女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『ウィンター・ソング』

 金城武、情けなくも美しいあなたに萌えた

◆ 作品紹介

◆ 来日イベント&記者会見レポート

ウィンター・ソングチラシ画像

◆ 作品紹介

『ウィンター・ソング』(原題:如果・愛)
監督:陳可辛(ピーター・チャン)
脚本:林愛華(オーブリー・ラム)、杜國威(レイモンド・トー)
撮影:鮑徳熹(ピーター・パウ)
音楽:金培達(ピーター・カム)、高世章(レオン・コー)
振付:ファラー・カーン(FARAH KHAN)
出演:金城武、周迅(ジョウ・シュン)、張學友(ジャッキー・チチュン) 、池珍煕(チ・ジニ)

<ストーリー>

上海の撮影所に天使 (池珍煕)が降り立つ。彼の役目は人間に、誤って切り捨てた人生のフィルムを返してあげること。そこには、映画への情熱と自信を失いかけている有名監督のニエ・ウェン(張學友)、主演女優で恋人のスン・ナー(周迅)、そして主演男優のリン・ジェントン(金城武)の3人がいた。
スンとリンは、かつて恋人同士だった。10年前、リンは北京で映画監督を目指す学生で、ある日スターを夢見て、踊り子をするスンと出会い、恋に落ちる。しかしスンは、自分の夢のために彼を捨て、リンはこの10年、片時も彼女を忘れられずにいた。ところが、再会したスンはまるで記憶を失ったかのように、彼を無視し、リンはあの愛の記憶は幻だったのかと苦悩する。同時に、2人の関係は撮影するミュージカル映画のストーリーとぴたりと重なっていた。役柄を通して本心を伝えてくるリンにスンの心は揺れ、ニエもまた彼女の心変わりを感じて揺れ始めるのだった。

2005年/香港/カラー/ドルビーSRD/ビスタサイズ/109分/日本語字幕:水野衛子
提供:角川ヘラルド映画、東宝
配給:角川ヘラルド映画

★11月、有楽町スバル座、TOHOシネマズほか 全国ロードショー

『ラブソング』から約10年を経て陳可辛監督が撮る待望の長編作品が、ミュージカルと聞いたときは驚いたし、ちょっと心配にもなった。昔のハリウッド的ミュージカルを思い浮かべたので、それまでの監督の作風と結びつかなかったし、配役を見ると張學友の歌の上手さが突出していて、他の3人が見劣りしてしまうのではないかと思ったのだ。それに、個人的にミュージカルが苦手ということもあった。

しかし、陳可辛監督はわたしの貧困な発想など軽〜く飛び越えて、再び彼らしい切ない男女の愛の世界を作り上げていた。ミュージカルと言っても、映画の中でミュージカル映画を撮る設定で、物語そのものが歌と踊りで繰り広げられるわけではない。しかし、劇中劇の心情は彼らのそれと重なり、絡み合う2重構造になっている。そのあたりが、脚本も映像も巧みで楽しめた。

陳可辛監督は役者の魅力を最大限に引き出すことで定評がある。今回も、4人の主役それぞれの持ち味が良く生かされている。周迅は年齢不詳で小娘にも小悪魔にも見え、田舎でも大都市でも違和感なくはまる存在感が見事にはまっている。周迅も金城武も歌は特別上手くはないが、その素直な歌い方がかえって役柄に合っていて良いと思ったくらいだ。チ・ジニは中国語に大変苦労したらしいが、声が良いし、登場人物の中で唯一、暖かい光を放つ存在である役柄が、彼の明るい笑顔とよくマッチしていた。張學友の歌の素晴らしさは言わずもがなだが、映画監督役がそんなに上手くて良いのだろうかという思いもある。わたしはきらびやかな、ハリウッドと言うよりボリウッド的なミュージカルシーンを楽しみつつ、3人の、特に金城武扮するリン・ジェントンの切なくやるせない思いに涙した。そして、張學友の優しい歌声に包まれながら、主人公たちが歩み出す新たな一歩に、目頭を熱くしながらも暖かい気持ちになった。

金城武は、彼自身の個性を滅し、肉体改造までして別人になりきるタイプの役者ではない。しかし、彼の個性を生かした役柄であったり、監督に愛され、撮影現場の良い空気に包まれると、誰にも真似できない輝きを放つ俳優だ。今回、記者会見の様子を見る限り、監督とも共演者とも相当に良い関係を築いて撮影ができた様子。それはそのままスクリーンに反映されている。その内なる光が最大限に解き放たれていた。わたしは『ルパン三世 カリオストロの城』で、クラリスを見た石川五右衛門のように「いい・・・」と思わず呟いてしまった。はっきり言って、彼の役リン・ジェントンはこれでもかと言うほど情けなく、めめしい。あれでは映画監督になんてなれなくて当然とまで思ってしまう。しかしそんな男を、かくも美しく、純粋に魅せられる人が他のどこにいるだろうか。

彼もこの10月11日には33歳になった。すっかり大人の落ち着きと、スターオーラをますます身につけ、しかも以前より俳優業に一層の熱意を持っているように感じる。今は一年に一本ほどのペースでしか出演していないが、これから働き盛り、男盛りのはず。もう少し前に出て、アジアの映画を牽引する力になって欲しいと切に願う。(梅)

『ウィンター・ソング』来日イベント&記者会見レポート

金城武、ジョウ・シュン、ピーター・チャン

去る9月14日(木)、丸ビル1階のMARUCUBEと丸ビルホールにて、ファンイベント&記者会見が行われました。ファンイベントの後の記者会見は、中継でMARUCUBEのスクリーンに映し出され、観ることが出来るという、ファンにとっては大変嬉しく、珍しい趣向が凝らされていました。

登場を待ちわびるファンたち

カメラマンたちは、まず7Fの記者会見会場での場所を確保後、1Fのファンイベントの会場へ移動し、陳可辛監督、周迅、金城武の3人がやってくるのを待ちました。会場は見渡す限り女性の99%金城武ファンで埋まり、上層階の会場が見える場所にも、女性ファンがビッシリ! 何しろ来日してファンの前に姿を見せるのは『LOVERS』以来2年ぶり。ファンの飢餓感がひしひしと伝わってきます。

少し離れた場所で、悲鳴のような歓声が上がり、3人の登場を伝えてくれました。3人は会場のファンの前をゆっくりと歩き、2カ所で立ち止まってマスコミのカメラにポーズを取ってくれました。その合間に、握手してもらえるファンも。彼女たちは舞台からは遠い位置でしたが、ラッキーでしたね。以前よりも金城武自身が主導的に、周囲に気遣いをしながら動いている印象でした。

上の階もビッシリ、ファンで埋まる

3人が舞台に上がるとカメラマンは7Fの記者会見場に移動しなくてはならず、イベントの模様が見られなかったのが残念でした。

さて会見場へ戻ると舞台の前に白い布が下がっています。会見はこの布をスクリーン代わりに、映画の中の記者会見シーンを映しだし、シーンの終わりに布が落とされ、そこには本物の監督と出演者たちが座っているという、これまた趣向を凝らしたスタートとなりました。張學友(ジャッキー・チョン)がいないのが、ちょっと寂しいですけどね。

それでは会見の模様をお伝えしましょう。











金城武、ジョウ・シュン、ピーター・チャン
お三方登場















金城武
金城武















上の方にいるファンを見上げる
上の方にいるファンを見上げる















大歓声の中、イベント開始
大歓声の中、イベント開始















ピーター・チャン
陳可辛(ピーター・チャン)監督
















ジョウ・シュン
周迅(ジョウ・シュン)














金城武
結構、語る















ジョウ・シュン
女優の風格















金城武
スタア

* ご挨拶 *

監督 みなさん、ご来場ありがとうございました。こうやって私の映画を携えて、また日本、東京に戻ってこられて非常に嬉しく思います。前回日本に来たのは、確か4、5年前だったと思います。今回、私の新作『ウィンター・ソング』というのはラブストーリーでありまして、1つの冬じゃなくて、2つの冬をまたがるストーリーです。是非、みなさんに楽しんでいただければと思います。

金城 こんばんは。本日は『ラブソング』じゃなくて(笑)、『ウィンター・ソング』の記者会見に、いらっしゃって下さってありがとうございました。先ほど監督が仰ったみたいに、ぼくたちはもうこの映画のおかげで、アジアの色んな国やベネチアに行って、ま、あちこち見てきて、一生懸命宣伝したんですけど、今回やっと東京、日本に、しかもふさわしい(冬の)時期に、この作品が上映できることを、ぼくも含めみんなすごく喜んでいるので、凄い期待しています。よろしくお願いします。

周迅 みなさん、こんばんは。日本に『ウィンター・ソング』を持って来ることができて、大変うれしく思っています。この映画は私たちにとっても、とてもとても特別な作品で、監督、そして金城さん、そして私にとって、本当に忘れ難い思い出の作品です。もう2年も前に撮ったのですが、毎年冬になると北京で私はこの映画のことを思い出します。皆さんにも気に入っていただけるよう、願っています。どうぞよろしくおねがいします。

* 質疑応答 *

司会 ものすごく豪華なセット、ミュージカルにふさわしい世界、そして俳優さんがまず豪華、お話が豪華、そしてラブストーリーが切なく、美しくて、もうたまらないです。女性としてはクラクラしましたね。ということで、今回のラブストーリーをお撮りになって、本人としては、愛のすべてを出し尽くしましたか?

監督 実は、私はこの作品だけではなくて、すべての作品に自分なりに愛を出したいと思っています。とはいえ、やはり今回の作品は、私にとって特別な作品となっています。私だけではなく、私の周りのスタッフにとってもそうです。構成的に見れば、私の前の作品『ラブソング』と似ていますけれども、感情的にはかなり違います。今回の作品は感情をもっと深く掘り下げ、誠実に表した作品だということです。
表面的には美しく華やかなミュージカルであると同時に、ある男が、昔、愛を失って傷つき、一方女性の方は、自分の道を邁進していこうとしているストーリーが展開していきます。ですから、甘さよりも、むしろ苦さがにじんでくる作品だと思います。また、撮影では、みんな知恵を出し合って、台本に関してもセリフに関しても、撮影の期間中、様々なアイデアを出してくれました。ですからこの作品は、私1人の作品というよりも、みんなの努力の結果です。

司会 金城さんにですが、今回もの凄くエモーショナルというか、深くて、そして厳しくて激しくて、切なくて、いろんものがたくさん入っているラブストーリーだと私は観たんですが、演じている金城さんは、この役にすーっと入ることができたんですか?

金城 ええ、ぼくはやっぱり現場の感じと、監督と役者さんとのやり取りの中で、その雰囲気を感じながらでしか、あまりやり方がわからないんです。
今回はストーリーが、一番最初に見た台本からはどんどんと情が深くなっていく方向で進んでて、そのことでやっぱりお互いが感じてること、表現したいことは同じなんだなというのを、自分は確信できました。今まで自分は、役作りっていうスキルをどう使うかわからないので、読んだ本、感じたもの、自分が見たことのある雰囲気を、なるべくその空気に溶け込んでやるしかなかったのですが、今回はなんとなく、そういう自分の演技の仕方について、監督さんからは、自信をもらったっていう感じ。やっぱりこういう風に感じながらやっていいんだというのを。それが凄く嬉しかったですね。

司会 演じていらっしゃるときは、気持ちが痛かったですか? それともとても優しい気持ちになりました?

金城 結構なんか切なかったですね。ぼくも何故かわからないんですけど。多分その理由の1つは、監督がなるべく順撮りという方法でこの映画を撮ったから。もちろんなかには飛ばして撮ったものもあったけど、ほとんどが順撮り。
ぼくたちはまず10年前の北京のシーンから撮り始めて、その時ってのは、一番惚れている、一番この人を抱きしめていればいいな、という気持ちでした。あと多分その雰囲気、周りの世界の色、氷の上、雪とか、すごく自然に自分がそれを感じることができたし、もちろん監督の解説と、周迅さんの演技がお互いになんか響きあえることができました。その初めがあったので、徐々に順撮りしていくと、じゃあ、この感じ、こんなに思ってた感情をどう今度は恨むか、に変えるっていうのがありましたね。

司会 ありがとうございました。そして周迅さん。先ほど、私にとって特別な作品だとおっしゃいました。どういう面で特別なんでしょう?

周迅 特別と言いましたのは2つありまして、1つには今回は演技だけではなくて、歌を歌ったり、ダンスを踊ることによって、このヒロインの内心のいろいろな矛盾した気持ちを表現することができましたので、それは私にとってもめったにない機会ですし、難しかったし、そういう意味で特別な経験でした。
それからもう1つは、やっぱりその気持ちなんです。本当に監督に、金城武さんと一緒に芝居をさせていただいて感謝したいのは、毎回金城さんを見るたびに、私は彼女がどんなに辛い思いで、でも自分の夢のために彼を捨てる決心をして、彼との関係を絶ったのか、いかに大きな決意をしたかということを、つくづく感じましたので(笑)、それを表現することができました。
更には、この映画は劇中劇があり、私たちは劇の中でも役者を演じるんですね。しかも現実のストーリーと劇中劇のストーリーが曖昧模糊となって、どっちがどっちかはっきりしないところがあるというのも、また珍しいことなので、特別でした。

司会 そのあたり、とてもファンタジーであり、ミステリアスであり、また惹きつけられる大きな見どころの1つですね。ありがとうございました。周迅さんは声がとてもセクシーですね。さ、それでは皆さまからのご質問をいただきましょう。

Q 周迅さんに質問です。スン・ナーを演じられて、同じ女性として彼女の生き方をどのように感じますか。ご自分と似ている部分がありますか。

周迅 私もこの映画を撮っているときに、結末で、私の役スン・ナーは一体どっちを選択するのかについては、私としては、後の10年に知り合った男性、つまりニエ監督の方を選びたいと思っていたんです。しかし、監督の処理は、まったく皆さんに答えをゆだねるような結末だったと思います。
それから私自身、役者をやっていると、役と自分との境目がないというか、常に自分と役の間を行ったり来たりしているような、そういう感じがあるんですね。今回はさらにこの映画で私が演じたスン・ナー自身も役者で、劇中劇で役を演じていて、わたしの感じていることと同じようなところがあります。その辺で、彼女のその矛盾した気持ちというのが私にもよくわかりました。

司会 金城さんは何かご自分と重なる部分というのがございました? 演じた俳優さんの中で。

金城 ありますね、やっぱり10年前と10年後の恋愛に対する感じ方、あと、どれだけもっと広い目で1つのものを見られるかっていうこと。
ぼくがやっている役の彼は、10年前というのは、自分から見たものしか大事にしようとしてない。10年通して、やることをして、それによって自分が学んでいって、人生観が変わっていく。そこらへんが自分の年とすごくあっているなあって。そういう変化が自分にもあったので、それを感じながら、すごくオーバーラップはしていた。
悲しいシーンは自然とそういう感じになったり。で、そろそろ撮影が終わりに近づいたときは、うーん、なんかもう、この芝居が終わるのはすごく切ないなあっていうのがあって。普段ももちろんそれはあるんですけど、芝居の中の芝居の役も同じような気持ちだったので、なんか多重にそれがオーバーラップして感じた。

司会 ありがとうございます。では、次のご質問どうぞ。

Q. 金城さんに質問です。今回ミュージカルということで、美声を披露されているんですが、歌の面で苦労された点を聞かせてください。監督にも質問です。すごく映像美が豪華絢爛で美しかったんですが、一番こだわりのある部分を聞かせてください。

金城 歌を歌うことに関しては、今回はそんなに個人的には大変な経験はなかったです。とてもスムーズにできました。
自分が今回この映画で一番心配したのは、「あの、踊り〜を踊るんですか?」っていう(笑)。ぼくは踊りが上手ではないので、それだけが、もしもあったら、ちょっと大変かなあと思ったけど、ま、ぼくの役はちょうど、そんなにその方面を担当しなくてよかったので、歌だけで。
歌は、オペラみたいな歌い方じゃなくて、役の中の歌い方でOKだったので。ほんとは、そういう(オペラ風)のも試してみたけど、やっぱり役とちょっと違う。張學友さんは、もっとなんか、おおーっ!という、役柄の色でいいんじゃないのというのがあったので。
一番最初に芸能活動を始めたときは、アイドル歌手としての活動期間があって、そのときに自分が経験したことのある歌い方を、普通にレコーディングで録音しました。でも、今回の録音してるとき、自分が持ってた気持ちはちょっと面白くて、歌手として歌うのじゃなくて、役の中の人物として、この1曲1曲の歌詞は全部セリフなんだなっていうのがありました。監督も毎回そこで一緒に録音の監視をして下さって、「あ、今歌ってるのはこの役なんだな」という気持ちをすごく感じました。

司会 監督、映像のこだわりは。

監督 ご質問の答えに入る前に、先ほど、金城さんと周迅さんへ質問したことで少し補足したいと思います。
まず周迅さんですが、彼女はスン・ナーという役をやっています。私は普段の彼女を知っていますが、私が理解している限り、彼女とスン・ナーとは大分違います。彼女は仕事よりも愛を選ぶ人だと思います。ですから、この映画に対しても、彼女なりのぬくもりを持ち込んで、スン・ナーのキャラクターを大きく変えてくれたと思います。スン・ナーという役は、彼女とは対照的に非常にクールで残酷な一面も持っていますが、周迅さんの演技のおかげで、ほろ苦い味わいと、観客の心を奪い、感動させるようなことも非常に多かったと思いますので、感謝したいと思います。
冬の北京で撮られていることや、ストーリー展開もあって、この映画に特別な雰囲気をもたらしています。
また、映画の撮影期間中、私たちは常にディスカッションを重ねて、アイデアを出し合ってきました。脚本は毎日のように変わりました。そういったディスカッションを通じて、私は役者達との距離が非常に縮まったと感じました。これほど、近距離で役者達と交流できたのは、初めてだと思います。ラブストーリーにもまさる、温かい交流ができたと思います。ですから、映画を撮っていながらも、まるで現実のような感じさえしていました。
もちろん、武さんを私は良く知っているわけではありませんが、しかしこれだけハンサムな方ですから、現実の中では女性に捨てられるなんてことは絶対にありえないと、私も彼に言いましたが(金城くん、首を振り、会場笑)。ただし武さんの映画に対する思い入れには、非常に特別なものがありました。本当に説得力のある演技を見せてくれましたし、彼のおかげで、このジェントンという役は、もっと広い幅を持たせてもらいました。こういうプロセスもありまして、私にとってこの作品は忘れ難いものになると思います。

司会 で、映像についてお願いします。

監督 もし映画に多くの魔術がもしあれば、なんでも自分のしたいことができるわけです。今回、私はクリストファー・ドイル、ピーター・パウ、ハイ・チョンマン、ファラ・カーンといった、素晴らしい才能の持ち主たちとチームを組んで撮影することができました。だから、この映画は豪華絢爛に仕上がったわけですね。でも、私が思うには、映画の舞台よりも、その中から映画がみなさんに伝えるメッセージが非常に大切だと思います。
今回ミュージカルということもあって、とてもリアルな映画のセリフとはメッセージの伝え方の違いがあると思います。歌を通じてそのドラマチックなスタイルを生かし、実生活の中では、また普通の映画の中ではなかなか言えないセリフを言わせたりしています。
例えば、映画の一番最後で、武さんがスン・ナーに「北京を忘れないで」と言うセリフがあります。しかし現実では、私たちは普段はそのような会話はしません。まあ、友人に「私を忘れないで」とは言っても、北京とかどこかを忘れないでとは言いません。ただし、私は昔からハリウッド映画をずっと観て育ったわけですが、昔のハリウッド映画にはそういった手法がありました。こういった非現実的な、普通の生活とは少し離れた、そういった雰囲気のセリフが、ミュージカルでは使えます。映像的な美しさや歌や踊りがあるというだけではなく、ミュージカルを通してこそ表現できるセンチメンタルな感情を伝えるということが、今回の映画をミュージカルにした理由です。

Q. 主演のお2人にお聞きします。ディスカッションの多い現場ということですが、お2人で話し合いをしたようなことはありましたか。お互いに共演をした印象をお聞かせ下さい。また張學友さんと共演した印象も聞かせてください。

周迅 そうですね…、私も金城さんもあまりすぐに熱くなれないタイプですが、金城さんは私より更に熱くなりにくいタイプなので(笑)、私のほうが積極的にならなくてはいけなかったと思います。実際に北京で撮っているときは、具体的なシーンを話すというよりは、いろいろ別のことを話したり、あるいは普段のいろいろなものに対する考え方とか見方を話すことによって、より相手のことがわかったと思いました。彼のひととなりも、そういうことでよくわかりました。
どういうセリフ、どういうシーンについて話し合いをしたか、もう既にあまりはっきり覚えていないのですが、その話し合いの過程は、とても楽しかったです。それに、わたしたちは同じ星座ですからね。考え方が似ていて気持ちがすんなり通じ合うんです。
張學友さんは、本当に中国でも香港でも台湾でも、みんなが尊敬している歌手であり、俳優でもありますし、また実際、彼のひととなりも本当に素晴らしいのですが、私は実は彼と共演することに大変緊張していました。
というのは、それまで会ったこともなかったですし、実は私も子どもの頃から彼の歌を聞いて育ったようなものですから、一緒に共演することに緊張していたんですが、本当に親しみやすい人でした。そんな私が演じたので、スン・ナーが、彼に対してもっとすごく年上のお父さん、お兄さんであるような安心感をちょっと持ってしまったものですから、それが出てしまっていたんじゃないかと思います。けれども、本当にいい共演ができたと思います。

金城 えー、周迅さんがおっしゃったみたいに、同じ星座なので(笑)、なんかもう、彼女とほとんど同じことを繰り返して言っちゃうと思うので、ぼくがかすかに覚えてる、彼女が言ってないような、現場の感覚やどういうふうに台本を話し合ったかを紹介します。
現場の人がライティング、カメラ、全部セッティングが終わってて、残るはもう、ぼくたちを待っているっていう時が何度もありました。その時ぼくたちは何をしてるかというと、楽屋で1つのソファに、監督真ん中にして、3人でこうやって寝そべって、「ここはやっぱ、これじゃおかしいよ」とか、ずっとそうやって台本を考えてるのを、スタッフみんなが待ってた、ということがありました。
それは、別に誰もプレッシャーなくて。監督はどっちかというと、真ん中に座ってて僕らのやりとりを聞いていた。
それで、ぼくが感じた「彼女はこう動いた方が気持ちがあるな」って言う前に、彼女は「こう動きたい」って言ってくるので、自然と「ああ、彼女もおんなじような気持ちなんだな」というのを感じました。
ただ、なんか、その絵が、ぼくは「ちょっとかわいいなぁ、俺ら」と思って(笑)。スタッフの人には申し訳ないんですけど(笑)。でも、多分そういうやりとりがあったので、あの寒い季節の中でも、ほんとに温かくできたかなぁ。
普段は仕事が終われば、みんなで食事に行ったり。ぼく達はあまり北京とかのレストランを知らないので、全部彼女が、もうちゃんと毎晩どこに食べに行くか決まってて、それでおいしく食べて、ワイワイ過ごす。そういう大切な、温かい思い出がたくさんあります。
この映画に関しては、ぼくはほとんどが周迅さんとの演技なんですよね。張學友さんとは、すれ違うワンカットしかないのかな。あと、韓国のチ・ジニさんとも同じように、ほとんどないです。ジャッキーさん、チ・ジニさんとは、プロモーションしてる時に、ぼくは初めてずっと一緒に行動してるので、あんまり…。
もちろん張學友さんは、彼女も言ったように、ぼくも彼の歌を聞いて育った感じなので、すごく尊敬してて、一緒にこうやってあちこちプロモーションのおかげで行けるのは、楽しかったです。
現場でぼくが一番幸せに感じたのは、多分映画会社は役者さんのプライバシーを尊重してくれて、1つ1つ薄い布ですけど、楽屋を区切って下さってました。そのぼくの部屋の横に張學友さんがいて、見えないんですけど、歌声が聞こえるんです。彼は歌が好きな方でずーっと歌ってて、ぼくはずっと壁に耳を当てて聞いてて、ぼくの会社の方と「もうかったね、もうかったね(笑)、なんかただで聞けてよかったね」って(会場笑)。普段、コンサート行かないと聞けないものを、こうやってずっと聞けて(笑)、これがすごく、なんか、ああ、いいなぁと思いました(笑)。すみません、こんなことで。

司会 意外な、現場では、皆さんスターなのに、そういうことってあるんですね、実際にね。さ、それでは最後のご質問、いただきましょう。  

Q. まず金城さんにお伺いします。役作りが進むにつれて、撮影中は周迅さんと口を利きたくないほど役柄に取り込まれたとお聞きしましたが、そのあたり、実際どうだったのでしょうか。

金城 うーん。実は北京での10年前のシーンの撮影が終わってから、彼女と初めて仲良くなれる自分がいたんですよ。誰にも言ってないんですけど(笑)。
撮影が終わったらもう、早くその場から逃げたい気持ちが、ぼくはあったんです。彼女が彼女の友達と仲よくしゃべっている姿はちょっと見たくないなと、思うときがありました。
10年前の撮影が終わって、再会してからのシーンの時は、なるべく長く彼女と一緒にいて、仲良くなれたというのがありましたね。その時は、切ない気持ちになりたかったっていうのが、多分あったんですね。彼女を見つめていると、彼女が笑う。笑っている彼女を見ているときに、でもぼくが原因で笑っているのじゃないから、ちょっとイヤだなという気持ちがありました。なぜ、そんな自然な気持ちになったかわかりません。

Q. 例えば実際に、もし金城さんご自身が、10年前にこの映画のようにフラれた場合、10年待ち続けることができますか。

金城 映画の中は、待ち続けたっていうか、そうじゃない部分がありますから。多分、現実の自分は、待つ気持ちはないですね(笑)。
ぼくはなんていうか、縁任せな気持ちがすごくあるので。多分くっつくのも縁だし、離れ離れになるのも、縁だと思うんです。もちろん、別れたらまた再会する縁もあるかもしれませんけど、でもそれはその時々のタイミングが合えば、一番、幸せだけど、誰もが無理する必要はないと思います。

Q. じゃ、結構あっさりした感じですか、恋愛に関しては(笑)。

金城 いや、でも先ほど言ったみたいに、多分20歳の頃の自分と30歳の頃の自分は、違う感覚を持っています。今の方が多分、あんまりしがみついて大事にしようとは、しなくなるかもしれない。その代わり、ほんとに自然体でいられたら一番いいかな、と期待する気持ちはありますね。
多分、20歳前後の頃の恋愛というのは、もうしがみついて、もっともっと嫉妬するかもしれないし、もっともっと、なんかもう、「ぼくはお前のだ、お前は俺のだ」という気持ちになるかもしれない。今は多分もう、そんな気持ちはなれないですね。ま、仕事もあるし(会場笑)。

司会 大人になりましたね。

Q. お2人に聞きたいのですが、金城さんには2年ぶりにこうして日本にやってこられたということで、日本が変わったなぁとか気になるニュースとかがあれば仰ってください。また周迅さんは、日本の印象をどう思われたか。先ほどファンがいっぱいいらっしゃっていましたが、その辺はどう思われましたか?

金城 日本に対しては、久しぶりにこの『ウィンター・ソング』で来れるだけでも、やっぱりうれしいなぁと思います。
でも、この2年間、あちらこちらで日本の作品の台本を含めて、いろいろ見たりお話もしていて、ずっとそういう意味では触れ合っているので、2年ぶりっていう自覚はそんなにないんですよ、ぼく自身は。
ずっと、チャンスがあればいつでも、日本の映画会社の方達と、台本やりとりしたり、意見を交わしたり、こういう映画撮りたいですねえとか話してきました。それから、日本の作品を観たり。最近は日本の、自分の国の作る映画がすごくクォリティもよくて、ボックス・オフィスもすごく良くて、日本映画がどんどんまた昇っている姿を見ると、すごくうれしく思う。それはもっともっと、才能のある方たちの出てくるチャンスで、新しい映画界を作っていけるかなと思うと、ワクワクしてますね。

司会 はい、楽しみですね。さ、周迅さん。

周迅 実は私、すごく東京、日本が好きで、東京しか来たことがないんですけれども、ぜひ京都や北海道にも行きたいなと思ってます。
仕事以外でも、ときどき東京には来ているんです。東京ってほんとにすべてが細やかで、すみずみまで行き届いていて、そのことにとても感動します。とにかく欲しいものは何でも手に入る、というところですね。
それから、さっき1階で、武さんのファンのみなさんが泣いてるのを見て、それもすごく感動しました(笑)。

司会 最後になるんですけど、ずーっとこの中継を、その涙を流したファンの皆様もきっとスクリーンをぐうーっと見つめていたと思うんですが、カメラ目線で、お1人ずつ、会場の450人のマスコミの皆さんと、それから1階でごらんになっているファンの皆様のために、何かこう、メッセージをいただけたらと。まず、ピーター・チャン監督からお願いします。

監督 これで3回目ですけれども、皆さん、改めてご来場ありがとうございました。ぜひ、この映画を楽しんでいただきたいと思います。ありがとうございました。

司会 (1階は)すごい声出てると思いますよ。金城さん、お願いいたします(笑)。

金城 (片手をあげて振りながら)やあ(笑)。ええと、こんな形なんですけど、ほんとに、ほんとにもう、感激しています。もうしばらくの辛抱なので、上映をぼくも待ち遠しいんですけど、是非、ご覧になってください。
多分その時は、東京も、雪降るかな? そしたら、もっと、ぼく達が先ほど語っていたことを、監督さんが演出したかったこと、役者が伝えたいことを感じられる。みなさん、それぞれの違う愛に対する違う感じ方を、是非、映画館に行って感じてみてください。今日はありがとうございました。

司会 周迅さん、お願いいたします。

周迅 (金城の真似をして手をあげて)ハイ(笑)。みなさん、そんなに金城さんが好きならば、是非、この『ウィンター・ソング』を観て下さいね(会場笑)。『ウィンター・ソング』を観て気に入ったら、是非、またあなたのお友達にこの映画を観に行くようにと言って下さいね。みなさんがこの映画を気に入ってくれることを願っています。ありがとうございました。

司会 どうもありがとうございました(拍手)。

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(取材・写真・まとめ 梅木)
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