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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『モンガに散る』東京国際映画祭舞台挨拶レポート

撮影:樋口直子
左からマーク・チャオ、イーサン・ルアン、ニウ・チェンザー監督

『モンガに散る』公開に合わせて、10月の東京国際映画祭上映時の舞台挨拶レポートをシネマジャーナル80号より転載し、合わせて映画感想も掲載します。


『モンガに散る』オフィシャル写真
左からリー・リエプロデューサー、マーク・チャオ、イーサン・ルアン、ニウ・チェンザー監督

東京国際映画祭「アジアの風」台湾電影ルネッサンス2010~美麗新世代のオープニング作品として、『モンガに散る』が上映されました。
台湾で本年度最高動員記録を樹立した作品を観たい!、あわせて、今、台湾で旬な俳優である、阮經天(イーサン・ルアン)、趙又廷(マーク・チャオ)が登壇することもあって、前売りチケットは即完売。当日券の販売を求めて、朝4時から並んだファンもいたほどの盛り上がりでした。

上映前に早速、監督の鈕承澤(ニウ・チェンザー)、プロデューサーの李烈(リー・リエ)、イーサン、マークが登場しました。


ニウ・チェンザー監督:(日本語で)ミナサン。コンニチハ。ワタシハニウ・チェンザーデス。コンヤアイテル?(一同大爆笑)たくさんの皆さんが来てくださって本当にありがとうございます。映画を観てから、たくさんお話をしましょう。


鈕承澤(ニウ・チェンザー)監督

イーサン・ルアン:(日本語で)ボクハイーサンデス。ヨロシクオネガイシマス。この映画では、僕達の男の友情が熱く描かれていますので、きっとそこが感動していただけるところだと思います。

マーク・チャオ:コンニチハマークデス。ヨロシクオネガイシマス(日本語で)。

リー・リエ:私はプロデューサーの、リー・リエです。こんなにたくさんの人が私達の映画を観に来て下さって感謝しています。ありがとうございます。きっと日本の皆さんも、この映画をご覧になれば、何故台湾でヒットしたのかがお分かりいただけると思います。

と、それぞれ挨拶をしました。

『モンガに散る』上映後、Q&Aが行われました。

Q:(リープロデューサーに)ヒットする映画を見抜くポイントは?『モンガに散る』の成功の要因は?

リー:私の作品を選ぶ基準となるのはシナリオです。そのシナリオに感動するかが大切ですが、なかなか出会えるものではありません。『モンガに散る』の魅力は、誰もが経験した事のある事柄が描かれているからだと思います。それから、素晴しい俳優達が情感溢れる演技をした事。そして監督が心血注いで、経験と、今の心を捧げて創ったからだと思います。映画のヒットは簡単な事だと思っています。それは観客が映画に共鳴するかどうか、共鳴すれば、そこから感動が生まれるのだと思います。

Q:(イーサンに)最後のシーンで、モンク(役名)が無表情から微笑に変わる間の気持ちの変化をどのような思いで演じたのか?

イーサン:監督の指導を受けて演じました。彼のしてきた事は、すべて兄弟分との友情の為にした事で、最後に誤解が生じて、あの様な結果になってしまったけれど、自分の仲間を守った、もう思い残す事はないという気持ち、解脱の心境で演じました。

Q:(ニウ監督に)昨日のグリーンカーペットに参加できなかった事に対するコメントは?

ニウ監督:そんなに気にしていません。こういう事は今までにもありました。大局的な合意がなされていないと、小さなトラブルも起こるものです。

Q:劇中の五人組は、撮影中も凄く仲が良かったと聞きましたが?

マーク:もしこの映画が良かったと言っていただけるのであれば、それは、本当の心情が表れていたからだと思います。(ここでニウ監督が思わずゲップ・場内大爆笑)五人の俳優が役を離れても、本当の兄弟の様だったので、真の友情の気持ちが自然に映画にも表れて、役を演じるというよりも、あの映画の中で役を生きていた様に思います。

Q:イーサンとマークはお互いをどんな人だと思う?


   マーク(左)とイーサン(右)            マークとイーサン        

マーク:以前、別々に、取材でお互いを動物に例えると何ですか?と質問を受けた事があるのですが、僕はイーサンを犬だと。忠実な。何故なら、彼は、本当に皆を楽しくさせてリラックスさせてくれるから。でも犬には悪い癖もありますけどね(笑)

イーサン:僕はマークは鷹に似ていると。鷹は目標を定めるとそれにまっしぐら、というところがマークに似ていると思います。その為にも非常に努力するところも。そして鷹は自由を愛し、カッコいい。でも、鷹にも悪いところはありますけどね(笑)


最後はチームワークの良さが伺えるような、楽しく、和やかな雰囲気で終了となりました。

大澤ゆみ

映画ストーリーなどは下記アドレスを参照ください
http://www.cinemajournal.net/review/index.html#monga

★12月18(土)よりシネマスクエアとうきゅう他ほか全国順次公開
公式 HP >> http://www.monga-chiru.com/


台湾電影ルネッサンス2010~美麗新世代

  ―オープニングセレモニー―

『モンガに散る』4人                台湾美麗新世代

「アジアの風」部門では5年ぶりに台湾映画の特集が組まれ、新作6作品(『モンガに散る』『4枚目の似顔絵』『ジュリエット』『台北カフェ・ストーリー』『ズーム・ハンティング』『風に吹かれて~キャメラマン李屏賓(リー・ピンビン)の肖像』)が、日本初公開されました。

オープニング作品『モンガに散る』が上映され、Q&Aの後にセレモニーが行われました。登壇したのは新聞局電影処・陳志寛処長、台北市文化局・謝小韞局長、『モンガに散る』から鈕承澤(ニウ・チェンザー)監督、李烈(リー・リエ)プロデューサー、主演俳優の阮經天(イーサン・ルアン)、趙又廷(マーク・チャオ)、『ジュリエット』から李崗(リー・ガン) プロデューサー、主演女優の徐若瑄(ビビアン・スー)、『ズーム・ハンティング』から主演女優の張鈞甯(チャン・チュンニン)。

最初に新聞局電影処の陳処長から「私を見に来たのではない事は分かっています。彼らを見に来たのですよね。だから一分以上喋りません!」と言うと、ニウ監督とビビアンは時計を計るしぐさをして場内は大爆笑。「東京国際映画祭では台湾の素晴らしい作品、そして今人気の俳優たちを呼んで頂いた事に感謝します。台湾、日本、そして全世界の映画を愛する皆さんの交流が上手くいきますように、この映画祭の成功をお祈りします」とセレモニー開会の挨拶。

『モンガに散る』のマークは「映画の中の蚊子のように、また日本に桜を見に来られたら嬉しいです」と話し、それを受けてニウ監督は「君が来なくても僕が来て桜の絵ハガキを送るから」と、映画の設定どおりのコメントで笑いをとっていました。イーサンは「ニウ監督の後は何を話したらいいのか分からない…」と少し困った様子でした。


    マーク・チャオ             イーサン・ルアン

 『ジュリエット』のリー・ガンプロデューサーの挨拶では、中国と台湾の間で起こった問題により、無念にも歩くことが出来なかったグリーンカーペットについて触れました。

「昨日は大変残念でした。ビビアンも一生懸命綺麗にお化粧して待っていたのですが、婚礼に参加出来なかったみたいでとても残念です。映画はみんなが長い時間かけて作る作品。そして、映画祭はそのパーティーです。それが映画と関係無い事で台無しになるのは大変残念。百年間の歴史もあり、確かに政治の問題は映画の問題より非常に大きい。しかし、政治の問題を解決するのは映画人の仕事ではありません。映画に関しては中国も台湾もとっくに一つになっています。同じ言葉を喋り、一緒に力を合わせて作品を撮っています。私たちにとって一番大事なのは、映画という一つの国だという事。同じ言葉で同じ作品を作る事で、地球に貢献出来るのが私たち映画中国の存在の意義だと思います」と語ると客席から大きな拍手が送られました。

 そのお話の途中、ビビアンは涙をこらえ切れず、後ろを向いてイーサンが渡したハンカチで涙を拭っていました。その姿をニウ監督、すかさずカメラで撮影!

そして、ビビアンの挨拶では「昨日は残念な事があって、ニウ監督とイーサンとチュンニンと4人で朝までお酒を飲んでいました。それでも解決出来ないですね。私たちがいくら頑張ってもどうにもならないです。昨日、ニウ監督は何回も鏡を見てネクタイを直している素顔が可愛くて、携帯でいっぱい写真を撮ったので明日から余裕があったらブログに上げてもいいですか?」と言うと、また大きな拍手。カーペットのためにお洒落していた台湾チームの裏話を笑顔で話しながら、悔しい気持ちを発散させているようでした。

最後に「私は『ジュリエット』では脳性麻痺の役です。大きい挑戦でした。頑張りましたので、好きになってくれるといいな。台湾の映画を応援してください!」と、ビビアンは全て日本語で力強く語り、笑顔で締めくくりました。

樋口 直子

『モンガに散る』の感想、『モンガに散る』への想い

今年二月、私は久しぶりに一本の映画を観るために台北に飛んだ。
その映画が『モンガに散る』だった。
出演者を生で見た後、興奮のまま臨んだ上映だったが、長さを感じさせない勢いのある内容にすっかり呑まれてしまった。
中文字幕のハンデもあったが、言葉がわからなくても、男五人の友情に笑い、そして涙し、いつか日本語字幕で観たいという想いを強くしていた。
その映画が、東京国際映画祭で上映された。
念願の日本語字幕で観て、漠然と五人の厚い友情と感じていたことも、スポットを当てるところを変えて観ることによって、友情だけとは言えない想いを感じたり、以前観た時には理解する事が出来なかった細かい感情の機微を感じることが出来たように思う。
そして改めて感じたのは、ドラマを見ている時から思っていたことだが、ニウ・チェンザー監督の音楽の使い方が、とても私好みだという事。リズム感のある、という表現が合っているかはわからないが、街中での大乱闘には、再度圧倒された。
素晴しい監督、キャストを知る事が出来、そして、観る回数を重ねる事によって、また新たな発見が出来るかも・・・と期待の出来る映画『モンガに散る』に出会えたことがとても嬉しい。

(澤)



『モンガに散る』場面写真
(c)2010 Green Days Film Co. Ltd. Honto Production All Rights Reserved.

昨年、台湾で『モンガに散る』が公開されていた時にちょうど台湾に行く機会があったのだが、その時は時間がなくて観ることが出来ず、その後、台湾版DVDを購入して観賞した。そして、10月の東京国際映画祭で初めて日本語字幕と大きいスクリーンで観ることになった。中国語字幕でわからなかった場面もやっと解決されて、家のテレビ画面では感じられなかった音と映像に圧倒され引き込まれてしまった。

前半、仲間5人が知り合う学生生活の背景には青空が効果的に使われ、黒社会に入ってからは、夜の黒色に鮮やかなネオン。その色の対比が印象的だった。色を鮮やかに使って、映像がきれいな映画だなと思った。乱闘のシーンも音楽に乗せることで、テンポよく流れるように描かれている。黒社会が舞台なので痛々しいシーンも勿論多々あるのだが、テーマとしては全体的にさわやかな青春映画だと思う。さわやかと感じてしまうくらい、若手イケメン俳優陣のイーサン・ルアン、マーク・チャオ、リディアン・ヴォーンの役柄それぞれの個性を明確にした演技が光っていた。11月の台湾金馬奨でイーサン・ルアンが最佳男主角奨に見事輝いたが、本当に相応しい熱演だったと思う。

結末はタイトルのとおり、涙なくしては観られないのだが、感動的でもあり、見終わった時に気持ちはすっきりとしていて、とても見応えのある素敵な映画だと思った。撮影時から期待していた作品だけに、いよいよ日本でも公開されることが本当に嬉しい。

(直)


 鈕承澤(ニウ・チェンザー)監督の初監督作『ビバ!監督人生!!』を観て、新作の『モンガに散る(艋舺)』を、ぜひ観たいと思っていた。

 この作品の完成披露試写会の案内を送ってもらったにも関わらず行くことができず、東京国際映画祭の時は、朝早く起きてタクシーでチケットぴあに行って5時頃には並んだにも関わらず、『モンガに散る』のチケットは取れず、その後の試写にも結局行くことができなかった私。

 鈕承澤監督はトレンディ・ドラマの演出家として「部屋においでよ」「求婚事務所」「トーストボーイ’sキス」など、次々とヒット作を生み出し、「花ざかりの君たちへ〜花様少年少女〜」では総監督を務めたとのことだけど、ドラマは全然見ていないので、私にとっては侯孝賢監督の『風櫃の少年』の、「あの少年」が、監督として有名になり映画に帰ってきたという思いである。今の時点で、結局まだ観ていないのだが、一般公開が始まったので、一般公開こそは観たいと思っている。

なお、この作品についてはシネマジャーナル80号での紹介のほか、78号の香港国際映画祭レポートの中でも紹介しているので、こちらもぜひ読んでみてください。

編集担当(暁)

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