取材・まとめ 美波
ボーイズラブ小説として20年近くも愛されている秋月こお原作の富士見二丁目交響楽団シリーズが実写化され、2012年2月18日 ベルサール六本木ホールにて完成披露試写会イベントが開催された。大阪に次いで東京でのイベント会場のほぼ99パーセントが女性。年齢層も幅広く、それでも若い女性が多かったのはやはり主演の二人の人気だろうか。
主演の守村悠季役には高崎将太、桐ノ院圭を新井祐介と「テニスの王子様」ミュージカルに出ていた若手を配役。さらに同じテニミュー出身の林明寛、馬場良馬(友情出演)とイケメン揃い。さらに国広富之、岩田さゆり、引越し会社のCMでもおなじみの徳井優、宮川一郎太などが脇を固めている。監督はおなじみ『愛の言霊』シリーズや『純情』の金田敬。
この日は3回ある上映中、2回目の上映後にも主演の高崎将太、新井祐介、監督と3人がトークイベントに登場。おなじみ三木プロデューサー司会のもと、楽しいおしゃべりを披露してくれた。何といってもトークが面白い金田監督、ボーイズラブ映画であるとともに音楽映画で撮影が大変だったが、もう一つ大変だったのが最後の高崎君の「チェシャ猫」の鳴き声だとそのシーンを高崎くんと再演してくれ笑いをさそっていた。また脇のベテラン俳優さんたちがアイネ・クライネ・ナハトムジークの練習のシーンで楽器をあやつることを途中で放棄、することないから、なんとかここぞと目立とうとすることばかりやるので目が行ってしょうがなかったとぼやくことしきり。それを指揮台から全部目に入ってしまう新井くんも目のやり場に困ったとか。それでも少ない出演シーンでも役者として目立とうとする先輩たちの姿勢は大いに勉強になったそうだ。
最初の撮影が、その日しか場所が借りられなかったという二人のラブシーン。感想を聞かれた高崎君が、「犯される」という発言をするとダメだしをして「抱かれる」って表現しようと新井君。高崎君は「犯された」ことが悠季にとって分岐点になって行くので、初日であったことで後の撮影がやりやすくなったという。また抱かれる方でなく抱く方でよかったといった新井君だが、その強姦シーンでは、本気で嫌がった高崎君にまじに本気で殴られたという。このシーンを撮るときに、大きな窓からのカメラワークでネオンきらきらでファンタスティックになるのではと思って撮ったという金田監督だったが、実は逆にリアルになりすぎたとのこと。カットするかどうかでプロデューサーと悩んだそうだが、せっかくやってくれたのだから長く使おうかと考え、三木プロデューサーもこういうボーイズラブ映画でごまかすのは良くない、二人がちゃんとやっているところを見せたい、と悩んだそうだが決断して良かったと語った。
フォトセッションでは肩を組んで撮ってとのカメラマンの注文に「どうせ(自分は)カットされるんだろうな」とぼやく監督に最後まで楽しませてもらったイベントだった。
原作が雑誌に連載中から愛読して、文庫も全巻読破している大ファンの私としても満足できる映画にこの作品は仕上がっていると思ました。富士見二丁目という架空の町が目の前にリアルに広がって、生身の悠季や圭がいるというのは、頭の中で思い描くのとまた違った味わいを感じることができたから。主演の二人も最初にスチールだけで見たより、ずっと悠季と圭を感じることができ、脇のベテラン勢のちょっとやり過ぎくらいの芝居がいいアクセントとなっていますね。まあ高崎君のバイオリンは本人が練習時間のない中、初めて触る楽器であることから様になるにはもう少し努力が必要かなと思いましたが、自然体で悠季を演じていたし、新井君は最初がちがちだったのが最後に本当の演奏をしてくれている人たちから拍手をもらえるくらい様になっていたという話からも、圭を演じようという意気込みが感じられて好感をもつ演技でした。ただ、文章で読んでいるとそう違和感のない言葉(たとえば「悠季、my love」)も、生身の俳優からでると、ちょっと吹き出しそうになったのはしょうがないのでしょうか。リアルになりすぎたというラブシーンもちょっと目のやり場にこまりましたが、なんども圭のシャワーシーンが入るのはサービスしすぎ?って思っちゃいました。
シリーズと入っていることからも、これからこの作品は作ってくれるのだろうなと楽しみにしつつ、もう一度この作品の新たな魅力を探しに劇場に足を運ぼうと思っています。
守村悠季(高崎翔太)は富士見二丁目交響楽団(通称フジミ)のコンサートマスター。
楽団はまだ素人レベルだけれど、彼はそのリーダー的存在としての自負を持っている。
そこにある日、芸大出で留学帰りの二枚目指揮者・桐ノ院圭(新井裕介)が就任してくる。初対面の時から人を見下ろすようなデカい態度の圭に敵意を覚える悠季。ところが彼のタクトによって、楽団員たちが見る見るうちにレベルアップして……