第32回東京国際映画祭は2019年10月28日(月)~11月5日(火)、六本木の映画館を中心に開催され、クロージング・セレモニーは11月5日、有楽町の東京国際フォーラムで行われました。各部門の賞が発表され、東京グランプリはデンマークのフラレ・ピーダセン監督による『わたしの叔父さん』が受賞しました。デンマークの農村で酪農家として働く若い女性クリスと、体の不自由な叔父の生活を描いた作品。審査委員長のチャン・ツィイーは「この映画は詩のような語り口で、我々に穏やかに物語ってくれました。監督は抑制的で繊細なカメラワークで、忘れ去られる人間の情感をとても力強く表現しました」と講評していた。
各賞を、受賞者の皆さんの喜びの声と共に、発表順にお届けします。
映画祭期間中、シネジャのスタッフ6人、それぞれ作品やイベントを選んで、映画祭の会場を駆け巡りました。1回も出会わなかったスタッフもいるほど、それぞれ好みが分散し、広く作品を紹介できると思います。
東京国際映画祭関連の報告記事一覧は、映画祭報告ページに掲載しています。(順次更新)
ぜひ一覧表から記事を選んでお読みいただければ幸いです。
司会は、フジテレビアナウンサーの笠井信輔さん。
以下、各賞の発表順にお届けします。コメントは映画祭プレスページより
奥井琢登さんコメント:「映画は作ったら完成ではなくて、観客に見られて完成だと思っています。昨日の上映会で足を運んでもらって、評価してもらったのは素晴らしいことで、すごくうれしいです。これを糧にして、次はみなさんに見ていただけるような、子供から大人まで見てもらえるような作品を作ろうと思います」
東京国際映画祭 ビジョン30 の一つである「映画の未来の開拓」に沿って創設された賞。世界に輝きを放つ宝石の原石(ジェムストーン)を東京で発掘することを目的にしたもの。映画祭全作品作の中から、第3回目の今回はも4名が選出された。昨年は男優二人、女優二人が選ばれましたが、今年は4名全員が女性でした。そのうち出席者は『テイクオーバーゾーン』の吉名莉瑠さんだけ。トロフィーは、東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター 久松猛朗氏より手渡されました。 他の方は映像出演。
「東京国際映画祭には初めて出させて頂いたのですが、レッドカーペットで見る景色や舞台挨拶で見る景色は、とてもキラキラしていて 、とても新鮮で、初めての主演作品がこのような素晴らしい場所で上映されたことがすごく嬉しく思っています。これからもいろんなことがあると思いますが、毎日に感謝して素晴らしい女優になれるように、そして沢山の方に“吉名莉瑠”という女優を知ってもらえるようにがんばりたいです」
「東京国際映画祭に今までも出品はありましたが、今回初めて参加することができました。そういった機会に素晴らしい賞をいただけて光栄です。映画『タイトル、拒絶』という作品に出演させて いただいたことがきっかけで、この賞をいただけたことは、とてもありがたいです。賞に選んだことを後悔させないようにこれからも頑張ります。これからも宜しくお願いします」
「とても光栄に思います。今回、私自身は出席できず残念ですが、このような賞を頂けたことに胸がいっぱいです。私一人では、この賞をいただけなかったと思うので、監督はじめ、キャストの皆さん、この映画に関わってくださったスタッフの皆さん、すべての人に感謝したいと思います。私にとって初めて の主演・初めての映画祭ということで余計にうれしい気持ちです。たくさんの方がこの映画を鑑賞してくださり、豊かになってくれたら嬉しいです 」
「東京、そして、東京国際映画祭をとても楽しめました。ここに出席できないことがとても申し訳なく、そして悲しく思います。でも、このような名誉ある賞をいただけて本当にありがとうございます。また、『ディスコ』を見ていただいて感謝いたします 」
審査委員 大九明子監督による講評「様々な作品がありましたが、ドキュメンタリー作品とフィクション作品が混在しているというのが我々の大命題でありまして、審査の上では大変難しく、審査の上では長く議論致いたしました。最も重要視すべきものはなんなのかと審査会合での結果は、“海外に発信する力のある作品”ということでした。まだまだ日本には多くの映画作家がいるのを体感しました。どんどんスプラッシュに応募・参加するよう促すのは、東京国際映画祭の責任になるかと思います。
クリスチャンが話していたことですが、この作品は「間違いなく一年後にも覚えているだろう」ということです。会議が紛糾したなかで、この作品についてだけは皆同意見でした。ストロングでユニークなビジョンがあって、ザワザワするけど真逆の温かい感情を巻き起こす、大変面白い作品だと思いました。私個人としては何も語っていないようで、日本の今を声高に歌っている、海外の方へ誇らしい気持ちになるような作品でした。この監督に賞を差し上げるのは、大変光栄ですしうれしくてたまりません 」
渡辺紘文監督:「僕たちは栃木県大田原市で小さな田舎町で自主製作映画を作ってきた団体です。家族で映画を作ってきた。隣にいるのは弟で音楽監督の渡辺雄司です。父親、母親、祖父はスタッフとして一丸となって映画を作っています。僕たちの大事なスタッフとして韓国人のカメラマンがいますが、現在帰国しております。もう10年間、僕を信じて一緒に映画を作ってくれた彼にも感謝しています。『叫び声』は102才の僕の祖母が出演している作品です。しかし、この8月に僕の映画のすべてに出演してくれていたおばあちゃんを失いました。この賞はおばあちゃんがいたからこそ取れた賞だと思います。天国にいる祖母に感謝したいと思います。僕たちは、映画をこれからも作り続けていきます。本当に皆さんありがとうございました」
「今年のスプラッシュ部門は、僕の作品もですけど<ドキュメンタリー>が存在感を示したと思っています。ドキュメンタリーはおもしろい。メディアが閉塞状況にある中でドキュメンタリーが新たな領域を見せてくれる、そうした時代になってきていると思います。特にこの国は今、“空気”という目に見えないものが、いろんな機能を停止させている、言論の表現はかなり気まずい状況になってきている、そうした中でこの作品が賞を取れた、この作品を推薦してくださったプログラミングディレクターの皆様の将来は危ないんじゃないか、そう思います、自己責任ですね。僕自身はドキュメンタリーももちろん撮りますが、ドラマも撮ります。次回、数年後にはドラマでまたこの映画祭に来たいと思います」
審査委員エレナ・ポラッキ さん による 講評:「8本観た感想としては、全員が同じ作品を観て強く惹かれたこと、ごく少数の作品が抜きん出ていることに気づきました。このため最終決定は容易になり、同様の意見を共有しましたが、一方で、特別賞、未来賞を選ぶにあたって 2 作品に絞らなければならないことが非常に困難でした。抜きんでた作品は多く、私たちが好きな映画には熟練した映画スタイルと語り口、普遍性のある情熱があり、私たちを感動させ、その作品の世界へと連れていってくれました。最終的には満場一致で特に感動した 2 作品に賞を贈ることに決定しました。そして、才能あふれる監督に出会えたことに幸運に感じるとともに、将来 の期待を寄せています。彼らが映画製作において国際的に活躍していると確信しています。希望を与える生命力を生み出した監督の手法を高く評価しました」
レザ・ジャマリ監督コメント:「実はこれはデビュー作で、東京国際映画祭で高価な賞を頂けて嬉しく思います。この映画を作るとき本当に手ぶらでした。プロデューサーがいなければ、この作品はできませんでした。そしてつらく大変な時を一緒に過ごしてくれた奥さんにも感謝しています。時差ボケで 2 時間くらいしか寝られなかったですが、これで今夜も興奮 して寝られないと思います 」
ヨウ・シン監督:「何百人も監督がいる中で、映画を作れたことに感謝します。でもこれはプロデューサーがいたからこそだと思っている。監督は大胆でなければならないのです。なぜなら、空想の世界に身を投げなければならないからです。でも同時に不安を抱えている存在なのです。監督として、これからのキャリアに意味あることだと思います。物語では主人公は祖母と暮らしていて、母は日本にいます。これは私の経験です。日本に 2 回来たことありますが、 1 回目はただの小さな子供でした。とても長い時間が経ってしまいましたが、とてもうれしく思います 」
代理で主演のドゥニ・メノーシェさんコメント:「映画鑑賞後、お客さんと話せるという時間、大変 素晴らしい経験ができました 。そして日本は太陽の上る国だと言われますが、本当に光がずっと差し込んでおり、素晴らしい価値を見出す国なのだなと思いました 。 それをぜひ持って帰りたいです」
足立紳監督コメント:「まだ監督はまだ監督は22作目、本業はシナリオライターなので脚本賞が取れて助かりました。この作品は私生活をさらけ出していますが、私と妻をそのまま演じていただいたわけではありません。濱田岳さんと水川あさみさんが、シナリオの文字をあそこまで体現してくれました。 それによってできた映画だからこそ、脚本を評価していただいたと思いますので、俳優さんに感謝したいです。小さな個人的な話を映画にすることができた。スタッフさんに感謝したいです。コンペの中では珍しい、ただ笑えるだけの喜劇を選定してくれた矢田部吉彦さんに感謝したいです」
ワン・ルイ監督コメント:「この映画を評価して認めてくださった東京国際映画祭、参加させていただくチャンスをくれたこと嬉しく思います。今思い返せば、この作品を撮っているときは素晴らしい思い出ばかりでした。制作の過程では様々な困難もありましたがすべて報われました。」
ナヴィド・モハマドザデーさんコメント:「とても高価な賞をありがとう。監督に差し上げたいです。監督の演出がなければ、演じられなかったです。そして今、劇場にイランの巨匠が来ています。彼がいなければ映画を愛することはなかったと思います。彼の映画を見て、今まで映画を作ってきました。彼の作品がきっかけで映画を愛してきました。感謝しています」
ナディア・テレスツィエンキーヴィッツさんコメント:「日本に来たこれ以上の素晴らしい理由を思いつきません。心から光栄に思っています。そして監督・俳優たちに感謝をお伝えしたいです。また日本に必ず戻ってきますね」
代理受賞されたドゥニ・メノーシェさんコメント:「人間的にも非常に素晴らしい女優です。明るいし何事にも興味を持っています。私が彼女と絡むシーンは、ブーツで顔を殴られるシーンなのですが、その演技からユア・サーマンを越える素晴らしい女優さんだと思いました」
サイード・ルスタイ監督コメント:「この賞を、黒澤明の国から賞をいただけて光栄です。スタッフの皆さん本当に感謝しています」
アンドリー・リマルークさん(主演俳優)コメント:「監督に一言付け加えるとしたら、私たちの映画にこのような賞をいただけて、皆さんに感謝いたします」
審査委員長 チャン・ツィイーさん講評:「この映画は、感動的な詩のような語り口で我々に穏やかに物語ってくれました。監督は抑制的で繊細なカメラワークをもって、忘れ去られる人間の情感をとても力強く表現していました」
フラレ・ピーダセン監督コメント:「本当に光栄で、心臓がバクバクしています。この映画はインディペンデントの小さな作品で、少人数のクルーで一生懸命に撮影したものです。コンペティションに選んでいただいただけでもうれしかったです。この作品をコンペティションに選んでくださった皆様、優しくんでくださった皆様、優しくおもてなしてくれたスタッフの皆さまの愛を感じました。滞在中は素敵な時間を過ごさせていただき、ホテルでも素晴らしいおもてなしの精神を感じました。
おそらく舞台となった地域で撮影するのは初めてではないかと思います。デンマークの皆様にも感謝いたします。そして最後になりますが、観客の皆様にも感謝申し上げます。この映画を観てくださった、素晴らしい観客の皆様が素晴らしいリアクション・質問をして下さいました」
「多くの方々にお越しいただき誠にありがとうございました。 115 の国と地域から、 1804 の作品が応募されました。多くの国々から作品が寄せられるこのような機会に、東京から世界に羽ばたくニュークリエイターがたくさんおられることを光栄に思います。東京国際映画祭は 32 回目です。映画は、国境・言語を超えて文化や魅力を伝えるものです。 2020 年東京オリンピックは、スポーツだけでなく文化の祭典でもあります。日本の文化を東京発で伝えたいと思っています」
「私たちが審査員として映画を鑑賞した期間は6日間でしたが、私たちは映画の持つ文化性・芸術性・多様性を感じることができました。確かに審査の過程はチャレンジングなものでしたが、私たちが共感する作品や判断の基準は一致していました。もちろん、みんなの意見をまとめる必要もあり、熟慮する場面もありました。審査員のみなさんにも感謝をしたいと思います。皆さんの努力のたまものでした。最後になりますが、映画という芸術が永遠に輝き続けますように心からお祈り申し上げます」
「『男はつらいよ お帰り 寅さん 』で開幕した9日間、お楽しみいただけましたでしょうか。今年は、天候に恵まれて、ゲストの顔ぶれも充実し、屋外の行事も盛り上がりました。数々の賞を受賞された皆様にお祝いを申し上げます。特に、審査委員長のチャン・ツィイーさんには、お腹にいるジュニアと共に、懸命に審査にあたってくださり、改めてお礼を申し上げます。また、官公庁、スポンサー、映画業界の皆様 300 人を超えるボランティア・インターンが協力してくれました」