このページはJavaScriptが使われています。
女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

11月5日(土)、新宿武蔵野館リニューアル・オープニング・ロードショー!
『小さな園の大きな奇跡』
關信輝(エイドリアン・クワン)監督&脚本の張佩瓊(ハンナ・チャン)
来日ティーチイン

新宿武蔵野館のリニューアル・オープニングとして11月5日に公開される『小さな園の大きな奇跡』(香港・中国 2015年製作)の關信輝(エイドリアン・クワン)監督が来日。特別試写会で共同脚本の張佩瓊(ハンナ・チャン)と共にティーチインを行いました。


『小さな園の大きな奇跡』
© 2015 Universe Entertainment Limited All Rights Reserved

 これは、香港郊外にある閉園の危機にある幼稚園を立て直した女性園長の実話に基づいた作品で、昨年(2015年)の香港映画興収ランキングNo.1に輝き、第35回香港電影金像奨で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞の主要5部門にノミネートされ、2015年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭では観客賞に輝いた作品です。
 資金不足で先生が一人もいなくなり、5人の園児が取り残された香港郊外のある村の幼稚園。
新園長が来ないと幼稚園が閉鎖され、園児の行き場がなくなるという危機に、村はわずか4500香港ドル(約6万円/普通の園長の約1/6~1/8)の給料で園長を募集。このニュースは新聞やテレビで大報道され、薄給にもかかわらず、かつて有名幼稚園の園長だった女性が応募し、園長になったことがさらに大きなニュースになった実話を元に製作された。夢をあきらめなかった女性と彼女を支えた夫、5人の少女とその家族がおこした奇跡の物語。
有名幼稚園の園長だったルイは、英才教育に疲れはて退職。博物館で働く夫と世界一周の旅に出るつもりだった。ある日、わずかな給料での園長募集のニュースを見た。貧困だったり、片親だったりと、それぞれの家庭の事情で転園ができない5人の少女たちが残され、新園長が来ないと園が閉鎖し、5人は行き場を失うというニュースを見て、ルイは園長に応募する。夫と世界旅行にでかけるまでその幼稚園で働こうと思ったのだった。
事情を抱えた少女たちとの生活が始まり、一筋縄ではいかない事情が勃発。それに果敢に立ち向かうルイ。夫も彼女を支え、いつしか数ヶ月の予定が何年にもなっていった。
主演は香港ポップスの人気スターで女優としても活躍している楊千嬅(ミリアム・ヨン)、その夫役には3年連続香港マネー・ランキングNo.1に輝く男優古天樂(ルイス・クー)が扮しています。
プロデューサーは『香港国際警察』はじめ、ヒット作を連発する陳木勝(ベニー・チャン)。

シネマジャーナルHP 作品紹介参照
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/443272254.html



『小さな園の大きな奇跡』© 2015 Universe Entertainment Limited All Rights Reserved

オフィシャルサイト
http://little-big-movie.com/
配給 武蔵野エンタテインメント

關信輝(エイドリアン・クワン)監督&脚本の張佩瓊(ハンナ・チャン)来日ティーチイン

2016.10.6

朝からインタビューが続き、このティーチインが、この日最後のイベントです。
お疲れの中、日本の観客とトークできるということで来ていただけました。


質問 香港映画というと派手なアクションがあったりする作品が多い中、この作品は地味な作品ですし、まさか日本で観ることができるなんて思っていなかったので、とても嬉しいです。香港ではこのような作品を作るのが難しいと思いますが、どのような苦労を経て撮ることができたのでしょうか。


關信輝(エイドリアン・クワン)監督 まさか、日本で公開できるようになるとは嬉しい驚きです。
実話を元にしたこのストーリーは、私自身が感動して何度も涙を流しました。この話を映画にするのは私のミッションだと思いました。私はいつも思うのですが、映画というのは娯楽なので、お客さんは映画を観て笑ったり、泣いたり、怖がったりして楽しむわけですが、同時にメッセージを伝えられるものです。
この映画を作ったのは、まさに価値があると思ったからです。香港ではアクション映画など規模の大きな映画には資本が出ますが、このような映画を作るのは困難です。出資者たちは計算機片手に、「どれだけ儲かるか」と皮算用しています。その中で奇跡が生まれることもあります。信頼、親交、闘うことが大事です。映画の中のルイ園長先生がそうであったように、信じて突き進んでいった前例があるじゃないですか。私も映画会社からこの話があった時に、自分のギャランティや映画の予算、規模のことは聞かずにぜひやりたいと答えました。園長先生があきらめなかったように、私も絶対諦めずに作ろうと思いました。
幸運なことに、共同脚本のハンナさんと一緒に映画を作ることができました。心の炎を燃やし続けながら0から100まで炎を高ぶらせて作ることができました。
ついに、昨年(2015年)、香港の興行成績1位を獲得するまで、映画は成功しました。
夢というのは、それだけの夢であれば、戦い続けて獲得することができるのです。

張佩瓊(ハンナ・チャン、脚本) この作品の予算は低予算でした。私たちが、この作品から得た給料は、園長先生が最初にもらっていた給料より低いかもしれません(笑)。でも、この企画に対するパッション、情熱は高かったのです。この話をすると、聞いた人たちは感動したといいます。

監督 ルイス・クー(夫役)は香港では有名なアクションスターです。この企画を持って行った時、30分の時間をもらったのですが、後に彼から聞くところによると、私がしゃべったことの最初の5分はわかったけれど、その後の25分はまったくわからなかったと言われました。25分間涙を流しながら話していたからです。彼は私が、いかに感動屋かということをよく知っていたので、おそらく映画も感動作ができるのではないかと確信してくれました。まさに、彼が期待したようにユニークで、特別な映画になるように努力しました。結果、彼は納得して、出演だけではなく、出資までしてくれました。ルイスが教えてくれたことは、諦めないということですね。非常に応援をしてくれました。香港には、こういう映画も必要なんだと言ってくれました。
香港では検閲の時に、カテゴリーに分けられるんですが、この映画は1という、小さい子供から大人まで見てもらえるというものです。香港ではこのカテゴリーの映画は、長い間作られていませんでした。とても珍しいんです。

質問 途中から涙腺が決壊して、泣き続けていました。この作品は香港だけでなく、日本でも同じだと思います。保育園が足りなくて待機児童がいたり、共稼ぎで、小さな子供を預けなくてはいけないという親がいっぱいいるんですね。それも、この5人の子たちと同じように貧しくて片親だったりと、いろいろな事情で高い保育園には預けられないような家庭がいっぱいあります。
この映画の中で良い言葉がいっぱいありました。「教育は施設ではなく教師」「夢は大事」などなど。
5人の少女たち、すごく自然だったのですが、どのように自然な演技を引き出したのかを教えてください。

監督 キャスティングに4ヶ月かけました。4歳から7歳の子たち400人に来てもらい、オーディションを受けてもらいました。その中から10人選び、2ヶ月間トレーニングというか、交流、生活をするプロセスをへて、5人を選びました。
次のステップは演技をどう学んでもらうかということだったのですが、本業が心理療法士である脚本家のハンナから「5人の子供たちをトレーニングする前に、あなたがどうしてこの映画を作りたいと思っているのか、あなたのビジョンと情熱を分かち合ったらいいのでは」というアドバイスをもらいました。4歳から5歳の子供だから、そんなことわかるだろうかと私は思いましたが、絶対大丈夫だからと言われて、5人に、どうしてこの映画を作るべきと思っているかということを一生懸命語りました。映画というのはビジネスと言われているけど、この映画は金儲けのためではなく、世の中にある愛とか希望とか夢を世界や家族に取り戻すという意図をもっていると語りました。
そうしたら、私の使命感を理解してくれたようで、わかったという風に表情を変えてくれました。 雷お化けが怖いチチという役の少女がいましたが、雨の中に手を差し出すシーン、私も彼女と一緒に100回以上練習しました。こういう風に手を差し出すんだよという動きではなく、恐怖を感情で表してほしいと思ったからです。彼女はわりと恵まれた家の子で、親を失うというような恐怖を感じたことがないような子なんです。どうして雨が怖いのか理解できるよう、自分の母親を亡くした経験を話しました。そうしたら天国に行った母親に会いたいと思う役柄を理解してくれました。ここでは、演技指導というよりは、私の経験を分かち合うことによって、彼女の共感能力を引き出すことができたと思います。

質問 中学校の教員です。生徒と一緒に来たので、映画の中で「誰でも良い先生に出会う」とテロップで出てきてドキッとしました(笑)。最後のシーンで、これで園が終わりだと二人が入るシーンが入らなかったですが、これは描いたほうが良かったような気もするのですが、どうでしょう。

監督 私にとってこの映画の鍵というのは、卒園式のこのシーンだと思うんですね。卒園式に集中して終わりたいというのがありました。その後どうなるかというのは些細なことで、私にとっては重要ではなく、まさに園長先生にとって最大限の努力をしたところで終わらせたかったのです。


ハンナ 香港でも、上映後のこういうトークは何度もやりましたが、とても良い思い出になっています。先生が生徒を連れてきた場合もありましたが、多くの場合、生徒が先生を連れて観にきてきました。

監督 先生たちも、情熱を持ち続けてくださいね。

質問 監督はこの作品で何作目ですか? 関心を持っているテーマは?

監督 私はこれまでに10本の映画を作っています。それで、この新作で東京に来ることができ、夢がかなったようでうれしく思っています。光栄です。この映画の成功は私を勇気づけてくれて、今後も続けていこうという気持ちにさせてくれました。
香港映画というのはアクションやカンフーがメインストリームですが、そんな中でも私は頑張らなくてはいけない。このような映画が人の人生を変えるような力になり得るのではないかと、香港だけでなく世界の人を変える力があるかもしれないとさえ思っています。


STAFF
製作 ベニー・チャン、アルヴィン・ラム、スタンリー・トン
監督 エイドリアン・クワン
脚本 エイドリアン・クワン、ハンナ・チャン
撮影監督 アンソニー・プン

CAST
ミリアム・ヨン、ルイス・クー、リチャード・ン、アンナ・ン、スタンリー・フォン、サミー・リョン

『小さな園の大きな奇跡』
英語題:LITTLE BIG MASTER 原題:五個小孩的校長
2015年 香港・中国 中国語(広東語) 112分 カラー 1:2.35 Dolby Digital 5.1
宣伝お問い合わせ :ムヴィオラ 03-5366-1545 info@moviola.jp



先日開催された第29回東京国際映画祭(2016)で、フランシス・ンとルイス・クー主演の『シェッド・スキン・パパ』が上映され、ルイス・クーが来日しました。参加者の写真を足してみました。

左から 佃 典彦(原作/脚本)、ロイ・シートウ(監督/脚本)、フランシス・ン(俳優)、ルイス・クー(俳優)、ジャッキー・チョイ(女優)、ジェシー・リー(女優)、前列の子供はルイスの子供の役をやったフランシス・ンの息子(名前わからず)

return to top

(取材:宮﨑 暁美)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ: order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。