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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
(1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『グッド・バッド・ウィアード』
公開直前 東京舞台挨拶&大阪記者会見レポート

チョン・ウソン、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督

監督&キャストの来日プロモーションと劇場公開から1週間経ちました。皆さんはもう映画館でご覧になりましたか? 映画館へは今までの韓流映画に比べると多くの男性が足を運んでいらっしゃるようです。
キム・ジウン監督がディティールまでこだわり抜いた映像は美しいです。あんな華奢で綺麗な俳優さん達が、CGやスタントも使わず、もしかしたら大きな事故になったかもしれないのに危険をかえりみず生身を張った、リアリティーのある激しいアクションシーンは見ごたえあります。加えてたぶん男の人だけに響くのかもしれない哀れかも滑稽かもの「男の美学」が繊細に演じられています。何度観ても飽きることなく、文句無くおもしろいです。大スクリーンならではの迫力を存分にお楽しみください!

それでは、東京と大阪でのプロモーションイベントをレポートします。


8月27日 舞台挨拶@東京

執念でチケットを手にした観客の皆さんは、会場である映画館の大スクリーンを前にしてゲスト登場前からとても盛り上がっています。チケットが手に入らなかったファンの方々も早朝から会場を取り囲んでいました。

チョン・ウソン、イ・ビョンホン、キム・ジウン チョン・ウソン、イ・ビョンホン、RYO、キム・ジウン監督
左からチョン・ウソン、イ・ビョンホン、「ORANGE RANGE」RYOさん、キム・ジウン監督
チョン・ウソン イ・ビョンホン
ツンとあがった前髪がポイントのチョン・ウソン 「監督は”ひどい奴”」と語るイ・ビョンホン キム・ジウン監督
キム・ジウン監督

大歓声に迎えられて、俳優と監督の登壇です。

チョン・ウソンは「オハヨウゴザイマス」と日本語で、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督は韓国語で「ノムノムノム(良い奴悪い奴変な奴-韓国での原題を短くした呼び方)が日本で公開されて嬉しい」と挨拶。映画撮影のため来日できなかったソン・ガンホからの「ぜひ、映画館の大画面で、お会いできたらと思います」というメッセージも読み上げられました。

日本版エンディングテーマ「鬼ごろし」を書き下ろして歌ったロックバンド「ORANGE RANGE」のRYOさんが、ゲストへの花束を持って駆けつけてくださいました。

音楽について

Ryo: 「もともとアクション映画は好きでしたが、記憶の中に残るアクション映画だ。 また見たい!」 また「フックをきかせた曲になっている」と。

チョン・ウソン(以下 ウソン): Ryoさんに映画の曲を作っていただいたことに感謝しています。この映画にはクラシックなところもあるのですが、ロックと映画が良くあっていて、映画に新しいリズムを与えてくれたのではないかと思います。

イ・ビョンホン(以下 ビョンホン): 映画音楽というのは制作の段階から参加して映画の雰囲気などを把握しながら作るので大変なことだと思うのですが、今回は出来上がった映画をご覧になって、そこから新たな音楽を作るということだったので、なお更大変な作業ではなかったのかなと思っています。それにも関わらず、映画の感情的な部分を生かして映画に合っているエンディング曲を作ってくださったと思います。Ryoさんはとても立派なミュージシャンだと思いました。

キム・ジウン監督(以下 監督): 先ほど、音楽にフックを入れたと表現されていましたが、そのフックは1度や2度ではなく、数十回受けたようなそんな気になりました。この映画はわくわくしてかっこよくて、軽快な映画なのですが、Ryoさんが作った音楽が映画の最後を素敵に飾ってくれたと思います。ありがとうございます。

チョン・ウソン チョン・ウソン、イ・ビョンホン、RYOさん、キム・ジウン監督
薄っすらお髭のチョン・ウソン  左からチョン・ウソン、イ・ビョンホン、RYOさん、キム・ジウン監督

アクションシーンについて

ウソン: アクションシーンを撮影するのに、ワンシーンごとに神経を集中させて撮影したのは初めてのことだと思います。撮影途中で、手首を骨折することもありましたが、撮影を中断するわけにもいかず、そのまま撮影を続行したことは記憶に残っています。それだけ苦労したものでもあるのですが、実際に完成して映画が出来上がったときに、私たちが画面に表したかったものがそのまま映画の中で表現できたのではないかと思い、それまでの苦労は救われたなと思います。

撮影の感想

ビョンホン: 韓国で公開されたときも、この映画を撮った感想をインタビューで聞かれたのですが、遊び終えて、すっきりした気持ちになったという感想を話したことがあります。とても長い時間でしたが、本当に遊ぶような感じで撮影しました。映画の性格上、観客の方たちも映画館でじっとして見ているのではなくて、楽しそうに、一緒に遊ぶような気分で映画を観ていたと思います。皆さんもそんな風に観ていただければと思います。

3人の俳優の共演について

監督: …。準備していたコメントがあったのですが、突然質問を変えてきたので…(笑)。そうですね…。ソン・ガンホさんが今回、来ることができなくてとても残念に思います。3人をキャスティングした段階でこの映画が出来上がった気持ちでした。キャスティングの段階で、イ・ビョンホンさんは若干不機嫌になっていましたが、3人の魅力がうまく加わった作品に出来上がったと思います。実際、イ・ビョンホンさんは自分が悪役には適していないと思っているようですが、私からは本人のそのままの姿を見せれば悪役になるよと説得してキャスティングに成功しました。
日本は、とても静かで平穏ですが、これほどたくさんの人が殺され、銃弾が飛び交う非常に騒がしい映画を上映することになって非常に嬉しく思っています(笑)。この映画を観てから、劇場を出ると、この世はこんなに平和で美しいということを感じることができると思います。

悪役のオファーに不機嫌になったんですか?

ビョンホン: (コホンと咳払いをして)「悪役になったことがどうというより、監督とは『甘い人生』で一緒にしたことがあったのですが、そのとき、監督がどれほど俳優をこき使うのかを十分に知っていたんです。なので、また監督と一緒に仕事をするべきか、しないべきかと悩んでいたのですが、やはり、「いいやつ、悪いやつ、変なやつ」にプラスして「ひどいやつ」という名前がつくくらい、人使いの荒い監督でした!」

ここで、出演者のサイン入りボールを搭載したエアー銃が4人のゲストによって観客席目掛けて打ち放たれ、運の良いファンの方の手に収まりました。このときチョン・ウソンのボ―ルが最前列のカメラマンへポトリと届いてしまい、手で客先へ投げなおしました。このボールを手にできたファンはラッキーでしたね。

会場の皆さんへ一言

ウソン: みなさんの関心と愛情に応えられる映画となっていると思います。痛快に楽しんでいただければと思います。

ビョンホン: 楽しめるところがたくさんあるので、瞬きをせずに一瞬たりとも見逃さないで最後まで楽しんでください」

監督: 先ほどのサインボールを取るときのように必死になって 目を見開いて映画を見て下さい。

挨拶の途中、マイクの調子が悪くなってしまったのですが、一言も漏らすことなく聞きたいファンの方達からブーイングがおこります。おもしろがって、その後しゃべる前にいちいち「アーアー」としつこくマイクテストする3人に会場は爆笑です。

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8月27日 ダルマ目入れミニイベント@東京

舞台挨拶後に、映画館のテラスステージで、ダルマの目入れが行われ、それぞれの役柄の名前の頭文字、ウソンさんはGoodのGを、ビョンホンさんはBadのB、監督がガンホさんの変わりにWeirdのWを書き入れました。ファンの方もたくさん駆けつけました。

チョン・ウソン、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督 イ・ビョンホン
大ヒットを祈願してダルマの目入れ
チョン・ウソン イ・ビョンホン
ダルマの目入れを終えて一言   ファンへ投げキッス!

ビョンホンさんは退場する前に投げキッス~。ファンの方の絶叫で東京舞台挨拶は幕を閉じました!

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8月28日 記者会見@大阪

連日の過密スケジュールの中、前日遅くに大阪入りし、朝9時30分という開始時間にもかかわらず、すっきりした出で立ち、さわやかな表情で現れてくれました。イ・ビョンホンさんは鍛えた体が映えるぴったりした黒Tシャツに黒スーツ、ますます体を絞っているためかスーツがゆったり目に見えます。来日前日に髪を短くしたためか、顔の線もますますシャープです。至近距離から見る俳優お二人は本当に凛としていて美しい。ジウン監督も雰囲気があってとても素敵です。

チョン・ウソン、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督 チョン・ウソン
イ・ビョンホン キム・ジウン監督
チョン・ウソン、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督

短い時間でしたが、3人とも一言一言大切に丁寧に答えてくれました。まさに作品の根幹でもある男の体面をかけて、良い映像を撮るために体を張った緊迫した現場の情景が語られました。その過酷な環境や新しい試みに挑戦し仕事を成し遂げられた根底には、お互いの仕事への心からの信頼と尊敬があったからだという思いが、三者三様によどみなく語られました。すばらしいチームだったことが伝わります。

質疑応答のときに、司会の方が当ててくださったので、直接ご本人達に質問をすることができました! 昨年9月の「トロント国際映画祭レポート」「シネマジャーナル76号」へ寄稿)の時のことを覚えていてくれて、3人が同時にニコっと頷いてくれた時は、本当に嬉しかったです!)ネットなどに出回っていた撮影現場のスチールで、ジウン監督が砂漠にたたずむ姿がとても絵になっていてとても素敵だったので、「ジウン監督も演技をなさいませんか?」とずっと前から聞いてみたかった質問に3人全員が答えてくれました。

今回のプロモーション中、ビョンホン氏とジウン監督がお互い突っ込みあい、ウソン氏がさらりと落とすという場面があちらこちらで繰り広げられて、たくさん笑わせてくれました。落ち着いた雰囲気の記者会見の場でも、この質問の受け答えの場面で、期待を裏切らない突っ込みトークがありました! ジウン監督とビョンホンさんは、ジウン監督が「夫婦」に例えるほど親しい間柄です。この2人が紡ぎ出す作品をこれからもたくさん期待したいです。

それでは、まとめてしまうにはもったいないので、会見質疑応答全文をノーカットでお届けします。

挨 拶

ウソン: 皆さんこんにちは。私たちの映画『グッド・バッド・ウィアード』を大阪でこのように 皆さまにご挨拶できることになって非常に嬉しく思います。また、今日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。

ビョンホン: (日本語で)大阪の皆さん、お久しぶりです。

監督: おはようございます。キム・ジウンです。正確な記憶がないんですけど、確か『クワイエット・ファミリー』の時だったか『反則王』の時だったか『箪笥』の時だったか、そのあたりで大阪に来たことがあるんですが、またこのように皆さんにお会いできて嬉しいです。

司会 :『クワイエット・ファミリー』の時の映画祭ですね。

質 疑 応 答

ー 映画『グッド・バッド・ウィアード』大変面白かったです。クライマックスの砂漠の追跡劇の場面についてお伺いしたいと思います。キャストのお二人は体力的にも大変だったと思うんですが、撮影の苦労話をお二方それぞれに、それから 監督には空から鳥瞰から撮られている図はどのように撮られたのかお伺いできればと思います。

ウソン: やはり、まず最初に馬に乗って走るわけですけれども、その馬のスピードにいかに自分がついていくかというところが大変でした。馬と並走して撮影用のカッター車両、車も走るわけですけれどもその車に乗っている人が 「今65キロ、70キロを超えた」というふうにまるで記録を更新している時のように声をかけてくれたりと、まぁ実際にそのぐらいのスピードが出ていたということですし、そのスピードで走っている馬の上で銃を回してアクションをするということでかなり苦労はしました。また、私自身ではなくて他の俳優さんが演技をしている時、それを傍で見守る時の心情というのもかなり辛いものがありました。それと言うのもどの方のも本当に高難度のアクションを要するもので下手すると大きな事故につながってしまうということでしたので、それを脇で見守るという時の気持ちはかなり大変でした。

ビョンホン: この映画は最初から最後まで出来るだけ順撮りを志していました。もちろんすべて順番どおりにワンシーンから最後までということにはいかないですけれども、出来るだけ順序に乗っ取って撮影をしていきました。前半とそれから半ばぐらいというのが、ものすごく撮影が順調にいきまして、素敵なシーンがたくさん撮れて、そしてイメージ的にも強烈なシーンがたくさん出来ましたので、最後の段階のクライマックスに至って、もしちょっとこう見た目に弱い映像ができてしまったらいけない、ということで皆さん気を遣っていたんですよね。それは、非常に幸せな悩みだったと思うんですけれども、とにかく後半で良い映像を作らないといけないというプレッシャーを感じていました。そして、俳優に対しては安全を考えてスタントマンとかいろいろ安全な仕掛けもあったんですけど、そうはいっても危険なシーンの連続でした。ただ、最後に良いシーンを作りたいということで監督も俳優も皆で欲を出して、まさに体面をかけて撮っていたような印象でした。そして、馬というのは非常に敏感な動物でちょっとの動き、音でも敏感に反応してしまうんですけれども、そういう中で 地面には爆弾が仕掛けられていて銃も撃たないといけないというところでしたので、馬がますます動いてしまうんですね。そして、そういった中で私も危険を感じながらでしたけれども銃を撃つ演技をしたり、馬に乗ったりという撮影が続いていました。まさに、安全を省みないで撮影をした感じだったんですが、今振り返ってみるともっと大きな事故が起きてもおかしくないような それほどの危険の連続だったんですけど、何とか撮影を終えることができました。ただもう、1日たりとも緊張を緩めることはできませんでした。

監督: そうですね、俯瞰(ふかん)で撮ったところというのはワイヤーカムという装置ですとか、いろいろな機材を投入して撮ったんですが、カメラマンの方が被写体と一緒になって上から飛ぶように撮影をしたという、そんな形でした。ほとんどCGを使っていないんですけれども、まさにライブアクションにこだわってそういうふうにしたんですが、非常にこう大切なシーンで、3人の俳優さんが頑張ってくれたんですが、もともと3人はアクション俳優じゃないわけですよね。しかし、CGに頼りたくなかったというのは、どんなに立派なCGに頼ってもやはり本人が演技をした方が迫力があり迫真のある、そういった映像が撮れると思ったからです。そういったまぁ、演出を考えて撮ったんですけれども、馬に乗って大平原を疾走するシーン、私が監督として皆さんにかけた言葉というのが「より速く、より高く、より力強く」ということを何度も言ってたんですね。そういう自分をちょっと振り返ってみたら、自分は映画監督なのかオリンピックの監督なのかわからない、そういう気持ちにもなりました。

ー 監督は俳優を若いときになさっていたと伺っております。この作品かまたは他の作品でも、ビョンホンさんやウソンさんと共演したりということをお考えになったことはありませんか? クリント・イーストウッドのように演技もするし監督もするというのはいかがでしょうか。お二人も共演してみたいと思われませんか?
(ウソンさんニヤニヤ、ビョンホンさん通訳聞きながら考え中、ジウン監督「まいったな」)

キム・ジウン監督 キム・ジウン監督

監督: 元々は演技、俳優としてスタートしたわけなんですけれども、周りの人たちに止められてやめた方がいいよと言われまして、別の方に移る事になりました。各自、演技に対する哲学、演技の世界を持っていると思いますので、もし本当に仮に3人が一緒に演技をしたらどんなアンサンブルで映画が駄目になってしまうのか(会場笑)、それを考えるととても恐ろしいです。

チョン・ウソン、イ・ビョンホン イ・ビョンホン

ビョンホン: (しゃべり始める前にニヤリ、両手で指をポキポキ鳴らして、さっとマイクを取りジウン監督の返答に突っ込む気満々?)監督は本当に演技が上手いと思いました。「甘い人生」を撮ったときに、監督と初めてご一緒したんですけれども、全ての俳優にディレクションをする時に本当に説明が上手いんですね。まず最初にセリフを言ってみてから演技を見せてくれるんですけれども、監督の説明を聞いていると自分がどうやって演技をすべきなのか、そのディティールまで細かい感情まできちんと伝えてくれるように説明してくれるので、ああ本当にすごいなと思っていました。その様子を見て監督も演技をすればいいのに、と思っていたんですね。そしたら監督が実は、最初は演技からスタートして途中から映像にまわったということをおっしゃっていました。監督の中には監督業をしながら時々演技で出演する人もいますよね。だから監督もそうすればいいのになぁという考えをずっと持ってました。そうしたところ、先ごろあるCMがあったんですね。それは演技が必要とされるCMで、セリフもあって何か説明するような状況もあってという中で監督が出ていたんですけれども、それを見たときには若干今一なのかなという感じがしたんですね(会場笑)。やはり監督としてディレクションするときに見せてくれる演技と、実際にカメラの前に立ってする演技というのはやはり違うのかなと思いまして、監督がカメラの所で演出をしているというのは、とても幸せなんじゃないかなと思いました。

イ・ビョンホン キム・ジウン監督

監督: (何か言おうとしたウソン氏をさえぎって)そのCM撮影を通して感じた事なんですけれども、あの、やはり良い演技っていうのはディレクションから来るんだなと思ったんですよね。良い演技をするためには、やっぱり良い監督がいなければいけないという事を改めて思いました。(会場笑)

ビョンホン: (すかさずマイクを握って 突っ込みます)ちなみに私はそのキム・ジウン監督を演出したCMの監督と先ごろCMを一緒に撮ったんですが、実に立派な監督さんでしたよ。(会場爆笑、不敵な笑顔が浮かびます。ジウン監督「なんだよ~」とのリアクション)

イ・ビョンホン キム・ジウン監督

ウソン: (何度もさえぎられた末に 司会の方が振ってくれたので やっとマイクがまわってきました)監督と一緒に演技をするというようなご質問がありましたけれども、そのような事を考えたこともないですし考える価値もないですし、時間もないことですから次の質問に移ったらいかがでしょうか。(会場笑)(と腕時計を見ながら さりげなく撤収してくれました。)

チョン・ウソン

ー イ・ビョンホンさんにご質問です。今回、初めての悪役を演じられて役作りについて何か苦労された点を教えていただきますでしょうか。

ビョンホン: 肉体的には大変な事もありました。とにかく馬賊団のボスという設定でしたので、誰よりも馬に上手く乗らなければいけないという事があったんですね。で、馬に乗ってということは今回が初めての事でしたので、他の人よりもやはり努力が必要とされる部分がありました。そしてキャラクターを掴む上では、監督とも良く話し合って役作りをしていたんですけれども、最初の撮影のシーンというのがキム・パンジュという人物を殺して、そして1人ピーナッツを食べながらグルグル回って踊るように、音楽をかけながら少し踊って独り言を言うというシーンがあったんですね。あのシーンは、チャンイという人物の性格を上手く描写していたと思います。チャンイがもっている残酷性ですとか、暴力性、凶暴性といったもの、そして殺人を楽しんでいるというようにも思える そういったチャンイのキャラクターが良く出ていたと思うので、あのシーンを撮った時に、ああこれはこの人物の役作りに役立てるなと思いました。あそこで1人で食べるときにいろんなものに例えて哲学を披露するんですけども、そういったところからもチャンイの性格が見て取れたと思いますし非常に良いシーンが出来たというふうに思います。そのシーンを通してチャンイという人物について考えることができました。チャンイという人物は単に悪いことをしているというふうに映ってしまうかもしれませんけれども自分の中では彼なりのストーリーを考えてみました。彼はどんな内面を持っているのか、そしてなぜ彼がこんな行動をするのか、なぜこんな事を言うのか、全てに何か根拠があるのではないかと思いましたので画面には映りませんけれども自分なりの彼のヒストリーを考えてみたんですね。そういった事を考えた上で行動しないと自信を持って演技が出来ないと思ったからです。ですから彼が行動する理由というのは何なのかということを常に考えながら例えばそれが出ていなくても自分の中で研究をしながら演技をしていました。

ー 全編凝りに凝りまくった映像で見所が多くて、すべてのシーンに関して解説をいただきたいくらい楽しめました。ありがとうございます。観ないですませる理由が見つからないです。完璧なエンターテインメントとして仕上がった要因は何でしょうか?

監督: まずはお褒めのお言葉いただいてありがとうございます。1つの作品を作るためにはまず企画がなければいけないですし、ストーリーがなければいけないですし、そこに参加するスタッフ、俳優、監督、皆が渾身の力を込めて同じ目的で作らないといけないと思います。そういうふうに同じ目的を持って一生懸命走っていけばいい結果が出るんじゃないかなぁと思います。ただ、今回の作品は本当に大変だったんですね。こんな辛い撮影が果たして韓国映画の中にあったのだろうかと思えるぐらい本当に大変で、中国の悪条件の自然の中で撮影が続いていました。ですから映画を撮りに来たというよりも奥地に探検に来たような、何だか開拓に来たようなそんな気持ちにさえなりました。でもそんな中で、皆さん心一つにして撮影をしたんですけれども、お陰で新しい映画、意味のあるエンターテイメント作品が生まれたと思います。そのためには、私たちをはじめスタッフ、俳優さんの皆さんの意志ですとかロマンがないと出来なかったと思います。大平原の中で銃を撃ったり、馬で疾走したりそういったものを撮るためには監督自身にもロマンがなければいけないですし、俳優自信にもロマンがなければ撮れなかったと思います。そういったことがあったので、今回はこの映画を撮ることが可能になったのではと思います。そしてそのために力を尽くしてくれた横にいらっしゃる2人の俳優にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。カムサハムニダ。

ビョンホン: まずは、完璧なパーフェクトな作品と言って下さったとしたら、本当にこれは絶賛していただいたことになるのではないかと思います。けれどもどんな作品を撮るにしても俳優というのはやはり限界があると思うんですね。何故かというと1人の俳優に与えらた役は一つしかないからです。特に今回は個性の強い何人かの主人公が出てくるんですけれども今回の映画の長所にもなっていますよね。このキャラクターを見るという非常な楽しみがこの映画にあると思うんですけれども、そうなってくるとやはり各自が与えられた仕事というのが決まってきます。ですので、他の全体を中々見渡して撮るということは難しいんですけれども、自分に出来ることというのは最初から最後まで与えられた自分の役に忠実にその人物になりきって演じるという事、あまり他の事を雑念など持たずに演じるということなんじゃないかなと思います。そういうふうに各自が演じたものを最後にまとめて仕上げてくれたものが監督だと思います。今回は運良く俳優が演じた部分、俳優もきちんと自分の役割を果たすことができましたし、監督も上手く各自の俳優の演技を調和させて上手くまとめて1つの映画に仕上げていただいたのかと思います。

ウソン: とてもお褒めいただいたんですけれども、やはりそれは突き詰めていけば監督のお陰だったのではないかと思います。そもそもストーリー自体のスタートは監督の創造力から発していますし、そして監督が力を出して3人のキャラクターというのも定め、3人の俳優に声をかけて映画の中で素晴らしいキャラクターを生まれさせたと思います。監督は現在においても実に賢明な観察者であり、そして全てを調和、調律させる人でもあったと思います。3人の俳優が持つそれぞれの長所を上手く生かして引き立たせた、そこが監督の素晴らしいところだったのではないかと思います。実際に撮影現場においても俳優はもちろんのこと、スタッフ全体を調和させる素晴らしい指揮者、こういった指揮が出来る人は本当に少ないと思います。現場において私たちはインタビューを受けるにあたっても、いろいろな楽しい思い出がありました、というふうにお答えしているんですが、その反面、確かに非常に耐えることが大変な時間も過ごしました。ただやはりそんな中でもそれを目に当たりにしているのは監督はもしかしてこれで挫折をしてしまいたいようなそんな暗い気持ちになるのではないかと私たちも心配したりもしたんですが、こうやって挫折することもなく最後まで耐え抜いて、そしてチーム全体をまとめ上げてくれました。皆が危機に瀕しているようなそんな大変な時間にも打ち勝って皆を率いてくれたということで監督を尊敬しています。

ー 今日ソン・ガンホさんが来られていなくて残念なのですが、ソン・ガンホさんの素晴らしさについて、一言だけいただけますか?

監督: あの、ここにいない俳優についてはあまり言及しなくていいのかなと思ったんですけれども、ソン・ガンホさんというのは韓国を代表する名実ともに代表する俳優だと思います。私とは、作品としてはこれが3本目になったわけなんですけれどもソン・ガンホさんというのはソン・ガンホさんにしかできない演技というものがあるのではないのかなと思います。私は魔性を感じる俳優がとても好きなんですけれども、ソン・ガンホさんの場合は普段は魔性を感じるのではなくて、現場で感じるというよりもお酒を飲んだ時に魔性を感じられる、そんな俳優さんです。

チョン・ウソン、イ・ビョンホン、キム・ジウン監督

この後のフォトセッションは、次の会場への移動のため、ほんの2~3分でしたが、びしっとポーズを決めてくれました。作品への思いがしっかり語られ、中身のぎゅっと詰まった大阪記者会見でした。

もう1度、撮影の苦労話や作品の見所などをしっかり理解して映画館へ行けば、何倍も楽しめることでしょう。

文字に起こしてみると、3人で答えているのに、どの質問でも分量のほとんどがビョンホン氏の長~い(いや丁寧な)受け答えで埋まります(笑)。通訳さんや記者は必死です。(もちろん幸せな苦労ですが。。。)

映画の成功を祈ります

連日の過密スケジュールで膨大な数の取材だけでも十分過酷なのに、ビョンホンさんウソンさんには慣れないTVのバラエティ番組への生出演も加わって、心身共にへとへとだったはずです。配給会社の思いに答え、自分たちが一生懸命撮った映画に俳優ファン以外の一般の人もたくさん見に来てくれるようにと、このスケジュールを受け入れて、淡々と真摯にこなしていた姿に胸が熱くなりました。

27日、28日の先行上映会に集まった観客のほとんどが、映画は昨年の韓国公開以来どこかでとっくに観たのだけれど、生で俳優さん監督さんの姿を一目拝みたい一心の熱烈なファンの皆さんだったとは容易に想像できます。まわりのご家族、お父様、ご主人、息子さん、ボーイフレンド、お友達、同僚、その他通りすがりの方にも勧めて映画館をいっぱいにしましょう。ファン層を広げる絶好のチャンスだと思います。今まで韓国映画を観たことがなかった人達にも、たくさん楽しんでいただける映画だと信じています。

GOOD BAD WEIRD グッド・バッド・ウィアード

新宿バルト9、TOHOシネマズ シャンテほか全国でロードショー公開中
提供:博報堂DYメディアパートナーズ、CJ Entertainment
配給:CJ Entertainment、ショウゲート
公式HP:http://www.gbw.jp/
作品紹介記事はこちら

シネマジャーナル本誌77号(10月発行)にも関連記事が掲載されます。

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(文:瀧澤 写真:瀧澤、下里、景山)
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