シビれるほどにかっこいい男気の世界を描いた傑作『ザ・ミッション/非情の掟』(1999)から7年。ジョニー・トー(杜[王其]峰)監督がふたたびアンソニー・ウォン(黄秋生)、フランシス・ン(呉鎮宇)、ロイ・チョン(張耀揚)、ラム・シュ(林雪)の渋〜いオヤジ4人を結集して、泣くほどかっこいい映画を撮ってくれました。それが『エグザイル/絆』(12月6日(土)シネマスクエア東急、シアター・イメージフォーラムほかにて公開)です。
ガキのころからのダチで裏社会に生きる5人の男たちが主人公。仲間の一人ウー(ニック・チョン:張家輝)がボスを殺り損ねたことから、二人はボスの命令で彼を殺すために、二人は友として彼を守るためにウーの元へとやって来ます。ウーは殺られる前に妻子に金を残したいといい、彼らは協力することにするのですが・・・
狭い空間で様々な立場の人間が入り乱れて繰り広げられる銃撃戦。気心のしれた仲間たちのじゃれ合い。サイモン・ヤム(任達華)扮する非情なボスの狂気。リッチー・レン(任賢齋)扮する輸送車警備隊の吹くハーモニカの音色。緊張と弛緩のバランスがとにかく絶妙。マカオが舞台なんだけど、思いっきりウェスタンという摩訶不思議な世界。出てくるすべての人物造形が鮮やか! 脚本なしで撮り始めたなんて信じられないほど、そぎ落とされて無駄がない!! とまあ、書きたいことは山ほどあるけど、ネタバレしてはいけないから書けないというジレンマに陥ってもだえております。とにかく観よ!面白い映画とはこういうものだ!!と声を大にして言いたい。『ザ・ミッション/非情の掟』とは別の物語ですが、ゆる〜い繋がりがありますので、前作を鑑賞してから観ると、なお一層楽しめます。去年の東京フィルメックスでは招待作品として上映され、観客賞にあたるアニエスベーアワードを受賞しました。納得の受賞です。
さて、先頃主演の二人、アンソニー・ウォン(黄秋生)とフランシス・ン(呉鎮宇)が来日し、11月2日(日)に記者会見、3日(月)に試写会の舞台挨拶に立ちました。アンソニー・ウォンは『インファナル・アフェア 無間序曲』や『頭文字<イニシャル>D THE MOVIE』で来日していますが、フランシス・ンは2001年の『ザ・ミッション/非情の掟』公開にあわせての来日以来では? 二人そろっては初めてです。記者会見でも舞台挨拶でもその名(迷? いや珍?)コンビぶりは遺憾なく発揮されていました。
2008/11/9(sun)
12月に公開される『エグザイル/絆』の主演俳優、アンソニー・ウォン(黄秋生)とン・ジャンユー(呉鎮宇。フランシスが英語名だが、どうしてもわたしには違和感ありなのでジャンユーと書かせてもらう)の来日記者会見が11月2日都内ホテルで行われた。
60ほどの用意された椅子が足りないくらいの取材陣。残念ながらテレビカメラは入っていなかったが、録画している媒体もあったようなので、動画で観ることも可能になるだろう。
少し遅れて始まった記者会見。とにかく二人の発言がまじめなのか、ふざけてるのかわからず、とても楽しませてくれるものだった。
黒尽くめの衣装に黒いサングラス姿のアンソニーは、映画の登場人物そのもの。一方、長髪でサングラスをかけたジャンユーは少しほっそりして若々しい。いつものこわもての感じより、ソフトでこんなにかっこよかったんだと見直してしまった。
開口、日本語での挨拶をした二人。
撮影中の楽しいエピソードを聞かれると、アンソニーはジャンユーが車を岩にぶつけてガソリンが漏れ出して,あわてて皆で逃げ出したことや、ジャンユーが寒い屋上の撮影の時、羊しゃぶしゃぶや臘腸飯(中国ソーセージをのせたもの)を作ってくれたので、皆太ってしまったことをあげていた。
一方ジャンユーは、共演者の林雪(ラム・シュー)の赤いパンツのエピソードを紹介。
怪我をしないために危ないシーンで履いてるように占い師から言われていたのだが、椅子から飛び降りるシーンで怪我をしてしまった。なんと、その時は赤いパンツを履いていなかったとか。
またロイ・チョン(張耀楊)にカンフーハッスル(功夫)の大家のおかみさん(小龍女)とあだ名をつけて呼んでいたという。長い髪の毛にカーラーを巻いてくわえタバコで立ってる姿がそっくりだったかららしい。(その姿を想像しただけで笑えてくる)
撮影中つらかったことは撮影期間が9ヶ月と長かったこととジャンユー。何しろ自分達は黒社会映画の重要な役者達だから、9ヶ月間も他の黒社会映画が撮れないと香港映画界にも、香港市民にも大損失だとまじめな顔で答えてる。
確かに二人のほか、サイモン・ヤム(任達華)、ロイ・チョン(張耀揚)ニック・チョン(張家輝)と、香港黒社会映画には欠かせない役者ばかりだもの、彼らが拘束されてては他の映画会社は大変だったろう。でもあのジョニー・トー監督では、誰も文句言えないのでは。
アンソニーは、この映画がストーリーも脚本もなく、どんな役かの説明もなく悩んでしまった。他の3人からもどうなるのか毎日聞かれて困ってしまったと言う。
どうやらアンソニーが 色々他の役者たちに監督の意図することを代わりに伝えていたようだが、このことを聞かれると監督に直接聞く勇気がなかったとジャンユー。それにアンソニーは教えたがりだから、聞かれると喜んで教えてくれたからと。
長い撮影期間の暇つぶしも、アンソニーが精進料理をご馳走したり、皆でカラオケなど出演者たちは中々仲良くやっていたようだが、監督にはあまり交流がなかったと言ったのは、冗談なのか、それとも本当にトー監督って怖いのか。マジで聞いてみたいものだ。
こわもて姿のアンソニーが時折見せる笑顔がとてもかわいらしく、答える合間に二人が目と目で合図してる姿がなんとも微笑ましい会見であった。
しかし、アンソニーが先輩風をふかしていたが実際の年齢は同じはず。1961年9月生れのアンソニー(1962年説もあるが間違いらしい。)と1961年12月生れのジャンユー。どちらが老けすぎてるのか、若作りしすぎなのかわからないが、違いすぎの外見にはいつもびっくりさせられる。(ちなみにアンディ・ラウは同い年、トニー・レオンは一つ下)
『ザ・ミッション/非情の掟』(原題:鎗火 1999年 日本公開 2001年)の続編といわれているこの作品は、とにかくオヤジたちがかっこいい映画。ジョニー・トー作品が大好きな人にはたまらない作品だろう。
記者会見写真集 | ||||
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2008/11/9(sun)
渋いオヤジ俳優好きのわたしにとっては、二人がそろって来日なんて、ありえないうれしさ。前売り券を買うとファンの集いに応募できると知り、脊髄反射で買って応募したクチであります。ファンの集いは定員40名のところ、1000名以上の応募があったということで、わたしは見事にはずれましたが、この日の舞台挨拶付き試写会の招待券がもらえました。ところが舞台挨拶取材のお話が図らずもやってきて、結局取材で入ることに。間近で二人のおかしなやりとりを見られた(といってもほとんどレンズ越しになっちゃうんですが)のは、大変うれしいことでした。会場の一ツ橋ホールはぎっしり埋まり、中にはアンソニーのうちわを手に待ちかまえるファンも。この日の司会は香港カルチャーライターの水田菜穂さん。楽しい舞台挨拶が期待され、始まる前から熱気に包まれておりました。
以下、黄=アンソニー・ウォン、呉=フランシス・ン
このあと花束贈呈とフォトセッションがありました。花束贈呈ではフランシスがプレゼンター役のスタッフをハグして、会場からはキャ〜!!!という悲鳴が。役得すぎる…。フォトセッションでは、カメラマンから「もう一度腕組んで!」というリクエストに、え”〜という顔をしながらも、しっかり応えてくれました。そしてムービー用に手を振り始めたところで、フランシスが突然アンソニーにキスの強襲! ムキャァ〜〜〜〜〜!(舞台挨拶写真集をご覧下さい)
舞台挨拶写真集 | ||||
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