西灣河にある香港電影資料館に行くことにする。「電影双周刊」を見ると、資料館にあるホールで4本、古い映画が上映されることになっているのだ。香港政府が重い腰をようやくあげたというこの資料館、どんな建物なのだろうか。一日中いても飽きない、映画ファンにとっては夢の建物では……と勝手に期待し、上映開始の1時間半前に行くことにする。
と思ったが、結局本屋にひっかかってしまい、1時間前に到着。本屋で今年の電影節のカタログを買ったので重い重い。この本屋で見かけた「香港電影工業結構及市場分析」という本(「電影双周刊」に宣伝が載っている)には、客が呼べる俳優、女優、監督リストが載っており、イーキンは32位だった。最もこれは1997年までの数字。「風雲」が入っていれば、もう少し上位にいったかもしれないが、それ以前から意外に好成績であったのに驚く。さらにページをめくると、ロイが40位にいて仰天。主演映画が全然ヒットしていない割には、なかなかやるではないか! ほかに気になった本では黄磊の「日記」シリーズがあった。ぱらぱらとめくると広東語(口語)で、香港ヤンエグ(たぶん)や三級片監督の心のつぶやきが書かれていて読みやすそうであったが、買っても積んドク状態になりそうなのでやめておく。それにしても黄磊、マルチな人だなあ。
資料館は奇妙な配色のこじんまりした建物だった。団地の中にあるので、そこに付属した娯楽施設のようだ。1階が展示スペースになっており、ちょうど香港映画の特撮技術の歴史を展示していたのだが……これが「えーっ、これだけ」と思うような紹介の仕方。パネル中心で、子供向けの資料館ならこれでいいかもしれないが、雰囲気としては市町村が建てた資料館レベルだ。さっさと1階を離れ、3階の図書コーナーに行く。入って左手に各国の映画雑誌、右手は本が開架されている。しかし、ここにいる人の顔ぶれは、映画好きというより、どう見ても暇つぶしに来た地元の人だ。私も映画が始まるまでの間、時間つぶしに雑誌を読む。「eigaya」というインドのアジア映画雑誌や、名前は忘れたけど、台湾の映画評論誌など、今まで存在すら知らなかった雑誌にときめく。そうそう、「Cinema Journal」もありました。といっても、アメリカの研究者が出しているおカタい論文集なのだけれど…… うちの雑誌も定期購読してくれないかしら。
座ってこれらの雑誌をめくっていると、何故だか急激に疲れてきた。もうホテルに帰って休んでいたいと思うくらい、体がだるい。今思えば、その後長患いすることになる風邪をひきやすい素地がここにあったとも思うが……まあそれは後の祭り。結局、せっかく来たのだからと、14:30から上映される『紫[金叉]記』のみを見て帰ることにした。この映画は1959年の作品で、「電影双周刊」によると唐滌生という劇作家の代表作で、主演の任劍輝と白雪仙コンビにとっても代表作といえるものであるらしい。
1階で30HKドルのチケットを買い、2階のホールへ。おしなべて観客の年齢層は高く、やはりどう見ても地元の人が昔を懐かしんで来ているという雰囲気である。場所柄なのか、京橋にある東京国立フィルムセンターに来る客層とは全然違う。客席数もせいぜい6、70といったところなのだろうか。映画について詳しく書きたいところだけど、思いっきり寝てしまったため、ほとんど記憶に残っていません。ごめんなさい。
資料館を出て、またしても旺角へ。レオン・ライ&セシリアの映画「情迷大話王」を見てから帰ろうと思ったのです。金聲(映画館の名)に着くと、ちょうど始まるところ。急いで中に入りました。この映画はトレンディドラマを、娯楽映画らしくアホで味付けしたもの。レオン演じる調子のいい嘘つき男・オーケーが、セシリア演じる可憐なワンダフルと出会い、つじつまを合わせるため嘘をつきまくるんだけど、本気で好きになってしまい、誠実な男になるというお話。他愛もないけど、好きですねえ。セシリアの父にン・マンタッ、母にユン・ケイタン、レオンの親友にチョン・ダッミン、セシリアの勤める会社社長にチャン・ホーといった共演陣。
映画館を出ると、もう19:30ごろ。早く帰ろうと思いつつ、CDやVCD屋を漁り、まずい酢豚を食べる。ついうっかりお客さん気分で見てしまった『九龍冰室』を、やはりもう一度見ておいたほうがよかろうと思い、時間を調べるために百老匯電影中心(映画館の名)に立ち寄る。しかし、それは勘違いで、『九龍冰室』はやっていなかった。と、ちょうどアン・リー特集がやっており、21:30からアン・リープロデュース、シルビア・チャン監督の『少女小漁』が始まるところだった。つい、チケットを買ってしまう。ボーイフレンドとともにアメリカに不法移住している小漁が、グリーンカードを得るため、60歳のイタリア系アメリカ人と偽装結婚をする話で、レネ・リュウ主演。目新しいところはないが、恋人に従って生きてきた小漁が、マリオとの生活を通じて自立していく様を細やかに描写している。
ホテルに帰ると0時近く。疲れた疲れたと言いつつ、結局いつもと変わらない時間になってしまった。反省。
〜その4へつづく〜