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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

『キリング・ミー・ソフトリー』記者会見

ヘザー・グラハム、チェン・カイコー

1/21に行われた記者会見の、監督と主演女優のお話を要約しました。

ヘザー・グラハム、チェン・カイコー

陳凱歌監督

 原作に描かれた人間関係に惹かれました。こう言う事は現在どこでも、特に大都会では誰にでも起こりうる事です。私達は今、大変便利な時代に生きています。携帯電話やメールですぐに人とコンタクトできます。しかし、そんな時代だからこそ 逆に人と理解し合うのが難しい。これは一般的な問題です。ヒロインは、素敵な出会いを夢見て、ふと出会った相手と激しい恋をしますが、その相手を心から信頼している訳ではありません。これは悲劇です。

 こういう作品はヒッチコックからヒントを得る事が多いです。恐怖は外的要因ではなく内的要因によって生じるという点で。人の心の中には鬼が住んでいます。

 中国とイギリスとで、特に映画の現場に違いはありません。俳優もカメラも素晴らしく、楽しく仕事が出来たし自信もつきました。そうそう、中国ではノッてくると食事時間も飛ばして撮影を続けますが、イギリスでは食事時間もティータイムも決められていて、それが煩わしかったですね。

 自分が中国人、ヒロインはアメリカ人、他はイギリス人と 国際的なクルーではあったけれど、それは特に意識しませんでした。皆理解し合い、ファミリー的な感覚でした。私はリハーサルよりも 話し合う事が大切だと考えています。話し合いを重ね、やってみてうまくいかなければ 又別の表現方法を考える。そんな風に練り上げているうちに、 セリフもシンプルで力強いものになったと思います。

 SEXシーンも暴力的ではない、美しいものにしたかった、二人の演技が 素晴らしかったから。布を使ったSEXシーンは、元のシナリオではひもで縛り上げる事になっていました。ジョセフ・ファインズの役は登山家ですが、登山家にとってひもは命を救うものであり、時には命を奪うもの。生と死は隣り合わせ。甘美なシーンの中に 危険な匂いをはらませて、観客にヒロインはいつか殺されるのでは? と思わせる狙いでした。

チェン・カイコー  チェン・カイコー

主演女優ヘザー・グラハム

 もともと陳監督と仕事がしたかったので、望みがかない、とても嬉しいです。私も この原作の人間関係、性の描かれ方に惹かれました。愛が深まるほどに、自分は相手 をどれほど知っているのかという疑問がわいてくる、そういう点に興味を覚えました。

 監督はリハーサルが好きではなく、SEXシーンでも細かい動きの打合せなどは ありませんでした。その代わり、詩的な美しい言葉で雰囲気を盛り上げ、 演技に入るのを助けてくれました。ファインズもセクシーで素敵な男性で、 同時に充分信頼のおける人で安心して演技が出来ました。

 ヒロインのファッションについてですが、とても素敵な服ばかりで楽しかったけど、もちろん同時に彼女の心理を表すという面がありました。初めはキャリアウーマン風の優等生然とした服装ですが、アウトサイダーである彼と出会い、その自由さに触れる事で自分を解放し性的にも目覚めていく、そういう事を服装の変化で表現しました。

 あと、ヒロインは初めのうち急いでせわしなく動いていますが、出会いを経て動きがゆったりとしてきます。これも監督の指示で変化をつけました。

ヘザー・グラハム  ヘザー・グラハム  ヘザー・グラハム 
『キリング・ミー・ソフトリー』

 ロンドンで働き恋人と幸せに暮らすアリス(ヘザー・グラハム)は、 ある日街でふと目を見交わした男アダム(ジョセフ・ファインズ)に強烈に惹かれる。 逢瀬を繰り返し、ついには恋人を捨てアダムと一緒になるアリス。 しかし彼女の元にアダムとの関係を警告する匿名の手紙が舞い込む。 高名な登山家という以外、アダムについてほとんど何も知らなかったアリスは 次第に疑惑を募らせてゆく…。

2/23(土)〜 日比谷スカラ座ほか、全国東宝洋画系劇場にてロードショー

東宝HP >> http://www.toho.co.jp/

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(文:岸井直子、写真:宮崎暁美)
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