2010年2月21日(日) 東京・スペースFS汐留にて
「真!韓国映画祭 in Tokyo」が2月27日からポレポレ東中野で開催されるのを前に、上映作品4本のうちの1本の『今、このままがいい』に主演したシン・ミナさんが来日し、プレミアム上映会が行われました。舞台挨拶、その後の囲み取材、3誌合同インタビューの模様をご報告します。
この日、2回行われたプレミア上映会の内、1回目の上映前に、韓国より到着したばかりのシン・ミナさんを迎えて、トークショーが行われました。 司会はお馴染みの田代親世さん。
シン・ミナさんが登場する前に、まずは、「真!韓国映画祭」の主催者3社のうちの2社、名古屋の「シネマスコーレ」支配人である木全純治氏と、韓国の映画会社キノアイジャパン代表、イ・ウンギョンさんが登壇し、
司会:新しい風、違った切り口の珠玉の作品を一本でも多く観ていただくのが、「真!韓国映画祭」です。まず、映画祭のプロデューサーの方々に映画祭のことをご紹介いただいて、その後にシン・ミナさんにご登壇いただきます。
木全:「真!韓国映画祭」は、今回が一回目です。釜山の映画祭で本日上映する『今、このままがいい』に出会って衝撃を受けました。私は、「あいち国際女性映画祭」のディレクターもしているのですが、是非、「あいち国際女性映画祭」で上映したいと思いました。これだけの映画があるのであれば、もっと同じようなタイプの映画があるのではないかと、キノアイのイ・ウンギョンさんに相談しましたら、大量の作品を送ってくださいました。その中から、あとの3作品を選んで、合計4本で「真!韓国映画祭」の第1回を開催することになりました。
イ・ウンギョン:キノアイの本社は、韓国にあります。韓流スターと言われている人たちの出ていない、こういう映画を日本で上映してもらうには、配給してくださるところが必要です。エンタメ性はあるけれど、商業性はあまりない作品を上映するにはどうすればいいかと悩んでいたところで、木全さんと出会いました。『飛べ、ペンギン』以外は、初監督作品ばかりです。
木全:今回上映する4本を観ていただくと、これまで観てきた韓流映画と違って、韓国の庶民の生活が見られて、日本と似ているところ、違っているところもわかって、ぐ~んと韓国が近くなると思います。ほんとにいい作品を揃えたつもりですので、是非、ポレポレ東中野に足を運んでください。
二人が映画祭への熱い思いを語り、いよいよシン・ミナさんの登壇です。
ベージュのミニワンピースに、靴は同色のリボンを編み上げたハイヒールサンダルというシックでおしゃれな姿で カーテンの裾から登場したときに、会場から「うわあ~っ」と溜息が漏れたのは、きっとその長くて細いすらりとした足に対してだったはず。10センチヒールを差し引いても余裕の八頭身です。
司会: 一言ご挨拶をお願いします。
ミナ: こんにちは、シン・ミナです。よろしくお願いします。(と綺麗な日本語で)
まず、この作品で日本に来ることができたことをとても喜ばしいと思っています。私の中でもとても気に入っている作品のひとつです。韓国ではそれほど多くの観客を動員したわけではありませんが、観た方には必ず胸に深く残る感動を得られる映画です。
司会:出演のきっかけは? 女性監督さんは初めてでしたね?
ミナ:大きな予算のプロジェクトではなく 小さいけれども良い内容の作品を会社と相談しながら捜していたところに、ある女性監督がいいシナリオを持っていると聞いて、この映画に出会い、参加することになりました。この作品だけでなく、その後も女性監督の作品『キッチン~3人のレシピ~』に出演しました。だんだん女性監督や女優の存在感が増してきたと思います。
司会:性格も生き方も違う異父姉妹が父親を探すという物語で、シン・ミナさんはクールで、とても神経質な役を演じられましたが、どのように役にアプローチされたのでしょうか?
ミナ:キャスティングされて、どう演じるかいろいろ悩みましたが、最終的には監督とたくさん話をして、その中から監督が私の良い部分を引き出して演出してくださいました。実は、神経質なところが自分と同じとも周囲から言われて、私って細かいのかなぁ~と思ったりもしました(苦笑)。
司会:監督も女性、共演も仲の良いコン・ヒョジンさんということで、和気藹々の現場だったのではないでしょうか?
ミナ:今まではどちらかというと監督も共演も男性が多い中で撮影することが多くて、現場で話していて共感するというところまではなかなかいかなかったのですが、今回はいい意味、女性同士ことさら話さなくてもわかりあえることも多々あって、それがうまく作品に現れていると思います。
司会:最後に明らかになることを観客の皆さんに期待して欲しいですね。ところで、シン・ミナさんはCMやモデルなどでも活躍して、ファッションアイコンとしても人気ですが、今後どんな道に進みたいですか?
ミナ:最近やっと認められたという思いがあります。俳優として、さらに欲が出てきて、新しい私を観ていただきたいと思います。
司会:日本でこれからしてみたいことはありますか?
ミナ:韓国と似ていると言われますがやはりずいぶん違うところもあります。ショッピング(ここで、思い切りにっこり笑う)も、しやすく楽しいです。あと数年前に行った京都の日本的な雰囲気が素晴らしかったので、また訪ねてみたいです。
司会:これから映画をご覧になる観客の皆さんへメッセージをお願いします。
ミナ:韓国映画というと、予算の大きい商業映画で派手な内容の大作 もしくは、いわゆる「韓流スター」が主演しているような映画ばかりが日本に紹介されていて、残念に思っていました。日本も同じだと思いますが、小さい映画の中にもとても良い作品が韓国にはたくさんあり、今回この作品が紹介されてとても嬉しく思っています。これからもそのような作品にも関心を持っていただけたらと思います。この作品は、女性監督と女性たちで作った映画です。そういう目で観ていただくのもいいかと思います。
今日はお越しくださって本当にありがとうございます。
舞台挨拶の後、『今、このままがいい』の上映が始まり、ロビーで、フォトセッションと囲み取材が行われました。衣裳を着替えているとのことで、しばし待たされます。モデルとしても活躍しているシン・ミナさん。衣裳はご自分でこだわって選ばれることが多いのだとか。舞台挨拶ではベージュの衣裳でしたが、担当者の方から、「次は赤のジャケットに黒いスカートです」との情報が入ります。待ち構えるカメラマンの前に登場したシン・ミナさん。今度もキュート! とにかく足が長いです。まさしく八頭身! 2組に分けてフォトセッションが行われた後、囲み取材になりました。
―シン・ミナさんにとって家族とは何ですか?
ミナ: 周りの人たちに、よく、家族思いで家族しか知らないのではと言われるのですが、家族とは、一言で言えば“友達”です。私には姉がいるのですが、姉とも友達のように仲のいい関係で、良き存在です。
―次の作品はまだ考え中とのことですが、最近流行の時代劇はいかがですか?
ミナ: 韓国でも時代劇は人気があって、たくさん製作されていますし、多くの人から愛されていますので、一度は挑戦してみたいと思っています。でも、まだそのタイミングではない気がします。いい作品があれば、私としては現代物でも時代劇でも、どんどん出演したいと思っています。
― 今回出演されたのは女性監督の作品ですが、女性監督が決定的に男性監督と違う点は何でしょうか?
ミナ: 指示の仕方が違うと思います。もちろん男性監督の中にも、女性らしく優しい演出をされる方もいらっしゃいます。今回、撮影中に監督のことを、思わず「オンニ(お姉さん)」と呼んでしまうほどでした。私的な会話から演出に必要なものを探されているようで、「あれ~? これは映画とは関係ない話なんだけどな~」と思うようなところから、私の良いところを探ってくださっているようでした。
― 共演者のコン・ヒョジンさんとは親しい間柄とのことですが、共演してみて大変だったことや、助けられたようなことなどお聞かせください。
ミナ: まずはエピソードからお話します。何でもないシーンなのですが、車の中でヒョジンさんがバナナを「食べて~」と勧めてくれるシーンが何故だかとても笑えました。ヒョジンさんと絡むシーンで、笑いを取らなければいけないところなどは、彼女と二人で自然に演じられたと思います。良かったのは、「今、彼女はこう思っている」とか、「彼女がこう出たら、私はこう出よう」といったことが、お互いに分かり合えるということでした。キャラクター上、二人の間には葛藤もあって、憎みあっている面もあったので、撮影期間中よりも撮影後のほうが、より彼女と親交が深くなりました。
舞台挨拶の後も、午後中ずっとたくさんの撮影と取材でかなり疲れていたはずだが、ひとつひとつの質問への返答をきちんと丁寧にお話してくださいました。衣裳は、2回目の上映後のQ&Aを前に、また着替えられていて、ベージュとブラウンのふわりとしたブラウスとミニスカートに黒いタイツと黒いブーツ。ほんとに、何を着てもキュート。
まずは、シネジャとの質疑応答をご紹介。
― 昨年の東京国際女性映画祭でプ・ジヨン監督にお会いし、いろいろお伺いしていました。その中で、シン・ミナさんとコン・ヒョジンさんのお二人が、この作品に出演を検討していらっしゃった当時、韓国ではまだ男性中心の作品が多くて、お二人ともこれからチャレンジする次の演技イメージについていろいろ悩んでいらっしゃったとお聞きしました。具体的にはどういう悩みだったのかお聞かせいただけますか?
ミナ: 当時も今もあまり状況は変わっていないのですが、予算の大きい商業映画や派手な内容の大作が多く、男性の主人公をかっこよく見せるための添え物として若い女優が使われる場合が多いです。私やコン・ヒョジンさんくらいの年齢の女優が出演できる作品は限定されていて、演技の幅を広げられるような良質の作品がなかなか見つからなかったのが悩みでした。
― コン・ヒョジンさんを姉役に推薦されたそうですが、彼女のどんなところが好きですか? ご自身と違うところは?
ミナ: コン・ヒョジンさんに、こんな作品があると話したら興味を持ってくれたので、監督にもヒョジンさんのことを話しました。もう少し歳の上の人を探していたのですが、監督も彼女がぴったりかもと、少し若い設定にして、ヤンママという面白いキャラクターを作ってくれました。コン・ヒョジンさんは意外と女性らしいところがあります。花や編み物が好きで、結婚したら、うまくやっていくタイプでしょう。一見私のほうが女らしく見えますが、実は男っぽくて面倒くさがり屋かもしれません。
― 女性として素敵であるために大事なことは何だと思いますか?
ミナ:(困ったわ、と笑って)女性というのはいろんな経験をしていろんなことを感じてこそ魅力が出てくると思います。30代後半から40代になればそうなると思いますが、私はまだ20代ですから、10年くらい時間がありますので、その間にいろんなことを経験していきたいと思います。
― 今回、いわゆる「韓流スター」と呼ばれる男優と一緒ではなく、主演女優としてお一人で作品を背負って来日されたのを誇りに思います。これから女性監督や女優も映画界をリードできるように変えてくことができると思われますか?
ミナ: そうなると良いと思います。女優が力を発揮できる役は限られていたり年齢でも制限されたりすることも意外と多いです。これからどんどん女性監督や映画の中心になる女優が増えて、そういう人たちが年を取って先輩になることによって、女性映画人全体のパワーアップにつながると良いと思います。
*他の2誌の記者の方との質疑応答もご紹介します。
― 今後もこのような作品に出演していきたいですか? 商業映画、アート系、インディペンデント、どのような作品に重点をおきたいですか?
ミナ:あまり区別せずに、バランスよくどのようなタイプの作品にも出演したいと思っています。
― ご自身からぜひ出たいと言われたそうですが、どこに惹かれたのですか?
ミナ:女性たちの話で、女性監督が撮るというところに惹かれました。一人の女性の感情を中心に動いていくのが、下手をすると飽きてくると思うのですが、あることによって反転します。アート系ということでもなく、バランスが取れていると思いました。
― この作品に出たことが、今後、どのように役に立つと思いますか?
ミナ:映画を撮りながら、少し変化がありました。一つのシーンを撮るたびに、いろんなことを考えました。これまでは、撮り終えると忘れてしまうことが多かったのですが・・・
― 監督の長編デビュー作でしたが、以前の作品をご覧になりましたか? また、どんな演出をされるのですか?
ミナ:一切観ていません。演出は、威圧的な方もいるのですが、監督は、もし上手く撮れない場合は、さっと腕を組んで現場を離れて、あれこれ言いません。プレッシャーはなかったです。プレッシャーをかけると良い演技は出ないと思っていたようです。テイクは何度も撮らないで、「あなたがいいと思ったら、それでいい」というタイプでした。
昨年の映画祭などでとても印象深かったので 今回は観客としても入場して映画を観た。シン・ミナさんの 作品は日本でもお馴染みのドラマや映画をいくつか観ていたが、一番心に残る作品となった。飾りや誇張がないリアリティーのある感情表現中心の演技がすばらしかった。
男性の観客が目立っていた。その中でも6~7歳の男の子の、「映画の中で車が事故で壊れちゃったんですが、自分も車を持っていますか?ドライブとかするんですか?」と質問に、「はい。車を持っています。ドライブもたくさんします。でも事故を起こした事はしたことはありませんよ。」と答え、会場もほのぼのムードに。また、「ラストでの『これから私の長い旅が始まる』という台詞をどんな気持ちで演じたのか」という質問には、「子供のころ聞いたおとぎ話にもよく出てきましたが、私はハッピーエンドを簡単に信じることができません。紆余曲折の後の結末は、実はそれからもさまざまな問題や苦労はあるはずです。そういう意味もこめて、この先も起こるであろう出来事に新たな気持ちで向かい合って生きていく覚悟を<長い旅>という台詞に込めました。」という答え。私のハッピーエンドに対して常々そのように思っていたので、大きく頷きながら聞いた。
日本では3月から「美しき日々」のテレビ再放映が始まった。当時はまだかわいらしく幼いイメージだったシン・ミナさんも、今回の映画では成熟したクールな女性に変身している。役どころだけでなく、ご本人も、女優という職業に真摯に向き合うひとりの大人の女性として広い視野でしっかりした意見をお持ちだ。今後も広いジャンルでの活躍が楽しみだ。(祥)
前回、シン・ミナさんにお会いしたのは、『Sad Movie<サッド・ムービー>』公開の折に来日された2006年11月(>> http://www.cinemajournal.net/special/2006/sadmovie/)。満開の愛くるしい笑顔が印象的でした。『今、このままがいい』では、キュートな笑顔を封印して凛とした女性を演じられ、これまでと違ったシン・ミナさんを見せてくれました。今回私たちの前に現れた彼女は、満面の笑みをたたえながらも、すっかり大人の雰囲気。「女性として素敵であるために大事なことは?」という質問に、「まだまだ自分は若くて経験不足」と答えられましたが、なかなかどうして、素敵な成熟した女性でした。 (咲)