オカマダンサーのエンジェルとの間に授かった娘小夜子を女手一つで育てる真奈美を演じた須藤理彩(りさ)さん、1998年のNHKの朝ドラ「天うらら」の印象そのままに、元気で明るい須藤さんは、凜としてぶれない芯を持つ真奈美のイメージとも重なります。
「父の教えが自分の基本、軸になっていると思います。子どものころは厳しすぎてイヤでしたけど。親になってみたら、こういう気持ちだったのかとわかりました。10年前に亡くなりましたが、父だったらどうするか、何と言うだろうかとよく考えます。親の教えって時間が経って自分の中に落ちてくるものですね」
お父様きっと喜ばれているでしょう。そして真奈美のイメージは淡路景子さんだそうです。
「強い芯の通った女性で人の悪口は決して言わない。全てにありがたいと思う。周りからどう見えようと、自分のことを不幸だと思ったことはない。そういう生き方ができている女性ってすごく素敵だなと思って。全然面識もないのに、画面で拝見していて影響を受けています」
強くて懐の深い真奈美に近づくため、常に自問自答し、監督と話し合っていたという須藤さんが監督のセンスの良さに驚いたのは、母と娘が飲み明かすシーンでした。
「酔っ払って話して泣き笑いする親子のイメージでいたら監督は“お皿にピーナツが一粒だけ残る。二人ともそれを取ろうかと迷って結局娘の小夜子が半分にして真奈美に分ける。それをセリフのないシーンで描きたい”と監督が言われました。
なんてセンスのある方なんだろうと思いました。それだけのやりとりで、二人のこれまでの月日と、不器用な思い、小夜子が身につけた優しさ、産んでよかったという真奈美の気持ちいろんなものが見えてきます。
真奈美は“父親”としての役割が強い女性です。安田さんが登場して“母親と娘”。性別を越えた人間の関係性、家族のあり方が面白い形で描かれています」
デビューが朝ドラのヒロインとこのうえないものでしたね。
「年を追うごとにスポットライトを浴び続けるのがいかに難しい世界か、やっぱり芝居がうまくならなきゃ、と痛感しました。
平凡な自分がやれる役が実はそんなにないことに30を過ぎてひっかかってしまったんです。そんなときに普通の人を描くこの作品に出会えたことは大きかった。転機になる作品に巡り会えました」
あと2年で40代という須藤さん、20代のころは年を取るのがいやだったそうですが、今は若さに勝る経験や知識が得られるだろうと楽しみとか。働く奥さんでお母さん、頑張れるのは健康で丈夫なお身体だからですね。高校時代は陸上選手で、俊足と伺っています。
「漠然とした夢を見るより、期限をつけて具体的な目標をクリアしていくのが好きなんです。今もときどき走っていますが、いつかフルマラソンを走れるようになりたいですね。私は“陽”のイメージが強いらしいので、それを覆すような悪女や耐える女の役もやってみたいです」
そんな須藤さんを見られる日をとても楽しみにしています。
(まとめ・写真 白石映子)