女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『ミリオンダラー・ベイビー』

モーガン・フリーマン、ヒラリー・スワンク記者会見

2005年5月25日(水)新宿パークハイアット 司会:伊藤さとり

28日の公開を前にカンヌ映画祭参加後、そのまま来日した二人。ムービー、カメラ、記者で一杯の会見場に登場すると、一斉にフラッシュがたかれました。

モーガン・フリーマンは3年ぶり4度目の来日。ヒラリー・スワンクはこれが初来日。大きな花柄の華やかなワンピースで登場しました。作品中では女性ボクサーらしく筋肉質の身体作りをしたようですが、もとに戻ったのかすごく細くて綺麗。それでいてとても芯の強い感じがしました。

ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン  ヒラリー・スワンク

ヒラリー:みなさん今日は会場にお越しいただいてありがとうございました。お会いするのは初めてですね。『ミリオンダラー・ベイビー』のプロモーションで今回日本に来られてとっても嬉しいです。

モーガン:オハヨウゴザイマス。来日は4回目ですが、素晴らしい映画のプロモーションに、こんなに美しい女性と一緒に来られて喜んでおります。皆さま来ていただきましてありがとうございました。

司会 アカデミー賞受賞おめでとうございます(会場拍手)。お二人から見て勝因は何だと思いますか? 

ヒラリー:やはり心に訴える映画だと思うのです。リアルな人々が描かれていて非常に普遍性を持った作品だと思います。 

モーガン:たしかにストーリーに関しては、ヒラリーが先に語ったことと同意見です。アカデミー賞、アメリカの映画賞は伝統的に、動けなくなって車椅子に乗った人がメインキャラクターだとすればたいてい受賞します(笑)。

ヒラリー:監督がイーストウッドというのも勝因の一つじゃないかと思います。

司会 実際に受賞されていかがでしたか?

ヒラリー:大変光栄で、とても驚きでもありました。実はいまだに実感がないので、自分をつねってみたりしています(笑)。一緒にノミネートされた方々はみんな尊敬していますし、信じられなくて夢のようです。

モーガン:もちろん受賞についてはとても喜んでいます。私一人ではなく、クリント、ヒラリー、そして作品そのものでも、いろいろ受賞したことがとても嬉しいです。
ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン  モーガン・フリーマン

Q(英語)試合のシーンがかなりの迫力でしたが、実際にパンチを浴びたことはあったのですか?

ヒラリー:何度もパンチを浴びました(笑)。でもこれは役作りにはよかったのです。本物のボクサーの気持ちがわかりますから。トレーニング中、私のトレーナーは頭の動きが妨げられるからと、フェイスガードをつけさせませんでした。最後の対戦相手役はプロのボクサーなのです。彼女とのシーンで5つの動きがありました。右フックがきたときは必ず下によける、というのを忘れてしまってもろに浴びてしまいました。「パンチを受けたけれど私は生き延びた」というロゴの入ったTシャツを作りたかったです(笑)。

Q 3人の演技のアンサンブルが絶妙でした。共演した感想と、影響を受けた点がありましたら。

モーガン:クリントとは以前も共演しましたので、2回目の機会を得てとても楽しみでした。ヒラリーとは今回初めてですが、作品は観ていましたのでこれも楽しみにしていました。いろいろな方と共演するというのは必ずなにか良い影響を受けるものなのです。たとえばチェスで上手い人とゲームすれば、こちらも上手くなっていくことと同じです。素晴らしい方と共演することで結果優れた作品ができあがってくるのです。  

ヒラリー:ほんとに同じ意見です。モーガン、クリントとの共演は私の夢でした。これまで仕事をしてきた中で最高の体験でした。またぜひ一緒に仕事をしたいです。彼らはほんとに経験豊富ですし、私はいつもこうやって腕をとって「この才能がこちらに来ますように」とおまじないをしたりしました(笑)。 (「痛いの痛いの飛んでいけ」の逆ですね)

Q ヒラリーさんは今回実年齢に近い、たいへんアグレッシブな役をなさっていかがでしたか? 

ヒラリー:マギーは、今まで演じた中で私に最も近い役柄でした。背景も似ていますし、マギーと同じように私もずっと夢を求めてきました。そして私信じる人たちがいたので、ここまで来られてラッキーだったと思っています。マギーの選択については私の意見が反映されているわけではなく、映画の中のマギーを私は俳優として演じました。

Q お二人へ。イーストウッド監督の魅力と、他の監督にはない演出方法がありましたら、お聞かせください。

ヒラリー:イーストウッド監督は才能のある特別な人物だと思います。彼はいつも、自分の仕事は役柄にピッタリの人物を選ぶこと、後はその人に任せるのだといいます。しかし映画を観るたび、彼は私達が知らないうちに、そーっと役にガイドしてリードしてくれているのだというのがよくわかります。俳優を矯正したり、プッシュしたりすることはありません。でも常に見守ってはいるんですね。それが素晴らしいですし、人間的にも素敵な方です。

モーガン:イーストウッド監督は自身が俳優でもあるので、俳優のプロセスを理解しているのが特徴です。彼は映画の方向はこうである、というものを確かに持っています。それぞれの個性を尊重し、私たちに自由を与えてくれることに深く感謝しています。他の監督と違って、「アクション!」「カット!」と言ったりしません。自然にセットに入り込んで芝居が始まっていて、スムーズになんとなく終わるという、非常に自然なやり方をします。

Q 撮影中ハプニング的な丸秘エピソードがありましたか?

モーガン:Bad Question!(笑)。というのは、実際何もなかったんです。監督はいつも準備万端で撮影に臨み、時間厳守ですし、私の知っている限り、予想外のことが起きてビックリしたようなエピソードもないんです。

ヒラリー:私が何度かパンチを受けたことくらいです(笑)。

Q 初来日ということですが、日本の印象を。モーガンさん、お勧めのところは?

ヒラリー:日本はずっと来たかったです。この国についていろいろな話を聞いていたのですが、それが全部本当でした。日本人の方々はとっても優しく心が広くて、そして礼儀正しいです。これまで訪れた国の中でも日本が一番親切な国だと感じています。街も美しいです。しなくてはいけないこと、インタビューが多すぎて(笑)まだあまりできていないのですけど、あちこち歩き回ってショッピングをしました。これから沖縄や京都に行ってみたいと思っています。

モーガン:私がアドバイスするまでもなく、もうわかっているようです(笑)。私が以前来日したときは大阪や京都に行きました。ヒラリーも電車で行ってみたらどうかと思います。

ヒラリー:ええ、その通りにします。

ヒラリー・スワンク、栗山千明、モーガン・フリーマン

花束贈呈に『キル・ビル』での「ゴーゴー・夕張」役が印象的だった栗山千明さんが登場。 

栗山:この作品を観ることができて、お2人に会うことができて・・・女優でよかったとあらためて思いました。この映画はいろいろ感じることがありました。年齢を超えた友情だったり、愛情だったり、観ていて胸にキューンときました。ヒラリーさんにお会いするとマギーがそこにいると言う感覚で、涙ぐんでしまいそうでした。マギーは力強く一生懸命生きる女性で、演じるヒラリーさんもかっこいいいなーと思っていましたが、すごくきれいな方でした。
今までいろいろな作品で観ていたモーガンさんにも会えて感激しました。とても紳士的でかっこいい方だなぁと思いました。

ヒラリー・スワンク、栗山千明、モーガン・フリーマン

5月28日(土)丸の内ピカデリー1初回舞台挨拶予定

作品紹介はこちら

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(まとめ:白石 写真:梅木)
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