女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第26回 香港電影金像奬授賞式レポート

2007年4月15日(日)、チムサーチョイの香港文化センターにて香港電影金像奨授賞式が行われました。
レッドカーペットや授賞式のエピソード、受賞式後のニュースなどから面白かったものや心に残ったものを簡単にまとめてみました。
なお、本誌70号にもレポートを掲載しています。ここにはない写真などもありますので、そちらも是非ご覧下さい。

受賞結果の表はこちらにあります。

ラウ・チンワン
ラウ・チンワン 初の最優秀主演男優賞受賞!
テレサ・モウ

テレサ・モウ
早く来すぎるこの癖直さなくちゃ…

ALIVEと仲間たち
ALIVEと仲間たち

クォン・サンウ
クォン・サンウ
プレゼンターとして

イザベラ・リョン
イザベラ・リョン
期待の香港女優

星光大道(レッドカーペット)

レッドカーペットに一番乗りしたのは、昨年の助演女優賞受賞、今年は『大丈夫2』で主演女優賞にノミネートされているテレサ・モウ。「早く着き過ぎちゃって、車の中で時間をつぶして来たのよ」と語る彼女。授賞式が待ちきれない様子でした。

『四大天王』のAliveは黄色の2階建てオープントップバスに30人ほどの仲間と一緒に乗り、チムサーチョイの街に向かってウホウホと吼えながらのド派手な登場。

ファンがレッドカーペットの中まで入り込んで大混乱になったゲストのクォン・サンウの登場もすごかった。彼が到着した瞬間、大きな悲鳴があちこちから聞こえ、言われなくても誰が到着したのかすぐわかりました。

『イザベラ』で主演女優賞、『妄想』で助演女優賞ノミネートのイザベラ・リョンは仲良しのシャーリーン・チョイとジェイシー・チャンを真ん中に腕を組んで登場。両手に花状態のジェイシーが落ち着か無そうにしているのがかわいかったです。

そして、『プロジェクトBB』のマシュー・メドヴァデフ。映画では赤ちゃんでしたが、レッドカーペットを母親に手を引かれてちゃんと歩いてます!かわいい!目の前でインタビューを受けている母親が目を離した隙に(?)手を振ってみると、じーっと愛くるしいお目目でこっちを見つめてくれました。

マシュー・メドヴェデフ
マシュー・メドヴェデフくん
エリック・ツァン
エリック・ツァン
ハリウッドへ行った仲間たちも、みんなで香港映画を盛り立てていこう

エリック・ツァン冒頭スピーチ

恒例のエリック・ツァンの冒頭スピーチでは、『インファナル・アフェア』のハリウッドリメイク版『ディパーテッド』がオスカーを受賞した例を挙げ、今年の香港映画に対する世界の注目度が上がった事を喜びました。反面、香港の映画館が年々減少しているのは、観客が映画館ではなく、自宅のテレビでDVDやVCDを借りてきて楽しむようになったからだと述べ、「トニー・レオンやアンディ・ラウはテレビスターではなく、映画スターだ。テレビで見るならTVB(香港の民放テレビ)で撮ればいい。映画館がなければ、映画は見られないのだから」と観客に映画館へ足を運ぶようにと訴えました。

ン・ギント
新人賞を受賞したン・ギントーくん
プレゼンターは大Sと小S。右はギントーくんのお母さん

大Sと小S
レッドカーペットでの二人

バービー・スー、シーディー・スー姉妹

最優秀新人賞のプレゼンターは日本でも人気の大S・小S姉妹。妹で妊娠中のシーディー・スーが、「今年の新人賞候補、『父子』のン・ギントーはたったの9歳、『プロジェクトBB』のマシューなんて撮影時1歳にも満たなかったのよ。それなら私のお腹の中の子供の成長過程を超音波で撮って『プロジェクト胎児』って映画にしたら、マシューよりも若い新人の誕生よ。でも、パトリック・タン監督が撮りたいというのなら、『母子』というタイトルにしてもいいわね!」とテンポの良い会話で会場の笑いを取ったまでは良かったものの、肝心の金像を受賞したギントーくんに渡し忘れる、というハプニング発生!ギントーくんのスピーチ後に金像を渡して事なきを得ましたが、見ている方はハラハラでした。

ダニエル・ウー
新人監督賞を受賞したダニエル・ウー
「僕らは未來を心配している」

ALIVE
ALIVEの墓碑の前でパフォーマンス

ダニエル・ウー新人監督賞受賞

香港芸能界の裏側をリアルに撮った映画『四大天王』で新人監督賞を受賞したダニエル・ウーは、「この10年、新人賞、主演男優賞と何度かノミネートされたけど、賞を取れたのは今回の監督賞が初めて。職種変えたほうがいいかな(笑)。この映画を撮った理由は、みんなの目をもっと香港芸能界に向けたかったから」と挨拶。最後に彼女のリサに英語で感謝の気持ちを述べました。

同じく『四大天王』で最優秀主題歌賞にもノミネートされているALIVE(ダニエル・ウー、テレンス・イン、アンドリュー・リン、コンロイ・チャン)がジェイシー・チャン含む30名ほどの仲間を率いてノミネート曲の『阿當的抉擇』を熱唱。これがALIVEとしての最後の活動との意思表示か、ALIVEの名前が刻まれた大きな墓石の前で歌う彼らは、まるで卒業パーティを開いているかのように大盛り上がりでした。

よく見えなかったのだけど、彼らの中に『プロジェクトBB』 にも出演している葉山豪もいたみたいです。

ン・ギントー
祝賀会会場に現れたン・ギントーくん。
かなりお疲れ

史上最年少受賞 ン・ギントー

新人賞と助演男優賞をわずか9歳で手にしたギントーくん。受賞後のインタビューでは「Wiiのゲームプレーヤーとゲームを10個、いや、賞を2個獲ったから20個買ってもらうんだ」と子供らしく喜びを表現していたようですが、夜11時頃に家族と祝賀会場に現われたギントーくんはかなり不機嫌な様子。次々と浴びせられるフラッシュにもウンザリ顔。風邪をひいている上、一日中緊張しっぱなしで大人でも疲れるだろうに、ここまで報道陣の要求に応えて笑顔を振りまいていただけでもたいしたもの、と思っていたら後日新聞のインタビューに「だって、弟がインタビューされたがっていたのに誰もかまってあげなくて機嫌悪くなっちゃうし、足も捻っちゃってパパが一晩中弟を抱えて歩かなきゃいけなかったんだよ」とのコメント。

天才子役のギントーくんは、弟思いの優しいお兄ちゃんでもあるようです。

フォック・シーイン
フォック・シーイン SEXY!

スー・チー
スー・チーの背中

ケリー・リン
ケリー・リン

カリーナ・ラウ
カリーナ・ラウ
透けて見えそう…

アニー・リウ
アニー・リウ 大胆!

ジョウ・シュン
最優秀助演女優賞 ジョウ・シュン

今年のベストドレッサーは誰?

金像奨授賞式翌日に紙面をにぎわすのはそう、女優さんたちのファッションチェック。

背中が大きく露出したドレスを無難に着こなしたスー・チーや、そのまま童話のお姫様になれそうな程美しかったイザベラ・リョン、胸が露出しすぎて目のやり場に困ってしまったフォック・シーインなど、並み居る強敵を押しのけて人気が高かったのは、『父子』で助演女優賞にノミネートされていたケリー・リンと、報道陣の注目を一身に集めていたカリーナ・ラウ。グッチの超ミニスカートに眉前&さらさらおかっぱヘアーで現れたアニー・リウも目立ってたな。報道陣の「ちょっと回ってみてください!」との要求にこたえて、くるくる回ってました。

新聞で「男性はみんな黒服ばかりでチョコレートみたい」と評されていた男性部門ですが、なかなか個性的でしたよ。アーロンのジャーヘッドも見事でしたが(雑誌では河童頭と書かれていた)、ジェイの着こなしも面白いものでした。黒いタキシードに極細のタイ、個性的な指輪。そして、新しく買ったという白黒の靴。この靴とそれを指摘された時の嬉しそうなジェイが私のツボに妙に大はまり。でも、残念なことに翌日の主要各紙では特に触れられていませんでした。

アーロン・クォック トニー・レオンとカリーナ・ラウ
ジャーヘッド アーロン・クォック  トニー・レオンとカリーナ・ラウ
アン・ホイとアンソニー・ウォン  ジェイ・チョウ
アン・ホイとアンソニー・ウォン  ジェイのファッションチェック

プレゼンターのアンソニー・ウォンの格好もかわいかったです。彼はいつも個性的なファッションですが、今回は他のみんなが黒いタキシードだというのに、彼は股とお尻の所に金ラメの入った派手派手のジーンズに黒いサングラス。一緒に壇上に上がったアン・ホイ監督に「どうして私の息子みたいな格好しているの?」と突っ込まれていました。

ジェイ・チョウ
ジェイ・チョウ 調子いまいち
ジェイ・チョウ

ジェイ・チョウ、コン・リーとの約束忘れる

ジェイと言えば、もしコン・リーが主演女優賞を獲ったら、仕事で来られない彼女の代わりに金像を受け取って一言挨拶するつもりだと、レッドカーペット時のインタビューで答えていたのですが、いざ主演女優賞が発表されると、主題歌賞を受賞して感極まっていたのか、はたまた風邪のせいで頭がぼうっとしたか、コン・リーの名前が呼ばれたのに気が付かず、プロデューサーのビル・コンが壇上へ上がる事に。後でそれを記者たちに指摘されて「本当にコン・リーが受賞したの?」とびっくりしていたジェイでした。

ラウ・チンワン
ラウ・チンワン やった〜!
ラウ・チンワン

感動のラウ・チンワン受賞

過去7度も主演男優賞にノミネートされ、8度目の正直でやっと影帝に輝いたラウ・チンワン。誰もがその実力を認める素晴らしい俳優なだけに、彼の名前が呼ばれると会場は割れんばかりの拍手。喜びでいっぱいの彼の姿に感涙した方も多いのではないでしょうか。授賞式後、祝賀会会場にエイミー夫人と現われたチンワンは、報道陣の「喜びのキスを!」という言葉に応えてキスしたり、金像を持ってポーズをとったりと終始ご機嫌。

祝賀会に顔を出した後は、夫人と仲良く手をつないで会場を後にしました。

ショウ・ブラザーズのスターたち
ショウ・ブラザーズのスターたちと共に

イーソン・チャン
イーソン・チャンのパフォーマンス

アニタ・ユン
アニタ・ユン
お母さんになりました

映画界に偉大な功績を残したランラン・ショウ

今年の授賞式では、各部門の発表の他に映画界に偉大な功績を残した人物に送られる世紀影壇成就大奨や専業精神奨の発表がありました。

世紀影壇成就大奨を受賞した、ランラン・ショウは18歳から映画業に携わり、後にショウ・ブラザーズを興して千を越す映画を後世に残した他、最新の設備、各分野における人材育成にも力を入れ、香港映画界の発展に大きく貢献しました。応援にはチェン・ペイペイやラウ・ガーファイ、ティ・ロン、デヴィッド・チャン、ゴードン・チャンなどなど、ショウ・ブラザーズ映画で活躍した名優・監督たちが駆けつけました。本人は百歳(!)のご高齢ということで息子のショウ・ワイミンが代理で金像を受け取りました。

そのショウ・ブラザーズの下でメーキャップ・アーティストとして活躍したマン・ユンリンが専業精神奨を受賞。現在彼女は『赤壁』の撮影のため中国へ行っているということで、チョウ・ユンファがプレゼンターとして彼女に金像を渡したビデオ映像が流れました。彼女とユンファの初仕事は『傾城之恋』。「あのころは1日に3本も(かけもちで)撮って大変だったわね〜」とほのぼのと昔を語っていました。

その他、歌手のイーソン・チャンがこの一年に亡くなった全ての映画業界の方々に捧げるとして『夕陽無限好』を歌ったり、昨年子供を産んで母となったアニタ・ユンが登場し「ファンというのはスターを支持し、励ましていくものであり、スターを脅かす存在であってはならない。私はアンディ・ラウを永遠に支持します」と語り、最近ファンの起こした騒動で心を痛めているアンディ・ラウに応援のメッセージを送りました。

バリー・ウォン、ウォン・ティンラム
こちらは親子
ラム・チーチョン
ぼくは関係ありません

親子三代?

司会のラム・チーチョンが「(ぼくは)この2人と血縁関係では全く関係ないんだけど、体型では親子だろうと良く言われるんだ」と言って紹介したのは、最優秀監督賞のプレゼンターとして登場したウォン・ティンラム、バリー・ウォン親子。父親のウォン・ティンラムが、自らの監督作品『家有喜事』で1960年くらいに東京で行われたアジア映画祭にて最優秀監督賞を受賞したけれども、実はこの映画は自分にとってはまあまあの出来。逆に良く撮れたと思った映画『野[王攵]瑰之恋』は賞をもらえなかった、という話をすると、息子のバリー・ウォンがすかさず「どうりで僕は賞を獲れないはずだ」と恒例の自虐ギャグをかまして会場の笑いを誘いました。


ツァン・ボウイー
去年は父が変なこと言ってすみません


ニック・チョン
セリフ忘れた〜

がんばれ、ニック・チョン!

今年の司会は父親のエリック・ツァンからバトンタッチされた娘のツァン・ボウイー、『少林サッカー』のおデブことラム・チーチョン、『エレクション2』で助演男優賞にノミネートされたニック・チョンの3人でした。今回初司会のニック・チョンは助演男優賞の事で頭がいっぱいで台詞を忘れたり、他の2人との掛け合いについていけなかったりといろいろ失敗はしたものの、2人がうまくフォローしていた感じです。残念ながらニックは落選してしまいましたが、『黒白道』『エレクション2』『放・逐』と立て続けに素晴らしい演技を披露しているニック。これから金像の常連になる可能性大です。

★取材後記★

パトリック・タム
パトリック・タム監督

『父子』が作品賞・監督賞・助演男優賞・脚本賞・新人賞の五部門を制した今年の金像奨。
パトリック・タム監督が17年ぶりに監督復帰を果たした作品がこの快挙というのは香港映画界にとって、とても明るいニュースだと思います。

でも、冒頭のエリック・ツァンの挨拶にもあったように、最近は市民の映画館離れが進み、映画館の数も減り、香港映画界はとても厳しい状態です。今年1月には金像奨を創設した雑誌『電影双周刊』が印刷費用を捻出できずに発行停止(廃刊ではなく、現在スポンサー募集中)になりました。

今年の金像奨スローガン、「薪火相傳(次世代へのバトンタッチ)」とはうまくつけたもの。ここ数年で驚くほど成長したイザベラ・リョン、今回2つの賞を受賞したン・ギントー、突飛なアイデアで人を驚かせるダニエル・ウー、初脚本で脚本賞を受賞したティン・ホイリョンなどなど、彼ら新しい世代の努力で今後の映画界が勢いを盛り返すように期待しています。さて、私も自分に出来る事の一つとして、せっせと映画館に通わなければ!

(文・写真:阿嵐、写真:阿梅)

本誌「シネマジャーナル」及びバックナンバーの問い合わせ:
order@cinemajournal.net
このHPに関するご意見など: info@cinemajournal.net
このサイトの画像・記事等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。
掲載画像・元写真の使用を希望される場合はご連絡下さい。