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女が作る映画誌 ー 女性映画・監督の紹介とアジア映画の情報がいっぱい
 (1987年8月、創刊号 巻頭文より) 夢みる頃をすぎても、まだ映画を卒業できない私たち。
 卒業どころか、30代、40代になっても映画に心が踊ります。だから言いたいことの言える本まで作ってしまいました。
 普通の女たちの声がたくさん。これからも地道な活動を続けていきたいと思っています。どうぞよろしく。

台湾のR&Bアーティスト
ジェイ・チョウ(周杰倫)・コンサートIN 台北 
& プレスカンファレンス

ジェイ・チョウ

2002年9月28日 台北体育場は3万5千人の若者で揺れた。今や台湾のドル箱スター ジェイ(周杰倫)の2度目のコンサートはスクリーンに映るジェイのPVとともに 3万5千人の大合唱で始まった。若干23歳の彼の何が台湾の若者を惹きつけるのだろう。

私がジェイを意識したのは2枚目のアルバム「Fantasy」からだった。 お手伝いしている文化放送の「アジアンパラダイス」で今台湾で一番若者に支持されているR&Bの担い手という紹介だった。 1枚目でもう台湾のトップに躍り出た彼は、台湾のみならず、香港、 中国でも熱烈に支持されて、2001年度のほとんどの音楽賞を手中にした。 その1枚目『Jay』を聞いたときは、それ以前にでていたワン・リーホン(王力宏)たちと同じように、かなりアメリカ音楽、それも黒人音楽に影響を受けた人だなあという印象しかなかった。しかし2枚目はかなり特徴的なフェイク部分が気になって、しっかり聞いてみた。そうすると、R&Bやラップに載せた中国語の歌詞が独特のジェイの世界を醸し出していることを発見。そのうち、1枚目も聞き直してみると、多重録音された彼の声の素晴らしさに気がついてきた。ジェイはとくにヘッドホンで聞いてみると、その良さがよく分かる。そのセクシーな声と息使いにはくらくらするはずだ。

今年夏に出した実質3枚目のアルバム『八度空間』について彼は語っている。
「音から来るイメージってあるよね? 音を聞いただけでその状況が想像できるっていう、そういう音を作りたかったんだ」
『八度空間』では船の音、男女の会話、電車、銃撃戦の音などが入っていて、中国語の分からない私でも独特の世界に浸れてしまう。ジェイの曲の良さは、もちろん楽曲がいいということは当たり前だが、とにかくジェイの声によるところが大きい。地声からファルセットに変わる微妙な音程、そして写真からは想像もできないはかなげでセクシーな声。 自分の声質を知っての着実なコーラスワーク。見事としか言い様がない。 他にも1曲の中にいろんな要素が詰め込まれている。日本の楽器だったり、弦楽器だったり、それがキワ物にならないのは、1つ1つの曲が作詞家 方文山とのコラボレーションにより、映画的な世界を作り上げているからだろう。その世界は広く、ハムラビ法典という言葉が出てきたり、忍者が出てきたり、なかなか意表をつく歌詞だ。どちらかというと、マンガの世界っぽい感じがある。大人にとってリアリティのないマンガの世界が若者には身近な世界に感じるのかもしれない。そうして中華圏の音楽には必須のバラードにはビビアン・スーというコンビネーション。こちらはとてもシンプルな恋愛詞になっている。彼はデビュー前からいろんな歌手に曲を提供してきたが、その数多くの曲は他の歌手が歌って素晴らしいものもあるが、目立たない曲もある。しかしジェイの曲はジェイが歌うとジェイそのものになる。

今回のコンサートで彼は12着の衣装を取っ替え引っ換えした。その着替えの間がなんとなくこちらは間が悪いと感じたが、彼は「1つのコンサートというより1曲1曲を映画みたいにしたかったんだ」と言っている。確かに、曲に合わせてのセット替え、演出に台湾の観客は素直に喜んでいた。そこまで着替えなくてもいいのではという気持ちが残らないでもないが、あくまでMTVのようにしたいという彼の気持ちはいたいほど伝わってくる。ジェイの登場前から歌いつづけている観客は結局コンサートの終了まで全曲大合唱を続けた。悲鳴に近く、声を限りに歌い続けた。それは単なるミュージシャンを越えてカリスマ、アイドルと言う言葉まで浮かんできた。会場を埋め尽くしたのはほとんどが10代〜20代前半の男女。ジェイの何が彼らを熱狂させるのか。今回通訳をしてくれた台湾人のSさん曰く「彼は観客の心をつかむのがうまい。日本でいうと尾崎豊みたいな感じ」と表現してくれた。尾崎豊???どうもイメージがつかめない。曲はどう聞いてもR&Bだ。ところが今回コンサートを観てわかった。どんな衣装を着ても、ダンスをしても、バスケットボールをしても、ジェイはどこかさびしそうで、はかなげなのだ。クールなマスクの下に、両親の離婚やいろいろな悲しみやさびしさを、観客は感じ取っているのだろうか。

3万5千人を熱狂させたコンサートから打ち上げ会場に現れた彼は興奮するでもなく、淡々とスタッフに感謝の言葉を述べた。23歳とは思えない落ち着いた雰囲気だ。さまざまなメディアの取材に疲れているにも関わらず、黙々とこなしていく。分刻みのインタビューは香港などのいい加減な=よくいうとフリーな感じとは違い、質問を最初に提出して、それ以外聞くことはまかりならないという厳しい制約の中で行われた。23歳の青年を大人が、がっちりガードして、こっちの言うことを1文字も聞き漏らさないぞという感じでぴったりついている。ちょっとかわいそうな気もする。彼が最近気に入っているという日本人アーティスト 元ちとせについて聞いてみた。「彼女が流行る前からCDを聞いていて、いいなと思ったんだ。台湾に台湾オペラっていうのがあるんだけど、そこでの歌い方と似てるというか、そういう伝統的な歌い方をポップスに取り入れているのがおもしろいなと思ったんだ」と語っている。他に好きな日本人アーティストは? と聞くと、「う〜んとね、あれ、名前なんだっけ? ほら、この間もらったやつ。ほら白髪頭の人で……。分からない?じゃあ歌ってみるよ」と彼は歌ってくれた。そうしたらスタッフが答えてくれた。玉置浩二だった。あれ? 今年のMTV JAPAN AWARDで日本に来たときは結構ラップ系のバンドを答えてたよね? まあ、好きなのがころころ変わるとところは、やっぱり若者かもしれない。日本でCDリリースやライブの予定は?
「日本で僕のファンがどれだけいるのか、僕の方が聞きたいよ。もしたくさんいるのなら、もちろん機会があればぜひやりたい。日本で成功したら、もうどこででも大丈夫ってことだしね」
シンガポールやマレーシアなどでもビッグヒットを放つ彼は、実は言葉がかなり不鮮明らしい。なので、反対に外国の人が聞いても違和感のない中国語になっているのが、アジア全土で受け入れられている理由の1つだという。確かにイメージの中国語の発音ではない。実は私もちゃんと中国語なのだろうかと思ったことがある。MTVの字幕を見て初めて、本当に中国語で歌っているのだと納得したものだ。なので、日本でも受け入れられる可能性は大いにある。かなりの日本通で日本が大好きだというジェイ。ぜひとも今度は日本のステージで日本の若者を熱狂させて欲しい。それまで、私はジェイ伝道師として、陰ながら応援するつもりだ。

ジェイ・チョウ 周杰倫
 1979年01月18日 台北市生まれ
 アルバム 『Jay』、『范特西(Fantasy)』、『八度空間』他

ジェイ・チョウ

続き: 「周杰倫(ジェイ・チョウ)香港コンサート&日本コンサート実現へむけて」

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(文・写真 永原めぐみ/ Memi)
http://www1.linkclub.or.jp/‾lovpeace/memi.com/

ライター、ミュージシャン
「喫茶ロック」ソニーミュージック編に収録の杏のメンバー、現在は杏_(AnzuUnderbar)として活動中
★4月「My song(杏物語)」リリース(タワーレコードなどで発売中)
★8/28 ソニーミュージックハウスより「Drive meets 喫茶ロック」
 SABU監督作品映画「Drive」のサントラ 杏の曲が挿入歌になってます。
★レギュラー番組
 J-wave「VIVA!ACCESS」のQUICK ACCESSのコーナー担当 月曜日12:05〜15
 BSQR489 文化放送BSデジタルラジオ放送「楽音潮流」火曜日ナビゲーター
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 アジアンパラダイススタッフ

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