女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

チェン・カイコーが描いたファンタジー
『PROMISE』来日記者会見

〜 真田広之&チャン・ドンゴンの中国語が楽しみだ! 〜

1月25日(水) 於:グランドハイアット東京

ゲスト:陳凱歌(チェン・カイコー)監督、陳紅(チェン・ホン:監督夫人で、プロデューサー兼女神”満神”役で出演)、真田広之、チャン・ドンゴン
司会:襟川クロ

PROMISE チラシ画像
©Beijing 21st Century Shengkai.
China Film Group and Moonstone
Productions,LLC.

『さらば、わが愛/覇王別姫』の陳凱歌が、日本・韓国・香港・中国の大スターを起用して作った、壮大なファンタジー『PROMISE』(原題:無極)。真田広之、チャン・ドンゴン、劉[火華](リウ・イエ)、謝霆峰(ニコラス・ツェー)、張柏芝(セシリア・チャン)というキャストは、ほんとに夢のよう! 日本での宣伝では、ニコラスはほんの少し、リウ・イエに至ってはほとんど触れられていなくて、ちょっと淋しいけれど、監督夫妻、真田広之、チャン・ドンゴンの四人が並んだ記者会見は、それはそれは、豪華でした。

まず、入場してきたのは、映画さながらの立派な衣装をつけた兵士たち。ぐっとムードを盛り上げます。この日ちょっと出遅れた私、一番前ながら、端っこの場所しか確保できず、目の前にはこの兵士たちが居並びました。そして、いよいよゲスト4人の登場。監督にお目にかかるのは、2002年の中国映画祭以来。その時上映された『北京バイオリン』に出演していた奥様の陳紅さん。『北京バイオリン』で拝見した彼女より、実物はぐっと若い感じで、透き通るような白い肌。お綺麗。真田広之さんはあご髭が素敵。ドンゴン氏は真っ白のスーツ。それにしても、目の前の兵士たちが、手にした旗を、ドン! と振り下ろす度に、三角の細長い旗がはためいて、向かって一番右端に座っている監督の姿は見えなくなってしまいました。おまけに、一眼レフのカメラが、AUTOのつもりが、マニュアルになっていて、写真はすべてブレブレ。4人の姿は、しっかり私の目に焼きついているのですが、仲睦ましい監督夫妻や、素敵な真田さんとドンゴンの姿をお届けできず残念!

◆まずは4人から挨拶

監督:マスメディアの方には、長い間応援していただいて感謝します。(はいはい、こちらこそ! レスリーを素敵に撮ってくださった監督に感謝しています。)

陳紅:新年のご挨拶を。(日本のお正月はだいぶん過ぎたけど、中国の旧正月はまだだ…)

真田:お忙しい中、ありがとうございます。足かけ2年かかわってきた作品が日本で公開を迎えることになって嬉しいです。(渋くて素敵! 国際派俳優の貫禄がじわっ〜と滲み出てきた感じです。)

ドンゴン:コンニチワ。マタ オアイデキテ ウレシイデス。『PROMISE』を紹介できて嬉しい。気に入っていただければと。声援よろしくお願いします。(う〜ん、優等生の雰囲気!)

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©Beijing 21st Century Shengkai,China Film Group and Moonstone Productions,LLC.

**質疑応答から、印象に残った発言の数々をお届けします。**

★無意識のうちに息はぴったり!

真田:将軍と奴隷のコントラストのバランスが非常に大事だったのですが、意識しないうちに意気投合してましたね。ひとまわり下の、同じ鼠年ということもあったのかも。(ひとまわりも違うように見えない!) それに、お互い中国語を学ばなくてはいけないというハンディを持っている同士、友情をはぐくめたかと思います。自分は落ちぶれていく役、逆にドンちゃんはだんだん上がっていく役だったのですが、半年の撮影の本番のときには、お互い違う言葉という意識はなく、心と心で繋がっていた感じです。

ドンゴン:まったく真田さんのおっしゃる通りです。撮影をスタートする前から通じ合っていた感じです。お互い家を離れて異国の地にいて、中国語を学ばなければならないという共通点があったから、あえて呼吸を合わす必要はありませんでした。真田さんのようないい俳優にめぐり合えて幸せです。心と心の通い合いが大事だと思いました。
(ドンゴンさんの語る傍らで、陳紅さんと話しながらうなずく真田さん。陳紅さんとは、何語で話していたのでしょう?)

★寝ても覚めても中国語!

真田:中国語を学ぶのは初めてで、3ヶ月間日本で特訓しました。発音やイントネーションが難しくて、寝ても覚めても口ずさむしかなかったですね。(夢も中国語になりそう?!) 毎日が受験の気分。現場で出来ないと撮影出来ないので、お尻に火がついて、火事場の馬鹿力でやっていた感じです。ほんとにスキがあれば口ずさんでいました。中国語はシンプルだけど、表現がとても豊か。奥行きの深さを感じました。ちょっとスタッフに言ってみたのが通じた時の嬉しさは格別でしたね。撮影終了後、3週間ほどアフレコのために北京に滞在したのですが、ネイティブに聴こえるまで帰さないと監督に言われました。後半はもう楽しむしかないと、中国語を趣味にしていましたね。

ドンゴン:私も一番大きな悩みが中国語でした。中国の声優にセリフを録音してもらって、ご飯を食べる時にも聴いていました。四声が難しくて、私の声を観客に聴いていただけるか心配していました。

監督:中国語を勉強しようとする人たちにとって、二人は素晴らしい実例です。ドンゴンさんは忙しい方でアフレコで3回程北京に来ていただいたのですが、咳で血が出たこともあるほどでした。真田さんは28日間北京にいて、一日10時間アフレコに臨みました。二人は手に咽喉を潤す薬を手にしていました。

真田:甘〜いシロップですね。

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かろじて撮れた写真!

★語学は完璧を目指せ!

監督:語学を究めるには、完璧を目指すことが大事。私は36歳から英語を勉強し始めました。自慢じゃないですが、今では結構しゃべれます。(う〜ん、耳の痛いお言葉! 何年やっても、自分の意志をちゃんと伝えられない私。)

陳紅:言葉の勉強は努力がもちろん大事。でも、好きなことを一つ見つけるのもコツ。真田さんとドンゴンさんの二人にとっては、それがこの映画でした。作曲家の方たちは、ハリウッドからチームを作ってやってきたのですが、彼らが最初にやったのは、グルメツアー。ある程度経ったら、メニューを素晴らしい中国語で言えるようになっていました。
(俳優を好きになるというのも、多くの人にとって原動力になっていますよね。会えた時に、その国の言葉で話しかけることができるのは格別の喜び♪)

★アジアの力を結集したかった!

監督:今回は最初から中国だけでなくアジアの他の国の力も結集して映画を製作しようと思いました。二人についていえば、彼らの演技というより、二人がまったく違う文化の中でどんな気持ちでやっているかに興味がありました。二人は勇気を持って、違う文化の中で素晴らしい演技を見せてくれました。二人が演技をしているときには、壮絶感さえ感じました。コラボする上で注意したことといえば、現場で私にできることは、年齢が上なので、お兄さんのように見守ること位でした。無歓役のニコラスの言葉を借りれば、「我々はその国の文化を代表して演じているわけではなくて、その役を演じている」と。
(俳優だけでなく、衣装は日本から正子公也を起用。また、製作は、『北京バイオリン』に続き、エルンスト・“エッチー”・ストローのムーンストーンエンターテイメント、音楽には『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のクラウス・デバルトを起用するなど、アジアだけでなく、もっと大きなスケールでハリウッドを越える映画作りを目指した監督の意気込みが感じられます。)

★ファンタジーで新境地

監督のファンにとって、ここまでエンタメのファンタジーを作られたのは驚きです。さて、その動機は?

監督:我々は21世紀を生きていて、映画も変化していかなくてはと。常に新しい創造性を持つことが大事。私も昔のように若さはないけれど、新しいものに挑戦したいと思いました。アジアでは、悲しいイメージの映画が多いけれど、生活の発展と共に、それだけではないアジアがあります。この映画が運命を再考するきっかけになるといいと思います。

★語りつくせない撮影エピソード

撮影時のオン・オフのエピソードを尋ねられた4人。ここでは、言葉が有利な真田さんが率先して、「最初にしゃべらせていただきます」と語り始めました。

真田:現場では毎日800人の本物の兵士がエキストラとして、時には奴隷、時には兵士として、戦闘に参加してくれました。CGナシで信じられないような映像を作ってくれて、モニターを見て、「これ、実写ですよね?」と驚くことも多かったです。ハリウッドだったら、イチからCGで処理してしまうだろうし、日本では、その予算がないだろうし。撮影を通じていえるのは、何より言葉を乗り越えて理解し、尊敬しあえることができたことが、いい人生経験になりました。以上です。あ、以上じゃないですね。語り始めたら、時間が足りないほど、いっぱい詰っているんですけど。

ドンゴン:撮影中苦労したエピソードがたくさんあるのですが、お聞かせして面白いことを。走る場面がいっぱいあるのですが、これは、ランニングマシーンの上で暑い夏の間ずっと走って撮ったものです。その後、『タイフーン』の撮影を控えていて、体重を落とさなければいけなくて、ちょうどよかったんです。

陳紅:役者として私が一番難しかったのは、出番は短かったのですが、中国映画ではこれまでなかった役。「神様なんだから、瞬くな」と監督に言われたのですが、ワイヤーでつるされて、扇風機で煽られる中で、瞬かないというのは大変。でも乗り越えました。製作として大変だったのは、雲南の地温50度を越える暑さの中、数百人の人を引き連れてまとめなければならなかったことでしょうか。

★オフの時は、やんちゃな二人

陳紅:二人とも大物俳優で素晴らしい演技を見せてくれるのですが、オフの時に衣装を脱ぐと、とってもやんちゃで、ユーモアがあって、ほんとに楽しかったです。(隣で笑う真田さん)

中国奥地での撮影のオフの時には、二人はよくキャッチボールをしたりして、子供のように遊んでいたそう。 襟川クロさんから、「大きなお世話ですが、どっちがキャッチ上手かった?」と聞かれた二人。

ドンゴン:私の方が年下で上手いんじゃないかと思ったら、真田さんのボールはずしりと重くて、経験があるようでした。

真田:野球選手の役をしたことがあったので練習したことがあっただけ。何も娯楽設備もないところでしたので、まるで幼馴染か兄弟のような感じで遊んでました。

★次回はコメディーで共演!?

前日の舞台挨拶の時に、再び共演することをプロミスしたという二人。次はどんな形で共演を?

真田:昨日プロミスを交わしたところで、まだ具体的には話していないのですが、今回は歌舞伎でいうと、エロワルという役柄だったので、それを次も極めてみようかなと。彼にはひたすらヒーローを演じて貰いましょう。これは監督に聞いた方がいいかもしれませんね。

ドンゴン:真田さんには、この撮影でいい印象を受けました。6ヶ月というのは長いようで短い。いい関係が出来たので、ぜひまた一緒にやりたいです。今回時代物だったので、次は現代物で!

真田:二人の関係をみてると、次回作はコメディーしかないですね。 (声をたてて笑うドンゴン!)

★同じ女性を好きになったら、争う!

友情をはぐくんだ二人。映画のように一人の女性を好きになったら?

真田:ライバルがドンちゃんなら、すぐ身を引きます。

ドンゴン:ありがたくいただきます。 (陳紅さんも笑う。)

真田:やっぱり勝負しよ!
(ぼそっと語った真田さん。本気で勝負しそう。充分勝負できます! 二人から攻められたら、どっちにしよう! と私も決められない。あ〜、そんな目にあってみたい!)

なごやかな雰囲気の記者会見もあっというまに終って、フォトセッション。椅子を片付けている間も、真田さんとドンゴンさんは、何やら楽しそうにおしゃべりしていました。苦労を共にした二人。もしかして中国語で会話?? 私はまだ映画を観ていないのですが、二人の中国語の発音、なかなかだそう。ほんとに楽しみです。

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©Beijing 21st Century Shengkai,China Film Group and Moonstone Productions,LLC.

●2月11日(土)、サロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にてロードショー
公式HP>> http://wwws.warnerbros.co.jp/promisemovie/

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(取材・まとめ:景山咲子)
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