3月18日、日本での開催18年目となるフランス映画祭が幕を開けました。
六本木ヒルズで行われた記者会見とオープニングイベントの模様をご報告します。
フランス映画祭の会期中「フレンチシネマカフェ」と名前を変えた六本木ヒルズのヒルズカフェで、ユニフランス新代表・レジーヌ・ハッチョンドさんと、フランス映画祭2010代表団団長・ジェーン・バーキンさんを迎えて、記者会見が開かれました。
今年2月に、ユニフランス新代表に選出されたハッチョンドさんは、シャイヨー劇場、イメージ・フォーラム、カンヌ映画祭監督週間の秘書などを経て、2002年よりパリ市役所の映画部門で活躍され、昨年5月からはパリ市の文化相談員として映画業界に携わっていらっしゃいます。4人のお子様の母でもあります。
*スピーチ*
日本で毎年フランス映画祭が開催できて嬉しい。フランス映画と日本映画とは強い関係があります。今、フランスでは若い配給者が溝口監督や小津監督のDVDを集めていて、日本の映画はよく観られています。ジャック・ペラン監督の『オーシャンズ』が最高の入場者数を得たと聞きました。フランス映画がまた日本で注目されるようになり嬉しく思います。フランスと日本、お互いの映画を観ている状況の中で映画祭が開催されるのは嬉しいことです。今年、長編14本と短編集を上映しますが、公開の決まった作品のほか、公開未決定の作品も紹介します。「フレンチ・ラブ」というテーマのもとに、作品を揃えました。今、傾向としてフランスならではの愛や恋を扱うことが戻ってきています。それを映画祭でも取り入れています。今、フランス映画は非常にクリエイティブです。多くの方に観に来ていただければと思います。
多数の関係者に謝辞を述べた後、団長のジェーン・バーキンさんを呼び込みました。
女優、歌手として活躍し、人権活動にも熱心なジェーン・バーキンさん。今回映画祭で上映される『テルマ、ルイーズとシャンタル』で、恋する50代を実に愉快に、そして豪快に演じています。
*スピーチ*
ハッチョンドさんが荷物の中に入れて日本に連れてきてくださいました。団長に選んでくださって嬉しい。昨年9月にも「冬の子供たち」のコンサートのために日本に来たのですが、今回は桜の季節と伺っていました。「もう咲いた?」と聞いたら、10日先と。日本には、10~15回位来ていますが、また桜を見に戻ってこないといけないですね。でも、今日は皆さんが桜の花。お会いできて嬉しいです。
― イギリス出身のバーキンさんがフランスで活躍されていますが、フランス語で難しいと感じたこと、また、何が一番難しいかを、フランス語を学ぶ人にメッセージを!
バーキン:フランス語はとても難しいです。40年経っても間違えることがあります。実はフランス語をちゃんと勉強していないんです。フランス語はセルジュの腕の中で学びましたので、スラングから始まったのです。マリボーの劇に出演することになって、訛りのないフランス語を話したいと勉強しました。最初の場面で、rを25個も言わなくちゃいけなくて、イギリスの女の子には絶対発音できない。 Tres Tres Tres(トレ トレ トレ)と、40年経ってやっと上手く出来るようになりました。皆さんには怖がらずに話していただきたいですね。アクセント(外国なまり)のあるフランス語は、フランス人にとって、とても素敵でチャーミングに聴こえるそうですよ。例えば、pardonは、イギリスでもフランスでも同じ意味なのですが、フランス風に発音すると努力していると喜んでくれました。ある国に恋をしたら、その国の人たちは認めてくれるのですよ。ロミー・シュナイダー、クローディア・カルディナーレ、クリスティン・スコット・トーマスなどフランスで活躍していますが、イギリスではちゃんと英語の話せる人をと考えるので、逆のことがいえないんです。フランス人は外国人にとってもオープン。皆さんがちょっと努力すれば、間違いを言っても全然怖くない。フランス人から愛してもらえると思います。
― バーキンさんにとって日本はどう映りますか?
バーキン:私は遅くなってから溝口(健二監督)に恋をしました。溝口の作品を買って、全部観ました。特に、1945~47年ごろの作品が好きです。とても驚いたのは、女性を擁護するような作品だったこと。女性がヒロインで、政治的な視点もあります。今回出演している『テルマ、ルイーズとシャンタル』のようにダイレクトに愛を描いたものではないけれど、40,50,60歳になっても、人生終りじゃない、人生まだまだこれからという作品です。東京の(石原)知事は、子供を産めなくなった女性は、もう女性じゃないと言ったそうですね。それは本当じゃないです。
― 先週フランスで映画を観てきました。最近の日本映画をフランスの人たちはどう思っていますか?
バーキン:40年前イギリスからフランスに渡った時には、一本も日本映画が観られませんでした。いろんな国の映画が観られたのに・・・。 30年前、いろんな日本映画がフランスで上映されました。フランスは他国の映画に関心の強い国です。だからこそフランスに住むのが嬉しい。
ハッチョンド:日本映画は、北野武監督など名の通ったものは評判がいいのですが、若手監督のものは、日本に限らないけれど、まだ難しいです。
質疑応答が終って、机が取り除かれ、フォトセッションに。ジェーン・バーキンが足元に置いた鞄を係の人が取り除けようとして、記者席から「それは取らないで!」と声がかかります。なんといっても、鞄はエルメスの「バーキン」。彼女の為に作られた、なんでも入りそうな大きな間口のバッグです。
ハッチョンドさんのエレガントながら堂々とした姿と、バーキンさんの思い切りの笑顔が印象的なフォトセッションでした。
大屋根プラザに準備されたレッドカーペットの周りには、少し小雨の降り始めたのも気にせず、大勢のファンが待ち構えていました。
ユニフランス代表 レジーヌ・ハッチョンドさんを先頭に、レッドカーペットに登壇する監督や俳優たちですが、ファンがサインを求めるのに応じて、なかなかフォトセッションパネルまで到達しません。やっとパネルのところに辿りついたと思ったら、あまり長くは立ち止まらず、その先にいるファンのところに移動・・・ ファンにとっては、ほんとに嬉しい映画祭の一幕でした。
レッドカーペットの熱気も覚めやらぬ中、TOHOシネマズ 六本木ヒルズスクリーン7に来日代表団16名が登壇する舞台挨拶が行われました。
ユニフランス代表・レジーヌ・ハッチョンドさん挨拶:
日本での映画祭はユニフランスの活動の中でも重要。日本の観客の皆さんを大切に思っています。配給の皆様も調子が回復したように思います。今年も素晴らしい作品を選んでいます。監督や俳優も多数来日しました。映画を通して夢を見せてくれる彼らにユニフランスからも感謝申しあげます。それでは、団長を迎えたいと思います。とてもフランス的なイギリス人、ジェーン・バーキンです!
ジェーン・バーキン団長:
皆様に感謝します。日本の皆さん、暖かく迎えてくださってありがとうございます。皆さんは世界一素晴らしい観客。日本で人気があるお陰で団長として来られました。
次に、レジーヌ・ハッチョンドさんと、ジェーン・バーキンさんが交互に客席にいる代表団のメンバーを呼び込みます。
レッドカーペットの時にも一生懸命写真を撮っていた『オーケストラ!』のラデュ・ミヘイレアニュ監督は、舞台にもカメラを持参。客席を背景にして主演のアレクセイ・グシュコブさんとツーショットを撮ったりしていました。
フォトセッションでは、2列になるはずが、1列のまま・・・ という次第で、全員一緒の写真は撮れませんでした。
最後に、オープニング上映の『ミックマック(原題)』ジャン=ピエール・ジュネ監督が挨拶。
「ミックマックと、ビックマックと混同しないようにしてください! 自由に作った映画です。どうぞ楽しんで」と、すまして冗談を言う監督でした。
なんとも自由な雰囲気で終った舞台挨拶、フランス映画祭らしい幕開けでした。