女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

第6回東京フィルメックス ラインナップ発表記者会見

2005年9月28日(水)
於 東京国立近代美術館フィルムセンター

今年も11月に有楽町で東京フィルメックスが開催される。毎年、作家性重視のラインナップでアジアの新しい才能を発見できる映画祭として、独自のポジションを確立してきた。また2年前から国立近代美術館フィルムセンターと共同して、過去の日本の映画監督たちの回顧上映を行い、これが海外からの大きな注目を集めており、一昨年の清水宏監督、去年の内田吐夢監督はともに、フィルメックスの後に海外の映画祭でも回顧特集が組まれている。

林加奈子、西島秀俊、廣木隆一、市山尚三
左から林加奈子ディレクター、西島秀俊さん、廣木隆一監督、市山尚三プログラム・ディレクター

今年はコンペティション作品には2005年製作のアジアの新進作家による9作品が選ばれた。

  1. SPL<殺破狼> 監督:葉偉信(ウィルソン・イップ) 香港
  2. 無窮動 監督:寧瀛(ニン・イン) 中国
  3. 結果 監督:章明(チャン・ミン) 中国
  4. あひるを背負った少年 監督:應亮(イン・リャン) 中国
  5. 焼けた劇場の芸術家たち 監督:リティ・パニュ フランス(カンボジア)
  6. マジシャンズ 監督:ソン・イルゴン 韓国
  7. サグァ 監督:カン・イグァン 韓国
  8. 完全な一日 監督:ジョアナ・ハジトーマス&ハリル・ジョレイゲ フランス/レバノン
  9. バッシング 監督:小林政広 日本

葉偉信監督は2000年にフィルメックスで『ジュリエット・イン・ラブ』がコンペティション選出されて以来、2度目の登場。新進作家かというとちょっと疑問だが、独特の作家性を持っている監督であることは間違いない。今回は配給が決まっているので今後日本での公開が期待できる。

その他、寧瀛監督は2001年に『アイラヴ北京』が、ソル・イルゴン監督は去年『スパイダー・フォレスト』、2001年に『フラワー・アイランド』がコンペティション選出されている。この3名以外はフィルメックス初登場だ。特に『あひるを背負った少年』は應亮監督のデビュー作であり、これがワールドプレミア上映になる。『サグァ』もカン・イグァン監督のデビュー作であるが、すでに先だってのトロント映画祭では国際批評家連盟賞を、スペイン・サンセバスチャン映画祭では新人脚本賞にあたるモンブラン賞を獲得しているという。今年のコンペティション作品も、なかなか面白い作品がありそうで、先物買いをしたい映画ファンは見逃せない。

審査委員長にイランのアボルファズル・ジャリリ監督(『少年と砂漠のカフェ』)を迎え、日本からは俳優の西島秀俊さんが審査員として参加する。

特別招待作品は7作品で、以下の通り。

  1. 【オープニング作品】スリー・タイムズ/最好的時光 監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン) 台湾
  2. 【クロージング作品】フル・オア・エンプティ 監督:アボルファズル・ジャリリ イラン
  3. 落ちる人 監督:フレッド・ケレメン(ドイツ) ドイツ/ラトビア
  4. やわらかい生活 監督:廣木隆一 日本
  5. サウンド・バリア 監督:アミール・ナデリ(イラン) USA
  6. セックスと哲学 監督:モフセン・マフマルバフ(イラン) タジキスタン/フランス
  7. フリー・ゾーン 監督:アモス・ギタイ(イスラエル) イスラエル/フランス/スペイン/ベルギー

プログラム・ディレクターの市山氏曰く、「今年の特徴は“国境を越えた映画製作”となりました。」確かに監督が出身国を飛び出し、様々な国と協力して製作した作品が多い。『フリー・ゾーン』はカンヌ映画祭でも話題になった作品だが、この撮影にはヨルダンのフィルムコミッションも参加していて、イスラエルとヨルダン両方の協力を得て作られた初めての作品かもしれないと、紹介された。
ところで今回、オープニング作品だけは東京国際フォーラムホールCでの上映となるので、お間違いの無いように。 

林加奈子

世界が注目する今年の特集上映は「生誕百年特集 映画監督 中川信夫 〜地獄のアルチザン〜」だ。記者会見の後に『地獄』(1960年、新東宝)の上映があり、記者は初めて中川作品観たのだが、なんともエロい絵を撮る人だったのだなぁと感じ、衝撃的映像の数々にかなり驚いた。代表作は『東海道四谷怪談』だが、今回はその他にビデオ化もされていない作品がニュープリントで計12本観られる、またとないチャンス。

そしてさらに特集上映として「映画大国スイス 1920's〜1940's」と題し、6本が上映される。スイスはこの時代、各国の監督を自国に招いて映画製作を支援しており、それはボーダーレス化の原点と言えるものだった。こちらのプログラムには恒例となった伴奏付き上映会もある。スイスのサウンド・デザイナー、ニキ・ネーケが来日し、サイレント映画『雪崩』(ジェック・フェデー監督)に伴奏を付けて上映する。

廣木隆一

会見にはゲストとして、特別招待作品として上映される『やわらかい生活』の廣木隆一監督と、コンペティションで審査員を努める俳優の西島秀俊さんが登壇した。廣木監督は開口一番「びびってます。こんな凄い作品と並べられて。」と、ちょっと照れ笑い。
林D:映画祭に期待することは?
廣木:今回、僕らの映画は初めてなので、Q&Aを一所懸命やりたいなと思っています。
林D:作品のここはちゃんと観ておいてね、という見所はありますか?
廣木:えー、蒲田の街
林D:蒲田の街ね。この映画、蒲田の街がイキじゃなく撮れているという(監督笑)、素晴らしいので皆様お見逃し無きように。

西島秀俊

初審査員を努めることになった西島秀俊さん。以前からフィルメックスには一般の観客として参加していたそうだ。ただあまり時間が無く、それほど多くの作品を観られずにいたので、今回は沢山観られると楽しみにしている、と挨拶していた。
林D:選考のポイント、作戦なんかはありますか?
西島:映画体験として、このフィルメックスで観たということが、これから生きていく中で衝撃として残る作品を選べたらいいなと思っています。

映画祭の日程及び、チケット発売は下記の通り。

11月19日(土)〜11月27日(日)
有楽町朝日ホール、東京国立近代美術館フィルムセンター大ホール、シネカノン有楽町
東京国際フォーラム・ホールC(11月19日のみ)

チケット発売:11月3日よりチケットぴあにて発売開始
前売:1200円 当日:1500円(オープニング上映のみ前売:1400円 当日:1700円)
東京国立近代美術館フィルムセンター大ホールは当日券のみ

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(取材・文・写真:梅木)
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