北極園という言葉を聞くだけで雄大な自然を思い浮かべます。私自身アラスカ北極園の最北地バーローを訪れたことがあり、日の沈まない夏や、バッファロー狩りなどをしてたくましく暮らす先住民の人達にこの映画の主人公ノーマン・ウィンター氏を重ねました。監督自身が冒険家でもあり、迫力ある作品に仕上がっています。今回は、取材はできませんでしたが、アルシネテランの松本様のご好意によりインタビューを載せさせて頂くことになりました。
Q ノーマンとの出会いは?
監督 1999年に犬ぞりでアラスカを移動している最中にノーマンに出逢いました。その際に3日間一緒に過ごす機会があり、彼の哲学など語ってくれました。話を聞いていくうちに彼は本物だと思い、昔から『狩人と犬、最後の旅』のような作品を作りたかったので、翌年の冬にノーマンに映画出演のオファーをしました。
Q ドキュメンタリーとフィクションの境目は?
監督 この2つの境目は難しい。ドキュメンタリーでは撮れない事をこの映画で再現したかった。例えばノーマンが氷水に落ちてしまうシーンなど、ドキュメンタリーでは撮影出来ませんね。この作品は実体験の再現なのです。商業的な派手な演出は避け、自然で起こるであろう姿ということを見せるようにしました。
Q シナリオはどのように作られましたか?
監督 ノーマンと一緒に今まで自分たちが経験した出来事をリストアップして、それをもとに脚本を書きました。
Q ノーマンへの演技指導は?
監督 演技指導ではなく、彼の体験を生かそうとしました。だから俳優としての指導はありませんでした。例えば、かじかんだ手で火を灯すシーンですが、彼は実際身体が冷えてかじかむまで待ってくれたのです。
Q 撮影時大変だった事は?
監督 寒さが大変だっただろうとよく言われるのですが、機材も事前に万全な温度チェックはしましたので、寒さよりもむしろ雪の変化が難しい点でした。犬ぞりで一度雪面を走ってしまったら跡が付いてしまいますし、また犬を扱う難しさや変化しやすい天候など(同じテイクでも光の具合や雪の降り具合が変わってきてしまう)苦労はありましたが、逆に思いもよらぬ良い画が撮れたりもしました。
Q この映画を通して言いたかったことは?
監督 人間が生きているから、映画の舞台を南極ではなくて北極にしました。ノーマンと出会い、彼は自然と人間の調和の象徴的な存在であると思いました。自然や動物を賛美するだけの映画を撮りたかったのでなく、人間と自然との調和を撮りたかったのです。
Q 今後の予定はいかがですか?
監督 3月のシベリア横断で25年間の冒険家としての活動はおしまいになると思います。勿論小さな旅や冒険はすると思いますが、あのような大きな冒険はあれが最後です。次回作はラップランドを舞台にした、トナカイの遊牧民の青年が、トナカイの天敵である狼へ友情を抱く話を考えています。今後は、やはりドキュメンタリーではない、自然との調和を描きたいと思っています。
半世紀に渡ってカナダロッキー山脈で罠猟を続けてきたノーマン・ウィンター氏。ナハニ族インディアンの妻ネブラスカと7頭の犬ぞり犬と共に、自然の生態系を維持することに努め、自給自足の充実した生活を送っていた。猟師をやめ山から街への移住を考えていた2人に、リーダー犬の死がショックを与える。新しい猟犬との出会いと再生の物語。
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガ宣伝[冬]×アルシネテラン
2004年/フランス・カナダ・ドイツ・スイス・イタリア合作/94分/シネスコ/Dolby SR・DIGITAL/カラー
公式サイト:http://www.kariudo.jp/
★8月12日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほか全国順次ロードショー