このページはJavaScriptが使われています。
女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『エヴェレスト 神々の山嶺』完成報告会見

2015年12月14日(月)
明治記念館 富士の間1にて


 映像化不可能と言われていた夢枕獏の世界的ベストセラー「神々の山嶺」(角川文庫・集英社文庫)が、日本映画史上初となるエヴェレスト標高5200m地点での撮影を敢行して完全映画化されました。いよいよ3月12日より全国公開されるのを機に、去る12月に開催された完成報告会見の模様をお届けします。


(C)2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

『エヴェレスト 神々の山嶺』

監督:平山秀幸
脚本:加藤正人 音楽:加古隆
原作:夢枕獏「神々の山嶺」(角川文庫・集英社文庫)
主題歌:イル・ディーヴォ「喜びのシンフォニー」
   (ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子
   ピエール瀧 甲本雅裕 風間俊介
   テインレィ・ロンドゥップ 佐々木蔵之介

*ストーリー*
1993年、ネパール。日本のエヴェレスト遠征チームは二人を滑落事故で失い、登頂を断念する。一行に参加していた山岳カメラマンの深町誠は、予定していた写真集が駄目になり意気消沈してカトマンドゥの町を彷徨っていたとき、ある骨董屋で古いカメラに目を止める。イギリスの登山家ジョージ・マロリーが、1924年6月8日にエヴェレスト初登頂に成功したかどうかの鍵を握るカメラではないかと直感し買い求める。そこにシェルパの老人と共に現われた髭面の大男が、自分たちから盗まれたカメラだと持っていってしまう。深町はその男が数年前に消息を絶った孤高の天才クライマー羽生丈二だと気づく。なぜ羽生がマロリーのカメラを持っているのか? 帰国した深町はスクープを狙って羽生の過去を調べ始める。そんな深町のところに、羽生と登山中に事故死した岸文太郎の妹、岸涼子が訪ねてくる。兄の死をきっかけに羽生と交際していた涼子だが、自分の前から突然消えた羽生を探していたのだ。深町と涼子は羽生の行方を追ってネパールに赴く・・・

公式サイト http://everest-movie.jp/
★2016年3月12日(土)全国ロードショー!!

◎完成報告会見

◆メーキング映像で過酷な撮影現場を見る

MC: 2014年3月6日、エヴェレスト標高5200m地点でクランクイン。その後、大地震直前のカトマンドゥ、日本国内での撮影を終え、6月7日にクランクアップ。12月2日に完成いたしました。まずは、メーキング映像をご覧ください。

メーキング映像では、エヴェレストでの過酷な撮影の様子が映し出されました。原作者の夢枕さんも山を登って視察し、皆さんを励ます姿も。


東京国際映画祭の折の製作過程報告会見 平山秀幸監督(左) 夢枕獏(右) 撮影:宮崎暁美

東京国際映画祭の折に製作過程報告会見があって、原作者の夢枕獏さんが「エヴェレスト5200mの撮影現場を訪れて、キャスト・スタッフ一丸となって撮影に臨んでいるのを目の当たりにして感動しました」とおっしゃっていたのを思い出します。


◆この作品に出会えてよかった! ~完成作品を観て、あらためて実感

MC: 会場正面にあるパネルには、エヴェレスト登山の歴史と、物語中に描かれる出来事、そして本作の映画化までの歩みが書かれています。いかに登頂することが難しいか、映画の中でどんな物語が展開されるのか、また、映画化までの道のりがいかに困難だったかをご覧いただけると思います。


会場正面パネル 撮影:宮崎暁美

主演の岡田准一さん、阿部寛さん、尾野真千子さんと、平山秀幸監督が登壇。

MC: ご挨拶と完成した映画をご覧になった感想をお願いします。
まずは、エヴェレスト史上、最大の謎を追う野心家のカメラマン 深町誠を演じました岡田准一さん、お願いします。

岡田: お忙しい中、来ていただきましてありがとうございます。僕自身ずっとカメラと登山をやってきたので、この作品に出会うためにやってきたのだなと運命を感じた作品でした。山に登りながら、阿部さんの役作りをカメラマンとして見ながら登れたこと、一緒に実際に登りながら出来たことが幸せでした。とても力強い作品に仕上がっていると思います。よろしくお願いします。

MC: 山岳史上最大の挑戦にとりつかれた孤高の天才クライマー羽生丈二を演じました阿部寛さん、お願いします。

阿部: 羽生という役は自分にとってとてもハードルが高かったですけど、実際エヴェレストの5200mまで行って撮影できたことがすごく良かったです。 あそこまで行くのに10日かかっていたので、 実際周りの環境に肌を浸しながら撮影できたことがよかったです。ハードな撮影だったので、山の苦しみ 生きている中の苦しみを味わいながら 撮影できたことに満足しています。


阿部寛 撮影:景山咲子

MC: 深町と羽生に人生を翻弄される女性を演じた尾野真千子さん、お願いします。

尾野: この貴重な体験が出来たことを嬉しく思います。そして、この作品が出来て、あらためて観て、もっと感情が湧いてきて、ほんとうにこの作品に出会えたことを嬉しく思います。


尾野真千子 撮影:景山咲子

MC: 最後にこの作品のメガホンを取られました平山監督、お願いします。

平山: スタッフ、キャストあわせたクルーで5200mのところまで行って撮影しました。どんな事が起こるかまったく想像できない中での撮影でしたけど、文字通り命を削ってというか、本当に今、キャストの3人とこの場にいられるのが奇跡のような気がします。出来上がった映画はどうなのか、監督からはなかなか言えませんが、どのように観て貰えるかが楽しみです。


平山監督 撮影:景山咲子

◆生身の3人を撮った!

MC: 岡田さん、登山をしながら撮影する山岳カメラマンの役どころで、個人的にも登山やカメラをされていましたが、実際にエヴェレストでの撮影で活かされたことはありましたか?

岡田: この作品のためだったのかなと。 実際、カメラを首にして、阿部さんが羽生になっていく姿を見ながら登っていくという、先輩の役作りを見せてもらって自分的にはいい経験をさせてもらいました。監督が演じるとかでなく、生身の岡田を撮るぞとおっしゃって、生身の僕たちの芝居を観ていただけると思います。

MC: 阿部さんは孤高の天才クライマーという役どころでしたが、登山の経験は?

阿部: 登山の経験はなかったので、行く前に日本でスタッフと一緒に2~3回登りました。酸素が薄いというので低酸素室に入ってトレーニングしました。最初の15日位、僕は撮影がなくて、二人の撮影を見ながら付いていくだけだったのですが、岡田くん腹筋があって結構すごい。自分はそれを越える前人未到の山を登る役どころなので、頑張らないといけなかったのでつらかったです。


阿部寛 撮影:宮崎暁美

岡田: 阿部さん、涼しい顔されていて。

阿部: いやいや結構つらかったですね。

岡田: そうとう役作りされていて、どんどん髭も濃くなっていくので、やっぱり凄いなぁと。

阿部: 岡田くんは実際写真やられてるし、すごく上手なんですね。すっかり役に入っていて、僕はずっと2週間くらいストーカーのように撮られたんですよ。

岡田: 阿部さんはうまく撮れるのに、尾野さんはうまく撮れない。なぜかわからないんですけど。

阿部: 僕は凄くカッコよく撮れてるのですよ。これ俺か?という位。でも尾野さんのをみると、普通のスナップみたいであんまり上手く撮れてない! すみません!(笑)

MC: 尾野さんは二人の男性の間で揺れ動く女性。演じていて意識されていたことは?

尾野: 監督から、「Loveじゃないよな Likeだよな」とずっと言われてました。このままLikeでいけるよう、気をつけてました。

MC: 監督として求められたものは?

監督: 生身の岡田を撮ると言っても、映画を撮るという行為として5200mは限界。-15度~20度の中で、左向け、右向け、泣けといった小手先のことは通用しない。与えられている役はあるけれど、まさに生の3人を撮っているドキュメンタリーという思いでした。


平山監督、尾野真千子 撮影:景山咲子

◆鼻うがいで高山での撮影を乗り切る

MC: 実際にエヴェレストに登って撮影した時の思いをお聞かせください。 岡田さん 日にちが経つにつれ辛くなるのを楽しみにしていたとか。実際いかがでしたか?

岡田: いろいろ考えていたことが通用しないはずだと思ってました。ほんとに空気が半分という経験したことがなかったこと。 富士山にしか登ったことがなく、それ以上高いところ。苦しい中、みんなで共同生活をおくって、支えながら撮影しました。
これ言っていいのか・・・ 鼻うがいを阿部さんから習いました。うまくできなくて、死にそうになりました。健康のためにいいといわれ頑張りました。最後まで高山病にならずに下山するために、できることは最大限しようと考えました。

MC: 阿部さんは?

阿部: 鼻うがい、僕は完璧にできるんですけど。

岡田: 鼻うがいマスターなんですよ。 5200mにたどり着いたらお風呂もないし、低酸素で苦しい。昼間は無理して呼吸するようにしていたんですけど、夜は特に寒いのと頭痛いのとで過酷なんですよ。スタッフ皆、よく登り切った。最後60m登れなかった人も一人いるのですが、皆、なんとかたどり着きました。そこに長時間いることのつらさ。1週間で気分が悪くなって降りた人もいるし。過酷な中で表現しようとすると、山屋さんがそばにいて、早く動いちゃだめとか伺いながらやってました。 あの感動というのは、手の届くとこにある山が皆、富士山を越えている。すぐそばにあるようなのに、距離がある。到達するには時間かかる。異常な中で、苦しさと闘いながらやってました。

MC: 女性が登るとなると、大変だったと思いますが、尾野さん、いかがでしたか?

尾野: 上に登ると気圧の関係で3キロくらい痩せるらしいのに、3キロ太りました。(笑)

岡田: 誰よりもタフでした。

尾野: 私も鼻うがいしてました。

MC: エヴェレストに登れることが出演を決める大きな要因だったのですか?

尾野: はい。そうです。台本をいただいて、エヴェレストに登ると書いてあって、「登るのですか?」と聞いたら、「はい、登ります」と言われ、その時に「やります!」と答えてました。

MC: エヴェレストに登ったからこそ感じたことが演技に繋がったと思うのですが、いかがでしたか?

岡田: 実際何に惹かれて登るのか、どうしてそこまでして登るのかというのが、尾野さんが演じた役柄だったと思います。僕らは登ったことがない。どうして本気で登りたいと思うのか。山の気高さがあると思う。それを感じるためにゆっくり歩きながら、苦しさを感じながら登りました。セットだとしたら撮れない苦しさ。実際行けて撮れたというのは、大事なものを貰ったと思います。

MC:: 阿部さんも?

阿部: そこまでたどり着くのに、スタッフ一丸となって行くわけです。口では説明しきれないのですが、大きな岩がほんの一点に乗っかっているようなところもある。行ったことのない景色の中で、一歩間違ったら何があるかわからないというところで撮影できて貴重だと思います。 あの現場に行かなければ、あの空気の大きさはわからない。


◆現地を経験して変わったこと

― (会場の記者より) 現地に行く前と帰ってからでは、ご自身に変化はありましたか?

岡田: 経験していない時と山を見た後とでは、役作りに変化がありました。限界を超えた感情を見出せるようになったと。価値観が変わった。 うまくやろうでなく、人の心を打つものは?と。
山の景色を見たあとでは変わったかなぁ~と。

阿部: なんで山に登るんだろうなと、毎日のように質問してたけど答えは見つからない。あれだけの自然。予測できない太刀打ちできないことが起こる。それが自分の中にあるというのが人生の宝。これからも考え続けていくのだろうなと思います。

尾野: 生きていることがこんなにすごいんだな、素晴らしいことなんだなと。普段意識していないのですけど。私たちの撮影というものが、これが命をかけてやることなのだなと。命を大切にして、皆と共にやっていくことの素晴らしさを教えてもらいました。


尾野真千子 撮影:宮崎暁美

◆限界を超えて挑戦したい来年の抱負

MC: テーマの一つは限界を超える挑戦。来年の希望として自分の限界を超えてあらたにチャレンジしたいことは?

岡田: この作品は限界を超えながら撮影。もう1回限界を超える場所に行きたいと密かに願っています。

阿部: もう1回行きたいという感じになるんですね。神に近いというのか。僕は皆より3日前に撮影が終って、残って一緒に登りたいと思ったけれど、くじけて、すみません先にヘリでさよならと帰りました。

尾野: 5200mのところからてっぺんが見えていたので、いつか登ってみたいですね。来年もいつものように限界をぜひ超えたいと思っています。


☆フォトセッション


      平山秀幸監督と尾野真千子さん 撮影:宮崎暁美           阿部寛さん 撮影:景山咲子

岡田准一さんの写真をWeb版で披露できません。4人のショットをお届けできなくて残念です。


*****

最後の挨拶を岡田准一さんが代表して述べました。

岡田: ほんとに山の上に登って、力強い原作をもとにスタッフ一丸となって限界を超えながら撮影をした映画です。3月12日公開です。熱い話を皆さんに感じていただければと思います。
よろしくお願いします。


********

☆取材を終えて

山登りはお金を積まれても絶対やらない根性なし私。山はあくまで遠くから眺めて楽しむもの。エヴェレストもK2も3番目に高いカンチェンジュンガも実は見たことがあります。そして、登山はしないけれど、チベットやラダックで3500m~4500mの高地は経験したことがあります。幸い、私は空気の薄さにすぐに慣れたのですが、高山病に苦しむ人たちを目の当たりにしました。それ以上に高い5200m地点での撮影! ほんとうに大変だったことと、この日の皆さんの発言から実感しました。この会見後、映画を拝見。阿部さんも岡田さんも激しい息づかいの場面がありました。尾野真千子さんは、確かに一番気丈な面持ちでした。発言通り、いつかエヴェレストの山頂に立たれる日が来るのではないでしょうか。(咲)


1989年6月4日、天安門事件が起こった日に富士山に登りました。その夏、中国、四川省にある四姑娘(スークーニャン)という5600m近い山に登るための訓練のためでした。この時、富士山の山頂近くになると息苦しくて登るのに苦労したことを覚えています。結局、天安門事件の影響で四姑娘には行けなかったけど、標高3776mの富士山でさえかなり苦しかったので、5200mでの撮影というのはかなりしんどかったのではないでしょうか。阿部さんがエヴェレスト登頂に挑戦したシーンの撮影はかなり苦労したと思います。
山を描いた映画は、山屋から見ると、登山シーンに嘘っぽさを感じることがあるけど、この作品では、高山の登山に精通した人のアドバイスが上手いのか自然に感じました。阿部さんの鬼気迫るシーンぜひ観てほしい。(暁)

return to top

(取材: 宮崎暁美、景山咲子)
本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ: order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。