1978年生まれ。『お姉ちゃん、弟といく』(2006年)で、2008年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員賞受賞、『ユリ子のアロマ』(2010年)で劇場デビュー。『うそつきパラドクス』『オチキ』など。神代辰巳監督を尊敬、影響を受ける。
=ストーリー=
高校卒業が近くなった冬、教師の福田は生徒の鈴木幸子に「私と子どもを作ってくれませんか?」と迫られる。幸子は宇宙人で、地球人との子どもを作る使命があるのだという。まさかねと思いつつ「据え膳食わぬは・・・」と協力した福田は、穴のような目の幸子が人間じゃないと納得する。
中年教師の村田は、イケメン生徒の取手に秘かに思いを寄せ、毎夜彼の机で自慰行為にふけっている。ところがその現場を真面目な女生徒萩本小鳩に目撃され、以来、彼女の「豚」として調教されるはめになってしまった。小鳩の愛はゲイの村田には受け入れられず、暴走の一途をたどる。
エロ可愛くて明るい純愛フェティシズム作品。
★6月28日(土)より渋谷ユーロスペースほか公開
(C)ふみふみこ/徳間書店・2014映画「女の穴」製作委員会
シネマジャーナル 作品紹介 >> http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/399984795.html
―今回はコミックが原作ですね
コミックはジャケ買いしたんです(笑)。「女の穴」ってストレートな題がインパクトありましたし。マイノリティな話だったのでリンクしやすかったですね。前の『ユリ子のアロマ』もそうですが、フェティッシュな感覚を描くのが好きなので、自分に近しい感じがしました。
話を重くせずに、軽く飛び越えてしまっているのも面白いです。別々の短編だった「女の穴」と「女の豚」は一つの映画としてまとめました。「女の穴」は短い短編でしたので、話の核の部分を捉えて、物語として膨らませています。ラストシーンは僕が作りました。
映画は原作のふみふみこ先生にも喜んでいただけました。全体がポップでコメディの部分もある、そういう軽いタッチも気に入られたんじゃないかなと思います。
―コミックは映画のようにコマ割りされていますが
なるべく影響されないようにしています。原作のキャラクターが生きるように脚本を書き、映像化するにあたって脚本が求めているものが何だろうというのを、一度自分の中で整理し直しています。カメラマンさんとも原作の画を引きずり過ぎないよう、そういうスタンスでやらせてもらいました。
―キャストについて聞かせてください
脚本ができてから決まっていきました。幸子の市橋直歩(なおほ)さんはグラビアアイドルで、最初動画サイトで観て、無表情な宇宙人ぽい雰囲気が気に入りました。本人に会ってみると違うんですけど。小鳩の石川優実さんは何人かと会った後、最終的に決まりました。彼女は以前「クリーム」という雑誌で活躍して、“お菓子系アイドル”と呼ばれていたそうです。
福田先生役の小林ユウキチくんは、台本に書かれていない部分も説明しなくても通じるところがあり、ある程度まかせても安心でやりやすかったです。青木佳音さんは感情のない幸子とは対照的に感情豊かな元カノ役。泣きの芝居のところで涙が止まらず、ほんとにずっと泣いてしまって驚きました。
演技経験が多くない女優さんとは、スケジュールを見て、その中でいくつかある大変なシーンを最初に一つやってしまいます。そこを乗り越えると後の撮影が楽になることが多いんです。
―撮影日数はどのくらいですか
1週間です。幸子と小鳩の二つの話をそれぞれ3日間ずつプラス1日。映画初出演の市橋さんと石川さん二人は、この短い間にやるべきことを掴んでくれたし、それは今後いろいろな意味で彼女たちの自信にもなると思います。
僕は普通あまり細かく決めずに撮り始めるんですが、今回は期間が短いので、もう始めからしっかりカット割りを決めていました。期間が長いと、俳優はじっくり役にも入っていけるし、撮り直しもできますが、短いとそれなりに大変です。
俳優の魅力を引き出すために、何回かテイクを重ねて追い込む作業には時間をかけますが、それ以外は考えた段取り通りに撮れて、僕の現場にしてはいつもよりスムーズにいきました。
―散らかっている先生の部屋がとてもリアルでした。部屋も学校も実際に使われているところですか?
あの部屋は栃木のハウススタジオで美術さんが作りこんだものです。居抜きでなく(笑)。
学校は、廃校になった小学校を借りました。佐野のフィルムコミッションのおかげで撮影ができました。教室でああいうシーンがあるので、探し出すまでなかなか苦戦しました。借りられたのは大きかったです。やるからには真剣に、トコトンやるという姿勢を分かっていただけた、と現場でも感じました。でも卒業生が見たらいやかもしれないです(笑)。
―可愛くて真面目な小鳩が裸になってしまいました
小鳩が全てさらけ出す決意のほどを見せる必要なシーンだったんです。机などで隠すこともできたのですが、もう思い切って(笑)。石川さんも臆せずやってくれました。
―村田先生(酒井敏也)はインパクトありましたね!イケメンの取手くん(布施紀行)もかすみました。
酒井さんは断られるかもしれないと思ったんですが普通にやってくれましたね(笑)。 最初に会ったときに「ちゃんとお尻を撮したいんですが」と話したら「全然いいです。監督がよければ」って(笑)。そういえば取手役の布施くん単体のシーンが殆どなかったかな。
―完成したものをご覧になっていかがでしたか?
市橋さん、石川さんが、客観的に見られないかと思ったんですが、面白いって言ってくれたので、安心しました。
正直言って、ずっと編集していると自分ではどこが面白いのかわからなくなるんです(笑)。
僕はいつも作り終わると「ヤバイもの作ってしまった!」と思ってしまい、試写で初めて感想をもらって、やっと「ああ良かった」と(笑)。
この作品のポップな感じは若い世代にも受け入れやすいと思います。
―これからの抱負を
基本的に映画は「企画」だと思っているので、自分の作家性みたいなものに捉われることなく、企画としてあるものを自分なりに真摯に作っていきたいです。
今までほとんどの作品において「性」が関係する作品を作ってきましたが、それはおそらく今後一生続いていく自分のテーマでもあります。現代において「性」というのは非常に多様化しており、描くことは無数にあるように思います。保守的にならず、より多様化する現代の性に、正面から対峙するような作品を作っていければと思っています。
時間いっぱいとなり、ポスター前での撮影のため移動すると、別室で取材を受けていた市橋直歩さんと石川優実さんがいらっしゃいました。お2人とも映画よりず~っと美人です。女優さんって別の人種なんでしょうか。宇宙人の幸子役で、感情を出すことのなかった市橋直歩さんの笑顔が見られました。おさげにメガネの優等生の小鳩だった石川優実さんはレースのショートパンツ姿です。可愛い~!オヤジ化してしまう記者。
「性」にこだわっていくといわれる吉田監督の次の作品はやはりコミックが原作の『ちょっと可愛いアイアンメイデン』。女子高校の「拷問部」(!)のお話だそうで、グラビアアイドルたちが過激なシーンに挑戦、頑張っているようです。(7月19日より公開)
一度大病をなさった吉田監督、これからも健康第一に楽しい作品をお待ちしています。
(取材・写真:白石映子)