6月28日(土)より、シネスイッチ銀座で公開の始まったインド映画『マダム・イン・ニューヨーク』。 お菓子作りは得意だけど、家族の中でただ一人英語が出来ないことに引け目を感じている主婦シャシ。姪の結婚式準備を手伝うため、家族と離れて1ヵ月を過ごすことになったニューヨークで、英会話教室に通って様々な人たちと出会い、自分の世界を広げて輝いていく姿を描いた物語。女性監督による、女性が主人公の、一味違ったインド映画です。
公開を前に、主人公シャシを演じたボリウッド映画界の大女優シュリデヴィが来日し、5月29日、インド大使館で記者会見とトークイベントが行われました。
シュリデヴィは、1963年生まれ。4歳で子役デビューして以来、出演作は265本以上。アイドルのさきがけでもありました。97年にプロデューサーのボニー・カプールと結婚し女優業は休業、今作が15年ぶりの映画復帰。
ゴールドの刺繍やスパンコールで飾られたサリー姿で登場したシュリデヴィは9頭身美人!「コンニチハ、オゲンキデスカ」と日本語でご挨拶。以下英語で「日本に来られてとても嬉しいです。『マダム・イン・ニューヨーク』を日本の多くの皆様に見ていただいて、気に入っていただけることを願っています」と日本での公開の喜びを語りました。通訳はお馴染みの松下さん。MCは花田景子(貴乃花親方夫人)さん。
花田:ご結婚された後、芸能界を退いて15年間専業主婦をされていました。今回復帰に当って、素敵なエピソードがあるとお聞きしましたが・・・
シュリデヴィ:私の夫ボニー・カプールは映画のプロデューサーなのですが、この作品のプロデューサーであるバルキさんと親しくて、奥様(ガウリ・シンデー)が映画を作るので「脚本をぜひ奥さん(シュリデヴィ)に見せて貰いたい」と言われて預かってきました。脚本を読んで、ぜひ引き受けたいと思いました。夫と子どもの世話をし、PTAに出かけている生活でしたから、まるで私のために書かれたように思いました。それで出演して今、皆様の前にいます。
花田:日本は2度目と伺いました。印象は?
シュリデヴィ:20年以上前に2日間だけ滞在したことがあります。今回は家族が一緒で、今日明日は仕事があって忙しいのですが、その後、観光の機会を持てるのを楽しみにしています。
花田: 50歳とお伺いしてびっくりしています。まさしく「美魔女」ですね。美しさを保つ秘訣は?
シュリデヴィ:日本で綺麗な女性にお会いして、私の方こそ花田さんに秘訣をお伺いしたいですね。(秘訣は)規則正しい節度のある生活をすること。心のありようが顔に出ますので、幸せな生活を送ること。家族と良い関係を保ち、適度な運動をすること、揚げ物は食べない、水をたくさん飲むことでしょうか。
― 15年前のインド映画の世界と、復帰された今回との違いは?
シュリデヴィ:たくさん違いがあります。とても整備されました。野外ロケでは、着替えは木の蔭で行いましたが、今はバンの中で着替えができます。1人がなんでもしていた仕事も、担当が分かれていて、大勢の人がいます。脚本がセリフも入って撮影前に届きます(笑)。この作品は全て同時録音でした。演技の質を高めることができますね。
― 脚本がご自身のために書かれたようだとおっしゃいましたが、主人公のシャシが自分と似ているところは?
シュリデヴィ:シャシはシンプルでありながら、繊細な女性です。私も同じ二児の母ですのでシャシの気持ちが理解できました。彼女はどの世代の女性にも共感できるキャラクターです。ある観客が、「この映画を観た後にお母さんに電話をして謝った」と聞きました。この作品をやってよかったと思いました。
― インド映画は民族や宗教の異なる人たちが協力して製作されていますが、さらに多民族の人たちが暮らすニューヨークでの撮影はいかがでしたか?
シュリデヴィ:シンデー監督はこの撮影の前にニューヨークに長期間滞在して綿密なリサーチを行いました。ロケに入る前にどこでどのショットを撮るかということを全て決めていたのです。スタッフも多くがニューヨークの人たちでしたが、とてもまとまっていました。インドよりも環境が整備されていて時間厳守。もう1シーンと思っても、時間が来たら終り! こういうのもいいなぁと思いました。
― アミダーブ・バッチャンとの久しぶりの共演はいかがでしたか?
シュリデヴィ:とても楽しみました。彼は素晴らしい大俳優ですし、何よりプロ意識に感銘しました。監督は彼が役を引き受けて下さったことに驚いていました。映画に特別な要素を加えて下さったと思います。
― 若い女性監督の活躍をどう思っていますか?
シュリデヴィ:女性監督との仕事は初めてでした。でも、映画を撮る上で性別は関係ありません。シンデー監督は、自信を持っていて、どういう作品にしたいか自分のビジョンをしっかり持っている方。女性監督とはコミュニケーションがとりやすく、深く理解できます。これからも若い彼女達を応援して映画を作っていきたいと思います。
ここで、休憩に入る前に、ゴールドのサリー姿でフォトセッション。
休憩の後、深紅のロングドレスにお召替えしてシュリデヴィ登壇。
会場からため息がこぼれます。
花田:女性は、主婦、妻、母と、自分をなくしてしまうことが多いのですが、女性が自信を持つとキラキラ輝きます。「自分を愛するとまわりをもっと愛せる」という映画のメッセージを感じました。今日はインドの大女優、シュリデヴィさんを迎えてのイベントです。ひと言お願いします。
シュリデヴィ:私のメッセージは、映画をご覧になれば、そこに詰まっていると思います。どうぞ楽しんでご覧になってください。
ここで、ワードワー駐日インド大使が歓迎のスピーチ。
「インド映画は2013年に100周年を迎えました。シュリデヴィは、インドで女性初めてのスーパースター。映画にはインドと日本の類似点も観ていただけると思います。社会における女性の役割も感じていただけると思います」
次に、トークイベントのゲストであるアグネス・チャンが挨拶。
「今日は、素敵な女優さんとの会に呼んでいただき嬉しいです。映画は楽しいだけでなく、コメディチックな中にメッセージがいっぱい込められています。普段、大事な人の人格を無視していることがあるかと思います。どうやって自分の価値を認めてもらうか・・・ 鮮やかで爽やかな物語の運び方。踊りも歌も出ます!」
そして花束贈呈に登場したのは、安倍昭恵内閣総理大臣夫人でした。
今年、1月にインドを訪問した際に、日本映画を特集したインドの映画祭に招待され、花束をプレゼントされたことへのお返しとのこと。インド映画界へのエールをおくりました。そして、「主人も女性が輝く社会を目指して頑張っているところです。この映画のように女性が枠にはめられることなく活躍していってほしい」とご挨拶。背筋がすっと伸びた気さくな方でした。
トークイベントの前に、ワードワー駐日インド大使、安倍昭恵内閣総理大臣夫人を交えてフォトセッション。
MC:花田景子
ゲスト:アグネス・チャン
花田:「料理上手でなかったら私と結婚しなかった?」とシャシが夫に聞く場面がありました。皆さんの場合はいかがでしたか?
シュリデヴィ:私は決してその質問を夫にできません。料理が下手ですから。ただ、いつも家に夫が帰ってくるのは、いかに私が夫を愛しているかを知っているからです。
アグネス:同じ質問ですか? 料理は大好きですが、そのために結婚した訳じゃなくて、お互いの目標が一緒だったから結婚しました。
花田: MCの私も同じ質問に答えろとのことですので、私自身のことを。結婚した時、横綱でしたから食事を作るのが大事な仕事でした。最初は下手でしたが、だんだん家庭の味ができてくるのを実感しました。深く物事を考えないところが、多分気に入って貰っているのかなと思います。次に、夫のここが一番好きというところを教えてください。
シュリデヴィ: 沢山ありすぎて難しいですね。感じているのは、いつも私のそばで支えてくれていること。ストレスのある仕事でも、家に持ち込みません。私と子どもが幸せになることなら躊躇なくまい進してくれます。
アグネス: 昨日映画を観ながらメモも取ったのに、家庭の事情を聞かれるとは思いませんでした。夫の一番好きなところ、絶対嘘をつかない、できない約束はしない、約束したことには最大限の努力をする。芸能界の人と結婚するのは、勇気のいることです。支えてくれて、私の先生であり、最高のパートナーです。
花田: 私も映画の話のつもりだったのに、台本がこうなっていまして・・・。貴乃花親方は、超真面目で、家でも笑わないと思われているかも知れませんが、家では、ユニークで冗談が好きで、いたずら好きで、そういうギャップがいいですね。意志が強くて諦めません。自分のことよりも、周囲の人を大事にできる器の大きい人。何があってもぶれない。ついていけばいいという安心感があります。(会場へ)こんな話でシラ~としていませんか?(笑)
花田:次の質問です。映画の最後にシャシの素敵なスピーチがあります。結婚式のために夫がサリーをプレゼントしましたが、皆さんにとって、結婚以来、ご主人からの一番嬉しかったサプライズギフトは?
シュリデヴィ:サプライズではないですが、2人の娘ジャーンヴィーとクシーです。
アグネス:実は私も同じで、3人の息子です。特に3人目は、サプライズです(笑)。夫は私の個人事務所の社長で、仕事ができるのは彼のお蔭です。感謝しているのは、人間として私にリスペクトの気持ちを持ってくれること、そして家事の分担もして平等なことです。「リスペクトと平等」は映画のキーワード。男性は愛する女性にぜひ贈ってほしいものです。シャシが新しい自分を見つけたように、みなさんも自分の中の輝いているところを見つけてください。
花田:映画の中で、朝起きたら、「チャイちょうだい」と夫から言われる場面がありましたが、皆さんのお宅では?
アグネス:うちは入れません。男性が台所に入ることを、とてもリスペクトしていますから。
シュリデヴィ:私は朝遅いので、映画と逆に夫がチャイを持ってきてくれます。
花田:親方のコーヒーが美味しいと言ったら、最近は入れてくれるようになりました。リスペクトすることは大事。実は今日、19回目の結婚記念日で、イベント後は子ども抜きで親方と二人きりでデートをする予定です。
アグネス:伝統的なことも大切だけど、新しい女性の生き方も大切。シャシが自分で新しい自分を見つけます。輝いている自分。周りも違って見てくれる。
花田:自分を見つけることは、自分を愛すること。それが力を掘り起こすという映画のメッセージにとても感動しました。多くの女性にこの映画を観て前向きな気持ちになって欲しいです。
シュリデヴィ:観終わった後話したいことがたくさん出てくる映画です。素敵な夜をありがとうございました。映画を楽しんでください。
ロビーに出ると、映画に出てくるお菓子「ラドゥ」がふるまわれました。まさに美味しく素敵な夜になりました。
取材:景山咲子、白石映子
ガウリ・シンデー監督
1974年7月6日生まれ。多数のCMや短編制作を経て本作が初の長編監督作品。
監督のお母様はピクルス作りの名人で商売にもしているのに、英会話が苦手。多言語社会のインドでは英語のできることがステイタス。なぜ英語ができないのと母を見下していた反省の思いが映画に反映されているそうです。
インド映画では、ヒロインが美女というのは定番ですが、女性自体が主役の映画は実は珍しいのです。伝統も大切にしながら、新しいことにも挑戦する自信に溢れた女性像を描いたガウリ・シンデー。初監督にしてインドの情報サイト、レディフ・ドットコムの「2012年版ボリウッドの監督ベスト5」に選出されるという快挙です。
『マダム・イン・ニューヨーク』英題:ENGLISH VINGLISH
監督・脚本:ガウリ・シンデー
出演:シュリデヴィ、アディル・フセイン、アミターブ・バッチャン、メーディ・ネブー、プリヤ・アーナンド
2012年/インド/ヒンディー語・英語/スコープサイズ/134分
後援: 駐日インド大使館
協賛: エアインディア
提供・配給: 彩プロ
© Eros International Ltd.
★2014年6月28日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
公式サイト:http://madame.ayapro.ne.jp/