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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『トーテム song for home』
若木信吾監督 2009年製作
出演者 スミン来日ライブ

スミン

2009年9月25日 シネマート六本木にて


「トーテム(圖騰)」は、台北で活動している台湾原住民出身(一人だけ漢族)の若者たちが2002年に作ったバンド。ボーカル&ギターのスミン(阿美アミ族)、ボーカルのチャーマーカー(排灣パイワン族)、ギターのアシン(排灣族)、ベースのアウェイ(漢族)、ドラムのアシャン(卑南プユマ族)というように、それぞれ違う伝統音楽の背景を持った部族の出身です。ロック調の音楽から、スローなバラード、ラップ調の音楽までこなすバンドですが、原住民の伝統音楽の要素を組み込んだサウンドが息づいています。
この作品は『星影のワルツ』で知られる若木監督が、雑誌の取材で台湾に行った時「トーテム」に出会い、故郷を思いつつ都会に暮らす彼らの姿に共鳴し、3年がかりで作ったドキュメンタリー作品です。

スミン

映画公開の前にトーテムのボーカルであるスミンが来日し、ミニライブを行いました。その模様をレポートします。シネマジャーナル本誌の編集や東京国際映画祭取材などがあり、レポートが遅くなりましたが、詳しい作品紹介はシネマジャーナル77号に掲載していますので、本誌の方もぜひ購読ください。

映画上映の後、ミニライブがあり、スミンは台湾原住民アミ族の伝統的衣装を来て登場。 アミ族の衣装を知ってもらいたいと思い、この衣装にしたと語っていました。
黒を基調にして、赤や黄色、水色などの模様の入ったもので、下はスカート?。腰にはピンクや赤色の帯(映画の中で、そういう衣装を見ることができます)。そして、はだし。はだしはアミ族の正装だそうです。それにギター。劇場の床は冷たそうでしたが、はだしで頑張っていました。スミンの来日はなんと、5回目。

スミン

3曲歌ってくれましたが、1曲目は映画の中でも歌われていた歌(「我在那邊唱」だったと思う)。2曲目はスミンが崇拝する郭英男(ディーファン)がアトランタオリンピックで歌った「老人飲酒歌」、3曲目はアミ族の伝統的な歌でした。スミンのリードで、繰り返しの部分を観客も一緒に歌い、楽しいライブは終わりました。
スミンはこの作品の中でもアイドルは郭英男(ディーファン)と言っていますが、郭英男はアミ族の長老で、90年代日本でもCDが出ています。一世風靡したエニグマの「リターン・トゥ・イノセンス」の元歌を歌った方。皆さん聞けばすぐわかると思います。
質問コーナーがあったので、私は「ディーファンさんもアミ族だけど同じ部落の方ですか、また直接祭りなどで彼の歌を聞いたことがありますか?」と、聞いてみたけど、残念ながら違う部落で、直接歌を聞いたことはないとのことでした。
歌の後、アミ族の祭りや風習の話しをしてくれましたが、衣装に身に着けていた袋は、お祭りの時に身に着けるもので、踊りの時に女性が意中の男性の袋を引っ張り気持を伝えるためのものだそうです。そして袋の中にプレゼントをいれるとか。そんな伝統的お祭りの様子もこの作品にはたくさん出てきます。ぜひ、映画をごらんになってください。

スミン
プレゼントの袋

台湾には郭英男ばかりでなく、原住民出身の歌手がたくさんいます。張惠妹(アーメイ/プユマ族)は台湾音楽界の歌姫。紀暁君(サミンガ/プユマ族)は来日ライブも行っています(シネマジャーナルHPに記事ありhttp://www.cinemajournal.net/special/2001/saminga/index.html)。『練習曲』で「太平洋的風」を歌っていた胡徳夫(キンポ/プユマ族)、『海角七号』に出演していた范逸臣/ハン・イーチェン(アミ族)、民雄もパイワン族出身の歌手というように、たくさんの方が活躍しています。原住民出身の歌手が多いのは、この映画にも出てきたように、お祭りなどで歌を歌う機会も多く、歌が生活と共にあるから、音感が良く、才能ある人が多いのかなとも思います。たくさんいて紹介しきれませんが、この夏の台風による台湾での被害を救済するためのコンサート「原斑人馬 Happy Together」というイベントが台北アリーナで開催され、たくさんの原住民出身のミュージシャンが集ったそうです。これを機会に、台湾の音楽、台湾の原住民の音楽にもぜひ興味を持っていただけたらと思います。
(日本では原住民という言葉は差別用語のように言われることもありますが、台湾ではアイデンティティを持つ言葉として使っていますので、あえて使わせていただきました)

会場に行ったら、なんとシネジャスタッフのKさんが私の斜め後ろに座っていました。彼女は韓流にどっぷりハマっているので、まさか台湾原住民の音楽に興味を持ち、スミンのライブに来るとは思ってもいなかったのでびっくり。理由は彼女のニックネームが「スミン」だったので、同じ名前の歌手に興味を持ったとのこと。帰りにはトーテムの2枚のCD、「我在那邊唱」と「放羊的孫子」を思わず買ってしまった私たちでした。

チラシ画像

『トーテム song for home』 公式サイト http://www.totem-movie.net/
監督・撮影・編集:若木信吾
製作総指揮:谷口宏幸
製作国:2009年日本映画
上映時間:1時間25分
配給:ヤングトゥリーフィルムズ

*10月24日~シネマート六本木にて公開中

*11月 7日~11月13日 名古屋シネマテークにて公開
*11月28日~12月 4日 新潟十日町シネマパラダイスにて公開
*12月12日~12月18日 沖縄桜坂劇場にて公開
(それぞれの会場で監督舞台挨拶が予定されています。詳細は各劇場にお問い合わせください)

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(取材・撮影:宮崎暁美)
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