
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