5月29日(金)〜31日(日)の3日間、第21回東京学生映画祭が下北沢の北沢タウンホールにて開催されました。東京一円の学生たちが参加するこの映画祭は、出品はもちろん、映画祭の企画・運営もすべて学生たちによるもので、計140作品の中から3次予選を通過し、本戦に残った10作品が映画祭中に上映されます。実写部門とアニメーション部門があり、それぞれの作品はプロの監督、俳優、プロデューサーなどの審査員によって審査され、グランプリが決定するのです。これまでの20年間には中村義洋(『アヒルと鴨のコインロッカー』)、青山真治(『ユリイカ EUREKA』)、園子温(『愛のむきだし』)などの監督が出品してきた映画祭です。
今回、わたしは最終日に初めてこの映画祭に参加したのですが、大変盛況で会場は若い観客やスタッフであふれ、運営スタッフも熱心で活気があり、スムーズな進行にも感心しました。そして、何よりも本戦に残って上映された作品の質の高さに驚かされました。
作品の上映の合間に、作品の監督たちと審査員たちとのトークセッションも設けられ、審査員からの感想やアドバイスや、学生の監督たちから先輩である審査員たちには様々な質問がなされました。
山下敦弘(映画監督)、川原伸一(映画プロデューサー)、寺島進(俳優)
大塚雅彦(株式会社GAINAX)
準グランプリと観客賞を受賞した『いえのおと』は、女性監督らしいしなやかさと母性を感じる作品。中学時代に同級生だった女1人、男3人が、22歳の夏に久しぶりに再会します。一見昔と変わらない友だち同士。しかし、4人はそれぞれ家族の問題を抱えていて帰るべき家がありません。昔からまるで男っ気のないマリの妊娠が発覚し、男たちは「処女懐妊!?」と初めは無邪気に盛り上がるのですが、お腹の子が育つのを見守ることで、少しずつ自分の問題に向き合い始めるのです。
発表を聞いた瞬間、監督の依田真由美さんが本当にびっくりした顔をしていたのと、副賞としてお菓子を贈呈されたときに「きゃあ〜!みんなで食べます!!」と喜ぶ姿が微笑ましかったです。
審査員特別賞は、審査員が今回のレベルの高さに驚き、意見が割れて急遽作った賞なのだとか。受賞した『連鎖』はヒッチコックが大好きという宮岡太郎監督らしく、エンターテインメント性溢れるサスペンス・スリラーです。この作品で主人公を怪演した川野裕佳さんが俳優賞を受賞しました。男に依存する女の怖さと、女の嘘にまるで気づかない男のバカさ加減を、自身の体験も踏まえて撮りたかったという監督。とてもよく表現できていました。副賞のビール1ケースは、ひょっとして寺島進さんからのプレゼント?
アニメ部門グランプリ作品の『The Taste of imaginary Friends』は6分と非常に短いですが、少女から女になることへの不安と痛みを、特徴のある白黒の鉛筆画で描いた、非常にインパクトのある作品でした。
グランプリを受賞した『シュナイダー』は土曜日の上映だったため、残念ながら観ることができませんでした。しかし、このグランプリ作品は映画館での一般上映があります。
7月5日(日) 開場:20:00〜 開演:20:15〜来年も是非観に行きたいと思う映画祭でした。