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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『ミスムーンライト』松本卓也監督インタビュー 

「インタビュー風」画像 松本卓也監督 (撮影:後藤龍馬さん)

松本卓也監督プロフィール

1976年生まれ、東京都出身。元お笑いコンビ「ヴィスタ」ボケ担当。10年で解散したのち趣味だった映画を独学し、制作の道に入る。シネマ健康会主催。「ノーマネー、ノー真似」をポリシーに、オリジナリティ溢れる作品を送り出し続けている。2010年の『花子の日記』でシネマジャーナルでもインタビュー。記事は こちら
ラッパーの実弟を主人公にした『帰ろうYO!』(2014年)は内外の映画祭に参加して高評価を受け受賞多数。

【作品紹介】 とある海辺の地方都市。マキは映像部に所属している女子高生。市の依頼により、映像部で観光PRビデオを製作したが、いまいち納得していない。もっと面白いものを作りたいと顧問の先生や仲間に迫り、作り直すことになった。先生の知り合いの元映像ディレクター博和や、マキの従妹の現役アイドルのミサコも加わって、春休みの合宿がスタートする。マキが思いついたアイディアは「地元のために一肌脱ごう!」→「水着姿になる」というもの。さて、前作より良くなるのか?いや、その前にみんなに承知してもらえるのか?

監督・脚本・編集:松本卓也
プロデューサー:斉藤宣紀
撮影;岩崎登
(C)2017 ミスムーンライト製作委員会
公式HP http://miss-moonlight.weebly.com/

★2017年11月4日(土)~10日(金) シネマート新宿 レイトショー
http://shineken-yotei.seesaa.net/article/453753170.html
※毎日イベント開催予定!
★2017年11月11日(土)~24日(金) イオンシネマ 和歌山 ロードショー
http://shineken-yotei.seesaa.net/article/453753717.html


(C)2017 ミスムーンライト製作委員会


(C)2017 ミスムーンライト製作委員会


◆インタビュー◆

―お久しぶりです。さっそくですが『ミスムーンライト』を作ることになった経緯は?

2015年にプロデューサーから話があったんです。「若手の女優やグラビアアイドルがたくさん出演する作品を作らないか。水着ありで」と。『グラキン★クイーン』『花子の日記』(2010年)からお世話になっている方です。 仮タイトルが『カントリーガール』で、初めのプロットは「女の子たちが自分の街のために、商店街のおじちゃんおばちゃんとひと肌ぬぐ」という5,6行のものでした。2016年の初めまでプロデューサーと二人でロケハンに行って、一番パイプが太かった新潟県新発田市に決定しました。決まるまで3,4回通いました。

―キャスティング、脚本も同時進行ですか?

キャストはオーディションで50人くらい集まった中から20人を決めました。そのうち5人がメインキャスト、その中の一人が主役です。後からオーディションに来なかった女の子も入ることになったので、それだったら一度落とした子からも、と復活させて30人もの群像劇になりました。地元の中高生が4人入っています。地元商店街の人たちもエキストラとしてたくさん協力してくれました。
登場人物一人一人のセリフがあるので、ずっと脚本を書き続けていました。主にファミレスで書いていましたが、高速道路を走るロケバスの中でも書き―下向いてると酔うのでなるべく高いところで(笑)―やっとキーボードから指が離れたのがクランクインの前日です。
撮影は4月に2週間、6月に5日間撮ったので、20日間くらいかかっています。朝から晩までの撮影で、男子、女子大部屋で合宿。監督部屋は別にあったので俺はまだ楽だったんですが、それでも数時間しか寝られませんでした。みんなは大変だったと思います。

―松本監督も元映像ディレクター博和役で出演されていますね。あそこだけどよ~んと暗いですが。

初めはほかの自主映画監督に出演してもらう予定だったんです。でも2週間も拘束できる人が見つかりませんでした。自分は「保険」のつもりでいたのでやるしかなくて、できるだけ入りやすいキャラクターに作り上げました。女の子たちが水着になってただ明るい楽しいだけじゃなく、女の子のファン以外の大人にも観てもらえる映画にしようと思いました。明るいのと対極の“過去に捕らわれている等身大の男“を出すことで、共感してほしかったんです。でも俺はあんなにひどくないです(笑)。

―演技経験のある人、ない人への演出は? みなさんいい味を出していて、新潟の中高生たちもちゃんと馴染んでいたと思います。

ありがとうございます。イグロヒデアキ(金子先生)、後藤龍馬(こうちゃん)たちはこれまでもシネマ健康会の映画に出てもらっていました。マキの両親役に勝俣州和さん、雛形あきこさん。雛形さんにはこの映画でいちばん言いたかったことを言ってもらいました。画面がしまりましたねえ。
マキ役の梅村結衣は、ミュージカルや舞台の経験があったので“できるだけ自然に”と注文しました。飲み込みが早かったですよ。東京ではオーディション後ワークショップというか、読み合わせもやって脚本を直したりしましたが、新潟ではその時間がなかったんです。現役中高生で、演劇部員だったりしますから、ほぼそのまんまです。

今回取り入れたPOV(Point of view)撮影は、演技ができる人と初めての人の差を埋めました。カメラの視線が登場人物の視線で、よくホラー映画などで使われる手法です。ふつうのドラマでもやってみたら面白いんじゃないかなと新しいことに挑戦しました。いつも映像部員やアイドルグループの誰かが持っているカメラで撮影されているという設定です。実際は女の子たちの分もカメラマンの岩崎登さんが撮影しています。博和カメラだけは俺です。

―大きくて重そうなカメラを片手で持っていましたね。アイドルグループの女の子たちも、いつもカメラを構えているポーズだったので、肩こりしそう。おまけにいつもワンピース1枚の薄着や水着姿で、女の子たちさぞ寒かっただろうと心配しました。

ディレクターらしく見えるように、大きいカメラを借りたんです。両手で持つと顔が隠れてしまうので、片手で操作したら重くて…俺、腕が細っこいのに。ちょっとは頑張ったんですね(笑)。カメラは他にハンディとゴープロという小さいのも使っています。アンアンナ(和泉美沙希)がお寺で少林寺拳法を披露しているところを撮るのに使ったものです。彼女は黒帯で本物ですよ。カメラを構えるポーズは結構ぎりぎりに俺が指示を出したらしいです。覚えてなかったんですが、舞台挨拶で言われました。
桜が咲いているのに雪が降りました!最初は止むまで待つつもりだったんです。でも庭の撮影ならかえっていいかな、と撮影したら良いシーンになりました。役所の人が押しかけてくるシーンは雪の翌日でしたが、屋内なのに寒くて寒くて。撮影は4月でしたがほんとに寒かったです。自分も海に入っていくシーンがあったんですが、女の子たちが頑張ってるので頑張らないわけにはいきませんでしたね。

―桜と雪なんて、やろうと思ってやれることじゃないですし、ラッキーでしたね。
高校生が水着姿、と聞いたときは抵抗があったんですが、観てみたら松本監督らしく健康的でした。アイドルたちがセクハラやパワハラに突っ込みを入れ、主張しているところもよかったです。

プロデューサーにも、そこはちゃんと入れるようにと言われていました。グラビアのプロデューサーもしていた人なので、グラビアや水着の撮影がどう思われるかよく知っています。「昔のグラビアは明るくて健康的だった」と今の状態を嘆いているんです。グラビアアイドルも写真集からDVDに移っていて、アダルトビデオとの境界が崩れていっているし、地下アイドルと呼ばれる女の子たちが苦労している。そこはいろいろな方の取材をしてエピソードを入れました。身体はっている人たちへの人間賛歌でもあるんです。
女子だけでなく、他の人たちおじちゃんおばちゃん、お医者さんや先生(役)もひと肌、もろ肌脱いでいます。このお医者さん役の男性は、SNSで募集したら東京から車で参加してくれたんです。エキストラもたくさんいたので、まずは衣裳さんがその人の雰囲気で役割を決めてくれます。後で俺が見ることになっているんですが、いつも問題なかったのでそのままGOでした。

―衣裳さんがキャスティングするとは面白いですね。以前のインタビューで役のネーミングにこだわると伺いましたが、今回もたくさん登場する人たちの名前を全部考えたんですか?タイトルについても教えてください。

レイ(浦野由衣)やミサコ(田中あさみ)はグラビアアイドルだった菊川怜さん、安田美佐子さんにちなんでいるんです。多いので元の仲間の名前も借りました。なるべくセリフの中に名前を入れて、記憶に残りやすいようにしました。
タイトルは月岡温泉の「月」と、「ミスタームーンライト」からの発想で。マキは映像部のクラがなんでもできるので、太陽に見えて劣等感を持っています。けれどもクラもマキをそう思っているかもしれない。お互いが相手のいることで輝いている月でもあるんです。
定期的に“生と死”について扱うんですが、この映画はちょうどその時期で。生きている人が死んだ人をどう考えるかとか、思いが強ければ見えるだろうかとか、死んだ人はどうしているのかとか。生きている側の妄想にすぎないかもしれないですけどね。ラストは女の子たちが少し成長していて、博和やミサコが捕らわれたところから前に進もうとしている、という気持ちを込めました。

―11月末にメキシコの映画祭に行かれるそうですが。

メキシコの“チョルラ・フィルム・フェスティバル”に『帰ろうYO!』を持って日本から参加します。これまで作品だけは海外の映画祭に行ったことはあったんですが、身体も行くのは初めてなんですよ。先輩監督である岩崎友彦監督が日本プログラムのディレクターをされていて、面白いから「入れようYO!」と声をかけてもらって嬉しかったです。39分の完全版を上映することになりました(したコメでは20分、SKIPは30分の短縮版)。スペイン語字幕だそうで、ラップがどんな風に出てくるのか想像がつかないです。でも親子、家族の映画なので、世界中で受け入れられると思うので楽しみです。高橋洋監督も一緒に11月21日~26日出かけてきます。
次の作品はオムニバスの一篇で、その脚本もあげないといけないんですがまだ書けていません。初めてのバイオレンス映画になる予定で、いろいろストーリーを練っているところです。

―長時間楽しいお話をありがとうございました。




ちょうどハロウィーン時期でした。(撮影:白石映子)


シネジャのブログ記事はこちら
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/454512766.html



■取材を終えて

松本監督とお目にかかるのはしたコメでの『帰ろうYO!』以来でした。文字おこしが大変だからと1時間以内の予定が、久しぶりに再会した映画好きのおばちゃんと甥っ子みたいな会話になってしまい延々と。写真も同じ空気が漂っています。終わってから外で撮影しましょう、と自分で言っておいてすっかり忘れて帰るというポカをやらかしました。松本監督に謝ると、すぐ後でこの映画に出演していた後藤龍馬さんと会ったからと「インタビュー風」画像を撮って送ってくださいました(顔が一時停止しています)。
楽しく気配りをする人なので「次はバイオレンス映画」というのがちょっと想像できません。毎回新しいことに挑戦するということを課している監督、そういうことなのでしょう。初めての海外映画祭の体験も良い刺激になるはずです。ますます次の作品が楽しみになりました。


取材・写真:白石映子

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