このページはJavaScriptが使われています。
女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

ソウル郊外 映画撮影現場訪問
ソン・ビョンホ&キム・スンウ インタビュー(1)

来年公開予定作品の撮影現場の見学と、主演俳優の方達のインタビューのためソウルへ行ってきました。

台風接近で、高速道路で車が徐行するほどの豪雨の中を1時間ほど車を走らせて着いたところは、ソウル郊外の町の病院でした。撮影やインタビューのスケジュールが何度も変わりましたがこれもまた韓国らしいと驚かない私はかなり韓国通です(笑)

現在撮影中の作品『奴の逆襲』は、チョン・マンベ(田萬培)監督とイ・セヨン(李世永)監督共同制作のサスペンスドラマです。チョン・マンベ監督は、チェ・ジウとアン・ソンギの『ピアノを弾く大統領』が日本では知られており、イ・セヨン監督は 『A BOLD FAMILY』(2005)、『大韓民国1%』(2010) の助監督で、この『奴の逆襲』が監督デビューです。 新世代の感覚と鋭い感性を兼ね備えているこれからが期待される監督です。


左  (撮影の舞台となった病院 ― クレーン照明で室内を照らしていました。)     
右  (左に立っているのが、 主演のソン・ビョンホさん。本番さながらのリハーサルです)


左  (熱心にモニターチェックする監督さんと俳優さん達)       
右  (スタッフの方がくださった、撮影シーンの絵コンテ ― 細かいです)

狭い病室とモニタールームにスタッフが50~60人もひしめいて働いているのには驚きました。 韓国ではこのくらいの人数が普通だそうです。 ひとつの仕事に5~6人単位で細かい作業が割り振られています。 お互い声をかけあいながら、短く切ったシーンを 何度も撮っては確認し、また撮っては確認していきます。 なんといっても1メートルくらいの至近距離で大勢のスタッフが立っていて、目の前にカメラがまわっている状態で、監督の「アクション!」の一声で、一瞬のうちに感情を入れて演技をする俳優さん達の集中力には感服しました。

緊迫した中でも、日本からたずねてきた私をスタッフの皆さんが暖かく迎えてくださり、見やすい場所を用意してくださり、絵コンテをくださり、説明もしてくださるという、厳しい中にも、アットホームでチームワークの良さが感じられる撮影現場の空気がとても心地良かったです。

主演のソン・ビョンホさんとキム・スンウさんにも、それぞれインタビューする機会をいただきました。 おふたりとも十分な時間を割いてくださり、作品について、ご自身について、丁寧に語ってくださいました。 インタビューの詳細は、本Webサイト(9月?)と「シネマジャーナル本誌80号」(11月発行)に掲載いたしますので、楽しみにしていてください。


<ソン・ビョンホさん インタビュー>



(『奴の逆襲』Making - Cicada I Remember Co. 提供)



(インタビュースナップ―Cinema Journal 撮影)

最近日本で公開された作品では、キム・ジウン監督の『グッド・バッド・ウィアード』(2009) のアヘン商人役で、エキセントリックな演技で強烈な印象を残し、イム・スルレ監督の 『飛べ ペンギン』(2009)では、海外留学した妻子に送金してソウルに置いてきぼりの課長さんをコミカルに演じ、最近韓国で公開されヒットした(故)ジョ・ミョンナム監督の『大韓民国1%』(2010) では部下を守る正義感と包容力にあふれる上官役を演じています。 幅広い役をこなす演技派の役者さんです。

かなりシリアスな場面の撮影にもかかわらず、貴重なランチタイムを削って時間を作ってくださり、撮影中の映画、公開された映画の内容、過去の出演作、そしてご自身のことについて、ひとつひとつ深い内容を熱く語ってくださいました。 映画は「それぞれ違う方法で家族を愛するふたりの父親の物語である。 ひとりは手段を選ばない。ひとりは心で思いやる」、という説明に始まり、韓国の「恨」という概念についての質問にも、日本人の私がわかるように語ってくださり、本当に勉強になりました。 また、ご自身もふたりの小さいお嬢様のお父様でいらして、安らぎとか安定とかたくさんもらうものがあり、役をより深く理解し、真の感情を役にこめることができるとおっしゃっていました。

2008年の『グッド・バッド・ウィアード』(韓国題 『良い奴・悪い奴・変な奴』)で、キム・ジウン監督との作業については、 自分のほうが先輩なので、あまり細かい指示はされなかったと。 あの演技と表情はご自身で考えられたそうだ。 細かく見える キム・ジウン監督の以外な一面です。 ソン・ビョンホさんは、信頼を置くに値する俳優さんなのでしょう。

ご一緒した撮影現場近くの食堂でも 刺身混ぜご飯をかき込みながら、手振り身振りでニコニコおしゃべりした直後に、一転シリアスな表情で演技に入っていた姿に・・・惚れました。 「演技者」「役者」 という雰囲気のオーラにつつまれた方です。 先ごろ残念ながら故人となってしまった劇作家の、つかこうへい さんと一緒に、舞台演劇をやっていた時期もおありで、つか先生のことなら何時間でも何日でも語れるとおっしゃっていました。 つかこうへいさんは韓国の演劇界にも大きな影響を残されています。 今度は取材ではなく、ファンとしておいしい食事でもご一緒しながら、おしゃべりの続きをしたいです。


<キム・スンウさん インタビュー>



(『奴の逆襲』Making - Cicada I Remember Co. 提供)



(インタビュースナップ ― Cinema Journal 撮影)

忙しいスケジュールを調整して、ソウル江南アックジョン近くのおしゃれな事務所でインタビューに応じてくださいました。 やはりスターのオーラに包まれているので、筆者はかなり緊張してしまいました。 「大丈夫、緊張しないで。」と日本語で声をかけてくださり、反対にドラマや映画の撮影現場見学の感想を聞いてくださるなど、優しい心遣いに感謝です。

昨年韓国で大ヒットし、現在日本でも放映中の『IRIS』や『ホテリアー』などのドラマや、『素敵な夜を僕にください』などの映画でおなじみの人気スターでいらっしゃいます。 韓国ではトーク番組の司会もこなし、マルチな活躍をされています。 6月に埼玉アリーナで行われた「IRISドラマチックコンサート」で、ステージの上での生トークや、生演技を拝見しました。キャストも観客も本当に楽しめたイベントでした。 『IRIS』の後すぐに、映画 『砲火の中に』に出演、そして、今また新しい映画の撮影中で波に乗っていらっしゃいます。

撮影中の映画『奴の逆襲』では、今までのような善良で正義感あふれる役どころではなく、 手段を選ばないどちらかというと悪役と呼ぶべき役にキャスティングされています。 こういう役どころは初めてで、新しい姿に挑戦しているのがとても嬉しいとおっしゃっていました。 スチールを拝見いたしましたが、凛々しかったアイリスの北朝鮮警護隊幹部を更に超えるほど、めちゃめちゃカッコいいです。 美しい奥様、女優のキム・ナムジュさんと二人のお子様との生活についても、「お互い俳優という同じ職業なので、日々の出来事にも冷静でいられる。」と率直にお答えくださり、やはり、ふたりのお子様の父親であることは、役に没入しやすいと話してくださいました。



<キム・セロンちゃん>

実は、この映画にはもう一人の大物女優が参加しています。 

(『奴の逆襲』Making - Cicada I Remember Co. 提供)

キム・スンウさん演じる 刑事ジョンシクの娘役の キム・セロンちゃん(10歳)です。 カンヌ映画祭、東京国際映画祭など数々の国際映画祭に招待されたウニー・ルコント監督作品、『冬の小鳥』 (10月9日から岩波ホールでロードショー)で フランスへ養子に行った孤児の役を見事に演じています。 今韓国で公開中の 『アジョシ(おじさん)』でもウォンビンと互角の存在感を示しています。



2人のお父さん俳優と、実力派の子役でおりなす物語、来年の映画の公開がとても待ちどおしいです。

(祥)

return to top

本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。