2013年、20年に一度の「式年遷宮」の年を迎えた伊勢神宮。
遷宮とは、社殿を造り替えて、神様をお引越しさせること。
7月、女優・樹木希林さんが初めてのお伊勢さん参拝の旅に出る。まだ引っ越し前の社殿だ。
それから4ヶ月、東海テレビは希林さんが船参宮(船で伊勢湾を渡ってお伊勢さん参り)を体験したり、お伊勢さんにお供えするアワビを取る鳥羽の海女さんを訪ねたり、神宮林から山に登ったりする姿を追う。
本作はテレビ番組用に撮ったものを、劇場用に編集。希林さんの生き様に寄り添う形で、式年遷宮の4ヶ月を捉えている。
2月25日、第1回目のマスコミ試写の上映後に伏原健之監督、プロデューサーの阿武野勝彦氏と共に樹木希林さんが登壇。希林さんのほんわかした言葉の中に本音が炸裂する楽しいトークが繰り広げられました。
阿武野:東海テレビのドキュメンタリー映画第7弾として、4ヶ月ロケしました。今日は希林さんの健康状態のことから、(内田)裕也さんとお正月を過ごしたことまでお話いただけると思います。
希林:「いきることに つかれたら ねむりにきてください」と、キャッチフレーズにされてしまったけど、映画館の料金はこの近所(渋谷・円山町)のラブホテルの休憩料金よりはちょっと安いので、休みたいときにどうぞというつもりで言ったものなんです・・・
監督:東海テレビの地元三重の伊勢神宮の式年遷宮と希林さんという正体不明のものをひとつのものにしたいと思ったのがきっかけでした。
希林:東海地区でしか観て貰えない、全国区にならないものを400本も撮った。密着がすごいんです。最後、二見浦に朝5時ごろに行って、空のうろこ雲が変化するのをずっと撮りたいと言うんです。編集し直して、今日になりました。テレビでは表現しなかった私と神様や、私と夫との関係の部分を映画にしてくださいました。
― 全身癌の治療を終えられたとのことですが、健康状態は?
希林:治療前も治療後も同じなんですよ。医学はすごい。私自身は、ちっとも頑張ってない。大きく身体に影響する癌は消滅しているみたいです。生活の質は一つも変わらなくてありがたいです。
阿武野:木を切り出した山のほうや、石巻にも行ってくださって・・・
(注:古い社殿を解体した部材が津波で被災した石巻の神社にも配られた。)
希林:ご自分は結婚式があるからって行かないんです。全身癌なんて言って、頑張ってるわけじゃないけど、死ぬ死ぬ詐欺みたいね。石巻に行って、畳の上で死ねるのは上出来と思いました。
― お正月、偶然裕也さんと出会えたそうですね。どんなお話を?
希林:偶然じゃない。1月末には毎年ハワイで会ってます。雨模様だったんだけど、夕陽の見える有名なレストランに予約したら、「今日は見えないんじゃないか」って言うから、「見える!」と。ほんとに見ましたよ。そんな会話。
― 一番印象に残っている会話は?
希林:お前は変わってるなと。
― 本木さんたちは映画をご覧になりましたか?
希林:あの二人に会うのは、茶碗を洗いに行くときだけ。
― 撮影される時に、気をつけられたのは?
希林:何もないのよ。マネージャーもいないし。
― ご自宅で靴下も最後まで使っていましたが、この映画を通じて感じた人間の冥利は?
希林:あと3分位しかないのに、こんな重要なことは答えられない。靴下もティッシュも充分役を果たしたといえるように、人間もこれで充分といえるように。
― 裕也さんはご覧になった?
希林:皆さんが最初! ハワイ以来会ってない。
― 祈りの力をどう感じますか?
希林:癌に罹ってから感じているのは、医学の力は凄いけど、自分の考え方によって血液の巡りなどに人の心の状態が影響します。今、医療と心の問題が融合していないと感じます。祈りは、表と裏。善と悪が一つになっているものと思います。
地方の恵まれないテレビ局の密着。聴こえていないと思っていた声が録られていたりしました。新しいお宮で、お辞儀したとたん、布がふわ~っとあがって、頭をあげたら布が下りました。「撮った?」って聞いたら、カメラマンが、「あ~あがってましたね」と。400本も撮ってれば、そんなこともあって面白いねと。なかなかいい着地をしたと思います。
ほとんど希林さん一人がしゃべりまくった記者会見もあっという間に終って、最後にフォトセッション。
「70歳過ぎると人前に顔を出すような姿してないから、ほどほどに」と、やんわりけん制し、会場の笑いを誘います。赤い靴が可愛くて、まるで少女のような希林さんでした。
『神宮希林 わたしの神様』
監督: 伏原健之
プロデューサー: 阿武野勝彦
旅人:樹木希林
製作・配給:東海テレビ放送 配給協力:東風
特別協賛 赤福
2014年/HD/日本/96分/ドキュメンタリー
公式サイト:http://www.jingukirin.com
★2014年4月 26日(土)よりオーディトリウム渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開