ベルギーといえば、「フランダースの犬」とレース編みとワッフルしか浮かばない私。しかも大人になるまで「フランダース」はオランダの地方だとばかり思っていました。風車と木靴なんだもの(130年も前の話だから無理もない。日本は明治になったころで、ほとんど着物姿だったはず)。オランダに近い北部なので、言葉も風俗もオランダ式だったのでしょう。
現在も多言語国家で、フランス語、オランダ語、フランドル(フラマン)語、 ドイツ語が使われているそうです。 映画の中で言葉の話が出てきて、あとで調べてわかった ことです。
映画は現代のそのフランダース(フランドル)地方の町が舞台。 高圧線の鉄塔が並び、線路が走っていて、日本のどこかにもありそうな風景。
主人公のジャン(ヨセ・デパウ)は妻と一人娘のマルヴァ(エヴァ・ヴァンデルフト) と3人暮らし。歌手と同じ名前をつけた娘はジャンの願いどおり歌好きに育ち、 毎週コンテストに応募している。これが「もの真似歌合戦」といった趣で、 モトネタがわかればすごく可笑しいはず。私がわかったのは、マドンナとマイケル・ジャクソンだけ。
落選続きのマルヴァはすっかり自信をなくしているが、ジャンは決して諦めず、いつかは娘に歌ってもらいたいと、自ら作曲に励む毎日。しかし「親の心、子知らず」マルヴァには鬱陶しがられるばかり。おまけに勤めていた町工場が倒産して無収入となってしまう。家族を愛するジャンはそれを告げることができず、いつものように勤めに出るふりをしている。失業仲間たちもパブに集まってやりきれない思いをぶつけ合うが、仕事は見つからない。
ある日、偶然にも人気歌手のデビーに出会ったジャンは、彼女を誘拐して身代金を手に入れようとする。気の良い(良すぎです、この人)同僚のウイリーを巻き込んで、TV局のプロデューサーと交渉を始めるが…。
衣装からはみ出すほどお肉の多い娘(そういう子ばかり集めてオーディションしたそう) も最初は可愛くないし、熱を入れすぎる父親もあんまりじゃない、と思います。少しさめている現実的な母親に、一番共感してしまうのだけど、話が進むにつれてこの「情けないけど愛情だけはたっぷりな中年男」も良く見えてくるから不思議。 TV局の内側も皮肉っぽく見せていて面白い。話の展開は「そんな馬鹿な!」と、突っ込みたくなるところだらけなのに、テンポ良く進むのでひっかからずに観終わります。
コメディ味のホームドラマで、美男美女もいなければ(デビー役は可愛い)派手なアクションもないけれど、くすくす笑ってほろりんとします。あー、映画見た!という気分になりました。ベルギーでは'97にルノーの工場が突然閉鎖。多数の失業者が出て社会問題となりました。 この映画もそんな世情が垣間見えます。帰路は、マルヴァが力強く歌う(これがフランドル語かな?)「ラッキー・マヌエロ」が頭の中をぐるぐる、ぐるぐる…。
この作品は、2000年11月「大阪ヨーロッパ映画祭」で上映され、「大阪市ヤングシネマ賞」を受賞しています。2001年のアカデミー賞外国語映画部門にも、ノミネートされています。受賞したのは『グリーン・デスティニー』でした。
ドミニク・デリュデレ監督作品は、他に『魅せられたる三夜』というのがビデオ発売されてるようですが、'87作品なので見つけるのは難しそう。ビデオやさんの新陳代謝激しいですものね。あんまりヨーロッパ映画を観ない私には、監督も俳優も馴染みがありませんでしたが、これを見ると、ハリウッドのコメディより肌に合いそうな感じがしました。他のも観てみたいなと思っています。
*8月17日より シャンテシネにて公開予定
東宝 >> http://www.toho.co.jp/main.html
(『エブリバディ・フェイマス!』のページは調整中?)