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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第22回東京国際映画祭 アジアの風
『法の書』原題:Ketabe Ghanouin 英題:The Book of Law
(2009年 イラン)
マズィヤール・ミーリー監督インタビュー

マズィヤール・ミーリー監督

2009年10月18日(日)六本木ヒルズ アカデミーヒルズ49にて


*ストーリー*
ラフマーンは40歳になる今も独身。出張先のベイルートの会議で通訳を務めたフランス人女性ジュリエットと恋に落ちる。9ヵ月後、結婚を決意したラフマーンはジュリエットをイランに連れ帰るが、理想の嫁を待ちわびていた母親や姉たちは外国人の嫁に何かとつれない。おまけに、キリスト教徒からイスラーム教徒に改宗したジュリエットが、コーラン片手に講釈するのが癪にさわって仕方ない。ラフマーンの宗教に厳格な上司も巻き込んで、家族総出で嫁のいびり出し作戦を企てる・・・

◆言動と行動の違う人を批判するのが本作の目的


マズィヤール・ミーリー監督

― コメディ仕立てで笑わせながら、しっかり社会批判している作品でした。ベイルートに出張した一行のボスが宗教の規則に厳格な人物で、食事の時にイスラームに則った肉でないかもしれないと、部下にも野菜しか食べさせません。部下たちはボスの目のないところではお肉を食べていますが、私自身、以前に商社に勤めていた頃、イランからの来客をアテンドして、同じような光景を何度もみています。

監督:世の中には、宗教を利用して利益を得ようとする人たちがいます。この映画は、言っていることと、やっていることの違う人を批判しようとして作りました。

― 微妙な内容で、検閲に引っかかることも想定して作られたと思います。

監督:検閲はもちろんありますが、私たち映画人は、より良い生活を平和な中でおくっていきたいと思って、社会を批判する映画を作ります。女性のソロの歌を削除したり、ボスの名前を変えさせられたりしましたが、2年たって、ようやくイランでの公開が許可され、今、まさに公開中です。公開中のあとの4本は商業映画ですが、昨日の興行成績を電話して確認したら、私の作品が一位で、1日で3万ドルの売上がありました。

◆演技派の主演二人

― ラフマーン役のパルヴィーズ・パラストウィーさんは、演技派で知られた方ですね。アジアフォーカス福岡国際映画祭で来日された折に、2度お会いしました。この映画の中では、一人でいろんな人物を演じ分けて、実に愉快な面を見せてくださっていますが、実際の彼はとても落着いた方でした。

監督:彼は、ほんとに演技が上手くて、人間的にも素晴らしい方です。彼が現場にいらしてくださると、とても落着けます。

― ジュリエット役のダリン・ハムセさんは、イラン系の方ですか? ペルシア語がお上手でしたが。

監督: レバノンで有名な女優で、フランス人とレバノン人とのハーフです。ペルシア語はまったく出来なかったのですが、共演のパラストゥーイーさんが、毎回リハの時に発音を丁寧に教えていました。今では、たぶん、サラーム(こんにちは)しか言えないでしょう。

◆イラン人は招き上手な優しい人たち


正座するマズィヤール・ミーリー監督
これからお祈りを始めます!

― 外国人のダリン・ハムセさんにとって、イランでの撮影はカルチャーショックがあったのでしょうか?

監督:イランの人たちは、招き上手で優しいので、外国からやってきた人は心地よく過ごすことができます。また、大昔からイランでは国際結婚が盛んに行われきました。この作品では、問題提起しようと思って、極端に伝統を重んじる厳しい母親を登場させています。こういう母親は実はあまりいないと思います。

― 実は、この作品を観たときに、イラン人の優しさを知っている私にとっては、宗教の解釈の仕方の違いによる摩擦を描くために、国際結婚というシチュエーションを利用したように感じました。また、イラン人にとって、コーランと共に、ハーフェズの詩集が人生の規範になっているように思えるのですが。

監督:イラン人は、昔から詩を大切にしてきています。お正月もハーフェズの詩で始めます。ポエティックにものを見ている人たちです。モーラヴィーやサーディーといった詩人も大事にしていますが、落ち込んだりした時には、ハーフェズの詩で道を教えてもらったりします。

◆女性たちが嫁選びするイラン社会

― ところで、本作の主人公は40歳まで独身でしたが、イラン人も晩婚化や独身のままでいる人が増えているのですか?

監督:世界的にどこも同じだと思います。イランでも、若い人はあまり結婚したがりません。

― 監督ご自身は?

監督:私は早くに結婚しました。イランでは、「運命」を信じています。私の場合も、それが生まれた時からの定めだったと思っています。

― 奥様とはどのように出会われたのですか?

監督:母親どうしが知り合いでした。

― 映画の冒頭でも、母親と姉妹たちがお嫁さん候補の写真を見ながら品定めをしていましたが、イランでは、お母さんやお姉さんがお嫁さんを紹介するケースが多いですね。

監督:家族の一員になるわけですから、和を保つには、女性たちにお嫁さんが気に入られることが何より大事だと思います。

◆『カサブランカ』が映画の師


マズィヤール・ミーリー監督

― ところで、いつ頃から映画製作に興味を持たれたのですか?

監督:小さい時から映画に興味がありました。外国映画はあまり公開されないので、お小遣いでビデオを借りてみていました。大学で映画の編修を学びながら、現場を経験しようとお茶係や道具係など何でもやりました。ダリウシュ・メールジュイ監督. ナーセル・タグヴァーイー監督という、イランの偉大な二人の監督の助監督を務めたりしました。私にとって映画監督になったのも運命だったと思っています。

― 心に残る映画は何ですか?

監督:『カサブランカ』です。誌的なラブストーリーで、自分の映画を作る前には必ず1回観ます。

― 今、手がけている作品は?

監督: テレビシリーズで、コメディータッチのラブストーリーを撮っています。

― それも社会批判を込めて作っているのですか?

監督: テレビでは、さすがに社会批判は難しいのですが、少し隠し味に入れてみようと心がけています。

― 映画も次回作を手がけているのでしょうか?

監督: 今のイランの状況の中で、どうなるか戸惑っています。でも、やっぱり映画を作りたいと思っています。

― また、風刺の効いた作品を心待ちにしています。本日はどうもありがとうございました。


『法の書』10月20日上映後のQ&A
マズィヤール・ミーリー監督(右)
通訳のショーレ・ゴルパリアンさん

『法の書』マズィヤール・ミーリー監督  10月20日上映後

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(取材:景山咲子)
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