出演:チャン・ジャーホイ ツァイ・ツェンリャン イェ・シャオフー 監督:ウー・ミーセン 2000年/台湾映画/上映時間60分
30歳を目の前にして無職のワン(ツァイ・ツェンリャン)は、同棲中のスチュワーデス、 ア・メイに実質食べさせてもらっている。ワンは医大を出ており、歯科医の友人と 川端康成を論じたり、外国語の新聞(実は日本の新聞なのだが)を読むインテリでもあるが、 実際は、ブラブラと日を過ごすダメ男である。
そんなある日、ワンは出入りのラーメン屋で、新しいバイトの女子高生、ミャウミャウ (チャン・ジャーホイ)と知リ合う。ミャウミャウは、自称レズビアン。 テレビのCMにも出演した事のあるかわいい女の子だ。彼女からある日、 付き合っていたガールフレンドに失恋したという電話が入る。一晩中慰めるワン。
その日から、二人は体の関係こそないものの、ア・メイがフライト中に、 ワンの部屋で過ごす仲となる。
一方、ラーメン屋でミャウミャウの消息を訊ねる一人の青年(イェ・シャオフー) がいた。彼は、ミャウミャウが出演したテレビのCMで、ミャウミャウに キスをする役で共演していた青年であった。彼もまた、ミャウミャウの事が気になり、 彼女の行方を探していたのだった。 そしてミャウミャウもしだいにCMで共演した青年の事を好きになりつつあった……
ワンの30歳の誕生日。ミャウミャウの忘れ物に気づき、慌てて彼女を追いかけて 道路へ飛び出たワンに、不思議な出来事が起きるのだが……
台湾のインディペンデント映画と言う事で期待して見た所、期待たがわず都会的で、日常の憂うつを見事に切り取った作品でした。
物語は人間関係が複雑に交差し合い、突然知らない人が画面に出て来たりします。実は最後までよく分らない人もいます。しかしそこは一期一会、人間の生活というものは、いろいろな人との係りで成り立っているものだと、改めて感じさせられます。
映画の中ではとても美しいセリフが飛び交い、その一つ一つがさながら一編の詩の様です。しかし、そのセリフの意味を立ち止まって考えてはいけません。考えると、次の詩の様なセリフについていけなくなります。そう、この映画はまるで、詩的な言葉を心地よく聞きながら、スタイリッシュな映像の美しさを感性で感じる映画なのです。
原題は「起毛球了」(“毛玉が出来た”という意味)で、映画の中でこの言葉が キーワード的に出てきます。監督は毛玉のイメージを、「人が服を着たときに初めて出来てくるもの、人との接触で発生するかたちの変化」と答えています。
服と皮膚とがこすれ合い出来る毛玉を、人と人との接触で出来る愛情といった形で、 表現したかったのだと思います。
主演のミャウミャウ役のチャン・ジャーホイは、モデル出身。スレンダーな体つき、まだ大人になりきれない体型は、超ミニのひだスカートを素足に穿いていても、全くいやらしさが感じられず、寧ろ清潔感に溢れています。
一方ワン役のツァイ・ツェンリャンは、逆に30前なのに男臭さがなく、この人を主演に起用したのは正解だと思いました。だからこそ女子高生と一緒に暮らしていても、透明感のある空間を出せたのでしょう。
国が違えども、都会に暮らす若者の日常には、どこか共通点があるもの。
現代の若者世代の日常や感覚といった曖昧なものを、 スクリーンに写し取って見せてくれたこの「恋愛回遊魚」。
ぜひ、感性で感じとって下さい。
*日本大好きな、ウー監督。映画の中には様々な日本に関連なものが出てきます。それらを探すのもまた、楽し!です。
2000年釜山国際映画祭正式出品
2000年台北ゴールデンホース映画祭正式出品
2001年シンガポール国際映画祭正式出品
ウー・ミーセン(呉米森)
1967年、台北生まれ。
N.Y市立大学で映画を学び、アレン・ギンズバーグが出演している短編の 「Van Gogh's Ear」が数々の映画祭で評価を受ける。CMやMTVのディレクターとしても活躍。「恋愛回遊魚」は、台湾政府の助成金を得て製作されたウー・ミーセン監督の初長編作品である。
2002年2月9日より、東京 渋谷ユーロスペースにてレイトショー公開
2002年3月9日〜22日名古屋 シネマスコーレにてモーニング公開
2002年3月中旬より大阪 扇町ミュージアムスクエアにて公開予定
テアトル新宿、シネ・アミューズ、シネラ・セットにて、予告編上映中
詳しい公開情報は、下記のHPにて。
http://www.artown.net/mptown/renaikaiyugyo/top.html