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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『ハッピーエンドの選び方』
シャロン・マイモン監督&タル・グラニット監督インタビュー

10月15日(木)都内にて


11月28日(土)よりシネスイッチ銀座で公開が始まった『ハッピーエンドの選び方』。イスラエル映画ですが、パレスチナ紛争のことは全く出てこない、どこの社会にでもあり得る「死」を見つめる物語。といっても、ユーモアたっぷりに描かれていて、明るく死を考えることのできる映画です。公開を前に二人の監督が来日され、お話を伺う機会をいただきました。

『ハッピーエンドの選び方』 英題:The Farewell Party  原題:Mita Tova(良い死)


© 2014 PIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/
PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION.
*ストーリー*
エルサレムの老人ホームで妻レパーナと暮らす発明好きのヨヘスケル。今日も音声の変わる器具を使って神様になりすまし、寝たきりの友人の老婦人を電話で励ましている。ある日、末期の病で入院している親友マックスの見舞いにいき、望まぬ延命治療に「もう楽になりたい」という言葉を耳にする。彼のため、自らスイッチを押して、苦しまずに人生の最期を迎えることのできる装置を発明する。
安楽死に猛反対の妻レパーナの目を盗み、同じホームに暮らす仲間たちの協力を得て、マックスを静かに旅立たせることに成功する。秘密裏に進めたはずだったのに、苦しまずに最期を迎えることができる装置の評判は瞬く間に広まってしまう。
そんな折、妻レパーナに認知症の症状が現われ始める。発明に夢中になって妻の認知症の進行に気がつかなかったことに自分を責めるヨヘスケル。一方、自分らしく生きられる時間が短いと悟ったレパーナは、自分のため、夫のため、残された時間をどう過ごすかを考え始める・・・

後援:イスラエル大使館
配給:アスミック・エース
2014年/イスラエル/カラー/93分/ビスタ/5.1ch サラウンド/ヘブライ語
公式サイト:http://happyend.asmik-ace.co.jp/
★2015年11月28日(土)シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー



© 2014 PIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION.

◆2人の監督プロフィール (公式サイトより)

シャロン・マイモンSHARON MAYMON(写真左)
1973年、イスラエルのラムルに生まれ、カメラ・オブスキュラ映画学校で学ぶ。2009年に同学校出身のエレツ・タドモーとともに、日本の相撲を題材とする長編コメディー映画『A Matter of Size』を製作。イスラエルで数々の映画賞を受賞したこの作品は2009年のイスラエルで最も興行収入の高い映画作品となり、現在アメリカでリメイクが進められている。

タル・グラニットTAL GRANIT(写真右)
1969年イスラエルのアビブに生まれ、サム・スピーゲル大学を卒業。2006年にマイモン監督とともに長編映画『Mortgage』を製作し、イスラエル・フィルム・フェスティヴァルでベスト・ドラマ賞を受賞。同じくマイモン監督と共同製作した『To Kill a Bumblebee』、『Summer Vacation』はイスラエル国内外で高い評価を得ている。



◎インタビュー

― 非常に普遍的で、イスラエルでなくてもありえる話でした。亡き母がよく言っていたのが、延命措置はしないでほしい、そして、あなたも年を取るとわかるわよということでした。まだ若いお二人が書いた脚本について、出演されたお年を召した俳優の方たちから、ここは変えたほうがいいという助言はありましたか?

タル: まずはお母様のこと、お悔み申しあげます。
脚本を書きあげるのに3年かけています。リサーチもし、いろいろな方にお会いして話もききました。そうやってリアルな部分やユーモアのある部分のバランスを突き詰めていきました。俳優たちとの作業の中で変えたところはありません。それだけ脚本が正確だったのだと思います。アドリブもしないで下さいとお願いしました。自分の人生体験を役に活かしてくれたと思います。ヤスケルを演じた方は自分の妹が病気で亡くなりそうになった時に、安楽死させたかったけれど、宗教上伝統を守る方だったので、それはできませんでした。


タル・グラニット監督

― 母はよく父にお葬式はどうしたい?と聞いていました。でも結局母の方が先に逝ってしまいました。私の両親の家はもともと神道だったのですが、母はよく花がいっぱいのお葬式がいいと言っていました。神道では花は飾れないので、無宗教の音楽葬にして母の好きなシャンソンを流して、花をいっぱい飾りました。

シャロン:この映画を観て、皆が自分だったらどう旅立ちたいかを話し始めてくれるといいなと思っていたのですが、すでに日本ではそういうことが話せるのですね。どう死にたいとかお葬式はどうしたいとか。イスラエルではほとんど話しません。宗教的な埋葬をするのが常です。非常に世俗的な方の中には、キブツでの葬儀を選ぶ方もいます。お金はすごくかかるのですが、イスラエルで唯一無宗教で出来るところです。火葬する方は非常に少ないです。

タル:でも、埋葬する場所を確保するのも今や大変なのよ!

― キブツといえば、ずっと独身だったゼルダさんは、キブツで過ごしているので、皆さんに見まもられてうらやましく思いました。私自身、独身ですので、とても身につまされました。そして、今日この場に一緒に来られなかったシネマジャーナルのあるスタッフは、この映画を観て、老後必要なのは、ユーモア、友だち、少し贅沢のできるお金と言っています。お二人は?

二人(笑って):お金・・・ 確かにね!

タル: ユダヤ人は皆、年をとったら、まずは健康といいます。

シャロン:お祈りする時に、若い時からまず健康を祈ります。

タル: 安楽死マシーンもいるわね。(映画をアピール!)

シャロン 使うというわけでなくて、そういう選択肢があるということで安心できるのですよ。


シャロン・マイモン監督

― 原題『Mita Tova』の意味は?

二人:「良い死」です。

― なるほど、納得です!
ところで、出演者にモロッコやブルガリア出身の方がいますが、今イスラエルで老後を迎えている世代は戦争やホロコ―ストを経験されて故郷を離れた人が多いのではないかと思います。国として、そういう方達への配慮はありますか?

タル: 残念ですが、イスラエル政府としてホロコーストサバイバー等は無視してきました。今の政府になって、少し政策を打ち出しましたが、遅すぎるし、あまりに小さな政策です。

― 同じ出身地の方達が母国語で話し合えるようなコミュニティーはあるのでしょうか。

タル: それはあります。また、イディッシュやラティーノなど、移民前に居たところでのユダヤの文化を伝えようという動きもあります。


終始笑いに満ちたインタビューでした             時に真剣に・・・     

― 同性愛者も登場していましたが、次回はどんなテーマで? またお二人で製作しますか?

シャロン: 今後も二人で作るつもりです。今回は人の生においても死においても選ぶ権利をみせるためにエピソードをいろいろと入れました。ゲイに寛容というところは重要ではありませんでした。実は、カミングアウトをテーマにした短編も作っています。長編も作りたいですね。

― 次回作も日本で公開されることを楽しみにお待ちしています。今日はどうもありがとうございました。



シャロン・マイモン監督(左)、タル・グラニット監督(右)

★☆★☆★

 2誌合同取材で、もう1誌の若い女性記者から開口一番、「登場人物が世代的にシオニズムのもと、イスラエルが建国された頃から生きている人たちですが、特徴的な考え方は?」との質問がありました。映画がとても普遍的なもので、そういったことを感じさせられるものでなかったのでびっくりしたら、監督から、「シオニズムは、映画の中で伝えたい部分ではないし触れていませんが、色々な国から小さい時に移民してきた方が多い世代。キブツもシオニズム思想で作られた共同体でしたが、今はもっと多様な場所になっています」との答えがありました。先入観で観られる国なのを感じたひと時でした。 2誌合同でしたが、今回は私の質問部分のみでまとめました。

監督たちのお話を伺って一番驚いたのは、イスラエルでは、無宗教で葬儀をしたい場合は、キブツ(生活共同体)でするしかないということでした。キブツといえば、シオニズムの思想のもとに出来たものと思っていたので意外でした。そして、キブツでの無宗教の葬儀は、ほかの宗教的な葬儀よりも費用が高いのだそうです。それも意外でした。

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(取材:景山咲子)
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