女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

おもいっきりユ・ジテ贔屓な

シネジャ的『美しき野獣』特集

2月11日(土)から公開される韓国映画『美しき野獣』。主演は「悲しき恋歌」「天国の階段」などのTVドラマで日本でも人気の高いクォン・サンウと『オールド・ボーイ』で鮮烈な印象を残し、若き性格俳優としての地位を確立したユ・ジテ。
クォン・サンウはこの作品でこれまでの王子様的イメージを払拭する熱演を見せていて話題だ。映画の内容的にも確かに主役はクォン・サンウと言え、ほとんどの媒体はクォン・サンウしかとりあげていない。
しか〜し! ユ・ジテを忘れてもらっちゃ困る! 映画ではサンウが「動」ならジテは「静」の役回り。2人揃ってこそ互いを輝かせることができるというもの。ですから、シネジャではおもいっきりユ・ジテ贔屓に特集を組んで、及ばずながらもユ・ジテ氏を応援しちゃいます!

作品紹介

美しき野獣 チラシ画像

監督:キム・ソンス
撮影:チェ・サンムク
音楽:川井憲次
出演:クォン・サンウ、ユ・ジテ、オム・ジウォン、ソン・ビョンホ

過激な行動が目立つが不器用で純粋な刑事チャン・ドヨン(クォン・サンウ)。冷静沈着、妥協を許さないエリート検事オ・ジヌ(ユ・ジテ)。ドヨンには病気の母と出所してきたばかりの義弟がいる。その義弟が何者かに殺され、彼は怒りに燃えて犯人を捜す。一方オ・ジヌは一度は逮捕したものの、自分を左遷に追い込み、軽い刑での服役で出所してきたユ・ガンジン(ソン・ビョンホ)の再逮捕に人生を賭けていた。
全く異なる道を歩んでいた2人は偶然にも同じ男を追っていた。そして決して悪を許さないという純粋さにおいて共通していた。2人は手を組み、ユ・ガンジンを追い詰める。しかしあと一歩と思われたところで、思わぬ落とし穴が待ち受けていた。

クォン・サンウがこれまでのイメージを払拭すべく、体当たりでこの役を演じていて、その気迫が伝わってくる。アクション・シーンもキレがある。ユ・ジテ演ずるオ・ジヌは、自分は法の番人であると自負しながら、彼もまた自らの欲望を追い求めているただの人間で、次第に追い詰められて冷静さを失っていってしまう。その過程を的確に表現していて素晴らしい。
悪役のソン・ビョンホも家庭で見せる父親・夫としての穏やかな顔と、社会的に見せている表の顔、そして裏切り者や敵に見せる裏の顔の変わりようが鮮やかで、巨悪としての存在感を見せていた。 役者陣が非常に頑張っていると感じるのに対して、脚本と監督の演出には若干の不満を感じてしまうのが残念。それはわたしがバディ・ムービーとしての娯楽性を期待して観たからかもしれない。これは力がものをいう現代社会への怒りと嘆きの映画だ。(梅)

公式 HP >> http://www.beautiful-beast.com/

2005年/韓国/125分
配給:東芝エンタテインメント
★2月11日(土)より、シネマスクエアとうきゅう、東劇ほかにて全国ロードショー

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こんなジテ君知ってますか?

なんだか、出る映像、出る雑誌・・・そりゃ、わかっちゃいるけどサンウ贔屓だ!
そんなわけで、こんなジテ君を知っていますか?

ユ・ジテ

<ユ・ジテ プロフィール>

ユ・ジテ YooJiTae 劉智泰
 1976年4月13日ソウル生まれ
 AB型 187cm 75kg(ベスト体重?変動あり)
 母親と二人家族
 趣味 写真撮影、音楽鑑賞

1993 現代舞踊大賞受賞
1995〜98 ファッションモデルとして活動 パリコレにも参加
(モデルセンター男性新人モデル賞、写真家協会ベストモデル賞受賞)
1998 『さらば美しき人(バイ・ジュン)』でスクリーンデビュー
2000 青龍映画祭人気スター賞受賞
壇国大学演劇映画科卒業
2001〜 中央大学先端映像大学院映像芸術学科映像制作修士課程
2003 初監督作品(ショートフィルム)『自転車少年』制作
(釜山国際短編映画祭観客賞受賞)
2004 舞台進出 二人芝居『津波』
2006 仏クレルモン・フェラン国際短編映画祭 国際コンペティション部門の審査委員
カトリック大社会福祉大学院修士課程入学 出演作品
<TV>
1999 『ラブストーリー(忘れ物)』
<映画>
1998 『さらば美しき人(バイ.ジュン)』
1999 『アタック・ザ・ガスステーション』
2000 『リベンバー・ミー(同感)』『友引忌(ガウィ)』『リベラメ』
2001 『春の日は過ぎ行く』
2003 『鏡の中へ』『ナチュラルシティ』
2004 『オールド・ボーイ』『女は男の未来だ』
2005 『南極日誌』『美しき野獣』
2006 『秋に』

2001年3月『アタック・ザ・ガスステーション』のプロモーションで初来日。 当時韓国では、ハン・ソッキュの人気を抜いたとも言われ、韓国新世代トップスターの先頭を走っていたユ・ジテ。「クローン人間(!!)にして恋人にしたい俳優NO.1」にも選ばれ(ちなみに2位チャン・ドンゴン、3位ソン・スンホン)アイドル人気絶頂、 正に今のクォン・サンウ状態の時期だった。
配給会社も、ファンを対象にHMVでのトークショーや、渋谷PARCO東大門市場でのイベント企画と、力を入れた割には残念というかほとんど人は集まらなかった。今にして思えば、時代はまだ、ということだったのね。

高校時代からモダンダンスに打ち込むが、腰を痛め舞踊家への道は断念。大学入学後は演劇を学ぶ傍ら、雑誌・TV、コレクションのモデルとして活躍。なんでもない立ち姿がきまるんです。さすが。
1998年 『さらば美しき人(バイ.ジュン)』でスクリーンデビュー! が、見事にこける。一週間で打ち切られ観客動員は5000人にも満たなかった。この失敗で一時は俳優を諦めかけたことも。この経験が彼にとって後の作品選びなど俳優としての生き方を決めるきっかけとなったようだ。

若者たちに熱狂的に受け入れられた『アタック・・』や、彼の人気を決定的にした 『リベンバー・ミー』『リベラメ』で一躍スターの仲間入りを果たしたものの、人気が先行し、実力とのバランスをとろうとしていた時期に、ホ・ジノ監督作品『春の日は過ぎ行く』で、一途な青年サンウを演じることになる。
「青春スター」から「俳優」へ、ひとつハードルを越えたといえる作品。

ターニングポイントになったと言えば、なんと言っても『オールド・ボーイ』だろう。 スマートな容姿に穏やかで優しい笑顔、これまでのさわかなイメージを覆し、残忍で執拗な男に変貌を遂げたのだから・・・
最近のアンケートでは「冷血な連続殺人犯が似合う俳優NO.1」って・・・。

映画に熱情を傾けるだけでは留まらない彼の創作意欲は、昨年、映像・演劇制作会社「有無飛」を立ち上げる。
監督として2本目の作品「盲人はどんな夢を見るのでしょうか?」を撮り、12月にはソウル大学路の300人弱のアート系シアターで2度目の舞台を踏んだ。 ユ・ジテ原案による「6分の6」は、ペントハウスの一部屋を舞台に繰り広げられる恐怖と喜悦のゲーム、ロシアンルーレットを題材として富と権力を痛烈に風刺する内容。
2005年12月24、25日と観劇ツアーに行ってきました。
登場人物は6人。韓国語はわからないが、ぐんぐん引き込まれる。ショッキングな題材であることだけが目を逸らせない理由ではなさそう。脇の役者さんの確かな演技に支えられてはいるが、ユ・ジテも芝居を引っ張り、残酷で哀しい人間を魅力的に演じていた。ユ・ジテの叔母を演じる中年女性、見たことあるなぁ〜と思ったら『吼える犬は噛まない』『親切なクムジャさん』のコ・スイでした。存在感ありました。 でも彼女、まだ20代なんですよね。

『美しき野獣』の日本プロモーションを終え、すぐにフランスへ飛び、短編映画祭に監督兼審査委員として参加。さぞや映画三昧の至福の時を送ったことでしょう。
また勉強好きな彼は、今年から大学院で児童福祉を学ぶ学生さん。
6月には『秋へ』が公開。3年ぶり、待望のラブストーリー。楽しみです。

個人的にお勧めの【作品紹介】

『さらば美しき人(バイ・ジュン)』

ジュン(ハ・ラン)とチェヨン(キム・ハヌル)、トギ(ユ・ジテ)の三人の心を満たしているのは音楽、PC、ドラッグ。 自由奔放に生きるジュンを愛するチェヨン。 そんなチェヨンを愛するトギ。 高校卒業直前、ジュンが突然の火事で死ぬ。大きな喪失感に陥る二人。結局チェヨンとトギは恋人の関係になるが、ジュンの幻影から逃れられない・・・
セックス、アルコール、ドラッグ、妊娠、堕胎、となかなか内容はハード。 感覚的な映像と音楽、実験的な要素の強い作品で、当時は頼りない演技、頼りない演出と酷評されたようだが、若者の空虚な心や喪失感が妙に心に残る。 後に『フー・アー・ユー』を観て、あ、この世界は・・・と確認したら同じチェ・ホ監督の作品だった。作品全体に漂う独特の浮遊感はこの頃から。

『リメンバー・ミー(同感)』

同じくキム・ハヌルとの競演。こちらは2000年第4位の興行成績を挙げる大ヒット。 若者の共感を呼びユ・ジテ人気を不動のものにした。
ソウン(ハヌル)はふとしたことから壊れた無線機を手に入れ、皆既月食の日その無線機を通してイン(ジテ)と交信するようになる。同じ大学に通う二人は会う約束をするが会うことができない。交信するうちにソウンは1979年、インは2000年と違う時間に生きていることがわかる。そして二人はある重大なことに気づく・・・。
彼の作品の中で、一番青春スターしている作品。爽やか青年です。ハ・ジウォンがインの友達以上、恋人未満の役で出演。ソウンの出現に揺れる微妙な心情を好演してます。

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(文:日向夏 写真:梅木)

記者会見レポート

1月26日(木) 13時半〜 於 グランドハイアット東京

 クォン・サンウ、ユ・ジテ主演の話題作とあって集まった記者の数も凄い。開場1時間前に到着したが、すでにスチル・カメラの整理番号は65番。その多くがクォン・サンウ目当てと言って間違いない。ところが並び始めて間もなく、緊急の連絡事項があると呼び集められた。何事かと思いきや、なんと主役のクォン・サンウが体調不良の為に記者会見に間に合わないかもしれないと言う。「えぇ〜!(泣)」という顔の人々。15時から別室でクォン・サンウだけのフォト・セッションを設けるかもしれないが、未確定とも通達された。なかには夜に中野サンプラザで行われるプレミアの取材に注力する為に、引き上げる人も。果たしてどうなる事かと、ちょっと騒然とした一幕だった。

 記者会見は予定通り午後1時半に始まった。司会者からは、クォン・サンウが連日の過密スケジュールで疲れから貧血を起こし、乗るはずの朝一の飛行機に乗れなかったが、今は既に飛行機に搭乗しこちらに向かっているとの説明があった。フォト・セッションは監督、ユ・ジテ、川井憲次の3人のパターンのみと伝えられ、「えー、ユ・ジテだけはなし?」と私はブツブツ。そして3人が登壇して、記者会見が始まった。
(注意!! 若干ネタバレの部分があります。)











キム・ソンス、ユ・ジテ、川井憲次
3人で始まった記者会見
















キム・ソンス
キム・ソンス監督
















ユ・ジテ
ユ・ジテ
















川井憲次
最近アジア映画での活躍が目立つ川井憲次氏
















ユ・ジテ
歌手のようにマイクを持つ
















ユ・ジテ
監督に仕事と映画しか知らないと言われる

登壇者:キム・ソンス監督、ユ・ジテ、川井憲次(音楽)
司会:伊藤さとり

◆ ご挨拶

監督:皆様、本日はこのように沢山の方に来ていただき歓迎していただいてありがとうございます。私はこの『美しき野獣』を監督しましたキム・ソンスと申します。

ジテ:みなさん、こんにちは。ユ・ジテです。今日は本当に沢山の方にこの『美しき野獣』を歓迎していただいて、本当にありがとうございます。このように沢山の方が集まって下さったので、日本でもきっと良い結果が出る事と思っています。わたしはこれからも良い演技がみせられるように努力していきたいと思います。ありがとうございます。

川井:みなさん、こんにちは。今日はお疲れさまです。僕も今回この映画に音楽で参加させていただきまして、とっても幸せです。今日はよろしくお願いします。

◆ 司会からの質問

Q まずユ・ジテさんにお聞きします。今回で13作目の作品ということになり、沢山の映画に出ていらっしゃいます。『オールド・ボーイ』でカンヌでも評価されているわけですが、この映画はどういった思い入れで出演されたのでしょうか?

ジテ:最初にわたしとクォン・サンウさんが一緒に出ると決まったときに、観客の皆さんにわたしたち若い人間の持っている覇気や情熱を見せて、良い評価を受けて認められたいという気持ちがありました。確かに世間の評価や愛情というものは人によって違うと思いますが、その時はそういう気持ちがとても強かったです。できあがった今では、そういった評価よりも、ベストを尽くしたということに自分自身とても満足しています。そして皆さん、この映画を観て気にったらどうか褒めて下さい。もし気に入らないところがあったら、忌憚なく批判していただきたいと思います。

Q 監督はこの作品が長編デビュー作になるわけですが、この映画で描きたかったテーマについてお話し下さい。

監督:この映画は今、力というものが世の中を支配している中で、運命的に出会う3人の物語になっています。スター俳優が出ている単なるアクション映画、バディ・ムービーというものではなくて、わたしたちが生きている中で守るべき事は何なのか? ということを、もう一度考えて欲しいという思いを込めて作りました。わたしたちは生きている中で、守らなければいけないけれど忘れてしまうということは沢山あると思います。例えば愛する人や家庭、社会の道徳や法律や価値といったものは守るべきものなのですが、なかなか守られていないという現実があるので、私たちは今、何を守ったらいいのかということを考えて欲しいと思いました。

Q 川井さんにお聞きしたいと思います。『南極日誌』『セブンソード』など、今や日本映画のみならずアジア映画でも活躍されていますが、今回はこの映画でどのような事を表現しようと思われましたか?

川井:今回、監督からは悲しみの音楽をと言われたんですね。アクションシーンを目立たせる音楽ではなくて、むしろ感情的な悲しみを表現して欲しいと言われました。それで音楽は全体的には悲しみ寄りと言いますか、地味と言えば地味かもしれないですけど、内面に付ける音楽を目指しました。

◆ 記者からの質問

Q (監督に対して)クォン・サンウさんもユ・ジテさんも今回はかなり激しいアクションをこなしていますが、現場でのエピソードがあればお聞かせ下さい。

監督:今回、クォン・サンウさんには本当に危険で難しいアクションをこなしていただきました。ユ・ジテさんの方はアクションよりも感情の表現の方が沢山ありました。感情の起伏の幅がとても大きかったのです。段々と感情が激しくなるその変化を表現するのがとても難しかったと思います。ユ・ジテさんはこの映画を撮る為に10kgも減量してくれました。そして台詞に専門用語が沢山出てきたので非常に難しくて、一所懸命に、部屋に防音装置を付けてまで台詞の練習をしてくれました。クォン・サンウさんは以前からファンの皆さんに、今回の映画で本物の演技を見せると宣言して、その約束を守ろうという意欲に溢れていました。ですから、本当ならスタントマンを使うようなところも、全部自分でやると言いまして、わたしが危ないからと止めたのですが、ファンとの約束を守るんだという意欲で彼はすべて乗り越えてくれました。もし途中で事故でもあったら、今頃記事になっていたかもしれませんが、幸いに事故も無く無事に撮影を終える事ができました。

Q ユ・ジテさんは性格俳優を目指していると仰っていましたが、誰か目指している俳優や今後どのような役を演じてみたいと思っているかをお聞かせ下さい。

ジテ:わたしが性格俳優になりたいといったことについては、次のような経緯があります。映画というものは商業芸術になります。商業映画というのは大衆の中で育っていくものだと思うので、スターと俳優を両立するのは非常に難しいと思います。このような状況で、わたしが目指したいと思ったのは、ユ・ジテという人間が一つの商品になって、その商品を売るという企画に基づいた映画ではなくて、あくまでもユ・ジテの演技そのものに期待をして欲しいという思いを込めて、性格俳優になりたいと以前に言った事があります。
目標とする俳優は、女性ではイザベル・ユペールさん、男性ではジェレミー・アイアンさんのような知的なオーラを持っている俳優になりたいと思っています。日本の俳優では、高倉健さんや役所広司さんが好きです。

Q 結末にやり切れなさを感じたのですが、あのような結末にしたいきさつと、ユ・ジテさんはどのような感想をお持ちなのでしょうか?

監督:結末については韓国でも色々な意見が聞かれました。わたしの考えを端的に表すとしたら、「嘘をつきたくなかった」この一言に集約されると思います。わたしは韓国人として生きていますが、そのわたしから見ても韓国社会は、なかなか法や正義が守られていないという、非常に残念な現実があります。そして法を守るために闘ったり、その過程で傷を負ったり、挫折したりする人たちの姿も沢山見てきました。ですから、彼らの言葉を代弁できるようなメッセージを込めたいと思って、あのような結末にしたのです。暴力での解決は確かに暴力しか残らないということになりますが、何故このような状況に至ってしまったのか、何が彼らを野獣にしてしまったのかという問いかけを最後に残したいと思いました。

ジテ:この作品は人間が持っている感情が沢山表されている映画で、ヒューマン・ドラマがいきていて、その中には家族愛があったり、バディ・ムービーの要素やアクションも盛り込まれています。しかしジャンルとして一つの型が確立されていたような感があったかと思います。でも、あの結末については決まりきった形ではなくて、何か新しい形を提供し、その枠を打ち破れたような気がしています。そういった意味でわたしはこの結末にとても愛着を持っています。オ・ジヌがユ・ガンジンに対して最後に言う台詞もとても気に入っています。結末について色んな論争が起きていることも知っていますが、本当にわたしにとっては気分の良い論争です。ただちょっと残念なのは、もう少し長く撮ったのですが、編集で短くなっていたことです。

司会:今、お二人のご意見を川井さんは聞いていて、どんな映画の感想をお持ちですか?

川井:僕も結末に関してはある意味とても感動したんですね。というのは、もしもオ・ジヌの立場だったら同じ事ができるのか? そこまでの勇気があるのか?という事を感じました。非常にあの結末は好きです。

Q 今回は静から動へのギアチェンジが凄くて、演技者として素晴らしいと思ったのですが、この映画を撮っていて一番苦労した点と一番見て欲しい点はどこでしょうか?

ジテ:映画というものはどんな作品であれ苦労はつきもので、今回も毎カットごとに苦労の連続でした。しかし今回はキム・ソンス監督、クォン・サンウさん、川井憲次さんと一緒に仕事をすることができて、本当に幸せな思い出が沢山できました。オ・ジヌ役を演じて苦労したことは、マスコミで紹介されたりプレスシートにも載っているかと思うので、みなさんもうご存知ではないでしょうか。この作品を撮っていく中で、わたしたちが一所懸命努力した時間は本当に満足のできるものでした。ですから、また次にも満足のできる映画で皆さんとお会いしたいと思います。川井憲次さんには前の『南極日誌』でも一緒にさせていただいて、いつも素敵な音楽を作って下さるので、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

Q こんにちは、テレビ東京の阿部サンウです。映画を拝見して感動しました。そしてですね、お二人に近づきたくて、今日は2人でこういう格好(映画のポスターのクォン・サンウとユ・ジテと同じような服装)をしてきたんですけど、似てますでしょうかね? (壇上の照明が明るくて記者席が見えにくそうだったが、何とか見えて「はい」と答えるユ・ジテ)
質問ですが、渋い検事役が大変印象的でしたが、役作りで大変なことはありましたでしょうか?(質問者は若手芸人で番組収録を兼ねているようだった)

ジテ:先ほどと似たようなご質問かと思いますが、今回は検事役をやるにあたって、背広をどう着るかについて悩みました。この話は冗談半分、本気半分なんですが、どんな役でもキャラクターにあった衣装というものがあると思います。それと同時にどのくらいの体重にするかということもあるのですが、今回はオ・ジヌ検事に合うような衣装を考えるのに苦労しました。でもこれは今回に限らず、どんな役でも同じことだと思います。まぁ、こういった話は同じ服を着ているわたしたちで、後で焼酎でも飲みながら語り明かせればと思います。(笑)

監督:質問してくれた方、次のわたしの映画にカメオ出演でどうか出て下さい。

質問者:We are japanese comedian! Very very famous! (会場笑)どうもありがとうございました。

司会:プレスの中にも書いてあったのですが、初めは役作りで太ろうと考えたのに結局10kg痩せることにしたんですよね。オ・ジヌという人物についてどのように分析してそのように変えたのですか?

ジテ:わたしの年齢は数えで30歳になります。しかしオ・ジヌの年齢の設定は30代の半ばから40代の初めでした。そして皆さんご存知かと思いますが、わたしとクォン・サンウさんは同い年です。映画の中では検事の方が刑事よりも年上ということで重厚な雰囲気があったので、それを出す為にちょっと中年太りのような感じで最初は10kgぐらい体重を増やして撮影に臨んで、捜査をしていく中で身体でやつれた感じを出したいと思ったので、少しずつ体重を減らしていきました。本当は中年だから太っているという肉付きに見せたかったのですが、見たところただ太っているだけに見えてしまったので、慌てて一所懸命に体重を落としました。

Q 映画のオ・ジヌとチャン・ドヨンのキャラクターには主演の2人本人のキャラクターが反映されていると聞きましたが、具体的にはどのような部分が反映されているのでしょうか? またユ・ジテさんは監督の答えを聞いてどう思いますか?

監督:もしかしたら2人は違うと言うかもしれませんが、あくまでもわたしの印象を反映させてみました。クォンさんは最初に会ったときの印象があまりスター俳優らしくなくて、非常に気さくで、ちょっと茶目っ気のある、いたずらっ子のようなところもありました。素朴で堅実な青年という印象でした。それと同時に、映画のドヨンの様に少し感情的な部分もあったので、チャン・ドヨンのキャラクターを作るときに彼のそういった面を反映させました。ユ・ジテさんの方は自分の人生、演技、映画に対して自分なりの広い世界感を持っています。そして積極的に生きていますので、そのような姿をオ・ジヌに重ねあわせてキャラクター作りをしました。

ジテ:きっと監督はこういった公の場なので良いお話ばかりして下さったのだと思います。映画の中のオ・ジヌは仕事しか知らなくて、家庭を捨ててまでも自分の欲望や信念を貫こうとしている人物です。まるで砂で作った城がだんだんと崩れていくようで、自分はそうはなりたくないので、その部分は否定したいと思います。

監督:映画の中のオ・ジヌは辛い結末を迎えますが、ユ・ジテさんは実生活でそんなことは決して無いと思います。でも、仕事と映画しか知らない人間だというのは確かではないでしょうか。そしてクォン・サンウさんは母一人、子一人なので本当にお母さんに対して深い愛情を持っていて、それはユ・ジテさんも同じなんです。そういう姿をチャン・ドヨンに反映してみました。

司会:最後に一言ずつメッセージをお願いします。

監督:この作品を日本で公開することができ、このように多くの方に感心を持っていただいて、初監督作品としては本当に光栄ですし、幸せな気持ちでいます。日本の観客の皆さんもこの映画に対して良い印象をもって、感動も沢山味わって欲しいと思っています。この作品は男性的な映画に見えるかもしれませんが、本当に色々な要素を持っています。男性の観客なら男としての人生をもう一度考えることができると思いますし、女性の観客なら母性本能がくすぐられるような様々な感性が盛り込まれていますので、日本の皆さんに伝わって欲しいと思います。本当に心からありがとうございます。

ジテ:先ほど監督が「クォン・サンウさんはお母さんに対して非常に強い愛情を持っている」と仰っていましたが、この映画に出てくる母の姿は監督の実際の話も反映されているところがあります。ですからエンドロールには、「この映画を母に捧げる」という言葉も入っていました。この映画は男性的な部分が強調されていたり、アクションが華やかだったりということはあります。チャン・ドヨン、オ・ジヌ、ユ・ガンジンの生き様が野獣のように描かれている部分もあるのですが、その裏には家族愛が深く描かれています。ですから、男女問わず、老若男女が楽しめる映画だと思いますので、是非多くの方に楽しんで観ていただきたいと思います。今回、クォン・サンウさんが遅れてしまってこの場にいられないのが残念なのですが、あまりその事はお気になさらず、初めに申し上げた通り、もしこの映画が良いと思ったら良い評価を下していただき、もし気に入らないところがあれば批判していただきたいと思います。

川井:本当にこの映画は役者の皆さん命を懸けて、素晴らしい演技を見せています。どうか皆さん観に来て下さい。よろしくお願いします。

監督:一言だけよろしいでしょうか? 今回、川井憲次さんに音楽を担当していただいたのですが、わたしは個人的にこの映画を撮る前から川井さんの大ファンでした。ですから一緒にお仕事ができて本当に光栄に思っています。わたしが考えた以上に素晴らしい音楽を付けて下さって、心から感謝しています。今回は外国のスタッフの皆さんとも交流を持つことができ、彼らにも非常に良い印象を持てました。今後も日韓の間でこのような交流ができるような機会にもっと恵まれればと望んでいます。この映画はクォン・サンウさん、ソン・ビョンホさん、ユ・ジテさん、そして川井憲次さん、スタッフの皆さんが力を尽くして作って下さった映画です。もしこの映画の中に長所があるとしたら、彼らのおかげです。短所があるとしたら、全てはわたしの責任だと思っています。ですから批判はわたしに、褒める点があれば彼らにどんどん言っていただきたいと思います。

さてこれでフォト・セッションかと思って用意していたときに、司会から「ご報告させていただきたいと思います! クォン・サンウさんが間に合いましたので、ご登場いただきましょう!」との声が! そしてクォン・サンウが登場すると会場からは女性の歓声がもれた。登場したクォン・サンウは映画とはうってかわって、全く血の気のない青白い顔をしていた。どうやら本当に貧血気味のようだ。早速、立ったまま挨拶をする。

サンウ:皆さんにお会いできて、非常に嬉しいです。今日は朝起きた段階でちょっと体調を崩してしまい、遅れてしまったことをお詫びします。

深々と頭を下げた後、用意された席に着いて、何か隣りのユ・ジテと言葉をかわしていた。

司会:それではクォン・サンウさんから今回の映画に出演してみた感想を。

サンウ:自分が出演した映画にはそれぞれに意味がありますし、いい作品として自分の記憶に残りますが、今回の作品は、本当に隣りに座るユ・ジテさん、キム・ソンス監督、そしてキム・ソンス監督にちょっと似ていらっしゃる川井憲次さんとご一緒できて非常に良かったと思っています。今までの女優さんとご一緒する映画よりもむしろ幸せな気持ちで、一所懸命に取り組んだ映画です。約6ヶ月間の撮影を経て、その間身体を酷使して、スタントマンも使わずにアクションに挑みました。皆さんに是非、本当のアクションを観ていただきたいという思いからです。自分としては体力的にも苦労はしましたが、非常にいい記憶として残っています。とても水準の高い作品が出来上がったと思っていますので、どうか皆さんに多くの愛情を注いでいただきたいと思います。



クォン・サンウ
血の気がないよ、大丈夫?







クォン・サンウ
遅れて、すみません







ユ・ジテ、クォン・サンウ
同い年の仲良し
キム・ソンス、クォン・サンウ、ユ・ジテ、川井憲次

これで会見は終了となり、フォト・セッションへ。集合写真とクォン・サンウとユ・ジテの2ショットのパターンも加わりますとの説明に、カメラマンたちはみな密かに拍手でした。よかったよかった。やっぱり主役が揃わなくっちゃね。

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(取材:日向夏、梅木 まとめ:梅木 写真:梅木)

美しき野獣 ジャパンプレミア レポート

1月26日(木) 19時 中野サンプラザ

ユ・ジテ、クォン・サンウ、キム・ソンス

数十秒!で完売したという正にプレミアムチケット! ゲットしたラッキーな人だけが観られるという’ジャパンプレミア’は大阪会場と二元中継で結ぶ。

予告編に続き、スクリーンには楽屋からステージへ向かう二人の足元や後姿が 映し出される。暗い場内には赤・青・黄のレーザー光線が縦横に走ると、ざわめく場内。 と、スクリーンにポスターのポーズで決めた二人のシルエットが浮かび上がる・・・ まるでコンサートを思わせる登場シーンに場内は大受け!! ここで監督は舞台袖より合流し、3人による舞台挨拶が始まった。

記者会見から衣装替えしたクォン・サンウ。いくらか顔色も戻ったよう。
「昨年一年間ベストを尽くして作った映画です。皆さんに気に入っていただければ嬉しいです。」
大阪のファンにも
「今モニターで拝見しましたが、皆さんの姿を見て本当に元気が出ました。」
とメッセージを送る。

「チャン.ドヨンは強い男に見えますが、とても弱い部分を持っています。人間が持っている弱い部分に非常に愛着を感じました。 母に対する愛情を表現するシーンは非常に心に響くものがありました。大変な撮影が多く私も怪我ばかりしていましたが、撮影中に元気を出す事ができたのは、皆さんが観に来てくれるだろうと信じていたからです。また良い映画を作りたいという気持ちになりました。 皆さんの姿は忘れずに心に刻んで帰りたいと思います。」

ユ・ジテ、クォン・サンウ、キム・ソンス

ユ・ジテは終始穏やかな笑みを浮かべ、ゆったりと余裕の面持ち。拍手と歓声に
「サンウと一緒なので歓迎されているのかと思っています」
「どの映画でも役作りは大変ですが、この映画は本当に緻密な構成で、その緻密さの中心にいたオ・ジヌの台詞は沢山練習しました。 クライマックスでオ・ジヌの感情が爆発するシーンがあり、そのシーンを効果的且つ、無力的に見せることができるか、その点に気を付けて演じました。『美しき野獣』は特に愛情を持てる作品です。 皆がベストを尽くし、情熱を持って作ったので、皆さんは映画を観てその情熱を確認して下さい。」

いよいよ自分の作品が上映されるとあって、感激の面持ちのキム・ソンス監督。

「私の長編デビュー作になりますが、立派な二人の俳優と一緒に仕事ができただけでも光栄に思います。
言語も違い、文化も習慣も違う所で、映画を通じて他の国の人達と心を通わせる事ができるというのはとても不思議な体験ですし、本当に幸せな思いです。 アクション映画というよりは私達が生きていく中で守るべき価値は何なのか、ということを考えてほしいと思い作った映画です。
クォン・サンウさんはこの映画で非常に危険なシーンを演じていますが、皆さんに嘘はつきたくないと危険をかえりみず一生懸命演じてくれました。 ユ・ジテさんはオ・ジヌの心の変化をどのように演技したらよいのか、本当に悩んで、沢山の努力をしていただきました。二人の情熱、努力をこの映画から感じていただき、皆さんの心の中にずっと残る映画であってほしいと思います。」

ユ・ジテ、クォン・サンウ

映画の中では野性的に見せるため、顔に濃いドーランを塗っていたサンウ。色白に戻った彼が上背のあるジテと並び肩を組むと、まるでジテにエスコートされているようでした。 でも、あのドーラン、妙に顔だけが浮いた感じで、どうなんでしょうか・・・。

ユ・ジテがこだわったラストシーン。編集でカットされたことをかなり残念がっていたのですが、同感です。ユ・ジテ's cutで観てみたい!

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(取材・まとめ・写真:日向夏)
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