メインキャストにバンド宇宙人(Cosmos People)の小玉(シャオユー)を始め、もと棉花糖の小球(シャオチョウ)、『KANO〜1931海の向こうの甲子園』の主題歌を歌ったトーテムのスミン、小男孩樂團の米非(ミッフィー)など、台湾のバンドのリードボーカルを担当した若手実力派ミュージシャンたちを起用。さらに魏徳聖監督の作品、『海角七号 君想う、国境の南』や『セデック・バレ』に出演した俳優たちも参加し、台湾初の17曲完全オリジナルのラヴソングで綴った、ミュージカル・エンターテイメント! 『セデック・バレ』で主人公モーナ・ルダオを演じた林慶台さんもラヴソングを歌っています。様々な愛のカタチと出会いを描き、すべての人々にエールを送る群像劇をお楽しみください。
バレンタインデーの台北。蕾蕾(レイレイ)へのかなわぬ思いを胸に秘めパン屋見習いの小安(シャオアン)は恋人たちのためにバレンタインチョコを作る。花屋小心の小心(シャオシン)は恋人たちに花束を配達しながら運命の出会いを夢見る。配達をしていた二人は街角で衝突事故を起こし、仕方なく壊れなかったバイクで一緒に配達をする。市役所に勤める蕾蕾は、その日、市主催の合同結婚式を取り仕切っていた。ミュージシャンを目指すお調子ものの大河は長く同棲している蕾蕾にプロポーズしようとサプライズを考えていたが、蕾蕾は長すぎる春にピリオドを打つ決断をくだそうとしている。それぞれの思いの中で1日が過ぎていく。バレンタインデーに起きた愛の物語。都会生活者の愛の孤独と喜びを音楽劇で。
なお花屋の名前「小心(シャオシン)」は、中国語で「気をつけて!」という意味。花屋に電話がかかってくるたびに「シャオシン!」と言うので、お客はびっくりするというのもひとつの笑話。
公式HP
http://www.52hz.jp/
シネマジャーナルHP 作品紹介 52Hzのラヴソング
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/455455223.html
台南生まれ
今年(2017)3月の大阪アジアン映画祭で上映された際に、台湾影視研究所と一緒にインタビューさせていただき、すでに本誌100号(2017年6月に発行)で掲載していますが、それをHP用に編集し直し掲載します。
― 今回のミュージカル、歌ですべてを表現していて楽しかったです。普通の劇映画と違っているわけですが、今までの劇映画と準備とかどのように違っていたのでしょう。
監督 面白そうと思って始めたのですが、ミュージカルということで取り掛かるときに大変だったは、まず音楽が最初になければいけないということでした。普通の映画だと映画を撮ってから最終的に音楽だけど、今回は撮影の前にできてなくてはいけないということでした。今回、先に17曲を作りました。そこが大変でした。
― 元々ミュージカルを作ろうと思ったのですか。それとも物語があって、ミュージカルにしたのですか?
監督 まず、漠然と物語を考えている時には、普通の劇映画を構想していたのですが、物語がシンプルすぎるので、どのようにふくまらすかと考え、ミュージカルにしました。
― 音楽が流れて、カメラワークはきっちり決めといて、何度もリハーサルをしたあと本番だったのかなと思ったのですが、どのような撮り方だったのですか?
監督 オープニングの花を持って歌っているシーンは、綿密なリハーサルをして撮りました。すべてのスタッフ、役者がそろってリハーサルを繰り返し、次の日の朝に本番。オープニングだけで1日リハーサル、1日撮影でした。
―オープニングにはたくさんの方が参加していましたが、メインの役者以外の人たちはどのような方たちだったのですか?
監督 今回のエキストラの半分以上は、実際のミュージカルの役者でした。普段ミュージカルをやるときには名前が出るような方たちなのですが、今回は私たちのために協力してくれました。
―隙がない歌いぶりでした。
監督 そうですね。実際に撮影の時にプロのミュージカル役者の方たちに囲まれているわけですから、主演の4人はプレッシャーがあってすごく緊張していました。後ろに控えている人たちの方のほうがよっぽど経験があって、歌えて踊れて演技もできるわけですから。彼らの前でNGでも出ようものならとプレッシャーを感じていたのですが、彼らが「大丈夫だよ」と励ましてくれました。
―主演4人の中で、スミンは日本でもライブをやったことがあって、宇宙人の小玉は近々日本でライブの予定もありますが(今年3月の時点の話)、主演の4人の方を選んだきっかけは?
監督 実際のところ、私はスミンしか知らなくて、他の3人はどんな歌を歌っているかも知りませんでした。こうやって音楽劇にするということになって調査を始めたんです。ソロシンガーよりバンドのリードボーカルをしている人を選ぶことにしました。より観客に近い気がしたんです。また、バンドのボーカルの人はライブを盛り上げていく力がある人たちだろうと思ったのです。演技をしていく上でも、それは威力を発揮するのではと思いました。
彼らのことは知りもしないのにオーディションをするというのも失礼と思ったので、彼らはどういう人かというのを3,4ヶ月かけて調査して、その後にオーディションをして決めました。ユーチューブなどで、音楽やインタビュー記事を見たりしました。スミンもこれまでのすべての作品を確認しました。そんなに3,4ヶ月も観察されていたとは彼らも驚いていました。
スミンの場合は、スミンが演じた大河用に曲を作ってほしいと依頼していました。歌を作ってその脚本をみたら、スミンは「これ、自分がやりたい」と言ってきました。いろいろ考えて彼以外にふさわしい人はいないなと思い、彼に依頼しました。でもその時の条件は10kg痩せてくださいということでした。彼は真面目で15kg痩せてきました。
― それはすごい。キャスティングと曲とでは、どちらが先だったんですか?
監督 まず曲を作って歌い手を決めました。こういった方法は、作曲家にとっても歌い手にとっても難しいところもあります。先に音楽があるというのは、その歌い手がその歌を歌えるのか、キーが合っているのかというのがありました。この作品の中では一つの歌を複数の人が歌うというのが多く、とりわけ男性と女性がそれぞれ歌うというようなことが多かったのです。そうすると、そのキーで歌えるのかというのがありました。合わなければ、作曲家は歌手に合わせて調整しなくてはいけないということがありますし、歌手も音域を広げたりと、作曲家にとっても歌手にとってもかなり難しいことがありました。
― これを作るにあたって、参考にしたものはあったのですか?
監督 とりわけ何を参考にしたというのはないのですが、これまで作られ作品を見直してみました。舞台のミュージカルについてもビデオを見ました。でもそこでわかったのは、西洋のミュージカルスタイルをそのまま東洋人に持ってくるのは不自然で難しいということでした。台湾にはミュージカルの伝統がなかったので、使ったのはディズニーアニメの音楽劇で、それを使って童話のような感じを取り入れました。
― 台湾でヒットして、ついに台湾の400年の歴史のほうにメスを入れる作品に取りかかれると目にしましたが。
監督 今、台湾の歴史に関する作品を、どういう風に進めていくのかクリアするという問題があるのですが、次回作はこれになると思います。
400年前、台湾が初めて国際的な舞台に存在を意識された時代、つまりオランダ人が台湾を発見してというところから始まります。鄭成功がオランダ人を追い出すまでの歴史を3つの角度から切り取っていくという話です。ひとつはオランダ人の角度、また漢族の見方、もう一つは元々そこに住んでいた人の視点で描きます。それぞれで、3つの作品にするつもりです。同時に同じ時空の中で展開しているという視点の異なる3つの作品として作りたいと思います。
― ありがとうございました。次回作も期待しています。
【2017年/台湾/109分/カラー/原題:52赫茲,我愛你 英題:52Hz,I love you】
日本語字幕:藤原由希 協力:江口洋子 統括:柳川由加里
後援:台北駐日経済文化代表処、台湾新聞社
協賛:寺田倉庫株式会社、花キューピット株式会社、メサージュ・ド・ローズ ベルローズ
提供:ポリゴンマジック 配給・宣伝:太秦
魏德聖監督がミュージカル? と思ったけど、幸せ感いっぱいの作品でした。魏德聖監督らしいユーモア感、キャスティングも監督の今までの作品に出演した俳優がたくさん登場し、思わずにやりとします。特に『セデック・バレ』で主人公を演じた林慶台(リン・チンタイ)さんが歌っているシーンはオォーッと思ってしまいました。歌がうまい。考えてみれば元々牧師さんなので賛美歌とか歌っているのでしょう。
スミンが出てきた時には、「エッ、これってスミン? 随分太ったな」と思ったけど、監督が15㎏も痩せたと言っていたので、元はどんなだったのだろうと思ってしまいました。実は2009年にスミンが来日ライブをやった時に、目の前で聴いていて写真も撮ったのです。
そのレポートは下記にあります。
シネマジャーナルHP
『トーテム song for home』(若木信吾監督 2009年製作)
出演者 スミン来日ライブ
http://www.cinemajournal.net/special/2009/totem/index.html
今年、3月の大阪アジアン映画祭でこの作品を観た時には、メインキャストの他のメンバーについては知らなかったのですが、NHK「テレビで中国語」のオープニングで歌われているのが宇宙人の「那你呢 And You?」(で、あなたは?みたいな意味)で、これを歌っているのが小玉だったのです。8月頃番組に出演していて知りました。そして、これを書くのに調べていたら、なんとエンディング曲はディーン・フジオカで『午夜天使的翅膀(Midnight Messenger Mandarin ver.)』という曲でした。いつもなにげなく聴いているだけで全然気がつきませんでした。
本当の市長が出演と聞いたのですが、ほんとかな?
『海角七号』に出てきたバンドメンバーが出演しているけど、キーボードを弾いていた少女麥子は出演していないのかなと思ったら、従業員役で出ているとのこと。それにシノリンも従業員役で出ているらしいけどわからなかったので、もう一回観なくては(笑)。