第12回を迎え、すっかり夏到来前の横浜の風物詩となったフランス映画祭横浜が、 パシフィコ横浜をメイン会場に6月16日〜20日の5日間の日程で開催されました。 シネマジャーナル62号(8月中旬発行)で、 詳細を報告していますが、 Web版では本誌に載せ切れなかった写真を中心に映画祭の様子をお届けします。 (ちょっと、ボケた写真もあってすみません!)
エマニュエル・ベアールを団長とする約百名の代表団が来日、6月17日のオープニング・セレモニーでは、 監督・俳優が舞台に勢ぞろいして圧巻。
今年のカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した柳楽優弥君が是枝監督と共にゲストとして登場。 若きヒーローに会場がどよめきました。
カンヌで審査員を務めたベアールにキスされて戸惑う優弥君。
挨拶を求められて、「え?僕が?」と戸惑いながら、立派にスピーチした優弥君。
受入側を代表して挨拶に立った中田宏横浜市長。
べアールの魅力にうっとりして、すっかり通訳の存在を忘れてしゃべり過ぎてしまい、 大いに照れる姿が素敵でした。
2004年 監督:ナディール・モクネッシュ
アルジェリアでは、1991年以降テロが横行し、10年間で10万人の市民がテロのために命を落としたといわれる。 本作は、テロがようやくおさまりつつあるアルジェを舞台に描かれている。
パピシャ(ビュウナ)はかつてコパカバーナの売れっ子ダンサー。 今はテロを恐れ、娘グセムと市内のホテル住まい。 ある日グセムは同じホテルに住む高級売春婦フィフィ(ナディア・カシ)の部屋から客の拳銃を持ち出す…。
「生きるのが難しい国だ」という一方「フランス人に頭を下げるのはイヤよ」という言葉も飛び出す。 アルジェの町で生きる女性たちの今を垣間見ることのできる素敵な映画。
3人の女性とともに、アルジェの町自体が4人目の主役と監督が語るように、 海沿いにたたずむアルジェの町の風情が美しい。
6月18日(金)慶應義塾大学日吉キャンパス
監督から、アルジェリアの歴史が語られたあと、アルジェリアの国民的歌手ビュウナさんが、 味わいのある歌声を披露してくださった。
部屋いっぱいの人たちを背景に記念撮影
監督、ナディア・カシ、ビュウナの3人に映画のことやアルジェリアへの思いをたっぷりお聴きしました。 是非、本誌をごらんください。
ナディール・モクネッシュ監督
1965年パリ生れ。アルジェリアとフランス双方のパスポートを持つ。
フランスでバカロレアを取った後、渡米して映画を学ぶ。自ら役者として出演もしている。
ナディア・カシ
ふわっと現れた高級売春婦フィフィ役の彼女は、とても華奢で、魅力溢れる女性。
1993年に国を出て拠点をパリに移す。
ビュウナ
「今、和菓子を頂いてきたの。美味しいわね〜」と、お饅頭を見せるビュウナさん。
ざっくばらんでパワフル。美空ひばりのような貫禄。 テロの多かった時代もアルジェリアで活動し、 テロのおさまった1999年に初めてフランスに出て、今はフランスとアルジェリアを行き来して活躍している。
2003年 監督:セバスチャン・リフシッツ
トランスセクシャルの街娼ステファニー、ロシアからの不法移民ミハエル、 マグレブ人(★注)の麻薬の売人ジャメル。社会から逸脱した若者3人がパリの一室で暮している。 病に倒れたステファニーの母親を、故郷の北フランスの貧しいが美しい町に連れ帰る3人。 そして母の死…。
★注:マグレブ人 モロッコ・アルジェリア・チュニジア等北アフリカの旧フランス植民地からの移民の総称
リフシッツ監督と主演のステファニー・ミッシュリニを囲むラウンドセッションに参加させていただいた。 フランス映画というと、人生を愛に生きる人たちを描いたものというイメージが強く、 その背景に見えるのは、いかにもの白人社会。監督は、そんなイメージを覆したかったという。 詳細は本誌をごらんください。
セバスチャン・リフシッツ監督
ステファニー・ミッシュリニ
監督と「彼」が出会ったことが、この映画をより、リアルなものにしている。
2002年 監督:ミシェル・ブージュナ(『レ・ミゼラブル』出演)
ミシェル・ブージュナ監督とパスカル・エルベ
終始笑いの絶えない舞台挨拶とQ&Aだった。
マイクの前に立つ監督の後ろに一列に並んだ一同 監督は、舞台裏でも笑いが絶えない
監督:ジャン=マルク・ムトゥ
リストラの対象者選定を命じられた青年(ジェレミー・レニエ)の苦悩と恋を描いた作品。
Q&Aで私自身のリストラ経験を元に質問したら、終了後ムトゥ監督から逆インタビューを受けてしまった。
2003年 監督:ヴァレリー・ギニャボデ (写真:右)
2003年 監督:エレオノール・フォーシェ
監督 Q&A
2002年 監督:リシャール・ベリ
可愛らしい出演者ジュール・シュトリュク(左)とジョゼフィーヌ・ベリ(監督の実の娘)
2003年 監督:ヤン・モワクス
Q&Aでは、飛び入りでシャンソン歌手の方が一曲 達磨にサインをする ブノワ・ポールヴールド
2003年 監督:ティエリー・クリファ
2人の女性の間を迷って行き来する主人公に、Q&Aの開口一番「観ていて腹が立ちました」の声。
パトリック・ブリュエルは、自分だったらこんなことはないかも・・・と弁明。 監督のスピーチ中、舞台に座って、くつろぐゲストたち
2002年 監督:ヤン・サミュエル
これまた、笑いの絶えないQ&Aでした!
超満員の会場に再びベアールが登場し、5日間の映画祭を振り返るセレモニーの開始。 『クレールの刺繍』の女性監督エレオノール・フォーシェが締めくくりの挨拶に立った。
今回初めて設けられた観客賞の発表。プレゼンターは別所哲也さん。 ベアールも彼もお互い照れながらの発表となった。
観客賞受賞作はリシャール・ベリ監督の『ぼくセザール10歳半1m39cm』。
セザール役のジュール・シトリックと相手役で監督の娘でもあるジョゼフィーヌ・ベリのあどけないカップルが優勝カップをしげしげと眺める姿が微笑ましかった。